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インドネシア共和国 プロジェクト・ファインディング調査報告書 _______________________________________________________________ インドネシア共和国 ルンタン灌漑近代化事業 インドネシア共和国 メラウケ食料基地開発事業 _______________________________________________________________ 平成 22 年 9 月 社団法人 海外農業開発コンサルタンツ協会

インドネシア共和国 プロジェクト・ファインディング調査報告書 · 2014. 5. 13. · インドネシア共和国 プロジェクト・ファインディング調査報告書

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Page 1: インドネシア共和国 プロジェクト・ファインディング調査報告書 · 2014. 5. 13. · インドネシア共和国 プロジェクト・ファインディング調査報告書

インドネシア共和国

プロジェクト・ファインディング調査報告書

_______________________________________________________________

インドネシア共和国 ルンタン灌漑近代化事業

インドネシア共和国 メラウケ食料基地開発事業

_______________________________________________________________

平成 22 年 9 月

社団法人 海外農業開発コンサルタンツ協会

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まえがき

本報告書は、社団法人 海外農業開発コンサルタント協会(ADCA)が調査団をインドネ

シア共和国、西ジャワ州とパプア州に派遣・実施した案件形成予備調査の結果を取りまとめた

ものである。

調査は、平成 22 年 8 月 22 日から 9 月7日までの間に、下記の団員により実施された。

- 総括/灌漑 臼杵 宣春 (日本工営株式会社 国内事業本部)

- 農業 尾形 佳彦 (日本工営株式会社 地域整備部)

- 灌漑 渋田 健一 (日本工営株式会社 地域整備部)

調査団は、調査期間中に、下記の調査開発案件の資料を収集し相手国政府と協議す

ると共に、現地踏査を実施した。

- ルンタン灌漑近代化事業(西ジャワ州)

- メラウケ食料基地開発事業(パプア州)

調査実施に際し、調査団は、インドネシア共和国、農業省、公共事業省、水資源総局、

両州の公共事業事務所と流域管理事務所、在インドネシア日本大使館、JICA 事務所の多く

の関係者から、多大な御助言と御協力を頂き、調査業務を円滑に逐行することができた。 こ

れらの関係機関ならびに関係者に、深い感謝の意をする次第である。

平成 22 年 9 月

案件形成予備調査団 総括

臼杵 宣春

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案件概要

国名 (和)インドネシア共和国

(外)The Republic of

Indonesia

案件

(和)西ジャワ州ルンタン灌漑近代化事業

(英)Rentang Irrigation Modernization Project in East Java Province

(和)パプア州メラウケ食料基地開発事業

(英)Melauke Food Estate Development Project in Papua Province

地区名 (和)西ジャワ州、パプア州 (外)West Java Province、Papua Province

相手国担当機関 公共事業省水資源総局、

農業省

Directorate General of Water Resources, Ministry of Public Works、

Ministry of Agriculture

1.事業の背景

インドネシアの主食であるコメは近年の異常気象や通貨危機後の肥料・農薬の高騰等の外部要因によっ

て生産が不安定で、2007 年には約 140 万トンを輸入する事態に陥った。このような状況下、インドネシ

ア政府は、安定的なコメ生産による食料安全保障が農業セクターの優先課題と捉え、中期国家開発計画

(2010-2014 年)の中で、2014 年までに 1,200 万トンのコメ増産を目標として、50 万 ha の新規灌漑開発・

拡張と 134 万 ha の既存灌漑施設改修を設定している。

都市化と工業化によるジャワ島の水田面積の減少は、「イ」国のコメ自給にとって深刻な問題となって

いる。また、施設は老朽化し、適切な維持補修作業の不足による水路内の堆砂や施設の損壊などによって

灌漑効率は低下し実質灌漑面積は減少している。さらに、都市用水などの需要が急増しており、流域の統

合的水資源管理を念頭においた灌漑水管理の合理化を含めた対策が必要となっている。灌漑局はジャワ島

における灌漑事業の改修モデルとして、西ジャワ州のルンタン灌漑近代化事業を取り上げている。

将来の食糧危機に備えるためには、ジャワ島で水田面積が年々減少する中で、外島での農業開発を加速

する必要がある。とりわけ、未開発地が広がるパプア州は有望である。最近、農業省が中心となってパプ

ア州のメラウケ地区で食料基地開発を計画している。メラウケ地区の土地利用図をもとにした約 120 万

ha の民活型農園開発構想であるが、道路や灌漑などの基礎インフラが未整備であることから、PPP 事業を

前提としたマスタープラン調査が必要と考えられている。

2.調査対象事業の概要

「イ」国政府の要望により、西ジャワ州のルンタン灌漑近代化事業とパプア州のメラウケ食料基地開発

事業について現地調査を実施した。

(1) ルンタン灌漑近代化事業

調査対象地域

西ジャワ州のチマヌーク川の下流域に位置し、チレボン、インドラマユ、マジェレンカの3県に広が

る大水田地帯である。首都ジャカルタとスマランの中間点に位置し、それぞれ車で 4~5 時間の距離

であり交通の便がよい。

事業の概要

ルンタン灌漑事業はオランダ統治時代の 1917 年に完成し、その後、1961 年と 1981 年に灌漑施設の

改修が行われている。総灌漑面積は約 90,000ha であるが、用水不足のために乾期の作付強度は 150%

程度に留まっている。現在、チマヌーク川上流に治水・利水を目的としたジャディゲデ多目的ダムが

建設中であり、ダムを有効活用し最大の事業効果を確保するためには、営農・灌漑計画にもとづいた

適切な水配分が不可欠である。このためには、老朽化した灌漑施設の改修とともに、IT 技術やアセ

ットマネージメント導入による O&M 管理体制の強化、水利組合の強化や農業等のソフト面での支援が

必要である。

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(2) メラウケ食料基地開発事業

調査対象地域

パプア州のメラウケ県は、東経 137 度 30 分から 141 度 00 分、南緯 6度 00 分から 9度 00 分の間に位

置する。すなわちパプア州の南部にあって、南部西部はアラフラ海に面し、北はマッピ県、ボベン・

ディゴエル県に接し、東はパプアニューギニア国との国境に位置している。

事業の概要

メラウケ食料基地開発事業は Grand Design として農業大臣とメラウケ県知事の間で 2010 年 6 月に

総合開発計画として合意された。2010 年からの 5 年間で 43 万 ha の農地の開発を行う短期計画に始

まり、最終的には 20 年の長期計画によっておよそ 130 万 ha の開発を行うことを計画している。

全体土地利用計画として計画地区を 10 のブロックに分け、それぞれに水稲、大豆、トウモロコシな

どの畑作物、サトウキビ、オイルパーム、果樹などのエステート作物、畜産、養魚などを組み合わせ

た複合的な開発を計画している。作物の比率は、メラウケ県や関係部局では開発地の 50%が水田(水

田は移住政策の新規開発はしない)と畑作物(大豆、トウモロコシなど)、30%がサトウキビ、20%が

オイルパームに配分することとしている。なお、主務官庁になる農業省副大臣によれば、民間主導の

開発で、基本的にはインフラを含めて民間投資で開発を進める方針とのことである。

3.調査の概要

(1) ルンタン灌漑近代化事業

円借款での事業実施の可能性を検討するために、以下の項目について検討を行った。

・ 水資源:ルンタン頭首工地点における河川流量、取水量、洪水被害状況などを確認した。チマヌーク

川流域およびルンタン灌漑事業地区内の土地利用が変化しており、長期的な観点から水収支を再確認

し、近代化事業計画に反映するする必要がある。また、ジャディゲデダム完成後はダムから用水供給

を受けることから、ダムのオペレーション計画と灌漑計画の整合性を確認する必要がある。

・ 灌漑施設:ジャディゲデダムの工事現場、ルンタン頭首工、沈砂池、導水路、幹線・支線・三次水路

などの現況を視察した。河川からの土砂流入や水路の法面崩壊による水路内の堆砂問題、それに起因

する水路通水能力の減少や水路余裕高の減少が見受けられた。また三次水路への分水工ではゲートの

盗難、破損などにより計画的な取水が出来ていない箇所が散見された。

・ 農業:現在の作付面積は雨期稲作 87,440ha、乾期稲作 39,832ha、乾期畑作 6,606ha で、作付率は 150%

程度に留まっている。灌漑地区の一部で試験的に SRI による節水稲作栽培が導入されている。

・ 土地利用:インドラマニュ周辺部の都市化、主要道路沿いや集落周辺部での宅地化、チマヌーク川河

口付近や北西部沿岸での養魚池の拡大等が観察された。また、チマヌーク川沿いの一部や北西部の沿

岸部は洪水常襲地区である。その結果、これまでに約 2,000ha の灌漑農地が他用途へ転用されている。

・ 社会環境配慮:ジャティゲデダムの建設に伴う住民移転は既に 7割以上が終了している。水源涵養と

してのチマヌーク川上流部の流域保全は重要な課題である。一方、下流域における洪水被害はダムの

完成により大幅に軽減される見込みである。

(2) メラウケ食料基地開発事業

円借款と民間投資の協調による事業実施の可能性を検討するために、以下の項目について検討を行った。

・ 実施体制:国の役割としては、開発計画の策定、開発用地の貸与、開発許可を行う。道路、かんがい

などのインフラは、基本的には国あるいは地方政府が整備をはかる必要があるが、具体的な整備計画、

資金計画の積算根拠は明確ではなく、関係機関との調整もとれているとは言い難い。

・ 基礎インフラ整備:基本的なインフラ、特に対象地区内のアクセスは貧弱である。クンベ川の橋梁は

現在崩壊のため改修中である通行が不能である。メラウケ市内を離れると未舗装区間が多く、投資を

認可されている企業もほとんどが、インフラ整備が未熟のため、様子見の状態である。

・ 投資企業:既に 46 社から申請があり、中国、韓国、サウジアラビア、ブラジルなど海外企業も参加

の意思を示している。開発面積は、平均で 1社 3~4万 ha 程度になる。既に 9社(うち国内企業 4社、

海外企業 5社)が運営を開始している。しかし、基礎インフラ整備が成されておらず、事業に着手す

るには至っていない。また、対象作物に関しては計画との整合性がとれていないため、調整が必要で

ある。

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・ 環境保全:環境保全地区として指定されている地域は、開発から除外している。また、泥炭地(泥炭

