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平成 22 年度内閣府経済社会総合研究所委託事業 セルフネグレクト状態にある高齢者に関する調査―幸福度の視点から 報告書 平成23年3月

セルフネグレクト状態にある高齢者に関する調査― …山形県 35 18 51.4和歌山県 30 15 50.0 福島県 59 37 62.7鳥取県 19 8 42.1 茨城県 44 25 56.8島根県

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平成 22 年度内閣府経済社会総合研究所委託事業

セルフネグレクト状態にある高齢者に関する調査―幸福度の視点から

報告書

平成23年3月

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目 次

Ⅰ.はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

1.調査概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2

Ⅱ.市区町村調査の結果

1.高齢者見守りネットワークの形成状況

(1) ネットワークの整備状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5

(2) 参加機関及び専門職 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7

(3) 対象者となる高齢者の範囲 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8

(4) 実施体制 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9

(5) 注意を払っている問題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9

(6) 成果と課題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10

2.セルフネグレクト状態にある高齢者の把握状況

(1) セルフネグレクト状態にある高齢者についての認識と理由 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12

(2) セルフネグレクト状態にある高齢者の把握状況及び件数 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13

Ⅲ.地域包括支援センター調査及び民生委員調査の結果

1.支援の必要な高齢者の把握状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14

2.セルフネグレクト状態にある高齢者報告件数 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15

3.報告事例

(1) 年齢、性別、家族形態、世話をする人(話し相手)、家族・親族との親密度 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20

(2) 建物の形態及び風呂・トイレ・台所・冷暖房の有無 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22

(3) 住居の状態 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 23

(4) 年金受給・生活保護受給・勤労収入の有無 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24

(5) 日常生活自立度、認知症自立度、介護保険認定、障害者手帳 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25

(6) 健康状態 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 27

(7) 緊急事態への対応能力とリスク状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28

(8) セルフネグレクト状態になった時期、きっかけ・理由 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29

4.支援の成果とその方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30

5.支援において困難に感じた点 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 31

6.見守りネットワークの果たした役割 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 32

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Ⅳ.本人調査の結果

1.本人の状況

(1) 調査当日の様子 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 33

(2) 日常生活 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 34

(3) 健康状態 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 37

(4) 経済状態 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 40

(5) 住居環境 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 41

2.本人の意識

(1) 周囲の人(家族・親族・近隣住民等)への意識 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 42

(2) 楽しみにしていること、つらかったこと ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 44

(3) 困っていること ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 46

3.支援者から見た状況

(1) セルフネグレクト状態になった要因と背景 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 48

(2) 家族・親族や近隣住民との人間関係 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 50

(3) 実施している支援策及び今後必要な支援策 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 54

Ⅴ.用語の解説 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 55

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1

Ⅰ.はじめに

一人暮らしなどの高齢者の中には生活に関する能力や意欲が低下し、自分で身の周りのことなどができないなどの

ために、客観的に見ると本人の人権が侵害されている事例があり、これは「セルフネグレクト(自己放任)」と呼ばれてい

るが、 近の事例研究などからも、介護や地域とのつながりを拒否し、自傷により自らの健康や安全を脅かす層が少な

からず存在することが明らかになってきている。また、地域から孤立しているだけでなく、家族からも疎外されているよう

な事例もあり、孤独死につながる可能性も高く、その観点からも幸福度が非常に低い層であると考えられる。

本調査では、高齢化社会の中で更なる増加が予想されるセルフネグレクト状態にある高齢者について、全国の市区

町村高齢者福祉担当課に対して対応状況などに関するアンケート調査を実施するとともに、セルフネグレクト状態の高

齢者に接する機会のある全国の地域包括支援センター職員及び民生委員に対するアンケート調査を実施した。さらに、

セルフネグレクト状態にある高齢者本人にも聞き取りを行い、幸福度の観点から問題点の整理を行った。

* セルフネグレクト(自己放任)とは、在宅で「高齢者が、通常一人の人として生活において当然行うべき行為を行わない、

或いは、行う能力がないことから、自己の心身の安全や健康が脅かされる状態に陥ること(津村智恵子「セルフ・ネグレクト

防止活動に求める法的根拠と制度的支援」(高齢者虐待防止研究、2009))」とします。これは、認知症などのような疾患か

ら適切な判断力が欠けている、又は、様々な事情で生活意欲が低下しているために自己放任のような状態になっている場

合(無意図的)と、判断力や認知力が低下していないが本人の自由意志によって自己放任のような状況になっている場合

(意図的)を含みます。

<セルフネグレクトの例>

①家の前や室内にゴミが散乱した中で住んでいらっしゃる方

②極端に汚れている衣類を着用したり、失禁があっても放置している方

③窓や壁などに穴が開いていたり、構造が傾いていたりする家にそのまま住み続けていらっしゃる方

④認知症であるにも関わらず介護サービスを拒否されている方

⑤重度の怪我を負っているにも関わらず治療を拒否されている方 など

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2

都道府県 市区町村数 有効回収票数 有効回収率 都道府県 市区町村数 有効回収票数 有効回収率全体 1,750 982 56.1 三重県 29 14 48.3北海道 179 102 57.0 滋賀県 19 7 36.8青森県 40 24 60.0 京都府 26 11 42.3岩手県 34 22 64.7 大阪府 43 26 60.5宮城県 35 16 45.7 兵庫県 41 25 61.0秋田県 25 10 40.0 奈良県 39 15 38.5山形県 35 18 51.4 和歌山県 30 15 50.0福島県 59 37 62.7 鳥取県 19 8 42.1茨城県 44 25 56.8 島根県 21 9 42.9栃木県 27 18 66.7 岡山県 27 12 44.4群馬県 35 21 60.0 広島県 23 16 69.6埼玉県 64 45 70.3 山口県 19 10 52.6千葉県 54 34 63.0 徳島県 24 9 37.5東京都 62 46 74.2 香川県 17 10 58.8神奈川県 33 20 60.6 愛媛県 20 13 65.0新潟県 30 19 63.3 高知県 34 8 23.5富山県 15 8 53.3 福岡県 60 38 63.3石川県 19 8 42.1 佐賀県 20 13 65.0福井県 17 8 47.1 長崎県 21 15 71.4山梨県 27 11 40.7 熊本県 45 25 55.6長野県 77 42 54.5 大分県 18 7 38.9岐阜県 42 24 57.1 宮崎県 26 10 38.5静岡県 35 27 77.1 鹿児島県 43 22 51.2愛知県 57 36 63.2 沖縄県 41 23 56.1

1.調査概要

本調査は、全国の①市区町村、②地域包括支援センター、③民生委員のそれぞれを対象としたアンケート調

査及び④セルフネグレクト状態にある高齢者への聞き取り調査からなる。

各調査の概要は以下の通りである。

① 市区町村調査

全国 1,750 市区町村を対象として、郵送配布、郵送回収により実施し、また、インターネットでも回答できる

ようにした。

有効回収票数:982 票(有効回収率:56.1%)

なお、問3(セルフネグレクト状態にある高齢者の把握状況)のみ電話でのアンケートを併用した。

有効回答数:1,637 自治体(有効回答率:93.5%)

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3

都道府県 配布票数 有効回収票数 有効回収率 都道府県 配布票数 有効回収票数 有効回収率全体 4,527 1,884 41.6 三重県 53 26 49.1北海道 252 113 44.8 滋賀県 29 8 27.6青森県 58 37 63.8 京都府 114 37 32.5岩手県 49 25 51.0 大阪府 197 98 49.7宮城県 107 52 48.6 兵庫県 304 78 25.7秋田県 46 25 54.3 奈良県 59 19 32.2山形県 59 17 28.8 和歌山県 42 16 38.1福島県 119 59 49.6 鳥取県 33 12 36.4茨城県 60 36 60.0 島根県 41 7 17.1栃木県 85 39 45.9 岡山県 56 22 39.3群馬県 52 27 51.9 広島県 191 81 42.4埼玉県 233 94 40.3 山口県 36 19 52.8千葉県 115 52 45.2 徳島県 33 11 33.3東京都 384 138 35.9 香川県 24 13 54.2神奈川県 293 104 35.5 愛媛県 42 17 40.5新潟県 114 51 44.7 高知県 37 11 29.7富山県 58 16 27.6 福岡県 121 46 38.0石川県 69 16 23.2 佐賀県 44 25 56.8福井県 29 11 37.9 長崎県 41 19 46.3山梨県 48 11 22.9 熊本県 83 40 48.2長野県 119 46 38.7 大分県 53 12 22.6岐阜県 68 36 52.9 宮崎県 59 25 42.4静岡県 125 67 53.6 鹿児島県 69 34 49.3愛知県 180 88 48.9 沖縄県 44 19 43.2

不明 29

都道府県 配布票数 有効回収票数 有効回収率 都道府県 配布票数 有効回収票数 有効回収率全体 28,654 11,806 41.2 三重県 446 171 38.3北海道 1,686 703 41.7 滋賀県 371 133 35.8青森県 408 208 51.0 京都府 605 206 34.0岩手県 440 194 44.1 大阪府 1,830 626 34.2宮城県 615 314 51.1 兵庫県 1,042 360 34.5秋田県 357 175 49.0 奈良県 378 155 41.0山形県 372 168 45.2 和歌山県 318 148 46.5福島県 588 328 55.8 鳥取県 196 95 48.5茨城県 575 288 50.1 島根県 261 110 42.1栃木県 403 171 42.4 岡山県 467 172 36.8群馬県 459 258 56.2 広島県 615 354 57.6埼玉県 1,050 512 48.8 山口県 395 200 50.6千葉県 934 469 50.2 徳島県 236 70 29.7東京都 1,120 555 49.6 香川県 236 144 61.0神奈川県 1,178 285 24.2 愛媛県 385 200 51.9新潟県 601 270 44.9 高知県 317 142 44.8富山県 294 73 24.8 福岡県 1,367 541 39.6石川県 318 146 45.9 佐賀県 247 108 43.7福井県 239 100 41.8 長崎県 437 147 33.6山梨県 328 134 40.9 熊本県 595 310 52.1長野県 789 361 45.8 大分県 318 88 27.7岐阜県 649 329 50.7 宮崎県 388 88 22.7静岡県 911 301 33.0 鹿児島県 611 234 38.3愛知県 1,750 491 28.1 沖縄県 529 150 28.4

不明 21

② 地域包括支援センター調査

全国 4,527 箇所の地域包括支援センターを対象として、郵送配布、郵送回収により実施し、また、インター

ネットでも回答できるようにした。

有効回収票数:1,884 票(有効回収率:41.6%)

③ 民生委員調査

全国の市区町村に対し、各自治体の民生委員定数の約1割に当たる数の調査票を送付し、民生委員への

配布を依頼した。回収については、直接、内閣府に郵送してもらった。

配布票数:28,654 票。

有効回収票数:11,806 票(有効回収率:41.2%)

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4

名前 役職津村智恵子 甲南女子大学看護リハビリテーション学部長岸恵美子 帝京大学医療技術学部地域看護学教授菅野道生 東日本国際大学福祉環境学部准教授野村祥平 国立病院機構久里浜アルコール症センター清水谷諭 世界平和研究所主任研究官小川栄二 立命館大学産業社会学部教授田中里美 広島国際学院大学現代社会学部准教授

④ 本人調査

地域包括支援センター調査及び民生委員調査で回答のあった事例の中から、センター職員又は民生委

員の協力が得られ、また、本人の同意が得られた事例について聞き取り調査を実施した。

本人への聞き取りを行うに当たっては、事前に、担当のセンター職員、民生委員に対しても本人の状況に

関する調査を実施した。

調査対象者数:全国 138 人

各調査は、いずれも内閣府が(株)タイム・エージェントに委託して実施した。

なお、本調査の実施に当たっては、以下のメンバーからなる助言グループより適宜意見を頂いた。

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5

N= 982

一部地域で実施(7.9%)

モデル事業を実施中(2.5%)現在検討・準備中

(39.5%)

現時点では実施予定なし(23.6%) 全地域で実施済み

(26.4%)

N= 362

町内会・自治会単位(35.6%)

無回答(1.1%)その他

(23.8%)

中学校区単位(3.0%)

小学校区単位(8.8%)

地域包括支援センター又はそのブランチ単位

(27.6%)

Ⅱ.市区町村調査の結果

1.高齢者見守りネットワークの形成状況

(1) ネットワークの整備状況

認知症に限らず高齢者について様々な機関や専門職などが見守りを行うためのネットワーク整備を行っ

ているかを尋ねたところ、「全地域で実施済み」の自治体は 26.4%であった。「一部地域で実施」(7.9%)、

「モデル事業を実施中」(2.5%)を合わせると何らかの形でネットワークを整備している自治体は 36.8%とな

る。

また、現在検討・準備中の自治体は 39.5%、現時点では実施の予定のない自治体は 23.6%となってい

る。

貴市区町村では、認知症に限らず高齢者について様々な機関や専門職などが見守りを行うための

ネットワーク整備を行っていますか【一つだけ○】。

一部地域での実施やモデル事業も含め、高齢者見守りネットワークを整備している自治体にその対象地

域の範囲を尋ねたところ、「町内会・自治会単位」とした自治体が 35.6%で も多く、次いで、「地域包括支

援センター又はそのブランチ単位」が 27.6%、「その他」が 23.8%となっている。

「その他」の内容としては、「自治体全域」「合併前の自治体単位」が多い。

[「全地域で実施済み」「一部地域で実施」「モデル事業を実施中」の自治体]

「見守りネットワークの対象地域の範囲は、概ねどれに当てはまりますか【一つだけ○】

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6N= 78

地域住民や関係機関の意欲が高い(55.1%)

