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インドネシアの教育事情と障害児教育支援の実行に関する方法開発－主としてバンドン市の調査から－
筑波大学附属久里浜養護学校
吉川 明守
１．はじめに
本稿は、平成 年度科学研究費補助金（基盤研究( )( ) 「インドネシアにおける障16 B 1 ）害児教育開発の国際協力に関する研究（研究代表者：中田英雄 」に基づいて実施された）
調査結果の一部である。インドネシアにおける障害児教育に関する調査については、平成
年度における前記の研究による調査 がある。この調査によってインドネシア障害児15 １）
教育のいくつかの課題と日本が行える障害児教育の効果的な支援内容について提案された
（表１参照 。）
表１ 提案された支援内容の概要
障 害 種 別 支 援 内 容
視 覚 障 害 教 育 ・ あんま・マッサージ」課程の設置に関する支援「
（ ． 、・教師の資質向上に関する支援 児童・生徒に何を考えさせex何に気づかせるかという方法を示した教師用の授業書と生徒が
使用する教科書の作成及びそれらを使ったモデル授業の公開に
関する支援）
聴 覚 障 害 教 育 ・教師の専門性の向上に関する支援（ 「聴覚障害担当教員教ex．科指導研究会」というような専門性向上に関する研究会を年１
回定期的に開催するための支援及びインドネシアと日本の教師
双方が参加し、それぞれの国の教師が行う授業について、意見
交換を行う授業研究会開催に関する支援）
肢体不自由児教育 ・教材・教具の開発に関する支援
・自助具及び補助具の開発に関する支援
・学習及び生活基本動作の学習方法の研究開発に関する支援
知 的 障 害 教 育 ・教師の資質向上に関する支援（ ．研修センタ－の設置に関すexる支援、派遣制度を含めた研修制度確立の支援、モデルとなる
教師の派遣）
・効果的な教育内容・方法の開発に関する支援（ ．個々の教育ex的ニーズに応じた教育が行うことができるような指導のガイド
ラインの整備に関する支援）
・効果的な教材・教具の開発に関する支援（ ．効果的な教科書exづくりへの支援）
・未就学児の就学を推進に関する支援（ ．小・中学校に特殊学ex級を設置し、障害児の受け入れを推進するシステムづくりへの
支援）
そ の 他 ・政策の基盤となる基本的な統計データ収集への支援
・教員等の資質向上に関する支援と施設・設備の充実への支援
ただし、同調査では２週間でジャカルタ、バンドン、スラバヤの３都市を移動し、７機
関を駆け足で訪問調査する方法であったため、検討資料が十分ではなかったことも併せて
報告されている。
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The 8th Asian Society for Adapted Physical Education andそこで今回は バリで開催された、
(以下、 と記す) への参加とバンドン市の７教育機Exercise ASAPE International Symposium関（表２参照）を訪問し、平成 年度の調査を補完するための資料収集と提案された支15援を効果的に実行する方法を開発するために、主に次の２点のことについて調査した。
( ) バンドン市内の （盲学校 ・ Ⅱ （重複1 SLB-A Negeri Bandung SLB-B-YP3ATR. Cicendo）
障害学校 、 ． （小学校）を訪問し、前回収集できなかった情報を視察及び） Sdn Tarumsari聞き取りで収集した。また、インドネシアが初めて障害者教育に関する国際学会の開催国
となった へ参加し、インドネシアの障害児体育のThe 8th ASAPE International Symposium実情についても情報収集した。
( ) 特別学校の教員養成の中核機関である （インドネシ2 Universitas Pendidikan Indonesia）、 、ア教育大学 西ジャワ地域の教育行政の中心機関である Direktorat Pendidikan Luar Biasa
インドネシアで聾教育で最も歴史のある学校とそれを運営する財団である
Ⅰ Ⅱ （聾学校・重複障害学校・財団 、及びインドネシアのSLB-B-YP3ATR. DAN Cicendo ）
知的障害教育で最も歴史のある学校である （知的障害学校）の５か所を訪SPLB-C-YPLB問し、平成 年度の調査結果から提案された「教員の資質向上に関わる支援」が、どの15ような内容・方法であれば実行できるか検討するための情報を懇談方式で収集た。
以下にその結果について記載する。
表２ 訪 問 先 等
種 別 訪 問 先 等 開催・所在地
The 8th ASAPE International Symposium Bali学 会
Universitas Pendidikan Indonesia Bandung大 学
Education Breau of West Java Bandung官 庁
YP3ATR Bandung財 団
Sdn Tarumsari Bandung小 学 校 ．
障害児学校
SLB-A Negeri Bandung BandungSLB-B-YP3ATR. DAN Cicendo BandungⅠ Ⅱ
SPLB-C-YPLB Bandung
２．インドネシアにおける教育事情の補完調査について
１） （盲学校）における調査SLB-A Negeri Bandung平成 年度の視覚障害教育に関する調査では、①視覚障害児の就学者数、②教育費、15
③教師の資格要件、④早期教育相談の実施の有無、⑤点字教科書、⑥職業教育、⑦寄宿舎
。 、 、の設置状況について情報収集がなされた 今回は 前回収集できなかったものの中から２）
カリキュラムの中心となる「授業の科目と時間数と配列」及び 練習プログラムにつADLいて調査した。収集できたものは小学部２年生における時間割（表３参照）と小学部２年
生おける の練習プログラム（表４参照）である。その概要は以下のとおりである。ADL( ) 「授業の科目と時間数と配列」について1①科目は、国語、算数、芸術（日本の音
楽・図工に類似 、宗教、体育、スン）
ADLダ語、 ﾊﾟﾝﾁｬｼﾗ教育、歩行訓練、
の９科目であった。
②小学校１年生と共通の科目は、国語、
算数、芸術、宗教、体育、スンダ語、
ﾊﾟﾝﾁｬｼﾗ教育であった。
③小学校２年生にない科目は、歩行訓
練、 の２科目であった。ADL図１ SLB-A Negeri Bandungの体育授業④授業の１単位時間は 分であった。25
