35
- 1 - 平成23年度 次世代高信頼・省エネ型IT基盤技術開発・実証事業(中部地域中小企業利活用基盤整備事業) 中小企業のクラウドコンピューティング利活用促進のための 地域中小企業・IT企業の実態調査報告書 平成 24 年 2 月 経済産業省中部経済産業局

中小企業のクラウドコンピューティング利活用促進 … › koho › chosa_houkoku › data › ...(1)背景と目的 地域産業を支える中小企業においては、グローバル化する経済の中で競争力強化、

  • Upload
    others

  • View
    0

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: 中小企業のクラウドコンピューティング利活用促進 … › koho › chosa_houkoku › data › ...(1)背景と目的 地域産業を支える中小企業においては、グローバル化する経済の中で競争力強化、

- 1 -

平成23年度

次世代高信頼・省エネ型IT基盤技術開発・実証事業(中部地域中小企業利活用基盤整備事業)

中小企業のクラウドコンピューティング利活用促進のための

地域中小企業・IT企業の実態調査報告書

平成 24 年 2 月

経済産業省中部経済産業局

Page 2: 中小企業のクラウドコンピューティング利活用促進 … › koho › chosa_houkoku › data › ...(1)背景と目的 地域産業を支える中小企業においては、グローバル化する経済の中で競争力強化、

- 2 -

目 次

1. 調査の概要 ·························································································· 4 (1)背景と目的 ················································································· 4 (2)調査内容 ···················································································· 5 (3)ヒアリング調査企業 ······································································ 6 (4)調査期間 ···················································································· 6

2.中小企業ITユーザーにおける現状と課題 ·················································· 6

(1)調査対象企業の概要 ······································································ 6 ⅰ規模及び業種··············································································· 6 ⅱ経営管理の状況(経営計画の有無、目標管理制度など) ························ 7 ⅲITに関する部門等の設置状況 ························································ 8

(2)中小企業ITユーザーにおけるIT利活用の現状 ································· 8 ⅰ基幹システムの利用状況 ································································ 8 ⅱ受発注システム(EDI)の利用状況 ··············································· 9 ⅲ情報系システム、CRM、SFAの利用状況 ···································· 10 ⅳクラウドコンピューティングの利用状況 ········································· 11

(3)中小企業ITユーザーの経営課題 ·················································· 12 ⅰ営業力の強化············································································ 12 ⅱ商品力・技術力の強化 ································································ 13 ⅲ現場力の強化············································································ 13 ⅳ人間力の強化············································································ 14

(4)クラウドコンピューティングの利活用による中小企業の課題対応 ·········· 14 ⅰ中小企業ITユーザーにおけるクラウドのニーズ ······························ 14 ⅱ中小企業におけるクラウドの活用の方向性 ······································ 16

3.地域ITベンダー企業におけるクラウドビジネスの現状と課題 ····················· 17

(1)調査対象企業の概要 ··································································· 17 ⅰ企業規模 ················································································· 17 ⅱ事業内容(受託開発、パッケージソフトウェア開発業など) ················ 17

(2)ITベンダーにおけるクラウドビジネスの現状 ································· 18 ⅰクラウド製品の開発状況 ····························································· 18 ⅱクラウド製品の販売体制及び販売状況 ············································ 19 ⅲクラウド製品の導入・運用サポートの状況 ······································ 21 ⅳグリーンITとBCPについて ····················································· 21

(3)ITベンダーにおけるクラウドビジネスに関する課題 ························ 22 ⅰクラウド製品開発に関する課題 ····················································· 22 ⅱクラウド製品開発に関する課題に対する対応事例 ······························ 23

Page 3: 中小企業のクラウドコンピューティング利活用促進 … › koho › chosa_houkoku › data › ...(1)背景と目的 地域産業を支える中小企業においては、グローバル化する経済の中で競争力強化、

- 3 -

ⅲクラウド製品の販売に関する課題 ·················································· 23 ⅳクラウド製品の販売に関する課題に対する対応事例 ··························· 24 ⅴベンダー間連携の課題、業界団体との連携などビジネス連携に係る課題 ·········· 24 ⅵベンダー間連携、業界団体との連携などビジネス連携に係る課題 に対する対応事例 ······································································ 24

4.クラウドコンピューティングを活用した事例の紹介···································· 25

(1)顧客管理・営業支援のクラウド事例 ··············································· 25 (2)協力会社と情報共有によるクラウド事例 ········································· 26 (3)海外取引のクラウド事例 ····························································· 27 (4)EDI を使ったクラウド型事例 ······················································· 28 (5)基幹システムのクラウド事例························································ 30

5.クラウドコンピューティングの利活用促進に向けて(まとめ) ····················· 30

(1)クラウドの活用に対する理解拡大が重要 ········································· 30 (2)データの活用によるクラウドの利点を最大化した導入 ························ 30 (3)企業の壁を越えたSCM等を見据えたデータの活用 ··························· 31 (4)安価なデータセンターの必要性 ····················································· 31 (5)地域中小ITベンダーの取組に期待 ··············································· 31 (6)中小企業と地域ITベンダーを取り持つITコーディネータの役割 ······· 33

(資料編) 1.検討委員会名簿 2.成功事例集(ユーザー企業へ普及用)

Page 4: 中小企業のクラウドコンピューティング利活用促進 … › koho › chosa_houkoku › data › ...(1)背景と目的 地域産業を支える中小企業においては、グローバル化する経済の中で競争力強化、

- 4 -

1.調査の概要 (1)背景と目的

地域産業を支える中小企業においては、グローバル化する経済の中で競争力強化、

生産性向上は喫緊の課題であり、その課題解決のためにITを利活用することは必

要不可欠である。 近年、クラウドコンピューティングを利活用した大容量情報の蓄積・分析等によ

る新たな価値を提供するサービス等が急速に普及してきており、今後も次世代情報

処理基盤としてクラウドコンピューティングを利活用したビジネス向けのサービス

等がさらに普及していくものと予測される。 一方で、急速に進展するクラウドコンピューティングによる情報技術環境への変

化は、情報サービス産業の構造変化をもたらすものと推測されている。特に、中小

ITベンダーは首都圏を中心とした大手ITベンダーからの受託開発を主流として

きたが、今後、クラウドサービス等に対応したビジネスモデルの転換等が必要とな

っていくことが『情報経済革新戦略(平成22年5月経済産業省産業構造審議会情

報経済分科会)』においても指摘されているところである。 地域の中小企業が、今後更なるIT利活用による経営の高度化を図るにあたって

は、サーバーやソフトウェア等のIT資源をユーザーが自ら管理することなくネッ

トワークを通じて必要な時に必要なだけの機能等を利用できるといったクラウドサ

ービスを効果的に活用していくことが必要であるが、大企業に比べ情報技術の知識

や活用能力、人材、IT投資額等において不十分な状態にある。 こうした状況を踏まえ、中部経済産業局では、中小企業のクラウドコンピューテ

ィング利活用促進を軸に、研究会活動を通じた中小企業、地域中小ITベンダー、

地域中小企業支援機関等による協業体制の構築、地域中小ITベンダー向け研修の

実施など中小企業のIT利活用を促進する環境整備や地域ITベンダーにおける

ITサービス供給力強化を図る事業(下図参照)に取り組み、その中で本調査を実

施した。本調査では、地域中小企業におけるIT利活用の現状と課題、地域のIT

ベンダーにおけるクラウドサービス提供の現状と課題等を調査し、地域中小企業の

クラウドコンピューティング利活用による経営高度化に向けた取り組みの方向性を

検討する。

Page 5: 中小企業のクラウドコンピューティング利活用促進 … › koho › chosa_houkoku › data › ...(1)背景と目的 地域産業を支える中小企業においては、グローバル化する経済の中で競争力強化、

- 5 -

(2)調査内容

①地域中小企業における経営課題やIT経営実践の現状と課題、クラウドコンピ

ューティングの利活用の現状と今後の導入に向けたニーズ、また、クラウドコンピ

ューティングの利活用による導入事例を企業ヒアリングにより調査する。さらに、

地域のITベンダーにおけるクラウドサービス提供の現状と課題を、地域のベンダ

ー企業に対するヒアリングにより調査する。 ②上記の企業からのヒアリング結果を整理し、地域中小企業のクラウドコンピュ

ーティング利活用による経営高度化に向けた取り組みの方向性を、調査委員会を設

けて検討する。また、地域の中小企業がクラウド利活用によるIT経営に取り組む

際の参考としていただくため、クラウドコンピューティングの利活用により経営の

高度化を実現した事例を検討し、事例集としてとりまとめる。 なお、本調査における「クラウドコンピューティング」の定義については、ユー

ザー自身がサーバーやソフトウェア等を管理することなくネットワークを通じて必

要な機能等を利用できる形態のものを広く捉える。サービス形態としては、ソフト

ウェアをネットワークを通じて提供するSaaS(Software as a Service)、ソフト

ウェアの開発、稼働するプラットフォームを提供するPaaS(Platform as a Service)、仮想サーバーやストレージなどのハードウェア資源やネットワーク接続

環境を提供するIaaS(Infrastructure as a Service)等があり、パブリッククラ

ウド、プライベートクラウド(特定企業やグループ内でサービスを提供)などの様々

な利用形態を含む。

中部地域における中小企業クラウドコンピューティング利活用基盤整備事業

経済性かつ利便性の高いクラウドコンピューティングの利活用を軸として、中小企業のIT化を促進する環境整備に取組むことで、中小企業のIT活用による経営革新の推進、地域における新たなクラウド型ビジネスの創出など地域のIT供給力の強化を図り、中部地域の中小企業のIT利活用による競争力強化を目指す。

