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MOST ワークブック vol.1 コースポートフォリオ 特定のコースの「デザイン」「実施」「学生の学び」を文書化し、振り返る

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MOST ワークブック vol.1

コースポートフォリオ

特定のコースの「デザイン」「実施」「学生の学び」を文書化し、振り返る

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はじめに このワークブックは、個人の大学教員が、担当している「コース(通常は半期 15回の授業で構成される)」がうまくいっているかを確認したり、コースを改善するために、単独でコースポートフォリオを作成することができるような構成になっています。 コースポートフォリオは、単一のコースに対する「デザイン」「実施」「学生の学びの分析」「振り返り」について文書化し、授業期間を含む約半年をかけて作成します。コースポートフォリオは、オンライン FD支援システム「MOST」の KEEP Toolkitというツールを使って、1枚のウェブページ(「スナップショット」と呼びます)として作成します。作成を支援するためのテンプレート(ひな形)や関連リソースは、MOST 上で入手できます。完成したコースポートフォリオは、大学授業実践の貴重なリソースとして大学教育の関係者間で共有するため、MOST上で公表することを推奨しています。 コースポートフォリオを作成する過程において、学問分野の近い教員や学部・学科内の教員など、同僚の協力を得ることができれば、より生産的な活動に結びつけることができます。

京都大学高等教育研究開発推進センター

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目 次 1.コースポートフォリオについて ・・・・・・・・・ 1 1.1 コースポートフォリオとは ・・・・・・・・・ 1 1.2 MOST について ・・・・・・・・・ 1 2.コースポートフォリオ作成にあたって ・・・・・・・・・ 4 2.1 作成の流れ ・・・・・・・・・ 4 2.2 KEEP Toolkit へのアクセス方法 ・・・・・・・・・ 7 2.3 コースポートフォリオ・テンプレートの入手方法 ・・・・・・・・・ 9 3.コースポートフォリオ作成に取りかかる前に ・・・・・・・・・ 13 3.1 コースポートフォリオを作成する目的 ・・・・・・・・・ 13 3.2 コースを選定する ・・・・・・・・・ 13 3.3 スケジュールを確認する ・・・・・・・・・ 13 3.4 同僚・協力者を募る ・・・・・・・・・ 14 4.コースポートフォリオの作成:1(授業期間が始まるまでに)・・・・・・・・・ 16 4.1 授業期間開始までにおこなうこと ・・・・・・・・・ 16 4.2 「コースの基本情報」スナップショットの作成 ・・・・・・・・・ 18 4.3 「学習目標」スナップショットの作成 ・・・・・・・・・ 21 4.4 「教授法・教材・学習活動」スナップショットの作成 ・・・・・・・・・ 22 4.5 「実際の授業」スナップショットの作成(1) ・・・・・・・・・ 23 4.6 「学生の学び」スナップショットの作成(1) ・・・・・・・・・ 25 5.コースポートフォリオの作成:2(授業期間中におこなうこと)・・・・・・ 27 5.1 「実際の授業」スナップショットの作成(2) ・・・・・・・・・ 27 5.2 「学生の学び」スナップショットの作成(2) ・・・・・・・・・ 28 5.3 「授業分析」スナップショットの作成(オプション) ・・・・・・・・・ 31

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6.コースポートフォリオの作成:3(授業期間終了後におこなうこと)・・・ 33 6.1 「タイトル」ボックス ・・・・・・・・・ 33 6.2 「コースの基本情報」ボックス ・・・・・・・・・ 35 6.3 「学習目標」ボックス・「教授法・教材・学習活動」ボックス ・・・・・・・・・ 36 6.4 「実際の授業」ボックス ・・・・・・・・・ 36 6.5 「学生の学び」ボックス ・・・・・・・・・ 36 6.6 「コースに対する振り返り」ボックス ・・・・・・・・・ 36 6.7 「同僚のコメント」ボックス ・・・・・・・・・ 36 6.8 「参考文献・資料」ボックス ・・・・・・・・・ 37 6.9 画像の追加について ・・・・・・・・・ 37 6.10 ボックスの追加・削除および移動について ・・・・・・・・・ 37 7.スナップショットの提出と公開について ・・・・・・・・・ 39 7.1 スナップショットのタイトルについて ・・・・・・・・・ 39

7.2 クリエイティブコモンズのライセンスを付与する ・・・・・・・・・ 39 7.3 タグを設定する(オプション) ・・・・・・・・・ 42 7.4 スナップショットのURLを事務局に提出する ・・・・・・・・・ 43 7.5 スナップショットの複製を事務局に送信する(オプション) ・・・・・・・・・ 44 7.6 スナップショットの公開について ・・・・・・・・・ 45 8.コースポートフォリオ作成カレンダー ・・・・・・・・・ 46 付録 ・・・・・・・・・ 47 A.MOSTへの参加登録について ・・・・・・・・・ 47 B.MOST講習会 ・・・・・・・・・ 47 C.学生に対する承諾書 ・・・・・・・・・ 48 D.レビュアー向けガイドライン ・・・・・・・・・ 49 E.用語集 ・・・・・・・・・ 57 参考文献 ・・・・・・・・・ 59

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1.コースポートフォリオについて

1.1 コースポートフォリオとは コースポートフォリオとは、教員が担当する単一の「コース(通常は 15回の授業で構成される)」について、その「デザイン」「実施」「学生の学び」「振り返り」などを構造化された形式でまとめた文書です注 1。対象とするコースの開始前に、計画したコースデザインや授業方法について検討し、授業期間中にその実施状況や学生の学習状況について吟味します。授業期間終了後に自身の振り返りや考察を加え、半期をかけて1枚の文書(=コースポートフォリオ)としてまとめます。 コースポートフォリオを作成する過程において、学問分野の近い教員や学部・学科内の教員など、同僚の協力を得ることができれば、より生産的な活動に結びつけることができます。同僚からの支援については後述します。 コースポートフォリオを作成する目的は、個々の教員によって異なりますが、ここでは自身の担当するコースについて点検し、授業改善に役立てることを前提として説明しています。その他の目的としては、学科や学部におけるカリキュラム改善のための材料として作成するケースなどがあります。 注1:類似のツールとして「ティーチングポートフォリオ」がありますが、これはある教員が担う教育活動全般を対象

とした文書です。コースポートフォリオは、単一の「コース」に着目します。

1.2 MOSTについて 米国では、20ページまたはそれ以上の分量で作成するコースポートフォリオの取り組みもありますが、ここではウェブ上に簡潔な文書としてまとめるプロセスを紹介します。ポイントを押さえて簡潔に記述することで、他の教員があなたの取り組みを短時間で理解できるようになります。 コースポートフォリオ作成にあたっては、オンライン FD 支援システム「MOST」を利用すると便利です(図1)。MOST内で必要なツールや関連リソースが提供されています。コ

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ースポートフォリオは、MOST 内の「KEEP Toolkit1」というツールを利用し、1枚のウェブページ(「スナップショット」と呼ぶ)として作成します。作成にあたっては、あらかじめMOSTのアカウントを取得する必要があります 2。 注1:KEEP Toolkit はカーネギー財団知識メディア研究所が開発したマルチメディアポートフォリオ作成ツールです。

コースポートフォリオ以外にも、教育プログラムの成果共有などを目的としたコンテンツを作成、公開、共有する

ことができます。

注2:MOST は招待制のサイトです。登録条件は、大学教職員、将来大学教員をめざす大学院生ですが、既存のMOST

ユーザーからの招待を受ける必要があります。

図1 MOST のトップページ(https://most-keep.jp)