、 （ ）⑤多くの科目は ２単位時間まとめて 屋外の盲人フロアバレーボール風景
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配列されていた。
⑥１週当たりの授業時間は、国語・算数が８単位時間と最も多く、その他の科目は、芸
術（４単位時間）を除いて、全て２単位時間であった。
( )表３ JADWL PELAJARAN KELAS D－Ⅱ DUA（授業スケジュール 小学部２年生）
( )SLB-A Negeri Bandung
月曜日 火曜日 水曜日 木曜日 金曜日 土曜日
UPAPARA
（朝 礼）
B.INDONESIA KESENIAN OM M.MATIKA KESENIAN M.MATIKA１時限
（国 語） （芸 術） （歩行訓練） （算 数） （芸 術） （算 数）
B.INDONESIA KESENIAN OM M.MATIKA KESENIAN M.MATIKA２時限
（国 語） （芸 術） （歩行訓練） （算 数） （芸 術） （算 数）
B.INDONESIA B.D PPKN M.MATIKA B.INDONESIA M.MATIKA３時限
（国 語） （スンダ語） （ﾊﾟﾝﾁｬｼﾗ教育） （算 数） （国 語） （算 数）
(休憩） 分間ISTIRAHAT 10
M.MATIKA B.D PPKN B.INDONESIA B.INDONESIA PENJAS４時限
（算 数） （スンダ語） （ﾊﾟﾝﾁｬｼﾗ教育） （国 語） （国 語） （体 育）
M.MATIKA ADL AGAMA B.INDONESIA B.INDONESIA PENJAS５時限
（算 数） （宗 教） （国 語） （国 語） （体 育）
ADL AGAMA６時限
（宗 教）
備考
①１単位時間： 分25
②始業時間：月曜日は７時 分、金曜日は７時、他の曜日は７時 分15 30
( ) 「 練習プログラム」について2 ADL①指導内容は、規則正しく２単位時間毎に変わる計画となっていた。
②日本の教育における の内容と異なるものが多くあった （日本では、薬の扱いADL 。
方・けがの手当については保健の内容、手紙の書き方については国語の内容、買い物
は特別活動の内容として取り扱われている ）。
③授業に使用する道具は、家庭にあるものを持参させるようにしている関係上、全ての
家庭にあると思われるものを使用するように指導内容が立案されている。
図２ SLB-A Negeri Bandung ADL室 図３ SLB-A Negeri Bandung ADL室教具
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( )表４ PROGRAMLATIHAN ADL KELAS D－Ⅱ DUA（ 練習プログラム 小学部２年生）ADL
( )SLB-A Negeri BandungNO HARI/TANGGAL MATERI ALAT YANG DIBAWA KETERANGAN
（内容） 使用道具） （備考）（
Raba,28-01-04 kaos kaki,sepatu kaos kaki,sepatu tanpa Bebas,yang dimilikiMemakai靴下 （使っているも1 tanpa dan bertali tali dan sepatu bertali anak（ 、
紐なし靴、紐有り靴の着脱） 靴下 紐なし靴 紐あり靴 のでよい）（ 、 、 ）
Raba,04-02-04 Membersihkan sepatu sepatu,lap,sikatsepatu Bebas,yang ada(靴 (靴、
のクリーニング) 布、靴ブラシ) （家にある2 dirumahものでよい）
Raba,11-02-04 Memakai bermacam- Baju,berkancing,dan Bebas,yang dimiliki(色々な種類 (ボタン付 （使っているも3 macam baju tanpa kancing anak
の服の着脱) きの服とボタンなしの服) のでよい）
Raba,18-02-04 Memakai rok dan celana Bermacam-macam rok Bebas,yang dimiliki(スカートとズボンの着脱) (色々な種類のス （使っているも4 dan celana anak
カートとズボン) のでよい）
Raba,25-02-04 Memakai dasi sederhana Dasi sekolah dan dasi Bebas,yang dimiliki(簡単なネクタイの着脱) (ボーイスカウト用 （使っているも5 pramuka anak
のネクタイと上着) のでよい）
Uang bisa dititipkanRaba,03-03-04 Mengenal uang Pecaban uang RpRp.50.- .d. .50.- .d.5 5
( お 金 の 種 類 (小さいお金 （お金は親が6 Rp.10,000,- Rp.10,000,- ke guru）: :Rp.50.- .d. Rp.50.- .d.5 5Rp.10,000,- Rp.10,000,-) ) 直接教師に渡すように
Lengkapi dng daftarRaba,10-03-04 Menggunakan uang Pecahan uang senilai(お金 （買い物リス7 sampai Rp.10,000,- Rp.10,000,- belanja
）の使い方 ) (お金 ) トつくってくるように: :Rp.10,000,- Rp.10,000,-Raba,17-03-04 Menggunakan alat Surat bekas yang masih Bebas,yang ada
(コミュ （未使用の封 （家にある8 komunikasi:surat berperangko dirumahニケーションの方法：手紙) 筒） ものでよい）
Lengkapi nomorRaba,24-03-04 Menggunakan alat Coin Rp.100,-untuk( （電話に （電話番号が9 komunikasi:telepon menelepon 5bh teleponコミ ( )
の方法：電話) 使う コイン） 必要である）ュニケーション Rp.100
Raba,31-03-04 Mengenal obat-obat Berbagai jenis obat Bebas,yang ada(普通の薬の使 (色々な普通の薬) （家にある10 sederhana sederhana dirumah
