14
2 流石ゆり子 (看護学部長) 4 遠藤みどり (看護学研究科長) 6 横森愛子 (小児看護学 講師) 7 高取充祥 (成人看護学 助教) 渡邊由香 (母性看護学 助手) 8 坂本律子 (老年看護学 助手) 9 平尾百合子 (看護学部広報委員長) 11 清水惠子 (精神看護学 教授) 教員の海外研修報告 P11~13 新任教員の紹介 P6~8 巻頭のことば P2~5 オープンキャンパスの紹介 P9~10 看護学部 広報誌 山梨県立大学看護学部 Yamanashi Prefectural University 山梨県立大学大学院看護学研究科 Graduate School of Nursing, Yamanashi Prefectural University 2016 1

ハーモニー...3 こ こ で は 紙 面 の 関 係 上 ① を 中 心 に 、 2 年 間 の 実 績 を 述 べ ま す。 病 院 Ã 護 師 筆 頭 の 共 ÷ 研 究 の テ

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Page 1: ハーモニー...3 こ こ で は 紙 面 の 関 係 上 ① を 中 心 に 、 2 年 間 の 実 績 を 述 べ ま す。 病 院 Ã 護 師 筆 頭 の 共 ÷ 研 究 の テ

目 次

2 流石ゆり子 (看護学部長)

4 遠藤みどり (看護学研究科長)

6 横森愛子 (小児看護学 講師)

7 高取充祥 (成人看護学 助教)

渡邊由香 (母性看護学 助手)

8 坂本律子 (老年看護学 助手)

9 平尾百合子 (看護学部広報委員長)

11 清水惠子 (精神看護学 教授)

教員の海外研修報告 P11~13

新任教員の紹介 P6~8

巻頭のことば P2~5

オープンキャンパスの紹介 P9~10

看護学部 広報誌

山梨県立大学看護学部 Yamanashi Prefectural University

山梨県立大学大学院看護学研究科 Graduate School of Nursing, Yamanashi Prefectural University

2016 第1号

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巻 頭 の こ と ば

2

わが国の大学における看護系人材の養成は、昭和

27

年の看護系大学の誕生に始まります。平成3年

度にはわずか11

校だった大学が、平成28

年4月

現在253校(うち、公立大48

校)と急増し続け

ています。保健・医療・福祉を取り巻く情勢は

日々変化し、中でも医療の高度化・専門分化に

伴い、看護職には専門性が高く、かつ多様な能力

が求められています。

特に団塊の世代が75

歳以上になる2025年に

向けては、≪

2025年問題≫

として≪

地域包括

ケア≫

の概念のもと医療提供体制の改革をはじめ

とした諸施策が各分野で進められております。

従って、看護にはより高い専門性と共に、あらゆ

る健康レベルの様々な生活の場に暮らす人々の

『生活』を人生の最終段階までカバーする幅広い

能力が、これまで以上に求められます。

山梨県立病院機構との『包括連携協定』締結の

関連記事は、本広報誌「H

armony

」の2014年

第2号に掲載しておりますように、重点項目は、

①共同研究の推進と看護研究学術集会の開催、

②人材交流・人事交流、③実習指導体制の充実・

強化、の3

点です。平成27

年度はこれに④大学

教員及び病院看護師が重要と考える連携のための

方策を加えた4点について実績をまとめると共に、

教員・看護師双方にアンケート調査を実施し評価

を行いました。

より強化・具体化された“教育(大学)と臨床(病院)との連携”