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コラム:米国におけるコースポートフォリオの発展 コースポートフォリオは、アメリカ高等教育学会(AAHE)の「Teaching Initiative」に設置された「Peer Review of Teaching(教育活動のピアレビュー)」プロジェクトや、それを引き継いだカーネギー教育振興財団のCASTL プログラムにおいて発展してきた。当時、Teaching Initiative のディレクターであったHutchings(1995)は、コースポートフォリオの3つの要素を「コースデザインの説明」「そのデザインの実践の記述」「これら2つの要素の結果として生じる学生の学習の分析」としている。コースポートフォリオのプロトタイプは、AAHE の活動の中で Cerbin(1994)により作成された。また、上述の諸プロジェクトに関わり、ネブラスカ大学リンカーン校においてコースポートフォリオのプロジェクトを長年推進してきた Bernstein ら(2006)のモデルでは、Hutchings の三要素を発展させ、「コースの内容と目標についての反省的な議論」「学習の目標を達成するための計画の記述」「これらの目標を学生が達成しているかについてのエビデンスや評価」に加え、「三要素間の関連についての振り返りの記述」の重要性を指摘している。ネブラスカ大学リンカーン校の教員によるコースポートフォリオの実践や成果物の事例は、同大学の Peer Review of Teaching Project のウェブサイトに公開されている。 URL:http://www.courseportfolio.org/

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2.コースポートフォリオ作成にあたって

2.1 作成の流れ コースポートフォリオは、対象となるコースの授業期間を含む、約半年をかけて段階的に作成します。授業期間終了後に1枚の簡潔なスナップショットとしてコースポートフォリオをまとめるまでに、いくつかのステップを踏みます。 コースポートフォリオ・テンプレートの構成 コースポートフォリオのテンプレートは、図2に示す7枚のスナップショットで構成されています。中心となる「コースポートフォリオ(メインスナップショット)」は授業期間終了後に作成しますが、これを作成する準備のために、授業開始前、授業期間中にその他6枚のスナップショットを作成します(図3)。「コースの基本情報」「学習目標」「教授法・教材・学習活動」の3枚のスナップショットと、「実際の授業」「学生の学び」の2枚のスナップショットの一部は、コースポートフォリオ内の各構成要素(「ボックス」と呼ぶ)の詳細についてあらかじめ記述するものです。これら4枚のスナップショットは、コースポートフォリオ内の対応するボックスからリンクが貼られており、スナップショットの読者が興味・関心に応じてアクセスできるようになっています。 「コースポートフォリオ(メインスナップショット)」 → 授業期間終了後にまとめる (1) 「コースの基本情報」 (2) 「学習目標」 → (1)~(5)は、コースポートフォリオ作成の (3) 「教授法・教材・学習活動」 ため、授業開始前、授業期間中に作成する (4) 「実際の授業」 (5) 「学生の学び」 「授業分析」 → コース内の1回の授業を検討する 「実際の授業」スナップショットは、各回の授業計画とそれに対する実施内容を比較するために、授業開始前に計画を記述し、各回の授業後に実施内容を記述するものです。「学生の学び」スナップショットは、第1回目の授業の開始までに、授業期間中に収集する学生のデータに関する計画を立て、その他は授業期間中に作成します。

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「授業分析」スナップショットは、コースの中の代表的な1回の授業について、その時間的構造を記述し、振り返りをおこなうためのものです。単に1コマの授業を文書化するだけでなく、実際におこなわれている授業を同僚に直接参観してもらうことで、授業やコースについて同僚によりよく理解してもらうこともでき、さらにコースポートフォリオに対する有益な助言やコメントに結びつきます。これら2つのスナップショットは、コースポートフォリオ・テンプレート上部のボタンからもアクセスできます。

図2 コースポートフォリオ・テンプレートに含まれる7枚のスナップショット

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図3 コースポートフォリオ作成の流れ(授業開始前~授業期間終了後) 授業期間開始までに まず、作成済みのシラバスを準備し、「コースポートフォリオ」スナップショットの「コースの基本情報」ボックスからリンクを貼ります。第1回目の授業が始まるまでに、このシラバスをもとに、コースデザインや授業方法などについて考える機会となります。 次に、「コースの基本情報」「学習目標」「教授法・教材・学習活動」のスナップショットを作成します。これらは、対象となるコースの「何を」「誰に」「どうやって」についての記述となります。また、「実際の授業」スナップショットに予定する各回の授業内容をあらかじめ記述し、「学生の学び」スナップショットの最初のボックスの記事を作成します。 授業期間中 授業期間中、各回の授業後に、授業計画と実際に実施した授業内容の比較ができるよう、「実際の授業」スナップショットの欄を埋めていきます。 また、意図した学習目標を学生が達成しているかを確認できるような学習活動(例:小テスト、レポート、試験、リフレクションシートなど)についての事例を収集しておきます。「学生の学習」スナップショットを作成します。 さらに、コースの代表的な1回の授業について、「授業分析」スナップショットを作成することもできます。「授業分析」スナップショットでは、90 分の教授学習活動の時間構造

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を客観的に記述し、それを教員が振り返ります。コースポートフォリオに対する同僚からのコメントをもらう場合、実際におこなわれている授業を参観してもらうことで、より生産的な意見や助言が得られることにもつながります。「授業分析」スナップショットの作成については別のワークブック(vol. 2)を参照して下さい。 授業期間終了後 これまでに作成したスナップショットや授業期間中に収集したデータをもとに、「コースポートフォリオ(メインスナップショット)」の各ボックスを簡潔に記述し、コースポートフォリオとしてまとめます。完成版はMOSTのサイト上で公開されます。

2.2 KEEP Toolkit へのアクセス方法 コースポートフォリオの作成は、MOST内の KEEP Toolkit で行います。以下、KEEP Toolkit

へのアクセス方法について説明します。説明が不要な方は読み飛ばして下さい。 MOST 内で KEEP Toolkitを利用する場合 MOST へのログイン

手順① MOSTのトップページにアクセスします URL:https://most-keep.jp/ 手順② ユーザーID とパスワードを入力し、ログインボタンをクリックします

手順③ マイワークスペースタブのツールから、KEEP Toolkit を選択します

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※コースポートフォリオの作成では、KEEP Toolkit 以外のツールは使用しません

KEEP Toolkitを単体で利用する場合 または KEEP Toolkit に直接アクセスし、単体で作業をおこなうこともできます。画面を大きく使えるので作業がし易くなります。

手順① MOSTのトップページ上にある KEEP Toolkit のロゴをクリックするか、以下のURLに直接アクセスします

URL:https://most-keep.jp/keep25/

手順② ユーザー名(メールアドレス)とパスワードを入力し、Log in ボタンをクリ

ックします ※KEEP Toolkit にアクセスする際のユーザー名は、MOST 登録時のメールアドレスとなります

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2.3 コースポートフォリオ・テンプレートの入手方法

MOSTにログイン後、KEEP Toolkit の「新規作成」から、「コースポートフォリオ」テンプレート

を入手します。入手したテンプレートは、「マイダッシュボード」上に表示されます(手順1~

5)。

手順1:MOSTにログインし、KEEP Toolkit を選択する

手順2:「新規作成」アイコンをクリックする

(手順1・2)

手順3:表示されたテンプレートギャラリーで、「MOSTテンプレート」→「コースポートフォ

リオ」を選択

手順4:「テンプレートを使う」を選択

(手順3・4)

手順5:「名前を付けて保存」欄に、取り組みの名称を入力し、「登録」をクリック※

※入力した名称が、スナップショットのタイトルバーに表示されます

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(手順5)

