ハードウエアの変遷にみるオーディオメーカーの歴史　[第23回]

ラックスマンの捗揚(2)名機と呼ばれるSQ38の系譜

柴崎功sHiBAZAKi is｡｡

1963年に発売されたプリメインアンプSQ38は,木製

キャビネットの高級感に満ちた外観と音の良さで注目さ

礼,これを機に｢38｣の型番を付けた38 (サンバチ)

シリーズプリメインアンプが相次いで登場した.今回は

名機と呼ばれる｢SQ38｣の系譜を,回路技術まで掘り

下げて振り返ってみよう.

38シリーズの

元祖SQ38

1962年に発売されたHi-Fiプリ

メインアンプSQ5Bの次に話題に

なったのか1963年に登場した写

真1のSQ38である.信号系は図1

1 970年代前半に一世を風靡したSQ38FDの内部構造

の構成で　入力はフォノが主体に

なっており,ライン入力信号は抵

抗分割でいったん減衰させ　NFB

切り換えでMM用イコライザーア

ンプをフラットアンプに変更して

ラインレベルに増幅する. MCカ

ートリッジ入力のPHONOlには,

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[写真1] 1963年に発売

された38シリーズの元祖SQ38(発売時価格55.000円)出力管は

6RA8で出力10W, OPT

はOY-14型

プリアンプ郁G i王>パワーアンプ部

自社製パーマロイ昇庄トランスが

組み込まれている.

トーンコントロールには1961年

発売のSQ5Aに初採用された

LUX型を導入. LUX型はフラッ

トポジション付近のうねりが非常

に少ないNFB型トーンコントロー

ル回路だ　プリアンプ部の真空管

はすべて高〟双3極管1 2AX7で

1本をLとRで共有.セパレーショ

ンより特性マッチングを重視して

いる.モードスイッチは　OFF/

STEREO/REVERSE/MONO-

L/MONO-Rの5ポジションである.

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54

[図1] sQ38のLチャンネル回路構成

MJ 20

ラックスマンの歩み

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[写真2] 1964年に発売されたマイナーチェンジ後継機SQ38D (発売時価格58,500円).テープモニタースイッチを

右錆に増設

[写真3] SQ38Dの復刻版SQ-38Dのリアパネル　録音

用DiN端子とテープモニター端子の増設がSQ38との大きな

相違点である

MJ

パワーアンプ部は初段に低雑音

5極管6267,ムラード型位相反転

兼ドライバーに中〟双3極管12AU

7,出力管には電力増幅用傍熱型3

趣管dR-A8, OPTには自社製広

帯域トランスOY-14を採用　2次

巻線の16Qタップから初段カソー

ドに負帰還をかけた構成で　定格

出力は10Wである.

第2世代機SQ38DとSQ38Ds

東京オリンピックが開催された

1964年には第2世代機SQ38D (写

真2), 1965年にはSQ38Dから昇

圧トランスを省いたSQ38Dsが発

売された

第2世代機はTAPE入力が追加

されてAUX3が廃止され,テープ

モニタースイッチと録音用DIN端

子の増設が大きな変更点で　回路

定数も一部変更.

SQ38Dの復刻版SQ-38Dのリア

パネルは　写真3のようになって

いる.

回路を一新した

第3世代機SQ38F

1968年になると,出力を30W

にアップして回路を一新した

SQ38F (写真4)が登場.外観や

音質だけでな(,プリアウトとメイ

ンイン端子を設けて,ほかのパワ

ーアンプやプリアンプと組み合わ

せて使うこともできるため,人気

201 5/6

[写真4]外観も機能も回路も-新し,出力

管50C-AIOで30W

にパワーアップして

1968年に発売された

SQ38F (発売時価格

78,000円)

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が急上昇した

プl)アンプ部は図2の構成だ

イコライザーアンプはMMとテー

プヘッド専用でMCに対しては

外付け昇圧トランスで対処　ライ

ン入力信号はイコライザーアンプ

をバイパスして,後方のFUNC-

TIONスイッチに送られる.

