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日本金属学会誌 第 76 巻第 2 号(2012)134 138 エキシマレーザ・アニールで作製した 多結晶シリコン膜のディスク状結晶粒 a Si 膜中の水素の影響― 部家 1 河本直哉 2 松尾直人 1 1 兵庫県立大学大学院工学研究科 2 山口大学大学院理工学研究科 J. Japan Inst. Metals, Vol. 76, No. 2 (2012), pp. 134 138 2012 The Japan Institute of Metals Disk Shaped Crystal Grain in Poly Si Film Prepared by Excimer Laser Annealing Influence of Hydrogen in a Si Film Akira Heya 1 , Naoya Kawamoto 2 and Naoto Matsuo 1 1 Graduate School of Engineering, University of Hyogo, Himeji 671 2280 2 Graduate School of Science and Engineering, Yamaguchi University, Ube 755 8611 The effects of hydrogen in a Si film on the growth of disk shaped grain formed by excimer laser annealing (ELA) were in- vestigated. For the energy density of 2500 J/m 2 , the disk shaped grain was not observed by scanning electron microscope. On the other hand, at the energy density of 3000 J/m 2 , the disk shaped grain was observed. The size of textured grain increased with in- creasing shot number. The area density of disk shaped grain was constant in spite of increment of the shot number. In addition, the shot number dependence of strain and crystal orientation differed between poly Si films with and without disk shaped grain. It is considered that the nucleation and growth of disk shaped grain were suppressed by hydrogen. It is expected that the position and density of the disk shaped grain can be controlled by hydrogen in a Si film. (Received June 23, 2011; Accepted September 29, 2011; Published February 1, 2012) Keywords: disk shaped grain, textured grain, hydrogen, excimer laser annealing, polycrystal silicon 1. 液晶ディスプレイ(LCD)や有機エレクトロルミネッセン スディスプレイ(OLED)には画素スイッチング素子として, 薄膜トランジスタ(TFT)が使用されている.結晶性に優れ る多結晶シリコン(poly Si)の電子移動度は 0.01 m 2 /Vs 程度 であり,アモルファスシリコン(a Si)に比べ,2 桁程度高い ために TFT 特性が大幅に向上する.プラスチックなどのフ レキシブル基板上に高移動度 poly Si 膜が形成できれば,駆 動回路や制御回路を一体化でき,表示パネルに各種機能を持 った付加価値の高い「シートコンピューター」も実現可能と なる. poly Si 膜の作製法の 1 つにエキシマレーザ・アニール (ELA)法があるが,a Si 膜に高エネルギー密度(3000 J/m 2 ) のエキシマレーザをマルチショット照射することにより,複 数の扇形の結晶粒が集まった円形の結晶粒(ディスク状結晶 粒)が形成される場合がある 1,2) .浅野らは Ni インプリント 法により a Si 膜中に種結晶を形成した後,ELA を施し,そ の種結晶粒から優先的に再結晶化させ横方向に成長させるこ とで数 mm の大結晶粒を形成している 3) .ディスク状結晶粒 の直径は数 mm に達するため,poly Si TFT の高移動度化 が期待できるが,成長機構は完全には明らかとなっていない. 我々はこれまでに a Si 膜に脱水素化処理(450° C60 min) を行った試料の場合,ELA のエネルギー密度 25003500 J/m 2 ,ショット数 81000 shots では,どの条件でもディス ク状結晶粒が観察され,ショット数の増加に伴いディスク状 結晶粒の数が増加するが,ディスク状結晶粒径は一定である ことを明らかにした 1) .ところで,低エネルギー密度照射 (10002000 J/m 2 )では,a Si 膜中の水素が結晶化を促進す るという結果も得られていること 4,5) から,a Si 膜中の水素 によりディスク状結晶成長が促進される可能性がある.ま た,水素によりディスク状結晶粒の位置や成長を制御できる 可能性もある. 本研究では,ディスク状結晶粒の結晶性,面密度,結晶粒 径のショット数依存性と a Si 膜中の水素との関係について 検討した. 2. a Si 膜を Si 2 H 6 を原料ガスとした減圧化学気相成長法を 用いて 400° C SiO 2 (100 nm)/石英基板上に作製した.a Si

エキシマレーザ・アニールで作製した 多結晶シリコン膜のディス … · の直径は数mm に達するため,poly Si TFT の高移動度化 が期待できるが,成長機構は完全には明らかとなっていない.

