11
93 その結果、マガキガイは少量ではあるが 3 か所で観察された。ダイビングショ ップのオーナーによれば、ごく一部の漁業者が本種を採集し、むき身の瓶詰を路 上で販売しているとのこと。ウミブドウ(センナリヅタ)についても、1 か所で 生息を確認したが、大量に群生しているとは言えなかった。 調 ウミブドウ及びオゴノリのサンプリング 前回調査を行ったモイ養殖場では、支援委員会で絞り込んだ対象種であるオゴ ノリも試験的に栽培しているとのことで、日本に持ち帰るサンプルを分けてもら うことができた。また、洋上生け簀に自然発生しているウミブドウ(スリコギヅ タ)についてもサンプルを分けてもらうこととなった。入手したウミブドウは、 帰国日まで 2 日間エアレーションした海水中に保管し、またオゴノリは湿った状 態でビニール袋に入れ袋の口は開けたまま室温で保管した。 帰国日の朝に、これらのサンプルを湿った新聞紙で包み、容量 3 リットルの小 さなクーラーボックスに入れ、これを更に大きなクーラーボックスに収容した。 同日 11:20 マジュロ発、17:57 グアム着のフライトで機内預け荷物で輸送しグ アムでのトランジットでの 1 泊の間はそのまま常温で保管した。 翌日 12:05 グアム発 14:55 成田着のフライトで再び機内預け荷物で輸送し、東 京に到着した 18 時ごろに海藻の状態を確認したところ、ウミブドウは白化して おり枯死したと考えられた【写真①】。

し、アンケート調査を行った。...モのアクアポニックス、ココナッツの副産物を用いた飼料開発の研究を始めた とのこと。施設は主にアメリカ農業省(USDA)による援助とのことであった。

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Page 1: し、アンケート調査を行った。...モのアクアポニックス、ココナッツの副産物を用いた飼料開発の研究を始めた とのこと。施設は主にアメリカ農業省(USDA)による援助とのことであった。