無回答(2.6%)

その他(14.1%)

過疎化が進展している(1.3%)

高齢化が著しい(12.8%)

従来から見守り活動が活発な地域である(14.1%)

行政がかかわらなくても、既に地域に見守り活動があるため

住民同士のつながりが強いため

民生委員や地区福祉委員等に新たな負担を強いることになるため

行政内に専門職を確保するのが難しいため

関係機関の連携が難しいため

行政内に担当部署を設置するのが難しいため

民生委員や地区福祉委員等ネットワークの担い手となる人が不足しているため

地域包括支援センターの体制が整っていないため

ネットワーク整備のための予算がないため

特に必要性を感じていないため

その他

無回答

N=232

31.0

27.2

24.1

18.1

15.9

13.8

9.9

8.6

8.6

10.8

33.6

0.4

0 10 20 30 40 (%)

実施予定がない自治体のその理由としては、既に地域での受け皿があることを挙げる自治体が多く、「行

政がかかわらなくても、既に地域に見守り活動があるため」(31.0%)、「住民同士のつながりが強いため」

(27.2%)の順となっている。また、「民生委員や地区福祉委員等に新たな負担を強いることになるため」が

24.1%と、ネットワークの担い手の負担増を理由として挙げる自治体も多くなっている。その他、「行政内に

専門職を確保するのが難しいため」(18.1%)、「関係機関の連携が難しいため」(15.9%)、「行政内に担当

部署を設置するのが難しいため」(13.8%)と、行政内部での組織の構築・連携が困難とする自治体もある。

「その他」の内容としては、「民生委員や在宅介護支援センター等による見守りを行っている。」

「地域包括支援センター、民生委員、事業者などがそれぞれの立場で高齢者の見守りを行っており、

ネットワーク化と言える段階ではないが、お互いに有機的に連携を図って対応するなど現状でも機

能している。」「ネットワークを作らなくても包括支援センターや民生委員からの情報で把握できる

ため。」など、ネットワークの構築は行わないものの、既存の体制等を活用して対応しているとす

る回答が多い。 [「現時点では実施予定なし」の自治体]実施予定がない理由として も当てはまるものに三つまで○をして下さい。

一部地域で実施している自治体に、当該一部地域を高齢者見守りネットワークの対象とするに当たって も重

視したことを尋ねたところ、「地域住民や関係機関の意欲が高い」と回答した自治体が も多く過半数の 55.1%

を占めている。

[「一部地域で実施」の自治体]当該一部地域を見守りネットワークの対象地域とするに当たって

も重視したことは何ですか【一つだけ○】。

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7

地域包括支援センター

地区社会福祉協議会

民生委員協議会

町内会・自治会

老人クラブ

警察署

介護保険事業所

消防署

在宅介護支援センター

保健所・保健センター

医師会

NPO・ボランティアグループ

郵便局

新聞配達店

商店会・商店会連合会

歯科医師会

宅配事業者

薬剤師会

牛乳配達店

消費生活センター

司法書士会

弁護士会

その他

民生委員

地区福祉委員・地区社会福祉協議会等関係者

ケアマネジャー

医師・歯科医師等医療関係者

社会福祉士有資格者

看護師有資格者

健康福祉委員・健康づくりサポーター

弁護士・司法書士等司法関係者

その他

無回答 N=362

77.9

74.0

66.3

55.2

43.1

42.0

40.3

32.9

26.0

26.0

22.4

21.5

20.7

15.5

12.7

9.4

7.7

6.9

6.9

5.5

4.4

3.6

27.9

82.6

46.4

45.0

19.3

18.0

13.5

6.9

4.7

9.7

1.7

50.3

19.6

8.0

6.6

0.8

0.3

0.3

0.0

1.4

1.1

0.0

0.6

0.3

0.3

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

0.3

0.0

0.0

3.9

6.4

0 20 40 60 80 100 (%)

参加機関又は専門職

中核機関

(2) 参加機関及び専門職

一部地域での実施やモデル事業も含め、高齢者見守りネットワークを整備している自治体に、参加してい

る機関を尋ねたところ、 も多いのは「地域包括支援センター」(77.9%)であり、次いで、「地区社会福祉協

議会」(74.0%)、「民生委員協議会」(66.3%)の順となっている。また、「町内会・自治会」(55.2%)や「老人

クラブ」(43.1%)といった地域の組織や、「警察所」(42.0%)、「消防署」(32.9%)といった安心・安全に関

わる行政機関が参加している自治体も多い。その他、「介護保険事業所」が参加している自治体も 40.3%と

なっている。

中心的な役割を果たしている機関(中核機関)については、「地域包括支援センター」とする自治体が

も多く半数の 50.3%を占める。次いで多いのが「地区社会福祉協議会」で 19.6%となっている。

高齢者見守りネットワークに参加している専門職としては、民生委員が も多く、82.6%の自治体で参加

している。次いで、「地区福祉委員・地区社会福祉協議会等関係者」が 46.4%、「ケアマネジャー」が

45.0%となっている。

高齢者の見守りを行うためのネットワークに参加している機関又は専門職について当てはまるもの全てに○をして下さい。

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8

N= 362特に限定していない

(73.5%)

無回答(1.9%)

希望者のみに限定してい

(24.6%)

N= 362

65歳以上(58.6%)

無回答(1.7%)

その他(2.2%)

年齢区分は特段、設けていない(28.5%)

80歳以上(0.3%)

75歳以上(4.1%)70歳以上

(4.7%)

単身高齢者世帯

夫婦のどちらか一方又は双方が高齢者の世帯

親子とも高齢者の世帯

単身高齢者世帯以外で高齢者が日中独居となる世帯

新規転入した高齢者のみの世帯

その他 N=142

96.5

53.5

43.0

26.1

12.7

19.7

0 20 40 60 80 100(%)

(3) 対象者となる高齢者の範囲

ネットワークでの見守り対象の高齢者を希望者のみに限定しているかを尋ねたところ、限定している自治

体は 24.6%にとどまり、特に限定していない自治体が 73.5%を占めた。

見守り対象の高齢者は希望した高齢者のみに限定していますか【一つだけ○】。

見守り対象者の年齢については、65 歳以上とする自治体が過半数の 58.6%となっており、また、「年齢区

分は特段、設けていない」とする自治体も 28.5%となっている。

何歳以上の高齢者を見守りネットワークでの見守り対象としていますか【一つだけ○】。

高齢者世帯の類型の違いにより、見守りネットワークの対象になるかどうか区別している自治体は約4割

(39.2%)となっている。

それらの自治体では、「単身高齢者世帯」については 96.5%とほとんどの自治体で見守り対象としており、

「夫婦のどちらか一方又は双方が高齢者の世帯」については 53.5%、「親子とも高齢者の世帯」については

43.0%の自治体が見守り対象としている。

[高齢者世帯の類型の違いにより、見守りネットワークの対象になるかどうか区別している自治体]

どの世帯類型を見守り対象としていますか【当てはまるもの全てに○】。

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9

介護サービスが必要と思われるのに受けていない者

緊急時の支援者がいない者

医療サービスが必要と思われるのに受けていない者

地域との関係を遮断している者

身体が不自由な者

ひきこもりの者

ゴミ屋敷状態にある者

その他セルフネグレクト状態にある者

生活保護を受けている者

その他

無回答 N=362

72.7

66.3

56.1

52.5

51.9

45.9

43.4

39.5

21.8

8.6

6.1

0 20 40 60 80(%)

(4) 実施体制

見守りネットワークの実施体制ついて、173 自治体より組織図が送られてきた。

「(2) 参加機関及び専門職」でも見たとおり、地域包括支援センター、社会福祉協議会、行政がネットワー

クの中心となる場合がほとんどであるが、民生委員が中心となるネットワークもあった。また、ボランティアが

中心となっているのが2自治体、警察、公立病院が中心となっているのが各1自治体であった。

(5) 注意を払っている問題

高齢者見守りネットワークを通じて問題発見に努め、ネットワーク参加者間で解決を図っている課題として、

具体的にどのような問題に注意を払っているかを尋ねたところ、「介護サービスが必要と思われるのに受け

ていない者」が 72.7%で も多く、次いで、「緊急時の支援者がいない者」が 66.3%となっている。また、

「医療サービスが必要と思われるのに受けていない者」(56.1%)、「地域との関係を遮断している者」

(52.5%)、「身体が不自由な者」(51.9%)についても過半数の自治体が注意を払っている。その他、「ひき

こもりの者」(45.9%)、「ゴミ屋敷状態にある者」(43.4%)、「その他セルフネグレクト状態にある者」(39.5%)

についても約4割以上の自治体が注意を払っていることが分かる。

高齢者見守りネットワークを通じて問題発見に努め、ネットワーク参加者間で解決を図っている課題として、

具体的にどのような問題に注意を払っていますか【当てはまるもの全てに○】。

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10

N= 362

大きな成果が見られた(7.7%)

無回答(2.5%)

現時点では不明(29.3%)

ほとんど成果は見られていない(1.1%)

あまり成果は見られていない(5.0%)

ある程度成果が見られた(54.4%)

問題を抱える高齢者の情報把握がスムーズになった

関係機関・専門職間の連携がスムーズになった

緊急事態にある高齢者が救助される事例が見られた

高齢者の日常的な困りごとを近隣住民が自主的に支援する事例が見られた

高齢者の孤立状態が解消された事例が見られた

困難なことがあったときに相談してくれる高齢者が増えた

地域住民どうしのつながりが強くなった

その他 N=225

64.0

55.6

47.6

38.2

36.0

35.1

30.7

4.4

0 20 40 60 80 (%)

(6) 成果と課題

見守りネットワークの整備により高齢者支援に何らかの成果が見られたかを尋ねたところ、「ある程度成果

が見られた」とする自治体が 54.4%で、「大きな成果が見られた」(7.7%)と合わせると 62.2%の自治体が、

成果があったとしている。一方、「現時点では不明」とする自治体も 29.3%となっている。

見守りネットワークの整備により高齢者支援に何らかの成果が見られましたか【一つだけ○】

「大きな成果が見られた」「ある程度成果が見られた」と回答した自治体に、具体的にどのような成果があ

ったか尋ねたところ、「問題を抱える高齢者の情報把握がスムーズになった」を挙げる自治体が 64.0%と

も多く、次いで、「関係機関・専門職間の連携がスムーズになった」が 55.6%となっており、情報把握や組織

間の連携強化を成果とする自治体が多いことが分かる。また、具体的に「緊急事態にある高齢者が救助さ

れる事例が見られた」ことを挙げる自治体も半数近い 47.6%となっている。

[「大きな成果が見られた」「ある程度成果が見られた」自治体]

具体的にどのような成果がありましたか【当てはまるもの全てに○】。

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11

関係機関との情報共有等による連携の強化

見守り対象高齢者の隣人等地域住民の理解・協力

見守りネットワークに参加する機関の拡大・充実

見守り対象高齢者の緊急時における医療機関や福祉施設の協力

本人や周囲の人が気軽に相談できるよう窓口の充実

見守り対象高齢者の家族の理解・協力

状況が悪化する前の積極的な直接介入

研修やワークショップ等を通じた見守りに携わる人の能力向上

対応マニュアルの作成

見守りネットワークで対応するか否かの判断や基準の明確化

見守りネットワークに参加している各機関での見回りの専任者の配置

その他

特になし

無回答 N=362

63.5

56.4

29.8

25.1

24.3

20.4

14.4

12.4

8.0

8.0

2.8

3.9

0.3

3.3

0 20 40 60 80 (%)

見守りネットワークでの見守りを効果的に行う上での課題としては、過半数の自治体が「関係機関との情

報共有等による連携の強化」(63.5%)、「見守り対象高齢者の隣人等地域住民の理解・協力」(56.4%)の

二点を挙げている。

見守りネットワークでの見守りを効果的に行う上での課題は何ですか【 も重要と思うもの三つまで○】

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12

N= 982ある程度重要な問題と認識している

(61.4%)

あまり重要な問題と認識していない(4.4%)

全く重要な問題と認識していない(0.0%)

分からない(3.9%)

無回答(0.1%)

非常に重要な問題と認識している(30.2%)

N= 900

生命などの危機としての問題があるため(78.8%)

無回答(0.9%)

その他(1.6%)地域の近隣住民への影響のため

(8.2%)

制度の狭間にある問題であるため(10.6%)

2.セルフネグレクト状態にある高齢者の把握状況

(1) セルフネグレクト状態にある高齢者についての認識と理由

セルフネグレクト状態にある高齢者について、現時点でどのような認識を持っているかを尋ねたところ、

「非常に重要な問題と認識している」が 30.2%、「ある程度重要な問題と認識している」が 61.4%となってお

り、両者を合わせると9割の自治体が重要な問題と認識している。

セルフネグレクト状態にある高齢者について貴市区町村における現時点での認識はどのようなものですか。

も近いものをお答え下さい【一つだけ○】。

重要な問題と認識していると回答した自治体に、その理由として も大きなもの尋ねたところ、8割

(78.8%)の自治体が「生命などの危機としての問題があるため」を挙げている。

[「非常に重要な問題と認識している」「ある程度重要な問題と認識している自治体」]

も大きな理由は何ですか【 も当てはまるもの一つだけ○】。

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13

N=1,637

全数把握している(6.6%)

無回答(0.2%)

特に把握していない(40.6%)

セルフネグレクト状態の高齢者がいるという情報は得ているが、件数の把握はし

ていない(33.5%)

全件数については把握していないが、大部分について把握している

(19.1%)