これでコースポートフォリオのテンプレートが、あなたのマイダッシュボード上に保存されました。 図4のように、マイダッシュボード上には、「コースポートフォリオ・テンプレート」(メイン・スナップショット)のほか、これ以外のスナップショットは「コースポートフォリオ」フォルダ内に保存されます。

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(a) 「コースポートフォリオ・テンプレート」(メイン・スナップショット)と

「コースポートフォリオ」フォルダ

(b) 「コースポートフォリオ」フォルダ内のスナップショット群

図4 マイダッシュボード上でのコースポートフォリオ・テンプレートの表示 下側に並んだ7枚のスナップショットを編集する

コースポートフォリオのテンプレートは、7枚のスナップショットで構成されています(図4)。中心となるのは、最終的に作成する「コースポートフォリオ(メイン・スナップショット)」ですが、コースポートフォリオを作成させるプロセスで、その他6枚のスナップショットを作成します。 7枚のスナップショットのうち、「コースポートフォリオ」「実際の授業」「授業分析」の3枚のスナップショットは、KEEP Toolkit の「スティッチグループ」機能で1つのまとまりになっており、ページ上部のナビゲーション・ボタンを使って移動することができます(図

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5)。7枚のスナップショットのそれぞれは、個別に編集する必要があります。

図5 コースポートフォリオ・テンプレート上のナビゲーション・ボタン

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3.コースポートフォリオ作成に取りかかる前に プロジェクト開始にあたって、「コースポートフォリオを作成する目的」「コースの選定」「スケジュールの確認」「同僚・協力者への依頼」について考えます。

3.1 コースポートフォリオを作成する目的 コースポートフォリオのスナップショットを作成するプロセスでは、コースのデザイン、その実施状況、学生の学習についてなど、コースの全体像を文書化し、最後に振り返りをおこないます。コースポートフォリオを作成するにあたって、特にあなたが問題としている教育上の課題があれば、それに焦点をあてても構いません。例えば、以下のような目的が考えられます。

例:「コースデザインを見直したい」「新しい試みの効果を調査したい」「直面している問題を解決したい」「特定の教授方法や教材について検討したい」「意図したように学生が学んでいるか確認したい」「教育活動を文書化したい」「自身のコースについて同僚から意見が欲しい」「他のコースとのつながりを明らかにしたい」など

3.2 コースを選定する コースポートフォリオ作成の対象とするコースを1つ選択します。初めて担当するコースでも、これまで何度も教えた経験のあるコースでも構いません。

3.3 スケジュールを確認する コースポートフォリオは、典型的には、選定したコース開始の約1ヶ月前から準備を開始し、授業期間を経て、コース終了後にコースポートフォリオとしてまとめます。第一回目の授業までに、MOSTや KEEP Toolkit の使用方法の確認や、いくつかのスナップショットの作成をおこないますので、おおまかなスケジュールを事前に確認しておいて下さい注1。

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注1:コースポートフォリオ作成の計画から完成までのカレンダーを8章に記載していますので、着手するまでに一度

確認して下さい。

3.4 同僚・協力者を募る 完成したコースポートフォリオを同僚に読んでもらい、コメントや助言の抜粋をコースポートフォリオに記述することで、その質を高めることができます。コースポートフォリオのテンプレートには、「同僚からのコメント」のボックスを設けており、このような「教育活動のピアレビュー(Peer Review of Teaching)」と呼ばれる取り組みを推奨しています。 できれば、コースポートフォリオに対して有益なコメントを貰えそうな同僚を事前に見つけ、依頼しておくことが望ましいでしょう。例えば、学科や学部内の学問分野が近い教員、同種のコースを担当している教員、同じ学会に属する学外の教員などに依頼することが考えられます。また、数名で同時期にコースポートフォリオの作成に取り組めば、相互にコメントを付け合うといったことも可能になります。 レビュアーに依頼する際のガイドラインを付録Dに示していますので、適宜ご利用下さい。 参考:このような同僚は、「授業分析」スナップショットを作成する際に、実際の授業への参観を依頼し、コメントや助

言を求めることもできます。

コメントをもらうにあたって、注目して欲しい点、特にコメントが欲しい点についてあらかじめ同僚に説明をしておくとよいでしょう。 また、コースポートフォリオに掲載する授業中の画像や映像の撮影や、アンケート実施などを計画している場合、それを手伝ってもらえる協力者(T A、学生アルバイト、事務員など)がいれば、事前に依頼しておきます。 参考:画像は、教員の顔写真や受講生の集合写真ではなく、このコースの代表的な学習活動をおこなっている様子(例:

グループワーク、講義、ICT 活用など)を撮影したものの方が、授業の雰囲気を読者によく伝えることができます。

撮影した画像をスナップショットに掲載する場合、撮影時に受講者に了解を求めておいて

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下さい。承諾書のひな形(付録C参照)は、MOST(「MOST活用プログラム」→「コースポートフォリオ」)から入手できます。 参考:学生には、「大学教育改善のための活動であること」「コースポートフォリオに掲載すること」「MOST というウ

ェブサイトで公開されること」といった内容を説明して下さい。

同僚や協力者を確保できない場合、MOST担当者にご相談下さい。

MOST 事務局連絡先:[email protected]

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4.コースポートフォリオの作成:1(授業期間が始まるまでに) コースポートフォリオを作成するプロセスとその内容について、以下の3つの期間に分けて説明していきます。 ・ 授業期間開始までにおこなうこと ・ 授業期間中におこなうこと ・ 授業期間終了後におこなうこと この章では「授業期間開始までにおこなうこと」を説明します。

4.1 授業期間開始までにおこなうこと ここでは、「コースの基本情報」「学習目標」「教授法・教材・学習活動」および「実際の授業」「学生の学習」の5種類のスナップショットを使用します。 まず、「コースの基本情報」「学習目標」「教授法・教材・学習活動」の3つのスナップショットを使って、自身のコースの目標やデザインについて記述します(図6)。この3つのスナップショットは、最終的に作成する「コースポートフォリオ」上にある、それぞれ同じ名前の「コースの基本情報」「学習目標」「教授法・教材・学習活動」ボックスを記述するための詳細を文書化します。

図6 「コースの基本情報」「学習目標」「教授法・教材・学習活動」スナップショット

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次に、「実際の授業」のスナップショット(図7)に各週の授業計画を記入しておきます。 ※ここで記述した内容は、授業期間中に適宜、追加や修正をおこなっても構いません。

図7 「実際の授業」スナップショット

次に、「学生の学び」スナップショット(図8)のうち、最初のボックスのみを作成します。授業期間中に収集する学生の学びに関わるデータについての計画を記述します。

図8 「学生の学び」スナップショット

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それぞれのスナップショットを作成する前に、スナップショット内の名称について説明します。スナップショットは、複数の「ボックス」と呼ばれる枠で構成されています(図9)。スナップショット上部のボックスは特に「タイトルボックス」と呼ばれ、スナップショットのタイトルや氏名・所属、概要などを記述するボックスで、他のボックス群とは区別されます。その他のボックス群は「見出し」と「本文」から成ります。KEEP Toolkit のテンプレートでは通常、各ボックス内に「記述ガイド」と呼ばれる本文を記述するためのヒントが含まれています。本文を記述していく際には、「記述ガイド」の文章は削除しても構いません。削除する箇所は、「[ ](括弧)」で括られていたり、グレーの文字色で表示されていることがあります。

図9 スナップショットのボックスの説明

以下、スナップショット別に説明します。

4.2 「コースの基本情報」スナップショットの作成 「コースの基本情報」スナップショット内には、コースポートフォリオの「コースの基本情報」ボックスを作成するための記述ガイド(ヒント)を示しています(図 10)。このスナップショットは、「コースの目的と内容」「学生について」「カリキュラムにおける位置づけ」について確認するためのものです。スナップショット上にある記述ガイド中のすべての質問について考える必要はありませんし、新たに質問を想定しても構いません。

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図 10 「コースの基本情報」スナップショット スナップショットの編集の手順は以下となります。 手順① マイダッシュボード上の「コースの基本情報」の「編集」ボタンをクリック

手順② 表示された編集画面で、各ボックス左上の「edit box」をクリック

手順③ 表示されたテキストエディタ上で記述ガイドの各質問に回答する形でボックスを埋めていく

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※ボックス内の記述ガイドの質問文は、本文記述後に削除しても構いません。使用しなかった質問文も削除して下さい。

手順④ 各ボックスの編集が終わったら、「登録」をクリック

「コースの基本情報」スナップショットの記述ガイド

コースの目的と内容

・ 何についてのコースですか?

