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データベース 登録 2010.9 シーズ名 1910 年代から 30 年代の日本における西欧文化の受容 氏名・所属 等 荒木 映子、文学研究科・言語文化学科:比較言語文化、教授 <概要> 大正末期から太平洋戦争にかけて、西欧の文学のみならず人文・社会・自然科学全般に わたる学術書が多数日本語に翻訳されて紹介されている。1918 年にアメリカで出版され た優性学の本を本学図書館で探していて、隣にその抄訳(大正 11 年出版)が並んでいる のを見つけて驚愕したことがある。これだけではなく、当時新進の西洋の学問が同じ大 日本文明協会の編纂によってシリーズで刊行されていたのは尚驚きであった。「世界大都 曾尖端ジャズ文學」なる叢書も春陽堂から出版され、日本の作家に影響を与えたのでは ないかと考えられる。大隈重信が理想とした「東西文明の調和」がどの程度浸透・普及 したのか、西欧文学・文化を研究する者の立場から追求してみたいと思っている。第 1 次世界大戦が終結し第 2 次世界大戦が勃発するまでの激動のこの時期を、欧米と比較す ることから何が見えてくるだろうか。検閲制度が強化され、言論、思想の自由が規制さ れることで、西欧の文化の受容はどのように変化していったのだろうか。日本の近代史、 文化、文学の研究者の側からの研究はどのくらいなされているのだろうか。情報・資料 の提供を求む。 キーワード 大日本文明協会、大隈重信、翻訳、戦争、文化統制、出版社、国家

データベース シーズ名 1910年代から30年代の日本における西欧 …€¦ · 学会における最新の潮流では、「テレビ研究にはテレビ番組分析が不可欠」との認識が広く共有され、

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2010.9

シーズ名 1910 年代から 30 年代の日本における西欧文化の受容

氏名・所属 等 荒木 映子、文学研究科・言語文化学科:比較言語文化、教授

<概要>

大正末期から太平洋戦争にかけて、西欧の文学のみならず人文・社会・自然科学全般に

わたる学術書が多数日本語に翻訳されて紹介されている。1918 年にアメリカで出版され

た優性学の本を本学図書館で探していて、隣にその抄訳(大正 11 年出版)が並んでいる

のを見つけて驚愕したことがある。これだけではなく、当時新進の西洋の学問が同じ大

日本文明協会の編纂によってシリーズで刊行されていたのは尚驚きであった。「世界大都

曾尖端ジャズ文學」なる叢書も春陽堂から出版され、日本の作家に影響を与えたのでは

ないかと考えられる。大隈重信が理想とした「東西文明の調和」がどの程度浸透・普及

したのか、西欧文学・文化を研究する者の立場から追求してみたいと思っている。第 1次世界大戦が終結し第 2 次世界大戦が勃発するまでの激動のこの時期を、欧米と比較す