N= 280

あまり変わらない(32.1%)減少している

(1.1%)

分からない(22.1%)

無回答(18.9%)

増加している(25.7%)

(2) セルフネグレクト状態にある高齢者の把握状況及び件数

セルフネグレクト状態にある高齢者について、「全数把握している」自治体は 6.6%にとどまっている。また、

「全件数については把握していないが、大部分については把握している」とする自治体は 19.1%となってお

り、両者を合わせても、件数まで把握している自治体は全体の4分の1にとどまっている。一方、「セルフネ

グレクト状態の高齢者がいるという情報は得ているが、件数の把握はしていない」自治体は 33.5%となって

おり、「特に把握していない」自治体も 40.6%を占めている。

*当設問については、電話によるアンケートを併用した。

貴市区町村ではセルフネグレクト状態にある高齢者について把握していますか【一つだけ○】。

「全数把握している」108 自治体のうち、2009 年度にセルフネグレクト状態にある高齢者が確認された自

治体は 22 自治体であり、全 38 件であった。

郵送アンケートで、「全数把握している」又は「大部分について把握している」自治体に三年前と比較した

状況を尋ねたところ、全体の4分の1の 25.7%の自治体が「増加している」と回答した。一方、「減少してい

る」は 1.1%にとどまっている。

[「全数把握している」「大部分について把握している」自治体 *郵送アンケートのみ]

セルフネグレクト状態にある高齢者の数は3年前と比べてどうなっていると感じますか【一つでだけ○】。

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14

80    100(%) 0 20 40 60地域包括支援センター

《N=1,884》民 生 委 員

《N=11,806》

0.3 38.0 56.6

12.3 69.3 16.62.8

0.9 0.9

2.2

全て把握できている ほとんど把握できている

あまり把握できずにいる 無回答ほとんど把握できずにいる

Ⅲ.地域包括支援センター及び民生委員調査の結果

1.支援の必要な高齢者の把握状況

地域包括支援センター及び民生委員に対し、担当地区に住んでいる高齢者のうち、支援の必要な人の生活

状況をどの程度把握できているかを尋ねたところ、地域包括支援センターでは、「あまり把握できずにいる」が

も多く過半数の 56.6%を占め、また、「全て把握できている+ほとんど把握できている」は4割程度の 38.3%であ

った。一方、民生委員では、「ほとんど把握できている」という人が 69.3%を占め、「全て把握できている」と合わ

せると 81.6%を占めている。

地域の高齢者の状況について、民生委員がより細かな把握を行っていることがうかがえる。

担当地区の住んでいる高齢者のうち、支援の必要な方の生活状況についてどの程度把握できていますか【一つだけ○】。

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15

都道府県 センター数 件数 内疑義件数 都道府県 センター数 件数 内疑義件数

%1センタ当たり平均

1センタ当たり平均

%1センタ当たり平均

1センタ当たり平均

全体 1,314 4,345 1,065 三重県 17 53 16100.0 3.31 0.81 1.3 3.12 0.94

北海道 58 123 43 滋賀県 5 12 24.4 2.12 0.74 0.4 2.40 0.40

青森県 25 54 10 京都府 28 82 251.9 2.16 0.40 2.1 2.93 0.89

岩手県 14 33 7 大阪府 74 287 751.1 2.36 0.50 5.6 3.88 1.01

宮城県 36 98 27 兵庫県 54 168 382.7 2.72 0.75 4.1 3.11 0.70

秋田県 13 24 3 奈良県 14 28 101.0 1.85 0.23 1.1 2.00 0.71

山形県 11 32 13 和歌山県 8 37 20.8 2.91 1.18 0.6 4.63 0.25

福島県 35 139 28 鳥取県 10 20 12.7 3.97 0.80 0.8 2.00 0.10

茨城県 24 56 11 島根県 2 3 21.8 2.33 0.46 0.2 1.50 1.00

栃木県 30 70 12 岡山県 17 51 192.3 2.33 0.40 1.3 3.00 1.12

群馬県 20 94 37 広島県 62 187 381.5 4.70 1.85 4.7 3.02 0.61

埼玉県 72 268 88 山口県 14 34 105.5 3.72 1.22 1.1 2.43 0.71

千葉県 37 129 6 徳島県 8 16 32.8 3.49 0.16 0.6 2.00 0.38

東京都 113 605 156 香川県 13 31 28.6 5.35 1.38 1.0 2.38 0.15

神奈川県 82 328 89 愛媛県 13 50 76.2 4.00 1.09 1.0 3.85 0.54

新潟県 31 67 15 高知県 9 14 42.4 2.16 0.48 0.7 1.56 0.44

富山県 12 28 3 福岡県 41 110 140.9 2.33 0.25 3.1 2.68 0.34

石川県 11 37 2 佐賀県 15 35 80.8 3.36 0.18 1.1 2.33 0.53

福井県 7 11 3 長崎県 13 34 70.5 1.57 0.43 1.0 2.62 0.54

山梨県 7 17 1 熊本県 28 51 140.5 2.43 0.14 2.1 1.82 0.50

長野県 24 48 12 大分県 8 22 61.8 2.00 0.50 0.6 2.75 0.75

岐阜県 20 78 21 宮崎県 16 50 111.5 3.90 1.05 1.2 3.13 0.69

静岡県 43 142 54 鹿児島県 24 79 203.3 3.30 1.26 1.8 3.29 0.83

愛知県 62 214 34 沖縄県 10 98 204.7 3.45 0.55 0.8 9.80 2.00

不明 24 98 361.8 4.08 1.50

2.セルフネグレクト状態にある高齢者報告件数

地域包括支援センター及び民生委員に対し、2009 年度にセルフネグレクト状態にある高齢者(生活実態など

の詳細は不明であるものの疑いがある事例を含む)を何件把握したかを尋ねた。

* なお、2009 年度の件数とは、2009 年度に新たに認識した事例件数及び認識したのは 2009 年度以前であったが 2009 年4

月時点で依然としてセルフネグレクト状態にあった事例件数の合計とする。

地域包括支援センターからの報告件数

2009 年度に担当地区にセルフネグレクト状態にある高齢者がいたと回答したセンターは、全体の 70.0%

の 1,319 センターであった。そのうち、1,314 センターから件数についても回答があり、合計 4,345 人、1セン

ター平均で 3.3 人であった(内、セルフネグレクトの疑いがあると思われる件数は 1,065 件、1センター平均

で 0.8 人)。

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16

都道府県 委員数 件数 内疑義件数 都道府県 委員数 件数 内疑義件数

%委員一人当たり平均

委員一人当たり平均

%委員一人当たり平均

委員一人当たり平均

全体 3,212 5,055 1,522 三重県 40 58 10100.0 1.57 0.47 1.2 1.45 0.25

北海道 166 255 74 滋賀県 25 46 165.2 1.54 0.45 0.8 1.84 0.64

青森県 44 76 25 京都府 63 142 551.4 1.73 0.57 2.0 2.25 0.87

岩手県 45 65 23 大阪府 181 312 1011.4 1.44 0.51 5.6 1.72 0.56

宮城県 85 129 35 兵庫県 89 126 312.6 1.52 0.41 2.8 1.42 0.35

秋田県 43 84 18 奈良県 38 60 201.3 1.95 0.42 1.2 1.58 0.53

山形県 40 97 22 和歌山県 37 54 141.2 2.43 0.55 1.2 1.46 0.38

福島県 93 138 49 鳥取県 24 32 82.9 1.48 0.53 0.7 1.33 0.33

茨城県 72 112 27 島根県 26 39 132.2 1.56 0.38 0.8 1.50 0.50

栃木県 55 119 54 岡山県 34 49 91.7 2.16 0.98 1.1 1.44 0.26

群馬県 68 108 30 広島県 139 212 702.1 1.59 0.44 4.3 1.53 0.50

埼玉県 149 229 65 山口県 49 62 254.6 1.54 0.44 1.5 1.27 0.51

千葉県 152 212 59 徳島県 13 19 64.7 1.39 0.39 0.4 1.46 0.46

東京都 214 334 105 香川県 33 49 196.7 1.56 0.49 1.0 1.48 0.58

神奈川県 115 158 45 愛媛県 66 94 163.6 1.37 0.39 2.1 1.42 0.24

新潟県 72 113 28 高知県 33 46 102.2 1.57 0.39 1.0 1.39 0.30

富山県 17 52 15 福岡県 152 248 880.5 3.06 0.88 4.7 1.63 0.58

石川県 31 45 9 佐賀県 19 24 71.0 1.45 0.29 0.6 1.26 0.37

福井県 33 43 17 長崎県 39 59 181.0 1.30 0.52 1.2 1.51 0.46

山梨県 24 35 8 熊本県 75 117 380.7 1.46 0.33 2.3 1.56 0.51

長野県 101 144 43 大分県 24 38 113.1 1.43 0.43 0.7 1.58 0.46

岐阜県 90 128 44 宮崎県 20 26 32.8 1.42 0.49 0.6 1.30 0.15

静岡県 70 112 36 鹿児島県 67 124 342.2 1.60 0.51 2.1 1.85 0.51

愛知県 111 167 50 沖縄県 31 55 183.5 1.50 0.45 1.0 1.77 0.58

不明 5 9 10.2 1.8 0.20

民生委員からの報告件数

2009 年度に担当地区にセルフネグレクト状態にある高齢者がいたと回答した民生委員は、全体の 27.2%

の 3,213 人であった。そのうち、3,212 人から件数についても回答があり、合計 5,055 人、委員一人平均で

1.6 人であった(内、セルフネグレクトの疑いがあると思われる件数は 1,522 件、委員一人平均で 0.5 人)。

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17

都道府県 件数 都道府県 件数

全体 7,394 三重県 88

北海道 320 滋賀県 56

青森県 101 京都府 182

岩手県 73 大阪府 431

宮城県 167 兵庫県 208

秋田県 93 奈良県 69

山形県 105 和歌山県 76

福島県 209 鳥取県 38

茨城県 137 島根県 41

栃木県 159 岡山県 80

群馬県 169 広島県 262

埼玉県 398 山口県 73

千葉県 281 徳島県 31

東京都 759 香川県 64

神奈川県 419 愛媛県 114

新潟県 145 高知県 53

富山県 67 福岡県 289

石川県 58 佐賀県 53

福井県 46 長崎県 76

山梨県 39 熊本県 124

長野県 155 大分県 56

岐阜県 161 宮崎県 66

静岡県 201 鹿児島県 167

愛知県 292 沖縄県 143

地域包括支援センター及び民生委員の合計報告件数(重複部分調整)

地域包括支援センターからの報告件数と民生委員からの報告件数を合計し、今回の調査における全報

告件数を算出した。その際に、双方の重複分を調整するために、それぞれ自治体(市区町村)毎に集計を

行い、双方から回答のあった自治体については、両者の市区町村内の担当地域が完全に重複しているも

のと仮定して、件数の多い方を採り、合計した。(したがって、件数については、過小推計となっている可能

性がある。)

調整後の件数は、合計で 7,394 件であった。

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18

全国推計の件数

主に、悉皆調査を行った地域包括支援センターからの報告件数を基にして、仮に全国において同様に

悉皆調査が行われ、全数が報告された場合の件数の推計を行った。

ⅰ.地域包括支援センターから回答がなかったものの、市区町村から件数の回答があった自治体

地域包括支援センターからの回答がなかったものの、市区町村調査の問3でセルフネグレクト状態

にある高齢者について「1 全数把握している」と回答のあった自治体については、市区町村調査で回

答のあった件数を当該自治体におけるセルフネグレクト状態にある高齢者数とした。なお、当該市区町

村の民生委員からの回答が、自治体からの回答件数を上回る場合は、民生委員からの回答件数とし

ている。

ⅱ.全ての地域包括支援センターから回答のあった自治体

全ての地域包括支援センターから回答のあった自治体及び各地域包括支援センターの担当地区

の「高齢者のいる世帯数」の自治体別合計が、各自治体からの回答による「高齢者のいる世帯数」と一

致した自治体は、地域包括支援センターからの回答件数の自治体別合計を当該自治体におけるセル

フネグレクト状態にある高齢者数とした。

ⅰとⅱの合計は 2,197 人であった。

*1.「高齢者のいる世帯数」が無回答だった自治体については、2005 年国勢調査の「65 歳以上の親族のいる世帯

数」を現在の市区町村区分で集計し直したものを用いた。

*2.当該自治体の地域包括支援センターからの回答件数より民生委員からの回答件数が多いときは、民生委員の

件数を使用した。

*3.全ての地域包括支援センターから回答のあった自治体及び各地域包括支援センターの担当地区の「高齢者の

いる世帯数」の自治体別合計が、各自治体からの回答による「高齢者のいる世帯数」と一致した自治体でも件数

が無回答の場合は他の分類とした。

ⅲ.回答のあった地域包括支援センターの担当地区の高齢者世帯数の合計が全高齢者世帯数の5割

以上を占める自治体

回答のあった地域包括支援センターの担当地区における「高齢者のいる世帯数」の合計が、当該自

治体全ての「高齢者のいる世帯数」の5割以上を占める場合は、各地域包括支援センターからの回答

件数の合計をその担当地区の「高齢者のいる世帯数」の合計で除し、これを当該自治体全ての「高齢

者のいる世帯数」に乗じて比例配分した値を、当該自治体のセルフネグレクト状態にある高齢者数とし

た。

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19

*1.地域包括支援センターの自治体別集計を行うに当たっては、「高齢者のいる世帯数」が無回答だった票は除いた。

*2.セルフネグレクト状態にある高齢者の自治体別の集計件数が 0 の場合は、ⅳで推計を行った。

ⅳ.その他の自治体

まず、ⅰ、ⅱの自治体について、それぞれ、担当地区の「高齢者のいる世帯数」に対するセルフネグ

レクト状態にある高齢者の比率(出現率、1 万分比)を算出した。

次に、それらの自治体を人口1万人未満、1万人以上5万人未満、5万人以上の三つに区分し、それ

ぞれの区分毎に平均出現率を算出した(各区分毎に、出現率の合計を自治体数で除した)。その際、

平均値だけでなく、95%有意水準での上限値及び下限値も算出した(下表のとおり)。

これらの出現率を、ⅰ、ⅱ、ⅲ以外の自治体の人口区分に応じて、それらの「高齢者のいる世帯数」

に乗じることにより、セルフネグレクト状態高齢者数を推計した。

推計値は 5,569〜8,477 人(平均値 6,973 人)であった。

推計値

1万未満 1〜5万 5万以上

平均値 150 596 5,430 6,175上限 186 672 6,557 7,415下限 114 519 4,303 4,936平均値 475 195 127 798上限 589 220 154 963下限 361 170 101 633平均値 625 791 5,557 6,973上限 774 892 6,711 8,377下限 475 690 4,404 5,569

