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Ⅰ 調査目的Ⅱ 実施要領Ⅲ 本調査におけるソーシャルビジネスⅣ 調査結果
1 ソーシャルビジネスに取り組んでいる企業の割合 2 取り組んでいる社会的問題 3 ソーシャルビジネスに取り組んでいる企業の従業者 4 ソーシャルビジネスを始めた理由 5 ソーシャルビジネスの経営状況 6 ソーシャルビジネスの資金調達 7 ソーシャルビジネスの成果 8 ソーシャルビジネスの課題 9 まとめ
<問い合わせ先> 日本政策金融公庫総合研究所 小企業研究第一グループ ℡ 03-3270-1687 担当 竹内、楠本
ソーシャルビジネスの経営実態~「社会的問題と事業との関わりに関するアンケート」から~
日本政策金融公庫総 合 研 究 所
平成26年11月18日
Ⅰ 調査目的
平成26年6月に政府が発表した「骨太の方針」で、その育成が謳われているように、社会的問題を解決する担い手としてソーシャルビジネスが注目されている。しかし、ソーシャルビジネスを定義することが難しいこともあり、その経営状況や成果は必ずしも明らかになってはいない。そこで、日本政策金融公庫総合研究所では、ソーシャルビジネスの実態を探り、支援策を検討する参考とするために「社会的問題と事業との関わりに関するアンケート」を実施した。
Ⅱ 実施要領
1 調査時点 平成26年8月
2 対象 ① 年間収入が1,000万円以上の株式会社、有限会社、合資会社、合名会社、合同会社で、中小企業基本法で定める従業員数 の定義を満たす非上場企業5,000社。② 年間収入が1,000万円以上の企業組合、一般社団法人、特定非営利活動(NPO)法人が合わせて5,000社。(①、②それぞれ㈱帝国データバンクの企業データベースから抽出した)
3 調査方法 調査票の送付・回収ともに郵送。調査票は無記名。
4 回収数 2,562社(回収率25.6%)
Ⅲ 本調査におけるソーシャルビジネス
1 社会的問題と法人との関係を尋ねた質問で、次の三つの選択肢のうち、いずれかを回答したものをソーシャルビジネスに取り組んでいる企業 とした。
① 社会的問題を解決するために、本法人を設立した② 本法人の目的ではないが、社会的問題を解決するための事業を営んでいる③ 社会的問題を解決する法人や団体を支援する事業を行っている
2 社会的問題は次の4種類とした。
① 社会的排除に関する問題(貧困、心身の障害など何らかの理由から就職できない、教育を受けられないなど社会から追いやられる問題)② 地域社会に関する問題(過疎、高齢化、子育て、雇用機会の減少、教育・文化施設の不足など地域が抱える問題)③ 地球環境に関する問題(地球温暖化、オゾン層の保護、生物多様性の維持、海洋汚染など国際的な環境問題)④ 開発途上国の支援に関する問題(産業の育成、貧困対策など、途上国における経済・社会の発展に関する問題)
1
(参考)
(注)1 「その他」は、調査時点で社会福祉法人、公益社団法人になっていたもの。 (注)最も収入が多い事業の業種である。
2 NPO法人の数は平成26年8月末で約5万社であるのに対し、会社の数は
平成21年の経済センサスで合計約180万社。
32.3
7.4
0.1 1.3 3.8
54.7
0.1 0.2 0
10
20
30
40
50
60
株式会社
有限会社
合資会社
企業組合
一般社団法人
NPO法人
その他
無回答
アンケート回答企業の法人の種類 (%)
7.3 9.0
2.2 2.7 5.7 5.5
1.2 2.3 4.5
1.3
29.9
10.7 11.8
5.9
0
5
10
15
20
25
30
35
建設業
製造業
情報通信業
運輸業
卸売業
小売業
飲食店、宿泊業
不動産業
教育・学習支援業
医療、保健衛生
福祉
サービス業
その他
無回答
アンケート回答企業の業種 (%)
2
Ⅳ 調査結果
1 ソーシャルビジネスに取り組んでいる企業の割合~NPO法人の75.1%、会社の6.1%がソーシャルビジネスに取り組んでいる~