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日本金属学会誌 第 76 巻 第 2 号(2012)134138

エキシマレーザ・アニールで作製した

多結晶シリコン膜のディスク状結晶粒

―aSi 膜中の水素の影響―

部 家   彰1 河 本 直 哉2 松 尾 直 人1

1兵庫県立大学大学院工学研究科

2山口大学大学院理工学研究科

J. Japan Inst. Metals, Vol. 76, No. 2 (2012), pp. 134138 2012 The Japan Institute of Metals

DiskShaped Crystal Grain in PolySi Film Prepared by Excimer Laser Annealing― Influence of Hydrogen in aSi Film ―

Akira Heya1, Naoya Kawamoto2 and Naoto Matsuo1

1Graduate School of Engineering, University of Hyogo, Himeji 67122802Graduate School of Science and Engineering, Yamaguchi University, Ube 7558611

The effects of hydrogen in aSi film on the growth of diskshaped grain formed by excimer laser annealing (ELA) were in-vestigated. For the energy density of 2500 J/m2, the diskshaped grain was not observed by scanning electron microscope. On theother hand, at the energy density of 3000 J/m2, the diskshaped grain was observed. The size of textured grain increased with in-creasing shot number. The area density of diskshaped grain was constant in spite of increment of the shot number. In addition,the shotnumber dependence of strain and crystal orientation differed between polySi films with and without diskshaped grain.It is considered that the nucleation and growth of diskshaped grain were suppressed by hydrogen. It is expected that the positionand density of the diskshaped grain can be controlled by hydrogen in aSi film.

(Received June 23, 2011; Accepted September 29, 2011; Published February 1, 2012)

Keywords: diskshaped grain, textured grain, hydrogen, excimer laser annealing, polycrystal silicon

1. は じ め に

液晶ディスプレイ(LCD)や有機エレクトロルミネッセン

スディスプレイ(OLED)には画素スイッチング素子として,

薄膜トランジスタ(TFT)が使用されている.結晶性に優れ

る多結晶シリコン(polySi)の電子移動度は 0.01 m2/Vs 程度

であり,アモルファスシリコン(aSi)に比べ,2 桁程度高い

ために TFT 特性が大幅に向上する.プラスチックなどのフ

レキシブル基板上に高移動度 polySi 膜が形成できれば,駆

動回路や制御回路を一体化でき,表示パネルに各種機能を持

った付加価値の高い「シートコンピューター」も実現可能と

なる.

polySi 膜の作製法の 1 つにエキシマレーザ・アニール

(ELA)法があるが,aSi 膜に高エネルギー密度(3000 J/m2)

のエキシマレーザをマルチショット照射することにより,複

数の扇形の結晶粒が集まった円形の結晶粒(ディスク状結晶

粒)が形成される場合がある1,2).浅野らは Ni インプリント

法により aSi 膜中に種結晶を形成した後,ELA を施し,そ

の種結晶粒から優先的に再結晶化させ横方向に成長させるこ

とで数 mm の大結晶粒を形成している3).ディスク状結晶粒

の直径は数 mm に達するため,polySi TFT の高移動度化

が期待できるが,成長機構は完全には明らかとなっていない.

我々はこれまでに aSi 膜に脱水素化処理(450°C,60 min)

を行った試料の場合,ELA のエネルギー密度 2500~3500

J/m2,ショット数 8~1000 shots では,どの条件でもディス

ク状結晶粒が観察され,ショット数の増加に伴いディスク状

結晶粒の数が増加するが,ディスク状結晶粒径は一定である

ことを明らかにした1).ところで,低エネルギー密度照射

(1000~2000 J/m2)では,aSi 膜中の水素が結晶化を促進す

るという結果も得られていること4,5)から,aSi 膜中の水素

によりディスク状結晶成長が促進される可能性がある.ま

た,水素によりディスク状結晶粒の位置や成長を制御できる

可能性もある.

本研究では,ディスク状結晶粒の結晶性,面密度,結晶粒

径のショット数依存性と aSi 膜中の水素との関係について

検討した.

2. 実 験 方 法

aSi 膜を Si2H6 を原料ガスとした減圧化学気相成長法を

用いて 400°C で SiO2(100 nm)/石英基板上に作製した.aSi

135

Fig. 1 SEM images of polySi films (energy density: 2500 J/m2). (a) 8 shots, (b) 100 shots and (c) 1000 shots.