セルフネグレクト状態高齢者数合計

iv-i. 回答があった担当地区高齢者世帯数総計が全世帯の5割未満の市区町村 579iv-ii. 自治体、地域包括センター、民生委員全て、件数が無回答の市区町村 560

合計 1139

自治体数

ⅴ.全国推計件数

ⅰ~ⅳの結果から、全国においてセルフネグレクト状態にあると考えられる高齢者の報告件数の推

計値は、9,381〜12,190 人(平均値 10,785 人)となった。

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20

民 生 委 員《N=4,423》

80 100(%)地域包括支援センター

《N=2,638》

0 20 40 60

44.3 53.4 2.2

36.6 54.5 8.9

男性 女性 無回答

民 生 委 員《N=4,423》

80 100(%)地域包括支援センター

《N=2,638》

0 20 40 60

69.0 11.4 8.5

68.5 10.7 8.4 3.3

1.7

1.2

2.0

1.2

0.3

3.8

6.7

0.3

0.5

2.6

本人のみの独居 本人と子ども 高齢者の夫婦のみ

無回答

本人と子ども夫婦 本人と兄弟姉妹

本人と高齢者ではない配偶者のみ その他 分からない

民 生 委 員

《N=4,423》

80 100(%)地域包括支援センター

《N=2,638》

0 20 40 60

4.4 10.0 15.9 25.8

24.1

15.8

13.513.7 15.5

20.8

22.8 5.6

4.8

1.3

0.9

0.1

0.13.4

1.6

65歳未満 65~69歳 70~74歳

無回答

75~79歳 80~84歳

85~89歳 90~94歳 95~99歳 100歳以上

3.報告事例

地域包括支援センター及び民生委員に対し、把握している各事例の内容について尋ねたところ、地域包括支

援センターから 2,638 件、民生委員から 4,423 件の報告があった。

(1) 年齢、性別、家族形態、世話をする人(話し相手)、家族・親族との親密度

年齢

報告のあった事例の年齢は、80~84 歳が も多く地域包括支援センターで 25.8%、民生委員で

24.1%、次いで、75~79 歳が地域包括支援センターで 20.8%、民生委員で 22.8%となっている。また、

80 代(80~89 歳)が地域包括支援センターで 41.6%、民生委員で 37.6%、70 代(70~79 歳)が地域包

括支援センターで 36.7%、民生委員で 38.3%となっている。

性別

報告のあった事例の性別は、「女性」が地域包括支援センターで 53.4%、民生委員で 54.5%、「男性」

が地域包括支援センターで 44.3%、民生委員で 36.6%であり、いずれも「女性」の方が「男性」よりも多

い。

家族形態

報告のあった事例の家族形態を見ると、「本人のみの独居」が地域包括支援センターで 68.7%、民生

委員で 69.0%と 7 割近くを占め、次いで、「本人と子ども」(地域包括支援センター 11.4%、民生委員

10.7%)、「高齢者の夫婦のみ」(地域包括支援センター 8.5%、民生委員 8.4%)となっている。この上

位三者が地域包括支援センターで 88.8%、民生委員では 87.6%と9割近くを占めている。

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21

N=2,638

かなり親密(4.4%)

無回答(1.3%)分からない

(3.8%)

全く希薄(41.3%)

やや希薄(26.6%)

どちらでもない(12.3%)

やや親密(10.2%)

民 生 委 員《N=4,423》

80 100(%)地域包括支援センター

《N=2,638》

0 20 40 60

17.1 12.7 10.0

16.7 15.0 11.1

4.9

6.4

0.6

4.7

0.5

0.8

41.8

27.9 12.3

10.1

5.1

2.2

近隣住民 息子 娘

無回答

配偶者 ボランティア

孫 その他 分からない

世話をする人(話し相手)

報告のあった事例について、身の回りの世話や家事などを助けてもらったり、心配事や悩みの相談に乗

ってもらう等している主な人は誰か尋ねたところ、「その他」が、地域包括支援センターで 41.8%、民生委

員で 27.9%と も多い。次いで多いのが「近隣住民」で、地域包括支援センターで 17.1%、民生委員で

16.7%となっており、家族、親族ではなく近隣の人が世話をしたり、話し相手となっている事例が多いこと

が分かる。「息子」が世話をしたり、話し相手になっている事例は、地域包括支援センターで 12.7%、民生

委員で 15.0%、「娘」は地域包括支援センターで 10.0%、民生委員で 11.1%であり、もともと独居の人が

多いこともあり、「配偶者」が世話をしているという事例は地域包括支援センターで 4.9%、民生委員で

6.4%にとどまる。

「その他」の内容としては「兄弟姉妹」が多く、地域包括支援センターで 235 件(8.9%)、民生委員で 206

件(4.7%)となっている。また、地域包括支援センターでは、「民生委員」が 162 件(6.1%)であった。

家族・親族との親密度

地域包括支援センターより報告のあった事例について、家族・親族との親密度を尋ねたところ、「全く希

薄」が 41.3%と も多く、次いで、「やや希薄」の 26.6%となっており、両者を合わせ全体の三分の二

(68.0%)の事例で、家族・親族との関係が希薄になっている。一方、家族・親族との関係が親密という事

例(「かなり親密+やや親密」)は、14.6%にとどまる。

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22

台 所

《N=2,638》冷 暖 房

《N=2,638》

風 呂

《N=2,638》ト イ レ

《N=2,638》

0 20 40 60 80    100(%)

79.6 15.0

20.4

5.0

10.8

94.4

94.4

68.2

3.3

3.1 2.2

2.1

0.6

0.3

0.4

0.3

ある ない

分からない 無回答

冷 暖 房

《N=4,423》

ト イ レ

《N=4,423》台 所

《N=4,423》

80    100(%)風 呂

《N=4,423》

0 20 40 60

79.4 12.3

18.9

6.1

13.764.4

93.2

94.51.9

1.2 2.3

2.5 2.4

2.3

2.0

3.0

ある ない

分からない 無回答

民 生 委 員《N=4,423》

80 100(%)地域包括支援センター

《N=2,638》

0 20 40 60

34.3 34.3 25.8

40.3 34.7 16.2 2.0

2.2

0.1

0.24.1

2.5

2.7

0.6

平屋の戸建て 二階以上の戸建て セキュリティがない集合住宅

無回答

セキュリティがある集合住宅

寮・住み込み等 その他

(2) 建物の形態及び風呂・トイレ・台所・冷暖房の有無

建物の形態

高齢者本人の居住する建物について見ると、「平屋の戸建て」が、地域包括支援センターで 34.3%、民

生委員で 40.3%、「二階以上の戸建て」が、地域包括支援センターで 34.3%、民生委員で 34.7%となっ

ており、両者を合わせ地域包括支援センターで 68.6%、民生委員で 74.9%の人が戸建て住宅に住んで

いる。集合住宅に住んでいる人は地域包括支援センターで 27.9%、民生委員で 18.2%であった。

地域包括支援センター報告事例と民生委員報告事例とを比べると、「平屋の戸建て」は民生委員の方

が 6.0 ポイント高いが、「セキュリティがない集合住宅」は地包括支援センターのほうが 9.6 ポイント高く、民

生委員の担当する事例は戸建てのものが多く、一方、地域包括支援センターの担当する事例は集合住

宅のものが比較的多い傾向があることが分かる。

風呂・トイレ・台所・冷暖房の有無

風呂、トイレ、台所、冷暖房の有無を見ると、トイレ(地域包括支援センター 94.4%、民生委員 94.5%)、

台所(地域包括支援センター 94.4%、民生委員 93.2%)については9割以上の事例で設置されている

が、風呂があるのは8割(地域包括支援センター 79.6%、民生委員 79.4%)であり、冷暖房があるのは

地域包括支援センターで 68.2%、民生委員で 64.4%となっている。

地域包括支援センター

民生委員

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23

民 生 委 員

《N=4,423》

平均

3.48

3.44

80 100(%)地域包括支援センター

《N=2,638》

0 20 40 60

12.4 12.5 19.0

12.3 13.3 17.5 18.8

23.2

29.5

30.3

2.6

1.4

5.9

1.2

1 2 3 無回答4 5 分からない

民 生 委 員 3.43 《N=4,423》

80 100(%) 平均地域包括支援センター 4.01

《N=2,638》

0 20 40 60

3.5 7.6 14.7

8.9 13.0 20.2

29.9

22.0

40.9

23.1

2.8

8.6

0.5

4.3

1 2 3 無回答4 5 分からない

(3) 住居の状態

家の外回りの状態

セルフネグレクト状態にある高齢者の住居の庭及び歩道、家の外の状態について、「こぎれい、状態が

良く保たれている、ゴミやがらくたなどがない」を1、「ほとんどメンテナンスされていない、みすぼらしい、ゴ

ミやがらくたがある」を5として、5段階で評価してもらった。

地域包括支援センター、民生委員ともに、一番状態の悪い5と評価された事例が も多く、地域包括支

援センターで 30.3%、民生委員で 29.5%と3割を占めていることが分かる。平均スコアは、地域包括支援セ

ンターで 3.48、民生委員で 3.44 であった。

家の中の状態

セルフネグレクト状態にある高齢者の住居内の清潔度について、「清潔で、不衛生な状態の痕跡がな

い」を1、「とても汚い、洗っていない皿、ごみ、糞がある」を5として、5段階で評価してもらった。

地域包括支援センター、民生委員ともに、一番状態の悪い5と評価された事例が も多く、地域包括支

援センターで 40.9%、民生委員で 23.1%となっている。平均スコアは、地域包括支援センターで 4.01、民

生委員の 3.43 であった。

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24

勤 労 収 入

《N=2,638》

年 金 受 給

《N=2,638》生活保護受給

《N=2,638》

40 60 80    100(%) 0 20

82.0 11.6 5.4

4.3

15.3

92.6

83.0 1.0

2.70.4

1.0

0.8

ある ない

分からない 無回答

勤 労 収 入

《N=4,423》

年 金 受 給

《N=4,423》生活保護受給

《N=4,423》

40 60 80    100(%) 0 20

71.9 8.2 15.4

17.6

7.0

72.3

77.0 10.5

4.7 5.4

4.4

5.5

ある ない

分からない 無回答

(4) 年金受給・生活保護受給・就労収入の有無

年金受給・生活保護受給・勤労収入の有無を見ると、年金を受給している人は地域包括支援センター

で 82.0%、民生委員で 71.9%と 8 割以上を占める一方、生活保護を受給している人は地域包括支援セ

ンターで 15.3%、民生委員で 17.6%、勤労収入のある人は地域包括支援センターで 4.3%、民生委員で

7.0%にとどまっている。多くの人が年金を主な収入源として生活をしていることが分かる。

地域包括支援センター

民生委員

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25

N=2,638

J-2(37.3%)

A-1(11.8%)

A-2(16.0%)

B-1(3.2%)

B-2(3.0%)

C-1(2.4%)

J-1(20.2%)

無回答(1.7%)

C-2(1.1%)

分からない(3.2%)

N=2,638

M(1.1%)

分からない(7.8%) 無回答

(1.6%)

Ⅰ(23.8%)

Ⅱa(17.8%)

Ⅱb(16.4%)

Ⅲa(11.1%)

Ⅲb(2.4%)

Ⅳ(1.6%)

自立(16.4%)

(5) 日常生活自立度、認知症自立度、介護保険認定、障害者手帳

日常生活自立度

地域包括支援センターより報告のあった事例について日常生活自立度を見ると、生活自立(J-1、2)

の人が 57.5%と過半数を占める一方、介助なしでは外出できない準寝たきり(A-1、2)の人が 27.7%と

なっている。また、寝たきり(B-1、2、C-1、2)の人は 9.8%であり、十人に一人が寝たきり状態であるこ

とが分かる。

認知症自立度

地域包括支援センターより報告のあった事例について認知症自立度を見ると、40.2%の人が自立及び

Ⅰ(ほぼ自立)である一方、50.3%の人がⅡ~M(周囲の注意、介護が必要)となっており、半数の人が認

知症により周囲の注意、介護を要する状態となっている。特に、Ⅲ以上の人は 16.1%となっており、6人に

一人が介護が必要な重い認知症になっていることが分かる。

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26

N=1,499

非該当(0.8%)

要支援2(17.5%)

要介護1(27.8%)

要介護2(20.2%)

要介護3(11.8%)

要介護4(5.3%)