ることから何が見えてくるだろうか。検閲制度が強化され、言論、思想の自由が規制さ

れることで、西欧の文化の受容はどのように変化していったのだろうか。日本の近代史、

文化、文学の研究者の側からの研究はどのくらいなされているのだろうか。情報・資料

の提供を求む。

キーワード 大日本文明協会、大隈重信、翻訳、戦争、文化統制、出版社、国家

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2010.9

シーズ名 偏見・差別を生み出す社会システムの特性の解明

氏名・所属 等 池上 知子、文学研究科・心理学教室、教授

<概要>

本研究は、社会的アイデンティティ理論に依拠しながら、不本意な社会的アイデンティティが偏見や

差別意識を助長するメカニズムを現行の社会システムに対する考え方の相違の点から明らかにするこ

とを目的とする。

社会的アイデンティティ研究は、所属集団への自己同一視の高い者ほど自尊心の維持防衛のため他集

団の人間に対する偏見や差別感情を示すと主張してきた。これに対し、最近、自己同一視が低い場合

であっても、集団への所属が不本意であるときには、当該集団への所属自体が自尊心に脅威を与えう

ることがわかってきた。そして、筆者が日本の大学集団を用いて行った研究では、所属大学に同一視

できず不本意な自己カテゴリー化を強いられていると考えられる学生ほど、大学間の序列に敏感で、

所属大学より上位の大学には過度の羨望を抱き、下位の大学はことさら蔑視するという差別的態度を

示しやすいことが見出されている。

本研究では、この議論をさらに発展させるべく、不本意な社会的アイデンティティが差別的態度と結

びつきやすい土壌を提供する社会システムの特性の解明をめざす。教育社会学等の文献が示唆するよ

うに、わが国には従来学歴を重視する風潮があり、出身大学の序列が将来にわたる社会的成功を大き

く規定すると信じられている。これに対し米国では大学間の序列はあっても、これが社会的成功の決

定因になるとは限らず、実績如何によって覆すことが可能と信じられている。本研究においては、前

者のように特定次元における集団間の序列が人生の様々な局面で偏重される社会では、後者のように

その重みが限局化されている社会に比べ、不本意なアイデンティティに起因する差別意識が助長され

やすいとの仮説を立て検証する。

<アピールポイント>

「不本意な社会的アイデンティティ」という概念を提案し、集団と個人の関係について独自の理論展

開をめざすとともに、日本独自の学歴階層社会の問題点の解明をねらった問題解決志向型の研究とし

ての側面も併せ持っている。

<利用・用途・応用分野>

いかなる社会システムのもとで、不本意な社会的アイデンティティが偏見や差別意識を生み出しやす

いかが示されれば、偏見や差別意識を生じさせないような社会システムを設計するうえで有益な示唆

が得られると期待できる。具体的には、入学試験制度、企業等の採用制度、人事考課制度の設計に活

かすことができると考えている。

<本研究が提案する社会システム改革コンセプト>

キーワード 偏見、社会的アイデンティティ、学歴階層社会、メリトクラシー

単単単一一一次次次元元元型型型競競競争争争社社社会会会かかかららら

多多多次次次元元元型型型競競競争争争社社社会会会へへへ

<<<評評評価価価軸軸軸ののの多多多様様様化化化>>>

序序序列列列固固固定定定型型型競競競争争争社社社会会会かかかららら

序序序列列列変変変動動動型型型競競競争争争社社社会会会へへへ

<<<再再再挑挑挑戦戦戦機機機会会会ののの増増増大大大>>>

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2010.9

シーズ名 テレビ映像資料のアーカイブ構築とネットワーク化についての研究

氏名・所属 等 石田 佐恵子、文学研究科、教授

<概要>

学会における最新の潮流では、「テレビ研究にはテレビ番組分析が不可欠」との認識が広く共有され、

テレビ研究の意義が再評価されつつあります。

しかし、日本においては、メディア研究に不可欠な分析対象、テレビ番組・テレビCM・映画作品・

ラジオ番組など、資料そのものに研究者がアプローチすることが極めて困難な状態が長く続いてきま

した。近年、フランス・イギリス・アメリカ・韓国・中国などにおいては、テレビ番組や映像資料を

公的に保存・管理し公開する施設整備が飛躍的に進んでいるのに対して、日本における公的映像アー

カイブはいまだに十分に整備されておらず、その方策も定まっていないのです。日本におけるメディ

ア文化研究が、諸外国に肩を並べる水準を確保するためには、体系的に収集・蓄積され系統的に分類・

整理された、検索と広範な利用が可能な映像アーカイブの整備がなによりも急務なのです。

当研究では、より体系的で網羅的な映像アーカイブ構築を目標として、それに必要な諸条件の検討、

基礎的研究を継続的に行います。さらに、期間と分野を限定して、網羅的に映像資料のデータ収集を

行います。収集された映像データは、随時分析資料としても活用しつつ、より効率的で研究・教育目

的に特化した映像アーカイブのあり方を模索していきます。最終的には、公的映像アーカイブ施設の

設置を目標とした研究者・研究機関ネットワークを拡大し、望ましい映像アーカイブのデザインの提

言を目指すことを目標としています。

<アピールポイント>

当研究は、公的映像アーカイブ、研究機関における映像資料アーカイブ、民間・インデペンデント機

関のアーカイブ、私的映像アーカイブを結ぶネットワークを構築することを目指すものです。近年、

インターネットにおけるデータ検索の充実は、人文科学・社会科学系の学問の基礎的データ共有に大

きく貢献し、研究のあり方そのものを変えるような影響を及ぼしています。世界規模で押し進められ

ている映像資料アーカイブの公開と共有は、残念なことに、日本発信のデータを欠いたまま展開され

ています。当研究において収集され公開されるデータは、その欠落を埋めるためにもきわめて重要な

のです。

映像を撮影する/見る/保存する/公開する、といった映像経験がもたらす社会的影響はますます注

目されてきており、映像研究全般に対する社会的ニーズはますます高まっています。それらの状況を

受けて、英米圏の社会学会においては「映像社会学」という新しい研究分野が確立されつつあります。

当研究は、日本における映像社会学の展開と発展のための第一歩となるでしょう。

<利用・用途・応用分野>

映像制作者、市民による情報発信、映像・テレビ文化研究、メディア・リテラシー教育

アーカイブスの公共性、公的映像ライブラリ構築

<関連する知的財産権>

著作権、クリエイティブ・コモンズ

<関連するURL>

UCRCエスノグラフィック映像コレクション http://ucrc.lit.osaka-cu.ac.jp/movie/ 持続可能な文化アーカイブ研究会 http://ucrc.lit.osaka-cu.ac.jp/movie/samc/ 萬年社コレクション調査研究プロジェクト http://ucrc.lit.osaka-cu.ac.jp/mannensha/index.php 石田佐恵子HP http://www.lit.osaka-cu.ac.jp/user/ishita/

キーワード テレビ文化研究、公的映像アーカイブ、メディア社会学

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シーズ名 中国語によるコミュニケーションの推進

氏名・所属 等 岩本 真理、文学研究科・言語文化専攻、准教授

<概要>

1 来日中国人児童・学生の母語保持状況の調査と母語保持のための有効な教育方法の摸索

多言語・多文化状況にある現在、今後もこの傾向は加速度的に進展することが予測される。多様

な言語的背景をもつ児童・学生に対して、学習言語として日本語能力を習得させる政策は現段階

においても進められつつある。一方、母語としての第一言語を保持させる方策は今のところやや

遅れをとっている。現状として、母語の保持は、どのような環境・条件のもとで可能となってい

るのか? いないのか? あるいは母語の保持がなされなかった場合の弊害にはどのようなもの

があるのか? 筆者は、中国からの移住者に対象をしぼった上で、実態調査を試みたい。すなわ

ち、母語たる中国語能力がどの程度保持・残存されているのか? 現状を把握するための地道な

実態調査をおこなうとともに、数年以上にわたる長期の追跡調査も併行させて継続して実施し、

母語話者にとっての母語保持というこれまで等閑視されてきた課題に取り組みたい。従来から取

り組まれてきた外国語としての中国語教育における方策と、同一の方策が有効であるのか? ど

の点が異なるのか? 母語の維持と発展のための方略を摸索し、より効率的な言語学習とコミュ

ニケーション能力の開発のために寄与したい。バイリンガルとしての成長過程にも光をあてたい。

2 言語活動を中心とする中国語・日本語の対照研究

日中間の円滑なコミュニケーションを創造するために、広い意味での対照研究が重要な課題とな

る。具体的には、談話における「あいづち」行動の頻度やTPOの違い、話題転換での前触れの

有無、話題展開のパターンにおける相違、手振りやジェスチャー・視線の配り方などのノンバー

バルコミュニケーションの違いなど、単なる音声や語彙や文法といったレベルを超えた言語行

動・言語活動全般を対象とする研究の進展により、不要な誤解や不快感を生じにくくさせ、異文

化間交流を円滑に進める方策を打ちたてることが可能となる。

3 中国語はどのように学ばれてきたのか?