機能面ではトーンコントロール

のターンオーバー周波数切り換え

や, 2つの周波数が選べるローカッ

トとハイカットフィルターの増設が

大きな違いで　モードスイッチは

MONO-L/MONO-R/MONO-

L+R/STEREO/REVERSEの6

ポジションになった

パワーアンプ部は図3の構成で

初段に6267,ムラード型位相反

転兼ドライバーに12AU7,出力替

には電力増幅用傍熱型3極管50C-

AIO, OPTにはOY-15を採凪　2

次巻線の16Qタップから初段カソードに負帰還をかけた構成だ位

相反転回路出力側の半固定抵抗は,

上下のゲインバランスを調整して2

次歪みを最小にするトリマーであ

る.ヘッドフォン端子,ヘッドフォ

ンプラグを挿すとスピーカーが切

れるスイッチ, OPTの2次タップ

を切り換えるスピーカーインピー

ダンスセレクターが増設されて使

い勝手が向上した　定格出力は

30Wである.

機能アップした

第4世代機SQ38FD

1970年発売のSQ38FD (写真5)

は,テープヘッド入力が廃止され

てAUX3入力に置き換わり,ジャ

ンパー線を使わなくてもプリアウ

トとメインインが連結できるスイッ

チが追加され　スピーカー端子が2

系統になってスピーカー切り換え

スイッチも付いた写真6, 7ば)

アパネルと内宮階道である

パワーアンプ部は位相反転管が

中〟双3極管1 2AU7からFM受信

機用高〟双3極管eDT8/eAQ8に

変更され位相補正が強化されて

NFB量が増え.より高性能化され

たSQ38FDは格調高いデザイン

と暖かくてゆとりに満ちた音質で

またたく間にマニア垂涯のアンプ

となった

55

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[図2] SQ38Fのしチャンネルナノアンプ回路

[図3] SQ38Fのしチャ

ンネルパワーアンプ回路

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シリーズ最大の

ヒットモデル

第5世代機SQ38FD i1

1974年になるとSQ38FDの回

路を踏襲して回路定数をより最適

化し,コンデンサーの品種変更な

ど部品の見直しも行って音質をさ

らに練り上げたSQ38FD II (写真

8)が登場.これがSQ38FDを凌

ぐ38シl)-ズ最高のヒットモデル

になった

56

負バイアス

超多機能の第6世代機LX38と

改良版第7世代機Dく38u

1978年になると当時の技術を集

大成したカスタムモデルとして,

写真9のLX38 (ラックス･サンパ

チ)が登場した. ｢LX｣はLUXの

略である.パワーアンプ部は　位

相反転回路の共通カソード抵抗に

3次歪み調整用トリマーを追加した

り,出力管カソードに100抵抗を

追加したり, 2次巻線が60のみの

斬OY-15型OPTになってスピー

カーインピーダンスセレクターが

廃止されるなどの小変更はあるが

基本的にはSQ38FDと同じ構成で

ある.

しかしプリアンプ部は,フロン

トパネルのレバースイッチが増え

たことからわかるようにアクセサ

リー機能がさらに増え,イコライ

ザーアンプ以外の回路が図4のよ

うに一新された　新たに加わった

MJ

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鵬

酬

脚

の　型　ス　H　ト　タカ　い　M

ラックスマンの歩み

[写真14]外観も回路も一新して2008年に発売されたSQ-38u (発売時価格36万円)横幅を40cmに縮め,リモコ

ンにも対応

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[写真15] SQ-38Uのリアパネル.スピーカー範子を2系統設

けてiECインレットを2Pに変更iラインフェーズセンサーは廃止

劇場8年に発売された写真14-16

に示すSQ-38u (uはuldmateの

略)である.これまでの38シリー

ズは横幅が大きすぎて現代の一般　　CD

的なラックに入らないが　本機は

外観も回路も一新してラックに収　　LiNEl

まる40cm幅になった

プリアンプ部は図5の構成で

ハイ/ローのタップ付きMC昇圧

トランスが内蔵され　信号切り換

えがリレーになってリモコン対応　　R[COU

MJ

肥トーンコントロールには

LX38の回路を簡素化したLUX方

式CR-NF型(NFB型とCR型ローカットのハイブリッド方式)が

採用されている.

パワーアンプ部は図6に示すム

ラード型で　出力管はEL34をUL

灘プッシュプルで使用.定格出

力は30Wである

蒸写真1/4/8-12/14-16はラックスマン

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[図6] S0-38UのLチャンネルパワーアンプ回路

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[写真16] SQ-38Uの内部　横幅を縮めるため出力管に細長いEL34を採用リレーやモーターボノユームを用いてリモコンに

対応した

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･注)アース記韮'葉芽ニス [図5] SQ-38UのLチャン

ネルナノアンプ回路

㊤

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-約12dBのNFB