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秋田大学医学部附属病院 専門・認定看護師会 28令和元年1025日発行 インスリン・リポハイパートロフィー(硬結)を知ろう! ~インスリン自己注射の患者の看護~ 狭い範囲に繰り返しインスリン注射を続けていると、その部位の 皮下に脂肪組織の腫脹が見られることがあります。この皮膚変 化はリポハイパートロフィー(硬結)と呼ばれ、硬結部位に 注射を続けると痛みは少ないですが、インスリンの効きは悪くな り、血糖コントロールが不良になる場合があります。 リポハイパートロフィー(硬結)の誘因 同一部位、狭い範囲へ繰り返し注射している ●長年インスリンを使用している、血糖コントロールが不良である ●注射針の再使用 ●頻回注射(4~5回/日)など 入院中の患者さんでインスリン注射をする時には腹部の状態も観察しましょう。 注意深く観察することが、硬結の早期発見に繋がります。 「注射部位を変えている」と話す患者さんでも左右交互に同一部位に注射 している場合もあります。また、視力障害や片麻痺などがある場合には注射部位が 限局しやすい傾向にあります。 硬結を確認した場合、急に注射部位を変えるとインスリンの効果が強く発現し、低血糖 を起こす危険があります。まずは担当医へ相談し、必要に応じてインスリン量の調整をし てもらいましょう。(注射部位を変更した場合には低血糖の発現に注意が必要です。) 注射範囲は左の脇腹から右の脇腹まで広くもちます。 臍周囲5cmは避け、右図の様に注射毎に2~3cmずつ注射の 位置をずらしていき、左右交互に注射していきます。 正しい注射部位ローテーションの方法を指導しましょう 観察が大切です! 硬結を発見したら・・・ 裏へ続く・・ インスリンリポハイパートロフィー https://www.nittokyo.or.jp/uploads/ files/GUIDE_140515_B5.pdf 日本ベクトン・ディッキンソン(株) インスリン自己注射 サイトローテーションシート

インスリン・リポハイパートロフィー(硬結)を知 …...秋田大学医学部附属病院専門・認定看護師会 第28号令和元年10月25日発行 インスリン・リポハイパートロフィー(硬結)を知ろう!~インスリン自己注射の患者の看護~

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秋田大学医学部附属病院 専門・認定看護師会

第28号 令和元年10月25日発行

インスリン・リポハイパートロフィー(硬結)を知ろう!~インスリン自己注射の患者の看護~

狭い範囲に繰り返しインスリン注射を続けていると、その部位の皮下に脂肪組織の腫脹が見られることがあります。この皮膚変化はリポハイパートロフィー(硬結)と呼ばれ、硬結部位に注射を続けると痛みは少ないですが、インスリンの効きは悪くなり、血糖コントロールが不良になる場合があります。

リポハイパートロフィー(硬結)の誘因●同一部位、狭い範囲へ繰り返し注射している●長年インスリンを使用している、血糖コントロールが不良である●注射針の再使用 ●頻回注射(4~5回/日)など

入院中の患者さんでインスリン注射をする時には腹部の状態も観察しましょう。注意深く観察することが、硬結の早期発見に繋がります。「注射部位を変えている」と話す患者さんでも左右交互に同一部位に注射している場合もあります。また、視力障害や片麻痺などがある場合には注射部位が限局しやすい傾向にあります。

硬結を確認した場合、急に注射部位を変えるとインスリンの効果が強く発現し、低血糖を起こす危険があります。まずは担当医へ相談し、必要に応じてインスリン量の調整をしてもらいましょう。(注射部位を変更した場合には低血糖の発現に注意が必要です。)

注射範囲は左の脇腹から右の脇腹まで広くもちます。臍周囲5cmは避け、右図の様に注射毎に2~3cmずつ注射の位置をずらしていき、左右交互に注射していきます。

正しい注射部位ローテーションの方法を指導しましょう

観察が大切です!

硬結を発見したら・・・

裏へ続く・・

インスリンリポハイパートロフィーhttps://www.nittokyo.or.jp/uploads/files/GUIDE_140515_B5.pdf

日本ベクトン・ディッキンソン(株)インスリン自己注射 サイトローテーションシート

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ダイヤモンドナース通信は看護部ホームページにも掲載しています!

担当:糖尿病看護認定看護師慢性心不全看護認定看護師

イラスト出典:http://pancos-sozai.com/

【引用・参考文献】1)松本晃一:インスリン注射部位の皮膚病変(インスリンボール),CDEJ News Letter(25号),2010年1月,82)佐藤直樹:心不全まるわかりBOOK,ハートナーシング2016春季増刊,メディカ出版

患者さんの生活背景を理解する!~慢性心不全患者のセルフケア支援~

人口の高齢化、高血圧や糖尿病などの生活習慣病の増加、急性期治療の普及・成績向上などにより心不全患者数が増加しています。循環器疾患の発症も心不全の増悪要因も患者の生活習慣が関係していることから、これらを予防するセルフケア支援が重要です。

療養支援を進めていくうえで、患者さんの病態がどのような状態にあるのか、正確に把握する必要があります。自覚症状、フィジカルアセスメントによる他覚所見、血液検査データ・胸部X線などの各種検査結果から、患者さんの病態を把握し、医療チーム全体で病態や治療方針を共有します。

心不全増悪を予防しながら生活していくための療養支援には、患者さんの増悪因子を的確に把握することが必要です。「これまでの増悪因子が今回の増悪因子とは限らない」ことを忘れずに客観的にアセスメントすることが大切です。

患者さんの生活習慣は長年培ってきたものであり、様々な知識を持っていても行動に移すことが困難な場合が多いです。理想的な内容の生活指導ではなく、まずは心不全や治療に対する思いやセルフケア実践の障壁を明らかにすることが必要です。例)内服薬を自己中断する患者=服薬アドヒアランスが悪いと決めつけてしまう

→利尿薬を内服すると・・・会議や買い物中にトイレの回数が増え困るトイレ回数が増え困っていることも含めて、アプローチする

患者さんの行動変容につなげるためには、自身が課題に気づき自らの意思を明確にすることが重要です。患者さんが自発性を発揮できるように「患者さんの経験を聴き、価値観や信念を理解する」ことが大切です。

病態を把握する

増悪因子をアセスメントする

行動の意味を知る

自ら問題点に気づくことができるように支援する

患者さんの思いや経験を引き出す聴き方●「回答」ではなく理解・共感を示す言葉かけを行う●批判を交えず聴く●「指導」する前に患者さんの気持ちを聴く●態度や視線も大事な要素