外国語の学習と研究は、ともすれば明治時代以降に開始したと思われがちだが、実は、はるか以

前の古代にまで遡る。外国語としての中国語はどのように学ばれ、どのような成果をもたらした

のか?言語学的観点からみた功績と、時代の制約に由来する限界について考察する。特に江戸時

代における中国語学習と研究に焦点をあて、伝統ある漢学研究とは別の系列に属する唐話学の継

承と発展について検証する。中国語という狭いジャンルに限定はせず、蘭語研究をはじめとする

洋学の勃興や幕末における満州語学習開始にともなう影響関係にも光をあてたい。なお明治以降

の大量の新概念の導入にあたって創造された新漢語群が中国に逆輸入された点など、日中間の相

互交流についても視野におさめる。江戸~明治~平成に到る中国語の学習・研究状況を概観した

うえで、今後を展望する。

<アピールポイント>

バイリンガル状況にある話者の成長過程を観察分析し、円滑な異文化間コミュニケーションの推進を

図る。日中双方の言語と文化に精通した人材の育成に貢献する。

<利用・用途・応用分野>

日本語中国語通訳者養成、専門分野別文献資料の翻訳

キーワード 中国語、言語習得、異文化理解、多言語社会、バイリンガル

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シーズ名 現代メディア環境のなかの映画

氏名・所属 等 海老根 剛、文学研究科、准教授

<概要>

19 世紀の末に誕生した映画はそれ以前には存在しないタイプの特異な映像を人類にもたらしました。

映画の映像は一方で現実を「忠実に」反映する写真的リアリズムを特徴にしていますが、他方では、そ

れはつねに私たちの想像力が形をとった影と分身の世界を描き出す幻想性を帯びていました。そのよう

な幻想と現実が表裏一体になった動く映像として、映画は誕生以来、多くの人々を魅了し、また、他の

映像芸術(絵画、美術、写真)に大きな影響を与えたのでした。そして、そのような映画の力の理由は、

幻想を通して世界(現実)を発見するという人間にとって根源的なイメージの経験を、映画がもたらし

た点にあったのです。

遅くとも 1950 年代のテレビの登場以来、映画は他の映像メディアとの競合関係に入り、数多く存在

する映像メディアのひとつにすぎなくなります。現代映画が用いた即興演出やカメラ目線の使用や同時

録音がテレビの映像スタイルなのは偶然ではありません。そして、1980 年代のビデオクリップの時代を

経て、デジカメやインターネット、カメラ付き携帯電話やプリクラの時代になって、映画はさらに根底

的な変容に曝されようとしています。たとえば、複数の映像がデータとして並べられることによってス

クリーンはコンピュータのインターフェースに近づきます。また、家庭で撮影されるビデオや携帯電話

やプリクラのように、交換され、流通することで人々と結びつける映像の隆盛は、映像と人々との関係

を変え、それがまた映画と観客との関係をも変容させることになるでしょう。

<アピールポイント>

私たちは今日のメディア環境のなかにおかれた映画を考察してみることによって、現代文化における

映像の機能や上述したイメージの根源的経験の現代的な現れの諸相をつぶさに観察することができる

でしょう。

<利用・用途・応用分野>

展覧会企画、上映会、講演、ワークショップ

<関連するURL>

http://www.korpus.org/

http://art-cafe.ur-plaza.osaka-cu.ac.jp/

キーワード 映像文化、メディア、映画、現代芸術

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シーズ名 先進工業国における既成市街地の再生

氏名・所属 等 大場 茂明、文学研究科・人間行動学専攻(地理学専修)、教授

<概要>

ますます激化している都市間競争を背景として、経済競争力を維持しながら、環境保全にも配慮し、様様な属性を持った人々の共生を目指すサスティナブルな都市社会の構築が今日求められています。あわせて先進工業諸国では、産業構造のリストラクチャリングや居住・生産機能の郊外化にともなって、老朽化した施設・インフラを抱え、住民の高齢化が進んだ中心市街地の衰退や荒廃が大きな社会・経済問題となっています。 既に欧米では、郊外の無秩序な開発を抑制するとともに、既成市街地の魅力を高めていくための総合

的な施策の推進が、都市政策の主要課題として認知されています。たとえば、遊休化した産業用地(ブラウンフィールド)の再利用、歴史的建造物の保全と再活用など、「内部充填型の開発」(写真参照)により高密な集落構造の実現を図るとともに、住宅やオフィス・スペースの需要を満たし、地区への人口還流と新規起業を促し、既成市街地を「生産・居住の場」として再び活性化する取り組みが行われています。あわせて、旧市街地周辺部の衰退地区や郊外集合団地においても、既存のストックを活かしながら、社会問題の克服をも視野に入れた多様な都市再生事業が各地で展開されています。 今日の日本の都市政策に求められているのは、

こうした諸外国の先進事例を参考にしつつ、それぞれの地域の特性に応じた更新事業を推進していく枠組みを構築することです。したがって、都市再生プロジェクトの実施に際しては、現状分析にとどまらず、市街地が形成されてきた過程にも留意しながら、地区内にある有形・無形の地域資源や発展ポテンシャルを、事前に的確に評価する必要があります。

<アピールポイント>

本研究では、これまで携わってきた国内外での

豊富な調査研究やフィールドワークの経験を活

かして、各地での都市再生プロジェクトに対しても、積極的に提言していきたいと考えています。

[主要な調査]

大阪市における新規開業事業所の実態、インテックス大阪の経済波及効果

EU 諸国における自治体主導による「都市再生」の比較研究

都市縮退時代におけるコミュニティ再生-ドイツ都市政策の新展開-

「住みごたえのある町」をつくる-大阪・ハンブルクにおける市民文化に基づくエリアマネジメント

[主要なフィールドワークの実施地域]

ボーフム市、デュースブルク市、ハンブルク市(いずれもドイツ)、大阪市西区、和歌山県橋本市、徳

島県美馬市脇町、三重県伊勢市ほか

<利用・用途・応用分野>

町並み保存、住民参加、産業化遺産の活用、ホスピタリティ産業、新規起業

キーワード 都市再生、住宅政策、ブラウンフィールド、居住文化、まちづくり

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シーズ名 学習・記憶を中心としたラットの高次認知機能の脳内機構に関する