○ 「社会的問題を解決するために、本法人を設立した」など、ソーシャルビジネスに取り組んでいる企業の割合は、アンケート回答企業全体 の44.8%を占める(図-1)。○ ソーシャルビジネスに取り組んでいる企業の割合を法人の種類別にみると、「NPO法人」は75.1%、「会社」は6.1%、「一般社団法人 等」は41.8%となっている(表-1)。
(注)1 「会社」は、株式会社、有限会社、合資会社の合計である。
2 「一般社団法人等」は、一般社団法人、企業組合、社会福祉法人、公益社団
法人の合計である。
4.5 43.3
5.3 9.82.6 75.1
3.1
CSRまたは慈善として
、社会的
問題の解決に取り組んでいる
とくに関係はない
2.0 13.2
10.5 70.612.91.4 6.1
5.2 10.49.0 41.8
社会的問題を解決するために
、
本法人を設立した
本法人の目的ではないが
、社会的
問題を解決するための
事業を営んでいる
本法人や事業の目的ではないが
、
社会的問題の解決に事業を通じて
取り組んでいる
社会的問題を解決する法人や団体
を支援する事業を行
っている
ソー
シャルビジネスに
取り組んでいる企業計
(単位:%)
表-1 法人の種類別にみた社会的問題との関わり
一般社団法人等(n=134)
会 社(n=1,002)
NPO法人(n=1,369)
67.2
1.6
27.6
社会的問題を解決す
るために、本法人を
設立した
38.1
本法人の目的ではな
いが、社会的問題を
解決するための事業
を営んでいる
4.3
社会的問題を解決
する法人や団体を
支援する事業を
行っている
2.4
本法人や事業の目的
ではないが、社会的
問題の解決に事業を
通じて取り組んでいる
10.8
CSRまたは慈善とし
て、社会的問題の解
決に取り組んでいる
5.4
とくに関係はない
37.0
無回答
2.0
図-1 社会的問題との関わり
(n=2,562)
44.8%
3
2 取り組んでいる社会的問題~地域社会の問題が68.1%、社会的排除の問題が52.6%~
○ ソーシャルビジネスで取り組んでいる社会的問題をみると、地域社会に関する問題が68.1%で最も多く、次いで社会的排除に関する問題が 52.6%、地球環境に関する問題が13.2%、開発途上国の支援に関する問題が4.7%となっている(表-2)。○ 社会的問題との関わり別にみると、どの場合も地域社会に関する問題が最も多いが、「社会的問題を解決するために、本法人を設立した」 と「本法人の目的ではないが、社会的問題を解決するための事業を営んでいる」とする企業では社会的排除に関する問題が2番目に多いの に対し、「社会的問題を解決する法人や団体を支援する事業を営んでいる」企業では、地球環境に関する問題が2番目に多い。○ 事業や取り組みの内容について具体的な記入があったものを分類すると、障害者の就労支援や施設等への送迎など障害者支援が211件で最 も多く、次いでデイサービスなど高齢者支援が80件、子育て支援の取り組みが54件、環境関連の取り組みが48件となっている。
(注) 「社会的問題を解決するために、どのような事業・取り組みを行ってい
るか」という質問に回答があった626社のうち、事業内容が明確な489社
について分類した。
表-2 取り組んでいる社会的問題
(単位:%、複数回答)
社会的排除 地域社会 地球環境開発途上国
支援
本法人の目的ではないが、社会的問題を解決するための事業を営んでいる(n=108) 44.4 69.4 18.5 0.9
社会的問題を解決するために、本法人を設立した(n=947) 55.2 68.1 11.6 4.6
ソーシャルビジネスに取り組んでいる企業全体(n=1,384) 52.6 68.1 13.2 4.7
社会的問題を解決する法人や団体を支援する事業を行っている(n=60) 25.0 65.0 28.3 11.7
211
80
54 48 47 29
8 3 3 2 2 0
50
100
150
200
250
障害者支援
高齢者支援
子育て支援
環境関連
地域活性化関連
高齢者・障害者支援
途上国支援
若者支援
ホームレス支援
母子家庭支援
貧困者支援
図-2 事業・取り組みの内容 (社)
4
3 ソーシャルビジネスに取り組んでいる企業の従業者(1)代表者~年配者と女性が多い
