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ライダーを中心とする観測ネットワークによる
東アジアのエアロゾルの動態解明
国立環境研究所 環境計測研究センター
杉本伸夫
講演内容
- ライダー装置とネットワーク観測
- PM2.5と黄砂 - 中国の大気汚染に関する考察
ライダー装置とネットワーク観測
ライダー装置
ライダー装置のブロック図と写真
Ulaanbaatar
Sainshand
Zamynuud
Beijing*
Seoul* Daejeon
Jeju
Matsue* Fukuoka**
Nagasaki Fukue*
Hedo*
Phimai*
Osaka Tokyo
Tsukuba*
Chiba
Sapporo
Sendai Toyama Niigata
Lanzhou
Hefei
Shenzhen
(532,1064)+(532) *(532,1064)+(532)+⟨(532 Raman) **(355)+(355)+⟨(355 Raman)
ライダーネットワーク (AD-Net) 観測地点
NIES lidar network (2)
各地点上空の非球形エアロゾル(主に黄砂)と球形エアロゾル(主に大気汚染エアロゾル)の高度分布が連続的に観測される。
黄砂 大気汚染エアロゾル
Sainshand
ソウル
福江島
長崎
沖縄辺戸岬
松江
富山
新潟
東京
仙台
札幌
Dust events
2011年5月
NIES lidar network (3)
各地点上空の非球形エアロゾル(黄砂)と球形エアロゾル(大気汚染エアロゾル)
黄砂 大気汚染エアロゾル
Haze event
2011年2月
ソウル
福江島
長崎
沖縄辺戸岬
松江
富山
新潟
東京
仙台
札幌
ライダーネットワーク観測
ライダーは黄砂と大気汚染性エアロゾルを分離して高度分布を測定可能。
ライダーネットワークデータは化学輸送モデルの検証やデータ同化に非常に有用である(高度分布が得られること、データの継続性があること)。
黄砂についてデータ同化研究が行われ、ライダーネットワークデータを同化することによって黄砂の分布や発生源、発生量の推定精度が大きく改善されることが実証された(九州大学、気象研究所)。
同様の手法は大気汚染性エアロゾルにも適用可能。現在 SPRINTARSのデータ同化が計画されている。
地上付近の黄砂と大気汚染エアロゾル消散係数をエアロゾルの健康影響研究に提供。
ライダーネットワークデータはリアルタイムで一般にも提供。
AD-Net(日本、韓国、モンゴル、タイの地点)は世界気象機関 (WMO) の Global Atmosphere Watch (GAW) program の contributing network になっている。
PM2.5と黄砂
PM2.5と黄砂
現在、環境研究総合推進費により「PM2.5規制に影響する汚染混合型黄砂の組成的特徴と飛来量/降下量に関する研究」 (2012-2014)を実施している。 研究のねらいは、PM2.5のなかに黄砂がどれくらいあるのか、また、ど
ういう混合状態であるのか(外部混合か内部混合か)を明らかにすること、また、飛来状況や沈着量を定量的に理解すること。 研究背景には、黄砂についても小粒子の健康影響が大きいと考えられること、また健康影響研究の結果によると黄砂と大気汚染の混合状態が重要であることが示唆されていることがある。 ライダーや偏光パーティクルカウンターなどの光学的な測器、サンプリング分析、PM2.5、PM10データ、化学輸送モデル、黄砂沈着観測ネットワークを駆使する。
PM10とPM2.5の差(あるいは比)から PM2.5に含まれるエアロゾル種を推定する簡単な方法
黄砂
粒子径
PM10の 分粒特性
PM2.5の 分粒特性
大気汚染 エアロゾル
重量
粗大粒子モード
微小粒子モード
PM10-PM2.5が粗大粒子モードの信号になる (PM2.5/PM10)がエアロゾル種を推定するひとつのパラメータとなる - 黄砂、海塩など: (PM2.5/PM10)が小さい - 大気汚染性エアロゾル: (PM2.5/PM10)が大きい