要介護5(1.9%)

要支援1(14.7%)

民 生 委 員《N=4,423》

80 100(%)地域包括支援センター

《N=2,638》

0 20 40 60

56.8 40.1

41.0 37.8

1.3

17.2

1.8

4.0

申請済み 申請していない 分からない 無回答

民 生 委 員《N=4,423》

80 100(%)地域包括支援センター

《N=2,638》

0 20 40 60

10.9 80.1 8.1

11.8 61.6 21.3 5.3

0.9

ある ない 分からない 無回答

介護保険認定

介護保険認定の申請の有無を見ると、地域包括支援センター、民生委員共に、申請している人の方が

多い。特に地域包括支援センター報告事例の場合は、過半数の 56.8%の人が申請しており、民生委員

報告事例(41.0%)と比べ 15.8 ポイント高くなっている。

また、地域包括支援センターから報告のあった事例について、「申請済み」の認定状況を見ると、「要支

援1、2」が 32.2%、「要介護1」が 27.8%、「要介護2」が 20.2%となっている。

障害者手帳

障害者手帳の有無については、身体障害者手帳、療養手帳、精神障害者保険福祉手帳のいずれかが

「ある」人は地域包括支援センターで 10.9%、民生委員で 11.8%であり、十人に一人が何らかの身体、知

的、精神障害を持っていることが分かる。

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27

80 100(%)地域包括支援センター

《N=2,638》

0 20 40 60

民 生 委 員《N=4,423》

60.3 29.9 7.7

54.0 11.8 26.9

2.1

7.3

はい いいえ 分からない 無回答

民 生 委 員《N=4,423》

80 100(%)地域包括支援センター

《N=2,638》

0 20 40 60

51.4 9.5 4.2

36.2 7.4 4.1

1.11.28.5

5.1

22.8

37.8

2.6

8.2

0~3ヶ月前 6ヶ月前 12ヶ月前 無回答18ヶ月前 24ヶ月以上前 分からない

民 生 委 員《N=4,423》

80 100(%)地域包括支援センター

《N=2,638》

0 20 40 60

13.2 18.6 35.9

15.7 8.7 21.9 37.4

19.9

16.3

12.4

はい(本人が痛みや不快その他の注意すべき健康の苦情を訴えている)

はい(本人は医学上の問題を否定しているが苦しみや痛みが現れている) 無回答いいえ 分からない

(6) 健康状態

普段から医療を受けられる場所の有無

普段から医療を受けられる場所の有無を見ると、「はい(普段使っている医療機関名が医療費領収書、

処方箋等の文書記録に記載あり)」が、地域包括支援センターで 60.3%、民生委員で 54.0%と過半数と

なっているが、一方で、「いいえ(医療機関に関する有効な文書記録がない)」又は「分からない」も地域包

括支援センターで 37.6%、民生委員で 38.7%と4割近くを占めている。

近医者にかかった時期

近医者にかかった時期については、地域包括支援センター、民生委員共に、0~3ヶ月前が も多

いが、特に、地域包括支援センター報告事例では半数(51.4%)の人が0~3ヶ月前に医者にかかってお

り、民生委員報告事例(36.2%)に比べ、15.2 ポイント高くなっている。

未治療

未治療の状態の有無については、「はい」が地域包括支援センターで 31.8%、民生委員で 24.4%とな

っている。そのうち、民生委員では、「本人が痛みや不快その他の注意すべき健康の苦情を訴えている」

場合が 64.3%(全体では 8.7%)を占めるが、地域包括支援センターでは、「本人は医学上の問題を否定

しているが苦しみや痛みが現れている」場合が 58.5%(全体では 18.6%)となっており、全体に対する割

合で見ても、民生委員(8.7%)と比べ 9.9 ポイント高くなっている。

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28

《N=2,638》民 生 委 員

《N=4,423》

平均

6.69

5.70

0 20 40 60 80 100(%)地域包括支援センター

6.7

7.8

15.8

17.2 11.2

2.00.5

4.0

0.9

3.0

2.8

4.5 7.3

5.6 10.5

6.4

14.2

8.6

18.5

9.8

5.8

4.5

15.7

8.0

0.8

7.8

0(リスクなし) 1 2

無回答

3 4 5 6 7 8 9 10(深刻なリスクあり)

分からない

地域包括支援センター

《N=2,638》民 生 委 員

《N=4,423》

40 60 80 100(%)0 20

32.3 53.4 11.6

40.3 34.4 18.6

2.7

6.7

自分が危険な状態になった時に援助要請の能力がある 緊急事態に適切に対応できない 分からない 無回答

(7) 緊急事態への対応能力とリスク状況

緊急事態への対応能力

緊急事態への対応能力をみると、地域包括支援センターでは、「緊急事態に適切に対応できない」人

が過半数の 53.4%を占めており、「自分が危険な状態になった時に援助要請の能力がある」人(32.3%)

を上回っている。一方、民生委員では、「緊急事態に適切に対応できない」人は 34.3%であり、「自分が

危険な状態になった時に援助要請の能力がある」人(40.3%)を下回っている。

リスク状況

セルフネグレクト状態にある高齢者の健康と身の安全のリスク(介入がないままで)を評価してもらったとこ

ろ、リスクの高い8以上と評価された事例が、地域包括支援センターで 40.1%、民生委員で 25.5%となってい

る。特に、地域包括支援センターでは、介入がないと、健康や身の安全のリスクが高いと考えられる事例が

多くなっている。平均スコアを見ると、地域包括支援センターで 6.69 と、民生委員で 5.70 であった。

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29

N=2,638

無回答(0.5%)

家族関係のトラブル(11.3%)

身内の死去(11.0%)

近隣関係のトラブル(1.9%)

その他(13.9%)

特段、きっかけはない(15.9%)

覚えていない・分からない(21.5%)

疾病・入院など(24.0%)

民 生 委 員《N=4,423》

80 100(%)地域包括支援センター

《N=2,638》

0 20 40 60

16.0 9.6 12.4

14.9 16.8 18.3 18.9

16.6

25.6

44.3

5.4

1.1

1年くらい前 2年くらい前 3~5年くらい前 無回答5年以上前 分からない

(8) セルフネグレクト状態になった時期、きっかけ・理由

セルフネグレクト状態になった時期

セルフネグレクト状態になった時期については、「分からない」が も多く、地域包括支援センターで

44.3%、民生委員で25.6%となっている。また、5年以上セルフネグレクト状態にある人も地域包括支援セ

ンターで 16.6%、民生委員で 18.9%となっている。

セルフネグレクト状態になったきっかけ・理由

地域包括支援センターより報告のあった事例について、セルフネグレクト状態になったきっかけ・理由を

尋ねたところ、「覚えていない・分からない」(21.5%)、「特段、きっかけはない」(15.9%)との回答が見られ

た一方、きっかけ・理由が分かっているものとしては、「疾病・入院など」が も多く 24.0%、次いで、「その

他」(13.9%)、「家族関係のトラブル」(11.3%)、「身内の死去」(11.0%)となっている。

「その他」の内容としては、「配偶者や家族の入院・入所」「借金や金銭トラブル」「収入減等経済的困

窮」という回答が多い。

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30

民 生 委 員《N=4,423》

80 100(%)地域包括支援センター

《N=2,638》

0 20 40 60

16.2 36.9 23.0

9.1 32.7 20.5

11.8

10.2

9.0

7.4

1.9

9.3

1.2

10.8

完全に解消した ある程度改善した ほとんど改善されなかった

無回答

全く改善されなかった

亡くなられた 他機関が担当しているので分からない

介護保険の在宅福祉サービスの利用

介護・福祉施設への入所

本人への生活改善指導

日常生活自立支援事業の利用

介護保険以外の在宅福祉サービスの利用

成年後見制度の利用

その他

分からない

無回答

48.5

30.0

14.1

6.4

15.8

9.0

34.9

0.1

0.4

34.9

28.3

22.2

18.6

10.0

4.9

21.4

1.3

3.0

0 10 20 30 40 50 60 (%)

地域包括支援センター(N=1,401)

民生委員(N=1,846)

4.支援の成果とその方法

支援の結果、本人のセルフネグレクト状態が改善されたかを尋ねたところ、改善した(「完全に解消した」+「あ

る程度改善した」)事例は、地域包括支援センターで過半数の 53.1%、民生委員では 41.7%となっており、特に、

「完全に解消した」という事例については、地域包括支援センター(16.2%)の方が、民生委員(9.1%)よりも 7.1

ポイント高くなっていることが分かる。一方、改善していない(「ほとんど改善されなかった」+「全く改善されなか

った」)事例は、地域包括支援センターで 34.8%、民生委員では 30.7%であり、その他、「亡くなった」という事例

も地域包括支援センターで 11.8%、民生委員で 10.2%であった。

支援の結果、現時点で本人のセルフネグレクトの状態は改善されましたか【一つだけ○】。

「完全に解消した」又は「ある程度改善した」と回答のあった事例について、セルフネグレクト状態の解消・改善

に役立った支援、介入はどのような内容だったかを尋ねたところ、「介護保険の在宅福祉サービスの利用」が地

域包括支援センターで 48.5%、民生委員で 34.9%と も多く、次いで、地域包括支援センターでは、「その他」

(34.9%)、「介護・福祉施設への入所」(30.0%)、民生委員では、「介護・福祉施設への入所」(28.3%)、「本人

への生活改善指導」(22.2%)、「その他」(21.4%)の順となっている。

地域包括支援センターと民生委員とを比べると、地域包括支援センターの方が割合が高い支援、介入は、「介

護保険の在宅福祉サービスの利用」(13.6ポイント)、「介護保険以外の在宅福祉サービスの利用」(5.8ポイント)、

「成年後見制度の利用」(4.1ポイント)であり、一方、民生委員の方が割合の高い支援、介入は、「本人の生活改

善指導」(8.1 ポイント)、「日常生活自支援事業の利用」(12.2 ポイント)となっている。

「その他」の内容としては、地域包括支援センター報告事例では、「病院への入院や医療受診」「家族(特に子

ども)・親族との連携協力・支援」「近隣住民の協力・見守り」といった回答が多い。民生委員報告事例では、加え

て、「地域包括支援センターとの連携・協力」や「生活保護の受給」という回答のあった事例もある。

[「完全に解消した」「ある程度改善した」事例]

解消・改善に役立った支援、介入はどのような内容でしたか【当てはまるもの全てに○】

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31

いくら説得を試みても本人が拒否したこと

家族の理解・協力を得ることができなかったこと

何度も通うなど時間的な負担が大きかったこと

経済的な負担が大きかったこと

近隣住民の理解・協力を得ることができなかったこと

技術的に分からないことが多かったこと

その他

特に困難には感じなかった

無回答

71.3

41.5

38.0

17.9

9.9

4.9

17.4

2.5

1.1

46.3

25.3

26.5

10.8

11.5

12.3

16.3

11.2

7.8

0 20 40 60 80 (%)

地域包括支援センター(N=2,638)

民生委員(N=4,423)

5.支援において困難に感じた点

支援する上で困難に感じた点については、「いくら説得を試みても本人が拒否したこと」が も多く、次いで、

「家族の理解・協力を得ることができなかったこと」、「何度も通うなど時間的な負担が大きかったこと」が多くなっ

ている。

地域包括支援センターでは、民生委員に比べ上記の点を困難な点として指摘している割合が高く、特に「いく

ら説得を試みても本人が拒否したこと」は 71.3%のセンターが困難な点として指摘しており、民生委員(46.3%)

と比べ 25 ポイント高くなっている。また、「家族の理解・協力を得ることができなかったこと」は 41.5%で、民生委

員(25.3%)と比べて 16.2 ポイント、「何度も通うなど時間的な負担が大きかったこと」は 38.0%で、民生委員

(26.5%)と比べて 11,5 ポイント高くなっている。

本事例に関わる上で困難に感じた点はどのようなことでしたか【当てはまるもの全てに○】。

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32

民 生 委 員《N=2,593》

80 100(%)地域包括支援センター

《N=1,041》

0 20 40 60

17.0 39.4 14.1

19.0 36.3 14.3 13.0

20.3

17.5

9.2

とても機能した やや機能した あまり機能しなかった 無回答ほとんど機能しなった

有用な情報がほとんど得られなかったため

前例がなかったため

連携を効果的に行うための事例検討会等が開催されなかったため

専門家が足りなかったため

医療機関や福祉施設の協力が得られなかったため

その他

無回答

30.2

14.5

13.1

3.9

2.2

47.2

3.4

27.9

28.9

18.0

6.8

2.7

38.4

5.8

0 10 20 30 40 50(%)

地域包括支援センター(N=358)

民生委員(N=706)

6.見守りネットワークの果たした役割

担当地区に「見守りネットワーク」がある事例において、当該ネットワークが機能したと思うかについて尋ねたと

ころ、「とても機能した」が、地域包括支援センターで 17.0%、民生委員で 19.0%、「やや機能した」が地域包括

支援センターで 39.4%、民生委員で 36.3%となっており、「とても機能した」「やや機能した」を合わせると地域包

括支援センター、民生委員共に、過半数の事例(地域包括支援センター 56.4%、民生委員 55.2%)において

機能したと考えられている。

一方、地域包括支援センター報告事例では、「ほとんど機能しなかった」が 20.3%となっており、見守りネットワ

ークが機能していないと評価される事例が5事例に一事例あることが分かる。

[担当地区に見守りネットワークがある事例]