生理心理学的研究

氏名・所属 等 川辺 光一、文学研究科、准教授

<概要>

生理心理学的手法を用い、学習・記憶を中心としたラットの高次精神機能の脳内機構を解明すること

を目的とした研究を行っています。また、これらの高次精神機能の異常を伴った精神疾患の動物モデル

の作製にも取り組んでいます。

1)学習・記憶の脳内機構の解明

ラットを用いた脳損傷実験、薬理学的実験によって、学習・記憶、思考に代表される高次認知機能の

脳内機構の解明を目指しています。同時に、上記の目的を達成するために、ラットの高次認知機能を調

べるための行動課題の開発を試みています。

2)精神疾患動物モデルの行動評価

統合失調症などの精神疾患の動物モデルを作製し、その行動異常の性質を調べたり、行動異常に対す

る薬物の効果を調べたりすることにより精神疾患モデルとしての妥当性を評価するとともに、これらの

動物に認められる行動異常の脳内機構の解明を目指しています。

<利用・用途・応用分野>

・抗認知症薬、抗精神病薬などの薬効評価。

キーワード 学習・記憶、脳内機構、精神疾患、薬効評価

ラットを用いた記憶実験。 精神疾患モデル動物の作製。 上図のラットは作業記憶の障害、常

同行動、自傷行動に基づくと思われる

頭部の傷が認められ、統合失調症、自

閉症などの精神疾患モデルの候補とし

て期待される。

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シーズ名 文化財分野へのデジタル技術の利用

氏名・所属 等 岸本 直文、文学研究科・日本史専修、准教授

<概要>

測量機器の進歩により、3 次元レーザースキャンが簡易に行えるようになり、従来のステレオ写真に

よるアナログ的な立体把握と異なり、対象物の 3 次元データを緻密なピッチで大量に取得することが

可能となった。こうしたスキャニングは、遺跡の現状や発掘調査の状況を記録する上で、きわめて有

用なものであり、今後、文化財分野への導入が進むと予想される。

文化財への応用は幅広く

可能であるが、そのひとつ

として、古墳時代の横穴式

石室を取り上げた(奈良県

広陵町・牧野古墳)。1日

の計測で、恒久的な全デー

タを取得でき、さまざまな

加工が可能である。ここで

は、基本的な展開図に加工

した画像を示す。石のひと

つひとつの微妙な起伏も

含めて、石材特徴をつかむ

ことができる。

<アピールポイント>

以前までの手測りによる 2 次元図に比べて、簡易かつ正確で、加工が自由であることを考えると、

経費的にも割高なものではなく、文化財の記録方法としてきわめて有効である。

<利用・用途・応用分野>

今後、容易に近づけない高石垣や磨崖仏、記録保存の発掘調査における掘り上がり状態の記録化など、

文化財分野における幅広い適用が可能である。

キーワード 文化財、遺跡、3 次元計測、デジタル技術

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シーズ名 ブルーノ・タウトのジードルンクの歴史的研究

氏名・所属 等 北村 昌史、文学研究科・世界史学、准教授

<概要>

1920 年代のベルリンでは、公的な資金の援助のもと広範な社会層のための住宅建設が、公益的住宅

会社の手によってすすめられ、10 万戸以上の住居の建築が行われました。こうして建てられた住宅を

「ジードルンク」といいます。ジードルンクは、量的な面のみならず、機能的な部屋の配置、各住居の

浴室やトイレなどを設けている点、建物そのもののデザインなど住環境の質の面でも様々な試みがな

され、現代の住宅文化が確立していく際に重要な一翼を担ったといえます。この点が高く評価され、

代表的ないくつかのジードルンクが、2008 年にユネスコの世界遺産に登録され、その建築学上・歴史

上の意義が現在改めて注目されつつあります。

当時のベルリンの住宅建設に大きな役割を果たした人物の一人として、1933 年にナチス政権が誕生

するとともに日本に亡命し、滞在中日本文化に関する多くの文章を残したブルーノ・タウトがあげら

れます。1 万住居以上を提供した彼のジードルンクの特徴としては、先にのべたジードルンク全体に

見られる特徴とともに、次のようなものがあげられます。第 1 に、馬の蹄の形をした集合住宅を全体

の中心に据えた「馬蹄形ジードルンク」が代表するように、デザイン面で様々な試みを行っています。

第 2 に、従来の建築においては建物に彩色などは施されず、石や煉瓦といった素材そのものの色が町

並みを規定したのに対して、大胆な彩色の試みを行っています。第 3 に、住環境のそばに森林や池な

ど様々な自然環境を取りこんで自然との共生を図ったことがあげられるでしょう。代表的な例として、

ジードルンクの中に大々的に樹木を取りこんで「森のジードルンク」とも呼ばれたオンケル・トムス・

ヒュッテがあげられます。以上の特徴は、土地に余裕のあるところに建てられたジードルンクだけで

はなく、カール・レギーンなどの比較的建物の密集した地域に建てられたジードルンクについてもあ

てはまります。

タウトの作ったジードルンクを、建物そのものだけではなく、そこに住んでいた住民の生活や人間関

係まで視野に入れて研究を進めています。

写真(左から):馬蹄形ジードルンクの八重桜/オンケル・トムス・ヒュッテの住宅の窓からの光景/カール・レギーン

<アピールポイント>

現在の住宅文化の確立に大きな役割を果たしたタウトの住宅は、住宅そのものの質を向上させるだけ

ではなく、周囲の環境、とくに自然への配慮のもと設計されています。タウトの住宅を歴史的に検討

することは、当時のヨーロッパ・ドイツ・ベルリン社会の理解に貢献するのみならず、現代の住宅や

都市社会の在り方一般に対して有効な示唆をあたえるものと思います。

<利用・用途・応用分野>

都市問題・住宅問題に関する歴史的知見の提供。自然との共生を図り、環境に優しい住宅についての

基礎的情報の提供。

キーワード 都市、住宅、ジードルンク、自然、ブルーノ・タウト

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2010.9

シーズ名 Google 検索による英語語法学習・研究法

氏名・所属 等 衣笠 忠司、文学研究科・言語応用学専修、教授

<概要>

1) Google 検索・Yahoo 検索の効率的な利用法

2) BNC などの英語コーパスを用いた文書作成への利用法

3) 対訳本をもちいた日英比較研究

4) 英和辞典などの辞書の編纂

<アピールポイント>

