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23 仙台医療センター医学雑誌 Vol. 9, 2019 受容体型チロシンキナーゼと固形がんの薬物治療 はじめに ヒト全ゲノムシークエンスの結果、90 のチロシ ンキナーゼ (tyrosine kinase TK) が同定され、その うち 58 が受容体型チロシンキナーゼ (receptor tyrosine kinase RTK) に、32 が非受容体型 TK 分けられた 1 。さらにキナーゼドメインのアミノ酸 配列の系統樹解析やタンパク質全体のドメイン構造 解析により、RTK 20 種類の、非受容体型 TK 10 種類のサブファミリーに分類された 1 RTK リガンドへの結合領域となる細胞外ドメイン、一回 細胞膜貫通ドメイン、細胞内のキナーゼドメインか ら構成される1。増殖因子などのリガンドが 細胞外ドメインに結合することにより受容体の二量 体が形成され、相互的に受容体間で自己リン酸化が 起こり、下流のシグナル伝達分子の結合部位が提供 され、Src homology 2 (SH2) ドメイン等を介して 下流のシグナル伝達分子が結合する。TK がシグナ ル伝達分子をリン酸化することによって核内の転写 因子までシグナルが伝達され、RTK は細胞内シグ 総説 受容体型チロシンキナーゼと固形がんの薬物治療 秋山聖子 国立病院機構仙台医療センター 腫瘍内科 抄録 受容体型チロシンキナーゼ (RTK) は種を超えて保存され、細胞増殖などの細胞内シグナル伝達経路に関わ る重要な分子である。リガンドが RTK の細胞外ドメインに結合することによってシグナル伝達が開始され、 RTK の二量体形成され、細胞内チロシンキナーゼ (TK) ドメインのリン酸化により、その下流の分子にシグ ナルが伝達される。RTK は腫瘍の発生、進展において重要な役割を持つ。がん細胞において、RTK の活性 型変異や発現量上昇が多数報告されており、RTK はがん治療の標的として様々な研究が行われて来た。近年 がん治療薬として、RTK やそのリガンドを阻害する分子標的治療薬、すなわち、抗体や小分子化合物 (TKI) が次々と開発され、がんの薬物療法において重要な役割を担っている。これらの薬剤は、単独で治療効果を 示すほか、既存の殺細胞薬と併用することで治療効果を増強させる。さらに、これまで殺細胞薬による薬物 療法に対して効果を示さなかった固形がんにおいて、優れた治療効果が報告されている。本総説では EGFRHER2VEGFRPDGFR(c-kit)ALK などの RTK ごとに、それぞれの RTK の特徴と、モノクローナル抗 体や TKI を用いた臨床試験など、分子標的治療薬による固形がんの治療の現状について概説する。 キーワード:受容体型チロシンキナーゼ (RTK) リガンド 分子標的治療薬 モノクローナル抗体 小分子 化合物 (TKI) EGFR/ERBB INSR PDGFR FGFR VEGFR MET ROS1 ALK K i n a s e L L Furin s e K i n a Ig Ig Ig s e K i n a Ig Ig Ig Ig Ig Ig Ig K i n a s e Fn3 Fn3 Fn3 Fn3 Fn3 Fn3 Fn3 細胞膜貫通領域 Fibronectin3型ドメイン システインリッチドメイン 免疫グロブリン様ドメイン キナーゼドメイン リガンド結合ドメイン Semaphorinドメイン IPT/TIGドメイン グリシンリッチドメイン MAMドメイン LDLaドメイン Fn3 Ig L Sema K i n a s e K i n a s e L Fn3 L s e K i n a Ig Ig Ig Ig Ig 細胞膜 K i n a s e Sema クラス I II III IV V K i n a s e G M G M M 1 受容体型チロシンキナーゼのドメイン構造

受容体型チロシンキナーゼと固形がんの薬物治療...RTK に対する分子標的治療薬には、大きく分け てモノクローナル抗体と小分子化合物

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Page 1: 受容体型チロシンキナーゼと固形がんの薬物治療...RTK に対する分子標的治療薬には、大きく分け てモノクローナル抗体と小分子化合物

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仙台医療センター医学雑誌 Vol. 9, 2019 受容体型チロシンキナーゼと固形がんの薬物治療

はじめにヒト全ゲノムシークエンスの結果、90 のチロシ

ンキナーゼ (tyrosine kinase TK) が同定され、その

うち 58 が受容体型チロシンキナーゼ (receptor tyrosine kinase RTK) に、32 が非受容体型 TK に

分けられた 1。さらにキナーゼドメインのアミノ酸

配列の系統樹解析やタンパク質全体のドメイン構造

解析により、RTK は 20 種類の、非受容体型 TK は

10 種類のサブファミリーに分類された 1。RTK は

リガンドへの結合領域となる細胞外ドメイン、一回

細胞膜貫通ドメイン、細胞内のキナーゼドメインか

ら構成される(図 1)。増殖因子などのリガンドが

細胞外ドメインに結合することにより受容体の二量

体が形成され、相互的に受容体間で自己リン酸化が

起こり、下流のシグナル伝達分子の結合部位が提供

され、Src homology 2 (SH2) ドメイン等を介して

下流のシグナル伝達分子が結合する。TK がシグナ

ル伝達分子をリン酸化することによって核内の転写

因子までシグナルが伝達され、RTK は細胞内シグ

総説

受容体型チロシンキナーゼと固形がんの薬物治療

秋山聖子

国立病院機構仙台医療センター 腫瘍内科

抄録

 受容体型チロシンキナーゼ (RTK) は種を超えて保存され、細胞増殖などの細胞内シグナル伝達経路に関わ

る重要な分子である。リガンドが RTK の細胞外ドメインに結合することによってシグナル伝達が開始され、

RTK の二量体形成され、細胞内チロシンキナーゼ (TK) ドメインのリン酸化により、その下流の分子にシグ

ナルが伝達される。RTK は腫瘍の発生、進展において重要な役割を持つ。がん細胞において、RTK の活性

型変異や発現量上昇が多数報告されており、RTK はがん治療の標的として様々な研究が行われて来た。近年

がん治療薬として、RTK やそのリガンドを阻害する分子標的治療薬、すなわち、抗体や小分子化合物 (TKI)が次々と開発され、がんの薬物療法において重要な役割を担っている。これらの薬剤は、単独で治療効果を