目的

中部地域情報化推進協議会

普及促進

中小企業クラウドコンピューティング利活用促進のための調査

-地域の中小企業における経営課題やIT経営実践の現状調査、クラウド利活用によるIT化ニーズの把握、クラウドの取組事例、先進事例の収集

研究会

「情報化サミット」の開催-モデル事例等の紹介によるシステムの普及、マッチングセミナー 等

中部地域におけるクラウドビジネスの推進に向け、効果的な施策展開(支援)など、情報共有・意見交換

ベンダ系

ユーザ系/支援機関等

地域におけるクラウド型ビジネスの創出を目指し、地域の個別課題に取り組むクラウドコミュニティーを構築し、自立可能なビジネスモデルの構築・実証を行う

調査研究

ベンダIT供給力強化

クラウドビジネスに対応する人材育成コンテンツの開発・実施(ベンダ向け研修)-地域ITベンダの技術力・企画力の育成-クラウド化を見据えた地域のIT供給力強化

中小企業向けクラウド型EDIの普及に向けたビジネス研究会

中小企業向けEDI普及のための仕組みづくりに向け、地域ITベンダや支援機関等のコンソーシアムの構築、ビジネスモデルの確立に取り組む

中小企業のクラウド型IT利活用の促進

人材育成

ぎふIT・ものづくり協議会富山県総合情報センター石川県IT総合人材育成センターソフトピアジャパン人工知能研究振興財団あいち産業振興機構名古屋ソフトウェアセンターITC中部三重県産業支援センター石川県産業創出支援機構愛知県、岐阜県、三重県、富山県石川県、名古屋市中小企業基盤整備機構中部支部中小企業基盤整備機構北陸支部日本政策金融公庫名古屋支店

連携情報共有

愛知県情報サービス産業協会岐阜県情報産業協会富山県情報産業協会石川県情報システム工業会組込みシステム技術協会中部支部中部アイティ協同組合

Network

Front Runner

Base Up

クラウドマーケットプレイスの実現に向けた地域IT連携ビジネス研究会

地域ITベンダとITコーディネーターが連携して、中小企業向けクラウド型アプリ提供サービスモデルの確立に取り組む(3×SaaS研究会)

事業体制

Page 6: 中小企業のクラウドコンピューティング利活用促進 … › koho › chosa_houkoku › data › ...(1)背景と目的 地域産業を支える中小企業においては、グローバル化する経済の中で競争力強化、

- 6 -

(3)ヒアリング調査企業 中部地域における中小企業(ITユーザー側) 35社 中小企業のIT導入を支援するITベンダー企業(ITサービス供給側)14社 中部地域においては、自動車関連産業を中心とした製造業の企業が集積している

という地域の特徴を踏まえ、製造業に比重をおいたヒアリングを実施した。また、

中小企業においては、クラウドコンピューティングの利活用が進展していないこと

から、ITリテラシーが高いと思われる中小企業(過去にIT経営力大賞を受賞企

業及び認定企業等)をヒアリング調査の対象とした。 調査した企業35社のIT活用の度合いをIT経営力指標でみると、ステージ2

(部門でのIT活用)が9%、ステージ3(組織全体最適化)が49%、ステージ

4(企業間取引で横断的に活用)が40%と、IT活用の度合いが高い企業が多い。 ※参考:平成22年度経済産業省委託調査、「IT経営力指標」を用いた企業のIT

利活用に関する現状調査-報告書-(平成23年2月)の指標を参考とした。

(4)調査期間 平成23年8月~平成24年2月

2.中小企業ITユーザーにおける現状と課題 (1)調査対象企業の概要

ⅰ.規模及び業種 調査した企業35社の企業規模は、資本金5千万円以下 25社、社員数100

人~300人 23社、年商30~50億円 17社であり、中小企業のなかでも

中規模の製造業が半数以上を占めている。業種分類では、金属機械工業分野、輸

送機械分野等の製造業が23社と調査対象企業の66%を占めており、当地域の

製造業を主に対象としている。調査した企業は、売上傾向、経常利益の傾向とも

に、増加あるいは横ばいの企業が半数を占め、昨今の経営環境の激変に対して機

敏に対応している企業である。

資本金設問項目 回答数 比率

■1千万円以下 9 26%■1千万円超、5千万円以下 16 46%■5千万円超、1億円以下 9 26%■1億円超、3億円以下 1 3%■3億円超 0 0%

調査企業数 35 100%

社員数設問項目 回答数 比率

■10人以下 3 9%■11人以上、50人以下 5 14%■51人以上、100人以下 10 29%■100人以上、300人以下 13 37%■300人超 4 11%

調査企業数 35 100%

年商(直近)

■30億円超、50億円

以下

■50億円超

■5億円超、30億円以下

■1億円超、5億円以下

■1億円以下

Page 7: 中小企業のクラウドコンピューティング利活用促進 … › koho › chosa_houkoku › data › ...(1)背景と目的 地域産業を支える中小企業においては、グローバル化する経済の中で競争力強化、

- 7 -

ⅱ.経営管理の状況 調査した企業35社のうち中期もしくは短期経営計画を立案している企業が3

3社で、経営計画無しは2社である。また、中期経営計画と短期経営計画の両方

を立てているという企業が17社である。さらに、経営計画に沿った業務改革を

実現するための取組としては、目標管理制度、提案制度、小集団活動、ISOの

取得などは半数以上の企業が取り組んでいる。

業  種

大分類 大分類/中分類 回答数 比率

E ■製造業 23 66%

□10 飲料・たばこ・飼料製造業 1 4%

□14 パルプ・紙・紙加工品製造業 2 9%

□16 化学工業 1 4%

□18 プラスチック製品製造業 1 4%

□21 窯業・土石製品製造業 1 4%

□24 金属製品製造業 7 30%

□31 輸送用機械器具製造業 10 43%

I ■卸売業,小売業 7 20%

D ■建設業 1 3%

H ■運輸業,郵便業 1 3%

M ■宿泊業,飲食サービス業 1 3%

N ■生活関連サービス業 1 3%

R ■その他サービス業 1 3%

35調査企業数

売上高推移

■減少

■横ばい■増加

経常利益推移

■横ばい

■増加

■減少

■非回答

経営計画

設問項目 回答数 比率■中期経営計画 29 83%■短期経営計画 21 60%■短期/中期経営計画 両方 17 49%■経営計画なし 2 6%

調査企業数 (複数回答あり) 35

0 5 10 15 20 25 30

■中期経営計画

■短期経営計画

■短期/中期経営計画両方

■経営計画なし

0 5 10 15 20 25 30 35

■中期経営計画

■短期経営計画

■短期/中期経営計画両方

■経営計画なし

業種 <大分類/中分類>

製造業卸売業,小売

建設業

運輸業,郵便業

宿泊,飲食サービス業

生活関連サービス業

その他サービス業

10.飲料・たばこ・飼料製造業

14.パルプ・紙・紙加工品製造業

16.化学工業18.プラスチック製品

製造業

21.窯業・土石製品製造業

24.金属製品製造業

31.輸送用機械器具製造業

Page 8: 中小企業のクラウドコンピューティング利活用促進 … › koho › chosa_houkoku › data › ...(1)背景と目的 地域産業を支える中小企業においては、グローバル化する経済の中で競争力強化、

- 8 -

ⅲ.ITに関する部門等の設置状況 調査した企業35社のうち、IT部門を設置しているのは31社、IT部門を

設置していないが4社であった。また、専任のIT担当者がいるのは、13社に

とどまり、兼任のIT担当者がいるのが21社、外部への委託が12社であった。 社内にITの専門の担当者がいない企業が多いが、外部委託などを活用して

IT経営を推進している企業が複数見られた。 (2)中小企業ITユーザーにおけるIT利活用の現状

ⅰ.基幹システムの利用状況 調査した企業は、35社全てが基幹システムを導入し、受発注、出荷、外注管

理に活用している。このようなITシステムは、売上・利益向上に役立っている

ものの、28社の企業はその基幹システムに何らかの問題を抱えていると回答し

ている。問題点としては、基幹システムの各機能が連携していないため販売管理

のデータが生産管理に活用できていない、基幹システムだけでは必要なデータ分

析ができないため原価計算などに Access/Excel を使う、など、蓄積したデータを

有効に活用できていない。また、システムが古くなり処理時間が遅い等使い勝手

が悪い、データ量の増加に対応できていない等という問題もある。

諸制度設問項目 回答数 比率

■目標管理制度 22 63%■提案制度 22 63%■小集団活動 22 63%■ISO9000 21 60%■人事評価制度 20 57%■委員会・プロジェクトチーム 20 57%■ISO14000 16 46%■人材開発制度 13 37%■その他諸制度 3 9%

調査企業数 (複数回答あり) 35

諸制度 0 5 10 15 20 25

■目標管理制度

■提案制度

■小集団活動

■ISO9000

■人事評価制度

■委員会・プロジェクトチーム

■ISO14000

■人材開発制度

■その他諸制度

 ITに関する部門等の設置状況

IT部門 回答数 担当者 回答数 外部依頼

専任 13

兼任 21

無 4 無 4 4

35

8

調査企業数(複数回答あり)

有 31

0 5 10 15 20 25

■IT担当者 (専任)

■IT担当者 (兼任)

■外部依頼有り

Page 9: 中小企業のクラウドコンピューティング利活用促進 … › koho › chosa_houkoku › data › ...(1)背景と目的 地域産業を支える中小企業においては、グローバル化する経済の中で競争力強化、

- 9 -

◆基幹システムの機能活用状況

ⅱ.受発注システム(EDI)の利用状況 調査した企業のうち、24社(69%)が顧客との取引に EDI(Electronic・

Data・Interchange)を活用していた。しかし、客先ごとに仕様やデータフォーマ

ットが異なるため、基幹システムとのデータ連携等に関する問題が挙げられた。

利用されている EDI の種類としては、専用 EDI が47%、Web EDI が49%と

多く、専用 EDI の場合は運用コストが高いことが負担となっており、Web EDIの場合は多画面化による操作の煩雑さが負担となっている。

一方、仕入先との取引に EDI を利用しているのは、12社(34%)となって

おり、利用が進んでいない状況にある。

EDIの活用状況 (顧客との取引)設問項目 回答数 比率

■EDIを活用 24 69%■EDIは使用していない 10 29%■非回答 1 3%

調査企業数 35

EDIの種類 (顧客との取引)