層の厚さが 50cm 以上の地域)も開発除外地域としている。開発予定地域は、メラウケ県の森林全体の

30%程度であり、また天然林ではなく、2次林であるので、自然環境保全上は問題ないとしている。

・ 住民配慮:開発予定地域内外には、先住民がいるため、地域コミュニティへの配慮が欠かせない。こ

のため、インドネシア政府は PLASMA 計画と称し、投資企業の収益の 20%を地域コミュニティに還元す

る方法を採用することを検討している。

・ 灌漑開発:現在、公共事業省出先の湿地開発局では、既開発水田への灌漑用水、生活用水確保のため、

水路を拡幅し貯留する計画を実施している。乾期の水田作を実施するためにはこの計画だけでは用水

が不足するため、マロ川上流(60km 程度)にダム(頭首工)を設ける計画もあるが、詳細は詰められて

いない。既耕地上流には、湿地があり、乾季でも滞留水があることから、湿地を水源とするアイデア

もあるようである。しかし、使用可能量やかんがい地域への導水の可能性などを検討するための資料

がないので、詳細な計画を実施する段階にはない。

4.今後の展望

(1) ルンタン灌漑近代化事業

ジャワ島における大型灌漑リハビリ事業のモデルとして、灌漑システムの改修にとどまらず、アセットマ

ネージメントの導入、ダムオペレーションと連動した灌漑システムの効率的・効果的な運用、交通の便を

生かした農産物物流システムの構築など、地域振興に資する事業化が望まれるところである。2013 年に

はジャティゲデダムが完成すること、事業規模大きいことから、円借款による本事業の早期実施が強く望

まれる。

(2) メラウケ食料基地開発事業

インドネシア政府(農業省)は、インフラ整備も含めて民間投資による開発を考えており、参入企業を募り、

民間投資による開発を進める方針である。一方で、基礎インウラが未整備であることから参入企業は、模

様眺めの傾向が強く、このままでは、計画の実施は困難といわざるを得ない状況にある。基礎インフラの

整備は、インドネシア政府が整備し、投資環境のを改善することが必要になるものと思われる。基礎イン

フラ整備を含め、当該事業の円滑な推進のために、基礎情報の集積と詳細な計画の策定、実施体制の確立

が不可欠であり、これらの早期実現に向けて、日本の支援が期待されるところである。

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調査対象地区位置図(ルンタン灌漑近代化事業およびメラウケ食料基地開発事業)

ルンタン灌漑地区

Merauke Food Estate Project

メラウケ地域食料基地地区

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調査地区写真

ルンタン灌漑近代化事業 (1/4)

ADCA調査団と灌漑局(BBWS)の協議

(2010 年 8 月 26 日)

工事中の Jatigede ダム

右岸からダム軸を望む

Rentang 可動堰(Barrage)

世銀の資金援助で 1981 年に完成 Rentang 右岸幹線水路の沈砂池

設計取水量56m3/secに対して、実際には35m3/secの取水量であった。

Rentang 可動堰 維持管理センター 世銀の資金援助で 1981 年に完成

Rentang 可動堰 ゲート制御パネル

約30年間よく維持管理されているが、スイッチの一部が故障

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調査地区写真

ルンタン灌漑近代化事業 (2/4)

Rentang 右岸幹線水路(Glesik 地区)

所々で水路斜面の崩壊や浸食がみられる Rentang 右岸幹線水路と調整ゲート(Glesik 地区)

Runtang 右岸二次水路と調整ゲート (Sindupraja 地区)

Runtang 右岸二次水路と調整ゲート

(Sindupraja 地区)

三次水路上の分水ゲート(Sindupraja 地区)

水路内には土砂が堆積している

三次水路(Sindupraja 地区)

この水路は練石積ライニングが行われている

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調査地区写真

ルンタン灌漑近代化事業 (3/4)

水利組合連合(農民組合を兼ねる)での農民インタビュー

水利組合連合(農民組合を兼ねる)での農民インタビュー

小河川の河口付近に建設されたゴム堰(Gegesik 地

区)

河川水の堰上げと塩水遡上防止のためのゴム堰

Cimanuk 川 排水用分水施設(Induk Utara 地区) バイパス排水路側から Cimanuk 川上流を望む

Cimanuk 川 排水用分水施設(Induk Utara 地区) バイパス排水路入口のゴム堰(洪水で消失)

Cimanuk 川 排水用分水施設(Induk Utara 地区) Cimanuk 本川上のラジアルゲート堰

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調査地区写真

ルンタン灌漑近代化事業 (4/4)

農地転用(養魚場) 灌漑用水路が養魚場用の水路に転用されている

農地転用(養魚場)

Cimanuk 川とバイパス排水路に挟まれた地区 下流部の水田は養魚場に転用されている

農地の転用(住宅地)

Cimanuk 川とバイパス排水路に挟まれた地区 上流部の水田は住宅地に転用されている (Indramayu 近郊)

農地の転用(工場・倉庫・飲食店)

Indramayu-Cirebon 有料道路沿線の水田は工場・倉庫・飲食店用地等への転用が始まっている

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調査地区写真

メラウケ食料基地開発事業 (1/4)

ADCA調査団とメラウケ県関係諸機関との協議

(2010 年 8 月 28 日)

メラウケ畜産局での協議

(2010 年 9 月 1 日)

メラウケ市近郊の入植地

(Waninggap Sai 村)

メラウケ市近郊の入植地

(Waninggap Sai 村)

灌漑水路

(Waninggap Sai 村) 灌漑用の水路兼貯水池

(Waninggap Sai 村)

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調査地区写真

メラウケ食料基地開発事業 (2/4)

取水ゲート (Waninggap Sai 村)

舗装道路の建設

(Waninggap Sai 村)

メラウケ川に係るビアン橋

メラウケ川 (ビアン橋から上流を望む)

クンベ川橋梁建設 (既存の橋は崩壊した)

クンベ川橋梁建設

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調査地区写真

メラウケ食料基地開発事業 (3/4)

メラウケ港と入港中のコンテナ船

メラウケ港事務所

水田風景 (Hidup Baru)

水田風景 (Kebun Coklat 村)

入植者の家

(Hidup Baru 村) 入植者の家 (Kebun Coklat 村)

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調査地区写真

メラウケ食料基地開発事業 (4/4)

野菜を販売している農家に聞き取り

野菜栽培をしている篤農家に聞き取り

篤農家の野菜畑

籾の天日干し

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インドネシア共和国

案件形成予備調査報告書

西ジャワ州: ルンタン灌漑近代化事業

パプア州: メラウケ食料基地開発事業

まえがき

案件概要

調査対象地区位置図

調査地区写真

第1章 諸言

1.1 調査の背景 .................................................... 1

1.2 調査の目的 .................................................... 1

第2章 インドネシアの農業・灌漑セクターの現況と開発戦略

2.1 農業セクターの概観 ............................................ 2

2.2 灌漑セクターの概観 ............................................ 4

第3章 ルンタン灌漑近代化事業

3.1 近代化事業の背景と概要 ....................................... 7

3.2 事業対象地区の現況............................................. 7

第4章 メラウケ食料基地開発事業

4.1 食料基地開発事業の背景と概要 .................................... 12

4.2 事業対象地区の現況 ............................................... 13

第5章 総合所見

5.1 開発の課題 .................................................... 18

5.1.1 ルンタン灌漑近代化事業の課題 ................................. 18

5.1.2 メラウケ食料基地開発事業の課題 ............................... 19

5.2 事業実施に向けての提言 ....................................... 21

5.2.1 ルンタン灌漑近代化事業 ....................................... 21

5.2.2 ラウケ食料基地開発事業 ....................................... 22

添付資料-1 調査日程表と調査団員略歴

添付資料-2 面談者リスト

添付資料-3 収集資料リスト

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第1章 緒 言

1.1 調査の背景

インドネシア共和国(以下「イ」国)の農業セクターは対 GDP(名目)比で 15%(2009 年)、労働人口

で 41%(2009 年)を占める重要な産業であり、国内の貧困層の約 65%が農村部に居住している。主

食であるコメは近年の異常気象や通貨危機後の肥料・農薬の価格高騰等の外部要因によって生産

が不安定で、2007 年には約 140 万トンを輸入する事態に陥った。安定的なコメ生産による食料安全

保障が農業セクターの優先課題である。「イ」国政府はコメの自給を達成し食料安全保障を確保する

ために 1960 年代以来水田の灌漑開発に重点を置き、2009 年までに 710 万 ha の灌漑開発を達成

したが、人口の増加に伴い、コメの需要も増加しており、継続的な灌漑開発と生産性の向上が必要

である。政府は中期国家開発計画(2010-2014 年)の中で、2014 年までに 1,200 万トンのコメ増産を

目標として、50 万 ha の新規灌漑開発・拡張と 134 万 ha の既存灌漑施設改修を設定している。

都市化と工業化によるジャワ島の水田面積の減少は、「イ」国のコメ自給にとって深刻な問題とな

っている。また、施設は老朽化し、適切な維持補修作業の不足による水路内の堆砂や施設の損壊な

どによって灌漑効率は低下し実質灌漑面積は減少している。さらに、都市用水などの需要が急増し

ており、流域の統合的水資源管理を念頭においた灌漑水管理の合理化を含めた対策が必要となっ

ている。灌漑局はジャワ島における灌漑事業の改修モデルとして、西ジャワ州のルンタン灌漑近代

化事業を取り上げている。

将来の食糧危機に備えるためには、ジャワ島で水田面積が年々減少する中で、外島での農業開

発を加速する必要がある。とりわけ、未開発地が広がるパプア州は有望である。最近、農業省が中心

となってパプア州のメラウケ地区で食料基地開発を計画している。メラウケ地区の土地利用図をもと

にした約 120 万 ha の民活型農園開発構想であるが、道路や灌漑などの基礎インフラが未整備であ

ることから、PPP事業を前提としたマスタープラン調査が必要と考えられている。

以上のことから、今回の調査では次の 2案件を取り上げた。

西ジャワ州 : ルンタン灌漑近代化事業(90,000ha)

パプア州 : メラウケ食料基地開発事業(1,200,000ha)