示すほか、既存の殺細胞薬と併用することで治療効果を増強させる。さらに、これまで殺細胞薬による薬物

療法に対して効果を示さなかった固形がんにおいて、優れた治療効果が報告されている。本総説では EGFR、

HER2、VEGFR、PDGFR(c-kit)、ALK などの RTK ごとに、それぞれの RTK の特徴と、モノクローナル抗

体や TKI を用いた臨床試験など、分子標的治療薬による固形がんの治療の現状について概説する。

キーワード: 受容体型チロシンキナーゼ (RTK) リガンド 分子標的治療薬 モノクローナル抗体 小分子

化合物 (TKI)

EGFR/ERBB INSR PDGFR FGFR VEGFR MET ROS1 ALK

Kin

ase

L

L

Furi

n

se

Kin

a

Ig

Ig

Ig

se

Kin

a

Ig

Ig

Ig

Ig

Ig

Ig

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Kin

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Fn3

Fn3

Fn3

Fn3

Fn3

Fn3

Fn3

細胞膜貫通領域 Fibronectin3型ドメイン システインリッチドメイン 免疫グロブリン様ドメイン

キナーゼドメイン リガンド結合ドメイン

Semaphorinドメイン IPT/TIGドメイン グリシンリッチドメイン MAMドメイン LDLaドメイン

Fn3

Ig

L

Sema

Kinase

Kin

ase

L

Fn3

L

se

Kin

a

Ig

Ig

Ig

Ig

Ig

細胞膜

Kin

ase

Se

ma

クラス I II III IV V

Kin

ase

G

M

G

M

M

図1 受容体型チロシンキナーゼのドメイン構造

Page 2: 受容体型チロシンキナーゼと固形がんの薬物治療...RTK に対する分子標的治療薬には、大きく分け てモノクローナル抗体と小分子化合物

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仙台医療センター医学雑誌 Vol. 9, 2019 受容体型チロシンキナーゼと固形がんの薬物治療

ナル伝達において重要な役割を担っている(図 2)。RTK は細胞増殖、分化、生存、代謝、移動に関

わるシグナルを伝達、制御している。悪性腫瘍細胞

内で発現上昇、活性型変異、局在偏移などが起こる

と、RTK が恒常的に活性化状態となり、血管新生、

浸潤能、転移能の増強をもたらす。近年では、これ

らのRTKを標的とした分子標的治療薬が開発され、

これらの薬剤は RTK の二量体形成阻害、リガンド

の中和、リガンドの結合阻害、受容体の内在化など

により RTK のシグナル伝達を阻害する。

RTK に対する分子標的治療薬には、大きく分け

てモノクローナル抗体と小分子化合物 (tyrosine kinase inhibitor, TKI) がある。両者の最も大きな

違いは、その分子の大きさである。小分子化合物は

分子量が数百と小さく、細胞膜を通過し細胞内に入

り、細胞内にある ATP- 結合ドメインに結合し

RTK の活性阻害を行う。小分子化合物は設計され

た標的以外の RTK にも親和性を示し複数の標的に

応用されている。モノクローナル抗体は分子量数

十万であり、RTK の細胞外ドメインやそのリガン

ドを標的分子として作用する。TKI と異なり、

ADCC (antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity) などの免疫作用を介した効果も有する

ことに特徴がある。

Epidermal growth factor receptor (EGFR) 阻害

薬は結腸直腸癌、非小細胞肺癌 (Non-small cell lung cancer NSCLC)、頭頚部癌で、human epidermal growth factor type 2 (HER2) 阻害薬は

乳癌、胃癌で、vascular endothelial growth factor (VEGFR) 阻害薬は結腸直腸癌を始めとして複数の

がんで、治療効果を示している 2。また、TKI の開

発によって、それまで薬物療法が効果を示さなかっ

た 甲 状 腺 癌、gastrointestinal stromal tumor (GIST)、腎細胞癌、肝細胞癌などにおいても、治

療効果が期待できるようになった。本総説で取り上

げた分子標的治療薬一覧を表 1 に示す。

1. EGFR/ERBB ファミリーEGFR/ERBB フ ァ ミ リ ー は、EGFR/HER1/

ErbB-1、HER2/ErbB-2/NEU、 HER3/ErbB-3、 HER4/ErbB-4 の4種類の RTK から成る。構造の

特徴としては (1) 細胞外のリガンド結合ドメイン、

(2) 二量体形成に関わるシステインリッチドメイン、

(3) 一回細胞膜貫通領域、(4) TK ドメイン (ATP 結

合ポケットと活性ループ)が挙げられる。リガンド

は epidermal growth factor (EGF)、 transforming growth factor alpha (TGFα)、 amphiregulin (AR)、 neuregulins (NRG)1-4、 epiregulin (EFG)、 betacellulin(BTC)、 heparin-binding epidermal growth factor (HB-EGF) が知られる。リガンドは

それぞれの受容体で異なり、EGF、 AR 、TGF α が EGFR に、HRG、 BTC 、 HB-EGF が EGFR と

ErbB-4に、 NRG1、 NRG2 がErbB-3とErbB-4に、

NRG3 、 NRG4 が ErbB-4 に結合する。しかし、

HER2 のリガンドは明らかにされておらず、HER2はリガンド非依存性に2量体形成をすると考えられ

ている。リガンドが結合することにより、EGFR/ERBB ファミリーはホモあるいはヘテロ二量体を

形成し、キナーゼドメインの活性化をすることが知

られている。キナーゼドメインの活性化により、

Src homology 2 (SH2) ドメインの結合部位がリン

受容体型チロシンキナーゼ

EGFR HER2 VEGF, VEGFR PDGFR (c-kit) ALK

モノクローナル抗体

cetuximab trasutuzumab bevacizumab panitumumab perutuzumab ramucirumab

necitumumab (国内未承認)

Trasutuzumab emtansine (T-DM1)

aflivercept (組み換え 融合タンパク質)

小分子化合物

gefitinib lapatinib sorafenib imatinib crizotinib

erlotinib neratinib (国内未承認) sunitinib sunitinib alectinib

afatinib pazopanib regorafenib brigatinib (国内未承認)

dacomitinib axitinib ceritinib osimertinib regorafenib lorlatinib

lenbatinib vandetanib

cabozantinib (国内未承認)

