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TAKING FUJITEC TO THE NEXT LEVEL フジテックの改善~次のレベルへ Asset Value Investors 25 Bury Street London SW1Y 6AL

フジテックの改善~次のレベルへ - Asset Value …...フジテックを次のレベルへ− サマリー(続) 6 o フジテックの弱みを解消するため、AVIは一連の総合的な具体策を提案する。弊社が提案する

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TAKING FUJITEC TO THE NEXT LEVEL

フジテックの改善~次のレベルへ

Asset Value Investors

25 Bury Street

London SW1Y 6AL

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AVIについて

出典:AVI、2020年4月30日時点。海外および日本国内での運用額はレバレッジ分を含む

2

戦略 アプローチ 運用中の資産

AVI Japan Opportunities Trust (‘AJOT’) 日本の上場企業のなかで過小評価されている小型株に投資 ¥170億円

AVI Global Opportunities Trust (‘AGT’)創業者一族が経営する持株会社、クローズドエンド型投資信託、余剰資金の多い日本企業に投資。ファンドの26%を日本の株式に割り当てている

¥1,130億円

AVI Family Holding Companies (‘FHC’) 創業者一族が経営する持株会社に投資 ¥10億円

国際株のブティック型運用会社

– 1985年にロンドンで設立

– 長期的に株式を保有し、持続可能な方法で企業価値を向上するために経営陣に協力

日本市場における経験

– 20年以上に亘り日本企業に投資

– 現在540億円を日本の株式に投資

– 2018年の公開キャンペーン www.improvingtbs.com により、TBSの「政策保有株の縮減方針」が大きく注目された。その後、2020年初めに www.transformingteikoku.com において、帝国繊維のバランスシート構造の効率改善を求めるキャンペーンを展開

– 多数の日本企業の経営陣に対して非公開に働きかけを行っている

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フジテックとの対話の記録

注: 1 2020年4月30日時点

3

• AVIは投資家の代理として、フジテックの発行済株式の3.4%1 を保有している

• 弊社は2018年7月以来フジテックに出資し、同社経営陣と建設的な協力体制を模索してきた

• これまでに同社取締役会と率直な協議を行い、書簡3通を送付して同社のアンダーパフォーマンスと市場からの過小評価を指摘し、ガバナンスの改善を要請してきた

• 弊社の提案にかかわらず、フジテックの経営陣は改善の姿勢を示しておらず、買収防衛策を更新し、弊社の書簡に対して公式な回答を避けている。同社経営陣はアンダーパフォーマンスへの対応を決めかねているように見受けられる

• フジテックのアンダーパフォーマンスに焦点を当て、戦略の見直しを要請するために本プレゼンテーションを公開する

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4

エグゼクティブ・サマリー

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フジテックを次のレベルへ − サマリー

5

o フジテックは、アジアを主体に業界トップのサービス&テクノロジー企業になる力を有している

o しかし現在、営業利益率、ROE、株価バリュエーション等、すべての主要な業績評価指標において昇降機業界のグローバル競合他社におくれをとっている

o フジテックのEV/EBIT倍率は、上場しているグローバルな競合企業の平均19倍に対してわずか6倍であり、根本的

かつ重大な問題があることを示している。それにもかかわらず、現任の経営陣は状況を十分理解していないように見受けられる

1)経営効率の悪さ

o 戦略の決定に疑問の余地があり、結果、昇降機を専業とするグローバル同業他社の中で最低の業績となっているo 規模の欠如、低い外注率、中央集権型の意思決定、拠点の地理的分散などが要因

2)規律ある資本政策の欠如

o 戦略の欠如が資本効率の低さにつながっている

o 合理的な資本支出ではなく、過剰な製造能力への投資、運転資金へのつなぎ止め、将来の未知の局面に対する生産性のない安全措置などに資本を浪費している

3)脆弱なコーポレート・ガバナンス

o 戦略に集中し資本規律を正すために、緊急にガバナンス構造を変更する必要がある

フジテックの3つの主要な問題点

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フジテックを次のレベルへ − サマリー (続)

6

o フジテックの弱みを解消するため、AVIは一連の総合的な具体策を提案する。弊社が提案する

対応策は、資本効率に偏った対策ではなく、戦略、資本効率およびガバナンスを包括的に改善するものである

3)ガバナンスの改善

o ガバナンスを改善して社内を活性化するために、フジテックは指名委員会等設置会社の体制を採用し、報酬委員会・指名委員会を設置し、会長を含めて、経験豊富な独立社外取締役を追加で選任すべきである

o 独立社外取締役には、新たな変革プランを実施する経営陣を監督するために幅広い権限を付与すべきである

1)包括的な戦略レビュー

o フジテックは、外部の専門家の力を借りて根本的な戦略レビューを実施し、改善すべき領域を特定し、変革プランを策定すべきである。レビューには競合他社との合併という選択肢に関する調査も含めるべきである

2)規律ある資本政策

o 資本効率を高めるための第一歩として、フジテックは上場企業の政策保有株式を処分する方針を固めるべきである

o 新たな変革プランとあわせて、明確に定義された透明性のある資本政策を策定し、今後の資本支出のためのハードル・レートを明確に定めるべきである

問題点への対応策

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アジェンダ

7

1.フジテックの概要、弱点および弊社が提案するソリューション

– 会社概要

– 魅力ある業界

– フジテックの低いバリュエーション

– フジテックの過小評価の要因分析

– AVIの提案

2.フジテックの市場からの過小評価の改善

– 経営効率の悪さ

• 規模の欠如

• 非効率な製造工程

• 中国事業に対する誤った経営判断

• 非注力国における展開

• 中央集権型の意思決定構造

– 規律ある資本政策の欠如

– 脆弱なコーポレート・ガバナンス

– 株主との対話不足

Appendix

– 経営陣の主張の誤り

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フジテックの概要、弱点および

弊社が提案するソリューション

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フジテック –会社概要

出典:フジテック2019年3月期決算報告より注:1アフターマーケットはメンテナンスとリニューアルの両方を含む ²(株)ウチヤマ・インターナショナル6.2%、サント(株) 1.1%、内山高一氏0.4%

o 1948年創業、1964年に初めて海外支社を香港に設立

o エレベーターとエスカレーターの生産、据付、メンテナンスを手がける

o グローバルに展開しつつも、売上の87%と営業利益の90%は同社の市場シェアが最も高いアジア市場より生み出されている

o 売上高は新規設置とアフターマーケットがほぼ半々1

o 時価総額が1,250億円であり、独立系の上場エレベーター・エスカレーター・メーカーとしては最大のプレイヤーである

o 創業者の子息である内山高一氏がCEO兼会長を務め、内山氏の子息もフジテックに勤務するなど創業家の関わりが強いが株式保有率はわずか7.7%²と低い

新規設置とアフターマーケットがほぼ半々

主要な売上はアジア市場、他の市場への展開は概して不調

49.8%50.2%

アフターマーケット 新規設置

40%

38%

13%

9%

0%

日本 東アジア 北米 南アジア 欧州

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フジテックの概要 –売上高・地域別分布

出典:フジテック2019年3月期決算報告、フジテックウェブサイト

カナダ米国、オハイオ (工場)

北米(売上高の13%)

本社滋賀県(工場)

日本(売上高の40%)

インド(工場)

インドネシアマレーシアミャンマーフィリピンシンガポールスリランカタイベトナム

南アジア(売上高の9%)

エジプトサウジアラビア英国

欧州(売上高の0%)

中国 (3 工場)

香港 (工場)

韓国 (工場)

台湾 (工場)

東アジア(売上高の38%)

地域売上高(10億円)

売上高比率

EBIT (%)

東アジア 69.3 38% 3%

欧州 0.3 0% -13%

日本 72.5 40% 7%

北米 23.7 13% 4%

南アジア 16.6 9% 11%

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昇降機業界の概要

出典:フジテック2019年3月期決算報告注:1アフターマーケットはメンテナンスとリニューアルの両方を含む

o 昇降機業界は3つのエリアに分けられる:新規設置(47%)、リニューアル(13%)、メンテナンス(40%)

o 市場の内訳はエレベーターが 90%で、エスカレーターが 10%

o 新規設置の大部分は中国で、それ以外の地域は成熟し、おおむね飽和状態である

o 成熟した業界であるため、各社は保守系の収入に焦点をあてメンテナンスの件数を増やす一方で資本集約型の生産を外注する傾向にある

o 遠隔監視など技術面でのイノベーションにより、独立系のメンテナンス会社との差別化に拍車がかかり、かつ人的なメンテナンスコストの削減も可能となる

エレベーター90%

新規設置47%

欧州・中東

アフリカ40%

エスカレー

ター10%

メンテナンス40% アジア・パシ

フィック35%

リニューアル13% 米州

25%

グローバル昇降機市場の内訳

0

100,000

200,000

300,000

400,000

500,000

600,000

700,000

800,000

900,000

2001 2004 2007 2010 2013 2016 2019e

China RoW EMEARest of APAC NA South America

中国が大半を占める新規設置件数

南アメリカ

中国 その他 欧州・中東・アフリカ

中国以外のアジア 北アメリカ

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魅力あるビジネスモデル

o 設備の安全性の重要度、厳格な規制、顧客との信頼関係などから新規参入が妨げられ、平均で111年の歴史を持つトップ8社が君臨する市場であり、既存企業が高い資本効率を誇る

o 外注の増加に伴い効率が向上し、同業界は資本集約的製造業から離れサービス・テクノロジー企業へと転換している

o 保守と修理が魅力的なサービスモデルとなっている。製品ライフサイクルを通して、メンテナンス事業からの営業利益は新規設置からの営業利益の2.5倍である1

o 大規模な企業は幅広い製品ラインアップ、技術的な優位性および当初設置顧客の多さがマージンを押し上げている

出典:キャピタルIQ、各社レポート注: 1 オーチス、キャピタルマーケットデー、2020年2月。 2 ROIC (投下資本利益率)=税引後営業利益÷(株主資本+有利子負債ー現預金)