1.2 調査の目的

本調査の目的は、大型灌漑事業の改修モデルとして期待されている西ジャワ州のルンタン灌漑

近代化事業、および将来の食料基地として注目されているパプア州のメラウケ食料基地開発事業に

ついて、「イ」国政府の意向を確認し、地方政府および関係者とともに、現場踏査を通して開発計画

策定に必要な調査項目の確認を行い、開発調査項目・内容とその調査プログラムを形成することで

ある。

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- 2 -

第2章 インドネシアの農業・灌漑セクターの現況と開発戦略

2.1 農業セクターの概観

(1) 農業セクターの現況

農業統計資料によると、2009 年の全国の水田面積は約 805 万 ha、このうち灌漑水田が約 530

万 ha、天水田が約 167 万 ha、湿田が約 108 万 ha である。灌漑水田は、大きい順に、ジャワ島で約

250 万 ha、スマトラ島で約 135 万 ha、スラウェシ島で約 78 万 ha であり、この 3 島で全体の約 9 割を

占めている。

灌漑水田 非灌漑水田 地域

機能 非機能 小計 天水田 湿田 小計 合計

スマトラ 1,195 155 1,350 443 633 1,076 2,426

ジャワ 2,423 73 2,496 711 7 718 3,214

バリ&ヌサテンガラ 340 44 384 17 0 17 401

カリマンタン 201 58 259 318 416 743 993

スラウェシ 632 152 784 174 1 175 959

マルク&パプア 22 7 29 7 23 30 59

全国(合計) 4,813 489 5,302 1,670 1,080 2,750 8,052

(出典)Agricultural Statistics 2010, Ministry of Agriculture & Database of Directorate of Irrigation, PU

下表に示すとおり、コメ生産量の不足分を輸入で補っていると仮定すると、インドネシアは概ねコ

メの自給を達成していると言えるが、2007 年のように旱魃や洪水に見舞われると、100 万トン以上の

コメを輸入することになる。

項目/西暦 2004 2005 2006 2007 2008

水稲生産量 (千トン) 51,073 51,137 51,443 52,859 56,953

陸稲生産量 (千トン) 2,897 2,833 2,807 2,958 3,180

種籾保存量 (千トン) 835 827 821 824 837

籾の生産量(千トン) 53,117 53,143 53,429 54,993 59,296

換算係数 0.566 0.566 0.566 0.566 0.566

コメの総供給量(千トン) 30,064 30,079 30,241 31,126 33,562

コメの輸入量(千トン) 237 190 438 1,407 290

人口(千人) 216,382 219,852 222,747 225,642 228,523

1人当たり消費量(kg) 140.0 137.7 137.7 144.2 148.1

(出典)Production: BPS & DEPTAN, Population & Import: BPS, Conversion factor: DEPTAN & BULOG

以下、農業統計から 2009 年の主要作物の生産量をみると、米(籾)が 6440 万トン(平均収穫高

4.9 トン/ha)、メイズが 1763 万トン(平均収穫高 4.2 トン/ha)、大豆が 97 万トン、(平均収穫高 1.3

トン/ha)、落花生が 78 万トン(平均収穫高 1.2 トン/ha)である。

米(籾)の生産量は、ジャワ島で 3,074 万トン(平均収穫高 5.70 トン/ha)、スマトラ島で 1,329 万ト

ン(平均収穫高 4.40 トン/ha)、スラウェシ島で673万トン(平均収穫高 4.80 トン/ha)であり、この 3 島

で全体の約 9割を占めている。

一方、2009 年のエステート作物は、油ヤシが 1864 万トン、ココナッツが 326 万トン、ゴムが 244

万トン生産されている。 これにカカオ 81 万トン、コーヒー68 万トンが続いている。

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(2) 農業セクターの開発戦略

農業省の中期 5 ヵ年開発計画 (2010 年~2014 年) で設定された食料安全・農業再活性化政

策は、「食料安全と食料自給の増大ならびに国民への適切な栄養認識の拡大」および「農林水産物

の市場競争力の実現、農家収入の増加ならびに天然資源と生活環境の保全」の 2 点に主眼をおい

ている。食料安全・農業再活性化を目指す戦略的手段として、以下の 5項目に焦点をあてている。

1) 食料生産性・生産量を持続的に改善し、食糧および加工原料の入手可能性を高めること 2) 食料流通効率性を改善し、すべての家庭が長期にわたり購入しやすい価格で食料を質・量ともに十分に手当てできるように保証すること

3) 食料安全確立政策・戦略に即して国民の食料の作付け体系・品質基準・多様化・栄養含有量・安全性を適切に留意しつつ、食料消費需要の充足を改善すること

4) 農林水産物の付加価値・競争力・市場開拓を増強すること 5) 農林水産業従事者の能力を向上すること 上記の国家戦略を踏まえ、農業セクター中期 5 か年計画 (2010 年~2014 年) において、1) 農

地、2) 育種・育苗、3) 農業インフラ、4) 人的資源、5) 農家家計、6) 農民組織、7) 技術・農産加工

の 7項目を対象に農業再活性化基本戦略が設定された。

中期 5 か年計画期間中に農業再活性化基本戦略を具現する各種プログラムを実行し、主要農

産物の増産目標の達成を目指す。

品目 2009年

(百万ton)

2014 年 (百万 ton)

増産年率 (%)

コメ(籾ベース) 63.84 75.70 3.22 トウモロコシ 17.66 29.00 10.02 大豆 1.00 2.70 20.05 砂糖 2.85 4.81 12.55 牛肉 0.40 0.55 7.30

(出典)農業省中期5ヵ年開発計画(2010-2014)

現行の農業セクター中期 5 ヵ年開発計画 2014 年の地域別農産物生産量の目標値は、以下の

ように設定されている。

コメ(籾) メイズ 大豆 砂糖キビ 野菜 果実 商品作物 牛肉 地域 / 品目

(千ton) (千ton) (千ton) (千ton) (千ton) (千ton) (千ton) (千ton)

スマトラ 16,968 6,513 495 1,497 765 3,990 24,421 130

ジャワ 40,096 14,881 1,504 3,145 2,050 6,825 81 291

バリ・ヌサテンガラ 3,878 1,855 319 0 218 960 281 36

カリマンタン 5,499 489 83 0 59 924 8,285 38

スラウエシ 8,934 5,201 265 164 224 1,364 2,663 41

マルク・パプア 325 61 34 0 38 144 1,275 10

全国計 75,700 29,000 2,700 4,806 3,354 14,207 37,006 546

(出典)農業省中期5ヵ年開発計画(2010-2014)

注:野菜;トウガラシ・赤タマネギ・ジャガイモ

果実;マンゴー・バナナ・柑橘類・ドリアン

商品作物;ゴム・オイルパーム・カカオ・ココナッツ・コーヒー

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これらの数値目標達成には既存農地面積からの生産量のみでは不足が見込まれるため、新た

に全国で 200 万 ha の農地開墾を目指し、以下のように地域別目標を設定している。

水田 畑地 果樹園 永年作物 放牧地 牧草地 合計 地域 / 品目

(ha) (ha) (ha) (ha) (ha) (ha (ha)

スマトラ 77,450 128,500 119,655 181,955 103,895 3,670 615,125

ジャワ 50 150 13,340 14,525 16,070 0 44,135

バリ・ヌサテンガラ 14,760 24,420 24,580 26,225 20,455 1,120 111,560

カリマンタン 44,440 64,050 72,655 105,600 58,370 2,320 347,435

スラウエシ 55,890 90,700 87,430 130,800 75,920 3,420 444,160

マルク・パプア 57,410 92,180 82,340 126,325 76,290 3,040 437,585

全国合計 250,000 400,000 400,000 585,430 351,000 13,570 2,000,000

(出典)農業省中期5ヵ年開発計画(2010-2014)

2.2 灌漑セクターの概観

(1) 灌漑セクターの現況

農業セクターの現況で述べているように、2009年時点の全国灌漑水田面積は約805万haである。

このうち実際に灌漑が行われた水田面積は約480万haであり、約50万haの灌漑水田は施設の整備

不良等の理由により灌漑が行われていない。その傾向は、スラウェシ島やスマトラ島で顕著である。

将来の灌漑開発の有力候補である天水田は全国で約167万haであり、ジャワ島、スマトラ島、カリマン

タン島に広く分布している。

下表に示すとおり、ジャワ島では毎年約2.4万haの灌漑水田が他用途へ転用されている。これは

過去の投資や効率的な土地利用の観点からは国家にとって大きな損出である。ジャワ島以外では

灌漑水田面積に大きな変動は見られない一方、非灌漑水田は年平均4.3万haのペースで増加して

いる。この傾向は今後も続くと考えられることから、インドネシアのコメ生産を維持していくためにはジ

ャワ島以外での灌漑開発を継続的に実施する必要がある。

農地の増減(2000-2005), (‘000ha) 農地の増減(年平均), (‘000ha)

灌漑水田 非灌漑水田 合計 灌漑水田 非灌漑水田 合計

スマトラ +67 +161 +228 +13.4 +32.2 +34.6

ジャワ -119 +10 -109 -23.8 +2.0 -21.8

バリ&ヌサテンガラ +17 +98 +115 +3.4 +19.6 +23.0

カリマンタン -34 +62 +28 -6.8 +12.4 +5.6

スラウェシ -47 -25 -72 -9.4 -5.0 -14.4

マルク&パプア NA NA NA NA NA NA

全国(合計) -116 +216 +98 -23.2 +42.8 +19.6

(出典)Agricultural Survey BPS

一方、公共事業省が設定した灌漑セクターの2005-2009年の中期5ヵ年開発計画は下表に示すと

おり、概ね達成できたと言える。

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サブセクター 活動/指標 目標(2005-2009) 成果(2009暫定) 達成率

1. 水資源開発 貯水池の建設 ダム 11箇所 13箇所 118%

/維持管理 ため池 350箇所 428箇所 122%

頭首工/ため池の改修 360箇所 76箇所 21%

頭首工の建設 272箇所 296箇所 109%

貯水池の維持管理 121箇所 119箇所 98%

2. 灌漑開発 表流水灌漑 新規/拡張 560,000 ha 525,005 ha 94%

/維持管理 改修 1,516,748 ha 1,571,263 ha 104%

O&M 2,100,000 ha 1,718,080 ha 82%

地下水灌漑 新規/拡張 6,000 ha 9,413 ha 157%

改修 5,350 ha 8,863 ha 166%

O&M 8,000 ha 10,073 ha 126%

湿地灌漑 改修 800,000 ha 675,354 ha 84%

O&M 1,100,000 ha 447,240 ha 41%

(出典) Concept Strategic Plan Water Resources 2010-2014, DGWR, DPU, May 2009

上記の目標達成においては、プロジェクトタイプセクターローンII(PTSL-II)や小規模灌漑管理事

業(DISIMP)などの我が国ODAが大いに貢献している。

(2) 灌漑セクターの開発戦略

公共事業省の中期 5 ヵ年開発計画(2010-2014)では、灌漑セクターにおける戦略目標として国

家食糧安全保障への貢献が取り上げられている。具体的な数値目標は次のとおりである。

番号 開発戦略 数値目標

1A ダム建設による貯水容量の増大 1,100 MCM

1B O&M改善による既存ダムの貯水容量の維持 12,500 MCM

2 水資源の涵養および保全 -

3A 新規の表流水灌漑開発 500,000 ha

3B 既存灌漑施設の改修 1,340,000 ha

3C O&M改善による既存灌漑施設の機能維持 2,300,000 ha

4A 新規の地下水灌漑開発 1,050 ha

4B O&M改善による既存地下水灌漑施設の機能維持 43,840 ha

5A 新規の湿地灌漑開発 10,000 ha

5B O&M改善による既存湿地灌漑施設の機能維持 1,200,000 ha

(出典) 公共事業省中期5ヵ年開発計画(2010-2014)