○ ソーシャルビジネスに取り組んでいる企業について代表者の年齢をみると「60歳以上」が64.8%とおよそ3分の2を占めている(図-3)。 ソーシャルビジネスを営んでいない企業と比べても、「60歳以上」の割合は5.5ポイント多い。○ 同様に代表者の性別をみると、ソーシャルビジネスに取り組んでいる企業では、「女性」の割合が31.6%を占め、ソーシャルビジネスに取 り組んでいない企業に比べて23.5ポイントも多い(図-4)。
2.2
3.8
13.1
8.6
25.4
22.8
59.3
64.8
ソーシャルビジネスに
取り組んでいない企業
(n=1,343)
ソーシャルビジネスに
取り組んでいる企業
(n=1,116)
図-3 代表者の年齢
39歳以下 40~49歳 50~59歳 60歳以上
91.9
68.4
8.1
31.6
ソーシャルビジネスに
取り組んでいない企業
(n=1,358)
ソーシャルビジネスに
取り組んでいる企業
(n=1,141)
図-4 代表者の性別
男 性 女 性
(単位:%) (単位:%)
5
(2)従業者①~女性が多く、家族が少ない~
○ ソーシャルビジネスに取り組んでいる企業の従業者数をみると、「10~19人」が26.6%で最も多い(図-5)。ソーシャルビジネスに取り 組んでいない企業に比べると、「1~4人」と「50人以上」の割合が少ない。○ ソーシャルビジネスに取り組んでいる企業について女性従業者の割合をみると、「50~75%」が29.1%、「75%超」が31.0%と、50%超の 割合が合わせて60.1%を占めている(図-6)。ソーシャルビジネスに取り組んでいない企業では、女性従業者の割合が「25%以下」であ る企業が52.4%を占めており、ソーシャルビジネスでは女性の役割が大きいといえる。
(注)従業者数は、代表者、有給の役員、有給の社員・職員の合計。
24.5
21.5
23.5
25.7
21.7
26.6
18.9
20.4
11.4
5.8
ソーシャルビジネスに
取り組んでいない企業
(n=1,338)
ソーシャルビジネスに
取り組んでいる企業
(n=1,130)
図-5 従業者数
10~19人 20~49人
50人以上
(単位:%)
(平均:21.1人)
(平均:22.5人)
5~9人
52.4
17.1
26.9
22.8
12.4
29.1
8.2
31.0
ソーシャルビジネスに
取り組んでいない企業
(n=1,336)
ソーシャルビジネスに
取り組んでいる企業
(n=1,129)
図-6 女性従業者の割合
25~50% 50~75% 75%超
(単位:%)
(平均:34.3%)
25%以下 1~4人
(平均:68.7%)
6
○ 家族従業者の割合をみると、ソーシャルビジネスに取り組んでいる企業では「0%」が81.4%と大半を占めており、ソーシャルビジネスに 取り組んでいない企業を17.3ポイント上回っている(図-7)。○ 家族従業者がいない企業の割合を従業者規模別でみると、ソーシャルビジネスに取り組んでいる企業では、小規模な企業で多く、「1~4 人」では91.4%を占めている(図-8)。
64.1
81.4
11.4
9.5
24.4
9.1
ソーシャルビジネスに
取り組んでいない企業
(n=1,338)
ソーシャルビジネスに
取り組んでいる企業
(n=1,130)
図-7 家族従業者の割合
0~10% 10%超
(単位:%)
0% 91.4
84.5
75.1 76.6 76.9
65.9
57.6 62.9
68.8 68.4
0
20
40
60
80
100
1~4人 5~9人 10~19人 20~49人 50人以上
図-8 家族従業者がいない企業の割合(従業者規模別)
(%)
ソーシャルビジネスに取り組んでいる企業(n=1,130)
ソーシャルビジネスに取り組んでいない企業(n=1,1338)
7
4 ソーシャルビジネスを始めた理由~身近に社会的問題の当事者がいたから~
