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ビッグデータを用いた 交通渋滞緩和の経済効果分析 東京外国語大学 インドネシア語4年 園田隆盛

ビッグデータを用いた 交通渋滞緩和の経済効果分析ビッグデータをテーマとした場合の課題: 一括りにビッグデータと言っても、適用範囲が広すぎるの

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Page 1: ビッグデータを用いた 交通渋滞緩和の経済効果分析ビッグデータをテーマとした場合の課題: 一括りにビッグデータと言っても、適用範囲が広すぎるの

ビッグデータを用いた 交通渋滞緩和の経済効果分析

東京外国語大学

インドネシア語4年

園田隆盛

Page 2: ビッグデータを用いた 交通渋滞緩和の経済効果分析ビッグデータをテーマとした場合の課題: 一括りにビッグデータと言っても、適用範囲が広すぎるの

①テーマ決定の経緯

②交通ビッグデータについて

③費用便益分析

④合宿までの課題

⑤参考文献

概要

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テーマ決定の経緯

☆去年の夏合宿の発表でテーマとした「ビッグデータ」を深めていきたい。

ビッグデータをテーマとした場合の課題:

一括りにビッグデータと言っても、適用範囲が広すぎるのでテーマとしての実態が掴みにくい。

金融、インフラ、医療等、ビッグデータを活用することで便益を生み出す可能性のある分野を一つ取り上げ、経済効果を分析することとした。今回は「交通」を取り上げる。

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交通渋滞に着目した理由

車を運転していた時、普段使う電車の遅延よりも渋滞が発生することの方が多いと感じた。

→渋滞をよって生み出される時間損失は経済に大きな影響を与えているのでは?

実際に調べてみると、日本全国の渋滞による時間損失は1人当たり年間30時間、金額的な損失は年間12兆円に上るということがわかった。(国土交通省道路局による)

この課題を解決することは、我々の日常生活に大きな価値をもたらすだけでなく、4年後に控えるオリンピックや交通渋滞がさらに深刻な問題となっている新興国の発展に活かすことができ、その意義は大きいと考える。

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①(これまで想定していたこと)

ビッグデータを活用し、渋滞が発生しないように自動車の走行を誘導する

②(新たに取り入れたこと その1)

混雑個所をより正確に割り出して整備し直すなど、ビッグデータを対策立案検討ツールとして用いる

③(新たに取り入れたこと その2)

②で割り出し後、整備を行った場合にそれらの混雑個所において実際に改善が見られるか、測定・実証に再びビッグデータを用いる

交通渋滞の緩和においてもビッグデータを用いる段階は多岐にわたる

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活用事例 (産経新聞東京朝刊2016年7月17日[日])

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交通渋滞の緩和

ビッグデータ活用

経済効果

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データには種類がある

ビッグデータの利点は 「早い」 「安い」 「多い」 に集約できる。

交通という分野における重要なビッグデータとして 「プローブデータ」があげられる。

【プローブデータ ( car probe data)】

GPSを搭載した自動車から得られる移動軌跡情報 (緯度経度・車両ID・時刻)

プローブデータにも種類があり、大まかに民間プローブと官プローブに分けられる。 他にも、ETC2.0プローブ、自走プローブ、バスプローブ等、様々な区別が存在する。

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民間プローブと官プローブの違い

民間プローブ 官プローブ

データ取得路線 県道以上の道路 直轄管理道路のみ

データ取得期間 毎日(7時~19時) 実走行日・時間帯

走行台数 全国約100万台 調査車両台数のみ

走行速度 流れに乗った速度 法定速度以下

コスト 約450円/km 約6000円/km

出典:「民間プローブの有効活用について」大宮国道事務所

民間プローブはまさに、「早い」 「安い」 「多い」 という特徴を持つデータである。

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分析方法

以上の数字は国土交通省が2008年11月に発表した 【費用便益分析マニュアル】に則って試算したものだと思われる。

このマニュアルには「走行時間短縮便益」、「走行経費減少便益」、「交通事故減少便益」の算定式が紹介されている

時間損失は1人当たり年間30時間 金額的な損失は年間12兆円

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分析モデル

BT : 走行時間短縮便益(円/年) BTi : 整備i の場合の総走行時間費用(円/年) Qijl : 整備i の場合のリンクl における車種 j の交通量(台/日) Tijl : 整備i の場合のリンクl における車種 j の走行時間(分) αj : 車種 j の時間価値原単位(円/分・台) i : 整備有の場合W 、無の場合O j : 車種 l : リンク(整備区間、交差点等)

車種 時間価値原単位

乗用車 40.10

バス 374.27

乗用車類 45.78

小型貨物車 47.91

普通貨物車 64.18 ※2008年価格

出典:費用便益分析マニュアル(国土交通省、2008年11月)

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試算例

対象区間:新宿町3丁目交差点 (上下線)

【比較対象データ例】(上り方向:平日)

整備前 15.6 km/h (2009年度12月~1月)

整備後 19.2 km/h (2010年度12月~1月)

工事完成:2010年12月12日

平均旅行速度が 3.6 km/h 向上し、 移動時間が短縮された

出典:民間プローブの有効活用について(大宮国道事務所、緑川雄大、2010年)

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合宿までの課題

渋滞が起きるメカニズムを紹介する項目を追加する

本田技研工業株式会社からプローブデータを取得し、費用便益分析マニュアルに則って最新の数値で試算する

マイナンバーとプローブデータの組み合わせの実現可能性を予測できる情報を入手する

費用便益分析だけでなく、重回帰分析を用いて、交通渋滞の整備をダミー変数に置き換え、他の要因とともに説明変数とし、左辺をGDPにする等、経済成長にどの程度影響を与えるかまでを分析対象とする

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⑤参考文献

• ビッグデータの活用等による地方路線バスの事業の経営革新支援調査 国土交通分野でのビッグデータ利用~現状・今後の課題・事例紹介~ データ収集・分析ツール マニュアル(国土交通省、2016年3月)

• ビッグデータの覇者たち(海部美和、2013年4月)

• 民間プローブの有効活用について(大宮国道事務所、緑川雄大、2010年)

• 費用便益分析マニュアル(国土交通省、2008年11月)

• 都市公共事業が地域にもたらす経済的・社会的効果の予測・評価に関する事例研究(仙台都市総合研究機構、2001年)

• 大都市における複合交通空間の整備効果の計測(肥田野、武林、1990年)

• 外部経済効果を考慮した、都市交通改善がもたらす開発利益の帰着分析モデル (林良嗣ら、1989年)