表1.本文中に記載した分子標的治療薬の一覧

表1.本文中に記載した分子標的治療薬の一覧

P

P P Grb2

RAS

PI3K

SOS

RAF

MEK

ERK

AKT

mTOR

PIP2 PIP3

細胞膜

P P

受容体型 チロシン キナーゼ (RTK)

リガンド 抗体薬 小分子 化合物 (TKI) 殺細胞薬

ALK TK

リガンドに対する抗体 例)bevacizumab

受容体に対する抗体 例)cetuximab trastuzumab ramucirumab

P

抗体薬物複合体 例)T-DM1

細胞外 ドメイン

チロシン キナーゼ (TK) P

例)crizotinib

例)gefitinib lapatinib regorafenib imatinib

細胞膜貫通 ドメイン

図2 分子標的治療薬の作用部位のモデル

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仙台医療センター医学雑誌 Vol. 9, 2019

酸化され、細胞内シグナル伝達経路が活性化され

る。

EGFR を標的とした治療1) 小分子化合物

NSCLC では、アジア人では 30-40% にEGFRの変異が検出される。わが国では NSCLC に対し

て、2002 年に gefitinib が、2007 年に erlotinib が

承認された。その後EGFR-TKIが有効なサブグルー

プが明らかとなり、エクソン 19 の欠失やエクソン

21 の点突然変異 L858R など、効果が期待できる

EGFR 変異が明らかにされた 3。これらのEGFR変異は、EGFR の恒常的活性化を引き起こすので

はなく、リガンドによる TK 活性化を増強し、

TKI による阻害活性に対しての感受性を上げると

考えられている 4。Gefitinib はプラチナとタキサン

併用療法を標準治療群とした第 3 相ランダム化比

較試験 (randomized controlled trial, RCT) におい

て、PFS の延長を示した 5。erlotinib は、EGFR変異を有する NSCLC の一次治療として、化学

療法を対照とした RCT において PFS の有意な

延長を認めた 6。プール解析の結果、EGFR-TKI治療による PFS 中央値は、erlotinib で 13.2 か月、

gefitinib で 9.8 か月、化学療法で 5.9 か月であっ

た 7。これらの可逆的な TKI は第 1 世代と呼ばれ、

EGFR 変異を持つ NSCLC の一次治療として用い

られるようになった 6,8。ただし、薬剤性肺障害に

代表される有害事象は重篤となる場合があるため、

喫煙歴、背景となる肺野の状態、他の治療薬使用の

有無などを考慮し、治療の適応は慎重に決定する必

要がある。また、皮膚毒性は患者にとって苦痛に感

じられる有害事象であり、患者へのセルフケア指導

が治療継続に大切である。 

基本的にすべてのEGFR 変異を有する NSCLCでは、10 - 13 か月で耐性を獲得する。耐性獲得機

序は 4 つのカテゴリーに分類される。最も多い耐

性機序は 2 次的なEGFR の変異であり、50-60%において T790M が報告されている。次に、別の代

替シグナル伝達経路の活性化が挙げられ、3-22%に HGF 受容体である MET の、1-13% に HER2 の

活性化が報告されている 9。エクソン 20 の点突然

変異である T790M では、EGFR タンパクの立体構

造が変化し、EGFR の ATP 結合部位への ATP の

結合能が高まることにより、第 1 世代 EGFR-TKIの結合親和性が低下する。

第2世代と呼ばれる afatinib は非可逆的な

EGFR 阻害薬である。前臨床の試験で afatinib は

T790M を獲得した EGFR-TKI 抵抗性の細胞にお

いて、阻害活性を持つことが期待されたが、下痢や

悪心が dose limiting toxicities (DLT) となり、臨床

試験においては T790M への阻害活性を示すことが

できなかった。Afatinb は重篤な下痢、皮疹、口内

炎などの有害事象が gefitinib より多く報告されて

おり、使用時に注意が必要である 7。Dacomitinibは、第 2 世代の EGFR-TKI であり、非可逆的に

EGFR を阻害する。わが国では 2019 年 1 月に承認

された。EGFR 変異を有する NSCLC を対照とし

た 第 3 相 RCT に お い て、dacomitinib 群 で は

progression free survival (PFS) 14.7か月、 gefitinib 群では 9.2 か月であり、dacomitinib 群に

おいて有意に PFS を延長した 10。有害事象では、

grade1、2 の下痢が 78%、grade3 以上の下痢が

8% 以上であり注意が必要である。

第 3 世代と呼ばれる osimertinib は非可逆的に

EGFR を阻害し、T790M を有する NSCLC に対し

て初めて有効性を示した TKI である。1 次 EGFR-TKI 耐性となった T790M 点突然変異を有する

NSCLC を 対 象 と し た、 第 3 相 RCT で あ る

AURA3 試験において、osimertinib はペメトレキ

セドとプラチナ併用化学療法に対して、10.1 か月

と標準治療群の 4.4 か月を有意に延長する PFS を

示した 11 。また、1 次治療として osimertinib を用

いた第 3 相 RCT では、gefitinib あるいは erlotinibに対して PFS 18.9 か月と、標準治療群の 10.2 か

月を有意に延長した 12。Osimertinib はわが国でも

2016 年 3 月に EGFR-TKI 抵抗性のEGFR T790M変異陽性NSCLCの 2次治療に承認された。さらに、

2018 年 8 月には、EGFR 変異陽性の手術不能また

は再発 NSCLC に対して、1 次治療から使用可能と

なった。Osimertinibへの耐性を獲得した患者では、

MET や KRAS の増幅、MEK1、KRAS、あるいは

PIK3CA の変異、EGFR C797S 変異などが検出さ

受容体型チロシンキナーゼと固形がんの薬物治療

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仙台医療センター医学雑誌 Vol. 9, 2019

れた。これらのシグナル伝達経路を阻害するような

薬剤との併用治療などの臨床試験が行われており、