~山梨県立病院機構との『包括連携協定』 2年間の実績から~

看護学部長 流石ゆり子

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3

ここでは紙面の関係上①を中心に、2年間の

実績を述べます。

病院看護師筆頭の共同研究のテーマは、平成

26

17

35

257人から296人(うち学生53

人が72

に)に

増加

し、

参加

満足

度も

大変

い結果

なっています。また双方が、共同研究のメリッ

トや学び等、取り組みの着実な成果を高く評価

する一方で、看護研究学術集会の共同開催への

強い希望がある、実践の科学である看護学発展

のためには大学と病院との共同研究が不可欠で

ある、

今後

の継

続に

向け

て、

運営

も含め

学術集会実施の「システム化」に向けた具体的

検討が不可欠である、さらにこれまでに培った

人間関

係を

土台

に双

方が

積極

的に

働・連

する姿勢が求められる等々、成果と課題が明ら

かになりました。以上より、大学教員も病院看

護師も、2年間の『包括連携協定』の成果を高

く評価すると共にさらなる継続と発展を望んで

おりました。

平成28

年度も早3

か月が経過しましたが、

看護の質向上に向けて着実な取り組みを進めて

おります。

中央病院看護研究学術集会の様子

巻 頭 の こ と ば

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看護学研究科は今年で開設14

年目を迎え、約90

名の

修了生を輩出しています。専門看護師コースと修士

論文コースを設けており、修了生の多くは、専門看護

師、認定看護管理者、大学等の専任教員として県内外

で活躍しています。

平成27

年度は看護学部と看護学研究科の共同による

学長プロジェクト研究『山梨県の将来を担う看護人材

の育成・確保に向けて~本学における学生支援体制の

組織化と関係機関との協働~』に取り組みました。

その中で看護学研究科は、「修了生のキャリア形成の

動向と支援体制構築に向けた取り組み」の一環として

修了生を対象にアンケート調査を実施し、修了生33

状況

どにつ

ご意見やご感想を頂きました。

調査結果の一部ですが、修了生は各々の職場におい

て看護の専門職種としてのキャリアを向上させるため

に、【学会発表や研修会への参加】【知識獲得と能力

向上のための自己研鑽】【外部の講師・委員会等の

活動】【現場の教育支援と体制整備】【看護の質向上

のための専門的支援・活動】【人間関係づくり】など、

所属施設や所属施設以外の地域での専門的活動を積極

的に行っていることがわかりました。

4

地域連携シンポジウムの様子

巻 頭 の こ と ば

大学院看護学研究科ホームページより

看護学研究科の可視化に向けて

大学院看護学研究科長 遠藤みどり

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14

年間の大学院の軌跡の中で、修了生は、それ

ぞれの職場からの支援を得ながら、また勤務調整

を行い各自の能力を発揮させ、また、中間管理職

や管理責任者に就いている修了生は、指導的立場

で人材育成に努め、看護の専門職としての職業

生活を充実させていることがわかりました。

現在、在籍している大学院生は、医療機関の

看護師や助産師、在宅分野での訪問看護師や管理

者など様々な背景をもった人たちが共に、活き

活きと学修しています。各々の実践現場での課題

の共有化を図り、また最新知見を得ながら自律し、

有意機な大学院生活を過ごしています。学長プロ

ジェクトからの意見の中に、修了後も大学院での

学修機会の設定、研究支援の継続、タイムリーな

情報発信等の要望を頂きました。

本大学院看護学研究科が知の拠点の一つとして、

在院生と修了生が交流し、教員も含め研鑽でき、

看護をより深く探求できるように、そして、大学

院の最新情報をタイムリーに発信できるように、

ホームページを開設いたします。

看護学研究科のさらなる発展に向け、多くの

皆様からのご支援やご協力を得ながら、地域と

ともに、地域に根差した存在であるように可視化

(

見える化)