新しい設備

保守&修理

リニューアル

新規設置の2.5

倍の収益利益率の低い新規設置が高マージンのサービス契約につながる

建物の知識や顧客との密接な関係がリニューアル業務、代替機の設置、保守サービスの継続をもたらす

15%

49%

64%

97%

Fujitec Schindler Kone Otis

ROIC² 比較

昇降機業界は高い資本効率を誇る

フジテック シンドラー コネ オーチス

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フジテック概要 –競争力

出典:ジェフリーズ、2020年3月現在

o フジテックは昇降機業界において売上では世界第8位である

o 他の主要企業と同じく長い歴史がある – 顧客の信頼を得るための必須条件

o 業界は過去20年間に多くの合従連衡を経て、世界トップ5社が市場シェアの70%を制している

o フジテックの市場シェアが低い理由は製品の品質面で劣っているからというより、M&Aの波に乗れなかったことおよび不透明な海外戦略による。同社はグローバル展開する企業の中で唯一残る独立系企業である

オーチス17%

シンドラー15%

コネ14%

ティッセンクルップ13%

三菱11%

日立8%

東芝5%

フジテック2% その他

15%

世界のエレベーター市場

企業名(市場ポジション) 創業年

オーチス #1 1853

ティッセン #4 1865

シンドラー #2 1874

コネ #3 1910

日立 #6 1924

三菱電機#5 1931

フジテック#8 1948

東芝 #7 1967

主要企業はすべて長い歴史があり新規参入はほとんどない

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魅力的なビジネスモデルにもかかわらず過小評価

魅力的なビジネスモデルと長い歴史に反して、同業他社対比で大幅なディスカウント

出典:キャピタルIQおよび各社報告書注: EBITは過去12ヶ月間実績。EV(企業価値)= 時価総額 – 現預金 – 税引後投資有価証券 + 債務。ティッセンクルップ・エレベータの評価は公表されている取引価値€172億に基づく。オーティスおよびティッセンクルップ・エレベータの過去の倍率は不明。

0

5

10

15

20

25

過去5年間のフジテックの

相対的なEV/EBIT倍率

Fujitec Schindler Kone

22.1

19.0 17.6

13.8

5.4

Konethyssenkruppeleavtor

SchindlerOtisFujitec

EV/EBIT倍率比較

…これは直近の傾向でも、突発的な事象でもない

平均ディスカウント71%

フジテック オーチス シンドラー コネティッセンクルップ 14.12 16.12 18.12 20.12

コネシンドラーフジテック

過去5年間のフジテックの相対的なEV/EBIT倍率

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フジテックが過小評価されている要因

フジテックのバリュエーションの低さは3つの主な問題点にあると考える

出典:キャピタルIQおよび各社報告書

経営効率の悪さ 規律ある資本政策の欠如 脆弱なコーポレート・ガバナンス

戦略性に乏しく実行力も低いことから、同業他社と比べて最低の営業利益率となっている。

現計画は競争上の優位性や今後の道筋について、漠然とした認識しか示していない。

規模の欠如、地理的拠点の分散、自社生産への依存、製品ラインアップの少なさといった問題点を有する。

過剰な株主資本。総資産の62%を株主資本が占め(同業他社平均27%)ROEを押し下げている。

歴史的にも株主還元が低く、綿密な資本政策が公開されていない。

取締役会に執行役員が多く、独立性に乏しい。

独立性のある委員会がない。会長が社長職を兼務、監査役会組織、ポイズンピル。

株主との対話不足

あいまいで不透明な中期経営計画。

.同業他社と比べて透明性が低く、IRを専門に扱う部署がない。

さらに副次的な要因として…

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14.5%

12.4%11.4% 11.0% 10.6%

7.3%6.2% 6.0%

4.4% 4.0%

Otis Kone thyssenkruppelevators

Schindler Hitachi HyundaiElevater

Yungtai Fujitec Toshiba Mitsubishi

16

フジテックが過小評価されている要因 (続)

経営効率の悪さ

出典:キャピタルIQ、各社報告書

経営効率の悪さ

保守的な経営方針およびコングロマリットの一事業部門として

重点政策の欠如

コングロマリット組織の一事業部門として重点政策の欠如、東芝ネクストプラン(2019〜2023年)の下で構造改革中

o フジテックは昇降機専門会社の中で利益率がもっとも低く、業界トップのオーチスの半分に満たない

o スケールに欠け、製造の外注率が低く、意思決定が中央集権的で、拠点の地理的分散により、同業他社との間に大きな差が生じている

o 一貫性のあるグローバルでのビジョンがなく、利益率の高いサービスや技術ではなく製造に依存しすぎている

営業利益率比較

ティッセン

クルップオーチス コネ シンドラー 日立 ヒュンダイ ヨンタイ フジテック 東芝 三菱電機

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フジテックが過小評価されている要因 (続)

規律ある資本政策の欠如

出典:キャピタルIQおよび各社報告書注:1少数株主持分およびその他の包括利益を含む。 2オーティスは自己資本がマイナスであるため、ROEの計算ができない。 3オーティスは会社分割以前の財務情報が限られておりデータが得られない。 4レバレッジ目標を達成した時点で自己株式取得の計画を公表している。

規律ある資本政策の欠如

ROE自己資本比率

%1

過去10年間のキャッ

シュフロー還元率%配当性向 目標還元率

資本政策の

開示

フジテック 8.8% 62% 29% 40% 開示無 無

コネ 30.1% 37% 70% 94% 無 有

オーチス ---2 -37% --- 3 --- 3 40%

自己株式取得4有

シンドラー 24.4% 37% 56% 50% 35-65% 限定的

o フジテックの自己資本比率62%に対して同業他社平均が37%(オーチスを含めると12%)であることを勘案すると、現預金と投資有価証券がバランスシートの32%を占めているのは過剰である

o フジテックは運転資本と借入を十分に活用しておらず、ROEの低さの一因となっている

o 厳格な資本政策がなく、取締役会は株主価値にとって不可欠な要素について十分に配慮していない

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18

フジテックが過小評価されている要因 (続)

脆弱なコーポレート・ガバナンス

脆弱なコーポレート・ガバナンス

SHAREHOLDER COMMS

An excess of equity, with

assets funded with 62%

of equity compared to

27% for peers driving

inferior ROE.

Low historic returns to

shareholders and lack of

a rigorous, disclosed

capital policy.

Vague mid-term plan

lacking detail and

substance.

Poor transparency

compared to peers and

less English disclosure.

o フジテックのガバナンスはグローバル展開している昇降機企業の中で最も弱い

o ガバナンスの弱さは株主にとってリスクであり、不適切な意思決定と相まって低いバリュエーションの一因となっている

取締役会におけ

る独立社外取締

役の割合

会長と社長の別 取締役会構成

取締役会に

おける執行

役員の割合

報酬・

指名委員会買収防衛策

フジテック 56% (5/9) 無 監査役会 44% 無 有

同業他社(以下)

67% 有 委員会設置会社1 20% 有 無

日立 73% (8/11) 有 委員会設置会社 27% 有 無

コネ 67% (6/9) 有 委員会設置会社 0% 有 無

三菱電機 42% (5/12) 有 委員会設置会社 25% 有 無

オーチス 78% (7/9) 有 委員会設置会社 22% 有 無

シンドラー 64% (7/11) 有 委員会設置会社 27% 有 無

東芝 83% (10/12) 有 委員会設置会社 17% 有 無

出典:各社申告および企業ウェブサイト1委員会設置会社:監査委員会、指名委員会および報酬委員会を置く会社

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19

フジテックが過小評価されている要因 (続)

株主との対話不足

出典:キャピタルIQおよび各社報告書注:1 英語 2 IR関連業務は木村靖彦氏が率いるが彼の主たる職務ではない。3 上場前に公開したForm10-Kは846ページ。4オーティスはまだ決算を発表していないが、直近の投資家向け説明会で2時間53分のプレゼンテーションを開催した