0 5 10 15 20

■専用EDI

■WebEDI

■自社EDI

基幹システムの機能活用状況設問項目 回答数 比率

■売上・販売管理 34 97%

■受発注管理 33 94%

■売掛・買掛管理 32 91%

■出荷管理 30 86%

■在庫管理 30 86%

■購買・発注管理 28 80%

■生産管理 25 71%

■原価管理 24 69%

■外注管理 17 49%

■その他 5 14%

調査企業数 (複数回答あり) 35

0 5 10 15 20 25 30 35 40

■売上・販売管理

■受発注管理

■売掛・買掛管理

■出荷管理

■在庫管理

■購買・発注管理

■生産管理

■原価管理

■外注管理

■その他

基幹システムの問題点の有無

設問項目 回答数 比率■問題点が多い 5 14%■問題点がある 23 66%■問題点はない 7 20%

調査企業数 (複数回答あり) 35 100%

基幹システム

0 5 10 15 20 25 30

■基幹システムあり (オフコン)

■基幹システムあり   (PCサーバ・オープン

系)

■基幹システムあり  (PC・パッケージ)

■基幹システムなし

Page 10: 中小企業のクラウドコンピューティング利活用促進 … › koho › chosa_houkoku › data › ...(1)背景と目的 地域産業を支える中小企業においては、グローバル化する経済の中で競争力強化、

- 10 -

ⅲ.情報系システム(ホームページやブログ等)、CRM、SFA の利用状況 情報系システムとしては、ホームページやブログを活用しているのは30社(8

6%)、共通ファイルや文書管理システムを活用しているのが30社(86%)、

グループウェアの活用をしているのが22社(63%)であり、調査した企業の

95%が情報系システムを活用していた。次いで、顧客管理システム(CRM)は

10社(29%)が活用し、営業支援システム(SFA)は7社(20%)が活用

していた。 こうした業務分野においては、業務の特性に適したクラウドサービスが利用さ

れており、非常に役立っているとしているが、一方ではセキュリティへの不安や

現場担当者がITを使いきれていないという問題がある。例えば、データ入力、

特にデータ間の紐づけに手間取っているとか、データを分析して営業提案に活用

するまでの仕掛けを作り上げるまでに大変な作業が必要となる等である。

◆情報系システムの活用状況

EDIの活用状況 (仕入先との取引)

設問項目 回答数 比率■EDIを活用 12 34%■EDIは使用していない 20 57%■非回答 3 9%

調査企業数 35

EDIの種類 (仕入先との取引)

0 2 4 6 8

■専用EDI

■WebEDI

■自社EDI

情報系システムの活用状況

0 5 10 15 20 25 30 35

■HPやブログがある

■HPやブログが活用 され、効果が出ている

■ネットショップを 開設して活用

■facebookやTwitter を活用       

■グループウェアを活用

■共通ファイルや文書管理 システムを活用     

■モバイルを活用

Page 11: 中小企業のクラウドコンピューティング利活用促進 … › koho › chosa_houkoku › data › ...(1)背景と目的 地域産業を支える中小企業においては、グローバル化する経済の中で競争力強化、

- 11 -

◆営業支援システム・顧客管理システムの活用状況

ⅳ.クラウドコンピューティングの利活用の状況 調査した企業35社のうち、クラウドコンピューティングを活用している企業

は16社(46%)であり、そのうち7社はすでに導入の効果を上げていると回

答があった。効果を上げている例としては、プライベートクラウドの活用により

海外との B to B の販売展開に成果をあげている事例や、EDI により企業間取引

の効率化を果たした事例、パブリッククラウドの活用(と自社でのカスタマイズ)

によりパートナー企業との情報共有を実現し、物流の効率化を実現した事例もあ

った。 調査対象企業で活用しているとの回答が比較的多かったパブリッククラウドと

しては、GoogleAPPS のメールシステムでドキュメントの一元化・共有化、

Salesforce の営業情報システムなどであった。 また、インターネット経由でソフトウェアやデータを利用するクラウドサービ

スの形態に適した端末として、スマートフォンやタブレット型端末などのモバイ

ル端末を活用している企業は16社(46%)あり、営業関係を中心に活用が広

がっている。モバイル端末の活用事例としては、現場の情報収集や現場の業務効

率化(操作簡略化)に利用している事例があった。

【事例(3)―①】クラウドを活用した海外販売展開(会宝産業株式会社) 【事例(4)―①】SaaS型 EDI による企業間取引(有限会社加藤螺子製作所) 【事例(2)―②】クラウドによるパートナー企業との情報共有(愛知運送株式会社)

一方、パブリッククラウドは、カスタマイズ費用やライセンス数に応じた費用

を考えた場合、トータルで割高になるとか、パブリッククラウドを利用してみた

ものの、使い勝手が悪くライセンス数を減らしたとの回答もあった。 さらに、「クラウドで何ができるのか」というクラウドの活用の方向性や効果に

ついて、まだ事例が少ないため分からないとする回答や、業務に適したクラウド

サービスが見あたらないなどの理由から、現状では、部分的な業務で一部クラウ

ドを導入しているという状況の企業もあった。 今後の見通しとしては、今後クラウドの活用を予定している企業が15社あり、

既に導入している企業と合わせると全体で8割以上の企業がクラウドに対して何

営業支援システム・顧客管理システムの活用状況

0 2 4 6 8 10 12 14

■営業支援システム (SFA)を活用  

■顧客管理システム (CRM)を活用  

■SFAやCRMを 活用していない

■非回答

Page 12: 中小企業のクラウドコンピューティング利活用促進 … › koho › chosa_houkoku › data › ...(1)背景と目的 地域産業を支える中小企業においては、グローバル化する経済の中で競争力強化、

- 12 -

らかのニーズを持っていることとなり、中小企業であっても、クラウドの活用が

IT化の一つの選択肢として認識されつつあることがうかがえる。 モバイル端末についても、今後のクラウド導入に際してモバイル端末の活用を

予定しているとする企業が多く、モバイル端末のビジネス利用が更に広がってい

くものとみられる。

◆現在活用しているクラウド クラウドの名称 活用状況

GoogleAPPS メールシステムでドキュメントの一元化・共有化 Salesforce 営業情報システム TKC 会計情報システム プライベートクラウド 営業情報・受発注情報・技術情報共有システム プライベートクラウド 自社 EDI 技術情報共有システム、生産管理システム プライベートクラウド 自社業務システム(協力会社との業務共有化)

◆今後活用を予定しているクラウド

クラウドの名称 活用予定 Google+ 営業情報システム パ ブ リ ッ ク ク ラ ウ ド

CRM・SFA 顧客管理、営業支援システム

プライベートクラウド 自社 WEB EDI の拡張 (3)中小企業ITユーザーの経営課題

中小企業においてクラウドの活用分野として有用な分野を見極めるため、主な経営

課題を大きく営業力の強化、商品力・技術力強化、現場力強化、人間力強化の4つに

分け、それぞれについての具体的なコメントを以下に掲載する。 ⅰ.営業力の強化(売上の確保・拡大) 営業力強化は、最も重要な課題として挙げる企業が多く、各種情報を営業に活用

するとか、顧客満足度を向上するためにも、ITを積極的に活用したい分野であ

るとして、以下のような課題が挙げられた。 ・顧客対応の向上(短納期化、EDI 等を利用した受発注の効率化)

クラウド活用

設問項目 回答数 比率

■クラウドを活用している 16 46%

■クラウドを活用し、かつ 効果を上げている

7 20%

■今後活用を予定している 15 43%

■活用の予定なし 4 11%

調査企業数 35

0 2 4 6 8 10 12 14 16 18

■クラウドを活用している

■クラウドを活用し、かつ 効果を上げている

■今後活用を予定している

■活用の予定なし

Page 13: 中小企業のクラウドコンピューティング利活用促進 … › koho › chosa_houkoku › data › ...(1)背景と目的 地域産業を支える中小企業においては、グローバル化する経済の中で競争力強化、

- 13 -

・顧客への提案内容の充実、提案力向上(カタログの電子化、モバイルデバイス

を活用した効果的なプレゼン) ・特定顧客へ密着した営業戦略の展開(顧客情報の活用) ・ネットショップ(B to C)による販売拡大 ・全国的な多店舗展開の場合の各店舗の販売強化(情報の迅速化、共有化、人材

育成、等) ・海外への販売強化 ・営業の効率化(損益の“見える化”、リアルタイム化) ・営業人材の育成(ベテラン営業マンからの販売ノウハウの継承) ・提供サービス内容の平準化、満足度アップ(人材育成、情報共有、情報伝達)

ⅱ.商品力・技術力強化(魅力的な商品又は技術の獲得) 商品力・技術力の強化は、重要な経営課題であり、製造業では得意分野の技術

力の向上を課題に上げる企業が多かった。一方で、技術力は重要な経営課題では

あるが、ITの活用とは別の問題だと考える企業もあった。従って、ここでは、

技術力向上のなかでもITシステムに関連する課題を整理した。 ・商品企画・開発のためのマーケティング(SNS 等によるマーケティング) ・NC工作機器など設備と連携するIT(CAD・CAM システム) ・設計・試作・金型制作・量産化など総合力の向上(CAD などの図面システム、

カメラシステム) ・海外展開における CAD データの共同利用(クラウド化) ・デザイン系の技術力強化

ⅲ.現場力強化(スピーディな業務処理による現場の効率化) 企業が経営の高度化を実現するためには、各部門におけるスピーディな業務処

理による現場の効率化が不可欠であり、課題として回答される数も多かった。特

に、受注型の製造業の場合は、徹底した効率化には、徹底したデータ活用が必須

であるとして、重要課題と認識している場合が多かった。こうした現場の情報の

見える化は、すでに取り組みを開始しているものの、実績集計や現場指標の管理、

原価管理など、現場の実績データを集計・分析し、活用するまでに十分至ってい

ないとする企業も多く、引き続き取り組む課題として、具体的には以下のような

課題が挙げられた。 ・現場改善(生産性向上、納期厳守、品質保証)の指標を掴む ・パートナー企業も含めた情報共有 ・NC工作機器など設備と連携するIT ・グループ企業の効率化のため、物流現場の改善改革 ・更なる効率化(現場の見える化をさらに進める) ・生産性向上(「職人技術の伝承」を含む、業務の効率化) ・現場での入力の簡便化(タブレット型端末やスマートフォン活用、ペーパーレ