薬剤耐性を克服するための治療開発が期待される。

2) モノクローナル抗体

抗 EGFR 抗体は EGFR の細胞外ドメインに結合

し、リガンドの結合を防ぐことにより、2 量体形成、

自己リン酸化を阻害し、シグナル伝達を阻止する。

現在 cetuximab がRAS 野生型の大腸癌と頭頚部癌

の治療に、panitumumab がRAS 野生型の大腸癌

治療に用いられている。Cetuximab は EGFR に対

する IgG1 マウス / ヒトキメラ抗体であり、ADCC活性を持つ。インフュージョンリアクションが約

20%、低 Mg 血症が 19% 程度と報告されている。

panitumumab は EGFR に対する IgG2 完全ヒト型

モノクローナル抗体で、ADCC 活性を持たない。

インフュージョンリアクションは約 3% であるが、

低 Mg 血症は 29% 程度と報告されている。どちら

も有害事象に皮膚毒性を多く認め、治療開始の際に

は患者へのセルフケア指導が重要となる。

大腸癌におけるRAS 変異は 50-55% と報告され、

これらの患者では抗 EGFR 抗体薬の有効性は認め

られていない。Cetuximab は既治療の大腸癌にお

いて、単独でも 10.8% に、イリノテカンとの併用

で 22.9% の奏功率を示した 13。KRAS 野生型転移

大腸癌の 1 次治療では、FOLFIRI 単独治療に対し

て、overall survival (OS) が cetuximab 併用群で

23.5 か月、単独治療群で 20.0 か月と有意に延長を

示した 14。一方KRAS 変異群では OS16.2 か月と

単独治療群の 16.7 か月を下回った 14。プール解析

の結果、KRAS 野生型では cetuximab の上乗せ効

果が証明された。BRAF 変異陽性の大腸癌は全体

の 6% に認められ、抗 EGFR 抗体の化学療法への

上乗せ効果は示されなかった 15。

近年RAS 野生型大腸癌において、一次治療に抗

VEGF 抗体と抗 EGFR 抗体のいずれが優れている

かを検討した RCT が複数行われた。その結果、ど

ちらを一次治療で用いるかの見解は得られなかっ

た。統合解析の結果RAS/BRAF 野生型大腸癌では、

原発巣占拠部位の左右が治療効果の違いに影響する

ことが示された 16。すなわち、原発巣占拠部位が左

側(下行結腸、S 錠結腸、直腸)では一次治療にお

ける抗 EGFR 抗体薬の効果が高いが、右側(盲腸、

上行結腸、横行結腸)の患者では効果が乏しい。

National comprehensive cancer network (NCCN)ガイドライン (ver.1 2019) においても、一次治療で

は原発巣占拠部位が左側の場合に抗 EGFR 抗体を

用いるように記載された。

EGFR シグナル伝達経路の下流に位置する

BRAFV600E 変異は、切除不能大腸癌患者の約 5% に

認められる。BRAFV600E 変異を有する患者はBRAF野生型患者に比較して、予後不良である 15。最近

BRAFV600E 変異を有する切除不能進行再発大腸癌既

治療例に対して、抗 EGFR 抗体に BRAF 阻害薬

を併用する臨床試験が行われ有効性が示されてお

り 17、NCCN ガイドライン (ver.1 2019) では推奨

されるレジメンとして、イリノテカンと抗 EGFR抗体、BRAF 阻害薬 (vemurafenib) の併用療法と、

抗 EGFR 抗体に加えて、BRAF 阻害薬と MEK 阻

害薬を併用する選択肢(dabrafenib と trametinib、 encorafenib と binimetinib いずれも国内未承認)

が記載さている。

また、頭頚部癌において放射線との併用や化学療

法との併用によって局所制御期間や OS の延長が報

告された。転移・再発頭頚部癌の 1 次治療におい

て、プラチナとフルオロウラシル併用化学療法を対

照とした RCT で、cetuximab を上乗せすることに

よって、OS 中央値を 7.4 か月から 10.1 か月に延長

した 18。ステージ III、IV の頭頚部癌を対象とした

シスプラチンと cetuximab を放射線治療に併用す

る第3相RCTにおいて、3者の併用群では26.9%に、 対照群では 15.1% において治療が中止された 19。

併用群では、グレード 3 から 4 の放射線粘膜炎が

43.2%と対照群の 33.3%よりも増加し、治療効果

の改善は認められなかった 19。この結果から、

cetuximab の化学放射線治療への併用は推奨され

ていない。局所進行頭頚部癌を対象とした RCT に

おいて、cetuximab の放射線単独療法への上乗せ

が検討された。Cetuximab 併用群は局所制御期間

を 24.4 か月とし、放射線治療単独群の 14.9 か月と

比較して有意に延長した 20。しかし、対照群は標準

治療であるプラチナ併用放射線化学療法でないた

め、その結果は慎重に判断する必要がある。

受容体型チロシンキナーゼと固形がんの薬物治療

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仙台医療センター医学雑誌 Vol. 9, 2019

Necitumumab(国内未承認)は EGFR に対する

ヒト IgG1 モノクローナル抗体である。IV 期の扁

平上皮 NSCLC に対する 1 次治療として、ゲムシ

タビンとシスプラチンとの併用 (GC) 療法に上乗せ

する第 3 相 RCT である SQUIREGC 試験が報告さ

れた。Necitumumab 併用群は OS 11.5 か月と GC療法の 9.9 か月を有意に延長した 21。国内では第 2相試験が行われ、日本人でも有効な可能性が示され

ている。

2. HER2HER2 はリガンドが結合しなくても二量体を形

成し、TK が活性化される。Trastuzumab は乳癌

の 25 ~ 30% で陽性となる HER2 を標的とした

IgG1 ヒ ト 化 モ ノ ク ロ ー ナ ル 抗 体 で あ る。

trastuzumab は、ADCC 活性により HER2 陽性癌

細胞の細胞増殖を抑制し細胞死を誘導し、また細胞

表面の HER2 のダウンレギュレーションを起こす

と考えられている。HER2 を過剰発現している患

者のみが trastuzumab をはじめとした HER2 を標

的 と し た 適 応 と な る が、 過 剰 発 現 は IHC (immunohistochemistry) お よ び FISH 法 (fluorescence in situ hybridization) により判定す