株主との対話不足

投資家向け説明会

/中期経営計画の

ページ数

セルサイド・

アナリスト

カバレッジ数

アニュアル・

レポートの

ページ数

中間報告書の

ページ数IR専門部署

決算説明の時

フジテック 15ページ 0115 / 641

ページ2 ページ1 無2 14分

コネ5 種類のプレゼン合計131ページ

32 100ページ 34 ページ 有 1時間25分

オーチス 77ページ 7 -3 - 有 -4

シンドラー n/a 24 226ページ 18ページ 有 1時間55分

o フジテックの株主に対する情報開示および透明性は理想からほど遠い

o 同業他社はIRを専門に扱う部署があり、株主との対話に相当の資源を割いている

o 情報不足と意識の低さがフジテックの評価を下げている

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20

AVIからの提案

フジテックは現状をどのように改善できるか

経営効率の悪さ 規律ある資本政策の欠如 脆弱なコーポレート・ガバナンス

株主との対話不足

外部の専門家の力を借りて戦略レビューを実施する。

外注先を活用して高コストで資本集約的な自社製造を減らす。

現地の経営陣に意思決定を委譲し、製品ラインアップのバラエティを増やす。

ノンコアの拠点から撤退する。

株主資本への依存度を下げる。

運転資金の管理を強化し、政策保有株式を売却する。

自己株式を取得して消却し、配当性向を50%超まで引き上げる。

綿密な資本政策を公開する。

取締役会の独立性を高める。

取締役会における執行役員の人数を減らす。

委員会等設置会社の組織に変更する。

会長と社長の職責を分ける。

買収防衛策を撤廃する。

より詳細な報告を通じて経営の透明性を高める。

投資家向け説明会を通じて詳細かつ綿密な戦略を発表する。

IR機能にさらなる専門の資源を充てる。

セルサイドのアナリストにリサーチレポートでカバーしてもらうよう働きかける。

1〜4年 2年以内 2年以内 2年以内

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フジテックを次のレベルへ − 潜在的な上昇余地

潜在的な上昇余地を認識した上で、フジテックが長期的に競争力を維持存続できるよう、外部の専門家の力を借りて同業他社との合併を含めたあらゆるオプションを視野に入れた客観的な戦略レビューを実施することを、フジテック取締役会に強く要請する

段階的な自社株買いと運転資金の管理徹底によりさらなる上昇も期待できる

フジテックの

現在の株価¥1,400

営業利益率(%)

EV/EBIT倍率

同業他社平均(18x)

フジテック(6x)

フジテック (7%)

TOPIX (13x)

日立(11%)

主なグローバル同業他社(12%)

¥2,444

+76%

¥3,252

+133%

¥3,344

+140%

¥1,779

+28%

¥1,974

+42%¥3,780

+173%

¥5,199

+273%

出典:キャピタルIQ、会社四季報(未上場企業)注:バリュエーションにあたり過去12ヶ月の営業利益率を使用している

¥4,546

+226%

高いアップサイドを獲得できる合併のオプションを検討すべきである

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フジテックの市場からの過小評価の改善

経営効率の悪さ

22

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12.3%

6.0%

23

フジテックのアンダーパフォーマンス

出典:キャピタルIQ

注:1 オーチス、シンドラー、コネ、ティッセンクルップ(エレベータ部門)。フジテックは3月期末時点、他社は12月31日期末時点。

同業他社平均より51%

ディスカウント

同業他社平均 1 フジテック

営業利益率同業他社平均との比較

慢性的に同業他社を下回る営業利益率

0%

5%

10%

15%

20%

25%

2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019

Otis Schindler Kone

thyssenkrupp elevator Peer Average Fujitec

o フジテックの営業利益率は6%と、世界の昇降機専業会社の中でもっとも低い

o 過去10年間では、同業他社の営業利益率と比べて平均6.9パーセントも下回っている

o これは直近の傾向でも突発的な事象でもなく、戦略上の欠点による根本的な経営効率の低さが事態を慢性化させている

オーチス シンドラー コネ

同業他社平均 フジテックティッセンクルップ

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24

フジテックのアンダーパフォーマンス 地域別

出典:キャピタルIQ、2019年3月期時点

フジテックの地域別営業利益・営業利益率

o フジテックの利益率が最も高いセグメントは南アジアおよび日本であるが、それでも同業他社の会社全体の水準を下回る。日本におけるマージンは、10%という比較的高いマーケットシェアと、利益率が高いアフターセールス事業に牽引されている。製造効率を高めることで、マージンを大幅に向上することが可能である

o フジテックの東アジア部門(〜80%が中国)は2016〜2018年に販売の落ち込みおよび過剰な製造能力による膨大なコストにより、利益率の伸び悩みに直面した

o フジテックの欧州および北米セグメントは、低い利益率と規模の不足により継続的に損失を出している

-15%

-10%

-5%

0%

5%

10%

15%

20%

Japan East Asia South Asia

Europe North America

-2,000

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

16,000

Japan East Asia South Asia Europe North America

(¥m)

日本 東アジア 南アジア 欧州 北アメリカ日本 東アジア 南アジア

欧州 北アメリカ

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弊社調査に加え、フジテック経営陣、顧客、サプライヤー、ディストリビューターおよび業界関係者等との対話から、フジテックの利益率の低さは以下の要因によることが示された

①規模の不足

②非効率な製造工程

③中国事業に対する誤った経営判断

④非注力国での展開

⑤中央集権型の意思決定構造

フジテックのアンダーパフォーマンス 要因の分析

25

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26

• Fujitec failed to utilize inorganic scale-up while competitors have capitalize on it….

• Xx

①規模の不足

売上高

出典:キャピタルIQ、ジェフリーズ

オーチス シンドラー

13.0

11.8 11.7

8.7

1.6

コネ ティッセンクルップ

フジテック

(US10億ドル)

o フジテックは、世界市場のシェアのわずか2%を有する世界最小の昇降機OEM企業で、もっとも規模が近い同業他社とも大きな差がある

オーチス17%

シンドラー15%

コネ14%

ティッセンクルップ13%

三菱電機11%

日立8%

東芝5%

フジテック2% その他

15%

フジテックのマーケットシェアは相対的に低いフジテックのマーケットシェアは相対的に低い

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27

o フジテックと他のOEM企業の間で、規模の差が広がっている

o フジテックは、小規模にもかかわらず、2000年以降でOEMグローバル大手3社のうち2社よりもCAGR

(年平均成長率)が低い

売上高

出典:キャピタルIQ

+4.4% CAGR

コネシンドラーオーチスフジテック

13.1

0.7

10.8

1.6

5.7

8.8

11.6

2.8

+0.9

+2.8

+7.5

+8.0

2000 2019

+7.8% CAGR

+4.8% CAGR

+1.6% CAGR

+4.4% CAGR

①規模の不足 − 格差の拡大

(US10憶ドル)

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28

1.2%

6.6%

11.6%

0.03%0%

2%

4%

6%

8%

10%

12%

14%

シンドラー

オーチス コネ

フジテック

(累積)買収への現金支出額対売上比

3.5%

20.0%

12.6%

23.0%

0%

5%

10%

15%

20%

25%

コネオーチス

シンドラー フジテック

(累積)CAPEX対売上比

一方、同業他社はM&Aに資本を投下してい

る。特にコネはもっとも力強い成長を遂げた。オーチスは、フジテックが10年間でM&Aに費やした以上の金額をわずか3年間で支出した

出典:キャピタルIQ

注:フジテック、2019年3月期。オーティスは2017年以前のデータは入手不可

①規模の不足 − 原因

フジテックはコストのかかるオーガニック(内部)成長によってマーケットシェア獲得を目指してきたが、成功していない

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29

メンテナンス

• エレベータの保守は労働集約型で、技術者が実際に現場に出向いて点検を行う必要がある

• 利益率を上げるためには、地域的な規模の経済、すなわち技術者が現場間を移動する時間が短く、同じコストで1日あたりに訪問実施できる点検数を増やすことが重要である

出典:AVI

o とくにメンテナンスサービスや調達において、コスト削減およびマージンの改善を進めるためには、規模の経済が極めて重要である

o フジテックは、変革プランのなかで、あらゆるM&Aのオプションを検討すべきである

フジテックは、小規模の独立系サービスプロバイダーを買収することで、保守部門の地理的密度の向上に努めるべきである

フジテックは同業他社と比べて交渉力が弱いため、調達コストの高さに苦しんでいる

これは、フジテックが強い基盤を持つ地域におけるM&Aを通した成長に注力し、さらにサプライヤーらの規模の経済を利用することで解決できる

①規模の不足 − サマリー

調達

• 資材の購入額が大きければ、サプライヤーに対しての交渉力が強くなり、結果として低価格、好条件が得られる

• よりコモディティ化の進んだ製品については、OEM企業はサプライヤーに製造を外注することでサプライヤーの規模の経済を利用することができる

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30

o フジテックは社内で構成部品を製造する、「垂直統合型」製造プロセスに大きく依存している

o 製造プロセスを効率化し、外注を積極活用することで大幅なコスト削減が実現できる

出典:AVI

受注 計画&カスタマイズ 調達 製造

• フジテックは特別な仕様の製品の注文を安易に受注し、製造効率を落としている

• 特注生産の比率が高く、その結果製造工程が複雑化する

• 何年も工場の稼働率が悪くコスト競争力が低い状態が続いているにもかかわらず、経営陣が垂直統合型にこだわっている

問題点

• 標準化した製品ラインアップを増やし、特注品生産の範囲を減らす

• 顧客に対して規格品・標準仕様の採用を促す

• コンポーネントのモジュール化を進める

• 規模やコスト効率に長けた社外サプライヤーへのコンポーネントの外注を増やす

• サプライヤーの規模の経済および知見を活用する

• 買掛金の増加と在庫削減により運転資金へのプラスの影響の恩恵を受ける

• 特注生産の最小化、設計図面の簡略化、その後の製造工程の効率向上を達成する

目標

対応策

• 部品の社内生産は諸経費や在庫を増加させ、柔軟性を低下させる

• 下請けメーカーのほうが部品生産や大量生産の品質について優れたノウハウを持っている

• ハイスペックの部品、技術革新、組立のみに集中する

• コスト競争力を高める

• 製造コスト削減および技術的優位なソリューションへの集中によりマージンを高める

②非効率な製造工程

• 設計図面を簡略化し、専門性を持つ社外メーカーの知見を活用する

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31

o 外注活用の傾向が続く中、OEM企業は設置およびメンテナンスサービスの提供に集中できるようになっている

o 数十年前の自動車産業と同様、昇降機メーカーも外注生産のメリットを認識している

o 制御装置は最も重要なコンポーネントである。複雑な専有技術を伴うため、ほとんどのOEM企業は社内で生産している

出典:ウィッター、ベレンベルグ

80%

制御装置

50%

駆動装置 ドア スリング 安全装置 カゴ シャフト設備

9% 10%

25%

30%

45%

50%

45%

50%

55%

60% 60%

70%2008 2016

OEM企業での部品別外注割合

②非効率な製造工程 − 外注

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32

o 外注は、サプライヤーの規模の経済や知見を活用する上で良い手段である

o 外注を活用することで、エレベータOEM企業はコモディティ化した部品にコストをかける代わりに、ソフトウェア、テクノロジー、保守など中核の事業に集中することができる