灌漑セクターの地域別の現状/課題と開発戦略を下記に示す。

地域 現状・課題 開発戦略

スマトラ ・ この地域のコメ生産量は需要を上回って

いることから、ジャワ島やバリ島へのコメ

供給地域として位置づけられている。

・ スマトラ島には頭首工や水路網が部分

的に未完成の灌漑システムが残ってい

る。

・ 既存灌漑事業において、その機能を維

持し、生産性を向上させるため、既存灌

漑施設の改修/改善を推進する。

・ 並行して、既存の水資源や土地資源を

最大限活用するため、天水農地を対象と

したダム灌漑事業を推進する。

ジャワ ・ ジャワ島は、インドネシアのコメ生産の大

部分を担っている。

・ 乾期に利用できる水資源は限られてお

・ 既存灌漑システムの改修と改善、及び水

需要の深刻化を回避し、水利用効率を

改善し、現在の高い生産性を維持する

ための水管理の改善を推進する。

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地域 現状・課題 開発戦略

り、不足している。

・ 都市化の影響を受けて、年平均約

20,000ha の規模で灌漑面積が毎年減少

している。

・ ジャワ島の水資源は乾期に限りがあるの

で、貯水池の有効利用はきわめて重要

である。従って、ダムを水源とする大規模

灌漑事業の改修や近代化を推進する。

バリ・ヌサテ

ンガラ

・ この地域のコメ生産量は需要まで達して

いない。

・ この地域の一人当たりの収入はインドネ

シアの中で最低であり、その貧困率は都

市部と農村部とも極めて高い。

・ 貧困削減や地域格差是正のため、持続

的な方法で雇用機会を創設するための

特別な配慮が必要である。

・ コメ自給率を上げるため既存灌漑施設

の改善/近代化を推進する。

・ 雨期の限られた水資源を有効活用する

ため、ダム灌漑事業を推進する。

カリマンタン ・ この地域は水資源や土地資源が豊富で

あるにもかかわらず、灌漑は未だ広く普

及してない状況である。

・ コメ自給率を上げるため、既存灌漑施設

の改善や新規灌漑開発が必要な地域で

ある。

・ 中小規模の新規灌漑開発や既存灌漑

施設の改修・近代化を推進する。

スラウェシ ・ この地域は、ジャワ島やバリ島などのコメ

不足地域への供給基地として位置づけ

られている。

・ 乾期の水資源に余裕があり、天水田が

未だ広く残っている。

・ コメ供給地域としての位置づけを維持す

るためにダム灌漑事業や既存灌漑施設

の改修・改良を推進する。

マルク・パプ

・ この地域のコメ生産は需要に追いついて

いない。

・ 農村部の貧困率はインドネシア中で極め

て高い。

・ コメ自給率、農家所得を上げるため灌漑

事業の推進が不可欠である。

・ コメ自給率を上げ、地域経済を活性化す

るため、中小規模の新規灌漑開発を推

進する。加えて、経済性を確保できれ

ば、大規模灌漑事業を推進する。

(出典) Identification Study Report, Executive Summary (2010-2014)

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第3章 ルンタン灌漑近代化事業

3.1 近代化事業の背景と経緯

ルンタン灌漑地区は、西ジャワ州のチマヌーク川の下流域に位置し、チレボン、インドラマユ、マ

ジェレンカの3つ県(Kabupaten)に広がっている。現在、総灌漑面積は 87,800ha であり、右岸地区

にゲジェシック(19,996ha)とシンドゥプラジャ(31,392ha)、左岸地区にインドゥックウタラ(16,072ha)と

インドゥックバラート(19,980ha)の4つの灌漑サブシステムで構成されている。

ルンタン灌漑事業の歴史は古く、オランダ統治時代の 1917 年頃に整備されたと言われている。

1961 年にはルンタン頭首工および灌漑用排水路網の改修が行われている。また、1981 年には世銀

ローンでルンタン頭首工の新設(可動堰タイプ)と導水路が改修されている。灌漑施設の大部分は

1961 年の改修から 50 年以上経過して老朽化が進んでいる。現況では、乾期の灌漑用水が大幅に

不足しているため、作付け強度は 150%程度に止まっている。この状況を改善するため、チマヌーク

川上流に中国政府の資金援助によるジャティゲデ多目的ダム(有効貯水量 877 MCM)の建設が

2007 年に開始されている。同ダムは 2013 年に完成予定である。ダム完成後、その水資源を有効活

用して最大の効果を上げるためには、年間を通じて安定した農業生産を挙げることが必要である。そ

のためには、老朽化した灌漑施設の改修のみならず、適正なデータに基づくテレメータリングなどの

管理システムの導入や整備した資産を良好に維持管理するためのアセットマネージメントが不可欠

であり、その必要性と緊急性は極めて高い。

水資源総局は、2009 年 10 月から 2010 年 1 月まで、実施中の円借款事業(PTSL-II)の資金を

一部利用して、インドネシア中・西部 12 州における優先事業候補案件の選定を目的とした案件形

成調査を実施している。この中から、最優先事業としてルンタン灌漑近代化事業を選定し、早期の実

施を望んでいる。

3.2 事業対象地区の現況

(1) ジャディゲデ多目的ダム

ジャティゲデ多目的ダムは、スメダン県ジャティゲデ郡ジャティゲデ村に位置し、ルンタン頭首工

から約26km上流のチマヌーク川本流に位置している。ジャディゲデダムは、洪水被害の軽減に加

えて、発電 690GWh/年、灌漑 90,000ha および上水 3.5 トン/秒の供給を目的としている。ダムの建

設は 2007 年 8 月に着工し、2013 年 12 月に完成予定である。2010 年 8 月時点での工事進捗はほ

ぼ計画通りの 29%であり、仮排水路トンネル、洪水吐、ダム基礎のグラウト工事が行われていた。総

工事費は 2 億 4 千万ドル(約 200 億円相当)であり、その資金源として中国のソフトローンが利用さ

れている。ただし、発電施設は現在の工事契約には含まれていない。建設業者は中国企業とインド

ネシア企業 4 社の共同企業体で、コンサルタントは中国企業とインドネシア企業 5 社の共同企業体

である。現在建設中のジャディゲデ多目的ダムの技術諸元は下記のとおりである。

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構造物 項目 諸元

水源 河川 チマヌーク川

集水面積 1,100 km2

ダム 形式 中央遮水壁型ロックフィルダム

堤高 110 m

堤頂幅 12 m

堤体長 1,715 m

堤体積 6,700,000 m3

堤頂標高 EL.+265 m

設計洪水位 EL.+262 m

満水位 EL.+260 m

最低取水位 EL.+230 m

貯水池 貯水池面積 4,122 ha (設計洪水時)

総貯水量 980 百万 m3

有効貯水量 877 百万 m3

洪水吐 形式 ゲート付シュート型

堰長 52 m

堰頂標高 EL.+247

ゲート ラジアルゲート 4 門(幅 13m、高 14.5m)

仮排水路トンネル 形式 半円形コンクリート被覆

設計洪水量 3,200 m3/s

トンネル 直径 10m、長 546m

灌漑用取水施設 鉄筋コンクリート樋 長 166m、幅 3.9m、高 4.1m

最低取水位 EL.+221 m

設計取水量 61m3/sec

(出典)Pamphlet of Pembangunan Bendungan Jatigede, DPU

(2) ルンタン頭首工

ルンタン頭首工はマジェレンカ県ジャティツジュ郡ルンタン村に位置している。ルンタン頭首工は、

オランダ統治時代の 1917 年に角落型簡易堰として現在の頭首工の約 580m上流に建設された。そ

の後 1961 年に改修が行われ、1981 年に世銀の援助を受けて現在の位置に全面可動堰として新設

されている。ルンタン頭首工の技術諸元は下記のとおりである。

構造物 項目 諸元

水源 河川 チマヌーク川

集水面積 600 km2

ルンタン頭首工 形式 可動堰タイプ、両岸取水

堰長 94.1 m

堰幅 27.0 m

堰頂標高(洪水吐) EL.+19.0 m

堰頂標高(土砂吐) EL.+17.0 m

設計取水位 EL.+23.5 m

設計洪水量 1,500 m3/s

洪水吐ゲート ラジアルゲート 6 門(幅 10m、高 4.925m)

土砂吐ゲート(上部) ホイールゲート 4 門(幅 5m、高 4.6m)

土砂吐ゲート(下部) ホイールゲート 4 門(幅 5m、高 2.5m)

取水施設(右岸) 設計取水量 56.0 m3/s (最大 79.40 m3/s)

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構造物 項目 諸元

取水ゲート ラジアルゲート 4 門(幅 7.2m、高 3.0m)

EL.+20.8 m

沈砂池 長 310m、幅 60m、勾配 0.007

排砂ゲート ホイールゲート 4 門(幅 6.0m、高 2.3m)

排水路 幅 27.3 m

取水施設(左岸) 設計取水量 36.0 m3/s (最大 62.20 m3/s)

取水ゲート ラジアルゲート 4 門(幅 5.5m、高 3.3m)

EL.+20.5 m

沈砂池 長 420m、幅 39m、勾配 0.007

排砂ゲート ホイールゲート 4 門(幅 5.0m、高 2.3m)