本事例において「見守りネットワーク」は機能したと思いますか【一つだけ○】。

「あまり機能しなかった」又は「ほとんど機能しなかった」と回答のあった事例について、その理由について尋ね

たところ、「その他」が地域包括支援センターで 47.2%、民生委員で 38.4%と も多く、次いで、地域包括支援

センターでは、「有用な情報がほとんど得られなかったため」(30.2%)、「前例がなかったため」(14.5%)、「連携

を効果的に行うための事例検討会等が開催されなかったため」(13.1%)、民生委員では、「前例がなかったた

め」(28.9%)、「有用な情報がほとんど得られなかったため」(27.9%)、「連携を効果的に行うための事例検討会

等が開催されなかったため」(18.0%)の順となっている。

「前例がなかったため」は、地域包括支援センターでは 14.5%にとどまるが、民生委員では 14.4 ポイント高い

28.9%となっており、「有用な情報がほとんど得られなかったため」と並んで も多かった。また、「連携を効果的

に行うための事例検討会等が開催されなかったため」も民生委員では 18.0%の事例で指摘されており、地域包

括支援センターに比べて 4.9 ポイント高くなっている。

「その他」の内容としては、「本人が拒否する。近隣との関わりを避けている。」「家族の同意・理解を得ることが

できなかったため。」という回答が多い。

[「あまり機能しなかった」「ほとんど機能しなかった」事例]

機能しなかったと思うのはなぜですか【当てはまるもの全てに○】。

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33

言葉少なに答えていた

ほとんどうなづく、はい/いいえ程度の返事だった

無表情だった

答えるのがつらそう

説明を積極的にしてくれた

感情の言葉が出ていた

喜怒哀楽の感情がいつも出ていた

喜怒哀楽の感情が時々出ていた

N=138

48.6

37.7

24.6

23.9

23.2

13.0

3.6

2.2

0 20 40 60(%)

N= 138

施設入所により衣食住の問題が解決されている(8.0%)

改善が見られない、もしくは不明(44.9%)

少なくとも何らかの改善はあった(31.2%)

自宅等で衣食住が概ね改善されている(15.9%)

Ⅳ.本人調査の結果

本人への聞き取り調査は、地域包括支援センター職員又は民生委員の協力のもとで、セルフネグレクト状態にある

高齢者本人の同意が得られた全国 138 名について実施した。聞き取り調査が実施可能なケースは、本人とセンター職

員又は民生委員・支援員等との間に信頼関係がある程度構築されており、聞き取り調査を実施しても本人の状態が悪

化・不安定化することがないと見込まれるケースである。したがって、本人がほぼすべての関係を拒否するといった深

刻なケースが含まれていない点に留意する必要がある。また、セルフネグレクト状態が既に解決・改善されているケー

スも含まれている(衣食住が概ね改善されているケースは、施設入所と自宅等を合わせて 23.9%)。

本人への聞き取り調査を行うに当っては、事前に担当のセンター職員、民生委員・支援委員等に対して本人の状況

に関する調査を実施した。

本人への聞き取り調査対象ケースの改善度合

1.本人の状況

(1) 調査当日の様子

面接当日の本人の様子について、表情、態度、言葉の出方などを調査員に尋ねたところ、「説明を積極

的にしてくれた」人が約半数(48.6%)、「感情の言葉が出ていた」人が3分の1以上(37.7%)いた。また、ある

程度感情が出ていたケースが「喜怒哀楽の感情がいつも出ていた」(24.6%)、「喜怒哀楽の感情が時々出

ていた」(23.9%)を合わせて約半数に上った。一方で「言葉少なに答えていた」 (23.2%)、「無表情だった」

(3.6%)、「答えるのがつらそう」(2.2%)なケースもあった。

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34

N= 138

その他(7.2%)

自分で作る(40.6%)

デイケア等の介護・福祉施設に通ってご飯を食べている

(2.9%)

配食サービスを利用している(13.0%)

ホームヘルパーが用意してくれる(15.2%)

家族が作ってくれる(5.8%)

ほとんど出前ですませている(0.7%)

コンビニ、スーパー等で購入する(14.5%)

N= 138

二日に1回程度以下(1.4%)

ほぼ毎日(一日1回は)食べている(98.6%)

(2) 日常生活

食事

本人に日常生活について食事、風呂、昼間の過ごし方などを尋ねたところ、食事の頻度については、「ほ

ぼ毎日(一日1回は)食べている」人が(98.6%)であった。また、食事の用意については、「自分で作る」人が

40.6%いた(ご飯を炊くだけのケースも含む)。 「ホームヘルパーが用意」(15.2%)、「配食サービスの利用」

(13.0%)、「デイケア等の介護・福祉施設」(2.9%)と公共サービスの利用者が合わせて約 30%あり、「家族が

用意」はわずか 5.8%であった。

毎日ご飯を食べていますか【一つだけ○】

ご飯はどなたが用意していますか【 も多いのを一つだけ○】

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35

N= 138

あまり好きではない(27.5%)

嫌い(12.3%)

無回答(2.2%)

好き(58.0%)

80 100(%)好 き

《N=80》

0 20 40 60

あ ま り 好 き で な い《N=38》

嫌 い《N=17》

61.3 18.8 8.8 3.8

0.0

5.9

26.3

5.9

21.1

11.8 5.9

10.5 42.1

7.5

70.6

毎日又は二、三日に一回程度 週に一回程度 月に二、三回程度

月に一回以下 無回答

N= 138

毎日又は二、三日に一回程度(43.5%)

無回答(5.1%)

月に一回程度以下(24.6%)

月に二、三回程度(8.7%)

週に一回程度(18.1%)

風呂

風呂に入る頻度については、「毎日又は二、三日に一回程度」(43.5%)と約4割が一般の日本人と同じ頻

度であった。ただし、本調査の回答者には既に状況が改善された人が含まれていること、介入を拒んでい

る場合に事実と異なる回答をする可能性があることに留意しなければならない。一方で、約 4 分の1が「月

に一回程度以下」(24.6%)との回答であった。

「風呂が好きかどうか」の質問は、気持ちを問う質問であるため、比較的本人の正直な気持ちが表れや

すいと期待されるが、「あまり好きでない」(27.5%)、「嫌い」(12.3%)と合わせて約4割が風呂好きでない、という

結果が出た。

風呂に入る頻度と風呂が好きかどうかについてクロス集計を行ったところ、風呂が「好き」であるにも拘わ

らず「月に二、三回程度」もしくは「月に一回以下」しか風呂に入れないと回答した人が 16.3%いた。一方で

「あまり好きでない」が風呂に「毎日又は二、三日に一度」入っていると回答した人は 26.3%であった。また風

呂が「嫌い」な人の 70.6%か「月に一回以下」しか入っていないと回答している。

お風呂には月何回くらいまたは週に何回くらい入っていますか【一つだけ○】

お風呂は好きですか【一つだけ○】

風呂に入る頻度と風呂が好きかどうかについてのクロス集計

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36

テレビ、ビデオ、DVD等を見る

散歩、買い物、外食、など外出をする

寝ている(昼寝を含む)、横になっている、うとうとしている

デイケアセンターや公共の催し会等に行く

本、新聞、雑誌、マンガ等を読む

畑仕事や庭仕事をしている

ラジオを聴く

ネコなど動物の世話をしたり遊んだりしている

特に何もしていない、ほとんどすることがない

家事をする

病院に行く

日向ぼっこや外をながめたりして過ごしている

近所の人、ホームペルパー、施設職員等と交流を持つ

その他 N=138

39.1

21.0

18.8

10.1

9.4

9.4

8.0

6.5

6.5

5.8

5.1

4.3

4.3

10.9

0 10 20 30 40 50(%)

昼間の過ごし方

昼間の過ごし方について本人に尋ね、得られた自由回答を分類の上、集計を行った。過ごし方は人に

よって様々ではあるが、「テレビ、ビデオ、DVD 等を見る」人が約4割(39.1%)いた。また、「寝ている(昼寝を

含む)、横になっている、うとうとしている」(18.8%)、「日向ぼっこや外をながめたりして過ごしている」(4.3%)、

「特に何もしていない、ほとんどすることがない」(6.5%)という、積極的に何かをしているとはいえない回答も

みられた。なお、日常生活自立度からみて明らかに過去の趣味と思われる回答や、自身がこうありたいと思

い描く姿を述べているのではないかと推察される回答も見られた。

いつも昼間はどんなことをして過ごしていますか【自由回答】

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37

N= 138

よく眠れる(77.5%)

よく眠れない(22.5%)

N= 138

ある(61.6%)

分からない(10.9%)

ない(15.2%)

疑いがある(12.3%)

(3) 健康状態

睡眠

よく眠れるかどうかを本人に尋ねたところ、約 4 分の 3 が「よく眠れる」(77.5%)との回答であった。東日本大

震災後の余震が気になって眠れないという声も聞かれた。

よく眠れますか【一つだけ○】

慢性的な疾患、怪我、精神疾患等の有無

センター職員又は民生委員・支援員に対し行った事前調査の中で、治療を要する慢性的な疾患の有無

について尋ねた。治療を要する慢性的な疾患が「ある」(61.6%)、「疑いがある」(12.3%)とを合わせると、約4分

の3が診療が必要と考えられる。具体的に挙がった疾患名のうち目立ったものは、「高血圧」(16.7%)、「糖尿

病」(6.5%)であった。「高血圧」、「脳梗塞など脳疾患」(5.1%)、「心臓疾患」(2.9%)といった循環器系の症状が

みられた。この他、「骨折、外傷、関節症、痛み等」の怪我に関するものが 13.0%、「精神疾患」(5.1%)や「身体

疾患による精神障害」(1.4%)といった精神的な症状もみられた。

治療を要する人のうち医者にかかっていると回答した人が 74.1%、かかっていないと回答した人が 17.6%で

あった。「平成 21 年国民生活調査」における傷病のある 65 歳以上の高齢者の通院率が 85.5%であることと比

較すると、11.4 ポイント低い。調査対象者には既にセルフネグレクト状態が改善されたケースも含まれている

ことを考慮すると、医者にかかっていない人の割合はさらに低いことが予想される。

医者にかからない理由としては、「お金をかけたくない」、「医者嫌い・医者に不信感がある」、「通院の問題

(一人で通院できない、通院の苦痛など)」、「医者に行く必要はないと思っている(病識の欠如を含む)」、

「身体に触れられたくない」、「状況を隠したい」などが挙げられた。

また、本人への聞き取り調査においては、具合が悪いところはあるが医者には行かなかったと答えた場合

に、なぜ医者に行かないのかを尋ねたところ、「お金をかけたくない」、「医者に行くほどではない」、「医者が

嫌い」、「医者は信じられない」、「一人では通院できない」などの回答があった。

現在、調査対象者には治療を要する慢性的な疾患(精神的疾患を含む)や怪我はありますか【一つだけ○】

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38

高血圧

骨折、外傷、関節症、痛み等

糖尿病

脳梗塞など脳疾患

精神疾患

心臓疾患

肝臓疾患

身体疾患による精神障害 N=85

16.7

13.0

6.5

5.1

5.1

2.9

2.9

1.4

0 5 10 15 20 (%)

N= 85

医者にかかっていない(17.6%)

わからない(5.9%)

無回答(2.4%)

医者にかかっている(74.1%)

慢性疾患や怪我の疑いがある《N=17》

慢 性 疾 患 や 怪 我 は な い《N=21》

分からない《N=15》

80 100(%)慢 性 疾 患 や 怪 我 が あ る

《N=85》

0 20 40 60

76.5 22.4

26.7 6.7

64.7

52.4

66.7

35.3

47.6

1.2

0.0

0.0

本人が病気や怪我があると回答 本人が病気や怪我はないと回答 無回答

(上記で「ある」と回答した人のうち)記述があった慢性的な疾患(精神的疾患を含む)や怪我

(上記で「ある」と回答した人のうち)医者にかかっていますか【一つだけ○】

センター職員又は委員・支援員に対し行った事前調査と本人への聞き取り調査の両方において慢性疾患

(病気)や怪我があるかを尋ね、これらのクロス集計をとることにより、本人の病識の有無を見た。センター職員

又は委員・支援員が「慢性疾患や怪我がある」と答えたケースのうち 22.4%は本人が「病気や怪我がない」と

答えていた。またセンター職員又は委員・支援員が「慢性疾患や怪我の疑いがある」と答えたケースでは、そ

の 35.3%において本人が「病気や怪我がない」と答えていた。一方でセンター職員又は委員・支援員が「慢性

疾患や怪我がない」と答えたケースでも、半分以上(52.4%)のケースにおいて、本人が「病気や怪我がある」と

答えており、センター職員又は委員・支援員の診立てと本人の病識との間の差が見られる。このことから、慢

性疾患(病気)や怪我についてのセンター職員又は委員・支援員の介入が難しいことがわかる。

慢性疾患(病気)や怪我の有無についてのクロス集計

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39

N= 138

重度(Ⅲ以上)の認知症(8.0%)

無回答(1.4%)

分からない(8.7%)

認知症になっていない(24.6%)

軽度(ランクⅠ)(26.1%)

中度(Ⅱ)の認知症(31.2%)

認知症

聞き取り調査対象者の認知症の度合いについて、民生委員調査のケースについては、「重度(Ⅲ以上)」、

「中度(Ⅱ)」、「軽度(Ⅰ)」を改めて尋ね、地域包括支援センター調査のケースについても、このカテゴリ

ーで集計し直したところ、「認知症になっていない(自立)」が 24.6%、「軽度(ランクⅠ)」が 26.1%であった。

先の「地域包括支援センター調査」の認知症自立度の結果と比較すると、聞き取り調査対象者の認知症

自立度が高い結果となっている(地域包括支援センター調査では、「自立」が(16.4%)、「ランクⅠ」が

(23.8%))。このことは「重度(ランクⅢ以上)」の人には聞き取り調査が困難であることを示している。

調査対象者は認知症ですか【一つだけ○】

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40

本人

家族・親族

行政

成年後見人・保佐人・補助人

分からない

介護・福祉施設

その他 N=138

54.3

26.1

9.4

5.8

5.1

2.9

9.4

0 20 40 60(%)