135第 2 号 エキシマレーザ・アニールで作製した多結晶シリコン膜のディスク状結晶粒

の膜厚は 100 nm であり,脱水素化処理を行っていないた

め,膜中には数の水素が含まれている.また,ラマン分光

測定により本条件で作製した膜はアモルファス膜であること

を確認している.

ELA 条件はエネルギー密度 2500,3000 J/m2,ショット

数 1~1000 shots,真空度 10-4 Pa 台,波長 248 nm,パル

ス半値幅 23 ns,繰り返し周波数 1 Hz,レーザビームサイズ

横 10 mm×縦 5 mm である.レーザビーム強度の面内分布

の影響を小さくするため,レーザ照射領域の中心付近を評価

した.

エキシマレーザ照射した試料を Secco エッチング6)した後

に,試料表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した.Secco

エッチングは K2Cr2O4 70 mg+50HF 水溶液 3 mL+純水

30 mL の混合液を使用し,35°C で 15 s 行った.ディスク状

結晶粒のグレインサイズは SEM 観察領域に見られた 1 つの

結晶粒の直径,ディスク状結晶粒の周りの繊維状結晶粒(テ

クスチャード結晶粒と呼ぶ)のグレインサイズは結晶粒 10

個の直径を任意に測定し,その平均値とした.また,結晶

性,配向性の評価にそれぞれラマン分光装置,X 線回折

(XRD)装置を用いた.ラマン分光法では Ar+ レーザ(波長

514.5 nm)を用い,測定領域直径数 mm,レーザパワー 1.5

mW,測定時間 100 s,積算回数 2 回の条件で行った.ラマ

ンスペクトルにおいて,521 cm-1 付近の結晶相によるピー

クと 480 cm-1 付近のアモルファス相によるピークの 2 つの

ピークをローレンツ関数を用いて波形分離し,それぞれの

ピーク面積を Sc,Sa としたとき,結晶化率 Xc を Xc=Sc/

(Sc+Sa)×100()として定義した.

3. 結 果 と 考 察

ELA のエネルギー密度 2500 J/m2,ショット数(a) 8,

(b)100,(c)1000 shots の試料 SEM 像を Fig. 1 に示す.

2500 J/m2 では,ディスク状結晶粒は観察されず,ショット

数の増加に伴い,結晶粒径が増大した.脱水素処理した場合

は 2500 J/m2 でもディスク状結晶粒が形成されたことか

ら2),膜中の水素はディスク状結晶粒の核形成を阻害するこ

とが示された.

ELA のエネルギー密度 3000 J/m2,ショット数(a) 1,

(b) 2,(c) 8,(d)20,(e)50,(f)100,(g)200,(h)1000

shots の試料の SEM 像を Fig. 2 に示す.3000 J/m2 では,

どのショット数においてもディスク状結晶粒が観察された.

脱水素処理した場合はショット数の増加に伴い,ディスク状

結晶粒の面密度は増加したが,今回のように膜中に水素が存

在する場合,面密度のショット数依存性は見られなかった.

ディスク状結晶とテクスチャード結晶の粒径のショット数

依存性を Fig. 3 に示す.ここでは比較のために脱水素処理

した場合のデータ7)もプロットした.ディスク状結晶粒の粒

径は各試料でデータ数が 1 つであり,ばらつきが大きく明

確な傾向(ショット数の増加によるグレインサイズの顕著な

増加)は見られなかった.一方,テクスチャード結晶粒では

結晶粒 10 個のエラーバーが大きいものの,ショット数増加

によりわずかに粒径が増加する傾向が見られた.また,テク

スチャード結晶粒径は水素の有無に影響されないが,ディス

ク状結晶粒径は水素があると減少した.つまり,ディスク状

結晶粒の成長を水素が阻害していることが示唆された.