できるようにしたいと思います。

巻 頭 の こ と ば

5

大学院棟の様子

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4月より小児看護学領域の教員として着任し

ました横森愛子です。

私は、小児病棟・外来、消化器外科・皮膚科

病棟で臨床経験を積んだ後、専任教員、大学

教員として小児看護学領域の教育に携わり、

小児がん患児と家族への看護に関する研究や

子どもの健やかな育ちを支援する研究に取り

組んできました。

本学着任前は、縁あって静岡県の大学に勤務

しており、日本平、三保の松原といった自然を

楽しめる生活を送りました。静岡と山梨は隣県

でありながら、交通の利便性があまり良くない

ためか、静岡で暮らしている方はどちらかと

いうと浜松や愛知方面に出向くことが多いと

知り残念でした。小児看護という観点から山梨

は、小児専門病院を持たない県なので、静岡と

の交流が推進されるためにも、中部横断道の

開通を待ち望んでいます。

静岡における小児看護学実習指導中の患児と

家族との関わりは、自己の小児看護観を育む

ことにつながる経験となりました。身体侵襲が

強い治療を受けている患児のセルフケア能力の

高さと患児を看る家族の成長を知り、患児や

家族にとって良い看護とは何かを深く考えさせ

られました。成長・発達の途上にある子どもが

持つ力を見出し、高める看護を行うためには、

もっとその子どもを理解しようとする関わりが

必要ではないのかと気づかされ、今後の課題を

見出すことにつながりました。

これからも子どもや家族が持つ力を高める看護

についてさらに探究していきたいと考えて

います。

どうぞよろしくお願い致します。

新 任 教 員 紹 介

小児看護学領域

横森

愛子

講師

「子どもの健やかな育ちを支援して」

6

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7

「8年ぶりに戻りました」

成人看護学領域

高取

充祥

助教

4月より成人看護学領域の教員として着任いたしました高取

充祥です。

私は本学の1期生であり、卒業後に看護師として山梨県内

の救命救急センターに就職し、5年間の臨床経験を積みまし

た。その後、勤務しながら千葉大学大学院看護学研究科に

進学しました。修士論文のテーマは、救命救急センターでの

臨床経験から、初療室(患者が一番最初に運ばれる場所)に

おける蘇生処置時の家族の付き添いに興味を持ち、救急搬送

された患者の蘇生処置に立ち会うこと、または立ち会わない

ことを選択した家族の体験について行いました。

8年ぶりの母校は建物もきれいなままで、先生方もお世話

になった先生ばかりです。3月まで大学でお会いしたときは、

「高取くん」と呼ばれていたこともあり、「先生」と呼ばれ

ることに慣れず、最近でも自身が呼ばれていることに気づか

ないこともあるくらいです。また、私の学生時代は決して

自慢できるものではなく…

本当に先生方に何度もお世話に

なりました。自身が教員となって戻ってくるとは夢にも思っ

ていませんでした。母校である山梨県立大学での学びは私の

原点であり、学生と共に学び、教員として少しでも母校に

恩返しができるよう、微力ではありますが尽力をつきしてい

きたいと思います。また、教員になりましたが、看護者であ

ることには変わりません。常に探求心を持つことを心がけ、

日々進化する現代医療についていけるように努力していきた

いと思っています。

ご迷惑をお掛けすることも多いと思いますが、ご指導よろ

しくお願い致します。

はじめまして、4月から母性看護学領域に助手として入職

いたしました渡邊由香です。

私は東北大学医療技術短期大学部看護学科を卒業後、東京

都立医療技術短期大学助産学専攻科を経て、助産師となりま

した。その後日本赤十字社医療センターにて助産師として

勤務しておりましたが、ご縁があり山梨赤十字病院に転勤と

いう形で参りました。

日赤医療センター在職中はNICUに勤務し、極低出生体

重児のフォローアップや母親への支援を通し、助産師として

の専門性が発揮できる場は分娩だけではないことや、母子相

互作用を実感する学びができました。また、BFH(

ベビー

フレンドリーホスピタル)

取得に向けての活動を通し、母乳

育児についての学びを深めることができました。これらの

経験が現在の私の看護観である「人に寄り添うこと」の基盤

となっております。

山梨赤十字病院では産科・婦人科・分娩・NICU・小児

科と幅広い領域での勤務で、さらに視野がひろがり、女性の

ライフサイクル・家族支援においても助産師が専門性を発揮

できるということを実感しました。しかしながら、周産期

医療の地域差についても考えることとなり、現在、このこと

が私の取り組む課題であると考えています。

山梨県の女性・子ども・家族の安全と幸せを守るというこ

とを使命とし、皆さんと取り組み、ともに学びたいと思って

います。看護の対象となる人に寄り添い、学生の皆さんに

寄り添い、そんな教員生活を送れることが目標です。

どうぞよろしくお願いいたします。

「はじめまして」

母性看護学領域

渡邊

由香

助手

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今年度は 4人の先生が 着任されました。 みなさまどうぞよろしく お願いします!