い方) ものでよい）
Raba,07-04-04 Mengoti luka kecil obat-obat sederhana: Bebas,yang ada（簡単
なけがの手当) ( 外 傷 （家にある11 balsem,betadindsb. dirumah薬) ものでよい）
Raba,14-04-04 Membantu orang yang Berbagai obat sederhana Bebas,yang ada（他人の簡単なけがの （普通の薬) （家にある12 terluka dirumah
手当) ものでよい）
２） Ⅱ （重複学校）における調査SLB-B-YP3ATR. Cicendo平成 年度の聴覚障害教育に関する調査では、 Ⅰ を含む５校15 SLB-B-YP3ATR. Cicendo
の聾学校において、①乳幼児期の教育、②補聴器の装用、③発音・言語指導、④読み書き
の指導、⑤教科指導、⑥職業教育と進学指導、⑦コミュニケーション手段について情報収
集がなされた 。今回は、前回収集できなかったものの中から、聴覚障害に他障害を併せ３）
持つ者を就学対象とする重複障害学校( Ⅰ と同じ敷地にあるSLB-B-YP3ATR. CicendoⅡ ）の実情について調査した。入手した情報は、以下のとおりでSLB-B-YP3ATR. Cicendo
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ある。
( ) 概要1①設置年： 年2001②在籍者数
幼稚部（ 名 、小学部（ 名 、中学部（５名 、高等部（２名）の合計 名2 19 28） ） ）
③障害の重複状況について
聴覚障害と知的障害がある者（ 名 、聴覚障害と肢体不自由（ ）がある者（１19 CP）
名 、聴覚障害と視覚障害がある者（２名 、聴覚障害と自閉障害がある者（６名）） ）
④教員
（ ） 、 （ ） 。 、校長 １名 教諭 名の計 名であった 教諭の身分はKEPSEK GURU 10 11常勤職員が７名で、残りの３名は非常勤職員であった（表５参照 。）
表５ 教 員
( Ⅱ )SLB-B-YP3ATR. Cicendo区 分 校 長 教諭（常勤） 教諭（非常勤） 計
年 齢
歳～ 歳 １名 ２名 ３名30 40歳～ 歳 ４名 １名 ５名40 50歳～ 歳 １名 ２名 ３名50 60
聾学校勤務年数
５年以下 ２名 ２名
６年～ 年 １名 １名10年～ 年 １名 １名 ２名11 15年～ 年 ２名 ２名16 20年以上 １名 ３名 ４名20
⑤施設・設備
・校舎は第２次大戦中にオランダ軍が使用していた兵舎をほぼそのまま活用しており、
老朽化が顕著であった。
・教室は、気候の関係もあってか、日差しが入りにくい構造になっていて、薄暗く感じ
るほどの照度であった。また、一室を戸棚で仕切って２クラスとして使用していた。
技能室も戸棚で仕切って、裁縫・編み物や陶芸の作業コーナーとしていた。それぞれ
のコーナーは、３～４人が作業をするのが精一杯のスペースであった。
・音楽室や理科室などの特別教室はなかった（同一敷地内の聾学校にはあった 。）
・教科学習用の教材・教具は、共用の教科書以外、見当たらなかった。
・技能室に配置されていた機器は、縫製用の脚踏み式のミシンが２台、縢りミシンが１
台、糸巻き器が１台、手動式ろくろが１台であった。機械は電力を使用せずに動かせ
るものが配置されていた。
図４ SLB-B-YP3ATR.ⅡCicendo 教室 図５ SLB-B-YP3ATR.ⅡCicendo 技能室
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( ) 「授業の科目と時間数と配列」について2①科目は、国語、算数、理科、社会、英語、技能（日本の技術・家庭に類似）芸術（日
本の音楽・美術に類似 、宗教、体育、ﾊﾟﾝﾁｬｼﾗ教育、聴能訓練、の 科目であった） 11（表６参照 。）
②授業の１単位時間は 分であった（表６参照 。30 ）
③１週当たりの授業時間は、技能の授業時間が最も多く、全授業時間数の約 ％を占40めていた（表６参照 。）
④多くの科目は、２単位時間まとめて授業が組まれていたが、体育については、各学年
とも４単位時間連続して授業が組まれていた。技能については、中学部２年生、中学
部３年生、高等部１年生においては、全日、技能だけで授業が組まれている日もあっ
た（表６参照 。）
（授業スケジュール）表６ JADWL PELAJARAN
( Ⅱ )SLB-B-YP3ATR. Cicendo
学年 時限 月曜日 火曜日 水曜日 木曜日 金曜日 土曜日
１ 理 科 国 語 技 能 聴能訓練 体 育 英 語
２ 理 科 国 語 技 能 聴能訓練 体 育 英 語
３ ﾊﾟﾝﾁｬｼﾗ教育 宗 教 社 会 聴能訓練 体 育 技 能
中１ ４ ﾊﾟﾝﾁｬｼﾗ教育 宗 教 社 会 聴能訓練 体 育 技 能
５ 宗 教 技 能 技 能 技 能 芸 術 技 能
６ 宗 教 技 能 技 能 技 能 芸 術 技 能
７ 聴能訓練 技 能 技 能 技 能 芸 術 技 能
宗 教 技 能 ﾊﾟﾝﾁｬｼﾗ教育 英 語 体 育 社 会1宗 教 技 能 ﾊﾟﾝﾁｬｼﾗ教育 英 語 体 育 社 会2
中２ 理 科 技 能 技 能 国 語 体 育 技 能3理 科 技 能 技 能 国 語 体 育 技 能4数 学 技 能 技 能 技 能 芸 術 技 能5
６ 数 学 技 能 技 能 聴能訓練 芸 術 技 能
７ 聴能訓練 技 能 技 能 聴能訓練 芸 術 技 能
英 語 理 科 ﾊﾟﾝﾁｬｼﾗ教育 聴能訓練 体 育 技 能1英 語 理 科 ﾊﾟﾝﾁｬｼﾗ教育 聴能訓練 体 育 技 能2
中３ 数 学 技 能 宗 教 社 会 体 育 技 能3数 学 技 能 宗 教 社 会 体 育 技 能4国 語 技 能 技 能 技 能 芸 術 技 能5国 語 技 能 技 能 技 能 芸 術 技 能6聴能訓練 技 能 技 能 技 能 芸 術 技 能7
数 学 技 能 技 能 数 学 体 育 技 能1数 学 技 能 技 能 数 学 体 育 技 能2
高１ 英 語 英 語 技 能 ﾊﾟﾝﾁｬｼﾗ教育 体 育 技 能3英 語 英 語 技 能 ﾊﾟﾝﾁｬｼﾗ教育 体 育 技 能4理 科 宗 教 技 能 技 能 芸 術 技 能5理 科 宗 教 社 会 技 能 芸 術 技 能6聴能訓練 聴能訓練 社 会 技 能 芸 術 技 能7