排水路 幅 23.3 m

ゲート操作室 コンクリート2階建て、ゲート制御盤等

(出典)Handout of Rentang Barrage, DPU

頭首工の諸施設は比較的良好に維持されているものの、ゲート制御施設は老朽化が著しく、ゲ

ートの開度調整等はオペレーターの勘に頼っている状況である。設置から 30 年経過してスペアパ

ーツもないことから全面的な取替えが必要な状況である。過去に発生した洪水の影響で、頭首工上

流の河川堤防が一部損壊しているため、現在は計画取水位よりも 1m低い、EL.+22.50m で取水して

いる。このため、右岸側では設計取水量 56m3/s に対して実績 35m3/s、左岸側では設計取水量

36m3/s に対して実績 25m3/s である。その結果、計画取水量の 65%程度しか灌漑用水が確保でき

ない状態が続いている。

沈砂池は設けられているが、濁水となる雨期中も河川から取水するため、幹線水路への土砂流

入は避けられない。河川からの土砂流入と水路斜面の侵食・崩壊のため水路内の堆砂が問題となっ

ている。

(3) 幹線水路

灌漑水路網は 1917 年頃に整備され、1961 年に全面的な改修が行われている。1980 年代には

灌漑施設リハビリの詳細設計が行われたものの、これまで大規模な改修工事は行われていない。幹

線水路系の基本諸元は下記のとおりである。

構造物 項目 諸元

灌漑施設(右岸) 幹線水路長 96.37 km

二次水路長 556.69 km

幹線水路構造物 94 箇所

二次水路構造物 799 箇所

(出典)Data from BBWS Cimanuk-Cisanggarung

幹線水路はライニングなしの土水路が主体である。土水路では経年の劣化によって至るところで

法面崩壊がみられ、その都度、法面整形や補強を行って水路堤防の決壊を防止している。また、調

整ゲートの上下流部は練石積み護岸工が設置されているが、石積み背面に空洞ができている箇所

が散見される。

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土砂流入は水路内での土砂が堆積し通水の阻害を生じるので、定期的な土砂排除が必要であ

るが、量が大きくなると通常の維持管理では排除が困難となる。土砂の流入防止のためには、洪水

時の取水をやめる必要があるが、取水を停止した場合には水路の水位が急低下するため法面が崩

壊するおそれがあるので、土水路は崩壊防止のための補強が必要となっている。

灌漑事業は、当初貯水池などの水源を持たない事業で雨期の水稲作の補給用水として計画さ

れた。その灌漑施設が乾期にも利用され、地区の 50%で乾期稲作が普及したが、灌漑地域の生産

力の増大をはかるために、乾期水稲作を 100%と地区全域に拡大する計画である。一般に雨期の補

給水の灌漑施設は乾期に必要とする水量よりも小さいため、水路の通水量も大きくしたり、輪番かん

がい方法を導入する必要がある。既存かんがい施設の通水能力を高めるためには、通水断面を確

保する必要があるが用地などの問題で困難さを伴う。通水能力を向上するための方策としては、水

路のライニングなどによる粗度の改善などが考えられる。

幹線水路系の水管理は、幹線、幹線水路に設けられた調整ゲートにより水位を制御し、分水工

ゲートにより分岐する幹線や二次水路への分水量を調整する方法となっているが、すべてマニュア

ルとなっている。分水の決定方法、具体的な操作方法は明確ではないが、乾期の収穫状況を見て

いると、上流で優先的に使用するため、下流への流下量が少なく、下流農民は乾期灌漑用水を取

水できない状況である。

(4) 末端水路

これまでに末端の三次水路系についても整備が進められている。近代的な水路では三次水路へ

の分水は二次水路から行い用水管理を適正に行うこととされているが、水路が設計施工された年代

が古いため、幹線水路から直接三次水路への取水が行われている地点が多い。特に、この地区の

場合、破損した取水ゲートから過大な取水が行われているケースが散見され、結果として下流への

必要な送水量が確保できないといった問題が生じていることから、水管理組織による適正な操作、管

理が必要と考えられる。

(5) 農民組織

2008 年時点において、計画の約 80%に相当する 485 の水利組合(P3A)が形成・登録されている。

先進的な地域では、水利組合連合(GP3A)が組織され、共同で三次水路の維持管理が行われてい

るところも見受けられるが、全体的には三次水路の管理主体となる水利組合(P3A)や水利組合連合

(GP3A)の強化が必要である。協同組合連合(GPOK)が組織化されている地区もあり、有機肥料の

生産・販売などを行っているが、地区全体にこれらの組織の強化が重要と思われる。

(6) 土地利用と農業・内水面漁業・洪水

現在の作付面積は、雨期の稲作 87,440ha、乾期の稲作 39,832ha と畑作 6,606ha の合計

133,878ha となっている。乾期は用水不足のため作付けは上流部に限定されている。灌漑対象面積

が 87,812ha であることから、作付け強度は 152%である。単位収量はそれぞれ 5.67ton/ha、

5.83ton/ha、4.00ton/ha である。

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土地利用をみると、インドラマユ周辺で宅地化が顕著であるが、主要道路沿いや集落周辺部でも

虫食い的に宅地化が進行している。養魚池はチマヌーク川河口付近や北西部の沿岸部で拡大傾

向にある。洪水常襲地区はチマヌーク川沿いの一部および北西部の沿岸部に広がっている。

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第4章 メラウケ食料基地開発事業

4.1 食料基地開発事業の背景と概要

(1) 計画の背景

パプア州メラウケ県の未利用地を開発し、100 万 ha 規模の農地開発を行うといった構想は 1990

年代から提案されている。しかし、現時点では、およそ 3.7 万 ha が開発され、そのうち 2.6 万 ha が

利用されているに留まっている。

このような状況下、2009 年 7 月にユドノヨ大統領が再選され、政権発足後、直ちに取り組むべき

政策を取り纏めた「100 日プログラム」を同年 11 月に公表した。この中に「フード・エステート推進の

ための政令の策定」が盛り込まれ、「メラウケ食料基地開発計画」が脚光を浴びることとなった。

(2) 計画の概要

開発計画(Merauke Integrated Food and Energy Estate Development Plan: MIFEE)は、Grand

Design として農業大臣とメラウケ県知事間で 2010 年 6 月にメラウケ食料エネルギーエステート総合

開発計画として合意された。

短期目標として下表のとおり、2010 年からの 5 年で 43 万 ha の農地の開発、長期計画として 20

年でおよそ 130 万 ha の開発を行うことを計画している。関係省庁とその役割は下表のとおりである。

経済調整省 大臣が開発計画取り纏めの責任者

農業省 食用作物、油用作物、畜産開発

公共事業省 道路網、橋梁建設、灌漑施設の整備

運輸省 港湾、空港の整備

エネルギー省 地下資源、ガス開発

林野庁 森林開発の許認可

メラウケ県 実施機関

その他:財務省、水産省、移住省、内務省などが関与

国の役割は、開発計画の策定、開発用地の貸与、開発許可を行うことである。道路、かんがいな

どの基幹インフラは、基本的には国あるいは地方政府が整備を行う必要があるが、具体的な整備計

画や、資金計画の積算根拠は明確ではなく、上表にある関係諸機関の調整・連携もとれているとは

言い難い状況にある。

なお、計画実施に際しては、地区の土壌や湿地などの自然条件を踏まえた上で地区を選定し、

地域ごとの土地利用、農業開発方針を定めているとしている。開発は 2014 年までの短期、2019 年

までの中期、そして 2029 年までの長期計画に分け、さらに 10 地区からなるゾーニングを行っている。

短期の 2014 年までの開発では、政府が経営するエステート企業の参加などを得て、強力な推進組

織を形成して進めることとしている。その開発地域も利便性の高い県庁所在地の周辺地域を中心と

して、短期に実行可能な地域を選定して実施することなど段階的な開発を進めることとしている。

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4.2 事業対象地区の現況

今回の踏査及び政府関係者等へのインタビュー結果に基づいて取り纏めた事業対象地区の現

況を以下に記す。

(1) 位置及び地形

メラウケ県は、東経 137 度 30 分から 141 度 00 分、南緯 6 度 00 分から 9 度 00 分の間に位置す

る。すなわちパプア州の南部にあって、南部西部はアラフラ海に面し、北はマッピ県、ボベン・ディゴ

エル県に接し、東はパプアニューギニア国との国境に位置している。地質構成でみると、中央高地

の砂岩、凝灰岩、変成岩等を母材とする沖積地帯となっている。

(2) 土壌、土地利用

対象地区はイリアンジャヤ南部の氾濫減地域に位置し、その土壌は沖積あるいは植物由来の有

機質の体積物を母材としている。これらの土壌は、米国農務省の土壌分類区分では以下の土壌に

属する。

海浜の砂丘または海岸平野 Quartzipsammannts and Tropopsamments 砂土

潮汐沼沢地 Sulfaquents and/or Sulfaquepts 潜在硫酸酸性土

氾濫減 Tropofulvents, Hydaquepts and/or Haplaquents

沖積土

沼沢地 Tropohemists and/or Tropofibrists 泥炭土

植生は、概ね海浜に沿った地域は森林を形成しており、入植地のある地域にはココナツノ植林が

見受けられる。各河川の河口部喫水域にはマングローブが繁茂している。内陸部の潮汐沼沢地域

は、マングローブやニッパヤシが自生している。泥炭の発達した地域では、混成林が発達し、また湿

性草本類が繁茂している。

対象地区内では、国家移住計画による入植が行われ農地が開発されている。しかし、水田の場

合、計画 37,000ha が開発済みであるが、実耕作は約 2 万 ha 台に留まっており、入植者の離村も見

受けられる。現況の土地利用状況は下表のとおりである。

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利用率

可耕地 作付地 未利用地 (%)1 Merauke 1,450 943 507 65.03%2 Muting 3,000 381 2,619 12.70%3 Okaba 277 212 65 76.53%4 Kimaam 776 598 178 77.06%5 Semangga 4,998 4,683 315 93.70%6 Tanah Miring 7,838 6,310 1,528 80.51%7 Jegebob 5,933 1,868 4,065 31.48%8 Sota 872 135 737 15.48%9 Ulilin 900 253 647 28.11%

10 Elikobel 1,380 468 912 33.91%11 Kurik 6,963 5,730 1,233 82.29%12 Naukenjeray 377 366 11 97.08%13 Kaptel 25 11 14 44.00%14 Tubang 5 0 5 0.00%15 Ngguti 5 0 5 0.00%16 Tabonji 47 47 0 100.00%17 Waan 30 25 5 83.33%18 Ilwayab 45 45 0 100.00%19 Malind 3,290 3,202 88 97.33%20 Animha 191 182 9 95.29%

Total 38,402 25,459 12,943 66.30%出典:Division of Land Dvelopment and Plant Protection, May 2010

No. 郡 耕地分類 (ha)