o 多くの社外サプライヤーは高い能力を有しており、極めて高水準の部品を製造することができる

o また、外注活用によりOEM企業は需要の変化に合わせて生産レベルを調整できるようになる

出典:AVI、ウィッター

メリット

• サプライヤーの規模の経済・経験を活用することでコストを削減できる

• 生産における課題に時間を割くことなく、テクノロジーやメンテナンスなどのコア・コンピタンスに集中できる

• 資本の集約度を減らすことで不要な資本支出を避けキャッシュを生み出す

• 需要に合わせて生産を調整できる柔軟性が向上する

• サプライヤーが保有する技術を活用し、新たなテクノロジーや最高水準の製造プロセスを利用できる

提案

• コモディティ化した品目の外注を有効活用して、資源を付加価値のあるコンポーネント(制御装置、エレクトロニクス等)や最先端技術に集約させる

推定13%

推定44%

推定43%

据付・メンテナンス

組立による付加価値

部品

製品ラインごとの市場ブレークダウン なぜ外注すべきか?

OEM企業の利益性が高い=> 重点領域

OEM企業の利益性が低い=> 外注を活用

②非効率な製造工程 − 外注 (続)

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33

o フジテックの経営陣および競合他社や取引先との対話から、フジテックには外注を増加する余地が大いにあることが示された

これを戦略レビューの重要な焦点とすべきである。

出典:AVI、ベレンベルグ、その他開示情報

ドア

駆動系・機械

その他のコモディティ品目(シャフト、スリング等)

安全装置

カゴ

電子部品

制御装置

高完成品を外注

欧米の同業他社

中機械装置のみ外注

フジテック

低〜中材料調達のみ

低ほぼ外注なし

✓✓

対応の必要性

✓✓✓

✓✓

コモディティ化した品目

製造コストの推定40-50%

外注率総計 推定50-70% 推定30%未満

中部分的に外注

低ほぼ外注なし

低ほぼ外注なし

低ほぼ外注なし

低ほぼ外注なし

低ほぼ外注なし

高完成品を外注

高完成品を外注

高完成品を外注

高完成品を外注

製造コストの推定50-60%

差別化できる品目

コンポーネント

②非効率な製造工程 − 外注 (続)

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34

o 垂直統合型の製造工程に多くの資本を投じ、積極的なM&Aを回避するというフジテックの戦略は成功していない

o 昇降機メーカーの株主価値の最大の原動力は製造ではなく、テクノロジー、ブランド、そして保守サービスの提供である

o 製造からテクノロジーおよびサービスに重点をシフトさせることで、フジテックは膨大な価値を顕在化することができる

出典:AVI、キャピタルIQ

②非効率な製造工程 −

付加価値は製造ではなくサービス&テクノロジーに存在

ジャパンエレベーターサービス(JES、証券コード6544)は

メンテナンス専門の会社で、日本のような成熟した市場における集中型サービスモデルの成功例である

5.2

44.3

Fujitec Japan Eleavtor Service

EV/EBIT比較

6.0%

11.4%

7.2%

20.0%

Fujitec Japan Eleavtor Service

利益率比較

Margin Margin Target

JESは製造能力を持たないにもかかわらず、高い株価バリュエーションを達成している。安定したメンテナンス事 業 に 集 中 し 、 リニューアル事業と市場シェアの拡大により成長している

ジャパンエレベーターサービスフジテック ジャパンエレベーターサービスフジテック

利益率 目標利益率

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35

o 1995年に中国中紡集団公司との合弁会社を設立して以来、中国では長い歴史を持つ

o 現在フジテックは、(2016年に中国中紡集団公司と合併した)中糧集団と共に華昇フジテックの60%を保有している

o フジテックは、利益構造およびエレベータ生産の両方において中国で特徴的な事業展開をしている

o 以上の理由から、フジテックの変革は中国における事業の改善に依存している

74%

出典:AVI、キャピタルIQ、ジェフリーズ、JPモルガン

③中国事業に対する誤った経営判断

フジテックの生産能力における中国事業占有率(推定)

33%

30%

20%

17%16%

FujitecKonethyssenkruppElevator

SchindlerOtis

売上に占める中国市場の占有率(推定)

ティッセン

クルップ

オーチス シンドラー コネ フジテック

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36

o フジテックは何年もの間、中国での規模の不足に苦しんでいる

o 規模の小さい現地企業は、過去10年間で大手OEM企業によって市場からの退出を余儀なくされた。しかしフジテックはそうした状況を活かして市場シェアを拡大することができなかった

o フジテックは規模が小さいにもかかわらず、コネよりも成長が遅い

o 誤った経営判断および戦略により、みすみす機会を逃している

出典:キャピタルIQ、2020年3月31日時点。ベレンベルグ

500

1,000

0

1,500

3,500

2,000

3,000

2,500

4,000

4,500

5,000

5,500

6,000

オーチス中国

(US100万ドル)

フジテック東アジア

コネアジアパシフィック

シンドラー中国

2017以前は非開示

+9.6%CAGR

+13.8%CAGR

中国関連部門における売上高成長(2011年〜)

3%

3%

7%

6%

9%

5%

9%

8%

9%

6%

10%

13%

15%

10%

Latest

2009

Other Canny Guangri Fujitec

Toshiba Thyssenkrupp Hitachi Mitsubishi

Schindler Otis Kone

フジテックは市場再編にもかかわらず中国における市場シェアを獲得できなかった

③中国事業に対する誤った経営判断 − 市場シェア

フジテック

ティッセンクルップ

オーチス コネ

フジテック

シンドラー

三菱電機東芝 日立

その他 キヤニー グァンリー

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37

o フジテック中国は、利益率で同業他社を下回っている

o 2016〜2018年の市場低迷時に、効率の悪さと高コストにより利益率が伸び悩んだ

出典:キャピタルIQ、ベレンベルグ、ジェフリーズ注:3月31日期末時点

フジテックの東アジアセグメントにおける営業利益率

0

2,000

10,000

2%

6,000

4,000

8,000

12,000

10%

0%

4%

6%

8%

12%

(百万円)

2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019

営業利益 営業利益率(右軸)

10.5%

6.2%

コネ フジテック東アジア直近5年間の平均

フジテック東アジア過去10年間の最高値

推定・15%程度

中国事業における営業利益率

55%ディスカウント

31%ディスカウント

③中国事業に対する誤った経営判断 − 営業利益率の低迷

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38

o 中国の巨大なポテンシャルを利用して規模を拡大し、コストを削減するために、フジテックは中国における製造、販売体制およびメンテナンスネットワークに関する課題を解決しなければならない

o 変革プランは、大手OEM企業での勤務経験を持つ新たな中国市場責任者の下で実行すべきである

出典:AVI、キャピタルIQ、ベレンベルグ、ジェフリーズ

製造

販売ネットワーク

メンテナンスネットワーク

• エレベータ生産能力:年間推定25,000台(上海17,500台、廊坊7,500

台)• 稼働率:推定60%

• 中国全土で約300社の代理店と取引

• 販売活動はほとんど代理店が行なっている

• 代理店に対するインセンティブがもっとも手厚い会社の1つ

• 製品の外注を増やし、生産の柔軟性を向上させる

• 製造への更なる投資を限定する• グローバルでの製造体制を合理化することで過剰な生産能力を有効活用する。また、中国工場からの輸出を増やす

• 中国全土に商圏を拡大するするため、代理店を活用して低ティア都市における市場シェアを拡大する

• 現地経営陣に決定権を委ねることで、販売店や大手デベロッパーと長期的な関係の構築に注力する

提案現状

• 主に大手の代理店との取引で、その多くが低ティア都市を商圏としていない

• 代理店のカバー率が他のOEM企業より小さい。オーチスは1,000社以上の代理店・販売店と取引している(2009

年の600社強から大幅に増加)• 新設ビジネスに重点を置いているため、メンテナンス契約への移行率が低い(30%未満)

• 将来の収益安定のためにアフターセールス事業は必須• ほとんどのOEM企業は60-70%自社メンテナンス• 自社によるメンテナンス比率の低さが利益率および故障率(同業他社と比べて推定20-40%高い)に悪影響を及ぼしている