B.INDONESIA M.MATIKA IPA IPS注：原文を以下の（ ）内のように和訳し表記した。 （国語 、 （数学 、 （理科 、） ） ）
B.INGGRIS PENJAS KESENIAN KETERAMPILAN LM PPKN（ ）、 、 （ ）、 ）、 （ ）、 、社会 (英語) 体育 (芸術 技能 (聴能訓練)
（ﾊﾟﾝﾁｬｼﾗ教育 、 (宗教)） AGAMA
備考
①始業時間：７時 分。30
。②１単位時間： 分40
３） ． （タルムサリ小学校）における調査Sdn Tarumsari平成 年度の調査では、特別学校の調査は行われたが、小学校・中学校等についての15
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調査は行われなかった。これらの学校の教育内容は、教育の基本内容でもあるので、障害
児教育の内容について検討するうえでも、重要なものとなる。そこで体力に関する調査に
協力する目的で訪問したバンドン市郊外にある、当小学校の教育の現状についても調査し
た。収集した情報は以下のとおりである。
( ) 児童数と教員数1①児童数： 名295②教員数（校長を含む ：７名（公務員）と５名（非常勤）の 名） 12
図６ Sdn．Tarumsari正門 図７ Sdn．Tarumsari 周辺環境
( ) 「授業の科目と時間数と配列」について2、 、 、 、 、 、 、 、 、 、①６年間で学ぶ科目は 国語 スンダ語 英語 算数 理科 社会 家庭 体育 宗教
ﾊﾟﾝﾁｬｼﾗ教育、地域教育の 科目である（表７参照 。特筆すべき事項としては、日11 ）
本の小学校で音楽・図工に当たる「芸術( )」が、特別学校にはあったが、KESENIANこの小学校にはなかったことがあげられる。
②授業時間数に関しては、語学に関する科目(国語､スンダ語､英語）と算数の授業時間
の合計が、総授業時間の ％以上を占めていた(表７参照)。ちなみに特別学校にお50いては、前年度の調査結果 をみると、語学に関する科目と算数に当てられていた合５）
計の授業時間は､他の科目の合計より少なく､総授業時間数の 強の時間であった。1/3③授業は、月曜日から土曜日の１週６日で組まれていた（表７参照 。）
④１日の授業時間数は、イスラム教の集団礼拝の関係で少なくなるように配慮されてい
る金曜日を除いて、全て等しくなるよう割り振られていた（表７参照 （特別学校）。
においても同様の傾向があった）
⑤各学年とも全ての科目において、奇数時限の日の調整を除き、２単位時間まとめて授
業が実施できるよう配列にされていた（表７参照 （特別学校においても同様の傾）。
向があった ）。
図８ Sdn．Tarumsari教室 図９ Sdn．Tarumsari算数授業風景
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（授業スケジュール）表７ JADWL PELAJARAN
( )SDN. TARUMSARI
学年 時限 月曜日 火曜日 水曜日 木曜日 金曜日 土曜日
１ 宗 教 算 数 算 数 国 語 体 育 ﾊﾟﾝﾁｬｼﾗ教育
１ ２ 宗 教 算 数 算 数 国 語 体 育 ﾊﾟﾝﾁｬｼﾗ教育
３ 算 数 国 語 国 語 家 庭 スンダ語 国 語
４ 算 数 国 語 国 語 家 庭 スンダ語 国 語
算 数 宗 教 国 語 体 育 算 数 国 語1２ 算 数 宗 教 国 語 体 育 算 数 国 語2
国 語 算 数 算 数 家 庭 スンダ語 ﾊﾟﾝﾁｬｼﾗ教育3国 語 算 数 算 数 家 庭 スンダ語 ﾊﾟﾝﾁｬｼﾗ教育4
算 数 国 語 算 数 国 語 体 育 社 会1算 数 国 語 算 数 国 語 体 育 社 会2
３ 宗 教 算 数 国 語 算 数 理 科 家 庭3宗 教 算 数 国 語 算 数 理 科 家 庭4国 語 理 科 ﾊﾟﾝﾁｬｼﾗ教育 社 会 スンダ語5国 語 理 科 ﾊﾟﾝﾁｬｼﾗ教育 社 会 スンダ語6
地域教育 地域教育7
宗 教 算 数 理 科 国 語 社 会 理 科1宗 教 算 数 理 科 国 語 社 会 理 科2
４ 算 数 ﾊﾟﾝﾁｬｼﾗ教育 算 数 家 庭 地域教育 体 育3算 数 ﾊﾟﾝﾁｬｼﾗ教育 算 数 家 庭 地域教育 体 育4国 語 国 語 国 語 スンダ語 社 会5国 語 国 語 国 語 スンダ語 社 会6
国 語 社 会 英 語 算 数 体 育 家 庭1国 語 社 会 英 語 算 数 体 育 家 庭2
５ 理 科 社 会 理 科 国 語 スンダ語 英 語3理 科 宗 教 理 科 国 語 国 語 英 語4算 数 宗 教 算 数 理 科 国 語 地域教育5算 数 ﾊﾟﾝﾁｬｼﾗ教育 算 数 理 科 社 会 地域教育6算 数 ﾊﾟﾝﾁｬｼﾗ教育 算 数 スンダ語 社 会 社 会7
国 語 社 会 宗 教 理 科 社 会 体 育1国 語 社 会 宗 教 理 科 社 会 算 数2
６ 国 語 社 会 英 語 スンダ語 社 会 算 数3理 科 国 語 英 語 スンダ語 家 庭 理 科4理 科 国 語 国 語 算 数 家 庭 理 科5ﾊﾟﾝﾁｬｼﾗ教育 算 数 国 語 算 数 体 育 地域教育6ﾊﾟﾝﾁｬｼﾗ教育 算 数 国 語 算 数 地域教育7
B.INDONESIA M.MATIKA IPA IPS注：原文を以下の（ ）内のように和訳し表記した。 （国語 、 （数学 、 （理科 、） ） ）
B.INGGRIS B.SUNDA PENJAS KTK PPKN AGAMA（ ）、 、 、 （ ）、 、 （ ）、社会 (英語) (スンダ語) 体育 (家庭) ﾊﾟﾝﾁｬｼﾗ教育
(宗教)、 （地域教育）MULOK
備考
①始業時間：１学年･２学年･５学年･６学年は７時 分、３学年･６学年は９時 分。15 15
②１単位時間：１学年･２学年は 分、３学年～６学年は 分。30 40
( ) その他2学習遅滞（ ）がある児童が 名と肢体不自由（ ）がある児童が２名在Slow Learner 14 CP
籍しているという説明を受け、体力測定を実施しながら観察した。しかし、どの児童に障
害があるのかが全く分からなかった。教頭の話では、障害の程度は全員極めて軽度である
が、学習が遅れがちなので、その対応としては、時間外補習を実施しているとのことであ
った。補習以外に特別なプログラムは、用意されていなかった。
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４） ８ で収集した情報The th ASAPE Internasional SymposiumDirector General Primary and Secondary Education National Education開会式における