(3) 気象・水文

対象地域の気候は、熱帯モンスーン気候に分類される。降雨量は季節風の影響を受け、10~11

月から 5~6 月にかけての雨季と、その間の乾季の明瞭な季節変化が見られる。降雨量は、海岸地

帯から中央高地に向かうにつれて増加の傾向を示す。近年は、降雨パターンに変化が見られまた、

これまでは 1,700mm 程度とされた降雨量に関しても変化が見られる。年間日射量は 1,700~2,200

時間、年間蒸発量は 1,560mm と推定される。なお、最高気温の平均は 30℃程度で、乾季が 30℃を

下回る傾向にある。

対象地域の主要河川は以下のとおりである。

河川名 流域面積 (km2)

算定流量 (m3/sec)

年流出量 (mm/年)

ディグール 32,330 1,500 1,464 ビアン 9,000 200 700 ブラカ 4,900 クンベ 4,000 マロ 4,250 183 1,350 出典:RePPProT調査報告書

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海水遡上は、乾季は各河川河口部から 40~60km 内陸にまで達する。河川水位に対する潮汐

の影響は、概ね 50~70km 上流に及ぶ。

(4) 社会経済状況

メラウケ県の行政他は、20 の郡で構成されている。次表のとおり、2010 年の総人口は、228,367

人で男性が 120,378 人(およそ 52.7%)、女性は 107,989 人(およそ 47.3%)となっている。世帯数は、

55,231 戸であった。

総人口のほぼ半数(およそ 45%)は、メラウケ市に居住している。対象地域における人口の分布、

密度は地域の開発程度やアクセサビリティーの影響を受けている。特に、陸上交通網の整備が極端

に遅れていおり、河川や海洋交通が支配的で、内陸部の開発が遅れている。

2008 年のメラウケ県の地域内総生産(GRDP)は、2 兆 6860 億ルピーに達した。1 人当りでは

1,420 万ルピーと見積もられる。

メラウケ県の産業別経済状況に関しては、下表 5 年間の地域内総生産(GRDP)の推移が示すと

おり、農業に大きく依存していることが明らかである。多少古いデータではあるが、2002 年から 2006

年までの 5 年間の主に漁業、作物生産、畜産から成る農業セクターの占有割合は 56.6%であった。

徐々に割合が低くなる傾向にはあるが、依然として農業セクターが対象地区の主要な産業であること

戸数

男 女 合計

1 Merauke 54,758 49,644 104,402 24,2102 Muting 2,762 2,523 5,285 1,2183 Okaba 2,722 2,442 5,164 1,2404 Kimaam 3,725 3,426 7,151 1,6005 Semangga 7,315 6,558 13,873 3,6846 Tanah Miring 9,862 8,492 18,354 4,6487 Jegebob 4,830 4,154 8,984 2,4948 Sota 1,671 1,514 3,185 7589 Ulilin 2,606 2,271 4,877 1,232

10 Elikobel 2,450 2,018 4,468 1,09711 Kurik 7,902 6,936 14,838 4,07612 Naukenjeray 1,156 1,094 2,250 50213 Kaptel 928 884 1,812 36414 Tubang 1,473 1,352 2,825 66315 Ngguti 1,080 965 2,045 40216 Tabonji 3,149 2,883 6,032 1,42817 Waan 2,283 2,108 4,391 1,07818 Ilwayab 3,007 2,629 5,636 1,29619 Malind 5,425 4,931 10,356 2,72120 Animha 1,274 1,165 2,439 520

Total 120,378 107,989 228,367 55,231出典:Demography and Civil Registry Office of Merauke Regency

Ground Design, Food and Energy Estate Development in MeraukePapua, June 2010, p8

No. 郡 人口

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は否めない。2006 年の農業セクターの内訳は、漁業が 39.5%、作物生産が 8.5%、畜産が 3.2%であっ

た。漁業は近年減少の傾向にあるが、対照的に作物生産は増加の傾向にある。

(5) 農業の現状

作物生産

2009 年の米の収穫面積はおよそ 2 万 5 千 ha、生産量は、10 万トン(籾)を越えた。主な産地は、

Semangga、Tanah Miring、Kurik、Marind の各郡となっている。その他の主要な作物は、トウモロコシ、

キャッサバ、サツマイモ、ダイズ、ラッカセイ、サヤインゲン等である。野菜の栽培は、特にメラウケ近

郊で徐々に増加している。他方果実の生産は、年次変化は見られるが、ほぼ横ばいとなっている。

プランテーション作物

ココナツ、カシューナッツ等のプランテーション作物の栽培も盛んに行われている。2008 年にお

けるココナツの作付け面積は 5,900ha で、収穫量は 2,700 トンを越えている。カシューナッツの作付

け面積はおよそ 1,900ha、収穫量は、約 175 トンであった。この他に、コットンが栽培されている。

畜産

メラウケ県において、畜産が盛んな地区は、Kurik、Semangga、Tanah Miring、Merauke の各地区

である。これら主産地を含む、メラウケ県全体の 2008 年における家畜頭数、枝肉生産量等は下表の

とおりである

家畜 頭数 (頭、羽)

枝肉生産量 (トン)

卵生産量 (トン)

牛 23,474 562 豚 2,232 65 山羊 3,614 13 馬 1,654 水牛 902 68 鶏(ローカル) 281,202 164 87 アヒル 15,463 2 73 ブロイラー 16,543 15 産卵用鶏 9,800 64 出典:RePPProT調査報告書

(単位: %)No. サブセクター 2002 2003 2004 2005 2006

1 農林水産業 58.15 57.40 56.37 56.84 54.462 鉱工業 3.20 3.47 3.60 3.59 3.82

1) 鉱業 0.73 0.70 0.68 0.74 0.972) 工業 2.47 2.77 2.92 2.85 2.85

3 サービス業 38.65 39.13 40.03 39.57 41.721) 電気、水道 0.28 0.28 0.30 0.34 0.352) 建設 5.14 4.73 4.41 4.45 6.093) 貿易、ホテル、外食 6.60 7.00 7.77 8.54 10.014) 運輸、通信 7.86 8.30 8.74 8.95 9.045) 金融、レンタル業、ビジネスサービス 1.79 1.77 1.71 1.81 1.236) その他サービス業 16.98 17.04 17.10 15.49 14.99

Total 100.00 100.00 100.00 100.00 100.00Source: GRDP of Merauke Regency, 2006

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林業

メラウケ県の森林はその機能によって次のように区分されている。

名称 面積(ha) 地目転換林 1,419,450 生産林 1,328,790 保安林 283,670 保全林 1,458,600

合計 4,707,720

農業、その他の目的で利用可能な面積は、地目転換林、1,419,450ha となっている。

漁業

メラウケ県の漁業生産高は、およそ 38,100 トン、価値にして 2,260 億円に達する。この内域内消

費は、2,900 トン程度となっている。漁業は、今後も養殖を含め、海水及び淡水域ともに大きな開発

の可能性がある。

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第5章 総合所見

5.1 開発の課題

5.1.1 ルンタン灌漑近代化事業の課題

(1) ジャティゲデダム地点における水収支の再検討

ジャティゲデダムの上流には、現在、ルイゴーン灌漑事業(5,313ha、改修 3,071ha と拡張

2,242ha)が建設中であり、2014 年に完成予定である。また、後述するとおりルンタン灌漑事業地区

内では都市化の影響で農地の転用が進んでいる。ジャティゲデダム地点におけるチマヌーク川上流

域からの流入量、また下流における水需要が変化しており、改めて水収支計算の検討が必要である。

更に、ジャティゲデダムは発電優先のオペレーションが計画されていることから、必ずしも灌漑用

水の需要を満たす計画となっていない。現地での情報によると、発電放流量として毎秒 61m3/s が

計画されている。灌漑優先のオペレーションとしない場合には、ジャティゲデダム下流に調整ダムを

建設するなどの対応が必要となる。

(2) 土地利用計画の策定

灌漑施設の部分改修が行われた 1991 年時点では、ルンタン灌漑地区は約 90,000ha であった

ことから、これまでに約 2,000ha の農地が宅地等の農外目的で転用されている。近年のチレボンやイ

ンドラマユの外延的発展や両都市を結ぶ有料道路の新設等により、農地の転用は今後急速に進む

と考えられる。ちなみに、ジャティルフール灌漑地区では都市化により 10,000ha 以上の農地が他用

途に転用されたと言われている。

ルンタン灌漑地区のチレボン、インドラマユ、マジェレンカの3つの県(Kabupaten)では、それぞ

れ将来の発展をイメージした空間設計を有しており、これらを調整して、地域全体の土地利用計画を

策定する必要がある。更に、この土地利用計画をもとに将来の灌漑用水、上水、商・工業用水などの

水需要を予測して、上述の水収支の再検討に反映させることが重要である。

(3) ルンタン頭首工を含む灌漑システムの改修・近代化

ルンタン頭首工を含む灌漑施設は長年の利用により老朽化が進んでおり、灌漑施設の改修の

必要性は高い。改修にあたっては、アセットマネージメントを念頭に置き、インベントリー調査の評価

結果にもとづき緊急度が高い施設群から改修することを提案する。また、これらの手法についての技

術移転も重要な業務と考える。

(4) ダムのオペレーションと連動した灌漑システムの効率的・効果的な運用

ルンタン灌漑では、これまで上流にダムがなかったことから、取水量は河川の流量に大きく依存し

てきた。そのため、チマヌーク川の流量が減少する乾期は灌漑用水が不足して、結果として年間の

作付率は 150%程度に留まっている。ジャティゲデダムが完成すると、河川流量は原則として、下流

での水需要に応じて調整されることになり、これまで以上に、水管理が複雑となり、ゲート操作の頻度

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が高まってくる。そのため、最新のICT技術を駆使したモニタリング・システムの導入による灌漑施設