問題点

• 自社メンテナンス比率を高めるために、明確な目標を定め効果的な対策を講じる

• 販売代理店に対して、顧客をメンテナンス契約につなげる適切なインセンティブを提供する

③中国事業に対する誤った経営判断 − 提案

• 過剰生産能力により低稼働• 2016-2018年のように経済低迷時にマージンが脆弱• 垂直統合型社内生産に注力し顧客需要に柔軟に対応してこなかったため、製品ラインアップに乏しい。特に高層ビル用製品や低価格製品のラインアップが乏しい

• 自社によるメンテナンスが全体の20〜50%

• メンテナンス契約への移行率が30%未満と低い(トップのシンドラーは60%)

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o 北米事業は1977年に設立されたが、M&Aの活用不足および本社からの中央集権的な意思決定により足場を作ることができていない

o 北米の新規設置市場はグローバルのわずか3%にすぎず、サービス事業の占める割合が非常に大きいため、フジテックは本来ならば北米市場から非常に高いマージンを得られるはずである

o 北米フジテックは規模が小さい結果顧客が点在しているため、慢性的に低い利益率に苦しんでいる

出典:キャピタルIQ、 3月31日時点。ジェフリーズ

12,000

10,000

6%

(2,000)

0

2,000

10%

6,000

12%

4%

4,000

8%

8,000

14,000

16,000

18,000

20,000

22,000

24,000

(2%)

(14%)

(12%)

(10%)

(8%)

(6%)

(4%)

0%

2%

2010 20162013 2014

(百万円)

2011 20182015 20172012

連結営業利益率(右軸)

北米営業利益率(右軸)営業利益

売上高

北米 − 営業利益率が低迷 北米 − 販売拠点は疎ら

④非注力国での展開 –北米

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40

o 1982年にフジテックUKの設立をきっかけに欧州に進出した

o 40年近い歴史があるにもかかわらず、事業は成功していない

o 今日ほとんど利益をもたらさず、経営陣にとっては悩みの種である

出典:キャピタルIQ、 3月31日時点

欧州 − 営業利益率

(100)

300

100

900

400

0

200

(14%)

700

500

800

1,000

1,100

1,200

(4%)

(12%)

(10%)

(8%)

(6%)

600 0%

(2%)

2%

4%

6%

8%

10%

12%

(百万円)

2010 2011 2013 2014 2015 2016 2017 20182012

2020年:AMALGAMATED LIFTS社(英)を買収

財務指標• 売上高:£1,190万• 営業利益:£30万

2018年:フジテックドイツ(独)をVESTNER AUFZUGE社に売却

財務指標• 売上高: €100万• 営業利益:(€50万)

④非注力国での展開 –欧州

欧州事業の合理化を始めたがすでに時期を逸している

連結営業利益率(右軸)

欧州営業利益率(右軸)営業利益

売上高

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41

o 北米および欧州に対するフジテックの戦略は、過少投資の一方で再編に抵抗しているように、不明確である

o 北米および欧州での苦戦を克服するために、フジテックは明確なマイルストーンを定め、エグジットの可能性も含めて有効な対策を講じる必要がある

出典:AVI、2020年3月31日時点

規模拡大

戦略的再編

オーガニック(内部)成長

• 一貫した投資が少ない

• 2020年にMALGAMATED LIFTS社(英)を買収したが、その収益はわずか1,200万ポンド(全体の1%未満)

欧州

• フジテック全体の水準比で何年間も過少投資状態

• フジテック経営陣は北米部門の戦略的な組織再編について聞く耳を持たない

北米

• 2018年にドイツ事業を処分• 2007年にダルトン・インベストメンツが欧州事業撤退を提案したがフジテックはこれを拒否し、その後も損失を計上し続けている

買収

0.1% 0.1% 0.1% 0.3% 0.1% 0.1% 0.1% 0.2% 0.3%

1.5% 1.7%

2.6% 2.5%2.0% 1.8% 1.7%

20182010 2012 2014 2016

2.7% 1.3%

北米

フジテック全体

0.0% 1.0% 0.9%

3.0%

0.0% 0.0%

1.5% 1.7%

2.6%2.0% 1.8% 1.7%

20182010 2012 2014 2016

0.0%

2.7% 1.3%

0.2%

2.5%

0.2%

Capex・売上比

弊社の提案

• なし

Capex・売上比

欧州

フジテック全体

• 戦略的パートナーとの再編に関する協議を受け入れる• 北米部門を継続するか、より事業が効率的な他社に売却するか、戦略的決定を行う

• 推定12,000台のエレベータを管理している現状から、事業売却に多くの関心が集まる可能性が高い

• 欧州部門の組織再編を加速する• アジア市場に資源を集中させるため、完全撤退も検討する

④非注力国での展開 − 提案

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42

o フジテック経営陣や業界関係者との対話から、中央集権型の意思決定構造ではフジテックは現地社員の知見・経験を有効に活用できないことが明らかとなった

o 本社による管理が強すぎると柔軟性が失われ、官僚的で非効率な意思決定体制になる

o 日本の経営陣によるマイクロマネジメントではなく、海外現地支社へさらに決定権を委ねることで、以下のさまざまな課題の多くに対応できる

⑤中央集権型の意思決定構造

現地の知見を活用しローカルのニーズに応える

• フジテックは、現地の顧客ニーズに合った適切な製品を適切な価格で提供できていなかった。これは、例えば中国での市場シェアが拡大していない状況からも明らかである

• 中国の事業を日本の経営陣が運営しているが、官僚的で現地市場の知識が乏しいと批判されている

効率的な経営を実現する

• フジテックの経営陣は、「規模・展開地域・事業構成等が異なるため、同業他社をベンチマークすることは困難なので行っていない」と主張している

• 意思決定を海外現地のエキスパートに委ねることで、ローカルベースで競合相手をベンチマークすることができ、フジテックはより適切に自社の相対的な事業効率性を認識することができる

事業戦略を最適化することで利益を最大化する

• フジテックは海外事業の利益を最適化できていない。例えば、新設事業に重点を置いているため、新設時の新規顧客をメンテナンス契約に移行させられていない

• 現地経営陣にもっと権限を与えることは、最適な事業戦略を選択する上で役立つ

M&Aの機会を最大限利用する

• 何年にも及ぶ業界統合の結果、魅力的なM&Aの機会は少なくなった

• 海外現地支社の経営陣はM&Aの機会を探すための地域でのネットワークや知識を持っている。彼らに対してM&Aの追求を奨励し、そのための権限も与える

出典:AVI

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43

o 中央集権型の意思決定構造は、現地市場の知識が豊富で本来陣頭指揮をとるべき現地の経営陣や従業員に多大な不満をもたらす

o フジテックの従業員が公開したレビューから、彼らの不満が浮き彫りになっている

出典:グラスドア、ジョブ592および看准注:グラスドアは英語、ジョブ592と看准は中国語からの翻訳

古い組織で働いているように感じる

グラスドア/インド/2020年4月

恐竜時代のような政策。1980年代的思考

グラスドア/匿名/2018年8月

部署間に多くのしきたりが存在する

グラスドア/シンガポール/2014年4月本社とのコミュニケーションが非常に難しい。

そのため、物事を実行が難しくなり、極めて効率が悪い。また、不必要に従業員を解雇することは深刻な問題である

ジョブ592/華昇フジテック/2018年5月

組織構造の変更があまりに頻繁に行われるので、

中間管理職として大いに不安を感じる。

部門長も頻繁に変わり管理のスタイルもすぐに変更される。

看准/華昇フジテック/2019年1月

本社と子会社の間には隔たりがあるため、物事を進めるのに多額のコストがかかりコミュニケーションが難しい

ジョブ592/華昇フジテック/2018年5月

⑤中央集権型の意思決定構造 (続)

“ ”

””

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44

フジテックの市場からの過小評価の改善

規律ある資本政策の欠如

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45

o 企業にとって耐久力があり強固な財務基盤を持つことはきわめて重要である

o フジテックの非効率なバランスシートは企業価値を押し下げている。フジテックの自己資本比率62%に対して同業他社平均が27%(オーチスは12%)であることを勘案すると、現預金と投資有価証券がバランスシートの32%を占めているのは過剰である

o フジテックは運転資本と借入を十分に活用しておらず、ROEの低さの一因となっている

o 厳格な資本政策がなく、取締役会は株主価値にとって不可欠な要素について十分に配慮していない

規律ある資本政策の欠如

出典:キャピタルIQおよび各社報告書注:1少数株主持分およびその他の包括利益を含む。 2オーチスは自己資本がマイナスであるため、ROEの計算ができない。 3オーチスは会社分割以前の財務情報が限られておりデータが得られない。 4レバレッジ目標を達成した時点で自己株式取得の計画を公表している。