Page 14: 中小企業のクラウドコンピューティング利活用促進 … › koho › chosa_houkoku › data › ...(1)背景と目的 地域産業を支える中小企業においては、グローバル化する経済の中で競争力強化、

- 14 -

ス化) ・現場のデータ(出来高、機械故障率、不良改善など)の活用による改善 ・接客含めサービス向上(タブレット型端末などでの情報提供の効率化)

ⅳ.人間力強化(幹部人材、IT人材の育成) 幹部人材の不足、IT人材の不足は中小企業の大きな課題であり、特に次世代

の担う幹部候補の育成は大きな課題として挙げられた。また、現場のIT人材に

ついても、IT活用、データ活用が進むにつれて重要になってきており、その点

を課題と回答する企業もあった。 求められるIT人材像としては、次の意見があった。

・自社システムやデータの活用ができる人材(使いこなせる人) ・データ分析などから業務課題の解決ができる人材 ・IT活用により現場改善ができる人材 ・CAD/CAM によるデザインなど、実際の業務をIT化できる人材

また、人材育成におけるIT利活用として以下の意見があった。

・現場のIT人材育成(e-ラーニング、グループポータルサイトの活用) ・幹部人材の育成(情報共有システムや企業ポータル、ワークフローシステムの

活用) (4)クラウドコンピューティングの利活用による中小企業の課題対応

ⅰ.中小企業ITユーザーにおけるクラウドのニーズ 上記に挙げた中小企業における経営課題のうち、クラウドコンピューティング

を活用することにより課題解決が功を奏すと考えるもの(ニーズ含む)について

ヒアリングしたところ、「営業力の強化(売上の確保・拡大)」に有用と回答した

企業が21社と最も多く、次いで「現場力強化(スピーディな業務処理による現

場の効率化)」が17社、「商品力・技術力強化(魅力的な商品又は技術の獲得)」

が13社であった。

□経営課題とIT化ニーズ・クラウドコンピューティング活用のニーズ

IT化ニース・クラウド活用ニーズ0 5 10 15 20 25

■営業力強化になる

■現場力強化になる

■商品力・技術力強化になる

■人間力強化になる

Page 15: 中小企業のクラウドコンピューティング利活用促進 … › koho › chosa_houkoku › data › ...(1)背景と目的 地域産業を支える中小企業においては、グローバル化する経済の中で競争力強化、

- 15 -

クラウドコンピューティングの活用が想定される具体的な業務分野として、「営

業力の強化(売上の確保・拡大)」の経営課題に対しては、クラウドの利点である

「いつでも、どこでも、誰でも」を活かした営業活動(モバイル端末を利用した

顧客へのプレゼンテーションや、リアルタイムコミュニケーションを武器とした

営業活動など)を挙げる企業があった。また、インターネット販売等と併用した

ソーシャルネットワーク(SNS)を活用した営業情報の提供や顧客の囲い込み

等による販路拡大に取り組みたいという企業も多い。さらに、「現場力強化(スピ

ーディな業務処理による現場の効率化)」に関しては、クラウドの利点を生かし、

自社に留まらずパートナー企業を含めたリアルタイムの情報共有による業務の効

率化に有効であるとの回答をする企業もあり、クラウドコンピューティングの利

点を理解した上で、クラウドを活用する業務を具体的に想定できる中小企業も出

始めていることがうかがえる。

【事例(1)―①】クラウドを活用した営業システム(大東亜窯業株式会社) 【事例(1)―②】SNSを活用した販売力強化(株式会社タニハタ) 【事例(2)―①】クラウドを活用した企業連合体の情報共有(大津鉄工株式会社) 【事例(2)―③】クラウドを活用した SCM の情報共有(株式会社タカイコーポレー

ション) 【事例(3)―②】クラウドを活用した海外工場の生産管理(株式会社タガミ・イー

エクス) 【事例(4)―②】クラウドを活用した自動車部品のEDI(真和工業株式会社) 【事例(5)―①】業界特化型クラウドを活用した基幹システム(株式会社インディ

オ富山) また、今後3年以内のIT投資の意向を調査したところ、「基幹業務システムの

改善」を挙げる企業が最も多く、次いで「生産・購買業務システムのスピードア

ップ」、「社内の業務・意思決定のスピードアップ」の順となっており、クラウド

コンピューティングの利点が活かせる「データ活用」や「スピード経営」を実現

するシステムへの投資意欲が高かった。 上記のようにユーザーが想定しているクラウドの活用用途に加え、今後は、基

幹業務システムやその他業務アプリケーションなどで収集したデータの分析(需

要予測や作業分析、あるいは技術分析など)に関するアプリケーションのクラウ

ド型サービスについても、潜在的なニーズがあると考えられる。 さらに、「得意先や仕入れ先とのコミュニケーション強化」を挙げる企業が多か

ったほか、「mobile・internet 等を活用した社内コミュニケーション」を挙げる

企業も多く、SNSの活用など顧客等との双方向のコミュニケーションによる販

売強化や、モバイル端末を積極的に活用した営業サービスや業務効率化を図ろう

とするニーズもある。

Page 16: 中小企業のクラウドコンピューティング利活用促進 … › koho › chosa_houkoku › data › ...(1)背景と目的 地域産業を支える中小企業においては、グローバル化する経済の中で競争力強化、

- 16 -

ⅱ.中小企業におけるクラウドの活用の方向性 上記のように、多くの中小企業において、クラウドコンピューティングに対す

るニーズは確認できるものの、「クラウドで何ができるか?、どのような効率化が

図られるか?」という活用の方向性については、具体的なイメージが持てていな

いのが現状である。従って、ここでは、中小企業がクラウドを活用する際の方向

性について述べる。

①クラウドに適した業務とそうでない業務を分ける 本来ITは、目的ではなくの手段の一つであって、経営課題の解決または経営

戦略の実現のために、セキュリティや使い勝手、費用対効果などを考慮し、シス

テムを選択するものである。その際、「クラウド」も一つの有用な選択肢として中

小企業にも広まりつつあるが、クラウドの性質上、導入時には、特にセキュリテ

ィレベルに注意し、クラウドに適した業務と適さない業務の峻別が肝要である。

②クラウドサービスの「いいとこどり」活用・「段階的導入」 クラウドサービスはまだ黎明期であるため、その効果など見極めが難しいが、

少しずつ事例も出てきていることから、そうした事例の研究により、自社に展開

可能な分野での「いいとこどり」活用や、提案されているサービスを部分的に取

り入れ、自社業務に有効な部分、費用対効果の高いものから徐々に取り入れてい

く「段階的導入」もクラウドならではのひとつの方法である。

③モバイル端末の普及と活用 スマートフォン、タブレット PC、モバイル PC などモバイル端末は、企業に

今後3年以内にIT投資を考えていますか?設問項目 回答数 比率

■基幹業務システム改善 27 77%

■得意先や仕入先との コミュニケーション強化

22 63%

■生産・購買業務の スピードアップ

22 63%

■社内の業務・意思決定の スピードアップ・活性化

21 60%

■Mobile・Internetを等活用した 社内コミュニケーション

15 43%

■HP・Webモール等の利用 による新規取引の獲得

14 40%

■特に海外との新規得意先の 獲得・取引拡大

13 37%

■間接社員をはじめとする 人件費削減

11 31%

■IT化を推進するための 社員教育・人材育成

10 29%

■EDI 9 26%

■ITを活用した新規事業への進出 8 23%

■行政の電子化(受注・許認可・ 報告等)への対応

7 20%

■同業他社・同一地域他社との協同 による受注・物流・廉価販売・広報等

5 14%

■IT投資は考えていない 1 3%

■その他 1 3%

調査企業数 (複数回答あり) 35

0 5 10 15 20 25 30

■基幹業務システム改善

■得意先や仕入先との コミュニケーション強化

■生産・購買業務の スピードアップ  

■社内の業務・意思決定の スピードアップ・活性化 

■Mobile・Internetを等活用した 社内コミュニケーション  

■HP・Webモール等の利用 による新規取引の獲得

■特に海外との新規得意先の 獲得・取引拡大     

■間接社員をはじめとする 人件費削減        

■IT化を推進するための 社員教育・人材育成

■EDI

■ITを活用した新規事業への進出

■行政の電子化(受注・許認可・ 報告等)への対応     

■同業他社・同一地域他社との協同 による受注・物流・廉価販売・広報等

■IT投資は考えていない

■その他

Page 17: 中小企業のクラウドコンピューティング利活用促進 … › koho › chosa_houkoku › data › ...(1)背景と目的 地域産業を支える中小企業においては、グローバル化する経済の中で競争力強化、