の効率的・効果的な運用が必要である。

(5) 交通の便を生かした農産物流通システムの構築

ルンタン灌漑地区は首都ジャカルタとスマランの中間地点に位置し、それぞれ北部高速道路/鉄

道で結ばれている。 いずれも車で約 4~5 時間の距離である。農業を中心とした地域の活性化を

図るためにはこの交通の便を生かした農産物流通システムの構築が不可欠である。そのためには、

消費者本位の作物選定、安心・安全な作物の生産販売、付加価値をつけるための農産加工などに

注力する必要がある。現在は、コメの二期作が計画されているが、作物の市場性や収益性など総合

的な観点から、徐々に農業の多様化を進めてゆくことが重要である。

5.1.2 メラウケ食料基地開発事業の課題

(1) 開発計画の取り組み

インドネシア政府の開発への取り組み方向は、関係機関でかなり見解が異なるが、主務官庁にな

る農業省副大臣によれば、民間主導の開発で、基本的にはインフラを含めて民間投資で開発を進

める方針である。現状からは民間投資のみでは、インフラの整備は大きな困難があること、乱開発の

恐れがあることなどが懸念され、今後、実施段階では、政府からの支援策や調整などが必要になっ

てくるものと思われる。

また、海外投資家の動向も気がかりな点である。わが国も食料の安定的供給の観点から、海外か

らの食料の安定的な確保が必要であるが、中国なども自国の食料の確保のため海外に土地を求め

た行動が活発化してきている。本開発計画にも中国の投資家が参入しているようであり、こういった

状況で、わが国がどのような取り組みをしてゆくのかも、本開発の行方を左右することとなると考えら

れる。

(2) 計画の実効性

全体土地利用計画としてそれぞれのブロックごとに水稲、大豆、トウモロコシなどの畑作物、サトウ

キビ、オイルパーム、果樹などのエステート作物、畜産、養魚などを組み合わせた複合的な開発を計

画している。一方で、メラウケ県や関係部局では開発地の 50%が水田(水田は移住政策の新規開

発はしない)と畑作物(大豆、トウモロコシなど)、30%がサトウキビ、20%がオイルパームに配分されると

し、その配分は数量だけで、投資企業の意志でブロックごとの計画とは関係なく作物が選定されてい

る。しかし、灌漑などの必要なインフラ、地理条件、資源の循環利用などを考えた場合、地域ごとの

土地利用計画に基づきインフラの整備、投資企業が場所の選定、作物選定、資源の循環利用実施

といった確実な計画の実現をはかる必要があると思われる。このための、投資企業をどのように指導

してゆくのか、実施をどのように監視するのかなどの手順を定め、開発の許可ではこのようなガイドラ

インによる条件の設定やインフラ整備関係機関との総合調整が早急に必要と考えられる。

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(3) 計画の実現性

計画は既存データを基に作成されているが、フィールド調査によって確認する必要がある。また、

インフラ整備や湿地などの状況を把握して計画を立てるために必要な縮尺での地形図や水文デー

タも得られなかった。開発計画が有効であるためには、実態の把握が的確にできていることが欠かせ

ないので、既存データをアップデートするための現地調査、不足する地形図や水文データなどを調

査する必要がある。

(4) 開発のインパクト

投資企業へ配分された土地利用計画は、上記の全体計画に基づき作物の選定などを行う必要

がある。また、開発計画の青写真では、配分地区全部を農業土地利用とするよう考えられているよう

であるが、配分面積が3~5万 ha と大きく、開発によるインパクトが大きい、このため、たとえば配分

地域であっても、環境への配慮が必要と思われる。

また、地域社会へ与えるインパクトも大きい。外部投資家が中心となった開発では、地域社会へ

の裨益効果よりも環境悪化が大きくなることすら考えられる。このため環境のみならず、地域社会、地

域住民、地域経済へのインパクトも調査、評価する必要がある。

(5) 地域住民への支援

配分地域内には現地住民が生活している。このため、実際の土地開発では投資企業と地域住民

との軋轢が生じるおそれがある。全体計画期間は長いが、これらの地域住民との調整は開発上、重

要であり、地域住民のニーズ、開発後の具体的な生活設計を住民との合意形成をはかる計画が必

要である。また、地域の農民やローカル企業への裨益についても配慮する必要がある。

(6) 事業実施体制と調整

MIFEE 計画でも、政府関係機関の調整は重要な課題となっている。しかし、現実には中央省庁

間で、計画の調整が不十分で、具体的なかんがい計画がかんがい部局では立てられていない。中

央と地方の計画に対する認識にも隔たりがあり、開発は民間投資家任せの状況である。

(7) インフラ整備計画

交通網の整備は開発には欠かせない。この整備計画と資金の負担を明確にしなければならない。

現況は前述したとおりで、全体の計画との調和を図って整備を行わなくてはならない。なお、この地

域では、建設に必要な砂、土石などすべての資材は島外からの搬入になるので、その可否やコスト

についても検討する必要がある。また、交通網が貧弱であるので、河川を利用した舟運なども含めた

交通ネットワークを検討する必要がある。

(8) 灌漑計画

開発予定地域は、湿地、低平地が多く、既耕地も用水不足のみならず、排水問題もある。このた

め地区内に設ける水路は用排兼用の水路で、雨期には排水、乾期には用水確保が主目的になる。

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オイルパームなどの樹種作物で干ばつに強く、用水量も小さい場合には、地区内の水路に貯水機

能を持たせた施設とすることである程度の対応は可能と考えられる。このため、ディグル川からの導

水の必要性があるのかどうか、検討が必要である。

標高が比較的に高い地域では、重力灌漑で河川に水源を求めると、取水地点からの水路延長

が長くなるので、重力灌漑の他にポンプによる灌漑も考えられる。他方、塩水遡上や潮汐のデータと

解析が必要ではあるが、低地では潮汐を利用した貯留灌漑も、一考に値するものと思われる。低地

では、同時に、排水計画も重要となってくる。開発は輪中堤として周囲に堤防(道路を兼用している

ことが多い)を設け、排水路出口に防潮、排水のための樋門を設置するもので、インドネシアでも低

湿地開発で広く採用されているが、規模が大きくなると現況と計画での洪水氾濫が変わってくるので

解析が必要となってくる。

5.2 事業実施に向けての提言

5.2.1 ルンタン灌漑近代化事業

ルンタン灌漑近代化事業については、PTSL-II で実施した案件形成調査において最優先事業と

して取り上げられている。本事業は中期国家開発計画(2010-2014)に掲げる灌漑施設の改修・近代

化を通じた施設の機能維持、引いてはコメの増産に大きく貢献するものである。また、現在建設中の

ジャディゲデ多目的ダムは 2013 年に完成予定であり、ダム効果の早期発現のためにはルンタン灌

漑事業の近代化が不可欠である。以上のことから、本事業の早期実施が強く望まれる。

本事業では、老朽化した施設の整備のみならず、灌漑においては、適正な管理を実現するため

のデータに基づく管理としてテレメータリングなどの管理システムの導入や整備した資産を良好に維

持のためのデータベース化、資産適正管理手法の導入、幹線系、末端系の管理組織の強化などが

必要とされる。また、土地利用計画の見直し、生産力や生産性の向上と営農組織の強化し、かんが

いの有効性を持続的なものにすることが大切で、本地区は、そのモデルとして期待される。

本事業では、次の4つのコンポーネントの実施を提案する。即ち、1)灌漑施設近代化のための調

査・測量・設計(SID)コンポーネント、2)ハード(工事)コンポーネント、3)ソフト(教育訓練)コンポー

ネント、4)これらを包括的に実施・管理するコンサルタンの調達である。具体的には、

1) 調査・測量・設計(SID)コンポーネント

最新の情報やデータに基づいて、ジャディゲデダムへの流入量、ダムのオペレーションプラン、灌漑・上水・工業用水の需要を見直して、ダムにおける水収支計画を更新

する。

水源涵養の観点から、ジャディゲデダムの上流域保全計画を検討する。

チレボン、インドラマユ、マジャレンカ県の空間設計図と最新の衛星画像をもとに、事業地区全体の将来土地利用計画を検討する。

既存の幹線水路および二次水路の代表的なポイントで流量観測を行い、水路容量を確認する。

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詳細設計に必要となる最小限の幹線水路および二次水路の縦横断測量を実施する。

既存構造物のインベントリー調査・評価を実施し、その結果をデータベース化する。主要構造物は非破壊試験又はそれに相当する最新の方法で品質程度を確認するととも

にその対策を検討する。

上記の検討結果を踏まえて、近代化事業の詳細設計を実施する。

2) ハード(工事)コンポーネント

幹線水路および二次水路については、原設計の水路容量を回復することを目的として水路ライニングを行う。ライニングの方法は、コンクリート被覆工(現場打ち)、プレキ

ャストコンクリート、練石積など考えられるが、工期、コスト、施工性等を勘案して決定す

る。

主要な分水施設では量水施設(パーシャルフリュームや台形堰など)を設置し、流量計測を行う。

灌漑(送水)計画に従って、適切な水配分を実施するために、ジャティゲデダム、ルンタン頭首工および幹支線水路の主要分水施設には遠隔水位モニタリング・システムを

設置する。

3) ソフト(教育訓練)コンポーネント

遠隔水位モニタリング・システムと連動して、コンピュータによる灌漑計画策定、流量モニタリング、灌漑実績の評価を行うシステムを開発し、導入する。

O&M に係る組織・制度の強化を行う。現在、州と県の2つの灌漑局が担当しているが責任の所在が不明であることから、州灌漑局に一元化する方向で調整する。

農業多様化(高付加価値作物、果樹、花卉、畜産、水産など)の導入及び農業多様化に必要な水管理の実務訓練を通じて、農民組合の能力強化を図る。

首都ジャカルタやスマランへの交通利便性を生かして、農産物流通システムの構築を図る。

4) コンサルティングサービス

上記1)~3)を包括的に実施・管理する。

5.2.2 メラウケ食料基地開発事業

インドネシア政府(農業省)は、MIFEE 計画を基本に、参入企業を募り、民間投資による開発を進

めている状況である。現状では、インフラ整備も含めて民間投資による開発を考えているため、わが

国への支援の要請は具体的にはない状況である。一方で、参入企業は、模様眺めの傾向が強く、こ

のまま、計画が進展するには大きな困難があると考えられ、インフラの整備など政府からの投資環境

の整備が必要になってくるものと思われる。

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しかし、インフラの整備などを進めるには、決定的に基礎データが不足しており、これらのデータ