ラマンスペクトルのピーク面積比から算出した結晶化率,

TO フォノンピークの半値全幅,単結晶 Si ピーク位置から

のシフト量(Dv)を Fig. 4(a), (b), (c)にそれぞれ示す.図

中のガイド線は最小自乗法で直線近似したものである.ま

た,明らかに傾向から外れたデータは,レーザビーム強度の

分布(異常放電)の影響を受けたことなどが考えられるが,原

因は不明である.また,この外れたデータを削除しても,最

小自乗法で求めたガイド線の傾向はそれほど変化しないこと

を確認している.3000 J/m2 ではディスク状結晶粒が形成さ

れているが,その面密度は低いため,得られた信号は主にテ

クスチャード結晶粒に起因すると考えられる.まず,結晶化

率はエネルギー密度 2500, 3000 J/m2 のどちらもショット数

の増加に伴い結晶化率が増加し,ディスク状結晶粒の有無に

よる差異は見られなかった.次に FWHM であるが,エネル

ギー密度 2500, 3000 J/m2 ともに,顕著なショット数依存性

は見られないが,3000 J/m2 の方が小さい値を示した.

FWHM は結晶粒内の欠陥密度に対応するため,3000 J/m2

の方が欠陥密度は少ないと予想されるが,照射エネルギー密

度の影響なのかディスク状結晶粒の形成が影響しているのか

については判断できなかった.最後に Dv であるが,エネ

ルギー密度 2500 J/m2 では,ショット数に関係なく一定で

136

Fig. 2 SEM images of polySi films (energy density: 3000 J/m2). Diskshaped grain is shown by circle.

Fig. 3 Relationship between shot number and grain size ofdiskshaped and textured grain.

136 日 本 金 属 学 会 誌(2012) 第 76 巻

あり,一方,3000 J/m2 では,ショット数の増加に伴って減

少し,応力が緩和された.ディスク状結晶粒がある場合,周

りのテクスチャード結晶粒の成長に影響を与えていることが

示唆された.

XRD 測定ではすべての試料で(111),(220),(311)に起

因するピークが観測された.Fig. 5 に XRD パターンから得

た(220)/(111),(311)/(111)の XRD 強度比を示す.とこ

ろで,粉末焼結 polySi(ランダム配向)では(220)/(111),

(311)/(111)の強度比がそれぞれ 0.55,0.30 となる.ラン

ダム配向か優先配向かを明確にするため,これらの基準線も

書き入れた.直線上がランダム配向,直線より上部が優先配

向,下部が非優先配向を示す.

PolySi 膜の優先配向性は表面自由エネルギーで検討され

ることが多い7,8).(111)は他の面に比べ,表面自由エネル

ギーが小さいために形成されやすく,処理温度が高い場合や

ELA のショット数が増加すると,優先的に成長すると考え

られる.エネルギー密度 2500 J/m2 では,低ショットでは

(220)および(311)に優先配向であるが,ショット数の増加

に伴い,表面自由エネルギーの低い(111)が優先的に成長

し,ランダム配向となった.一方,エネルギー密度 3000 J/

m2 では,低ショット数(8 ショット)の場合,(111)優先配向

137

Fig. 4 Shot number dependence of crystalline fraction (a), FWHM (b) and Dv (c).

Fig. 5 Relationship between shot number and XRD intensityratio, (a) 2500 J/m2 and (b) 3000 J/m2.

137第 2 号 エキシマレーザ・アニールで作製した多結晶シリコン膜のディスク状結晶粒

である.これは照射エネルギーが高く,各結晶面の表面自由

エネルギーの差が現れやすくなったためであると考えられ

る.しかし,ショット数の増加に伴い,(220),(311)が成

長し,ショット数 20~200 ではランダム配向となり,1000

ショットでは(220),(311)優先配向を示した.テクスチ

ャード結晶粒の配向性はショット数の増加に伴い,表面自由

エネルギーが低い,つまり安定な状態になると予想される

が,ディスク状結晶粒が存在する場合,テクスチャード結晶

粒配向のショット数依存性が変化することも明らかとなっ

た.この特異な配向性の変化は今後の検討課題である.