- 17 -

おける情報システムの効果的な利用と多様な使い方を実現するツールとして利用

が広がっており、今後加速度的に普及するものと思われる。これらモバイル端末

がクラウドサービス、特にパブリックッククラウドの各種アプリケーション(例

えば Evernote、Dropbox、SugarSync などモバイル端末の活用を前提としたク

ラウドサービス)と組み合わせることにより、企業活動における情報システムの

あり方が大きく変化するものと考えられる。 これは、多地点間での情報閲覧、多拠点間での情報活用、更に企業間での情報

活用など、場所と時間、組織に拘らず自由に情報のやり取りができるというクラ

ウドサービスの特徴によるもので、業種や業務により活用の度合いは異なるもの

の、モバイル端末の普及がクラウドサービスの普及を大きく後押しするものと考

えられる。

3.地域ITベンダーにおけるクラウドビジネスビスの現状と課題 (1)調査対象企業の概要

ⅰ.企業規模 調査した企業14社の企業規模は、資本金5千万円以下10社、社員数50人

以下9社、年商5億円以下8社と中小企業のなかでも比較的小規模な企業が半数

以上であった。 売上高の状況としては、半数の企業が増加傾向である。

ⅱ.事業内容(受託開発、パッケージソフトウェア開発業など) 調査した企業は、地域の中小企業にITサービスを提供している企業で、その

事業内容は、パッケージソフトウェア業が12社、受託開発サービス業が9社で

ある。また、業態は、自社ブランド型(12社)及び自社サービス提供型(11

社)の事業展開を行いつつ、受託請負型開発(9社)及び下請け型(8社)の開

売上高推移

■横ばい

■減少

■増加

資本金

設問項目 回答数 比率

■1千万円以下 5 36%■1千万円超、5千万円以下 5 36%■5千万円超、1億円以下 2 14%■1億円超、3億円以下 2 14%■3億円超 0 0%

調査企業数 14 100%

社員数

設問項目 回答数 比率

■10人以下 5 36%■11人以上、50人以下 4 29%■51人以上、100人以下 0 0%■101人以上、300人以下 3 21%■300人超 2 14%

調査企業数 14 100%

年商(直近)

■非回答

■50億円超

■5億円超、50億円

以下

■1億円以下

■1億円超、5億円

以下

Page 18: 中小企業のクラウドコンピューティング利活用促進 … › koho › chosa_houkoku › data › ...(1)背景と目的 地域産業を支える中小企業においては、グローバル化する経済の中で競争力強化、

- 18 -

発も行っている企業がほとんどである。(いずれも複数回答のため、合計数値と調

査企業数は異なる)

※業種の説明は、巻末の注釈1を参照 (2)ITベンダーにおけるクラウドビジネスの現状

ⅰ.クラウド製品の開発状況 調査を行った企業14社において、クラウド製品を自社製品として開発・販売

している企業は13社にのぼり、そのうち他社のクラウド製品も取り扱っている

企業は8社であった。なお、クラウド製品を取り扱っていない企業は、1社にと

どまった。クラウド製品として開発・販売している自社製品については、従来の

自社パッケージ製品をクラウド化(SaaS 化)している企業が12社で、クラウ

ド製品として新たな開発している企業は1社のみであった。本調査では、クラウ

ドサービスを提供していると思われるベンダー企業を調査対象としたため、自社

開発型のクラウドビジネスへの取り組みが高くなっている。 クラウドサービスの提供においては、データを蓄積するデータセンターが非常

に重要である。ユーザー企業からもセキュリティに関する関心が高く、どういっ

たデータセンターを提供できるかということが契約の大きな判断材料になってい

る。調査した企業のうち6社は、従来から自社でデータセンター提供業務を行っ

ており、主に自社のデータセンターによるクラウドサービスを行っている。現状

では、ユーザーは海外データセンターの利用を避ける傾向があり、また、一般的

には国内データセンターの利用料が高いため、中小企業ユーザー向けにはコスト

面の負担が高いこともあってクラウドの導入が進まないとの声もあった。 クラウドコンピューティングの導入に際して、スマートフォン、タブレット型

端末などの操作性が良いモバイル型のIT機器の導入も併せて行うことで、業務

の効率化を提案する取り組みも行われている。調査した企業のうち6社が、スマ

ートフォンシステムを扱っており、5社がスマートフォンシステムを企画中であ

る。こういったスマートフォンなどの携帯端末を利用したシステムは、今後さら

に増加すると予想されている。

業種(複数回答あり)

0 2 4 6 8 10 12 14

■パッケージソフトウェア業

■受託開発サービス業

■情報処理サービス業

■情報提供サービス業

■インターネット付属サービス業

■その他

業態(複数回答あり) 0 2 4 6 8 10 12 14

■自社ブランド型

■自社サービス提供型

■受託請負型

■下請け型

■その他

Page 19: 中小企業のクラウドコンピューティング利活用促進 … › koho › chosa_houkoku › data › ...(1)背景と目的 地域産業を支える中小企業においては、グローバル化する経済の中で競争力強化、

- 19 -

□開発体制、開発状況 □データセンター

□スマートフォンの開発

ⅱ.クラウド製品の販売体制及び販売状況 調査した企業14社は、クラウドビジネスを展開しているものの、クラウド製

品の専門の営業部門を設置している企業は5社にとどまり、多くの企業は、客先

対応の営業体制をとっており、従来の製品とクラウド製品を同じ担当者が取り扱

っている状況である。 営業体制は、製造業対応部門、流通業対応部門など業種や分野ごとに担当者を

置いている状況で、クラウド製品は1つのソリューションとして、従来のパッケ

ージと同じように扱われている。このため、クラウド製品の販売先は、従来のパ

ッケージ製品からクラウド製品(SaaS)への乗せ換えであり、新規ユーザーの獲

得には繋がっていない状況にある。新規顧客を開拓するため、ある企業では、従

クラウド製品取扱状況

設問項目 回答数 比率

■自社クラウド製品 13 93%■他社クラウド製品 8 57%■取扱いなし 1 7%

調査企業数(複数回答あり) 14

クラウド製品取扱状況

0 2 4 6 8 10 12 14

■自社クラウド製品

■他社クラウド製品

■取扱いなし

クラウドシステム開発について

0 2 4 6 8 10 12 14

■自社独自のシステム開発

■他社の製品を販売

■開発中

■状況を見てクラウドシステム開発

■クラウドシステムの開発予定無

データセンターの利用状況0 1 2 3 4 5 6 7

■自社のデータセンターを利用

■他社のデータセンターを利用

■他社のクラウド製品を販売、 その社のデータセンターを利用

■今後検討する

スマートフォンの開発0 1 2 3 4 5 6 7 8

■スマートフォン上で動くシステム  

■ITシステムと  連携システム 

■現在企画中

■その他

■非回答

Page 20: 中小企業のクラウドコンピューティング利活用促進 … › koho › chosa_houkoku › data › ...(1)背景と目的 地域産業を支える中小企業においては、グローバル化する経済の中で競争力強化、

- 20 -

来のパッケージを販売するユーザー企業層(売上額100億円以上)から、クラ

ウド製品では1段階小さな事業規模のユーザー企業層にもターゲットを拡げて営

業をしている企業もある。 販売方法については、直販が7社で、販売代理店があると答えた企業は9社で

ある。ただし、その代理店の数は少なく全国展開の代理店をもつ企業は2社のみ

である。従来のパッケージ販売と同じように、自社の販売テリトリー内で直販し

ているのが実態である。 また、販売代理店への販売コミッションは、売上の一部支払いが4社、契約時

一定コミッションが3社であったが、非回答が6社あり、ITベンダー企業の対

応は今後のクラウド製品の販売状況や他社の状況もみながら見直していこうとい

う状況であり、現状とりあえずの代理店政策と思われる。 販売促進活動については、自社のホームページに掲載してPRしていると答え

た企業が12社で、掲載方法についても従来製品と同様に商品紹介程度とのこと

であり、クラウド製品に特化した対応はしていないのが現状である。 クラウド製品の販売状況は、増加している企業が8社であったが、横ばいの企

業が5社あり、新製品であるにもかかわらず売上拡大に苦慮している状況がみら

れた。また、クラウド製品売上高は増加しているとはいえ、全売上高に占める割

合は、10%以上あると回答した企業が1社のみで、他の企業はこれから売上増

を期待しているといった状況であった。クラウド製品は、端末数に応じて課金さ

れるビジネスモデルであり、従来ビジネスのようにシステム納入時に売上が一度

に計上されないが、今後クラウドビジネスの広がりと共に売上は漸次増加してい

くと思われる。

□販売チャンネル □販売代理店マージン

□販売促進活動 □売上回収・債権管理

販売促進活動0 2 4 6 8 10 12 14

■自社HP

■他社HPとリンク

■通販サイト

■独自広告

■その他

■非回答

売上回収・債権管理

0 2 4 6 8 10 12 14

■請求書発行

■自動引き落とし

■振込

販売店マージン

0 1 2 3 4 5 6 7

■売上の一部支払い

■契約時一時コミッション支払い

■その他

■非回答

販売チャネル

0 2 4 6 8 10

■販売代理店あり

■直販 

■その他

Page 21: 中小企業のクラウドコンピューティング利活用促進 … › koho › chosa_houkoku › data › ...(1)背景と目的 地域産業を支える中小企業においては、グローバル化する経済の中で競争力強化、

- 21 -

□販売状況

ⅲ.クラウド製品の導入・運用サポートの状況 クラウド製品をユーザー企業に導入する際に初期導入支援を行っている企業が

8社あり、クラウドの導入に際してもパッケージ製品と同様に導入支援が必要と

されている。また、クラウド製品もパッケージシステムのようにオンプレミスを

行う企業が6社あるほか、販売に際してカスタマイズを行う企業が10社ある。

こうしたサポートは、クラウド製品も従来のパッケージシステムと同様のサービ

スを提供している状況である。 クラウド導入後の運用サポートについては、有償で問い合わせ対応している企

業が7社、無償で対応している企業が6社である。無償と回答した企業でも実際

には定額のクラウド利用料金に含んで契約している企業もあり、運用サポート付

のサービスで他社との差別化をしている。 □導入形態 □サポート状況と費用

ⅳ.グリーンITとBCPについて 近年、環境や電力使用への関心が高くなり、省エネ型サーバー・PCやサーバ

ーの仮想化などのグリーンITへの関心が高くなっており、調査した企業14社

販売状況

■横ばい ■増加

■その他

導入形態 0 2 4 6 8 10 12

■自社製品を オンプレミスする

■販売に際しカスタマイズ を受ける         

■個別カスタマイズ 対応はしない

■他システムと 連携は可能か

■自社の製品と連携できる他社のクラウド製品があるか

■非回答

サポートの状況/問合せ費用

■問合せは有償で

ある

■問合せは無償で

ある

Page 22: 中小企業のクラウドコンピューティング利活用促進 … › koho › chosa_houkoku › data › ...(1)背景と目的 地域産業を支える中小企業においては、グローバル化する経済の中で競争力強化、