○ ソーシャルビジネスを始めた理由をみると、全体では「家族や友人、社員など身近に社会的問題の当事者がいたから」が39.0%で最も多く、 「社会や地域の役に立っているという実感を得たいから」が19.7%で続いている(図-9)。代表者の年齢別にみると、「家族や友人、社 員など身近に社会的問題の当事者がいたから」と「社会や地域の役に立っているという実感を得たいから」は年齢が高いほど多くなってい るが、「代表者自身が社会的問題の当事者だから」は年齢が若いほど多くなっている。○ 男女別では、「家族や友人、社員など身近に社会的問題の当事者がいたから」を回答した企業の割合は女性が45.3%で、男性を9.2ポイン ト上回っている(図-10)。
39.0
7.5 6.8
19.7
6.2
1.9
18.9
0
10
20
30
40
50
家族や友人、社員など身近に社会的問
題の当事者がいたから
代表者自身が社会的問題の
当事者だから
講演、書籍、学校などで社会的問題を
知り、自ら解決してみようと思ったから
社会や地域の役に立っているという実感
を得たいから
既存の事業に役立つと思ったから
ビジネスチャンスだと思ったから
その他
図-9 年齢別ソーシャルビジネスを始めた理由
全体(n=1,034) 39歳以下(n=42) 40~49歳(n=88) 50~59歳(n=232) 60歳以上(n=647)
(%)
36.1
8.6 6.9
19.6
7.6
2.4
18.9
45.3
5.5 6.7
20.4
3.3 0.9
17.9
0
10
20
30
40
50
家族や友人、社員など身近に社会的
問題の当事者がいたから
代表者自身が社会的問題の
当事者だから
講演、書籍、学校などで社会的問題
を知り、自ら解決してみようと思った
から
社会や地域の役に立っているという実
感を得たいから
既存の事業に役立つと思ったから
ビジネスチャンスだと思ったから
その他
図-10 男女別ソーシャルビジネスを始めた理由
男性(n=700) 女性(n=329) (%)
8
5 ソーシャルビジネスの経営状況(1)売り上げと採算~年商5,000万円未満の企業、赤字の企業がそれぞれ4分の3を占める
○ ソーシャルビジネスによる最近1年間の売上高をみると、「1,000万円未満」の企業が28.8%で最も多く、次いで「2,000万円~5,000万円」 の企業が27.8%を占めるなど、5,000万円未満の企業が合計で74.9%を占めている(図-11)。○ 同様に、最近1年間の採算をみると、「赤字」とする企業が75.0%を占めている(図-12)。ソーシャルビジネスは小規模なものが多く、 モノやサービスを販売した収入だけで必要な経費を賄えている企業は少ない。
(注)ソーシャルビジネスによる売上高については、「他の事業と一体なのでわから
ない」とする企業が122社ある。
1,000万円未満
28.8
1,000万~
2,000万円
18.3
2,000万~
5,000万円
27.8
5,000万円超 25.1
図-11 ソーシャルビジネスによる最近1年間の売上高
(単位:%)
(n=796)
黒字
25.0
赤字
75.0
図-12 ソーシャルビジネスの最近1年間の採算
(単位:%)
(n=1,089)
9
(2)企業全体の採算~企業全体では69.2%が黒字~
○ ソーシャルビジネスに取り組んでいる企業では、補助金を受け取っているものが66.5%、寄付金・寄贈品を受け取っているものが50.9%、 会費収入のあるものが71.2%、ソーシャルビジネス以外の事業収入があるものが38.1%ある(図-13)。○ 受け取った補助金、寄付金・寄贈品、会費の額は平均でそれぞれ2,317万円、494万円、209万円となっている(図-13)。○ 補助金や寄付金、別事業からの収入などを含めてソーシャルビジネスに取り組んでいる企業全体の採算をみると、黒字の企業が69.2%を占 めている(図-14)。
(注)1 ( )内は、ゼロを除いて算出した平均値。
2 別事業の売り上げは、ソーシャルビジネスと一体なのでわからないとする
ものがあるので平均値を算出できない。
71.4
69.2
28.6
30.8
ソーシャルビジネスに
取り組んでいない企業
(n=1,224)
ソーシャルビジネスに
取り組んでいる企業
(n=1,073)
図-14 企業全体の採算
黒 字 赤 字
(単位:%)
23.6
9.8
24.0
38.1
71.2
50.9
66.5
0 20 40 60 80
別事業の売り上げ
会員からの会費
寄付金・寄贈品
補助金