Ministry Dr.Ir.Indra Djati Sidi Toward(国民教育省初等中等教育局長)の の講話（演題：
）からインドネシアの障害児体育について以下inclucive physical education in asian countriesのような情報を得た。
( ) スポーツ活動とトレーニングは、一般的に心身の健康を保持・増進させ、人々の生活1の質を高めることを目的として行う。この方法は運動負荷をかけるものであるため、身体
障害のない人のためだけにあると考えがちであるが、最適のプログラムは、身体障害に対
する一つの治療の方法としても活用できる。したがって、障害児体育のプログラムも、身
体障害のない人に対するものと同じ目標をもっていなければならない。
( ) 身体的なトレーニングと教育が適切にプログラムされたとき、国際的な運動選手を輩2出することができるが、このようなプログラムは、障害児体育のプログラムの開発からも
得られるものであると考えられていること。
( ) 行政と学校が用意している障害児体育を含む教育システムにおいては、個々の子供の3障害特性に応じたプログラムの開発とそれに基づいた実践が行われておらず、現状で実行
可能な政策づくりなど、この教育システムの質を高めていくための取り組みが最近開始さ
れたこと。
( ) 学校は、施設・設備の提供や情報提供など、スポーツ活動の普及の拠点施設として活4用しようとしていること。
SLB-B Negeri図10 カントリーレポート 図11 ワークショップ（左２番目 筑波 （
Pembine Tingkat Nasional Jimbaran大学教育開発国際協力研究センター長
障害児体育教員研修会風景中田英雄教授） 見学）
５）まとめ
平成 年度の教育事情調査を補完する資料を収集するため、主としてカリキュラムの15中心となる「授業の科目・時間数・配列」等についての調査や重複障害児教育がどのよう
な実情にあるのかについて調査した。
調査対象の学校は、前者が盲学校、重複障害学校、小学校、それぞれ１校ずつであり、
後者が聴覚障害に他障害を併せ持つ者を就学対象とする学校１校であった。
また、 では、インドネシア教育省初等中等教育The 8th ASAPE International Symposium局長の講話から、インドネシアの障害児体育の現状について情報収集した。
その結果は、次の７点のことに集約された。
( ) 授業時間数は日本と同様に単位時間数でカウントされ、特別学校の１単位時間は小学1校の１単位時間よりも短かった。
( )授業は、同じ科目を連続２単位時間以上で配列し、実施していることがほとんどであ2った。これは小学校も特別学校も同じであった。
( )盲学校で入手した の指導内容は、障害に応じたスキル指導を行う「特別教育プ3 ADLログラム」の一つであり、日本の特殊教育諸学校において、主として「自立活動」の領域
で扱う内容に相応するものであった。しかし、内容は規則正しく２単位時間毎に変わる計
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画となっており 「自立活動」のように、個々の障害の状態や学習の進度に応じて指導を、
進めるという観点は認められなかった。また、日本では小学校の「教科」で扱う内容も多
く含まれていた。
( ) 重複障害学校は、在籍者 人に対し教師１名の割合で教師が配置されていた。運営4 2.5財団が同じであり、同一敷地内にある聾学校では、在籍者６人に対して教師１名の割合で
配置されており、特別学校の中でも重複障害学校は教師の配置が優遇されていた。
( ) 重複障害学校では、連続して同じ科目で授業をする傾向が他の学校よりも顕著であっ5た。それは体育や技能においてより著しく、体育が連続４単位時間で配列されていたり、
技能では一日の全ての授業時間に当たる連続７単位時間で配列されていたりしていた。
( ) 重複障害学校の施設・設備は、開校３年目であるが、聾学校の校舎の一部を使っての6開校であったためか、学習スペースは不十分で、校舎の老朽化が顕著であった。また、音
楽室や理科室などの特別教室もなかった。総授業時間の ％以上を占める技能を除き、40学習用の教材・教具についても共用の教科書以外、ほとんど見当たらなかった。これに比
べて、技能の学習用機器は、いくらか準備されており、基礎・基本の学習よりも、暮らし
や職業に直結するスキルの学習に力点が入れられている様子が伺えた。
( ) 障害児体育のプログラムは 「身体障害のない人々の健康の保持・増進のプログラム7 、
、 。」 、にも寄与し 全ての人の生活の質を高めるうえで重要なものである という考えの基で
最近、特別学校を中心に開発と普及の取り組みが開始された。しかし、課題は多く、今後
の実践を通した最適な教育プログラムの開発がまたれる状況であった。
これら７点にまとめられるあらたに収集できた情報は、カリキュラムの編成や指導体制
の検討など、前年度に提案された支援内容を実行に移す際において、重要な情報ではあっ
たが、提案内容（表１参照）を修正させるまでのものではなく、それを支持する内容であ
った。
３ 「教員の資質向上に関わる支援」の実行に関する調査について．
平成 年度の調査結果から国際協力が可能な事項の一つとして 多くの調査員から 教15 、 「
員の資質向上」に関する支援が提案されていた 。そしてその具体的な内容・方法と３）５）６）
して指導者の派遣、インドネシア教師の日本での研修受け入れ、研修センターの設置、日
、 。 、 、本人教師の長期派遣 合同授業研究会開催等が提案されていた 今回は これらの中から
特殊教育諸学校の教師が現状において、支援可能な内容であり、かつ、教師の専門性の向
上に活用実績のある授業研究会を合同で行うことに焦点をあて、それがどのような内容・
方法で開催すれば、効果的なものになるかを懇談等で調査した。その概要を合同授業研究
会へのニーズ、開催の時期及び機関として協力可能な内容等のカテゴリーで整理すると以
下のとおりである。
１） （インドネシア教育大学： ）で収集した情報Universitas Pendidikan Indonesia UPI情報は、 副学長、 講師（筑波大学大学院修Sunaryo Kartadinato UPI Djadja Rahardja UPI