- 22 -

のうち8社は、顧客への提案に盛り込んでいる又は顧客からの要望次第で対応す

るとしている。一方で、5 社はあまり意識していないと回答している。クラウド

コンピューティングは、自社で大量のデータを保存するためのサーバー等のIT

機器を保有することなくシステムを利用できるため、ユーザー企業としては電力

使用料の削減に繋がるものと思われるが、こうした提案は積極的に行われていな

い状況である。 また、平成23年3月11日の東日本大震災以降、企業のBCPへの関心が高

まり、データのバックアップを利用するとかシステムをクラウドに移行するとか

何らかの対応をする企業が増加していると想定される。調査した企業のうち6社

は、BCPを提案しているが、その他の企業は提案をしていない。また、北陸地

域のデータセンターでは、データのバックアップを他地域と協定したケースがあ

ったが、データセンターの受注が増えたとする企業は1社のみであった。 □グリーンITについて □BCPについて

(3)ITベンダーにおけるクラウドビジネスに関する課題

ⅰ.クラウド製品の開発に関する課題 調査結果からみると、中小企業のクラウドコンピューティングの利用は進んで

いない。一方、地域のITベンダー企業も、クラウドでどの分野へビジネス展開

するかターゲットを決めかねており、中小企業が自社でIT機器を持たなくても

インターネットにより安心して低コストで使えるクラウドサービスが提供できて

いない。ITベンダーにとってクラウドに対する中小企業ITユーザーのニーズ

把握が課題となっている。 また、クラウド製品の開発においては、開発費の負担が課題であると回答した

企業もある。クラウドの場合は、ユーザーからの費用回収は毎月定額の課金であ

ることから、従来の販売型のパッケージシステムに比べて長期間に渡って投資額

の負担が続き、システム開発にともなう投資額の負担が大きい。ある企業では、

IT ベンダーとして、本格的なクラウド製品を開発することは、企業将来を左右す

る投資額となるとの話しもあった。

グリーンITについて

■顧客の提案に盛り込ん

でいる

■サーバなど H/Wの提案に生かしている

■顧客の要望次第で対

応する

■あまり意識しない

■非回答

BCPについて

■非回答

■BCPとしてサーバの

 ハウジング等を提案する

■特に提案していない

■顧客の要望があれば対応

する

■BCPを提案している

Page 23: 中小企業のクラウドコンピューティング利活用促進 … › koho › chosa_houkoku › data › ...(1)背景と目的 地域産業を支える中小企業においては、グローバル化する経済の中で競争力強化、

- 23 -

技術力としては、「情報セキュリティ」、「仮想化技術」、「分散処理技術」、「クラ

ウド連携」、「開発言語」などがあげられる。従来から ASP 事業やデータセンタ

ー事業を行っている企業は、これらの技術のいくつかは習得しているが中小の

ITベンダーが新たにクラウド製品の開発やカスタマイズを行うためには、こう

した技術者育成が費用面を含めて課題としている。 また、クラウドは、スマートフォンやタブレット型端末などの携帯端末を利用

するケースが多く、近年では携帯の機種が多くなりすぎ、新製品が出るたびにシ

ステム改修が必要で、こうした新たな携帯端末に関係するシステム構築ができる

技術者の育成も課題となっている。

ⅱ.クラウド製品の開発に関する課題への対応事例 クラウドビジネスにおいて、ユーザーのニーズ把握が課題である企業が多い中

で、これまでのパッケージシステムで培った自社の強みを活かして、クラウド製

品の開発に取り組んでいる企業があった。(事例:流通システムや工事原価管理シ

ステム) また、大手クラウドベンダーの開発環境を利用し、開発技術を指導してもらう

ことで、事業を伸ばしているITベンダーの事例があった。 さらに、スマートフォンやタブレット型の端末を活用したシステム構築に取り

組んでいる企業は、企画中含め12社であった。スマートフォン上のHPを簡単

に作成できるシステムや、スマートフォンからアンケート調査ができ、データ分

析システムと連携するシステム等の事例があった。 ⅲ.クラウド製品の販売に関する課題 本調査で調査したITベンダー各社は、従来の販売形態の中で、商品のひとつ

としてクラウド製品も販売するという販売方法をとっているため、従来のパッケ

ージ製品からクラウド製品(SaaS)への乗せ換えが中心で、新規ユーザーの獲得

になっていない。後述するベンダー間連携による代理店販売も有効であるが、自

社の販売体制においてもクラウドサービス提供による新規顧客の開拓が必要であ

る。 クラウドサービスでは、「サービス説明」、「サービス選定」、「複数サービスのコ

ーディネート」などの能力が必要といわれており、自社製品のみでなく、回りの

多くの他社製品を必要に応じて組み合わせてユーザー企業に提案することで、ユ

ーザー企業にとって効果的なIT活用を実現できる。しかし、こうしたクラウド

の提案・販売ができる営業人材やコンサルできる人材の育成が地域の中小ベンダ

ーにおいてはまだできていない。 さらに、クラウドの利用料(課金制度)は、ITベンダー企業の資金の流れや、

儲けの仕組み構築にも変化をもたらす。クラウド利用料は毎月のITベンダーか

らユーザーに請求する方法が一般的で、従来型のシステム開発の場合の数百万円

~数千万単位での受注や、パッケージ製品の導入時の一括販売に比べて、ベンダ

Page 24: 中小企業のクラウドコンピューティング利活用促進 … › koho › chosa_houkoku › data › ...(1)背景と目的 地域産業を支える中小企業においては、グローバル化する経済の中で競争力強化、

- 24 -

ー企業からユーザー企業への請求等に係る事務量の増加と、郵送料などの手数料

の経費が増加する。現状では、クラウドの利用が限定的のため、課題としてあげ

る企業は少なかったが、今後のクラウドの普及に伴い課題となると予想される。

ⅳ.クラウド製品の販売に関する課題への対応事例 建設業向けパッケージシステムを販売しているITベンダーが、自社の強みを

生かしてクラウド製品の開発・販売に際して、従来のパッケージシステム市場の

ユーザー層より小規模なユーザー層にも営業対象を広げることで、新規ユーザー

の獲得を行っている事例がある。 また、クラウド製品の販売力を強化するために、全国の各拠点のITベンダー

と代理店契約を行い全国販売の展開を進めているITベンダーの事例があった。 さらに、クラウド製品の販売に伴う利用料(課金制度)の事務量の増加を抑え

る事例として、クラウド利用料の請求を毎月ではなく1年単位として事務量の軽

減を図っている事例がある。

ⅴ.ベンダー間連携、業界団体との連携などビジネス連携に係る課題 クラウド製品は、従来のパッケージシステムのように多くのユーザーに拡販す

ることで利益を出すため、新たな顧客を獲得するためITベンダーの連携が必要

である。また、中小のベンダー企業では、全てのシステムを充足することは困難

であるため、得意分野の異なるITベンダー企業との連携により効果的なIT提

供が可能となる。地域ITベンダーは、こうした認識をしている企業は多いもの

の、これまで企業連携(販売代理店政策)の経験が少なく、どのように相手を探

し連携していくかはまだ手探りの状況である。 自社クラウド製品を他社に取り扱ってもらうための、製品の販売方法、販売ツ

ールなど販売体制が確立していない点も企業連携が進まない原因と考えられる。 自社のクラウド製品を、全国的に販売しなくては売上規模が確保できないため、

自社の地域以外のITベンダーなどの提携企業を探すことは重要な課題である。 また、ユーザー企業におけるクラウドサービス利用の方法として、企業グルー

プや業界で共同利用し、企業間取引の効率化を図ることも考えられる。ユーザー

企業間で共通の業務プロセスに対応したクラウドサービスを提供するためには、

こうした業界団体やユーザー企業グループとの連携も重要である。

ⅵ.ベンダー間連携、業界団体との連携などビジネス連携に係る課題に対する 対応事例

販売代理店としての連携の対応事例は、ⅳに記載している。 中小ITベンダーがビジネス連携を行うためには、連携する企業との出会いの

場が必要である。調査した企業では、データセンターや大手通信会社などの会員

になり、そうした会員間の出会いの場を通して、ITベンダー間の連携に進展し、

相互に営業活動やシステム提供をしている事例があった。

Page 25: 中小企業のクラウドコンピューティング利活用促進 … › koho › chosa_houkoku › data › ...(1)背景と目的 地域産業を支える中小企業においては、グローバル化する経済の中で競争力強化、

- 25 -

また、流通業向けのシステムを販売しているITベンダーは、その業界団体と

協業し、特定業界への販売強化の取り組みを行っている事例があった。連携先と

して、全国の会計士・税理士団体と連携してクラウド製品の販売を強化している

事例もあった。 4.クラウドコンピューティングの利活用した事例の紹介 (1)顧客管理・営業支援のクラウド事例 ①大東亜窯業株式会社 ☞会社概要:資本金1,000万円 窯業、和食器の窯元 本社 岐阜県土岐市 ☞クラウド化の目的:顧客情報をはじめ販売店等の情報の収集により販売戦略に活用 ☞クラウド化の方法:クラウドサービスを活用し、営業情報システムを構築 ☞クラウド化の成果:直接取引の顧客情報だけでなくその他の販売店等の情報を一

元的に整理、共有するとともに、その情報の活用により売上

拡大

工場⇒産地問屋⇒消費地問屋⇒販売店

⇒消費者に至る流通チャネルで販売して

いたため、販売店や消費者からの情報が

散発的、属人的で活用することができな

かった。パブリッククラウドを活用し、

短期間で営業情報システムを立ち上げ、

営業担当が積極的に売り場情報、売れ筋

情報など販売現場のニーズ情報を収集・

即時に入力する仕組みを構築し、全社で

情報を共有化、素早く販売戦略に活かし、売上の増加につなげている。

②株式会社タニハタ ☞会社概要:資本金2,100万円 伝統木工の木製建具等製造 本社 富山県富山

市 ☞クラウド化の目的:インターネット通販により低コストでファン作りを実践 ☞クラウド化の方法:コストを掛けないIT化として、メーリングリスト、Twitter、

Facebook などを利用 ☞クラウド化の成果:ネット販売比率が90%以上になった。社内の職人がお客様

とコミュニケーションの重要性に気づいてくれた。

インターネット通販において、顧客を増やすための出会いや、その後のコミュニ

ケーションが重要である。それを、低コストで実現した事例である。新規顧客との

出会いは、楽天市場のショップ等で、そこからメーリングリストや Facebook を通

じて自社のホームページに誘導し、その他のツール類(Blog、Twitter、Skype 等)