図-13 売り上げ以外の収入
ソーシャルビジネスに取り組んでいる企業(n=1,109)
ソーシャルビジネスに取り組んでいない企業(n=1,320)
(%)
(1,455万円)
(494万円)
(212万円)
(209万円)
(1,642万円)
(2,317万円)
10
6 ソーシャルビジネスの資金調達(1)開業時の資金~開業時に資金が必要だった企業の割合は59.1%~
○ ソーシャルビジネスを始めたときに資金が「必要だった」とする企業の割合は59.1%で、「とくだん必要なかった」とする企業が40.9%を 占める(図-15)。○ 資金が「必要だった」とする企業について、開業資金額をみると、「250万円未満」が26.3%、「250万~500万円」が16.2%、「500万~ 1,000万円」が16.2%と、1,000万円未満の割合が58.7%を占めており、それほど高額の投資をしていない(図-16)。
(注)図-15で「必要だった」と回答したものについて集計した。
必要だった 59.1
とくだん必要な
かった 40.9
図-15 ソーシャルビジネスを始めたときの資金
(単位:%)
(n=1,059)
250万円未満 26.3
250万~500万円 16.2
500万~
1,000万円 16.2
1,000万~2,000
万円 15.2
2,000万円以上 26.1
図-16 ソーシャルビジネスの開業資金額
(単位:%)
(n=551)
11
(2)開業時の金融機関利用状況~開業資金を金融機関から調達していない企業が70.6%~
○ ソーシャルビジネスの開業時に資金が必要だったとする企業について、開業資金を金融機関から調達したかどうかをみると、全体では「全 部を金融機関から借りた」が6.7%、「一部を金融機関から借りた」が22.7%で、70.6%の企業は金融機関を利用していない(図-17)。○ ソーシャルビジネスの開業時に金融機関から資金を調達しなかった企業の割合は、開業資金の額が多いほど少なくなるが、「2,000万円以 上」でも47.9%の企業が金融機関を利用していない(図-17)。○ 法人の種類別に金融機関を利用しなかった企業の割合をみると、会社は26.9%であるのに対し、NPO法人は74.5%、一般社団法人等では 83.9%となっている(図-18)。
(注)開業資金の中央値は、NPO法人が500万円、会社が3,000万円、一般社団法人
等が1,035万円である。
6.7
10.6
7.3
3.4
6.9
4.2
22.7
41.5
30.5
21.8
11.5
7.0
70.6
47.9
62.2
74.7
81.6
88.8
全体
(n=541)
2,000万円以上
(n=142)
1,000万~2,000万円
(n=82)
500万~1,000万円
(n=87)
250万~500万円
(n=87)
250万円未満
(n=143)
図-17 金融機関からの開業資金調達(開業資金額別)
(単位:%) 全額を金融機関から借りた 一部を金融機関から借りた
金融機関は利用していない
0.0
23.1
5.6
16.1
50.0
19.9
83.9
26.9
74.5
一般社団法人等
(n=31)
会 社
(n=26)
NPO法人
(n=572)
図-18 金融機関からの開業資金調達(法人の種類別)
(単位:%) 全額を金融機関から借りた
一部を金融機関から借りた 金融機関は利用していない
12
(3)調査時点における金融機関の利用状況①~金融機関からの借り入れがある企業は25.2%~
○ 調査時点で、金融機関からソーシャルビジネスにかかる借り入れがある企業の割合は25.2%で、借り入れがない企業が4分の3を占めてい る(図-19)。○ 金融機関からの借り入れがある企業について、その残高をみると「5,000万円以上」が19.8%あるものの、「500万円未満」が24.7%、「500 万~1,000万円」が16.0%を占めるなど、比較的借入金の少ない企業が多い(図-20)。
(注)ソーシャルビジネスに関する借入金の有無について質問したもの。 (注)ソーシャルビジネスに関する借入金について集計したものである。
500万円未満 24.7
500万~1,000万
円 16.0
1,000万~2,000