・ このコースではどの範囲の内容を扱いますか?

・ このコースの目的は何ですか?

学生について

・ 学生の属性は?(学年、学部/大学院、専門/一般科目など)

・ 学生はどのような前提知識を持っていますか?

カリキュラムにおける位置づけについて

・ このコースはカリキュラムにどう位置づいていますか?

・ このコースは、別のコースの学習内容を前提としたり、別のコースの基礎となっていますか?

(参考:Bernstein et al. 2006) マイダッシュボードに戻るには、画面左上の「マイダッシュボード」タブをクリックします。 スナップショットを閲覧モードで確認するには、編集画面上で「スナップショットを見る」とクリックすると、スナップショットが別ウインドウで表示されます。

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スナップショットに新しい空白のボックスを追加することもできます。ボックスを追加する手順については、6.10 節を参照して下さい。

4.3 「学習目標」スナップショットの作成 「学習目標」スナップショット内には、コースポートフォリオの「学習目標」ボックスを作成するための記述ガイドを示しています(図 11)。このスナップショットは、「学生に学んで欲しい点」「各目標とコースデザインとの関連」について確認するためのものです。スナップショット上にある記述ガイド中のすべての質問について考える必要はありませんし、新たに質問を想定しても構いません。 スナップショットの編集の手順については前節を参照して下さい。編集するスナップショット名は「学習目標」です。

図 11 「学習目標」スナップショット

「学習目標」スナップショットの記述ガイド

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学生に学んで欲しい点

・ 学生にどのような知識を身につけて欲しいですか?

・ 学生に何ができるようになって欲しいですか?

・ 学生に何を理解して欲しいですか?

・ 学生にこのコースから何を保持して欲しいですか?

・ 学生にどのような視点や態度を身につけて欲しいですか?

各目標とコースデザインとの関連

・ 学生にとって、この分野について学ぶために重要なことは何ですか?

・ この目標は、コースデザインの中にどのように組み込まれていますか?

・ なぜこれらの目標を学生達が達成する必要があるのですか?

(参考:Bernstein et al. 2006)

4.4 「教授法・教材・学習活動」スナップショットの作成 「教授法・教材・学習活動」スナップショット内には、コースポートフォリオの「教授法・教材・学習活動」ボックスを作成するための記述ガイドを示しています(図 12)。このスナップショットは、「採用した教授法」「教材の選定」「授業外の学習活動」について確認するためのものです。スナップショット上にある記述ガイド中のすべての質問について考える必要はありませんし、新たに質問を想定しても構いません。

図 12 「教授法・教材・学習活動」スナップショット

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スナップショットの編集の手順については 4.2 節の説明を参照して下さい。編集するスナップショット名は「教授法・教材・学習活動」です。 「教授法・教材・学習活動」スナップショットの記述ガイド

教授法

・ 実際の授業の中で、それぞれの教授法をどのように使いますか?

・ なぜその教授法を採用しましたか?

・ それぞれの教授法は、学生が学習目標を達成するためにどのように役立ちますか?

・ これらの方法に対して、どのように学生の学習を測定しますか?

教材

・ なぜその教材は、学生が学習目標を達成するために有効なのですか?

・ 学生たちはその教材をどのように使うべきですか?

授業外の学習活動

・ なぜその方法を使って学習活動を構成したのですか?

・ 各活動において、学生たちに何を特に学んで欲しいですか?

・ 各活動において、学生たちに何を期待していますか?

・ これらの活動に対する学生のパフォーマンスをどのように評価しますか?

(参考:Bernstein et al. 2006)

4.5 「実際の授業」スナップショットの作成(1) 「実際の授業」スナップショットでは、コースポートフォリオの「実際の授業」ボックスを作成するために、コースデザインの段階で計画していた各回の授業内容と、実際におこなわれた内容を記入していきます(図 13)。 記述するのは、このスナップショットの「授業内容(予定)」欄です。右側の「授業内容(結果)」は、コースの進行中に記述していきますので、ここでは空欄にしておきます。 ※例えば、予定している学習内容、採用する教授法、学生の学習活動、小テストや提出課題などを記載します。

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スナップショットの編集の手順については 4.2 節の説明を参照して下さい。編集するスナップショット名は「実際の授業」です。

図 13 「実際の授業」スナップショット。ここでは左側の 「授業内容(予定)」欄を記入する

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4.6 「学生の学び」スナップショットの作成(1) 「学生の学び」スナップショット内には、コースポートフォリオの「学生の学び」ボックスを作成するための記述ガイドを示しています(図 14)。このスナップショットは、学生の学びについて吟味するために、大半は授業期間中に作成するものですが、授業期間開始前に1つのボックスのみ記述をおこないます。ここで記述するのは、最初の「学生の学びに関わるデータの収集」ボックスです。授業期間中に収集する、学生の学びに関わるデータ/エビデンス(例:小テスト、レポート、試験、リフレクションシートなど)の収集方法について、あらかじめ計画を立てておきます。スナップショット上にある記述ガイド中のすべての質問について考える必要はありませんし、新たに質問を想定しても構いません。

図 14 「教授法・教材・学習活動」スナップショット

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スナップショットの編集の手順については 4.2 節の説明を参照して下さい。編集するスナップショット名は「学生の学び」です。 「学生の学び」スナップショットの記述ガイド (最初のボックスのみ)

学生の学びに関わるデータの収集

・ 学生がある学習目標を達成することを示す、データ/エビデンスはありますか? (例:試験、

レポート、小テスト、リフレクションシート、授業中の学生の反応など)

・ このうち、どのようなデータ/エビデンスを収集し、分析しますか?

・ なぜこのデータ/エビデンスを分析しようと考えましたか?

・ 授業期間内のいつ、どのような方法で収集しますか?

・ 学生からの承諾はどのように得る予定ですか?