Google 検索や Yahoo 検索および英語コーパス検索のきちんとした利用法がわかると、英語の文書作

成に大いに役立つ。

<利用・用途・応用分野>

日英比較研究や語法研究は英和辞典などに成果を利用できる。

Google 検索や英語コーパス検索は、その表現が適切かということを知るのに役立つので、

上手な利用法は企業の文書作成に大いに参考になる。

<関連する知的財産権>

特になし

<関連するURL>

特になし

キーワード Google、Yahoo、文書作成、英和辞典

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2010.9

シーズ名 人形浄瑠璃史研究

氏名・所属 等 久堀 裕朗、文学研究科・言語文化学科、准教授

<概要>

日本近世文学、主に人形浄瑠璃を中心に研究を進め、これまで浄瑠璃の史的展開をいくつかの観点か

ら論じ、その変遷の意味を明らかにしてきた。人形浄瑠璃という伝統芸能は、中世に生まれた語り物が、

近世都市の誕生とともに人形操りと結びついて都市演劇となり、17~19 世紀にかけて成熟・古典化して

いったもので、その中心地が大坂であった。個々の作品の時代性、そしてその上演の様態、上演史にお

ける変遷等を明らかにすべく研究を進めている。

また近年は、大坂興行界と地方を結びつける形で活動した淡路の人形座についても調査を進めてお

り、その興行活動、初演作品について新たな知見を得ている。地方を含めたネットワークを視野に入れ

つつ、当時の芸能文化のあり様を明らかにしたいと考えている。

<アピールポイント>

研究成果の一部は、実際の上演に反映させることも可能である。例えば、淡路では現在、淡路独自の

人形浄瑠璃芝居を復活させるべく、途絶えた伝承の回復を図っているが、それに当たって、研究成果に

基づき情報提供も行っている。

<応用分野>

伝統芸能保存 演劇 地域文化振興

キーワード 人形浄瑠璃、文楽、淡路人形芝居、伝統芸能、近松

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2010.9

シーズ名 ポストモダンな人文芸術のあり方

氏名・所属 等 古賀 哲男、文学研究科・英語英米文学専攻、准教授

<概要>

今日的な人文芸術のあり方に関し、特に北米の動向を探りながら、考察する。

より詳しくは、古賀ホームページ

(http://www.lit.osaka-cu.ac.jp/user/koga/index.htm)

を参照して頂きたいが、特にその中でも「日本学術振興会 平成9~11 年度科学研究費補助金による基

盤研究(C)(2)報告書」

(http://wwww.lit.osaka-cu.ac.jp/user/koga/kakenx.htm)

および「日本学術振興会 平成 12 年度科学研究費補助金による基盤研究(c)」

(http://www.lit.osaka-cu.ac.jp/user/koga/canada2000.htm )

における記載内容を参照。

<アピールポイント>

・インターネットにおける前衛芸術表現の資料・調査研究のアドヴァイス

・前衛芸術文化理論の紹介・理論構築のアドヴァイス

・北米における文学・文化研究の動向調査、制度的諸問題の研究のアドヴァイス

・言語芸術の今日的なあり方についての諸議論の紹介・理論構築のアドヴァイス

が可能である。

<利用・用途・応用分野>

文化産業・広報関係の分野

<関連する知的財産権>

特になし。

<関連するURL>

上記参照。

キーワード ポストモダン、前衛芸術、北米

Page 13: データベース シーズ名 1910年代から30年代の日本における西欧 …€¦ · 学会における最新の潮流では、「テレビ研究にはテレビ番組分析が不可欠」との認識が広く共有され、

データベース

登録

2010.9

シーズ名 日本中世説話伝承文学の研究

氏名・所属 等 小林 直樹、文学研究科・言語文化学科、教授

<概要>

日本中世の説話伝承文学の研究を中心に行っています。

古典作品とそれを生み出した基盤の世界との双方を見据え、その相互交渉のありようを

探ることで、個々の作品に特有の発想や構想を追求してきました。

これまで研究対象として取り上げた作品には、平安時代の『今昔物語集』や『注好選』、

鎌倉時代の『古事談』『沙石集』、室町時代の『三国伝記』といった説話集や、『諸国一見

聖物語』のような唱導的作品、あるいは宗教色の濃厚なお伽草子などがあります。

そして、それらを生んだ基盤の世界として、天台・真言・禅・律をはじめとする仏教的

世界に注目してきました。

そうした成果の一端は、著書『中世説話集とその基盤』(和泉書院、2004 年)にまとめ

ています。

なお、現在は、鎌倉幕府と説話伝承文学との交渉についての研究プロジェクトを推進中

で、歴史書『吾妻鏡』の中の伝承的記事の分析を進めているところです。

<アピールポイント>

各地に伝わる地域伝承についても対応可能です。また、大阪四天王寺ゆかりの聖徳太子

伝承にも関心を持っています。

<利用・用途・応用分野>

美術館・博物館、生涯学習事業・カルチャーセンター、国語教育

キーワード 中世、説話、説話集、伝承文学、お伽草子、絵巻、仏教、聖徳太子、

寺院、唱導、遁世、武士、鎌倉幕府、吾妻鏡、御成敗式目

Page 14: データベース シーズ名 1910年代から30年代の日本における西欧 …€¦ · 学会における最新の潮流では、「テレビ研究にはテレビ番組分析が不可欠」との認識が広く共有され、

データベース

登録

2010.9

シーズ名 シェイクスピア喜劇の上演

氏名・所属 等 杉井 正史、文学研究科・英語英米文学専攻、教授

<概要>

シェイクスピアの喜劇を中心とするイギリス演劇について、上演当時の政治・宗教との関係から

研究している。特に、言葉の比喩に注目して、この研究を進めている。

最近では、初期喜劇に焦点を当て、台詞の持つ両義性に注目し、その台詞や筋に込められている

寓意や政治的、宗教的メッセージをあぶり出そうとしている。

また、東西の演劇比較にも関心を持ち、近松の浄瑠璃や江戸時代の歌舞伎などの歴史的背景や上

演にも研究の範囲を広めている。

シェイクスピアが活躍した 16 世紀当時のグローブ座を忠実に復元した

野外円形劇場、グローブ座。(ロンドン)

キーワード シェイクスピア、劇場、喜劇、ロンドン

Page 15: データベース シーズ名 1910年代から30年代の日本における西欧 …€¦ · 学会における最新の潮流では、「テレビ研究にはテレビ番組分析が不可欠」との認識が広く共有され、

