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SIBP280[DVD]
チャップリン自身が作曲した。イル・ディーヴォ公演に
先駆けて2018年2月に実現したソロ公演でセブが披
露してくれたが、同じ年に二つのヴァージョンでこの名
曲を満喫出来たのは大きな収穫だった。今から思え
ば、あのセブの披露は『 タイムレス』と続くこのツ
アーのためのシークレット・プレビューだったのかも。
■17.キングダム・カム [セバスチャン・ソロ]
「スマイル」からこの曲に続くあたりは、セブのソロ
公演を思い出させてくれて、これまたいい感じの流れ
だ。セブことセバスチャンのソロは自身のアルバム
『ウィ・カム・ヒア・トゥ・ラヴ』(2017年)のリードソングと
なったおなじみのスピリチュアルなブルース・ロック
曲。アルバムを出したばかりのソロ公演時に比べて、
何度も聴きなおしているからか、今回のツアーでは
オーディエンスにも浸透していたようで、手拍子もピッ
タリだ。
■18.この素晴らしき世界(ケ・ボニート・エス・ビビール)
イル・ディーヴォが満を持して『タイムレス』でレコー
ディングした名曲。スーザン・ボイルら、様々なアーティ
ストが取り上げている。もちろん、オリジナルはルイ・
アームストロングが1967年に発表して以来スタン
ダードになっており、ルイのレコーディングをテーマ曲
に使用した名作『グッドモーニング、ベトナム』(1987
年)では、DJに扮したロビン・ウィリアムズにより“偉大
なサッチモ(ルイの愛称)”の曲として紹介され、悲惨な
戦争のシーンの鎮魂の意味を込めた映画史上に記録
されるべきメッセージを伝えた。そのルイの曲をイル・
ディーヴォはスペイン語で歌い、時代や国籍を越えた
この名曲の普遍的なテーマを伝えてくれる。
■19.故ふるさと
郷
2011年の東日本大震災の被害者に鎮魂を込めて
日本語によって歌われた。2012年のジャパン・ツアー
以来、我が国の公演では欠かせない曲で、4人の美し
く清楚な歌声は真摯な気持ちにさせてくれる。常に鎮
魂の思いが込めて歌われているが、今回は#18「この
素晴らしき世界」に続けて歌われたことで、一つの人
生讃歌的な意味合いも生まれていて、ますますこの曲
は日本人に欠かせなくなった。
■20.追憶(トワ・エ・モワ)
名曲・名唱揃いの『タイムレス』の中でもことのほか
感動的なこの曲は、ファンの間でも非常に評価が高
く、イル・ディーヴォの4人やスタッフもその評価を意
識して、アルバムでは中盤にフィーチュアしていたこの
曲をライヴ・パフォーマンスのクライマックスに持って
きた。イル・ディーヴォとは縁が深いバーブラ・ストライ
サンドが主演映画『追憶』(1973年)のために歌いアカ
デミー賞主題歌賞に輝いた名曲がオリジナル。オーケス
トラ、ライティング、シンプルな舞台美術も含めて、今
回のライヴの中でもパーフェクトの一曲。
■21.オールウェイズ・ラヴ・ユー(シエンプレ・テ・アマーレ)
#20「追憶」と表裏一体的なインパクトを持つこ
の名曲は、世紀の歌姫ホイットニー・ヒューストンが初
主演した映画『ボディガード』(1992年)で切なく歌っ
て全米No.1など世界的な大ヒットになった名曲だが、
この曲自体もルーツは古くカントリーの女王ドリー・
パートンによる1974年のヒット曲がオリジナル。イ
ル・ディーヴォのヴァージョンは『グレイテスト・ヒッツ』
に初収録された。感傷的にさせる曲であり、実際セブ
のアカペラで胸がジーンとしていたら、デイヴィッドが
あたたかなヴォーカルを加えながらお茶目に絡んでき
て、パフォーマンスは面白い効果を生んでいた。
■22.衣装をつけろ[デイヴィッド・ソロ]
「やっと歌う声になったと思う」と謙遜するコメントを
出しているデイヴィッドだが、とんでもない、彼の
ヴォーカルはすごすぎる。ソロ・アルバムを出すべき
だ。前ツアーにおける「誰も寝てはならぬ」もすごかっ
たが、今回はエンリコ・カルーソーの歴史的なレコー
ディングを筆頭に数多くの名録音があるルッジェーロ・
レオンカヴァッロ作曲のオペラ『道化師』の中で、道化
一座のカニオが歌うあまりにも有名なアリアを披露し
た。あのクイーンの名曲「It's a Hard Life」では、フ
レディが歌う冒頭のメロディにも引用されている。
■23.愛なき人生
デイヴィッドのソロを受けて最後の締め括りのパー
トからアンコールは、クライマックスにふさわしく、イ
ル・ディーヴォの全キャリアにおいて欠かせない4曲を
フィーチュア。トップを飾るこの曲は、アルバム『オール
ウェイズ』(2006年)で初紹介されて以来、ライヴ・パ
フォーマンスに欠かせないメランコリックなラテン・
ポップス。ラテン系のカルロス・ゴメスにスウェーデン
のヒットメイカー、デヴィッド・クルーガーとパー・マグヌ
ソンが組んだオリジナル曲ながら、既にラテン・クラ
シックの風格を感じさせる名曲で、ダンサーをフィー
チュアした楽しいパフォーマンスになっている。
■24.サムホエア
ミュージカルの金字塔『ウエスト・サイド物語』(1957
年ブロードウェイ初演、1961年映画化)から生まれた
名曲の一つで、日本ではパナソニック「VIERA」のCM
やテレビ神奈川『洋楽天国 TUESDAY』のテーマ曲
に使われたこともあり絶大な人気を誇っている。『オー
ルウェイズ』に初収録された他、バーブラ・ストライサン
ドとの共演ヴァージョンもある。
■25.アンブレイク・マイ・ハート(レグレサ・ア・ミ)
まさに、イル・ディーヴォの原点的名曲。デビュー・ア
ルバム『イル・ディーヴォ』(2004年)にフィーチュアさ
れた名曲で、「MAMA」に続いてシングル化もされた。
オリジナルはイル・ディーヴォとは縁が深いR&Bディー
ヴァ、トニ・ブラクストンによる1996年の大ヒット曲で、
イル・ディーヴォのマネージメントをしていたサイモン・
コーウェルが直々に作者ダイアン・ウォーレンから権利
を購入してスペイン語でレコーディングされた。
■26.マイ・ウェイ
これも『イル・ディーヴォ』より。クロード・フランソワ
1967年のフレンチ・ポップスがルーツで、フランク・シ
ナトラやエルヴィス・プレスリーを筆頭に数々の名録音
が生まれている曲だ。ポップスの名曲をクラシック・テ
イストで表現するコンセプトで登場したイル・ディー
ヴォの立ち位置を示すには分かりやすい選曲。極上の
ディナー=イル・ディーヴォのライヴの締め括りにふさ
わしい。
2019年4月11日 村岡裕司/YUJI MURAOKA
本作ではDVDのチャプター順に楽曲解説を掲載しております。