(参考:Bernstein et al. 2006)

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5.コースポートフォリオの作成:2(授業期間中におこなうこと) 次に、授業期間中におこなうことを説明します。3つのスナップショットを使用します(図15)。 まず、授業期間開始前にあらかじめ各週の授業計画を記入した「実際の授業」スナップショット(図 13)に、その実施状況について簡潔に記述していきます。これは毎回の授業直後に記入します。2点めは、「学生の学び」スナップショットを使って、このコースの代表的な学習活動を2~3つ取り上げ、それらについて検討をおこないます。最後に、コースの中の典型的な1回(90 分)の授業に焦点をあて、「授業分析」スナップショットを使って、教授・学習活動の時間的構造を記述し、振り返りをおこないます。

図 15 「実際の授業」「学生の学び」「授業分析」スナップショット 以下、スナップショット別に説明します。

5.1 「実際の授業」スナップショットの作成(2) 4.5 節で作成した「実際の授業」スナップショットの右側にある「授業内容(結果)」欄を、毎回の授業後に記述します。計画通り授業が実施された場合、「授業内容(計画)」欄の記述をコピーして貼り付けます。計画と結果が異なる場合、気になった点や修正が必要な点

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があれば、「メモ」欄に記載しておきます。

編集するスナップショット名は「実際の授業」です。

5.2 「学生の学び」スナップショットの作成(2) 「学生の学び」スナップショット内には、コースポートフォリオの「学生の学び」ボックスを作成するための記述ガイド(ヒント)を示しています(図 16)。授業期間開始までに作成した最初のボックス「学生の学びに関わるデータの収集」に記述された内容に従って、授業期間中に関連する学習活動(例:小テスト、レポート、試験、リフレクションシートなど)のデータ/エビデンスを収集し、それらを分析します。あなたが意図したように学生が学んでいるのかを示すため、代表的な学生の学習活動2~3点について検討して下さい。このスナップショットは、「学生の理解について」「学生のパフォーマンスの分布」「学生のパフォーマンスとカリキュラム」について確認するためのものです。スナップショット上にある記述ガイド中のすべての質問について考える必要はありませんし、新たに質問を想定しても構いません。 スナップショットの編集の手順については前節までの説明を参照して下さい。編集するスナップショット名は「学生の学び」です。

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図 16 「学生の学び」スナップショット

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「学生の学び」スナップショットの記述ガイド (最初のボックスは除く)

学生の理解について(個別の学習活動)

・ 選定したエビデンスから、学生の理解について示す代表的な箇所を簡潔に引用して下さい

・ どのような基準でこの理解を評価しましたか?

・ 提示したエビデンスによって示した学生の理解は、学生間で違いがありましたか?

・ この違いは、学習成果を評価する際に用いた基準と関連がありますか?

・ この基準は、学習目標とどのように関連していますか?

・ このコースにおける重要な概念をどのように学生が学ぶかについて、この分析から判明した

ことはありましたか?

・ そのような概念に対して学生が持つ誤解を特定できますか?

・ どのようにそのような間違いや誤解を特定し、対応しますか?

学生のパフォーマンスの分布(個別の活動)

・ 受講者全体における範囲や分布はどのようになっていますか?

・ 高、中、低の成績の範囲にどのように分布していますか?

・ この範囲や分布についてどのように説明しますか?

・ あなたはこの範囲と分布に満足していますか?

・ この範囲は、このコースにおける学生の学習に関する仮定に関連づいていますか?

・ ポートフォリオの読者に対してどのように学生の理解の分布を示しますか?

学生のパフォーマンスとカリキュラム(コース全体について)

・ 全体的に見て、学生の学習成果物はコースの目的や学習目標にどの程度合致していました

か?

・ 学生の成績の分布はあなたの予想に合致していましたか?

・ あなたが提示した学生のパフォーマンスに関するエビデンスは、学生にとって別のコースに

対する準備となっていることを示していますか?

・ あなたが提示した学生のパフォーマンスに関するエビデンスは、カリキュラムにおける目標

を達成したことを示していますか?

・ あなたの専門分野を学生たちが学んだことについて、成果物はあなたに何を示しますか?

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・ より高次の学習カテゴリーをより多くの学生が達成できるために、このコースにどのような

変更ができると考えられますか?

・ コースのデザインを検討するにあたり、このコースの特徴はありますか?

・ 次にこのコースを担当する際、教授法や授業の構成においてどのような変更を計画します

か?

・ どのようにその変更が学生の理解を改善すると考えていますか?

(参考:Bernstein et al. 2006)

5.3 「授業分析」スナップショットの作成(オプション) コースの中の典型的な1回(90分)の授業に焦点をあて、教授・学習活動の構造を記述します(図 17)。「授業分析」スナップショット内の左上「授業の概要」ボックスからリンクされているワークシートを作成した後、このスナップショットを簡潔にまとめます。可能であれば、同僚に授業を参観してもらい、そのコメントや助言を紹介します。このスナップショットは、特定の授業(90分)の前後数日で完成します。 「授業分析」スナップショットの作成については、専用のワークブックを別途準備していますので、そちらをご参考下さい。編集するスナップショット名は「授業分析・テンプレート」です。

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図 17 「授業分析」スナップショット

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6.コースポートフォリオの作成:3(授業期間終了後におこなうこと) 授業期間終了後、それまで作成したスナップショットの内容を使って、1枚のポートフォリオ(メイン・スナップショット)としてまとめる作業をおこないます(図 18)。コースポートフォリオ内の多くのボックスについては、すでに作成したスナップショットを簡潔に記述し直すだけです。最後に、コース全体の振り返りと、コースに対する考察・結論を記述して、コースポートフォリオが完成します。このスナップショットを作成するにあたっては、読者が短時間であなたのコースについて理解できるよう、できるかけ簡潔な形でまとめて下さい。より長い説明が必要な場合は、別途スナップショットを作成してリンクを貼るか、Word 文書などへのリンクを活用します。 以下、「コースポートフォリオ(メイン・スナップショット)」の各ボックスの記載について説明します。 編集するスナップショット名は、「コースポートフォリオ・テンプレート」です。

6.1 「タイトル」ボックス タイトルボックスには、スナップショットの「タイトル」「氏名・所属」「概要(200~250字)」を記述します。 [タイトル] 部分を、単なるコース名ではなく、このスナップショットで扱う内容や課題を表すタイトルに差し替えて下さい。 書式:フォントサイズ(6 (24pt))、太字、中央揃え [氏名・所属] 部分を、あなたのものに差し替えて下さい。 書式:フォントサイズ(4 (14pt))、中央揃え 「概要」部分に、本取り組みの概要を、200~250 字程度で簡潔に記述して下さい。 書式:フォントサイズ(4 (14pt))、両端揃え

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図 18 「コースポートフォリオ」スナップショット

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6.2 「コースの基本情報」ボックス このコースを説明するための基本的な情報を、「コースの基本情報」スナップショットで記述した内容を参考に、簡潔に説明して下さい(400~500 字)。例えば、「このコースの目的や内容」「受講する学生について」「カリキュラムとの関連」について記述します。 書式:フォントサイズ(4 (14pt))、両端揃え(以下、同様の書式) ボックス左下の「edit links」から、このコースに関連するウェブサイトや電子ファイル(例:シラバス、コースウェブサイト、関連する別のスナップショットなど)へリンクを作成して下さい。リンクは複数作成できます。

手順① ボックス左下の「edit links」をクリック

※既存のリンクを変更するには、リンク名をクリックします

手順② 表示されたリンクの編集画面で、右上の「編集」をクリック

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手順③ リンク先のURLを入力し、「タイトル」「説明」内のテキストを置き換える 手順④ 「リンクを保存」をクリック

6.3 「学習目標」ボックス・「教授法・教材・学習活動」ボックス 「学習目標」スナップショットまたは「教授法・教材・学習活動」スナップショットで記述した内容を参考に、簡潔に説明して下さい(400~500 字)。記述する際に、前後のボックスの内容との関連性を考慮して下さい。 提示するデータや記述の分量が多くなる場合は、別途 Word 文書などへのリンクを利用して下さい。