士課程に留学経験があり、通訳も兼務）の両者との懇談から入手した。
( ) 合同授業研究会へのニーズ1①教育委員会が準備する研修会へ講師の派遣などの協力を行っているが、授業研究会を
開催したり、支援したりしたことはない。現職教員が自己の授業を通して研鑽しあう
授業研究会は成果が大いに期待できる。
②インドネシアにおいて、国際的な研修会への参加は、教師等を評価する際のポイント
が高い。したがって、日本と合同で開催する会であると教育関係者の参加へのニーズ
はより高いものとなる。
( ) 開催の時期2①ラマダン（日中断食）の時期は、慣習として日中の積極的な活動を控える傾向がある
ので、さけるほうが賢明である。今年は、 月 日から 月 日までがその時期10 15 11 14にあたる。
②金曜日は集団礼拝を行う曜日でもあるので、避けたほうが開催時間の制約は少なくな
る。
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( ) 機関として協力可能な内容3年度途中でもあり経費の協力は困難であるが、通訳者やアドバイザーの派遣、連絡調整
員配置など人的協力は可能である。
( ) その他4それぞれの国において、歴史的にも教員養成の中核機関である筑波大学とインドネシア
教育大学とが、機関として連携をとることができれば、教員の資質向上について、より素
晴らしいプログラムを開発できると思う。支援を受けたあとのインドネシア国内のフォロ
－のことを考えても、この連携は重要なものとなる。
図12 インドネシア教育大学 図13 インドネシア教育大学副学長室
（ 副学長：下段右）にて Sunaryo２） （西ジャワ教育委員会）で収集した情報Education Breau of West Java
Euis Karwati Djadja Rahardja UPI情報は、 特殊教育課長との懇談から入手した （通訳：。
講師）
( ) 合同授業研究会へのニーズ1バンドン市は 年までに、全ての学校において、インクル－シブ教育が実現できる2010
よう、現在、プロジェクトを開始させている。その活動の一環として、教員の障害児教育
、 、に対する専門性の向上に関する研修を 大学等の協力を得て実施しているところであるが
予算上の制約もあって、教員数に比して研修の機会は十分に用意できていないのが現状で
ある。したがって、専門性の向上に関する
研修会は行政的にもニーズの高いもので
ある。
( ) 開催の時期2多くの人を集めるのであれば、ラマ
ダン（日中断食）の時期は、さける方
がよいと思う。
( ) 機関として協力可能な内容3後援機関となり、参加者を業務とし
て派遣できるよう管轄の各学校に通知
するなどの協力は可能である。
( ) その他4複数の学校で開催するのであれば、
複数に参加する者のことも考えて、近く
(左) の学校を会場に選定することに異論はな図14 Euis Karwati氏 との懇談風景
い。
３） Ⅰ Ⅱ （聾学校・重複障害学校・運営財団）SLB-B-YP3ATR. DAN Cicendo情報は、運営財団の 理事長、 聾学校長、 重複障Endang Hidayat Priyono Dra.Eti Rochaeti
害学校長の三者との懇談から入手した （通訳：上越教育大学大学院修士課程に留学経験。
がある 非常勤講師）Lalan Erlani UPI
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( ) 合同授業研究会へのニーズ1①インドネシアの教師の授業と日本の
教師の授業を同時に見て、それぞれ
の長所を学びあえる有益な機会にな
ると思う。せっかくの機会でもある
ので近隣の他校の教師にも参加を呼
びかけたい。
②インドネシアの聾教育で最も歴史の
ある本校には、教育実践の先進的な
情報を提供する役割もある。
( ) 開催の時期2①ラマダン（日中断食）の時期はさけ
（右５番目 理事長、 たい。図15 聾学校にて Hidayat右３番目 重複障害学校長、右２ ②今年度に実施するのであれば､すでにRochaeti番目 聾学校長） 計画されている行事もあるので、実現Priyono
可能となった段階で、できるだけ早く
具体的な打ち合わせをしたい。
( ) 機関として協力可能な内容3研究授業を行う教師や会場の提供の協力は可能である。
( ) その他4①聾教育の先導的機関として会場校になることにはやぶさかではないが、重複障害教育
を担当している教師よりも単一障害の子供の教育を担当している教師の数の方が多い
ので、聾学校の授業を対象として開催したい。
②授業研究は、それぞれの国の文化や言語との関わりが少ない算数（数学）や理科だと
双方が理解しやすいという考えには賛同する。
③日本とインドネシアの両国で継続して交互に開催できるとより交流が深まると思う。
図16 SLB-B-YP3ATR.ⅠDANⅡCicendo正門 図17 SLB-B-YP3ATR.ⅠCicendo教室
４） （知的障害学校）で収集した情報SPLB-C-YPLBUPI Juanaeni Juanaeni情報は、 の教員でもある 校長との懇談から入手した情報である。
校長は、鳴門教育大学大学院修士課程に留学経験があり、懇談は複雑な内容以外は主に日
本語で行われた （通訳： 非常勤講師）。 Lalan Erlani UPI( ) 合同授業研究会へのニーズ1現状では、教員同士が教育内容・方法について、ディスカッションする時間は用意され
ておらず、その機会はほとんどない。また、日本で行われているような 授業研究会は校
内においても開かれていない。現場の教師の指導力向上にはよい機会である。
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( ) 開催の時期2①赴任したばかりなので、経営方針を職員に理解してもらうための作業が最優先事項と
なる。したがって、新学期早々は困難である。
②すでに計画されている行事もあるので、実現可能となった段階で、できるだけ早く相
談したい。
③ 月 日から 月 日まではラマダンにあたるので、この時期をさけるという考10 15 11 14えに異議はない。
( ) 機関として協力可能な内容3研究授業を行う教師や会場の提供の協力は可能である。協力するというよりは、本校の
ために、是非、本校を活用していただきたい。
( ) その他4①今年度、これまで実践されていたドイツ式の教育方法等に疑問をもった多数の教師
が、本校を去った。前校長が引責辞任したため、運営財団から本校の改革の要請を受