92

し、アンケート調査を行った。

これらの食品の他にソースを数種類準備したが、慣れ親しんでいると思われ

るケチャップが最も消費量が多かった。全体的に甘め、濃い味が好まれると思わ

れた。

アンケート回答者は 55 名で、それぞれのレシピの味の評価で「美味しい」と

答えた人の割合が、ハンバーグで 80%、みりん干しで 83%、マグロの漬け炙り

82%、マグロの唐揚げ 52%、ソーセージ 47%であった。また、「購入したいです

か」という質問に対し「はい」と回答した人の割合は、ハンバーグ 96%、みりん

干し 86%、マグロの漬け炙り 92%、ソーセージ 61%、マグロの唐揚げ 64%であ

った。さらに、自由記入欄には以下のようなコンメトがあった。

〇人気度の異なる魚種に付加価値をつけ紹介するという素晴らしいイベントだ

った。

〇このようなイベントを定期的に継続して開催する必要がある。

〇みりん干しを魚市場で販売するべき。

〇魚が好きではないけれど、今回の試食は料理法が良くて本当に美味しかった。

〇みりん干しが硬かったので、火を弱めて加熱した方が良い。少し甘すぎた(調

理時に OIFMC のスタッフから甘い方が好まれるとの意見があったため甘めに

調理した。)。

〇ソーセージとハンバーグにはもっとスパイスを利かせた方が良い。

〇ソーセージは茹でるだけでなく、焼いた方が良い。

試食会

試食会の新聞掲載記事

エ 漁場調査

ダイビングショップに船を出してもらい、マジュロ環礁内の 5 か所でマガキ

ガイとウミブドウなどの漁場調査を行った。

93

その結果、マガキガイは少量ではあるが 3 か所で観察された。ダイビングショ

ップのオーナーによれば、ごく一部の漁業者が本種を採集し、むき身の瓶詰を路

上で販売しているとのこと。ウミブドウ(センナリヅタ)についても、1 か所で

生息を確認したが、大量に群生しているとは言えなかった。

図20 マジュロ環礁調査地点

オ ウミブドウ及びオゴノリのサンプリング

前回調査を行ったモイ養殖場では、支援委員会で絞り込んだ対象種であるオゴ

ノリも試験的に栽培しているとのことで、日本に持ち帰るサンプルを分けてもら

うことができた。また、洋上生け簀に自然発生しているウミブドウ(スリコギヅ

タ)についてもサンプルを分けてもらうこととなった。入手したウミブドウは、

帰国日まで 2 日間エアレーションした海水中に保管し、またオゴノリは湿った状

態でビニール袋に入れ袋の口は開けたまま室温で保管した。

帰国日の朝に、これらのサンプルを湿った新聞紙で包み、容量 3 リットルの小

さなクーラーボックスに入れ、これを更に大きなクーラーボックスに収容した。

同日 11:20 マジュロ発、17:57 グアム着のフライトで機内預け荷物で輸送しグ

アムでのトランジットでの 1 泊の間はそのまま常温で保管した。

翌日 12:05 グアム発 14:55 成田着のフライトで再び機内預け荷物で輸送し、東

京に到着した 18 時ごろに海藻の状態を確認したところ、ウミブドウは白化して

おり枯死したと考えられた【写真①】。

Page 2: し、アンケート調査を行った。...モのアクアポニックス、ココナッツの副産物を用いた飼料開発の研究を始めた とのこと。施設は主にアメリカ農業省(USDA)による援助とのことであった。

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またオゴノリはウミブドウよりも耐性があり、元の状態を保っていた(【写真

②】注:フラッシュの影響で白く写っている。)。

【写真①】

【写真②】

カ 関連情報収集

(ア)OIFMC

現在マーシャル国内ではデング熱が流行しておりマジュロとイバイ以外は

渡航禁止となっている。このため、離島から鮮魚を収集して販売している

OIFMC は、1 カ月以上離島からの鮮魚の供給ができず販売を停止していた(マ

ジュロ近海での漁業活動は支障なく行われているとのこと。)。

(イ)マーシャル短期大学養殖研究部門

MIMRA 職員とともにマジュロのローラ地区にあるマーシャル短期大学:

College of Marshall Islands(以下、「CMI」という。)の養殖研究部門を訪問した。

同部門の教授はアルゼンチン人でマーシャルに赴任して約 1 年とのことであ

る。既存の養殖普及の研究にはシャコガイ類と黒真珠の例があり、最近はアイ

ゴ類やハタ類、マスオガイ類、イセエビ類の種苗生産や、ティラピアとタロイ

モのアクアポニックス、ココナッツの副産物を用いた飼料開発の研究を始めた

とのこと。施設は主にアメリカ農業省(USDA)による援助とのことであった。

(ウ)台湾農場

台湾農場はマジュロ市内から車で約 1 時間のローラ地区に所在する。

約 1ha の敷地に、200 頭の豚を飼育する養豚舎 2 棟、豚の排泄物から収集し

たメタンガスを貯めるタンク、浄化池、堆肥を作る小屋などの施設がある。こ

の農場は 1999 年からマーシャルに対して農業指導を行っており、場内の施設

で研修生も受け入れ可能となっている。マーシャル人の男性を 18 名雇用し、3

名の台湾人で指導を行っている。

Page 3: し、アンケート調査を行った。...モのアクアポニックス、ココナッツの副産物を用いた飼料開発の研究を始めた とのこと。施設は主にアメリカ農業省(USDA)による援助とのことであった。

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またオゴノリはウミブドウよりも耐性があり、元の状態を保っていた(【写真

②】注:フラッシュの影響で白く写っている。)。

【写真①】

【写真②】

カ 関連情報収集

(ア)OIFMC

現在マーシャル国内ではデング熱が流行しておりマジュロとイバイ以外は

渡航禁止となっている。このため、離島から鮮魚を収集して販売している

OIFMC は、1 カ月以上離島からの鮮魚の供給ができず販売を停止していた(マ

ジュロ近海での漁業活動は支障なく行われているとのこと。)。

(イ)マーシャル短期大学養殖研究部門

MIMRA 職員とともにマジュロのローラ地区にあるマーシャル短期大学:

College of Marshall Islands(以下、「CMI」という。)の養殖研究部門を訪問した。

同部門の教授はアルゼンチン人でマーシャルに赴任して約 1 年とのことであ

る。既存の養殖普及の研究にはシャコガイ類と黒真珠の例があり、最近はアイ

ゴ類やハタ類、マスオガイ類、イセエビ類の種苗生産や、ティラピアとタロイ

モのアクアポニックス、ココナッツの副産物を用いた飼料開発の研究を始めた

とのこと。施設は主にアメリカ農業省(USDA)による援助とのことであった。

(ウ)台湾農場

台湾農場はマジュロ市内から車で約 1 時間のローラ地区に所在する。

約 1ha の敷地に、200 頭の豚を飼育する養豚舎 2 棟、豚の排泄物から収集し

たメタンガスを貯めるタンク、浄化池、堆肥を作る小屋などの施設がある。こ

の農場は 1999 年からマーシャルに対して農業指導を行っており、場内の施設

で研修生も受け入れ可能となっている。マーシャル人の男性を 18 名雇用し、3

名の台湾人で指導を行っている。

95

土壌のないマーシャルで、豚の糞尿とココナッツの葉を用いて堆肥を作り、

土作りを行っている。しかしながら、場内に特有の臭気もなく、衛生管理が適

正に行われていることがうかがわれた。

堆肥に魚の頭部や骨などを利用できるか質問したところ、魚はそのままでは

分解に時間がかかり強い臭気を放つが、乾燥させて魚粉にすれば堆肥に混入し

て使うこともできるとの回答があった。ただし、現時点では受け入れていない

とのことであった。

現在、野菜・果物類の苗を 8 種と豚をセットにしてマジュロ、イバイ以外の

22 の離島に配布する準備をしているが、デング熱や船のスケジュールの遅延な

どにより待機している状態とのことであった。また、CMI で 2 週間に 1 度、同

農場で栽培した野菜の販売も行っている。この地域は、水道が敷設されていな

いため、雨水を貯水タンクに集めて利用しているが、毎週、月曜と金曜に給水

車による水の配給が行われており、これまで渇水したことはないとのことであ

った。

(エ)マーシャル病院調査

病院のキッチンスタッフ 2名から聞き取り調査を行った結果は以下のとおり

である。

〇2~3 名のキッチンスタッフで患者らの食事を 1 日 100 食前後作っており、

MIMRA からはフィレやフィッシュボールを週 1 回仕入れている。

〇魚は人気がありキノコとチーズを使ったフィッシュピザの人気が高い。

〇患者は一般的に甘い味を好むので、米をココナッツで炊いた甘いブラウンラ

イスが好まれる。

5.対象水産物の海外市場化可能性調査

(1)高知調査

本報告書第2章 PNG 5.対象水産物の海外市場化可能性調査概要(1)高知調

査1回目及び(2)高知調査2回目を参照。

(2)沖縄調査

本報告書第2章 PNG 5.対象水産物の海外市場化可能性調査概要(4)沖縄調

査を参照。

6.提案≪対象水産物の国内・海外における市場化の可能性について≫

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調査は 1 年のみであり、本提案は暫定的なものである。

(1)ブダイ等の不人気魚

対象水産物は、MIMRA が運営する魚市場(OIFMC と KAFMC)が定めるカテ

ゴリーの中で低いランクに分類される魚種であり、具体的にはブダイ類

(Scaridae)、テングハギモドキ(Naso hexacanthu)、アオチビキ(Aprion virescens)

等である。ここでは、これまでも加工の試みが行われているブダイ類を中心に記

述する。

ア 対象水産物の生物学的特徴

ブダイ科(Scaridae)