6.4 「実際の授業」ボックス 実際におこなった授業について、「実際の授業」スナップショットで記述した内容から、代表的な項目2~3点を中心に取り上げ、簡潔に説明して下さい(400~500 字)。記述する際に、前後のボックスの内容との関連性を考慮して下さい。

6.5 「学生の学び」ボックス 授業期間中に収集した、学生の学習について説明するデータ(例:学習成果物、リフレクションシート、アンケートなど)を2~3点提示し、このコースを通じて学生が学んだかどうかについて分析し、簡潔に記述して下さい(400~500 字)。 提示するデータや記述の分量が多くなる場合は、別途 Word 文書などへのリンクを利用して下さい。

6.6 「コースに対する振り返り」ボックス このコース全体について振り返り、その内容について記述して下さい(400~500 字)。(例:「学習目標に対する達成の度合い」「副次的効果」「実践における落とし穴」「授業改善の提案」など)

6.7 「同僚のコメント」ボックス このボックス以外が完成したら、あらかじめ依頼していた同僚にこのコースポートフォリオを読んでもらい、このコースに対する助言やコメントを得て下さい。その中から代表的

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な記述を抜粋し、このボックス内に引用して下さい。同僚からのコメントに対するあなたの回答を加えても構いません(400~500 字)。

6.8 「参考文献・資料」ボックス このコースのデザインや実践などに関して参考になった文献や資料などがあればこのボックス内に箇条書きで紹介して下さい。

6.9 画像の追加について このテンプレート内に、タイトルのないボックス(中央列の最下段)が含まれています。授業の雰囲気を示す画像や、コースについて説明する図表を、このスナップショットに追加して下さい。画像がない場合は、このボックスを削除します。ボックスの追加や削除の手順については次項をご覧下さい。 画像を追加するには、ボックス編集時に、テキストエディタ上部のタブで、「画像の追加/編集」を選択します。

6.10 ボックスの追加・削除および移動について ボックスの追加(削除)は、各ボックスの「add box」(「delete box」)ボタンでおこないます。追加された空白のボックスが、上部に表示されます。ボックスの位置は、各ボックス右上にある上下左右の矢印ボタンで移動することができます。

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以上で、コースポートフォリオが完成です。完成したスナップショットの提出と公開について、次に説明します。

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7.スナップショットの提出と公開について コースポートフォリオの完成後、MOST 上でスナップショットを公開するため、以下の手順でスナップショットをMOST事務局に提出します。

7.1 スナップショットのタイトルについて KEEP Toolkit のマイダッシュボードに表示されているスナップショット名が、スナップショットを表示させた際のウェブページのタイトルになります。スナップショット名は、KEEP Toolkit 上の「名前を変更する」ボタンで変更できます。

7.2 クリエイティブコモンズのライセンスを付与する MOST では、公開されるスナップショットは、読者(主に大学教員)によって利用/再利用が容易なコンテンツであることが推奨されています。通常、ウェブ上に記事などを公開すると直ちに著作権が発生するため、スナップショット内の記事やリソースを利用したい読者がいても、作成者の許諾を得る必要があります。 クリエイティブコモンズとは、コンテンツの作成者が、著作権とパブリックドメイン(権利放棄)の中間の権利をあらかじめスナップショットに付与することで、公開したコンテンツの利用や再利用を促すことが可能になります。クリエイティブコモンズのライセンスを付与すると、利用者は元の帰属表示が求められるほか、商用利用を許可するか、内容の改変を許可するか、といった条件をコンテンツに埋め込むことができます注1。

参考:クリエイティブコモンズジャパン http://creativecommons.jp/ 注1:従来の著作権やパブリックドメインを主張しても構いません。

あなたが作成したコースポートフォリオのスナップショットにクリエイティブコモンズのライセンス(または著作権)を付与するには以下の手順でおこないます。

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手順① 作成したスナップショットにチェックを入れる注2

注2:「公開設定」欄から「(一般)公開」を選択しても構いません。この場合は手順③に進みます。

手順② 「パブリッシュ」ボタンをクリック

手順③ 開いたウインドウ内で「ショートタイトル」を付ける(オプション)

手順④ クリエイティブコモンズのライセンスを選択する注3 ・「クリエイティブ・コモンズ・ライセンス -- some rights reserved」にチェック ・商用利用の条件を選択(「はい」または「いいえ」) ・作品の改変の条件を選択(「はい」「作り手と同じライセンスで発表するなら、はい」または「いいえ」)

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注3:著作権を主張する場合、「従来の著作権 -- all rights reserved」にチェックを入れます

手順⑤ 「パブリッシュ」をクリック注4

注4:すでにパブリッシュ設定となっているコンテンツの条件を変更する場合は、該当する項目を変

更後、「パブリッシュ解除」をクリックします

クリエイティブコモンズが設定されると、マイダッシュボードの「ライセンス」欄に設定した条件がアイコン(下図参照)で表示されます。

また、ショートタイトルを入力すると、複雑な文字列でなく、以下のような簡潔なURLでこのスナップショットにアクセスすることができるようになります。 https://most-keep.jp/keep25/toolkit/users/「アカウント名」/「ショートタイトル」

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7.3 タグを設定する(オプション) 「タグ」とは、スナップショットに関連するキーワードのことです。キーワードをスナップショットを関連づけておくことで、「タグ検索」機能などを利用して、このスナップショットを検索することが容易になります。 以下の手順でスナップショットに複数のタグを付与することができます。

手順① 作成したスナップショットにチェックを入れる

手順② 「タグ」ボタンをクリック

手順③ 開いたウインドウ内でこのスナップショットに関連する「キーワード」を半角スペース区切りで入力する (例:コースポートフォリオ 初年次 協調学習 コミュニケーションスキル)

手順④ 「登録」をクリック タグの登録が完了すると、スナップショット名の「タグ」欄に表示されます。

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7.4 スナップショットのURLを事務局に提出する 事務局スタッフがこのスナップショットにアクセスできるように、スナップショットを表示させた際のURLをメールで事務局まで知らせて下さい。以下のような複雑な文字列を持つURLです。 https://most-keep.jp/keep25/toolkit/html/snapshot.php?id=61187531702354 URL を表示させる手順は以下の通りです。

手順① マイダッシュボード上で、作成したコースポートフォリオのタイトルをクリック注1 手順② ブラウザに表示させるURLをメールで事務局宛に知らせる 注1:編集モードで、「スナップショットを見る」をクリックしても、スナップショットのURLが表

示されます

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7.5 スナップショットの複製を事務局に送信する(オプション) MOST 上で公開するスナップショットは、あなたのアカウント内のスナップショットのデータに直接リンクを貼ります。誤ってスナップショットを削除したり、内容を大きく編集した際にデータを復旧できるよう、スナップショットのデータを事務局に「送信」して下さい。KEEP Toolkit の「送信」機能を使うと、スナップショットの複製を他のユーザーアカウントに送ることができます。

手順① マイダッシュボード上で、作成したコースポートフォリオのタイトルをクリック

手順② 「送信」ボタンをクリック

手順③ 開いたウインドウ内で送信先のアカウントまたは登録されたメールアドレスを入力する注1。

注1:送信先のアカウントは、送信時にお問い合わせ下さい。

手順④ 「登録」をクリック

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7.6 スナップショットの公開について 提出されたコースポートフォリオの完成版は、事務局でMOST上に公開します。上記 7.4節の URLにリンクされていますので、スナップショットを編集した場合はただちにその内容が公開されたスナップショットにも反映されます。

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8.コースポートフォリオ作成カレンダー (後期に提供するコースの場合) コースポートフォリオの作成は、以下のように授業期間に渡って段階的におこないます。それぞれの内容は、これまでに個別に説明しています。