の整備が早急に必要になってくるものと思われる。

当面は、インドネシア政府の取り組み動向を注視してゆくとともに、政府がインフラの整備への支

援要請があった場合に時宜を失しないように、基礎データの整備を進めるよう働きかける必要がある

と思われる。

なお、本計画で今後必要と思われる取り組みに対する提言は下記のとおりである。

(1) データの整備と開発計画の実現性の調査

開発計画を策定するためには実態を反映したデータを整備する必要がある。既存のデータを現

状を反映したものにしたり、不足しているデータを収集、整備するなどの調査が必要である。このため、

開発に必要な基本データの整理、作成のためのフィールド調査を実施する。また、開発に伴うインパ

クトの評価のために、指標の整理とベースライン調査を実施する。

(2) 基本計画の策定と実施体制の整備

計画を実現するためには、参入投資家と政府間で規制や調整すべきことも多いため、ガイドライ

ンや規制とそれの実施体制(現在の関係機関が多く調整は難しい)などを確立する。

現状を反映した計画を策定するため、フィールド調査を踏まえた基本計画を作成する。また、現

実的なインフラ整備のための全体、整備計画資金計画を策定する。

(3) モデル開発による実証

5 カ年の短期目標として、43 万 ha の開発を開発するとしているが、具体的な見通しは不明であ

る。開発に伴う諸問題の解決と評価を行うには、より細かな実施段階をふまえる必要があると考えら

れる。第1段階としてはパイロットモデル事業を投資企業の開発規模が3~5万 ha を考え、5~10万

ha 程度で、政府が主導した取り組みをモデルとして実施する手法が有効ではないかと考えられる。

このモデルでは、開発のインパクトの検証、政府と企業の役割分担、開発におけるガイドラインの

確立などを図り、全体計画への企業の参入の促進や政府が行うべき事項、内容などを検証する。

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添付資料

添付資料‐1 調査日程表と調査団員略歴

添付資料‐2 面談者リスト

添付資料‐3 収集資料リスト

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添付資料-1調査日程及び調査員の経歴

「西ジャワ州ルンタン灌漑地区改修・近代化事業」および「パプア州メラウケ食料基地開発事業」ファインディング調査日程

日順 年月日 曜日 出発地 到着地 宿泊地 臼杵、尾形 渋田

1 平成22年8月22日 日 成田 Jakarta Jakarta 移動:成田⇒Jakarta(空路、1110-1710、JL725) 左記に同じ

2 8月23日 月 Jakarta JICA表敬、日本大使館表敬、DGWR表敬、利根専門家面会、 左記に同じ

NK事務所訪問

3 8月24日 火 Jakarta Cirebon Cirebon 農業省表敬、移動:Jakarta⇒Cirebon(陸路) 左記に同じ

4 8月25日 水 Cirebon JatigedeダムサイトおよびRentang灌漑地区視察 左記に同じ

5 8月26日 木 Cirebon BWSとの協議、データ収集 左記に同じ

6 8月27日 金 Cirebon Jakarta 機中泊 移動:Cirebon⇒Jakarta(陸路) 左記に同じ

Jakarta 移動:Jakarta⇒Merauke(空路、2200-0810、MZ790) (ジャカルタ泊)

7 8月28日 土 Merauke Merauke 州政府・DINAS・BWS打ち合わせ、短期開発地区視察 資料整理(I)(ジャカルタ泊)

8 8月29日 日 Merauke 中期開発地区視察 資料整理(II)(ジャカルタ泊)

9 8月30日 月 Merauke 長期開発地区視察 関係機関と打合せ(ジャカルタ泊)

10 8月31日 火 Merauke 州政府・DINASとの協議、データ収集 関係機関と打合せ、

移動:Jakarta⇒成田(空路、2210-0720、JL726)

11 9月1日 水 Merauke 州農業局・BWSとの協議、データ収集 移動:Jakarta⇒成田(帰着日)

12 9月2日 木 Merauke Jakarta Jakarta 移動:Merauke⇒Jakarta(空路、0905-1625、MZ781) -

13 9月3日 金 Jakarta 農業省への報告、DGWRへの報告 -

14 9月4日 土 Jakarta 資料整理(I) -

15 9月5日 日 Jakarta 資料整理(II) -

16 9月6日 月 Jakarta 機中泊 日本大使館への報告、JICAへの報告、 -

移動:Jakarta⇒成田(空路、2210-0720、JL726)

17 9月7日 火 成田 - 移動:Jakarta⇒成田(帰着日) -

調査員名並びに経歴

1972年3月;東京農工大学 農学部 農業生産工学科 卒業

1972年4月;農林水産省入省

2004年10月;同省退職

2005年1月;全国土地改良事業団体連合会 入団

2007年1月;同団体退職

2007年4月;日本工営㈱入社

現在;日本工営㈱国内事業本部 技師長 (土木施工管理技士 1級)

1984年3月;東北大学 農学部 農学科 卒業

1986年3月;東北大学大学院 農学研究科(修士課程)終了

1986年4月;日本工営㈱入社

現在 日本工営(株) 地域整備部 課長 (技術士:農業部門、総合技術監理部門)

1981年3月;宮崎大学 農学部 農業工学科 卒業

1981年4月;日本工営㈱入社

現在;日本工営㈱地域整備部 部長 (技術士:農業部門)

備   考

日 程 表 (予 定)

経   歴調査員名

臼杵 宣春

(総括/灌漑)

尾形 佳彦

(灌漑)

渋田 健一

(農業)

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添付資料-2

インドネシア共和国「ルンタン灌漑近代化事業」、「メラウケ食料基地開発事業」

面談者リスト

1. 国家開発計画局 (National Development Planning Agency / BAPPENAS) Dr. Ir. Donny Ahmad, CES

Ir. Mohammad Zainal Fatah Director, Water Resources and Irrigation Head of Sub-Directorate of Raw Water, Irrigation and Swamp

2. 公共事業省水資源総局 (Directorate General of Water Resources, Ministry of Public Works) Ir. Imam Agus Director (Irrigation) Ir. Adang Saf Ahmad, CES Head of Sub-Directorate of Technical Planning (Irrigation) Ir. Agus Jatiwiryono, ME Head of Sub-Directorate of Dam (River, Lake and Reservoir)

2. 農業省 (Ministry of Agriculture)

Mr. Bayu Krisnamurthi Vice Minister of Agriculture Dr. Agus Hasanuddin, Msc Director (Seasonal Crop)

3. チマヌーク川・チサンガルン川流域管理局 (Balai Besar Wilaya Sungai, Cimanuk - Cisanggarung) Mr. Puriyo Sanbodo Chief of Balai Ms. Ismi Farida Head of Division (Planning & Development) Mr. Adi Head of Division (Operation) Mr. Bebi Technical Implementation Section (PPK) Mr. Sukat Technical Implementation Section Mr. Joko Suwondo Chief Operator (Runtang Barrage O&M Center)

4. メラウケ州政府 (Local Government of Merauke)

Mr. Yosep Rinta Rachdyatmaka Secretary of Merauke District Ms. Harmini Chief, Office of Agriculture and Food Crops, Merauke Ms. Marwiah Chief of Spatial Plan, Dinas PU Cipta Karya Mr. Mathius Tangyong Chief, Balai Wilayah Sungai Papua Province Mr. Halim Chief of BKPMD Mr. Toto Staff of Dinas Agriculture Ms. Heni Site Extension Officer/PPL Mr. Mezaac Tomasila

Mr. Darwin Pakpahan Ir. HBL Tobing Ir. Marwiah A Dr. Josef Rinta Rachdyatmaka Mr. Szis Ms. Yustina Ir. Erni Ir. Paula Mr. Latang

Technical Implementation Unit Staff Technical Implementation Unit Staff Chief, Office of Road, Bridge and Irrigation, Merauke District Chief of Spatial Plan, Office of Spatial Plan, Settlement and Cipta Karya Secreary of Government of Merauke District Secretary, Coordinating Board for Regional Investment and Licensing, Merauke District Chief of Analysis Division, Coordinating Board for Regional Investment and Licensing, Merauke District Chief of Areal Extension Division, Office of Agriculture, Merauke District Chief of Production Section, Office of Agriculture, Merauke District Chief, Office of Forestry and Estate Crops, Merauke District

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添付資料-2

Mr. Edi Mr. Tukijo Ir. R. Bambang Dwiatmoko

Chief of Estate Division, Office of Forestry and Estate Crops, Merauke District Chief of Forest Conservation Production Division, Office of Forestry and Estate Crops, Merauke District Chief, Office of Livestocks, Merauke District

5. 在インドネシア日本国大使館 仙波 徹 一等書記官

6. JICAインドネシア事務所 北村 恵子 企画調査員

7. JICA専門家(公共事業省) 利根 基文 アセットマネージメント

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添付資料-3

No. Title Prepared by Year

1 Jatigede Project Consolidation Study, SMEC & Indra Karya 1991 Volume 1: Executive Summary

2 Jatigede Project Consolidation Study, SMEC & Indra Karya 1991 Volume 2: Main Report

3 Jatigede Project Consolidation Study, SMEC & Indra Karya 1991 Volume 3: Figures and Appendices

4 Jatigede Project Implementation Preparation Review Study Colenco Power Engineering Ltd./ 2000 Volume A: Executive Summary Binnie Black & Veatch LTD.

5 Jatigede Project Implementation Preparation Review Study Colenco Power Engineering Ltd./ 2000 Volume B: Main Report Binnie Black & Veatch LTD.

6 Jatigede Project Implementation Preparation Review Study Colenco Power Engineering Ltd./ 2000 Collection of Figures Volume A, B and C Binnie Black & Veatch LTD.

7 Supervisi Pembagnan Waduk Jatigede Laporan Hidrologi BBWS Cimanuk-Cisanggarung 2009& Suvervision Consultants

8 Identification Study Report, Executive Summary Nippon Koei and Associates 2010 Future Irrigation Projects in Western Region

9 Identification Study Report, Volume 1: Main Report Nippon Koei and Associates 2010 Future Irrigation Projects in Western Region

10 Identification Study Report, Volume 2: Appendix Nippon Koei and Associates 2010 Future Irrigation Projects in Western Region

11 Organization Chart of BBWS Cimanuk-Cisanggarung BBWS Cimanuk-Cisanggarung 2010

12 Pamphlet of Pembangunan Bendungan Jatigede Departemen Pekerjaan Umum 2010

13 Handout of Rentang Barrage Departemen Pekerjaan Umum -

14 Handout of GP3A Departemen Pekerjaan Umum -

1 Ground Design Ministry of Agriculture 2010

2 Forcus Group Discusion Merauke District 2010

3 Agricultural Statistic Merauke Agriculture and Food Crops, 2010Merauke

4 The Development Plan for The Food Estate in Merauke Department of Agriculture 2010

5 Design Food Estate in Nerauke Department of Agriculture 2010

6 Merauke Integrated Food and Energy Estate (Oresentation) Merauke District 2010

7 Space Utilization of Merauke Merauke District 2007

8 Spatial Reviced Plan Merauke District 2007

9 Plan Map Merauke District 2010

10 Recommendations of Spatial Analysis Merauke District 2010

11 Recommendations of Spatial Analysis Department of Estate Crop 2010

12 List of Investors Coordinating Board for Regional 2010Investment and Licensing

13 List of Companies Department of Estate Crop 2010

14 Potential of Economy and Investment Merauke District 2007

15 Land Use and Potential of Merauke Division of Land Dvelopment and 2010Plant Protection

16 Meteo Data Meteorological Station, Merauke 2010

収集資料リスト

(ルンタン灌漑近代化事業)

(メラウケ食料基地開発事業)