る。すなわち、HER2 過剰発現は IHC3+ または

IHC2+ かつ FISH 法陽性と定義されている。

HER2 を標的とした治療1) モノクローナル抗体

HER2 が高発現した乳癌は、進行が早く予後不

良である。Trastuzumab は ERBB2/HER2 に対す

るモノクローナル抗体であり、HER2 の細胞外ド

メイン IV に結合し、下流のシグナルを抑制する。

Perutuzumab はドメイン II に結合し、2 量体形成

を阻害する。抗 HER2 抗体の特徴的な有害事象と

して心毒性が挙げられ、慎重な心機能のモニタリン

グが必要である。

Trastuzumab は HER2 陽性の転移性乳癌の生存

を改善し、早期乳癌の再発を抑制する。さらに近年、

trastuzumab、perutuzumab とドセタキセルとの

併用によって、転移性乳癌の PFS、OS の延長 22 と

術後乳癌再発を抑制する 23ことが報告された。また、

転移性胃癌では HER2 陽性がおよそ 2 割の患者で

認められ、第 3 相 RCT である ToGA 試験では、フ

ルオロウラシルとシスプラチンの化学療法に

trastuzumab を併用することで、OS が 13.8 か月

と化学療法群の 11.1 か月を延長することが示され

た 24。 Tr a s t u z u m a b e m t a n s i n ( T- D M 1 ) は

trastuzumab とチュブリン重合阻害薬である

emtansine (DM1) とをリンカーで結合させた薬剤

である。Trastuzumab が HER2 を認識し細胞内に

取り込まれた後、DM1 が遊離することにより

HER2 陽性細胞に対して抗腫瘍効果を発揮する。

Trastuzumab とタキサンによる既治療の HER2 陽

性乳癌患者を対象として T-DM1 と lapatinib とカ

ペシタビン併用群とを比較する RCT である

EMILIA 試験において、T-DM1 群は PFS 9.6 か月

であり、lapatinib とカペシタビン併用群の 6.4 か

月を有意に延長した 25。EMILIA 試験のその後の報

告では、クロスオーバーが許容されたにもかかわら

ず、T-DM1 群は OS 29.9 か月と、lapatinib とカペ

シタビン併用群の 25.9 か月に対して有意に延長し

た 26。有害事象も grade3以上の有害事象は 41%と、

コントロール群よりも少なかった。この結果を受け

て、進行再発 HER2 陽性乳癌の 2 次治療は T-DM1が推奨されている。

2) 小分子化合物

HER2 陽性乳癌に対して lapatinib、 neratinib(国

内未承認)が用いられている。Lapatinib は可逆的

な HER2 阻害薬である。HER2 の N 末側が欠失し

た p95HER2 は、細胞外ドメインを欠くが、TK 活

性は保たれる。P95HER2 は trastuzumab の結合

部位を欠くために、trastuzumab 抵抗性となる。

アンスラサイクリン、タキサン、trastuzumab 治

療後に増悪した HER2 陽性転移性乳癌患者を対象

とした RCT において、lapatinib と capecitabineとの併用群では、capecitabine 単独群に比較して病

勢増悪までの期間がそれぞれ、8.4 か月、4.4 か月

と併用群で有意に延長を示した 27。Lapatinib は、

脳転移を有する HER2 陽性乳癌患者での効果が期

待され、システマティック・レビューでは、脳転移

に対して 30% の response rate を示しており、局

受容体型チロシンキナーゼと固形がんの薬物治療

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仙台医療センター医学雑誌 Vol. 9, 2019

所療法が困難な脳転移を有する患者には治療の選択

肢となる 28。閉経後ホルモン陽性、HER2 陽性乳癌

患者において、lapatinib と letrozole との併用療法

が検討され、letrozole 単独と比較して、PFS がそ

れぞれ 8.2 か月と 3.0 か月と有意に延長を示し 

た 29。

Neratinib は非可逆的に HER2 を阻害する。周

術期化学療法と trastuzumab 投与後のステージ

1-3c の手術可能乳癌において、1 年間の neratinibとプラセボとを比較した第 3 相 RCT において、 5年 invasive disease free survival が neratinib 群で

は 90.2%、プラセボ群では 87.7% と低下を示し 

た 30。安全性においては、neratinib 群において

grade3 の下痢が 40% と placebo の 2% よりも増加

が見られたが、それ以外の grade3 以上の有害事象

の増加は見られなかった 30。

3. VEGFRVascular endotherial growth factor receptor

(VEGFR)ファミリーはVEGFR-1/Flt-1、 VEGFR-2/KDR/Flk-1、 VEGFR-3/Flt-4 の細胞外領域に7つ

の免疫グロブリン様ドメインを持ち、リガンドは

VEGF-A、 -B、 -C、-D と placenta growth factor (PlGF) である。VEGF-A、 B と PIGF は VEGFR-1に結合する。VEGF-A、 C、 D は VEGFR-2 に、

VEGF-C と D は VEGFR-3 に結合する。VEGF は

血管上皮細胞の増殖、移動、生存、細胞間コミュニ

ケーション、分化、血管透過性などのシグナルを伝

達する。他の RTK と同様に VEGFR においても、

リガンドが VEGFR の細胞外ドメイン結合するこ

とによりシグナル伝達が開始さる。引き続いて、

VEGFR はホモ、あるいはヘテロ二量体を形成し、

VEGFR のキナーゼドメインのチロシン残基がリン

酸化されることにより活性化する。

VEGF を標的とした治療1) 小分子化合物

VEGFR に 対 す る 阻 害 活 性 を 持 つ TKI は、

sorafenib、 sunitinib、 pazopanib、 axitinib、 r e g o r a f e n i b、 l e n v a t i n i b、 v a n d e t a n i b、 cabozantinib(国内未承認)など複数の薬剤が用い