万円 17.5
2,000万円~
5,000万円 22.1
5,000万円以上 19.8
図-20 金融機関からの借入金額
(単位:%)
(n=263)
あ る
25.2
な い
74.8
図-19 金融機関からの借り入れの有無(調査時点)
(単位:%)
(n=1,118)
13
(4)金融機関の利用状況②~主な借入先は地方銀行、信用金庫と日本政策金融公庫~
○ ソーシャルビジネスの売上高別に、調査時点での金融機関の利用状況をみると、売上高が少ないほど金融機関からの借り入れがない企業の 割合が多くなっている(図-21)。ソーシャルビジネスの事業規模が小さいために、金融機関を利用している企業も少ないと考えられる。○ 調査時点で借入残高がある金融機関の種類をみると、地方銀行が29.7%で最も多く、以下、日本政策金融公庫の29.3%、信用金庫の22.6% が続いている(図-22)。
(注)金融機関からの借り入れはソーシャルビジネス部分に関するものだけである。 (注)ソーシャルビジネス部分について借り入れがある金融機関を集計したもの。
41.5
32.3
22.8
16.7
58.5
67.7
77.2
83.3
5,000万円以上
(n=200)
2,000万~5,000万円
(n=217)
1,000万~2,000万円
(n=145)
1,000万円未満
(n=227)
図-21 ソーシャルビジネスの売上高別にみた
金融機関からの借り入れ (単位:%)
あ る な い
3.2
29.7
22.6
3.9 5.3 1.8 0.4
29.3
1.4 0.4 2.8 2.1
0
10
20
30
40
50
60
都市銀行
地方銀行
信用金庫
信用組合
労働金庫
農協、漁協
その他の民間金融機関
日本政策金融公庫
日本政策投資銀行
商工組合中央金庫
その他の公的金融機関
自治体の制度融資
図-22 借入金のある金融機関
全体(n=283)
NPO法人(n=246)
会社(n=25)
一般社団法人等(n=11)
(%)
14
7 ソーシャルビジネスの成果~47.3%の企業が目標を達成~
○ 取り組んでいるソーシャルビジネスの成果をみると、「当初の目標以上に成果が上がっている」とする企業の割合が13.8%、「当初の目標 通りに成果が上がっている」とする企業の割合が33.5%と、合計47.3%の企業が目標とする成果を上げている(表-3)。○ 社会的問題との関わり別に成果をみると、「社会的問題を解決するために、本法人を設立した」企業では合計49.7%の企業が目標を達成し ているのに対し、「本法人の目的ではないが、社会的問題を解決するための事業を営んでいる」企業では、合計27.0%の企業が目標を達成 するにとどまる(表-3)。○ ソーシャルビジネスの成果と関係のある取り組みとして、「事業・取り組みの内容を法人の外に周知している」こと、および「他の法人と 連携している」ことが挙げられる。どちらも該当する企業の方が目標を達成している企業の割合が多い(図-23)。
(注) 社会的問題を解決するための事業・取り組みを他の法人・団体と連携して進
めているものを「他の法人と連携している」とした。
社会的問題を解決するために、本法人を設立した(n=930) 14.6 35.1 44.3 6.0
表-3 社会的問題との関わり別にみたソーシャルビジネスの成果
当初の目標以上に成果が上がって
いる
当初の目標通りに成果が上がって
いる
目標には届かないが、成果は上がっている
成果はあまり上がっていない
(単位:%、複数回答)
本法人の目的ではないが、社会的問題を解決するための事業を営んでいる(n=100) 8.0 19.0 59.0 14.0
社会的問題を解決する法人や団体を支援する事業を行っている(n=57) 10.5 33.3 40.4 15.8
ソーシャルビジネス全体(n=1,087) 13.8 33.5 45.4 7.3 9.6
15.0
6.2
17.0
30.5
34.3
32.1
33.9
45.8
45.5
47.1
44.7
14.1
5.3
14.6
4.3
他の法人とは
連携していない
(n=249)
他の法人と
連携している
(n=814)
事業・取り組みの内容を