データベース

登録

2010.9

シーズ名 都市問題の社会調査と政策提言

氏名・所属 等 谷 富夫、文学研究科、教授

<概要>

都市問題の解決、改善のためには、現状の正確な認識と分析が必要です。その意味で、社会事象のデ

ータ収集と現状分析を目的とする「社会調査」は都市問題に応用が可能です。とりわけ社会学は、人

と集団を調査するという点で、他の社会科学とは異なる固有の研究対象と方法を有しています。私た

ちの大阪市立大学社会学研究室は、歴代、大阪市西成区あいりん地区の実態調査、野宿者調査、およ

び大阪市生野区在日韓国・朝鮮人集住地区の実態調査などを行い、その実績は全国に知られています。

コミュニティ形成、社会福祉、多文化共生等に関しても、市民の意識とニーズを把握し、施策に反映

させてきました。都市問題全般にわたって、民間調査機関とは次元を異にする有意義な貢献が可能で

す。また、研究成果を高大連携や市民講座等で市民の皆さんに還元したいと思います。

なお、社会調査の方法にはアンケート調査などの「量的調査」と、フィールドワークやワークショッ

プなどの「質的調査」の2タイプがありますが、私たちは、いずれか一方に偏ることなく、目的に応

じて両者を使い分けたり、組み合わせたりして、社会調査の効果を最大限引き出せるよう工夫してい

ます。 <関連する業績>

1997「旧来外国人型自治体の外国人政策と最近の意識調査―大阪府」『自治体の外国人政策』明石書店

2000「社会学から見た都市論―都市エスニシティ論の新しいアプローチ」『都市問題研究』52 巻 9 号

2002「大阪における都市コミュニティの現状と可能性」『市政研究』134 号,大阪市政調査会

2002(編著)『民族関係における結合と分離』ミネルヴァ書房

2005(編)特集「大阪を〈都心周縁〉から読み解く」『日本都市社会学会年報』23 号

2008(編)『新版 ライフヒストリーを学ぶ人のために』世界思想社

2009(共編)『よくわかる質的社会調査――技法編』ミネルヴァ書房

キーワード 社会学、社会調査、都市、地域、市民意識、アンケート、フィール

ドワーク、ワークショップ、量的方法、質的方法

社会福祉

都市問題 コミュニティ形成

多文化共生

主 な 分 野

社会調査の必要性

市民意識・ニーズ の把握

市民の納得できる 施策の提案

アンケート

主に活用する社会調査

フィールド ワーク

ワーク ショップ

Page 16: データベース シーズ名 1910年代から30年代の日本における西欧 …€¦ · 学会における最新の潮流では、「テレビ研究にはテレビ番組分析が不可欠」との認識が広く共有され、

データベース

登録

2010.9

シーズ名 世紀転換期ドイツ文学と近代

氏名・所属 等 寺井 俊正、文学研究科・言語文化学科・ヨーロッパ言語文化、教授

<概要>

私の主たる研究領域は、19 世紀末から 20 世紀初頭にかけての世紀転換期におけるドイツ文学である。この世紀転換期は、近代ヨーロッパの世界が、その科学技術の進歩によって物質的繁栄を謳歌する一方、同時にその矛盾と限界を露呈するに至った時期である。歴史的社会的には、この時期、工業資本主義化・大都市化が強力に推し進められると共に、人間の事物化・画一化の様相、即ち、近代を推進した人間の主体性が逆に疎外され客体化されるという様相が顕著となる。精神史的には、ニーチェ、フロイトに見られるように、そうした人間の主体性の原理としての普遍的理性そのものに対する危機的な認識が深まり、その虚構性が様々な形で暴露されてくる。目的合理性が推進される中、この時期は、理性的主観とそれと相関的な理性的秩序という、それまでの近代的世界観が危殆に瀕した時期であり、その終焉を露わにした時期であると言えよう。そしてこの世紀転換期、文学においては、従来の近代文学とは質的に異なった新しい傾向の文学として、ドイツ語圏では、自然主義、印象主義、唯美主義、表現主義などが矢継ぎ早に現れたが、これらの一連の文学潮流は、この近代の終末的状況をいち早く問題として、それと批判的に対決しながら、それを超克しようとした様々な試みであり、そしてそのようなものとして、それ以降の 20 世紀文学の地平を基本的に切り開くものであった。 ところで、この時期に露わになった近代の終末的状況は、21 世紀の今日なお、本質的には変化していない。むしろ、主体と世界の喪失は今日ますます深まり、理念的なものから切り離された目的合理性の自走はとめどもなく加速度を増しながら、社会と文化のあらゆる領域を巻き込んでいる。そして、いわゆるポストモデルネが論議される現在、かつての批判的なあり方を失った文学もまた、その例外ではあり得なくなっている。私の研究は、こうした現代の状況に対する問題意識に基づいており、近代の終焉とは何かを、改めてその始まりを画する世紀転換期に立ち戻って考察すること、そこでの文学において、近代の終焉がどのように把握され、またどのようにその超克が試みられているかを探ることを課題としている。言い換えれば、現代批判の視点から、この時期の文学的営為を改めて読み直し、それらの限界と共に現在に繋がるその可能性を明らかにすることが、私の研究の課題である。 この課題のもとに、私の研究対象は、一方ではこの世紀転換期の社会的文化的状況の全般に亘り、他方では、それ以前の近代とその淵源に、またそれ以降の現代と現代文学の展開にまで広がるが、しかし研究対象の焦点はもとより世紀転換期の文学に当てられており、とりわけ重点を置いているのは、いずれもニーチェの美的世界観を基盤とした唯美主義(Ästhetizismus)と表現主義(Expressionismus)の文学である。現代思想全般の源流ともなったニーチェの美的世界観は、一切の理性的秩序を仮象へと還元すると共に、真理や道徳的価値から切り離された美的仮象の経験を、根源的な世界開示の場に他ならないとして、美や芸術に対して存在論的な意義を賦与するものであった。唯美主義と表現主義は、そうした根源的な世界開示としての美的経験の領域の中に、目的合理性に刻印された擬制の現実に対する対立軸を求めた文学である。しかしまたこれらの文学は、擬制の現実に対するその対立のあり方において相互に対照的な傾向を示しており、即ち、唯美主義が現実世界に背を向けて美的経験の領域に固執するのに対して、逆に表現主義は美的経験を現実世界の政治的変革へと繋げようとする。そしてそうしたあり方において、それらは、或いは袋小路に陥り、或いは挫折に至ることとなった。この唯美主義と表現主義において示されているのは、美的領域と現実との関わり方における二律背反的なアポリアであると言ってよいが、このことはしかし、必ずしもこのアポリアが解決し得ないことを意味するものではない。 いずれにせよ、そこで前提とされているのが、美的領域と現実という二つの領域の間の対立的関係であるとすれば、ポストモデルネ的状況の中でこの二つの領域の境界線そのものが取り払われ、美的領域の批判的ポテンシャルが失われつつある現在、これらの文学は、改めて現代において美的経験とは何か、文学の機能とは何かを考える上で、なお多くの再考すべきものを含んでいるのである。