ROE自己資本比率

%1

過去10年間のキャッ

シュフロー還元率%配当性向 目標還元率

資本政策の

開示

フジテック 8.8% 62% 29% 40% 開示無 無

コネ 30.1% 37% 70% 94% 無 有

オーチス ---2 -37% --- 3 --- 3 40%

自己株式取得4有

シンドラー 24.4% 37% 56% 50% 35-65% 限定的

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62%

37% 37%

2%

6% 10%

23%50% 43%

20% 9% 17%

Fujitec Kone Schindler

グローバルの同業他社の負債・資本

株主資本、その他資本・少数株主持分 債務 運転資本 その他

46

規律ある資本政策の欠如 –過剰な株主資本

o 資本効率の最大化と財務安全性のバランスをとることは難しい

o フジテックは資本効率に注力してこなかった結果、膨れ上がったバランスシートを適切に管理できていない状態が続いている

o 総資産に占める自己資本の割合が、同業他社平均27%に対し、フジテックは62%1

出典:キャピタルIQおよび各社報告書注: 1オーチスを除く

フジテックは借入や運転資本を十分に活用せず高コストの資本(エクイティ)に過度に依存している

コネとシンドラーのバランスシート管理の方針は保守的だが企業価値を高めるものである

フジテック コネ シンドラー

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29%

70%56%

21%

17%

11%7%

5%

-2%

0%

8%

8%29%

10%

21%10%

-5%

8%5%

0%4%

Fujitec Kone Schindler

過去10年間のキャッシュフローの配分

株主還元 現金の蓄積 債務返済 買収

設備投資 運転資本 少数株主配当金

47

規律ある資本政策の欠如 –低い株主還元率による過剰な株主資本

o フジテックは同業他社と比べて株主への現金還元率が低い

o 過去10年間において、フジテックは営業活動によるキャッシュフローの29%しか株主還元に割り当てていない。コネは 70% 、シンドラーは56%であった

o フジテックは10年分のキャッシュフローの 21%を無駄にバランスシート上に貯めこんだ。同業他社平均は14

%である

o さらに、キャッシュフローの7%を株主資本よりもコストの低い負債の返済に使用した。負債の返済を除くと、10年分のキャッシュフローの28%を蓄積したことになる。同業他社平均は16%である

フジテックの株主への現金還元は非常に小さく、代わりにコストの低い負債の返済を行い、目的もなくバランスシート上に現金を蓄積した

フジテックの経営陣は設備投資に対する高額な資本支出を理由に買収を見送ってきたが、そうした戦略の結果には疑問が残る

出典:キャピタルIQおよび各社報告書注:資本配分は運転資本の前の営業活動によるキャッシュフローに基づく

フジテック コネ シンドラー

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規律ある資本政策の欠如 –不適切な運転資本管理による過剰な株主資本

o 純運転資本がプラスの企業はグローバルな同業他社の中でフジテックだけである

o 製造の外注率が低いことや顧客やサプライヤーとの不利な取引条件が、特に棚卸資産などの過剰な運転資本を生み出している

-16%-14%

-6%

17%

Otis Kone Schindler Fujitec

純運転資本 / 総資産1

22

30

5459

Otis Kone Schindler Holding Fujitec

棚卸資産在庫日数2

出典:キャピタルIQおよび各社報告書注: 1運転資本=売上債権+棚卸資産+/− 前渡金 – 未払金 –未払費用として定義。 2 棚卸資産在庫日数=(平均棚卸資産/売上原価)×365。各社の売上原価は、可能な限りに「材料費+人件費+製造原価」により算定した。

オーチス シンドラーコネ フジテック

フジテックコネオーチス シンドラー

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規律ある資本政策の欠如 –政策保有株式による過剰な株主資本

o フジテックは58億円相当の上場株式39銘柄を保有している。これは同社の時価総額の5%、バランスシート上の資産の4%にあたる

o このうちの25社とは、旧態依然とした「顧客や取引先との関係構築」のために株式を持ち合っている

o 日本版コーポレートガバナンス・コードは、こうした政策保有株式の縮減を促しており、企業に対して縮減に関する方針を示し、政策保有株式を処分しても取引関係が損なわれることがあってはならないとしている

出典: キャピタルIQ、およびフジテック2019年3月期有価証券報告書注:2019年3月31日時点での保有数に基づく2020年4月24日時点での価値

銘柄価値(100万円)

2020年4月24日時点株式持合有無

(株)クボタ 969 有

住友不動産(株) 856 有

澁澤倉庫(株) 546 有

(株)大気社 431 有

(株)酉島製作所 327 有

(株)内田洋行 324 有

小野薬品工業(株) 222 有

富士電機(株) 218 有

サッポロホールディングス(株) 218 有

積水樹脂(株) 216 有

その他(29銘柄) 1,514 有(15/29)

合計 5,841

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94 94 94 94 94 94 94 94 94 94 90

0 0 0 0 0 07

13 13 139

FY2009 FY2010 FY2011 FY2012 FY2013 FY2014 FY2015 FY2016 FY2017 FY2018 FY2019

フジテックの発行済株式数および自己株式数 (100万株)

Shares Outstanding Treasury Shares

50

o フジテックは、2015年2月の発行済株式の6.4%の取得、2015年4月の7.4%の取得の2度しか過去に自社株買いを実施していない

o どちらも、取得発表の前にあらかじめ売手が決定しており、市場取引時間の後に行われることの多い、ToSTNeT-3

を通して実施された

o 当該取得の主たる目的は、UTC(オーチスの元オーナー)関連会社がフジテックからエグジットするために実施されたように見受けられ、株主還元が主たる動機ではなかった

o フジテックはそのうちの3.9%しか消却しておらず残りの10.0%は自己株式として保有したままであるが、再発行(自己株式の処分)のリスクを排除するためにも消却すべきである

規律ある資本政策の欠如 –過去の自社株買いおよび不要な自己株式保有

出典:キャピタルIQおよび会社発表情報

10.0%の株式が不必

要に自己株式として保有されている

発行済株式数 自己株式数

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規律ある資本政策の欠如 –資本政策の欠如

o フジテックは資本政策を開示しておらず、「資本コストを意識した資本政策」とだけ述べている 1

o 資本効率は企業価値の重要なドライバーであり、取締役会において綿密に分析され、株主に開示されるべきである

o 情報の粒度は異なるものの、同業他社はそれぞれ資本政策を開示している

o フジテックは膨れ上がったバランスシートの根拠や株主還元の目標値などを含め、検討を重ねた詳細な資本政策の概要を株主に示すべきである

出典: キャピタルIQ、およびフジテック2019年3月期有価証券報告書注: 1フジテック2019年コーポレート・ガバナンス・レポートより。 2レバレッジ目標を達成した時点で自己株式取得の計画を公表している

資本政策 株主還元方針

コネ

純運転資本をマイナスに保つこと、高い資産回転率の目標設定について8段落を費やして記載。強固なクレジット、借入の活用、資本導入に際してはWACC

をハードルレートとして使用することなどを確約している

柔軟に対応

オーチス

株主説明会のプレゼンテーションの中で、スライド1

枚全てを資本配分についての説明に割り当てている。2020年と2021年で2.5億ドルの債務を返済しその後のデレバレッジはないとしている。配当性向は持続可能な40%、目標のレバレッジ効果が達成できれば自己株式を買い戻す、追加のM&Aを実施

40%

自己株式取得2

シンドラーアニュアルレポートに、独立した資本管理の項目を設けている。高い信用格付を維持すること、純流動資産および自己資本比率を注視した資本管理を行う

35%〜65%

2019年中期経営計画に「資本コストを意識した資本政策」とだけしか記載がない

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規律ある資本政策の欠如 –非効率なバランスシート構造によるROEおよび企業価値の悪化

o 自己資本利益率(ROE)は企業価値の主要な原動力であり、R(リターン)と E(自己資本)の双方により決定する。すなわち、利益を増やすか、自己資本を減らすかのいずれかである

o フジテックは利益率が比較的低く改善の余地はあるが、加えてバランスシートの効率を改善する方法を模索する必要がある

o 同業他社の中でレバレッジ、資本回転率ともに最低であり、バランスシート管理の稚拙さが浮き彫りになっている

8.8%

30.1%24.4%

Fujitec Kone Schindler

自己資本利益率(ROE)

出典:キャピタルIQおよび各社報告書注:オーチスは自己資本がマイナスであるため本分析から除外。少数株主持分および2年間の株主資本/資産の平均を含む、最新の通年結果に基づく。

5.8%

9.4%8.2%

Fujitec Kone Schindler

純利益率

1.6

2.6 2.7

Fujitec Kone Schindler

レバレッジ(総資産/株主資本)

0.9

1.21.1

Fujitec Kone Schindler

資産回転率(売上高/総資産)

フジテックは同業他社の中でROEが最も低い。ROEはRとEの両輪で成り立つものである

フジテック コネ シンドラー フジテック コネ シンドラー フジテック コネ シンドラー

フジテック コネ シンドラー

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規律ある資本政策の欠如 –非効率なバランスシート構造によるROEおよび企業価値の悪化 (続)

o コネおよびシンドラーのバランスシート構造は、良い手本として見習うべきである

o 両社とも同族企業であり、経営陣は堅実性と株主還元の健全なバランスの両立に成功している

o 運転資本をより綿密に管理し、過剰な資本を株主に還元することで、ROEを向上させながらも強固な財務基盤を維持することができる

出典:キャピタルIQおよび各社報告書注:オーチスは自己資本がマイナスであるため本分析から除外。少数株主持分および2年間の株主資本/資産の平均を含む、最新の通年結果に基づく。

5.8%

9.4%8.2%

Fujitec Kone Schindler

純利益率

8.8%

18.0%

30.1%

24.4%

Fujitec Fujitec Matched Kone Schindler

自己資本利益率(ROE)

0.9

1.2 1.21.1

Fujitec FujitecMatched

Kone Schindler

資産回転率(売上高/総資産)

1.6

2.7 2.6 2.7

Fujitec FujitecMatched

Kone Schindler

レバレッジ(総資産/株主資本)

バランスシートの管理を改善することで、ROEおよび株主価値は大幅

に向上する

フジテック コネ シンドラー フジテック(達成可能な水準)

フジテック コネ シンドラー

フジテック(達成可能な水準)

フジテック コネ シンドラー

フジテック(達成可能な水準)