ら れ て い る。VEGFR の み で な く、PDGFR、 c-KIT、 RET、 FLT-3 など、他のキナーゼに対して

も阻害活性を持つため、マルチキナーゼ阻害薬と総

称されている。これらの薬剤は、肝細胞癌、腎細胞

癌、甲状腺癌、GIST、軟部肉腫等これまで殺細胞

薬による薬物療法が効果を示さなかった悪性腫瘍に

も用いられる。当科で日常的に用いている、大腸癌

の regorafenib と甲状腺癌の lenvatinib について解

説する。

Regorafenib は既治療の大腸癌を対象とした

CORRECT 試験において、OS 6.4 か月とプラセボ

群の 5.0 か月を有意に延長した。Regorafenib 群で

は 93% とプラセボ群の 61% に比較して多くの有害

事象が報告された。グレード 3 以上の有害事象と

して、17% に手足症候群が、36.7% に下痢、高血

圧が、29.6% に皮疹あるいは落屑が認められた 31。

Lenvatinib はヨードによる内照射抵抗性の甲状腺

癌を対象とした第 3 相 RCT において、PFS 中央値

を 18.3 か月とプラセボ対照群の 3.6 か月と比較し

て有意に延長した。奏功率は lenvatinib 群で

64.8%、プラセボ群で 1.5% であった。有害事象は

レンバチニブ群で多く見られ、高血圧、下痢、疲労、

食欲不振などであった。肺塞栓、出血性卒中に伴う

死亡例も報告されている 32。これらの薬剤は投与量

の調節や支持療法など、薬剤の特性に特に配慮が必

要である。

2) モノクローナル抗体

Bevacizumab は VEGF-A に対する IgG1 ヒト化

モノクローナル抗体である。大腸癌、乳癌、

NSCLC、卵巣癌、子宮頸癌、悪性神経膠腫など多

くの適応がある。悪性神経膠腫以外では単独での抗

腫瘍効果を示さず、化学療法との併用で用いられ

る。

Bevacizumab は FOLFOX4 との併用で、大腸癌

の 2 次治療において OS を 12.9 か月とし、化学療

法単独の 10.8 か月を有意に延長した 33。しかし、

bevacizumab 単独では OS 10.2 か月と単剤での効

果は認められなかった。大腸癌の 1 次治療では、イ

リノテカンベースの化学療法に併用することで、

PFS を 6.2 か月から 10.6 か月に、OS を 15.6 か月

から 20.31 か月に延長した 34。オキザリプラチン

受容体型チロシンキナーゼと固形がんの薬物治療

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仙台医療センター医学雑誌 Vol. 9, 2019

ベースの 1 次治療では、bevacizumab の併用は、

PFS を 8.0 か月から 9.4 か月に延長した 35。1 次治

療から引き続いて 2 次治療にも bevacizumab を用

い る 第 3 相 RCT が 行 わ れ、OS に お い て

bevacizumab 併用群で 11.2 か月、化学療法単独群

で 9.8 か月と bevacizumab 併用群で有意な延長を

示した 36。NSCLC を対象としたカルボプラチン、

パクリタキセル併用療法への bevacizumab 併用効

果を検証した RCT において、bevacizumab 併用群

は OS 12.3 か月と、化学療法群の 10.3 か月を延長

した。その一方、出血の有害事象は bevacizumab群で多く見られた。プラチナ抵抗性の卵巣癌を対象

とした第 3 相 RCT である AURELIA 試験では、化

学療法への bevacizumab の上乗せ効果を検証した。

PFS 中 央 値 は 化 学 療 法 単 独 群 で 3.4 か 月、

bevacizumab 併用群で 6.7 か月であったが、OS に

おいては有意差を示さなかった。有害事象は既知の

範囲であった 37。

Aflivercept はヒト VEGFR1 および 2 の細胞外ド

メインをヒト IgG の Fc ドメインに結合した、

VEGF 標的組み換え融合タンパク質である。可溶

性のデコイ受容体として、VEGF-A、 B、 PIGF に高

い親和性で結合する。オキザリプラチン既治療大腸

癌の 2 次治療を対象とした第 3 相 RCT において、

aflivercept は FOLFIRI との併用で OS を 13.50 か

月と、プラセボ群の 12.06 か月から有意に延長し

た 38。有害事象は下痢、口内炎、倦怠感、高血圧、

出血、鼻出血などの頻度が増加することが報告され

ている 38。

Ramucirumab は VEGFR-2 に対する IgG1 完全

ヒトモノクローナル抗体であり、胃癌、大腸癌、

NSCLC に用いられている。オキザリプラチンと

bevacizumab にて既治療の転移性大腸癌を対象と

した第 3 相 RCT である RAISE 試験において、

Ramucirumab は FOLFIRI に併用することで OSを 13.3 か月と、プラセボ併用群の 11.7 か月と比較

して有意に延長した 39。有害事象としては、出血、

鼻出血、消化管出血、高血圧、タンパク尿の発現が

増加するため注意が必要である 39。RAISE 試験の

バイオマーカー検索にて、血中 VEGF-D 高値の患

者において OS の延長を認め、血中 VEGF-D が

ramucirumab の効果予測バイオマーカーとなる可

能性が示された 40。既治療の胃癌を対象とした、国

際 共 同 ラ ン ダ ム 化 比 較 第 3 相 試 験 で あ る

RAINBOW 試験では、ramucirumab とパクリタキ

セル併用群において OS が 9.6 か月、プラセボ併用

群では 7.4 か月と ramucirumab 群において有意に

延長した。グレード 3 以上の有害事象は好中球減

少症、白血球減少症、高血圧症などであった 41。既

治療の NSCLC においては、第 3 相 RCT である

REVEL 試験で、ドセタキセルと ramucirumab の

併用効果が検討された。その結果、OS は併用群で

10.5 か月、化学療法単独群で 9.1 か月、PFS はそ

れぞれ 4.5 か月と 3.0 か月であった。グレード 3 以

上の有害事象は既知の範囲であり、重篤な有害事象

の発現は、標準治療群と差を認めなかった 42。

4. ALKALK 融合遺伝子は、Anaplastic lymphoma

kinase (ALK) 遺 伝 子 の キ ナ ー ゼ ド メ イ ン と

echinoderm microtubule-associated protein-like 4 (EML4) 遺伝子とが小さな逆位を形成することでで

きた融合遺伝子である。ALK は leukocyte tyrosine kinase (LTK) ファミリーに属する RTK であり、細

胞外ドメインにグリシンリッチドメインを有する。

脳神経系の発達に関わると考えられている。リガン

ドが結合することにより、二量体形成し活性型とな

る。ALK 融合遺伝子を形成することにより、恒常

的に二量体形成し活性化すると考えられている。こ

の融合タンパクは固形腫瘍で初めて発見された染色

体再配列であり、細胞内に局在することが特徴的で

ある。ALK 融合遺伝子陽性の NSCLC は 3-5% で

あり、比較的若年者に多く認められる。ALK 融合