を駆使して、顧客とのコミュニケーションを高めている。

Page 26: 中小企業のクラウドコンピューティング利活用促進 … › koho › chosa_houkoku › data › ...(1)背景と目的 地域産業を支える中小企業においては、グローバル化する経済の中で競争力強化、

- 26 -

(2)協力会社と情報共有によるクラウド事例

①大津鉄工株式会社 ☞会社概要:資本金6,600万円 建築部材の製造販売、本社 愛知県津島市 ☞クラウド化の目的:工事システムの業者連携(LLP)により新たなビジネスモ

デルの構築 ☞クラウド化の方法:プライベートクラウドにより受発注・見積・図面・施工管理

等ができる「D スルーランド」を構築 ☞クラウド化の成果:企業連合体による新ビジネスモデルが実現し、売上拡大

リーマンショック、公共事業予算削

減の影響が極めて大きく、業界全体が

売上の大幅減少、利益率の低下を余儀

なくされたが、同業社との協業によ

り耐震基礎工事「Dスルー工法」を

核とした企業連合体を組織、取引情

報や技術情報を共有・活用するクラ

ウドを構築することにより、従来の

建築工事の部材単位の受注から、基

礎工事(物件)ごとの受注を可能と

する新ビジネスモデルを構築し、大

手顧客の囲い込み、新規顧客の獲得に成功している。

②愛知運送株式会社 ☞会社概要:資本金2,000万円 運送業 本社愛知県高浜市 ☞クラウド化の目的:新しい物流サービスの立ち上げ ☞クラウド化の方法:パブリッククラウドを活用し、ITベンダーに頼らず、自社

でシステムを構築 ☞クラウド化の成果:パートナー企業と情報共有を実現し、パートナー含めた物流

の効率化を実現、同時に、通信コスト削減

Page 27: 中小企業のクラウドコンピューティング利活用促進 … › koho › chosa_houkoku › data › ...(1)背景と目的 地域産業を支える中小企業においては、グローバル化する経済の中で競争力強化、

- 27 -

物流受付センター業務を、

クライアントサーバー型シス

テムからクラウドに移行し、

パートナー企業との情報共有

化を実現し、従来の電話・F

AXでの業務を改善するとと

もに、コストの削減も実現し

た。システム構築は、ITベ

ンダーに頼らず、自社で短時

間にクラウドを構築した事例

である。また、スマートフォン、iPad を利用し出張先での問い合わせ対応も可能と

している。 ③株式会社タカイコーポレーション ☞会社概要:資本金1,000万円 金型用標準部品の製造 本社 岐阜県美濃市 ☞クラウド化の目的:社内・協力会社のリアルタイムな生産管理 ☞クラウド化の方法:クラウドにより購買・工程管理システムを構築 ☞クラウド化の成果:協力会社との連携強化で「納期遵守率100%」を実現

協力会社への加工依頼、発注

処理、協力会社からの納品検収、

実績入力を、クラウドシステム

にした結果、社内の間接業務の

短縮と、協力会社の工程の進捗

状況がリアルタイムに「見える

化」した。これにより、リード

タイムの短縮と納期遵守率10

0%を達成している。 (3)海外取引のクラウド事例 ①会宝産業株式会社 ☞会社概要:資本金5,700百万円 中古車部品の国内・海外販売 本社金沢市 ☞クラウド化の目的:世界で利用できる販売管理システムの構築で海外展開を推進 ☞クラウド化の方法:自社の製造・販売基幹業務システムを核に、情報系のクラウ

ドを活用したグローバルな顧客管理を自社で企画し、ITベンダーに構築を依頼 ☞クラウド化の成果:国内のシステムと同じように海外で利用し、世界で同じビジ

ネスを展開できることで販路を拡大

Page 28: 中小企業のクラウドコンピューティング利活用促進 … › koho › chosa_houkoku › data › ...(1)背景と目的 地域産業を支える中小企業においては、グローバル化する経済の中で競争力強化、

- 28 -

使用済み自動車を買取・解体し、

中古自動車部品として海外に販売

するため、プライベートクラウド

により世界中で利用できる中古自

動車部品の販売管理システム(K

RA)を構築した。さらに、営業

商談管理や情報共有にもクラウド

サービスを利用している。海外販

路を開拓し、現在では61ヶ国と

取引し、売上及び利益は着実に増

加させている。 ②株式会社タガミ・イーエクス ☞会社概要:資本金6,200万円 産業・建設・環境機械製造業 本社 石川県能

美市 ☞クラウド化の方法:ITベンダーと協力し、海外工場の生産管理を短期間に実現 ☞クラウド化の成果:クラウドにより中国工場の生産管理システムを短期間に導入、

併せてシステム導入の初期費用を削減 主力の産業機械事業にセル生

産方式を導入したことに伴い生

産管理システム及びwebED

Iを導入し、パートナー企業と

の情報の共有化とリードタイム

の短縮を実現。さらに、昨年、

中国工場にITベンダーが提供

する生産管理のクラウドシステ

ムを導入し、短期間でのシステ

ム導入と、初期費用の削減、早期の海外工場立ち上げを実現した。 海外進出をする中小企業にとって、海外の子会社のシステム化を工場設備と同じ

ように実現することは容易ではないが、それを、生産管理のクラウドを利用するこ

とで短期間で実現した。 (4)EDI を使ったクラウド型事例 ①有限会社加藤裸子製作所 ☞会社概要:資本金300万円 ねじ製造業 本社 名古屋市 ☞クラウド化の目的:受注業務の確実な業務遂行と社内の一連の業務の合理化、

Page 29: 中小企業のクラウドコンピューティング利活用促進 … › koho › chosa_houkoku › data › ...(1)背景と目的 地域産業を支える中小企業においては、グローバル化する経済の中で競争力強化、

- 29 -

☞クラウド化の方法:取引先が構築した業界特化型クラウドを利用 ☞クラウド化の成果:EDI受注から会計処理まで一貫したSaaSを利用した経営合理化

ネジ、ボルト類は

種類が多く、品質確

保も重要であり、得

意先からの受注業務

に確実に対応するた

め、業界特化型ED

I及び SaaS 型基幹

業務システムを導入

し、ムリなく、業務

の合理化を実現。小

規模企業(従業員6人)のクラウド活用事例。

②(こじま事業協同組合)真和工業株式会社 ☞会社概要:資本金4,800万円 自動車部品の製造販売 本社 愛知県豊田市 ☞クラウド化の目的:共通 EDI により受発注業務の効率化

業界全体の効率化を図るため業界標準としての普及促進 ☞クラウド化の方法:プライベートクラウドにより自動車部品共通EDI基盤構築 ☞クラウド化の成果:受発注業務の効率化、事業協同組合参加企業が連携して共通

EDIを活用、業界標準化に向けてベースができた

EDIは顧客ごとに

仕様や操作も異なり、

受注側では多画面・多

端末化と業務の非効率

が課題となっていた。

この課題解決のため、

小島プレス工業株式会

社の協力会社で組織す

るこじま事業協同組合

連合会が主体となり、

経済産業省の支援を得て、プライベートクラウド方式の自動車部品共通EDIシス

テムを構築。当該システムを仕入先と協力工場に導入し、業務の効率化が実現。ま

た、RFID を使った電子かんばんにより紙の使用量が大幅減少しコスト削減と環境

対策の効果も大きい。今後は、業界標準として広く利用されるよう普及活動を推進

している。

Page 30: 中小企業のクラウドコンピューティング利活用促進 … › koho › chosa_houkoku › data › ...(1)背景と目的 地域産業を支える中小企業においては、グローバル化する経済の中で競争力強化、

- 30 -

(5)基幹システムのクラウド事例 ①株式会社インディオ富山 ☞会社概要:資本金3,000万円 新車・中古車・輸入車の販売・整備業

本社 富山県富山市

☞クラウド化の目的:リアルな情報共有化の実現と、顧客満足度の向上 ☞クラウド化の方法:業界特化型クラウドにより、短時間にムリなくシステム導入 ☞クラウド化の成果:リアルタイムな情報共有化が実現し、お客様を待たせること

がなくなり顧客満足度が向上。同時に電話代が25%削減

クラウドによる販売・整備システ

ムに移行したことで、従来の夜間バ

ッチ処理に比べてリアルタイムな情

報共有が実現し、IT 担当者の業務も

軽減した。また、顧客管理、納車手

続管理システムも導入し、顧客満足

度の向上、生産性向上を実現した。 5.地域におけるクラウドの利活用促進に向けて(まとめ) (1)クラウドの活用に対する理解拡大が重要

数多くのクラウドサービスが次々に提案され、これに伴って情報システムのあり

方やデータ活用の方式が大きな変化を遂げる時期を迎えている。こうした潮流に対

して、「クラウドサービスがもたらす本質的な性質は何か?それは自社の仕事のやり

方をどう変えるのか?」を適切に捉え対応していかなくてはならない。このために

は、まずクラウドに関する研修会や研究会に積極的に参加しクラウドサービスを知

ること、使ってみて評価し、そして自社の業務に合ったサービスを取捨選択しなが

ら効果的に使いこなすことが重要である。 (2)データの活用によるクラウドの利点を最大化した導入

クラウドコンピューティングにおける最大のメリットは、大量のデータを短時間

に分析処理しデータから抽出される事象の変化を捉え、これを活用することである。

例えば、業務で発生する様々な事象をデータとして取得し、そこから「正常な状態」

や「異常な状態」を示すパターンを見つけ出すことにより的確な判断でマネジメン

トリスクを回避するとか、マーケットで日々刻々と変化する消費者の購買トレンド

やニーズの変化などから、近い将来起こるであろう購買行動を予測して商品戦略・

マーケット戦略に先手を打つなどである。 こうした大量のデータの処理や高度なデータマイニング技術、高度なデータ解析

に係るアプリケーションなどが、近い将来クラウドサービスとして安価に提供され

ると考えられ、勝ち残りのためにこうしたサービスの導入と活用が期待される。

Page 31: 中小企業のクラウドコンピューティング利活用促進 … › koho › chosa_houkoku › data › ...(1)背景と目的 地域産業を支える中小企業においては、グローバル化する経済の中で競争力強化、