2013年2月の北京の黄砂の例
2013-03-13 Tsukuba
2013-03-10 MODIS image
Tokyo
Tsukuba
2013年3月のつくばのローカルダストの事例
(JAXA EORCのNear Realtime Data) 関東平野のローカルダスト 2013-03-
10, 13, 18
つくばの事例
Local dust events
つくばの国立環境研究所におけるPM2.5とPM10の測定値(2013年3月)
粒径分布の 微小粒子モード が大きい
粒径分布の 粗大粒子モードが大きい (PM2.5/PM10)が黄砂と大気汚染エアロゾルの割合の指標になる。
PM10とPM2.5から推定したPM2.5中のダストと大気汚染エアロゾル
大気汚染エアロゾル
ダスト
ライダーから導出したダストと大気汚染エアロゾルの消散係数
エアロゾルの光学モデル(形状、粒径分布を含む)を構築するために偏光粒子計数器(偏光OPC)を導入
偏光OPCの概念。単一粒子の散乱強度と偏光解消度を測定。
検出器1 (Detector1)
検出器3 (Detector3)
検出
器2
(Det
ecto
r2)
前方散乱強度 (Forward scattering intensity)
偏光解消度 (depolarization)
偏光子(Polarizer)
偏光OPC測定の一例 (2013年ソウル)
散乱強度 (粒子の大きさ)
粒子数
偏光解消度 (非球形性)
散乱強度 (粒子の大きさ)
粒子数
(a) 大気汚染 (2013年3月6日 現地時間午前6時)
(b) 大気汚染と弱い黄砂の混合 (2013年3月7日 現地時間午前5時)
偏光解消度 (非球形性)
エアロゾルモデルを用いた測定のシミュレーションから、最も良く測定結果を再現するエアロゾルの光学モデルと粒径分布を決定する。内部混合状態の黄砂モデルを構築できる可能性もある。構築されたモデルはライダー解析の高度化にも利用する。
中国の大気汚染の考察
中国(米国)のPM2.5とPM10に対するAQIの定義
AQI=100付近では、(PM2.5/PM10)が0.5より大きければPM2.5のAQIが大きくなる。 黄砂の時はPM10のAQIが大きく、大気汚染
の時は大抵の場合PM2.5のAQIが大きい。
AQI=100付近で、中
国の基準は米国の基準と異なる。
中国のAPIの推移(2001-Jan 2013)
APIの推移 (1) 北京 上海
APIの推移 (2) 重慶 桂林
北京市の大気汚染の推移 大気汚染 黄砂
エアロゾルの光学的厚さ(AOD)で見ると 大気汚染が改善傾向とも言えない
(Hara et al. 2012)
北京
沖縄
筑波
中国北部
中国中部
中国南部
中国の大気汚染に関する考察
2013年1月からPM2.5が大気質指数(AQI)を決める汚染質に加わった(従来のAPIではPM10のみ)。現在、PM2.5が主要汚染質になる場合が多い。
大気汚染の推移を見るためにはAPIとAQIの連続例が問題。PM10とPM2.5の両方のデータがある地点でそれぞれのAQIを算出して比較する必要がある。
中国の大気汚染指数(API)を見る限り主要都市ではこの数年大気汚染は改善傾向である。しかし、人工衛星データ(CALIPSO、MODIS)などによるエアロゾルの光学的厚さ(AOD)では中国北部はやや増加傾向である。AQIは都市の大気質の指標であることに注意が必要かもしれない。
排出インベントリーに基づく化学輸送モデルで大気汚染はおよそ再現され、現象としては理解されている。気象状況と面的に分布する発生源が問題。中国東北部の広範囲で発生源対策が必要。 しかし、現在のモデル(SPRINTARSなど)では局所的な高濃度汚染はよく再現で
きていない。中国東北部の詳細なモデル予測を行って、きめ細かく対策を取ることも有効と思われる。都市だけではないモニタリングデータが必要。特に鉛直分布データは有用で、例えばライダーを使ったデータ同化が有効であろう。
Thank you