け、８月から校長として赴任した。鳴門教育大学大学院に留学していた際に、日本の
学校教育の実際に触れ、その長所を実感している。日本の教育方法導入を柱として、
改革を推進したいと考えている。偶然にも旧知の中田教授から合同授業研究会開催の
話があり、タイミングのよさに驚いている。是非、本校の教師が参加できるような形
で実現していただきたい。新学期から、障害の程度・能力別に学級編成を行ったり、
リソースルームを開設したり、教員配置を見直したりして、個に応じた教育を行うた
めの経営改善に着手する予定である。
②今回だけではなく、息長い教育協力を期待している。
図18 SPLB-C-YPLB 正門横看板 図19 SPLB-C-YPLB 校舎・運動場
５）まとめ
５機関での調査は、次の 点のことに集約された。16（合同授業研究会へのニーズ）
①インドネシアは、インクルーシブ教育の推進を目指している関係もあって、障害児教
育の内容・方法等に関する教員の関心は高い。しかし、公的な研修会へ参加する機会
は、教員のニーズに十分に応えられていない状況にあり、行政的にもニーズが高い。
②バンドン市には、それぞれの障害種でパイオニアの特別学校がそろっており、このよ
うな国際的な実践研究会を通して、ここから最新の教育実践の情報を発信していきた
いと考えている学校もあった。
③国際的な研修会への参加実績は、教職員に対する評価ポイントが高いので、参加ニー
ズは高い。
④セミナー方式の研修会よりも、ワークショップ方式の研修会の方が、現場の教員の指
導力の向上に反映しやすい。
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（開催の時期）
⑤行政、大学、学校のどの機関においてもラマダン（日中断食）の時期（ 月 日か10 15ら 月 日まで）は、避けるほうがよいという意見であった。11 14
⑥今年度の事業で実施するということであれば、各学校にはすでに計画されている行事
もあるので、会場を提供する学校としては、できるだけ早く打ち合わせをしたいとい
う意向があった。
⑦金曜日は集団礼拝を行う曜日でもあるので、避けたほうが開催時間の制約は少なくな
るというアドバイスがあった。
（機関として協力可能な内容）
、 、⑧どの機関においても財政的には困窮しているので 経費を負担することはできないが
、 、 、学校においては 会場の提供や人的協力が可能であり 大学や教育委員会においては
共催機関や後援機関になることが可能であることが伝えられた。
、 、⑨どの機関においても財政的には困窮しているので 経費を負担することはできないが
会場の提供や人的協力は可能である。また、大学や教育委員会は共催機関や後援機関
となることも可能ということが伝えられた。
（その他）
⑩日本とインドネシアの両国で交互に開催できるとより交流が深まるという考えも示さ
れた。
⑪教員の資質向上についてのプログラムの開発や支援事業のインドネシア国内のフォロ
－ためにも、それぞれの国において、教員養成の中核機関である筑波大学とインドネ
シア教育大学とが機関として連携をとることが望まれた。
⑫授業研究は、それぞれの国の文化や言語との関わりが少ない算数（数学）や理科だと
双方が理解しやすいということが合意された。
⑬聴覚障害教育においては、重複障害児教育よりも単一障害児教育を担当している教師
の数が多いので、聾学校の授業を対象として開催したいという意向があった。
⑭複数の学校で開催するのであれば、学校間が近距離だと、複数に参加する者にとって
は便利であるとのアドバイスがあった。
⑮日本の教育方法導入を柱として、改革を推進したいと考えている学校があり、その推
進の一環として、この合同授業研究会を活用したいという意向があった。
⑯単発の支援ではなく、息長い教育協力が期待されていた。
これら 点にまとめられた内容を概括すると、合同授業研究会は、ワークショップ方16式の研究会であることや現場教師の指導力の向上を目的とする研究会であることから、イ
ンドネシア側の開催ニーズは大きいものであった。このような意向は、学校現場や教育行
政機関及び教員養成機関のすべての機関において同様であった。特に学校現場においては
継続的な開催の要望もあった。
したがって、各学校においては、研究授業を行う教師や会場の提供、教員養成機関にお
いては、共催機関としてアドバイザーや通訳の派遣と研究会後のフォローの実施、教育行
政機関においては、後援機関として開催通知や連絡調整などの役割を担う意思もあった。
ただし、どの機関においても財政的な負担は困難で、費用は日本側の全面的な負担が必
要となる。
開催日については、会場校と細部を検討する必要があるが、イスラム教徒がほとんどで
あるインドネシアにおいては、どの機関においても、ラマダンの期間やイスラム教徒の集
団礼拝が行われる金曜日は避けるようアドバイスがあった。
このように日本とは文化的背景が異なるので、授業研究で取り上げる内容は、教科にお
いては文化的背景に強く影響を受ける社会科学的分野の内容をさけ、算数（数学）や理科
など自然科学的内容を取り上げたほうが、双方の国の教師がディスカッションしやすいの
ではないかという意見があった。また、指導内容だけではなく指導方法や指導体制を紹介
してほしいというニーズもあった。
以上のことを勘案すると、バンドン市で実施する日本とインドネシア両国の合同授業研
究会は、表８のような内容・方法で開催することが望ましいといえる。
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表８ バンドン市合同授業研究会開催要項
第１回 日本・インドネシア交流授業研究会in Bandung
１．目的
( ) 日本とインドネシアの教師それぞれが実施した授業とその指導案について、参加1者全員で意見交換をし、それを通して指導方法や評価のあり方等について協議
議する。
( ) 協議の結果をふまえ、日本とインドネシアの教師が共同で幼児・児童・生徒にふ2ふさわし授業づくりを行う。
２．期日
月 日以降の日にちで金曜日を除く11 15３．会場
（知的障害学校 ・ Ⅰ （聾学校）SPLB-C-YPLB SLB-B-YP3ATR. Cicendo）
４．参加資格
（ ）障害児教育を担当している教師 障害児教育の担当が予定されている教師も含む
５．内容
( ) インドネシア教師による研究授業1( ) 日本の教師による研究授業2
①個別指導による研究授業
②チームティチングによる研究授業
③一人の教師による一斉指導型の研究授業