遺伝子陽性の NSCLC では crizotinib や alectinibなどの TKI が奏効することが示されている。

Crizotinib は第 3 相 RCT において、PFS 10.9 か

月であり、標準治療群であるプラチナ製剤とペメト

レキセドとの併用療法群の PFS 7.0 か月に対して

優越性を示した 43。Alectinib は 2014 年に承認され

た選択的 ALK 阻害薬である。わが国において行わ

れたALK 融合遺伝子陽性 NSCLC を対照としたラ

ンダム化第 3 相試験では、1 次治療において

受容体型チロシンキナーゼと固形がんの薬物治療

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仙台医療センター医学雑誌 Vol. 9, 2019

crizotinib に対して、主要評価項目の PFS では

alectinib 群は中央値に未到達であり、crizotinib 群

の 10.2 か月よりも延長を示している 44。Brigatinib(国内未承認)は未治療のALK 融合遺伝子陽性

NSCLC を対照とした第 3 相 RCT である ALTA-1L試験において、crizotinib 群に対して PFS を延長

する報告がされ 45、わが国でも単群多施設共同第 2相試験が進行中である。また、これらの ALK 阻害

薬治療抵抗性となった NSCLC に対して、ceritinibの有効性が報告されている 46。Lorlatinib は第 3 世

代の ALK 阻害薬であり、ALK 阻害薬既治療例を

対照とした国際共同第 I/II 相試験において、ORR 46%を示した 47。わが国では 2018 年に全例調査を

行う条件で承認されている。

5. PDGFR ファミリーPDGFRファミリーは CSF1R (colony-stimulationg

factor 1 receptor)、FLT3 (Fms-like tyrosine kinase 3)、c-kit、PDGFRα、PDGFRβの 5 つのキ

ナーゼから成る。構造の特徴としては (1) 5 つの免

疫グロブリン (Ig) 様ドメインから成る細胞外ドメ

イン、(2) 一回細胞膜貫通領域と細胞膜近傍 (JM)ドメイン、(3) キナーゼ挿入配列 (KI) 領域で二分さ

れた TK ドメイン (ATP 結合ポケットと活性ルー

プ)が挙げられる。リガンドはそれぞれの受容体で

異 な り、CSF1R に は CSF1、c-kit に は CSF、FLT3 には Flt3 ligand (FL) が結合する。リガンド

の特徴は二量体として機能することである。

PDGFR リガンドには PDGFA-D の 4 種類が知ら

れており、それぞれホモ二量体あるいは AB から成

るヘテロ二量体を形成することが知られている。

1) c-kitc-kit はリガンドである SCF の結合によりホモ二

量体を形成し、細胞内の TK ドメインが相互にリン

酸化され活性化する。c-kit は肥満細胞、造血前駆

細胞や造血幹細胞表面に発現し、分化した細胞では

検出されないことから、幹細胞性維持に関わってい

ると考えられている。c-kit 変異が関連する腫瘍と

しては肥満細胞症、急性骨髄性白血病 (AML)、 GIST 等が報告されている。

GIST においては 70-90% に c-kit の変異が報告

されている。最も多く報告されている変異は自己活

性阻害に関わる JM 領域をコードするエクソン 11の変異で、欠失、挿入、置換やそれらの複合変異が

およそ 70%の患者で認められる。7-11% の患者で

は細胞外ドメインをコードするエクソン 9 に変異

が報告されている。これらの変異により c-kit の立

体構造が変化し、リガンドに依存することなく TKドメインの恒常的活性化を獲得する。c-kit が活性

化されると Ras-MAPK、PI3K-AKT、JAK-STAT等の経路にシグナルが伝達され、細胞増殖、アポ

トーシスの阻害、生存、細胞周期の活性化、移動

等が促進される。

切除不能・転移 GIST 患者の初期治療にイマチニ

ブを用いる第Ⅱ相試験(B2222 試験)が行われ、

PR 53.7%、SD 27.9% が認められ、長期の観察で

は OS 中央値は 57 か月であり 48、それまで有効な

化学療法薬が存在しなかった GIST に対して有望な

結 果 が 認 め ら れ た。 国 内 で は、 第 II 相 試 験

(STI571B1202)49 が 行 わ れ、PR 69%、SD 26%、

PFS 中央値 96 週であり、安全性も確認され、2003年 GIST に対して承認された。

薬物治療前には TK ドメイン内の変異の頻度は低

いが、imatinib 治療による二次耐性獲得には、TKドメインの点突然変異が原因の一つとして関わって

いる。TK ドメインのうち ATP 結合ドメインをコー

ドするエクソン 13 および 14 の変異に対しては第 2世代 TKI の sunitinib が有効であるが、活性ループ

をコードするエクソン 17 および 18 の変異に対し

ては効果を期待できない。Sunitinib は imatinib 抵

抗性の GIST に対する第 3 相 RCT で OS 72.7 か月

であった。クロスオーバーが許容された試験であっ

た た め、rank-preserving structural failure time (RPSFT) 法にて統計学的解析がなされ、その結果

プ ラ セ ボ 群 の OS は 39.0 週 と 推 計 さ れ た 50。

Imatinib と sunitinib の両者に抵抗性 GIST を対象

とした第 3 相 RCT では、regorafenib が検証された。

その結果、regorafenib 群の PFS は 4.8 か月とプラ

セボ群の 0.9 か月を延長した。グレード 3 以上の

regorafenib の有害事象は、高血圧症、手足症候群、

下痢が報告された 51。

受容体型チロシンキナーゼと固形がんの薬物治療

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仙台医療センター医学雑誌 Vol. 9, 2019

2) PDGFRαPDGFRαはリガンドである PDGF-AA あるいは

-CC が結合し活性化される。下流のシグナル伝達経

路である Ras-MAPK、PI3K-AKT、PLγ-PKC 等の

経路が活性化され、遊走、増殖、細胞生存等が促進

される。子供の髄芽腫や好酸球増多症候群等で

PDGFRαの活性化が報告されている。 

c-kit 変異を持たない GIST においてはPDGFRAの変異が報告されている。PDGFRA は GIST 患者

のうち、5-7%で変異が認められ、変異は活性ルー

プをコードするエクソン 18 の点突然変異が最も多

い。PDGFRA と c-kit の変異は相互排他的である。

PDGFRA の変異は c-kit の変異と同様に、リガン

ドの非存在下で恒常的キナーゼ活性化を起こし、下

流のシグナルが活性化される。

その他の受容体型チロシンキナーゼ1) c-MET

c-MET は MET ファミリーに属し、そのリガン

ドは hepatocyte growth factor/scatter factor (HGF/SF) である。c-MET は細胞外に Semaphorin (SEMA) ドメイン、システインリッチ (CR) ドメイ