法人の外に周知していない
(n=308)
事業・取り組みの内容を
法人の外に周知している
(n=763)
図-23 活動内容の周知、他法人との連携と
ソーシャルビジネスの成果 (単位:%)
当初の目標以上に
成果が上がってい 当初の目標通りに
成果が上がっている 目標には届かないが、
成果は上がっている
成果はあまり
上がっていない
15
8 ソーシャルビジネスの課題~人材の確保、育成と売り上げアップ~
○ ソーシャルビジネスを進めていく上での課題をみると(三つまでの複数回答)、最も多いのは「人手の確保」の49.0%で、以下「従業員の 能力向上」の41.9%、「売り上げの増加」の35.4%、「行政との連携」の29.3%が続いている(図-24)。○ ソーシャルビジネスが成果を上げるために必要な支援策をみると(三つまで複数回答)、「人材の育成、紹介」が46.7%で最も多く、以下 「税制上の優遇」の33.2%、「社会的問題に関する啓蒙、啓発」の32.3%が続いている(図-25)。
(注)三つまでの複数回答。
49.0
41.9
35.4
29.3 27.1
16.9
11.3 10.7 10.0 9.7 9.6 9.6 8.4 7.6
3.2
0
10
20
30
40
50
60
人手の確保
従業員の能力向上
売り上げの増加
行政との連携
運転資金の確保
社会的問題への啓蒙活動
経営陣の能力向上
事業・取り組みの周知
設備資金の確保
製品・サービスの開発・改良
経費の削減
他の法人との連携
技術・ノウハウの開発
設備の改良・改善
その他
図-24 ソーシャルビジネスを進めて行く上での課題 (%)
(n=1,120) 46.7
33.2 32.3 29.9
20.0
15.1 14.1
10.3 8.7 8.1 7.2 6.9 6.4
2.8 1.9 5.1
3.4
0
10
20
30
40
50
人材の育成、紹介
税制上の優遇
社会的問題に関する啓蒙、啓発
活動場所、設備の提供
官公庁の発注における優遇
公的な融資制度の拡充
活動の評価
NPO法人の認定要件の緩和
事業・取り組みに関するコンサルティング
取引先の紹介、ビジネスマッチング
経営全般に関するコンサルティング
成功事例の紹介、PR
専門の相談窓口の設置
新たな法人格の制定
信用保証の対象になる法人の増加
その他
とくにない
図-25 成果を上げるために必要な支援策
(%)
(注)三つまでの複数回答
(n=1,098)
16
9 まとめ
○ ソーシャルビジネスに取り組んでいる企業では、女性の代表者が31.6%、女性従業者の割合が平均で68.7%となっている。ソーシャルビジ ネスに取り組んでいない企業ではそれぞれ8.1%、34.3%であり、ソーシャルビジネスでは女性の役割が大きい。
○ 売上高でみると、ソーシャルビジネスに取り組んでいる企業には小規模な企業が多く、ソーシャルビジネスの売り上げだけでは赤字の企業 も多い。社会的問題を解決しながら収益を上げることの難しさがうかがえる。ただし、ソーシャルビジネスに取り組んでいる企業には補助金 や寄付金を得ているものが多く、これらを含めた企業全体の採算をみると、黒字企業が69.2%を占める。
○ 事業規模が小さい企業が多いため、金融機関から借り入れがあるソーシャルビジネスは25.2%と少ない。利用している金融機関は、主に地 方銀行、信用金庫といった地域金融機関と日本政策金融公庫である。
○ 社会的問題を解決するというソーシャルビジネスのミッションについて成果が上がっているかどうかをみると、目標を達成している企業の 割合は47.3%と半数に届いていない。ただ、活動内容を外部に周知している企業や他の法人と連携して取り組みを進めている企業は、これら を行っていない企業に比べて目標を達成している企業の割合が多い。ソーシャルビジネスでは、外部の人や企業との関係を築いていくことが 重要である。
○ ソーシャルビジネスを進めていく上での課題として、人手の確保や従業員の確保を挙げる企業が多い。企業の自助努力だけでなく、社会的 問題やソーシャルビジネスに関心をもつ人材を育成することが望まれる。
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