本人の金銭感覚の乏しさ

将来の生活資金不足

生活資金不足

返済できない借金

生活保護申請の拒否

家賃滞納

その他

N=138

20.3

14.5

11.6

2.9

2.9

0.7

26.8

0 10 20 30(%)

(4) 経済状態

財産管理と経済的リスクについて

センター職員又は委員・支援員に対し行った事前調査で、調査対象者の財産管理について尋ねた。財

産管理をしている人の約半数が「本人」(54.3%)であり、次に「家族・親族」(26.1%)、「行政」(9.4%)と続いた。

「成年後見人・保佐人・補助人」はわずか 5.8%であった。

経済的なリスクについては、「本人の金銭感覚の乏しさ」(20.3%)が第一に挙げられ、ほかに「生活資金不

足」(14.5%)や「将来の生活資金不足」(11.6%)等の回答があった。「その他」の記述のなかには、数件ずつで

はあるが、「本人に管理能力、判断能力がない」、「支払いの手続きができない」、「お金を盗まれると思いしま

い込み、却って所在がわからなくなる」、「本人の浪費癖」などの回答があった。いずれも認知症の症状と重

なるものであり、本人の管理能力がおぼつかないなかで、成年後見人等の役割が期待される。

調査対象者は財産管理は誰が行っていますか【当てはまるもの全てに○】

調査対象者の経済状況について何らかの問題はありますか【当てはまるもの全てに○】

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41

老朽化

ゴミ屋敷だが外はOK

ゴミ屋敷で外もゴミが散乱

ガスが止められている

電気が止められている

家賃滞納による退出

家主との関係悪化による退出

賃貸住宅建て替えによる退出

水道が止められている

隣人からの苦情による退出

その他

N=138

21.7

21.7

15.9

11.6

2.2

0.7

0.7

0.7

0.7

0.0

24.6

0 5 10 15 20 25 30 (%)

(5) 住居環境

センター職員又は委員・支援員に対し行った事前調査で、調査対象者の財産管理について尋ねた。

ゴミ屋敷状態になっているのが、「ゴミ屋敷だが外は OK」(21.7%)、「ゴミ屋敷で外もゴミが散乱」(15.9%)と合

わせて 37.6%であった。「老朽化」は 21.7%、インフラでは「ガスが止められている」が 11.6%であった。「その他」

にあった記述として、猫の糞尿の散乱、トイレが使えない、階段の上り下りができない、庭の手入れがされてい

ない、などが挙げられていた。

調査対象者の住居に関し何らかの問題はありますか【当てはまるもの全てに○】

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42

N= 138

あった(52.2%)

なかった(47.8%)

子ども

きょうだい

父もしくは母

家族・親族全般

配偶者

甥、姪、いとこ

子どもの配偶者

祖父母

その他

N=72

44.4

36.1

22.2

16.7

13.9

5.6

4.2

2.8

2.8

0 20 40 60(%)

2.本人の意識

(1) 周囲の人(家族・親族・近隣住民等)への意識

家族・親族への意識

本人への聞き取り調査において、本人から家族・親族について出た話を調査員が自由記述をする欄を設け、

その内容から家族・親族を話題にしたか、話に出た家族・親族の続柄等について分類の上、集計を行った。

家族の話題に触れていたものは、約半数(52.2%)であった。ただし、後述のとおり、現在一人暮らしをしてい

る人が、調査対象者数 138 名のうち 109 名(79.0%)と約 8 割を占めているため、家族・親族の話が出にくいと考

えられる点に留意が必要である。

家族の話題を出した 72 名のうち 32 名(44.4%)が何らかの「子ども」の話題であった。次いで「きょうだい」

(36.1%)、「父または母」(22.2%)の話題であり、「配偶者」を話題にした人は 13.9%と低い。

話題の内容は、現在の関係性(行き来がある/ない、連絡がある/ない、世話をしてくれる、物やお金を持ち

出される、嫌がらせをされる、けんか/トラブル、など)、過去の出来事(生育暦、亡くなった家族の思い出、介

護など)、現在相手に対して持っている感情(会いたい/会いたくない、話をしたい/したくない、愛情があっ

た/薄かった、迷惑をかけたくない、心配している、など)であった。

家族・親族の話題の有無(自由記述から集計)

話題に出た家族の続柄(自由記述から集計)

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43

近隣の人

古くからの友人

支援関係者

その他

  N=47

85.1

12.8

10.6

8.5

0 50 100 (%)

N= 138

なかった(65.9%)

あった(34.1%)

近隣住民・その他の人間関係についての意識

本人への聞き取り調査の中で、近隣住民・その他の話題が出た人は 34.1%で、家族・親族等の話題より頻出

度が落ちる結果となった。そのうち 85.1%が近隣住民についての話題であった。日ごろ接触がある支援関係者

についての話題は 10.6%と少ないが、これはほぼ全ての本人聞き取り調査に支援関係者が同席していたため

と思われる。内容は、現在の関係性(付き合いがある/ない、挨拶程度の会話がある、助けてくれる、嫌がらせ

をされる、けんか/トラブル、など)、現在相手に対して持っている感情(関わりたくない、会いたくない、話した

くない、寂しい、嬉しい、など)などであった。

近隣住民・その他の人間関係についての話題の有無(自由記述から集計)

話題に出た近隣住民・地域等の話題の有無(自由記述から集計)

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44

N= 138

ある(63.0%)

無回答(2.9%)

ない(34.1%)

テレビを見ること

ご飯を食べること

ラジオを聴くこと

お風呂に入ること

デイケアサービスに行くこと

家族・親族と話すこと

その他

N=87

32.2

27.6

16.1

14.9

14.9

13.8

34.5

0 10 20 30 40 (%)

(2) 近楽しみにしていること、つらかったこと

近の楽しみ

本人に 近何か楽しみにしていることはないか尋ねたところ、「ある」と回答した人は 63.0%であった。このう

ち楽しみにしていることの内容は、「テレビを見ること」(32.2%)、「ご飯を食べること」(27.6%)などであった。なお、

「デイケアサービスに行くこと」(14.9%)は、選択肢にはなかったものであるが、「その他」の中で多くの回答があ

ったため、新たに項目立てを行い集計し直おした。ほかに「その他」の内容としては、趣味(つり、絵を描く、民

謡、詩吟、カラオケなど)、人に会うこと、話をすること、新聞、本、雑誌などを読む、食事に行く、などが挙げら

れた。

近の何か楽しみにしていることはありますか【一つだけ○】

それはどんなことですか【当てはまるもの全てに○】

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45

家族との思い出

仕事をしていたころ

旅行したこと

趣味が充実していたころ

今が楽しい

特にない、覚えていない

その他

N=138

17.4

15.2

11.6

7.2

7.2

3.6

6.5

0 5 10 15 20(%)

家族との死別

怪我・病気・体調の悪さなど

特にない、覚えていない

家族との関係、いじめ、虐待の問題など

土地、遺産、金銭などのトラブル

仕事上のトラブル、つらさなど

災難・事故など

漠然とした孤独感

ペットとの別れ

家族の介護

その他

N=138

19.6

18.1

8.0

7.2

5.8

2.2

2.2

2.2

1.4

1.4

6.5

0 5 10 15 20 25 (%)

今までで一番楽しかったこと

本人に今まで楽しかったことは何かを尋ね、自由回答として記載された内容について分類の上、集計を行っ

た。「家族との思い出」(17.4%)が も多く、次に「仕事をしていたころ」(15.2%)、「旅行したこと」(11.6%)が挙げら

れた。また、「今が楽しい」(7.2%)、「特にない、覚えていない」(3.6%)との回答もみられた。

今までで一番楽しかったことは何ですか(自由記述から集計)

今までで一番つらかったこと

本人に今までつらかったことは何かを尋ね、自由回答として記載された内容について分類の上、集計を行っ

た。 も多かった回答は、「家族との死別」(19.6%)であり、次に「怪我・病気・体調の悪さなど」(18.1%)であった。

この他に、「家族との関係、いじめ、虐待の問題」(7.2%)、「土地、遺産、金銭などのトラブル」(5.8%)、「仕事上の

トラブル、つらさなど」(2.2%)など人間関係にまつわる話も出された。その一方で、「特にない、覚えていない」と

の回答も 8.0%あった。

今までで一番つらかったことは何ですか(自由記述から集計)

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46

N= 138

特にない(58.7%)

無回答(0.7%)

ある(40.6%)

身体的なつらさや体力の衰え

家事や身の回りのことが困難

支援に対する不満

ゴミの片づけ、掃除、整理整頓など

外出が困難(買い物、通院、等)

金銭、資産等に関する問題

家族への不満(面倒を見てくれない、口うるさいなど)

物忘れなど

生活における安全性の問題

その他

N=56

41.1

21.4

14.3

12.5

8.9

7.1

7.1

3.6

3.6

17.9

0 10 20 30 40 50 (%)

(3) 困っていること

身の回りで困っていること

本人に身の回りで何か不満なことや困っていること等を尋ねたところ、それらが「ある」と答えた人が 40.6%、

「特にない」と答えた人が 58.7%であった。身の回りでの不満や困っている人の方が、少ないことになるが、本人

が困っていない限り、支援・介入が難しくなる。ただし、聞き取り調査対象者には改善事例も含まれているため、

身の回りで不満なことや困っていることが既に解決されている場合も考えられる。

身の回りで不満なことや困っていることがあると答えた人のうち、不満や困っていることの内容を自由記述か

ら分類の上、集計したところ、「身体的なつらさや体力の衰え」が も多く(41.1%)、次いで「家事や身の回りの

ことが困難」(21.4%)と、身体に関する問題・不安が多く挙げられた。また、施設や配食サービスのご飯の量や、

まだ使えるものも捨てられてしまう、などといった「支援に対する不満」も 14.3%挙げられた。

「ゴミの片付け、掃除、整理整頓」は 12.5%(7 人)であり、センター職員又は委員・支援員に対し行った事前調

査ではゴミ屋敷化のケースが全体の 37.6%(52 ケース)であったことと比較すると、ゴミ屋敷化している状態でも

本人にとってはそれほど困っていない様子が伺える。

身の回りのことで何か不満なことや困っていること、してもらいたいことはありますか

上記で「ある」と答えた場合、その内容

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47

N= 138特にない(68.8%)

無回答(0.7%)

ある(30.4%)

構造的なダメージ、損傷、老朽化など

設備の不備等

バリアフリー化が必要

家賃、住宅ローン、固定資産税などの支払い能力の問題

セキュリティの問題

動物や虫など

庭木のメンテナンス

退去の要請

その他

N=42

28.6

16.7

16.7

7.1

4.8

4.8

4.8

2.4

21.4

0 10 20 30 (%)

住居について困っていること

本人に住居について不満なことや困っていることを尋ねたところ、それらが「ある」と答えた人が 30.4%で、「特

にない」と答えた人が 68.6%であった。不満や困っている内容を自由記述から分類の上、集計したところ、「構

造的なダメージ、損傷、老朽化」が も多く(28.6%)、「設備の不備等」、「バリアフリー化が必要」がともに 16.7%

であった。また、「家賃、住宅ローン、固定資産税などの支払い能力の問題」(7.1%)など経済的な問題も挙げ

られた。なお、「セキュリティの問題」(4.8%)は、どろぼうが入らないようにしてほしい、といった要望であるが、本

人の認知によるものも含まれる可能性があり、留意が必要である。

住んでいる家(住居)について、何か不満なことや困っていること、してもらいたいことはありますか

上記で「ある」と答えた場合、その内容

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48

3.支援者から見た状況

(1) セルフネグレクト状態になった要因と背景

センター職員又は委員・支援員に対し行った事前調査で、セルフネグレクトになったきっかけ・理由・背景につい

て尋ね、得られた自由回答から分類の上、集計を行った。 も多かった回答は、「認知症・物忘れ・精神疾患等の

問題」(28.3%)であった。認知症と物忘れ、認知症と精神疾患は、症状の外形だけでは識別が難しいことから、同

一項目として集計した。「親しい人との死別の経験」(27.5%)、「家族・親族・地域・近隣等からの孤立、関係悪化な

ど」(25.4%)など人間関係による要因も大きい。また、「病気・怪我など身体症状の問題」(18.8%)については、高齢化

に伴うものも多く含まれ、本人が身の回りで も困っていることとして挙げられた事項でもある。火事・災難にあった、

詐欺にあった、仕事でリストラされた、など外部要因をまとめた「何らかのトラブル・事故の経験」が 16.7%、頼りたく

ない、束縛されたくない、頑固である、攻撃的であるなどの「もともと人との交流がとりにくい性格」が同じく 16.7%で

あった。また、整理整頓ができない、物が捨てられない、掃除をしないなどの「もともと片付けが苦手な性格」が

7.2%であった。

これらの要因が単独でセルフネグレクトを引き起こす場合もあれば、複合的にからみあって症状を形成していく

場合もあり、何が問題の基点だったのかを特定することは必ずしも容易ではない。外部要因が引き金となって精

神疾患を引き起こすケースもあれば、逆に精神疾患から人間関係のトラブルを引き起こし状況が悪化するケース

もあると考えられる。

外部要因が引き金となる例では、火事、水害や交通事故などの災害・災難が原因で、身体症状や精神に異常

をきたしたケースや、家族との死別、詐欺による借金、人に激しく非難された経験等が原因となり鬱や妄想などの

精神的症状が出てきたケースがある。

一方で、認知症による盗難妄想から家族・親族が物や金銭を盗むと思い込み、家族・親族を寄せ付けなくなるケ

ースや逆に家族・親族が関わりを持ちたがらなくなるケースも見られた。また統合失調症による幻聴・幻覚症状が

あり、常に誰かから監視や詮索されているという恐怖感から家中の窓をダンボールやガムテープで覆うことによっ

て引きこもりやゴミ屋敷化していくケースもある。

原因が何十年も昔に遡るケースも多く、「もともと知的レベルや障害などで自立が困難だった」、また「もともと人と

の交流がとりにくい性格」、「もともと片づけが苦手な性格」といった理由も挙げられている。これらは本人の先天的

な気質だけでなく、家庭環境、生育暦等人間関係による後天的な要因も大きく関与しているため、問題の基点の

特定は難しい。

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49

認知症・物忘れ・精神疾患等の問題

親しい人との死別の経験

家族・親族・地域・近隣等からの孤立、関係悪化など

病気・怪我など身体症状の問題

何らかのトラブル・事故の経験

もともと人との交流がとりにくい性格

生活資金不足・経済的破綻・生活苦など

もともと知的レベルや障害などで自立が困難

もともと片づけが苦手な性格

飲酒の問題(アルコール依存症など)