フジテック コネ シンドラー

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o フジテックは自己資本比率が高すぎ、ROEや企業価値を損ねている

- フジテックのROEは8.8%、コネの30.1%、シンドラーの24.4%と比較して最下位である

- このROEの低さは、利益率の低さも一因であるが、株主資本が大きすぎることで助長されている。コネやシンドラーのバランスシート管理に倣うことで、フジテックはROEを18.0%

まで改善することが可能

- 過剰な資本を減らすために、フジテックは自己株式取得を実施するとともに配当性向を50%

超まで引き上げるべきである。また取得した自社株はすべて消却するべきである

規律ある資本政策の欠如 –資本効率を改善するための提案

過剰な自己資本の圧縮

運転資本管理の強化

政策保有株式の売却

綿密な資本政策の導入

o より厳格な運転資本管理を

- 運転資本がプラスの会社は、グローバルな同業の中でフジテックのみ

- 外注率の低さということで一部は説明できる

- 製造工程のシフトと運転資本の管理徹底により、相当の現金が節約できる可能性がある

o バランスシート上の資産の4%が政策保有株式である

- フジテックは取引関係の維持、強化のために39社もの上場銘柄に投資している

- これは旧態依然としたビジネス取引形態であり、コーポレートガバナンス・コードも推奨

していない

- フジテックは政策保有株式をすべて売却し、現金を株主に還元すべきである

o フジテックは綿密な資本政策を導入し、公開すべきである

- フジテックの資本政策は不明確で詳細情報を欠いており、経営陣にとっての資本政策の優先順位の低さを表している

- フジテックはバランスシート構造が同業他社とは異なることを踏まえて、そのスタンスを説明し、どのような改善を行う計画であるかの詳細な戦略を提示すべきである

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フジテックの市場からの過小評価の改善

脆弱なコーポレート・ガバナンス

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o フジテックのガバナンスはグローバル展開している昇降機企業の中で最も弱い

o ガバナンスの弱さは株主にとってリスクであり、フジテックのバリュエーションの低さの一因となっている

o 同問題は容易に是正できる

脆弱なコーポレート・ガバナンス

出典:各社報告および企業ウェブサイト1委員会設置会社:監査委員会、指名委員会および報酬委員会を置く会社

取締役会におけ

る独立社外取締

役の割合

会長と社長の分

離取締役会の構成

取締役会に

おける執行

役員の割合

報酬・

指名委員会買収防衛策

フジテック 56% (5/9) 無 監査役会 44% 無 有

同業他社(以下)

67% 有 委員会設置会社1 20% 有 無

日立 73% (8/11) 有 委員会設置会社 27% 有 無

コネ 67% (6/9) 有 委員会設置会社 0% 有 無

三菱電機 42% (5/12) 有 委員会設置会社 25% 有 無

オーチス 78% (7/9) 有 委員会設置会社 22% 有 無

シンドラー 64% (7/11) 有 委員会設置会社 27% 有 無

東芝 83% (10/12) 有 委員会設置会社 17% 有 無

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57

o フジテックの独立社外取締の取締役会における割合は56%であり、同業他社平均67%(最高は東芝の83%)と比べて低い

o 2019年6月からの遠藤邦夫氏および山平恵子氏の独立社外取締役としての貢献を歓迎する一方、特に資本市場、M&A 、グローバルな昇降機業界における知見が必要であり、さらなる独立性が求められる

脆弱なコーポレート・ガバナンス –相対的な独立性の低さ

出典:フジテックレポート2019

氏名 役職名 選任日 経歴

内山 高一 代表取締役社長執行役員社長

2002年6月(代表取締役)

フジテック (1976年入社)

岡田 隆夫取締役執行役員副社長

2012年6月 フジテック (1976年入社)

加藤 義一取締役専務執行役員

2017年6月 フジテック (1977年入社)

浅野 隆史取締役専務執行役員

2017年6月フジテック (1977年入社)

佐伯 照道 社外取締役 2014年6月 北浜弁護士事務所 (弁護士)

杉田 伸樹 社外取締役 2017年6月 経済学部教授

山添 茂 社外取締役 2018年6月 丸紅

遠藤 邦夫 社外取締役 2019年6月 本田技研工業

山平 恵子 社外取締役 2019年6月 クボタハウス (現サンヨーホームズ)

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o フジテックは従来の集権的な取締役会および監査役会の制度を採用している

o 2003年まで日本では集権的な取締役会制度が唯一の形態であった

o 監査等委員会設置会社制度では取締役会と監査役会の2つ別々の組織があり、監査役会は過半数は社外監査役とすることが定められているが、取締役会の事項には投票しない

o 現体制の最大の欠点は意思決定が経営陣に委ねられないことである

o 現体制においては、重要性の低い決議や報告事項なども取締役会が決定し、支社の改廃や経営陣の選任・解任などの決定も取締役会が行わなくてはならないため、長期的な戦略や全体像の把握を行う時間がほとんどない

o グローバル展開を行うフジテックの同業他社はすべて、意思決定機能を向上するために委員会設置会社の制度を取り入れており、フジテックもこれを倣うべきである

脆弱なコーポレート・ガバナンス –不適切な取締役会制度

企業名 取締役会構成取締役会における

役員の割合

フジテック 監査役会 44%

日立 3つの委員会1 27%

コネ 3つの委員会 0%

三菱電機 3つの委員会 25%

オーチス 3つの委員会 22%

シンドラー 3つの委員会 27%

東芝 3つの委員会 17%

監視役会制度を採用する企業の問題点

意思決定の委譲ができない

取締会に重要性の低い議題が集中し、長期的戦略について議論する時間が十分に確保できない

法的な委員会構成でなく、報酬や選任に関する決定において厳格さに欠ける

1 委員会設置会社:監査委員会、指名委員会および報酬委員会を置く会社

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o フジテックはグローバルな昇降機企業の中で唯一報酬・指名委員会を設置していない

o 報酬の決定、取締役の任命に関する意思決定が曖昧で透明性がない

o 報酬・指名に関わる意思決定を改善するために、独立社外取締役が過半数を占め社外取締役を議長とする専門の諸委員会が必要である

o 上記はフジテックを委員会設置会社とすることで実現できる

脆弱なコーポレート・ガバナンス –報酬委員会および指名委員会の欠落

グローバルな同業他社はすべて報酬・指名委員会を設置している

企業名 委員会

フジテック 監査役会

日立 監査・報酬・指名委員会

コネ 監査・報酬・指名委員会

三菱電機 監査・報酬・指名委員会

オーチス 監査・報酬・指名委員会

シンドラー 監査・報酬・指名委員会

東芝 監査・報酬・指名委員会

出典:みずほ、金融庁および東京証券取引所資料

東証一部上場企業の中で 報酬委員会

または指名委員会を設置している企業の割合は増加している

11%

27%32%

37%

50%

13%

30%35%

38%

52%

2015 2016 2017 2018 2019

指名委員会 報酬委員会

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o フジテックには独立した会長職がなく、内山高一氏が社長、CEO、および会長職を兼任している

o 経産省は「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務方針(CGSガイドライン)」において、企業は「取締役会長の権限・肩書を社長・CEOに付与することの是非を検討するべきである」としている

o 社長・CEOが会長を兼任している会社は、グローバルな同業他社の中でフジテックのみである

o 同業他社で会長が執行役員を兼任している企業はない

o フジテックは社外の独立性のある会長を選任し、取締役会を監督する任を与えるべきである

脆弱なコーポレート・ガバナンス –会長と社長・CEOの職責の重複

企業名 会長 社長・CEO

フジテック 社長&CEO 会長

日立 独立、業務執行役員でない 取締役

コネ 社内、業務執行役員でない 取締役でない

三菱電機 社内、業務執行役員でない 取締役

オーチス 社内 取締役

シンドラー 社内 取締役でない

東芝 社外、業務執行役員でない 取締役

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o フジテックは2007年の買収提案への対応策として買収防衛策を導入した

o 取締役会の指示および株主総会での承認があれば、株式の20%以上を取得する株主の議決権を希薄することができる

o 当防衛策は3年ごとに株主総会に諮られ、2019年には64%から支持された

o 株主の決議によってのみ発動できるものの、その法的な複雑さと取締役側に買収者を足止めする権限があることから、買収を思いとどませるに十分である

o 買収防衛策は取締役会の保身であるとのイメージが強く、敵対的買収に対して健全なリスク管理ができていないと見なされ、株主価値を最大化するための動機を害する

o 他条件がすべて同じと仮定すると、買収防衛策は企業価値を損なうと言える

脆弱なコーポレート・ガバナンス –買収防衛策

ポイズン・ピル導入

ポイズン・ピル非導入

フジテック日立、コネ、三菱電機,

オーチス、シンドラー、東芝

グローバル展開する同業他社のうち買収防衛策を導入しているのはフジテックのみ

買収防衛策を導入する企業は年々減少フジテックはこの流れに逆行し2019年に更新を要求

27

174

410

569 563 539 519 513 508 494 477450

407 384327

05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19

買収防衛策を導入している企業

出典:野村証券:各社開示情報注:日本の全上場企業を含む

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o 取締役の2/3が独立社外取締役になるように追加で独立社外取締役を選任する