<アピールポイント>

世紀転換期文学の可能性

<利用・用途・応用分野>

現代思想、詩論、文学理論、言語論、美学・芸術論

キーワード 近代、理性、主体、あいだ、詩的言語

Page 17: データベース シーズ名 1910年代から30年代の日本における西欧 …€¦ · 学会における最新の潮流では、「テレビ研究にはテレビ番組分析が不可欠」との認識が広く共有され、

データベース

登録

2010.9

シーズ名 知識論と心の哲学との関わり合いについての研究

氏名・所属 等 中才 敏郎、文学研究科・哲学歴史学、教授

<概要>

本研究は、平成18年度よりの継続課題として、一七世紀より今日に至る西洋哲学における知識論と

心の哲学との関わり合いについての検討を通じて、哲学における知識論の役割について新たな理解を得

ようとするものである。

一七・一八世紀における知識論は、観念説(theory of ideas)という心の哲学の枠組みの中で論じら

れてきたといっても過言ではない。ところが、一九世紀よりこの方、知識論は心の哲学とは切り離され

て論じてきた。そこには、様々な歴史的経緯があるが、一七世紀以来の観念説の衰退によって、知識論

が、ひいては論理学が心理学から分離されたことも大いに関係しているであろう。また、アメリカの哲

学者ウィルフリッド・セラーズによる「所与の神話」に対する批判も、この動きを決定的なものにした

と思われる。しかし、最近になって、知識論と心の哲学との密接な関係を強調する傾向が見出される。

とりわけ、ティモシー・ウィリアムスン(Timothy Williamson)は『知識とその限界』(Knowledge and Its

Limits, Oxford University Press, 2000)において、「知っている」とは独自な心的状態であり、伝統

的な知識の概念は誤っていると論じている。伝統的には、知識は信念状態のような内的条件と、真理の

ような外的条件との連言として分析されてきた。いわゆる「ゲティア問題」をめぐる長年の論争は、知

識の必要十分条件を求める試みの歴史であったと言えよう。

ウィリアムスンはこれに異議を唱え、知識を第一とする認識論を構想し、心の哲学との関連に論究し

ている。本研究では、そのような最近の流れを念頭に置きつつ、知識論と心の哲学との関わり合いを一

七・一八世紀の西洋近世哲学にまでさかのぼって問い直し、その際、当時における観念説と知識論との

関係に焦点を当てることによって、問題点を整理したい。こうした検討をふまえた上で、現代の知識論

と心の哲学との関わり合いについて、さらには、これらの検討を通して、現代の知識論をめぐる諸問題

に対して新たな視座を獲得するようにつとめたい。

その際、重要な概念は、「所与」(the given)と「蓋然性」(probability)であり、そして、それらを

つなぐ項としての「知覚」である。本研究では、これらのキー・タームの間の連関を探りつつ、知識論

と心の哲学の間で、従来の視座の転換の可能性を図りたいとさえ考えている。具体的には、存在が知識

に先立つのではなく、知識が存在に先立つこと、言い換えれば、存在論に対する知識論の優位という新

たな視座の確立の可能性を探りたいと考えている。

キーワード 所与、蓋然性、知覚、認知科学

Page 18: データベース シーズ名 1910年代から30年代の日本における西欧 …€¦ · 学会における最新の潮流では、「テレビ研究にはテレビ番組分析が不可欠」との認識が広く共有され、

データベース

登録

2010.9

シーズ名 日本の中世都市、近世都市

氏名・所属 等 仁木 宏、文学研究科・日本史学専修、教授

<概要>

日本中世(室町時代・戦国時代)、近世(織田・豊臣時代)の都市について研究している。

これまで対象としてきた都市は、

大坂、兵庫、西宮、尼崎、伊丹、池田、吹田、茨木、高槻、枚方、若江、久宝寺、古市、富田林、堺、貝

塚などの大阪平野を中心に、

京都、山科、宇治、亀山(亀岡)、福知山などの京都府、奈良、郡山、今井などの奈良県、大津、坂本、八

幡、安土、彦根、長浜などの滋賀県、

姫路、英賀、八上、豊岡などの兵庫県、

その他、福井県、石川県、富山県、新潟県、山梨県、神奈川県、栃木県、茨城県、宮城県、岩手県、青森

県、北海道、岡山県、鳥取県、広島県、島根県、山口県、徳島県、愛媛県、高知県、福岡県、大分県、佐

賀県、熊本県、鹿児島県、沖縄県におよぶ。

都市の空間構造(かたち)をもとに、都市社会のあり方、経済流通などを解明してきた。

こうした研究成果をいかして、各地で講演をおこなっている。

また、各地の教育委員会の文化財保護審議委員をつとめている。

<アピールポイント>

市民向けの歴史講座、文化財を生かした町づくりの提案などを積極的に担うようにしている。

<関連するURL> http://www.yakitori.lit.osaka-cu.ac.jp/cgi-bin/j_his/index.php?%B6%B5%B0%F7%A4%CB%A4%C4%A4%A4%A4%C6%2F%BF%CE%CC%DA%B9%A8

キーワード 大阪、大坂、都市の歴史、織田信長、豊臣秀吉、文化財

Page 19: データベース シーズ名 1910年代から30年代の日本における西欧 …€¦ · 学会における最新の潮流では、「テレビ研究にはテレビ番組分析が不可欠」との認識が広く共有され、