「老年期における看護の可能性」

老年看護学領域

坂本

律子

助手

4月より、老年看護学領域の教員になりました坂本律子と申し

ます。

私は、栃木県出身で、大学時代から山梨へ参りました。2年間、

山梨の地域に根付いた総合病院にて看護師として勤務し、その後

2年間は東京で訪問入浴や老人福祉施設・療養型併設病院に勤務

して、今年度より教員となりました。

老年期における看護を深め、学生のうちからその学びの良さを

知ってもらいたいと思う理由は、これまで看護師として働きかけ

た多くの方が高齢者であり、看護の無限の可能性を感じたからで

す。看護師として働く中では、山梨の果樹園が盛んな地域で、

在宅復帰される方、療養型病棟や施設を選択される方、終末期を

病院で迎える方との出会いがありました。看護を通して、高齢者

の持つ力を、目の当たりにし、その人が持てる力の可能性を狭め

ないような関わりを常に意識するよう心がけました。

この5月から4年次生と一緒に、老年看護学実習を行っていま

すが、学生の考える看護の可能性の広さ、看護の対象となる方へ

の深いまなざし、それらを導く諸先生方の教育観に触れて、教育

の奥深さと看護の可能性に改めて感動を覚えました。老年看護学

への関わりを通して、人生の終末期における可能性がいかに

広がっているのかを実感するとともに、教育現場に身をおくこと

で自身が学生と共に原点に回帰して学ぶことの喜びを実感して

おります。

今後も日々、学びとして自分の老年看護への知識を深め、学生

に還元していけたらと考えております。

介 紹 員 教 任 新

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山梨県立大学看護学部では、学部の

特徴と入試情報を受験生の皆さまに、

より分かりやすく情報提供するために

オープンキャンパスの準備を進めて

います。入試説明会の開催や普段は

見学できない講義室での模擬授業・

看護体験などの企画と共に、各領域の

教員や在学生と交流ができる場も用意

させていただいています。

オープンキャンパスに参加することで

入学後の学生生活や卒業後の進路に

ついて、貴重な情報を得られることは

確実です。

皆様のご参加を、心よりお待ちして

います。

オープンキャンパス2016

― そこは将来の自分が見える場所 ―

7/30(土), 31 (日)

Yamanashi Prefectural University

13:00~16:00

(受付:12:00~)

看護学部

9

あなたも大学のキャンパスを体験してみませんか?

~先輩がみなさんを待っています~

看護学部広報委員長 平尾 百合子

オープンキャンパス紹介

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時間 場所 内容

12:00~ 講堂入口 受付

13:00~14:20 講堂

オリエンテーション

学部紹介

入試についての説明

見学ブースの紹介

大学生活の紹介/自治会、生協学生委員会

14:30~16:00

3号館 101講義室

在学生との交流

3号館 201講義室

進学・受験の個別相談会

4号館 5号館

看護体験・模擬講義

キャンパス内 キャンパス見学ツアー (図書館、生協、実習室 など)

参加者アンケート記載

*看護体験・模擬講義は開催日によって内容が異なります。 詳細については、大学ホームページで確認してからご参加ください。

1日のスケジュール

実施日時 7月30日(土)・7月31日(日)

写真: 昨年度のオープンキャンパスの様子

10

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11

教員の海外研修報告

イタリア共和国・ボローニャ研修報告

~精神保健医療福祉の現状~

精神看護学領域

教授

清水惠子

平成27年度後期、教員特別研修の機会に恵まれ

ました。

平成27年10月20日~11月20日(

前段)

は主にイタリ

ア共和国エミリア・ロマーニャ州ボローニャ県ボロー

ニャ市における若者の自殺予防に関連した取り組みを、

平成28年1月12日~3月10日(

後段)

は主に同市に

おける精神医療保健福祉サービスの現状、トリエステ

市及びカリアリ市では旧国立精神病院(

マニコミオ)

跡地利用の現状を見聞しました。また、大変刺激的な

経験として、前段ではボローニャ大学看護科教員より

依頼を受け、3年生に「日本の精神科医療の現状と

課題」について特別講義をしました。研修にあたって

はイタリア語通訳者を雇用しました。

1.精神科入院診療について

ボローニャ県の人口約90万人に対して、精神疾患

患者の急性期用ベッドが3か所の公立総合病院内

(

一部私立精神科病院も委託を受けている)

に精神科

急性期病棟として約50床用意されていました。

精神急性期病棟は強制入院制度に基づき、エミリ

ア・ロマーニャ州精神保健局のコントロール下で運営

され、マッジョーレ病院精神科急性期病棟の平均在院

日数は9日。主な診断名は気分障害、統合失調症、

人格障害で、それぞれ同程度の割合です。WHO報告

資料によると、イタリア共和国のベッド数は人口

10万人当たり平均10床であり、ボローニャ県はイタ

リア全土の平均より少ないことになります。

急性期を過ぎ入院治療が必要な患者には、平均して

1~2か月の間、私立の精神科病院をはじめボロー

ニャ市全体で100床程度の病床を確保していました。

ボローニャの街並み

パルツィアーナ私立精神科病院

急性期病棟の1床室

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2.精神科外来診療について

ボローニャ県には、人口約6万人に対して1か所

の割合で地域精神保健センター(

CSM)

が設置され、

うちボローニャ市には5か所ありました。

CSMでは約1万8千人の外来患者が診療を受けて

います。CSMには直に相談に出向く等、自由に

出入りできる配慮があり、9時~20時まで開いて

いました。CSMは2000年頃まではバザーリア

法制定以降の精神保健医療の一つの挑戦であり、

モデルとして効を奏していましたが、最近は財政上

の問題からスタッフ数を減らされ、1か所のCSM

は、精神科医4名、心理士1名、看護師12名、

エデュケーター2名、ソーシャル・アシスタント

1名、心理療法士3~4名でした。診断名で多いの

は統合失調症、次いで双極性障害、人格障害、うつ

病です。近年は、経済的状況の厳しさを反映してか

不安症の患者が増えているとのことでした。重症者

には「デイケアセンター」へ通所ができるようCS

Mの看護師が病状に合わせてコーディネートし、

個人プロジェクトが組まれていました。

3.デイケアの活動について

地域で生活する精神障害者(

以下、ユーザー)