ショット数の増加に伴うディスク状結晶粒における特徴と

成長機構を考察する.水素が存在する場合など,テクスチ

ャード結晶粒は観察されるもののディスク状結晶粒が全く観

察されないことから,ディスク状結晶粒とテクスチャード結

晶粒の核は本質的に異なると考えられる.これまでディスク

状結晶粒は多ショット照射による 2 次的な成長つまり,1 シ

ョット目で形成された結晶粒がそれ以降のレーザ照射によ

り,つながって成長していくと考えられたが,1 ショットで

もディスク状結晶粒が形成されたことから,特異な条件(例

えば不純物の影響など)では形成密度は低いものの,最初の

溶融再結晶化で 1 つの結晶粒が優先的に成長する機構があ

ることが示された.また,脱水素化処理を行った試料の場

合,エネルギー密度 2500,3000 J/m2 とショット数 8,32,

100 shots の ELA 条件で行うと,どちらのエネルギー密度

もショット数の増加に伴い,ディスク状結晶粒の数が増加

し,試料表面全体にディスク状結晶粒が存在する結果が得ら

れている9).これは aSi 膜中に水素が存在しないため,2 次

的な成長を生じやすくなり,ショット数の増加に伴い,ディ

スク状結晶粒密度が増加したと考えられる.次に,脱水素化

処理を行っていない試料の場合,エネルギー密度 2500 J/m2

ではディスク状結晶粒が観察されなかったが,3000 J/m2 で

は,どのショット数においてもわずかにディスク状結晶粒が

観察された.これは aSi 膜中に水素が存在し,2 次的な成

長を生じにくくなったためと考えられる.また,脱水素化処

理を行っていない試料の優先配向を考察すると,エネルギー

密度 3000 J/m2 の場合,低ショット数(1~8 shots)では,デ

ィスク状結晶内の結晶粒径が小さく,高ショット数(20~

1000 shots)では,ディスク状結晶内の結晶粒径が大きかっ

た.

2 次的な成長は隣接した結晶粒から Si 原子が一方の結晶

粒に移動することにより生じると考えられる.結晶粒内に原

子空孔が存在すると Si 原子は移動しやすいが,水素がその

138138 日 本 金 属 学 会 誌(2012) 第 76 巻

原子空孔とペアを作ると,Si 原子の移動は妨げられること

になる.原子空孔水素対が形成されることも報告されてお

り10),このモデルにより ELA 結晶化における 2 次的な成長

機構を説明できる.このように aSi 膜中の水素は核形成と

その後の成長過程のどちらにも大きな影響を与えていること

が示された.

以上のことから aSi 膜中の水素濃度および分布を制御す

ることにより,ディスク状結晶粒の位置および密度を制御で

きる可能性がある.

4. 結 言

ディスク状結晶粒の結晶性,面密度,結晶粒径と水素との

関連のショット数依存性について検討し,以下のことが明ら

かとなった.

水素を含む aSi 膜から形成した polySi 膜ではディ

スク状結晶粒の面密度はショット数が増加しても変化しなか

った.ディスク状結晶粒の核形成は 1 ショット目で行われ

るが,その後のショットでは水素により阻害されると考えら

れる.

ディスク状結晶粒の形成・成長には aSi 膜中の水素

が関与しており,aSi 膜中の水素濃度および分布を制御す

ることにより,ディスク状結晶粒の位置および密度を制御で

きる可能性が見出された.

文 献

1) N. Matsuo, T. Nouda, N. Kawamoto, Y. Miyai and H. Hamada:The Transactions of The Institute of Electronics, Informationand Communication Engineers C, J 85C(2002) 700703.

2) T. Noguchi, S. Usui, D. P. Gosain and Y. Ikeda: Mat. Res. Soc.Symp. Proc. 557(1999) 213218.

3) T. Asano and G. Nakagawa: The Review of Laser Engineering34(2006) 684688.

4) N. Matsuo, H. Abe, N. Kawamoto, R. Taguchi, T. Nouda, H.Hamada and T. Miyoshi: J. Vac. Soc. Jpn. 43(2000) 11201125.

5) A. Heya, N. Matsuo, H. Matsumura and N. Kawamoto: Jpn. J.Appl. Phys. 45(2006) 69086910.

6) F. Secco: J. Electrochem. Soc. 119(1972) 948951.7) R. Bisaro, J. Magarino, N. Proust and K. Zellama: J. Appl. Phys.

59(1986) 11671178.8) B. M. Lee, T. Kuranaga, S. Munetoh and T. Motooka: J. Appl.

Phys. 101(2007) 05431617.9) N. Matsuo, T. Nouda, N. Kawamoto, R. Taguchi, Y. Miyai and

H. Hamada: Mater. Trans. 42(2001) 26462648.10) A. Uedono, T. Mori, K. Morisawa, K. Murakami, T. Ohdaira, R.

Suzuki, T. Mikado, K. Ishioka, M. Kitajima, S. Hishita, H.Haneda and I. Sakaguchi: J. Appl. Phys. 93(2003) 32283233.