実施事項 内容

9 月中旬 オリエン テーション

・ プロジェクト全体の説明を受ける ・ MOSTの使い方を学ぶ

授業期間開始までの活動

・ シラバスをもとに、「コースの基本情報」「学習目標」「教授法・教材・学習活動」スナップショットを作成する

・ 「実際の授業」スナップショット内で、各週の授業内容(予定)を記入する

・ 「学生の学び」スナップショット内で、授業期間内に収集するデータ/エビデンスについて記入する

・ コメントや助言を貰えるような同僚を探し、事前に依頼する

10 月初旬 授業期間開始

授業期間

・ 「実際の授業」スナップショット内で、各週の授業の実施状況について「授業内容(結果)」欄を記入する

・ このコースの代表的な学習活動(例:グループワーク、小テスト、レポート、試験)について、「学生の学び」スナップショットを作成する

・ このコースの代表的な1回の授業について、「授業分析」スナップショットを作成する(ワークシートを利用)

12 月初旬 中間ヒアリング ・ 授業期間中、作成者からのフィードバックを得るために1度ヒアリングをおこないます

授業期間

・引き続き、授業期間内の作業をおこなう

2 月初旬 授業期間終了

コースポート フォリオ作成

・ 同僚にコメントをもらう ・ これまでに作成した各詳細を簡潔にまとめ、「振り返り」「同僚からのコメント」を記入し、コースポートフォリオを完成させる

3 月初旬 完成版提出、公開

・ クリエイティブコモンズのライセンスを付与後、コースポートフォリオの完成版を提出する

・ 提出後、作成者よりフィードバックを得るためにヒアリングをおこないます

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付録A.MOSTへの参加登録について MOSTは大学教員、職員、将来大学教員を目指す大学院生が登録条件です。MOSTは招待制のサイトとなっています。非登録者のアカウントの登録には、既存のMOSTユーザーから、招待メールを送る必要があります。事務局から直接アカウントを発行しておりませんので、予めご了承下さい。 招待メール(インバイトメール)は、MOST の「マイワークスペース」→「ホーム」で、プロフィール画面の上部にある「新規ユーザーをインバイトする」から送信できます。 MOST や KEEP Toolkit の利用について不明な点があれば、以下の事務局宛てにご連絡下さい。

MOST 事務局連絡先:[email protected]

付録B.MOST講習会 京都大学高等教育研究開発推進センターでは、MOST 講習会を定期的におこなっております。MOST の登録条件を満たす方ならどなたでも参加可能です(参加無料。ただし大学院生は現時点では京都大学在学生のみ参加可能)。詳しくは以下の相互研修型 FD 共同利用拠点のページをご覧下さい。 http://www.highedu.kyoto-u.ac.jp/kyoten/gyoumu/most.html

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付録C.学生に対する承諾書 授業の様子を撮影した画像や、学生の学習成果物の抜粋などをスナップショットに掲載する場合、撮影時または成果物の引用前に学生に了解を求めておいて下さい。承諾書のひな形(付録C参照)は、MOST(「MOST 活用プログラム」→「コースポートフォリオ」)から入手できます。

付図1 学生に対する承諾書の例

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付録D.レビュアー向けガイドライン 本実践プログラムで、ピアレビューをおこなうにあたり、レビュアーに依頼する際のガイドラインなどの資料を次ページ以降に示しています。あなたの実践内容に応じて適宜内容を変更の上、ご利用下さい。電子データを希望する方は MOST 担当者までご連絡下さい。

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コースポートフォリオ実践プログラム

レビュアー向けガイドライン

京都大学高等教育研究開発推進センター コースポートフォリオのピアレビューをお引き受け下さりありがとうございます。本資料は、ピアレビューの実施手順およびレビューコメントを作成する際に参考となるガイドラインを記載しています。ご参照の上、レビューコメントの作成と提出をお願いいたします。

1.ピアレビューの目的 コースポートフォリオの作成者は、作成したポートフォリオに対するコメントを同僚や第三者から得ることで、担当したコースのデザインや実践に対して新たな視点を得たり、今後のコースの改善に結びつけることができます。同時に、コースポートフォリオ自体の質の向上もはかることができます。このように、担当したコースや作成したコースポートフォリオの質的向上をはかるために、本実践プログラムではピアレビューのプロセスを導入しています。また、他者のコースポートフォリオに対してコメントを作成することは、レビュアーにとっても自身の授業やコースに対する有益な振り返りの機会ともなります。 図1のように、コースポートフォリオ作成者が作成したコースポートフォリオについて、レビュアーがコメントを作成します。レビュアーから提出されたコメントを元に、コースポートフォリオ作成者は、コメントの抜粋(400~500 字)をポートフォリオに記載するとともに、得られた知見や洞察、同意する(しない)点などに関して回答を追記します。また、レビュアーのコメントにもとづいてポートフォリオの更新、修正をおこないます。

図1 ピアレビューのプロセス

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2.ピアレビューの実施手順 ピアレビューは図2の手順で行います。ここでは、レビュアーが行う3つのステップの詳細について説明しています。

図2 レビュアーが行う3つのステップ ステップ1:コースポートフォリオを読む 以下の URLにアクセスし、ピアレビューの対象となるコースポートフォリオをまずお読み下さい。

タイトル: (コースポートフォリオ名称) 作成者: (教員名・所属) URL: (スナップショットのURLを入力)

ステップ2:ピアレビューのコメントを作成する コースポートフォリオの内容に対して、簡潔なレビューコメントを作成して下さい。 コメントの提出(ステップ3)後、あなたが作成したレビューコメントのコピー(レビュアーの希望により個人情報を削除)をコースポートフォリオ作成者にメールで転送します。コースポートフォリオ作成者は、完成版のコースポートフォリオ上にあなたのレビューコメントを抜粋(400~500 字)して掲載することになります。 レビューコメントの作成にあたって、“コメントがしにくい”、“どこから手をつければよいか分からない”と思われる方は、後述の「ピアレビューのコメント作成のためのガイドライン」をご参考下さい。

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ステップ3:作成したコメントを提出する 作成したコメントは、以下の内容でご提出下さい。 本資料の 4 ページ目に、「ピアレビューコメントの提出フォーム」(Word 形式)があります。コメントの作成は、このフォームを利用してもメール本文に直接テキスト入力しても構いません。

締切: 20XX 年 X月 XX日 提出先: (メールアドレス、担当者名) ※コースポートフォリオ作成者に直接メールで送る場合は、上記のメールアドレスにも同報して下さい。

提出の際、以下の情報を合わせてお知らせ下さい。 ************************************************************* コースポートフォリオ作成者にあなたの個人情報(氏名・所属)を知らせても構いませんか? はい ・ いいえ コースポートフォリオ上にあなたの個人情報(氏名・所属)を掲載しても構いませんか? はい ・ いいえ *************************************************************

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ピアレビューコメントの提出フォーム 氏 名: 所 属: ピアレビューの対象としたコースポートフォリオ

タイトル: 作成者氏名: 作成者所属: コースポートフォリオのURL:

コースポートフォリオ作成者にあなたの個人情報(氏名・所属)を知らせても構いませんか?(いずれかに○)

はい ・ いいえ

コースポートフォリオ上にあなたの個人情報(氏名・所属)を掲載しても構いませんか?(いずれかに○)

はい ・ いいえ ピアレビューコメント ※できるだけ簡潔に記述して下さい(後日、コースポートフォリオの作成者がコメントの抜粋(400~500

字)をポートフォリオ上に掲載します)