- 31 -

(3)企業の壁を越えたSCM等を見据えたデータの活用 今回の調査で明らかになった特徴の一つに、企業間連携や業界団体での協業など

で、プライベートクラウドによる企業の壁を越えたデータ活用が新しいビジネスモ

デルを生み、既存顧客の囲い込みや新規顧客の獲得につながり大きな効果を上げて

いることである。 すべての事業は企業間を超えチェーン化されているので、企業間のデータ連携や

データ活用が有効であることは既に言われてきたことであるが、クラウドコンピュ

ーティングの登場によって、こうした企業間のデータ連携やデータ活用のシステム

が簡易に安価でしかも短期間に構築できるので、各企業において積極的に活用され

ることが期待される。 (4)安価なデータセンターの必要性

企業間連携や業界団体での共同利用などIT活用またはデータ活用が広く展開さ

れる場合、データセンターの活用が必須となるが、現在国内で利用できるデータセ

ンターの利用料は外資系クラウドベンダーの利用料と比較して割高となっており、

これが国内のクラウドサービス利用の足かせとなっている。 従って、できるだけ安い費用で使うことができる国内データセンターが必要であ

るため、国の施策を含めて早期実現に向けた取り組みが期待される。 (5)地域中小ITベンダーの取組に期待 ・早期の業態転換

クラウドコンピューティングの普及とオフショア開発の進展により、大手ベンダ

ーから中小ベンダーへの下請システム開発は大幅に減少することが推測されており、

こうした下請けシステム開発を主としていた地域の中小ITベンダーはクラウドサ

ービスへの対応や新事業の創出に向けた対応が必要である。 一方、現状のクラウドサービスは大手企業中心で提供されており、地域の中堅・

中小企業にとっては使いたいクラウドアプリケーションやサービスが不足している

状況にある。こうしたなか、地域のITベンダーには、地域企業から求められてい

るクラウド製品やクラウドサービス提供に取り組むビジネスモデルを早期に構築し、

新しいクラウドビジネスの推進をすることが期待されている。例えば、大手クラウ

ドベンダーの製品を中小企業向けに導入支援サービスを提供するとともに、その企

業の要求レベルを満足する連携システムの開発・提供を行うとか、中小企業のニー

ズに対応した独自クラウド製品を開発・提供するなど、こうした取り組みが促進さ

れることで地域企業向けのクラウドサービス供給力強化に繋がることが期待される。

・ベンダー間連携 クラウドサービスは、これまでの情報システムとは異なり、ソフトウェアを組み

合わせてユーザーに最適なソリューションを提供できるかどうかであり、そのため

には自社の顧客に対しても、連携先のベンダーが提供するアプリケーションを組み

Page 32: 中小企業のクラウドコンピューティング利活用促進 … › koho › chosa_houkoku › data › ...(1)背景と目的 地域産業を支える中小企業においては、グローバル化する経済の中で競争力強化、

- 32 -

合わせて提供できるような協業体制を構築することが必要である。また、クラウド

で提供するアプリケーションを開発する際に、こうしたベンダー連携の中で開発す

べき分野(不足しているアプリや業種)を見極めるためにもベンダー間の連携は有

効である。地域ITベンダーは、例えば、大手のベンダーや通信会社などが主催す

る研究会やセミナーなどに参加してベンダー相互の販売連携を行うとか、ITベン

ダー団体や組合などのクラウド研究会活動を通じて、ビジネス連携を促進すること

が必要である。

・提案力強化 ITビジネスにおいて、提案力はユーザー企業を獲得できるか否かを決める重要

な要素である。クラウドサービス提供においては、IT利活用のプロセスが変わる

ことで、いままで以上に、ユーザー企業の業務プロセスや経営課題を理解した提案

が重要である。また、クラウドサービスでは、開発に要する期間が短縮されるため、

「相手を知る」ことにスピード感を持って対応することが求められる。 また、これまで主に下請システム開発をしていたITベンダー企業では、直接ユ

ーザー企業への営業・提案する人材の育成も必要である。こうした営業部門を他社

との連携や、ITコーディネータと連携することで提案力を強化することも有効で

ある。

・自社のサービスの見える化 クラウドサービスは数多く提供されているものの、地域の中小企業にとっては、

地域のITベンダー企業がどういったクラウドサービスを提供しているのかという

情報が不足している。今回の調査では、ホームページに掲載しているITベンダー

企業が多かったが、アプリケーションの紹介だけでなく導入事例等を掲載すること

で自社サービスの特徴等を分かりやすく情報提供することが必要である。また、デ

ータセンターや運用サービスなど、クラウド利用の際に不可欠な情報を事前に提供

する必要があり、業界団体等のガイドラインがある場合は、ガイドラインに沿った

情報提供が望ましい。

・ITベンダーのITコーディネータ化 地域の中小企業は、更なるIT利活用による合理化や経営の高度化に取り組んで

おり、その企業のIT導入を支援する地域中小ITベンダーは、こうしたニーズに

対応したサービス提供が重要である。特に、クラウドの導入においては、新たなIT

活用の効果も期待できるため、中小企業と継続的な取引があるITベンダー企業で

は、これまでの取引で得たユーザーの経営課題等の知見を活かしてコーディネータ

的な役割を担い、自社製品に限らず最適ソリューションを提案することで、企業の

より高度なIT利活用に繋がると期待される。今後、クラウドの進展に伴い、IT

ベンダーのITコーディネータ的な役割が増すものと見られる。

Page 33: 中小企業のクラウドコンピューティング利活用促進 … › koho › chosa_houkoku › data › ...(1)背景と目的 地域産業を支える中小企業においては、グローバル化する経済の中で競争力強化、

- 33 -

(6)中小企業と地域ITベンダーを取り持つITコーディネータの役割 地域の中小企業は、経営の高度化は図りたいが、IT導入に関して十分な情報を

持っていないケースが多く、これまでも企業のIT利活用を支援するITコーディ

ネータは重要な役割を果たしてきた。クラウド導入については、さまざまなサービ

スが提供され選択肢が広がっている中、また成功事例の情報が少ない中、中小企業

のIT利活用を支援するITコーディネータの果たす役割は拡大するとみられる。

ITコーディネータは、これまでの支援スキームだけでなく、クラウドサービスに

関する最新情報の把握や、効果的な活用事例などの情報収集とともに、ITベンダ

ーのサービス内容など幅広い知識が必要となる。 地域の中小企業では、こうしたIT経営の支援を受ける際には、公的機関が実施

する専門家派遣を活用したいとの希望も多いことから、ITコーディネータは、地

域の支援機関等と連携してIT経営を促進していくことが重要なポイントである。

Page 34: 中小企業のクラウドコンピューティング利活用促進 … › koho › chosa_houkoku › data › ...(1)背景と目的 地域産業を支える中小企業においては、グローバル化する経済の中で競争力強化、

- 34 -

注釈1 3.(1)ⅱのITベンダー業種

業種分類

業 種 業種の説明

1 情報処理サービス業

電子計算機などを用いて委託された計算サービス(顧

客が自ら操作する場合を含む),データエントリーサー

ビスなどを行う事業所をいう。

○受託計算サービス業;計算センター;タイムシェアリ

ングサービス業;マシンタイムサービス業;データエン

トリー業;パンチサービス業

2 受託開発ソフトウェア業

顧客の委託により,電子計算機のプログラムの作成及

びその作成に関して,調査,分析,助言などを行う事

業所をいう。

3 パッケージソフトウェア業

電子計算機のパッケージプログラムの作成及びその

作成に関して,調査,分析,助言などを行う事業所を

いう。

4 情報提供サービス業

各種のデータを収集,加工,蓄積し,情報として提供

する事業所をいう。

○データベースサービス業(不動産情報,交通運輸

情報,気象情報,科学技術情報などの提供サービス

業)

5 インターネット付属サービス業

インターネットを通じて,通信及び情報サービスに関

する事業を行う事業所であって,他に分類されない事

業所が分類される。

Page 35: 中小企業のクラウドコンピューティング利活用促進 … › koho › chosa_houkoku › data › ...(1)背景と目的 地域産業を支える中小企業においては、グローバル化する経済の中で競争力強化、

- 35 -

「クラウド利活用調査委員会」 委員名簿

職 名 氏 名 所属組織

委員長 岸田 賢次 名古屋学院大学大学院・商学部 教授

委 員 兼子 邦彦 こじま事業協同組合連合会 情報化促進プロジェクト室長

委 員 高寺 政守 富山県情報産業協会・専務理事 (北電情報システムサービス株式会社 調査役)

委 員 越田 幸一 財団法人石川県産業創出支援機構 産業振興部 ITアドバイザー

委 員 諏訪 達哉 中部アイティ協同組合 理事 (有限会社テックブレインズ 取締役社長)

委 員 日沖 純一 財団法人あいち産業振興機構 情報・国際ビジネス部情報推進グループ専門員

事務局 株式会社名古屋ソフトウェアセンター

調査員 ITコーディネータ 伊藤 実 (伊藤経営事務所 代表) ITコーディネータ 宿澤 直正 (宿澤経営情報事務所 代表) ITコーディネータ 水口 和美 (株式会社ARU 代表取締役) ITコーディネータ 山田 和久 (山田ITコンサルティングオフィス 代表)