うち、まだ就労につながらないユーザーが日中通所

する場として、CSMや今回活動に参加した「デイ

ケアセンター」がありました。センターには、施設

内では心理教育や社会技能訓練として実施される

プログラム、公園など施設外の社会生活の場で実施

されるプログラムがありました。

私が参加したプログラムは、施設内のプログラム

としては、アート・アクティビティ、ミュージッ

ク・アクティビティ、ソーシャルスキル・アクティ

ビティ、キッチン・アクティビティで、このキッチ

ン・アクティビティにおいて日本食

(

肉じゃが、み

そ汁、だし巻き卵)

を一緒に作りました。施設外では

市営の公園に集合してのウォークング・アクティ

ビティに参加しました。どの活動も他者の発言には

耳を傾けることを求められますが、自分の感情や

考えを自由に述べたり、パスしたり、休むこともで

きました。

地域精神保健センター「ナーニ」

女性病棟のスタッフ

ミュージックエデュカトーレの方

ウォーキングアクティビティ 引きこもりの予防にもなる

教員の海外研修報告

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4.家族会の活動などについて

ボローニャ県には大人のユーザーのいる家族会は

10団体、18歳未満のユーザーのいる家族会は20団体

程あります。家族とユーザーのための支援グループ

は80団体程あり、精神科医、心理療法士、家族(

8~

12名)

で構成され、年間10回くらい会合を設けてい

ました。

CuFo

活動は、ユーザーと家族、オペレーターが連

携し、月1回程度顔合わせをします。≪

プリズマ≫

プロジェクトは、ユーザーが必要とする情報、例え

ばユーザーの権利や医療、福祉サービス等が把握で

きるようウェブサイトを立ち上げ運用していました。

≪ESP(

エスプ)

≫活動は、能力があるユーザー(ESP)

が他のユーザーを支援する活動で、これを推進する

ためにCSMでは支援するユーザー研修(

10日間程)

を実施しています。≪

Habitat≫

はユーザーを孤独

から救うプロジェクトで、例えばトレッキング・

グループは公園に出かけたり、2~3日かけて遠出

したりし、他の人と同じような普通の生活が経験で

きるように支援しています。その他の活動として、

スポーツを取り入れたプロジェクト(バレーボールや

サッカー)など、高校に

出向いて精神疾患という

病気について理解を深める取り組みをしていました。

以上、研修を通してボローニャ市の地域精神保健

医療サービスシステムは良く機能していると思いま

した。理由は、家族会の皆さんがつながり、ユー

ザーもいきいきと活動し、お互いをケアし合って

いると感じたからです。背景には、普段の生活の中

でCSMの外来診療やデイケアサービスを受けなが

ら、人と人がつながる日常を送っていることが挙げ

られます。

日本も現行の精神科病院中心の診療を、地域の

外来診療へと移行する必要があると強く思いました。

そのためには、精神科医をはじめ看護師、精神保健

福祉士、家族会、ユーザーなど、全員が同じ方向に

向かって具体的な目標を設定していく必要がありま

す。私は、身近には大学院専門看護師教育課程の

授業科目の中で議論を巻き起こしたいと思います。

ユーザーの子どもを抱える家族の方と

トリエステ市の精神保健局長であるロベルト氏 2年ぶりの再会

現地大学の看護学生(3年生)に、 日本の精神科医療の現状と課題について講義をしました(通訳あり)

教員の海外研修報告

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ハーモニーは今後も山梨県立大学看護学部の活動を学内・学外に

向けて発信していきたいと思います。

お忙しい中、原稿をお寄せいただきました皆様にこの場をお借りして

感謝申し上げます。

ハーモニーに関するご意見、ご感想がありましたら下記委員まで

ご連絡ください。

(広報誌編集担当 高岸弘美・横森愛子)

看護学部広報誌「Harmony~調和~」2016年 第1号

(2016年7月)

≪山梨県立大学看護学部広報委員会≫

平尾百合子 米田昭子 野澤由美 望月宗一郎

横森愛子 高岸弘美 清原昭典 若林祐太

山梨県立大学 看護学部 〒400-0062 山梨県甲府市池田1-6-1 Tel: 055-253-7780 Fax: 055-253-7781 http://www.yamanashi-ken.ac.jp

≪編集後記≫