提出先:[email protected](MOST事務局)

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ピアレビューのコメント作成のためのガイドライン (参考:Bernstein ら(2006))

コメントの作成にあたり、以下の5つのカテゴリー(①コースの内容について、②授業実践について、③学生の学習について、④教員のリフレクションについて、⑤コースの改善について)に着目して下さい。また、⑥レビュアーの教育経験についてもコメントに加えて下さい。各カテゴリーの下位項目として具体的な質問項目を例示しています。 (注)

・ すべての項目に対してコメントする必要はありません。また、以下に挙げられたすべての項目について、

コースポートフォリオ上に記述されているわけではありません。このコースにとって特に注目すべきと

思われる事項に絞って簡潔にコメントを作成して下さい。

・ 以下に挙げた項目以外にもお気づきの点があれば是非ご指摘下さい。

・ レビューの対象となるコースと関連のあるコースを担当した経験がある場合、そのことも簡潔に記述し

て下さい。このコースとまったく同一の内容や形態である必要はありません。ポートフォリオの作成者

にとってレビュアーの教育経験はコメントを読む際の手がかりともなります。

①コースの内容について このコースで扱われた内容に関してコメントして下さい: ・ 内容の一貫性が保たれていますか?

・ 学生に対してコースの目標が明確に提示されていますか?コースの目標は、内容あるいはカ

リキュラム上のこのコースの位置づけに適合していますか?

・ 扱われた概念、知識、技能やこれらの関連性は適切ですか?

・ 選定された教材は、カリキュラムまたは組織(大学、学科や学部)にとって適切なものです

か?

②授業実践について このコースで実際におこなわれた授業に関してコメントして下さい: ・ 実際におこなわれた授業の構成は、事前に予定されたもの(シラバスに記載された構成など)

と一致していますか?

・ 学生を活発に教材へ取り組ませるような機会が設けられていますか?

・ コースの目標に挙げられた技能を実践するための機会を学生に提供していますか?(授業内

/外について)

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・ 授業時間内に、学生の理解を向上させるような創造的あるいは効果的な工夫はありました

か?

・ 授業時間以外に、学生の達成度に寄与するような活動は計画されていますか?(例:正課外

活動、グループプロジェクト、オンラインディスカッション、コースに関連する課題など)

・ 学習者による理解の達成に寄与するような、コースの構成または手続きはありますか?

③学生の学習について 学生の学習(理解の質、パフォーマンスなど)についてコメントして下さい: ・ コースの目標やレベルから見て、学生はよく学んだと思いますか。

・ 内容の困難度に応じて、学生のパフォーマンスのレベルが異なる点について言及されていま

すか?

・ 設定されたコースの目標に対する評価の形式は適切ですか?

・ 成績を算出するにあたり、このコースで課した各課題に対する重みづけは、コースの各目標

に対する重要度が反映されていましたか?

・ コースの目標に到達した学生の割合が妥当であったかどうかについて言及されていますか。

目標に到達しなかった学生がいた場合、その理由について言及されていますか?

・ 学生のパフォーマンスの改善に向けたコースの修正や変更について触れられていますか?

④教員のリフレクションについて 教員のリフレクションについてコメントして下さい: ・ このコースの目標への達成度に関する、教員のリフレクションについてどのように考えます

か?

・ 授業実践の分析はエビデンスにもとづいていましたか?

・ 学生のパフォーマンスをエビデンスにもとづき考察していましたか?

・ 全体として教員のリフレクションはエビデンスにもとづいていますか?

⑤コースの改善について このコースの改善についてコメントして下さい: ・ 実際におこなわれた授業と学生のパフォーマンスとは関連づけて記述されていましたか?

・ このコースの期間中に、学生のパフォーマンスに基づき授業の内容や方法を適切に変更して

いましたか?

・ 次回のコースへ向けての改善点が示されていましたか?

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⑥レビュアーの教育経験について ・ このコースポートフォリオと同様のコース(例:クラス規模、レベル、内容)を担当した経験はありますか?

・ 同様の形式(例:授業の構成、プレゼンテーション形式)で教えたことがありますか? 参考文献: Bernstein, D., Burnett, A.N., Goodburn, A. & Savory, P. (2006). Making teaching and learning visible: Course portfolios and the peer review of teaching, Anker.

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付録E.用語集 クリエイティブコモンズ 著作権とパブリックドメインの中間層に位置する、著作物に付与するライセンス。公開された教育上の知識や経験は、他の教員が容易に利用可能なものであるべきという考えから、KEEP Toolkit で作成したスナップショットに付与できるようになっている。クリエイティブ・コモンズ・ジャパンのサイト(http://creativecommons.jp/)参照。 コースポートフォリオ 大学教員が自身の担当するコースに焦点をあて、教授・学習活動を点検したり、改善するために作成する文書。 授業分析スナップショット 元々「Class Anatomy」という名称で、教員が1回の授業に対する教授学習活動の時間構造を客観的に記述し、授業後に振り返るためのスナップショット。「アナトミー」という解剖学のアナロジーを使っている。 スティッチグループ 複数のスナップショットを1まとめにするための、KEEP Toolkit の機能。またはこの機能を使ってまとめられてスナップショット群のことをいう。 スナップショット KEEP Toolkit で作成する1枚のウェブページのこと。 相互研修型 FD 京都大学高等教育研究開発推進センターが提唱する FDの理念。大学教員自身が自律的に FDの活動を担うことなどの特徴がある。教員̶学生間、教員間、組織間などの多層な相互性のもとで FD活動を推進する。 テンプレート KEEP Toolkit のスナップショットを作成するためのひな形。カーネギー財団の諸活動を元にした各種テンプレートのほか、京大センターによるテンプレートも随時提供していく予定である。KEEP Toolkit 内でスナップショットを新規作成する際にテンプレートを選択できる。最初からスナップショットを作成するための「ブランクテンプレート」も利用できる。 ピアレビュー(教育活動のピアレビュー) 研究では「査読」と訳されるのが一般的であるが、英語では「Peer review of teaching」と呼ばれ、教育活動についても研究活動と同様に大学教員(同僚)同士で互いに吟味し合うべきという考え方がある。コースポートフォリオについても、教員間でピアレビューをおこなうことにより、その質を保証したり、改善のためのフィードバックを得ることができる。 KEEP Toolkit(Knowledge Exchange Exhibition Presentation Toolkit、キープツールキット)

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カーネギー教育振興財団知識メディア研究所が開発した、スナップショット作成ツール。MOST内で利用できる。 MOST(Mutual Online System for Teaching and Learning、モスト) 京都大学高等教育研究開発推進センターが構築した、オンライン FD 支援システム。2009 年11 月より全国の大学教職員を対象に、FD や教育改善を支援することを目的として提供を開始した。MOST の登録ユーザーは、KEEP Toolkit を利用できるほか、オンラインコミュニティを自由に作成することができる。

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参考文献

Bernstein, D. Burnett, A.N., Goodburn, A., and Savoy, P . (2006). Making Teaching

and Learning Visible: Course portfolio and the Peer Review of Teaching, Anker

Publishing.

Cerbin, W . (1994). The course portfolio as a tool for continuous improvement of

teaching and learning. Journal on Excellence in College Teaching, 5(1), 95-105.

Hutchings, P . (1996). Portfolios: Putting the pieces together, Ed. Hutchings, P .,

Making Teaching Community Property: A Menu for Peer Collaboration and Peer

Review, American Association for Higher Education, Chap. 5, pp.49-60.

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京都大学高等教育研究開発推進センター (編集担当:酒井博之・田口真奈)