データベース

登録

2010.9

シーズ名 言語と身体表現

氏名・所属 等 野末 紀之、文学研究科・表現文化学専攻、准教授

<概要>

(1)19~20世紀の西欧の人々が、芸術や大衆メディアを通じて身体をいかに表現したかをテーマ

に研究している。近年は、イギリス世紀末の男性性の構築と脱構築というテーマから、同性愛をめぐる

文学的表象に関心がある。

<アピールポイント>

なし

<利用・用途・応用分野>

なし

<関連する知的財産権>

なし

<関連するURL>

なし

キーワード 言語と身体表現、男性性の構築と脱構築、文体のポリティクス

Page 20: データベース シーズ名 1910年代から30年代の日本における西欧 …€¦ · 学会における最新の潮流では、「テレビ研究にはテレビ番組分析が不可欠」との認識が広く共有され、

データベース

登録

2010.9

シーズ名 歴史認識問題など文化摩擦にたいする対応

氏名・所属 等 早瀬 晋三、文学研究科、教授

<概要>

『戦争の記憶を歩く 東南アジアのいま』(岩波書店、2007年)や紀伊國屋書店書評ブログ「書

評空間」http://booklog.kinokuniya.co.jp/hayase/ などで、歴史認識問題など東南アジアを中心に文

化摩擦の問題を考えてきた。日本の企業の海外進出がさかんで、知らず知らずのうちに文化摩擦を起こ

している可能性がある。海外進出地で、円滑に事業がおこなえるよう、ともに考える。

<アピールポイント>

多元文化社会のなかでの共生が唱えられている現在、海外進出地での文化摩擦は起こってはならない

ことで、現地の人びととともに多元文化共生社会を創っていくことが、進出企業に求められている。

<利用・用途・応用分野>

海外進出地での社会貢献は、日本国内および海外進出地でのCSR活動に貢献する。

<関連するURL>

紀伊國屋書店書評ブログ「書評空間」早瀬晋三 http://booklog.kinokuniya.co.jp/hayase/

大阪市立大学大学院文学研究科東洋史学専修早瀬晋三

http://www.lit.osaka-cu.ac.jp/ehis/hayase.html

キーワード 文化摩擦、多元文化共生、歴史認識

Page 21: データベース シーズ名 1910年代から30年代の日本における西欧 …€¦ · 学会における最新の潮流では、「テレビ研究にはテレビ番組分析が不可欠」との認識が広く共有され、

データベース

登録

2010.9

シーズ名 中国宋代政治日記の研究

氏名・所属 等 平田 茂樹、文学研究科・哲学歴史学専攻、教授

<概要>

宋代においては数多くの政治日記が残されています。その大半は、宰相・執政といった高官が「時政

記」といわれる公式の政治記録を書くために同時に書き留めた日記資料であり、その資料価値は極め

て高いものがあります。

政治史の研究を進めていく場合、誰が何処で、何をどのように行ったのかという動態的視点が不可欠

となります。幸いなことに、こうした日記資料は「政治過程」を詳細に書き留めているため、当時の

政治がどのように行われたのか、その政治に於いて誰がどのような役割をなしたのか、さらには当時

の政治の仕組みについても豊富な情報を提供してくれます。

こうした一連の政治日記を解読しながら、中国の政治が北宋から南宋にかけ、どのように変わってい

くのかを研究しています。

<アピールポイント>

日記を読むことによって、過去の歴史の世界が実体感のあるものとして理解することができます。

また、今日の政治の仕組みを理解する上でも「政治過程」は重要な部分となっています。比較史とい

う方法論を導入することにより、日本国内外の政治についての理解が一層高まることが期待されます。

<利用・用途・応用分野>

博物館・美術館、カルチャーセンター、生涯学習事業、歴史教育

キーワード 政治史、日記、皇帝、宰相・執政、時政記

Page 22: データベース シーズ名 1910年代から30年代の日本における西欧 …€¦ · 学会における最新の潮流では、「テレビ研究にはテレビ番組分析が不可欠」との認識が広く共有され、

データベース

登録

2010.9

シーズ名 コンピュータ利用アジア諸言語研究

氏名・所属 等 山崎 雅人、文学研究科・言語情報学専修、教授

<概要>

インターネットは瞬時に世界のコンピュータ同士を結びつけるが、そこを飛び交う情報の大半は言語

によって伝達される。歴史的事情から現在英語が最も世界的に通用する言語となっていることは間違い

ないが、コンピュータの性能の飛躍的発展により、英語以外の言語を用いても世界のどこかでその言語

に関心を持つもの同士が出会うことも可能になった。インターネットを使いこなすためには、何よりも

英語ができなければいけないというのは実は短絡的な見方で、インターネットだからこそ世界中のさま

ざまな言語で情報を検索し、人と人とを結びつけることが可能になったと言えるのである。

東アジアには漢字文化圏があり、これがコンピュータでデータ分析をする際の障壁になっていた時代

もあったが、現在では漢字はもとよりアジア各国で使われている多種多様な文字をネット上で使用する

ことができ、日本にいながらにして現地発の情報にいち早く接することができる。これらは、いったん

英語を介して手に入れるよりも早く、そして多重翻訳を行う際の誤訳の危険性がより低い分、精確さに

おいてむしろ勝る場合があると考える。

これまで研究してきた満洲語文語をはじめとするアルタイ諸語や東アジアの朝鮮語、漢語といった非

英語による情報発信は、英語を介さないとつながらないという、英語一本槍の偏狭な世界から離れて、

現地の言葉で直に情報を得ることができる利点があると考える。英語の世界的な広がりを一方で認めつ

つも、アジアの諸言語に直にアクセスすることができる能力の涵養を目指している。

<アピールポイント>

インターネットを用いた多言語環境(主に北東アジア)の構築

<利用・用途・応用分野>

東アジアからの留学生への言語学教授法研究

<関連する知的財産権>

なし

<関連するURL>

http://www.lit.osaka-cu.ac.jp/lit/undergrad/langs.html

http://www.lit.osaka-cu.ac.jp/cpr/langs/

キーワード 言語学、日本語、アルタイ諸語、インターネット、マルチリンガル