不明

その他

N=138

28.3

27.5

25.4

18.8

16.7

16.7

10.1

8.7

7.2

2.2

8.7

5.1

0 10 20 30(%)

調査対象者が現在の状況(改善している場合は以前の状況)になったきっかけ・理由について詳細をお聞かせください。

(自由回答より集計、複数回答)

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50

N= 138

一人暮らし(79.0%)

同居家族がいる(21.0%)

N= 109

独身(31.2%)

分からない(1.8%)

その他(9.2%)

結婚したことがある・現在子どもあり(43.1%)

結婚したことがある・現在子どもなし(14.7%)

(2) 家族・親族や近隣住民との人間関係

同居家族の有無について(一人暮らしの割合)

聞き取り対象者の同居家族の有無について、地域包括支援センター調査及び民生委員調査の結果をもとに集

計したところ、一人暮らしが 109 名で 79.0%を占めたが、同居家族がいる割合は 21.0% (29 名)あった。また、一人

暮らしをしている人のうち、現在子どもがいる人は 43.1%であった。

現在一人暮らしか/同居家族がいるか

現在一人暮らしの人の結婚暦等

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51

家族の高齢化

世話の仕方がわからない

家族が関わりを拒んでいる

本人が世話を受け入れない

家族の仕事等の事情

その他

分からない

N=17

35.3

35.3

23.5

17.6

11.8

64.7

0.0

0 20 40 60 80 (%)

N= 29

ほとんど面倒を見ていない(58.6%)

面倒を見ている(41.4%)

同居家族

センター職員又は委員・支援員に対し行った事前調査で、同居家族が調査対象者の身の回りの世話をしている

かどうかを尋ねた。同居家族の 29 名のうち、家族が面倒を見ているケースは半分に満たず 41.4%であった。世話

をしない理由について尋ねたところ、「家族の高齢化」(35.37%)、「世話の仕方がわからない」(35.3%)が も多かっ

た。その他にも様々な理由が挙げられ、「その他」として、家族が精神疾患、認知症、知的障害者等である、家族

に対して不満を持っていてうまくコミュニケーションがとれない、などの回答があった。

同居している家族や親族は、調査対象者の身の回りの世話をしていますか【一つだけ○】

(上記でほとんど面倒をみないと答えているケースで)世話をしていない理由はなんですか【当てはまるもの全てに○】

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52

N= 109

同一市町村内(36.7%)

分からない(6.4%)いない

(11.0%)

他の都道府県(33.0%)

同一都道府県内(隣接していない市区町村)

(9.2%)

隣の市区町村(3.7%)

N= 109

定期的な行き来があり、身の回りの世話をしている(23.9%)

無回答(1.8%)

分からない(0.9%)

ほとんど行き来がなく、話もしていない(44.0%)

時々行き来があり、電話で話したりしている

(29.4%)

一人暮らしの場合の家族との距離

センター職員又は委員・支援員に対し行った事前調査で、一人暮らしの調査対象者の家族との距離について

尋ねた。家族がいない人はわずか 12 名(11.0%)であり、家族がいる人が 8 割以上(82.6%)を占めた。また、家族が

同一市町村内に住んでいる人が 36.7%、同一都道府県内に住んでいる人が約半分を占めた。物理的距離から見

ると、定期的な行き来が可能と思われる同一市町村に住んでいる家族の割合(36.7%)に比べて、実際に「定期的な

行き来がある」家族がいる割合は 23.9%と少ない。また、「ほとんど行き来がなく、話もしていない人」の割合は

44.0%と高い。

調査対象者に家族はいますか。また今どこに住んでいます【一つだけ○】

調査対象者は家族や親族と話したり、会ったりしていますか。行き来はありますか。【一つだけ○】

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53

N= 48

近隣住民は本人の状況を知らない(2.6%)

分からない(9.0%)

その他(29.5%)

本人の方が避けている(23.1%)

トラブルは発生していないが、近隣住民が避けている

(9.0%)

何らかのトラブルにより、近隣住民が避けている

(26.9%)

N= 138ほとんど接点がない

(56.5%)

分からない(1.4%)

接点がある(42.0%)

近隣住民との接点

センター職員又は委員・支援員に対し行った事前調査で、調査対象者が日常生活の中で近隣住民に接するこ

とがあるかどうかを尋ねた。「ほとんど接点がない」(56.5%)ケースが半分以上を占めた。「接点がある」(42.0%)場合

の接し方は様々で、挨拶程度のものから、時々様子を見に来てくれる、家の修理をしてくれる、など世話になること

もあれば、老人会など町内イベントへ参加する例もあった。

「ほとんど接点がない」と答えたケースについて、接点がない理由を尋ねたところ、「近隣住民は本人の状況を知

らない」とする割合はきわめて低く(2.6%)、トラブルの有無に関わらず「近隣住民側が避けている」ケースが合わせ

て35.9%と も高い。次いで、「本人の方が避けている」ケースが23.1%であった。「その他」の理由として、本人が外

に出ない、何となくお互いが避けている様子、一部の人とだけ会話する、本人に声をかけにくい雰囲気がある、本

人の家の周辺に住宅がない、などが挙げられた。

調査対象者が日常生活の中で近隣住民に接することがありますか【一つだけ○】

(上記で「ほとんど接点がない」と答えたケースについて)接点がないのはどうしてですか【一つだけ○】

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54

N= 138

何らかの具体的な支援に向けて調整中(7.4%)

今のところ具体的な支援をしていない(見守り等のみ)

(32.4%) 何らかの具体的な支援を実施している(60.3%)

(3) 実施している支援策及び今後必要な支援策

センター職員又は委員・支援員に対し行った事前調査で、現在実施している主要な支援策について尋ね、得ら

れた自由回答から、何らかの具体的な支援策を実施しているかについて集計した。既に「何らかの具体的な支援

策を実施している」ケースは 60.3%であり、今のところ見守り訪問を続け信頼関係を構築していくことが主要な支援

策であるケースが 32.4%あった。具体的な支援策として挙げられていたのは以下のものである。

(ア) 各種申請手続き(介護保険・生活保護・介護施設等入居、成年後見人制度等)

(イ) 住環境の改善(ゴミの一掃、ハウスクリーニング等、家の修理、ライフラインの設備等)

(ウ) 日常生活支援(ホームヘルパー派遣、訪問介護、配食サービス、デイケアサービス、ショートステイ、送

迎等の移動補助)

(エ) その他(本人との信頼関係構築、家族・親族探し及び連絡調整、金銭・財産・資産等管理等)

センター職員又は委員・支援員からは、具体的な支援の実施に至るまでのプロセスにおいて、(エ)その他「本

人との信頼関係構築」や「家族・親族探し及び連絡調整」が困難であるという声が多く聞かれた。具体的な支援が

できるようになるには、まず支援者と本人との間の信頼関係が構築された上で、現状を開示してもらうことが必要で

あるが、そこに至るまでにかなりの時間を費やすケースが多い。支援員は粘り強く慎重に対話を続けながら本人が

心を開くのを待つが、家の中に入れて初めて想像以上の惨状を目の当たりにすることになる。特に生命のリスクが

大きい場合には、どこまで迅速に介入ができるのかといった問題がある。家族・親族が支援を拒否している場合の

対策も必要であり、セルフネグレクトも高齢者虐待法と同様に立ち入り調査等に関する法的なバックアップがほし

いという声もあった。また、介護施設等への入居の際には保証人が必要となるが、一人暮らしの場合には家族・親

族探しから始めなければならないケースもある。さらに本人と家族・親族との関係が良くない場合にはその調整も

行わなければならない。

具体的な支援策の実施状況

また、今後さらに必要な支援策として挙げられていたのは以下のものである。

(オ) 介護認定など各種申請手続きの推進

(カ) 権利擁護事業、財産管理、成年後見人制度等の推進

(キ) 日常生活支援サービスの充実(紙おむつ券、配食サービスの申請、デイサービスの利用促進、施設へ

の入所、通院の同行、ホームヘルパーの派遣回数の増加等)

本人や家族・親族との調整が進まず、介護認定が進んでいないケースがあるため、「(オ)介護認定など各種申

請手続きの推進」との回答があったと思われる。また、財産管理等を行政が担っているケースもあり、成年後見人

制度等の利用推進が見込まれる。さらに、身体症状や認知症等の悪化に備え、そうした場合にはどういった支援

の追加が必要かについて、経済面も考慮したうえで予め計画を立てる必要である。

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Ⅴ.用語の解説

セルフネグレクト(自己放任)

在宅で「高齢者が、通常一人の人として生活において当然行うべき行為を行わない、或いは、行う能力がないこと

から、自己の心身の安全や健康が脅かされる状態に陥ること。」(津村智恵子「セルフ・ネグレクト防止活動に求める

法的根拠と制度的支援」(高齢者虐待防止研究、2009))

これは、認知症などのような疾患から適切な判断力が欠けている、又は、様々な事情で生活意欲が低下している

ために自己放任のような状態になっている場合(無意図的)と、判断力や認知力が低下していないが本人の自由意

志によって自己放任のような状況になっている場合(意図的)を含みます。

<セルフネグレクトの例>

①家の前や室内にゴミが散乱した中で住んでいらっしゃる方

②極端に汚れている衣類を着用したり、失禁があっても放置している方

③窓や壁などに穴が開いていたり、構造が傾いていたりする家にそのまま住み続けていらっしゃる方

④認知症であるにも関わらず介護サービスを拒否されている方

⑤重度の怪我を負っているにも関わらず治療を拒否されている方 など

障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)判定基準

生活自立 ランク J 何らかの障害等を有するが、日常生活はほぼ自立しており独力で外出する

J-1.交通機関等を利用して外出する

J-2.隣近所へなら外出する

準寝たきり ランク A 屋内での生活は概ね自立しているが、介助なしには外出しない

A-1.介助により外出し、日中はほとんどベッドから離れて生活する

A-2.外出の頻度が少なく、日中も寝たり起きたりの生活をしている

ランク B 屋内での生活は何らかの介助を要し、日中もベッド上での生活が主体である

が、座位を保つ

B-1.車いすに移乗し、食事、排泄はベッドから離れて行う

B-2.介助により車いすに移乗する

寝たきり

ランク C 1日中ベッド上で過ごし、排泄、食事、着替において介助を要する

C-1.自力で寝返りをうつ

C-2.自力では寝返りもうたない

(出典:厚生労働省「要介護認定 認定調査員テキスト 2009 改訂版」)

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認知症高齢者の日常生活自立度判定基準

ランク 判定基準 見られる症状・行動の例

Ⅰ 何らかの認知症を有するが、日常生活は家庭内お

よび社会的にほぼ自立している。

日常生活に支障を来たすような症状・行動や意思

疎通の困難さが多少見られても、誰かが注意して

いれば自立できる。

Ⅱa 家庭外で上記Ⅱの状態が見られる。 たびたび道に迷うとか、買物や事務、金銭管

理などそれまでできたことにミスが目立つ等

Ⅱb 家庭内でも上記Ⅱの状態が見られる。 服薬管理ができない、電話の対応や訪問者

との対応など一人で留守番ができない等

Ⅲ 日常生活に支障をきたすような症状・行動や意思

疎通の困難さが見られ、介護を必要とする。

Ⅲa

日中を中心として上記Ⅲの状態が見られる。 着替え、食事、排便、排尿が上手にできな

い、時間がかかる。

やたらに物を口に入れる、物を拾い集める、

徘徊、失禁、大声・奇声をあげる、火の不始

末、不潔行為、性的異常行為等

Ⅲb 夜間を中心として上記Ⅲの状態が見られる。 ランクⅢa に同じ

日常生活に支障をきたすような症状・行動や意思

疎通の困難さが頻繁に見られ、常に介護を必要と

する。

ランクⅢに同じ

M

著しい精神症状や周辺症状あるいは重篤な身体

疾患が見られ、専門医療を必要とする。

せん妄、妄想、興奮、自傷・他害等の精神症

状や精神症状に起因する問題行動が継続

する状態等

(出典:厚生労働省「要介護認定 認定調査員テキスト 2009 改訂版」)