( ) 研究協議3①授業者の評価
②参観者の評価
③よりよい授業づくりに向けての協議
( ) 合同研究授業4研究授業に関するディスカッションを踏まえ、日本の教師とインドネシアの教師
師とが協力して授業づくりを行い、研究授業及び研究協議を実施する。
( ) その他5①インドネシア教育大学を共催機関、西ジャワ教育委員会を後援機関とする。た
だし、経費は日本が全額負担する。
②現段階では教科の授業内容は、両国で共有できる内容とする。
４．おわりに
支援を行う側が課題と考えることが、受ける側に必ずしも課題ととらえられているとは
限らない。この場合、支援を行う側の論理で解決しようとしても、支援にならないばかり
か、迷惑をかけることとなる。教育は文化的な要因に大きく影響を受ける内容だけに、支
、 。 、 、援を行う際には このことに十分に留意する必要がある 今回の調査は この点を考慮し
実施されたものであった。
その結果、昨年度の日本の調査員から課題として指摘された「教員の資質向上」とその
課題解決のための「合同の授業研究会の開催」は、バンドン市の教育関係者からも支持を
されるものであることが把握できた。そして「合同の授業研究会の開催」を効果的に実行
するための内容・方法を盛り込んだ「バンドン市合同授業研究会開催要項」を本稿で提案
することもできた。
この要項案は、支援をしようとする側の論理や都合を優先して作成したものではない。
- 16 -
インドネシア側の意見を十分に取り入れるとともに、この授業研究会を通してそれぞれの
国の教師が、共に学び合うということを目的として作成したものである。
「支援国」と「被支援国」という区分けは、政治的・経済的にみると費用の負担国を明
確にするために必要ではあるが、教育内容・方法については、このような区分けをする必
要がない。双方に学ぶ気持ちがあれば、どちらか一方的に利益があり、他方には全く利益
。 、「 」がないということはありえないからである むしろ区分けをすることによって 支援国
の教師におごりや「被支援国」の教師に押しつけらるという意識を芽生させ、両国の教師
の学ぶ意欲を低下させる恐れがでてくると考えられる。円滑で効果的な活動を実行するた
めには、まずは費用を負担する側が、①相手の立場や都合を優先する、②共に学び合うと
いう意識を持つ、③息の長いお付き合いをさせて欲しいという意志を明確に表現する、と
いう考えをもってことにあたることが重要な方法となる。中でもとりわけ「共に学び合う
という意識を持つこと」が、有意義な活動を継続的にできるかどうかの鍵となる。
前年度の調査において、日本が支援できる事柄と共に、日本が学べる若干の事柄の指摘
があった。今回の訪問においても、日本方式をより有効だと考えインドネシアの教師に紹
介していきたいものもあれば、日本の教師が学んでいかなければならないものもあった。
滞在期間中、児童・生徒が尊敬の念をもって教師に接している姿や物乞の障害者や高齢
者に次々とお金を出す通行人、客の自己申告で料金を徴収する大衆食堂の経営方式を学校
や町中で目の当たりにした。
日本では、クラス崩壊で授業が成立しない、弱者に対する暴力やいじめの存在、見知ら
ぬ人の命を奪う通り魔殺人の発生などということがマスメディアを通してしばしば報道さ
れ、今まさに生命の尊厳、人権の尊重が社会や学校教育の課題となっている。これを解決
するためのヒントがインドネシアの社会や学校教育にあるように考える。
「開発途上国の障害児教育を支援するために」という命題をもってインドネシアで調査
をしてきたが、帰国後に支援を受けなければならないのはむしろ日本ではないのかという
想いが日に日に強くなってきている。先にとりあげたような報道が毎日のように繰り返さ
れているからである。
真の障害児のための教育は、人命・人権を尊重するという価値観が支持される社会に成
り立つものだと考えるからである。
国際教育協力を行う場合、日本のためにも「共に学び合うという意識」を持って、イン
ドネシアの教師と共に活動していくことが重要である。
謝 辞
インドネシア文の翻訳にあたっては、インドネシア教育大学の 講師とDjadja Rahardja非常勤講師の両氏に多大なるご協力をいただきました。深謝申し上げます。Lalan Erlani
文 献
１）中田英雄（研究代表者 ：平成 年度科学研究費補助金（基盤研究Ｂ－１：研究課題） 15番号 ）研究成果報告書（中間報告 、筑波大学教育開発国際協力研究セン15401041 ）
ター、 年３月。2004２）石崎喜治：インドネシアにおける視覚障害教育、平成 年度科学研究費補助金（基15
盤研究Ｂ－１：研究課題番号 、研究代表者中田英雄）研究成果報告書（中15401041間報告 、筑波大学教育開発国際協力研究センター、 年３月。） 2004
３）大竹一成：インドネシアにおける聴覚障害教育、平成 年度科学研究費補助金（基15盤研究Ｂ－１：研究課題番号 、研究代表者中田英雄）研究成果報告書（中15401041間報告 、筑波大学教育開発国際協力研究センター、 年３月。） 2004
４）柿澤敏文：インドネシア調査出張報告、平成 年度科学研究費補助金（基盤研究Ｂ15、 ） （ ）、－１：研究課題番号 研究代表者中田英雄 研究成果報告書 中間報告15401041
筑波大学教育開発国際協力研究センター、 年３月。2004５）北村博幸：インドネシアにおける知的障害教育、平成 年度科学研究費補助金（基15
盤研究Ｂ－１：研究課題番号 、研究代表者中田英雄）研究成果報告書（中15401041
- 17 -
間報告 、筑波大学教育開発国際協力研究センター、 年３月。） 2004６）長宗我部博：インドネシアにおける知的障害児教育、平成 年度科学研究費補助金15
（基盤研究Ｂ－１：研究課題番号 、研究代表者中田英雄）研究成果報告書15401041（中間報告 、筑波大学教育開発国際協力研究センター、 年３月。） 2004
７）落合俊郎（研究代表者 ：平成 年度～平成 年度科学研究費補助金（基盤研究Ａ） 10 11－２：研究課題番号 ）研究成果報告書障害児教育分野における協力・連携10041049
2001関係（パートナーシップ）の形成に関する調査研究、国立特殊教育総合研究所、
年３月。
８）落合俊郎：途上国における障害児教育協力推進方法の開発、平成 年度拠点システ15ム構築事業報告書（開発途上国における障害児教育分野の教育協力モデル指針の研究
－開発途上国における障害児教育の状況－：研究代表者 中田英雄 、筑波大学教育）
開発国際協力研究センター、 年３月。2004
、
- 18 -