- 意見の多様性を確保するために、フジテックは同業他社と同様に取締役会のメンバーの2/3

を独立社外取締役とするように務める

- 新しい独立社外取締役は、グローバルな昇降機業界の専門知識に加えて資本市場やM&Aの経験を有することが望ましい

脆弱なコーポレート・ガバナンス –ガバナンス改善のための提案

独立性の向上

取締役会の構成の変更

会長の役職の分離

買収防衛策の廃止

o フジテックを委員会設置会社とする

- 同業他社はいずれも委員会設置会社である

- 委員会設置会社は経営陣の権限を執行役員に委譲することができるため、取締役会は長期的・戦略的な意思決定に集中できる

- 重要な指名や報酬に関する事項について、独立した専門的な知見が得られ、公正で周到な意思決定が保証される

o 社外から会長を選任する

- すべての同業他社と同様に、会長と社長の職責を分けることで、適切な説明責任と

厳格な意思決定が行われるようする

- 独立した監督機能を高めるために独立社外会長を選任する

o 時代遅れの買収防衛策を廃止する

- 買収防衛策は株主の犠牲の上に存在する経営陣の保身である

- 同業他社で買収防衛策を導入している会社はなく、日本企業全体でも廃止が相次いでいる

- 取締役会は買収防衛策を廃止するか、最低でも2022年の決議の際に更新しないことを望む

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フジテックの市場からの過小評価の改善

株主との対話不足

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o フジテックの株主に対する情報開示および透明性は理想とほど遠い

o 同業他社はIRを専門に扱う部署があり、株主との対話に相当な資源を割いている

o 情報不足と意識の低さがフジテックの評価を落としている

株主との対話不足

出典:各社報告書、各社ウェブサイト、ブルームバーグ注:1 英語 2 IR関連業務木村靖彦氏が率いるが彼の主たる職務ではない。3 上場前に公開したForm 10-Kは846ページ。4オーティスは決算発表前のため、2020年第1四半期報告書のページ数

投資家向け説明会

/中期経営計画の

ページ数

アナリスト・

カバレッジ数

アニュアル・

レポートの

ページ数

中間報告書の

ページ数IR専門部署

決算説明の

時間

フジテック 15ページ 0115 / 641

ページ2 ページ1 無2 14分

コネ5 種類のプレゼン合計131ページ

32 100ページ 34 ページ 有 1時間25分

オーチス 77ページ 7 -3 - 有 53分4

シンドラー n/a 24 226ページ 18ページ 有 1時間55分

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o フジテックの15ページの中期経営計画は具体性を欠いており、戦略の記載がほとんどない

o 熟考されておらず、計画策定に手間をかけていないことは明らかであり、株主との対話を重視していない

o 経営陣が掲げた目標や目的は論理的根拠がなく、達成するための計画も示していない

o 2016〜2018年の中期経営計画において利益予想を36%下回ったにもかかわらず、その分析がない

o 競合他社と比べて透明性は標準以下であり、業界トップのコネと比べると特に劣る

株主との対話不足 –戦略の欠如および具体性を欠く中期経営計画

出典:各社報告書、各社ウェブサイト

詳細な説明や数字を伴わないあいまいな目標

コネの2018年計画では、中国戦略について29ページのスライドプレゼンテーションを作成(一方、フジテックは1文のみ)

漠然として魅力のないフジテックの中期経営計画

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株主との対話不足 –セルサイド・アナリストによるカバレッジ

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o フジテックはセルサイド・アナリストによるカバレッジがなく、市場による認知度が限定的

o 同業他社と比べて大幅に低いカバレッジは、バリュエーションの低さの原因の一つであると考えられる

o フジテックの時価総額、魅力あるビジネスモデル、外国人株主の多さなどを考えれば、カバレッジがまったくないのは不思議である

o 投資銀行がカバレッジ対象にするか否かについてフジテックは直接コントロールできないが、透明性の向上とセルサイド・アナリストとの対話を改善することにより働きかけることができる

o 他にも、シェアードリサーチといった有料のリサーチサービスがあり、フジテックも利用することを検討すべきである

アナリスト・

カバレッジ数

フジテック 0

コネ 32

オーチス 7

シンドラー 24

時価総額〜1,000億

1,000〜

1,500億円

1,500〜

2,000億円

2,000億円

セルサイド・アナリストの平均人数

0.4 3.0 3.8 9.1

出典:キャピタルIQ、ブルームバーグ注:すべての会社が東証1部または2部に上場

フジテックの時価総額1,250億円を考えると、3名程度のセルサイド・アナリストによるカバレッジが期待される

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o IRを専門に扱う部署がないことは、株主向け資料の質に現れる。現在IRを統括している役員はオーバーワークで、株主だけに専念することができない。

o フジテックの2ページ構成の英語版四半期報告書には、業績の説明や詳しい財務情報は一切含まれていない

o 株主のほぼ50%が外国人であることを踏まえ、英語での詳しい情報開示は不可欠である

o フジテックのアニュアルレポートの情報は、日本語版・英語版とも同業他社が報告書に掲載している詳細情報レベルに遠くおよばない

o 決算説明会のウェブキャスト動画の英訳は役立つが、説明は短く紋切り型で、市場参加者からのQ&Aが含まれていない

株主との対話不足–詳細・透明性の欠如およびIR専門部署の不在

出典:各社報告書、各社ウェブサイト注:1 IR関連業務木村靖彦氏が率いるが彼の主たる職務ではない。2 IR責任者>コネ:Sanna Kaje氏、オーチス:Stacey Laszewski氏、シンドラー:Marco

Knuchel氏。3オーチスは決算発表前のため、2020年第1四半期報告書のページ数

IR専門部署 決算説明会の時間

フジテック 無1 14分

コネ 有2 1時間25分

オーチス 有2 53分3

シンドラー 有2 1時間55分

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株主との対話不足 –改善に向けた提案

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o 報告書類および中期経営計画の開示情報を改善する

- フジテックの透明性と情報開示は、同業他社と比べて平均以下の水準

- 具体性を欠いた中期経営計画は戦略の示し方にも問題があり、株主との対話を軽視していることを表している

- 事業の戦略レビューを実施した後、フジテックは十分に練り上げた綿密な戦略を投資家向け説明会で発表すべきである

透明性向上

セルサイド・アナリスト・カバレッジへの働きかけ

IR機能の改善

o セルサイドへアナリスト・カバレッジを積極的に求める

- フジテックはセルサイドのカバレッジがない

- フジテックの規模、魅力あるビジネスモデル、外国人株主の多さなどを考えれば不思議なことである

- 開示を改善し戦略レビューを実施した後、フジテックは市場での認知度を高めるために、セルサイドに同社をカバーするよう働きかけるべきである

o 専任のIR担当責任者を任命し、IR専任とする

- フジテックには専任のIR担当責任者がいない

- フジテックの株主との対話の拙さは、IRチームの不在で説明できる。現在株主との対話を統括する役員はオーバーワークで、質の高い資料の作成に集中することはできない

- フジテックは、 IR機能に資源を投じて、専任のIR担当責任者を選任してチーム作りをできるようにするべきである。新設するIRチームはロードショーやカンファレンスコールなどを通じて、定期的に株主と対話するべきである

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Appendix

経営陣の主張の誤り

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フジテックの経営陣は、営業利益率の低さは以下の要因によるものと主張している

1. マージンが低い新設事業の比率が同業他社に比べて高い

2. マージンが低い発展途上国市場の比率が同業他社に比べて高い

しかし、上記の理由だけでは説明がつかず、営業利益率の相当の改善余地がある

経営陣の主張の誤り

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o フジテックのアフターサービス事業の売上高構成比は50%で、同業他社とほぼ同じ割合である

経営陣の主張の誤り – 1.

「フジテックは新設事業比率が高い」

43%48%

53%48% 50%

57%52%

47%52% 50%

新規設置 メンテナンス・リニューアル

事業構成新規設置 vs メンテナンス・リニューアル

出典:キャピタルIQ、ジェフリーズ

ティッセンクルップ

オーティス シンドラー コネ フジテック

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o オーティスは新規設置とメンテナンス各々の営業利益率を公開している

o オーティスの新規設置事業の営業利益率でさえフジテックの全事業の営業利益率を上回る

o オーティスのメンテナンス事業のマージンの高さは、フジテックがメンテナンスに比重を置いた事業ポートフォリオに変えた場合のアップサイド・ポテンシャルを示している

経営陣の主張の誤り – 1.

「フジテックは新設事業比率が高い」(続)

6.0%

16.8%

7.0%

21.5%

フジテックメンテナンス

オーチスメンテナンス

フジテック全事業

オーチス新規設置

推定 > 6%

フジテック新規設置

オーチス全事業

推定 < 6%

出典: AVI、キャピタルIQ

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o 同一条件の下で比較するのは難しいが、フジテックの売上高の40%は先進国市場かつメンテナンスおよびリニューアルに依存する日本が占めている

o 北米も加えるとフジテックの売上高の少なくとも53%が先進国市場からで、コネ社の 62%と大きな違いはない

o 発展途上国市場への比重が高いことを、マージンの差の理由にはできない

経営陣の主張の誤り – 2.

「発展途上国市場の比率が高い」

出典:キャピタルIQ

地域別売上高

欧州0%

北米27%

米州(米国除く)8%

その他56%

中国16%

スイス9%

米国21%

欧州(スイス除く)、中東、アフリカ

35%

アジア・パシフィック(中国除く)13%

中国14%

アジア・パシフィック

39%

EMEA41%

日本40%

米州21%

東アジア38%

南アジア9%

北米13%

オーチス シンドラー コネ フジテック