ン、4 つの Ig 様ドメインを持ち、細胞内には TKドメインを持つ。リガンドが細胞外ドメインに結合

すると 2 量体を形成しリン酸化により活性化され、

下流の Ras-MAPK や PI3K-AKT 等の経路を介し

て生存、増殖、細胞周期促進、遊走等のシグナルが

伝達される。様々な腫瘍においてMET の増幅が報

告されている。MET に対する onartuzumab の臨

床試験は、NSCLC、胃食道腺癌を対象として実施

されたが効果は証明されなかった。MET のリガン

ドである HGF に対する抗体である rilotumumabでは、胃癌、胃食道接合部癌に対する第 3 相 RCTにおいて有効性を示さなかった。TKI ではマルチ

キナーゼ阻害薬である cabozantinib が MET に対

する阻害活性を持つことが報告されている。

Cabozantinib は FDA で甲状腺髄様癌、肝細胞癌、

腎細胞癌において承認されたほか、各種癌において

も臨床試験が行われている。また、crizotinib が

MET-TKI としての活性を持つことが知られ、

NSCLC などで臨床試験が進行中である。

2) その他

その他の RTK では、insulin-like growth factor 1 receptor (IGF1R) や fibroblast growth factor (FGFR) などががんに関わることが報告されてお

り、それぞれを標的とした薬剤の開発が行われてい

る。

ROS1 は insulin receptor family に属する RTKであり、Fibronectin type III ドメインからなる細

胞外ドメインと膜貫通部位、TK からなる。リガン

ドはまだ明らかにされていない。ROS1 転座により

融合遺伝子が形成され、ROS1 が恒常的に活性化さ

れることにより癌化が引き起こされる。NSCLC を

はじめ、胆管癌、胃癌、卵巣癌、膠芽腫などのヒト

の癌においてROS1 の転座が報告されている。

FISH を用いた解析により、NSCLC において

ROS1 転座は 1.7% に検出された。ROS1 の ATP結合部位は ALK と 77%のアミノ酸相同性を持ち、

crizotinib による治療効果が期待された。ROS1 転

座陽性の肺癌では crizotinib による臨床試験が進行

中である。

6. 受容体型チロシンキナーゼのネットワークRTK にはシグナル伝達経路のネットワークが存

在し、がん治療を困難にしている。以下に例を挙げ

る。

NSCLC では EGFR を標的とした TKI に対する

耐性獲得の多くはEGFR に新規の変異が加わるこ

とによるが、その他の耐性獲得機序として c-METの増幅が挙げられる。未治療の NSCLC では

c-MET の増幅は 4-7% であるが、TKI 耐性 NSCLCでは約 20% と報告されている 52。高発現した METの作用メカニズムとして自己リン酸化によるシグナ

ル伝達と、ERBB3 をトランスリン酸化し活性化す

るクロストークが考えられている。EGFR-TKI 抵抗性の NSCLC を対象とした第 2 相試験において、

erlotinib と cabozantinib との併用療法が検討され、

濃厚な治療歴を有する患者においても併用療法は抗

腫瘍活性を示す可能性が示された 53。

BRAFV600E を有する結腸直腸癌は非常に予後が悪

く、抗 EGFR 抗体薬の化学療法薬への上乗せ効果

が見られない 15。このため、抗 EGFR 抗体薬に

受容体型チロシンキナーゼと固形がんの薬物治療

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仙台医療センター医学雑誌 Vol. 9, 2019

BRAF あるいはその下流分子の阻害薬を併用する

治療法が開発されている。BRAFV600E を有する結腸

直腸癌を対象とした第 3 相 RCT である BEACON試験の安全性導入期の結果が報告され、MEK 阻害

薬の binimetinib、BRAF 阻害薬の encorafenib、抗 EGFR 抗体の cetuximab の 3 者併用療法の安全

性が確認された。奏功率は 48%、PFS 中央値は 8.0か月、OS 中央値は 15.3 か月であり、今後の試験

結果に期待が持たれている 54。BRAFV600E を有する

結腸直腸癌では、その他にも vemurafenib と

cetuximab を併用する第 2 相試験の報告が待たれ

ている。

HER2 陽性乳癌の治療抵抗例では、IGF-1R、

Her3、Met、PI3K などの増幅が報告され、HER2を迂回するシグナル伝達経路の活性化が報告されて

いる 55。既治療の HER2 陽性乳癌においても、今

後の分子標的治療薬併用療法の展開が期待される。

おわりにRTK に対する分子標的治療薬の登場で画期的な

治療効果を得られるようになった腫瘍が存在する一

方、RTK の二次変異やクロストークによる分子標

的治療薬の耐性獲得など、新しい課題が明らかと

なってきた。耐性を獲得した腫瘍にも効果を持つよ

うな新しいデザインの薬剤の開発が求められる。さ

らに、細胞内シグナル伝達ネットワークの多様性を

考えると、複数の受容体に作用する阻害薬を組み合

わせる、あるいは多標的に対して有効な分子標的薬

の開発が、今後の分子標的治療の鍵となる可能性が

ある。今後は RTK からのシグナル伝達を、クロス

トークやネットワークも含めて解明することが、効

果的な分子標的治療薬開発における課題であると考

える。

歴史的にがん治療は臓器別に確立されてきた。し

かし、臓器に関わらず遺伝子変異解析に基づいて治

療薬を選択することは、今後のがん治療のありかた

を大きく変えようとしている。がん化において

RTK が重要な役割を持つことは多く、ゲノム医療

の場では RTK を標的とした分子標的治療薬を用い

た治療の展開が期待される。

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