出典:FAO

ブダイ類 Scaridae は世界中の亜熱帯・熱帯域に広く分布し、10 属約 80 種が確

認されている。小型の種は体長約 30 ㎝で、大型種は約 120 ㎝に達する。多くの

種は雌性先熟の性転換を行い、雌雄によって形態や色彩が異なることが知られて

いる。また、オウムの嘴に似た形の口を持ち、硬いサンゴをかじり取る。最近の

研究では、ブダイが海底をかじることで白い砂地の形成やサンゴの再生産が促さ

れていることがわかっている。夜間は体の周りに薄い粘膜を張り外敵から身を守

る。日本ではブダイ類の身には餌海藻由来の臭みがあるとされるが、比較的臭み

の少なくなる冬期が主な漁期となっている。

イ 対象水産物の現在の利用状況

聞き取り調査の結果、ブダイ類を含むカテゴリーC、D の魚種が、OIFMC の運

搬船の水産物買付量全体の約 7 割を占めており、マーシャル全域に広く分布して

いると推定される。

マーシャルでは、鮮魚(ラウンド、セミドレス、ドレス、フィレ)、冷凍ラウ

ンド真空、冷凍フィレの真空パックで流通しており、OIFMC では、味付けミンス

フィッシュとジャーキーに加工しての販売も行っている。

6.提案≪対象水産物の国内・海外における市場化の可能性について≫

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これらの市場での販売価格は、KAFMC が 700 円/kg~、OIFMC が 300 円/kg~、

及びガソリンスタンドが 360 円/kg~で、仕向先は、市場、小売店、外食チェーン、

ホテル等となっている。調理法は、焼く、揚げる、蒸す、生食(塩レモン)、燻

製等であった。

また、OIFMC は冷凍フィレの真空パックと味付けミンスフィッシュを病院へ

販売する取り組みや、小売店でのクッキングデモを実施しており、KAFMC は中

骨と頭を素揚げした 1 ドル弁当を販売する等の工夫をしている。

なお、ブダイ等の不人気魚だけに限ったことでないが、例えば OIFMC では、

漁業者による氷の使用が不十分であること等に起因する不適切な鮮度保持によ

って 2.5 割~4 割近い商品ロスがあるとされる。

ウ 対象水産物の流通促進に向けての提案

(ア)資源管理・漁場保全の観点

現時点では、少なくとも離島の資源状態は良好だとされているが、リーフフ

ィッシュの枯渇は他の太平洋島嶼国の普遍的な課題であることから、マーシャ

ル諸島においても、持続的利用の観点から資源状態に関する調査が必要である。

具体的には、漁業者から情報収集するとともに、水揚げ量及び魚体の大きさ等

を注意深くモニターし、おおよその資源状況を推定することから開始すること

が現実的である。

(イ)漁業の観点

現状は、銛、刺し網及び釣り等の零細な漁法で漁獲されているが、前述のよ

うに、リーフフィッシュは資源が枯渇しやすいため、漁獲努力量の増大や効率

的漁法の導入は好ましくない。努力量が増大していないか、魚体が小型化して

いないか等を注意深くモニターし、資源減少の兆候が現れたら、すみやかに漁

獲の制限を行うことが望ましい。

(ウ)水揚げの観点(水揚げ場所、水揚げ後の一次処理の改善点など)

前述した商品ロスの削減が大きな課題である。鮮度による買取価格の差別化

等鮮度保持対策の実施に向けての漁業者のインセンティブを高める工夫も検

討の余地がある。

また、ブダイ類の臭みの原因となる内臓は、新鮮なうちに傷つけないよう取

り除くことが望ましい。

(エ)商品化の観点

Page 6: し、アンケート調査を行った。...モのアクアポニックス、ココナッツの副産物を用いた飼料開発の研究を始めた とのこと。施設は主にアメリカ農業省(USDA)による援助とのことであった。

98

MIMRA としては、国内の流通促進と輸出促進の両方の希望があるが、国内

における魚の価格の高さ、安定供給の必要性及び一次処理における衛生管理の

現状等を勘案すれば、まずは、国内向けの商品化を図ることが現実的と考える。

ブダイ等がマーシャル諸島で不人気である理由は明確でないが、日本におい

ては、その魚体が有する特有の臭みが原因の一つとなっていると考えられる。

これらの臭みは藻食性魚類に見られ、アルデヒドやケトンの類であることが多

く、また、これらの化合物は水晒処理により容易に除去が可能であるため、水

晒処理を必要とする水産練り製品に向くと思われる。これに関しては、沖縄の

石垣島で、ブダイを利用したかまぼこを製造しているという情報があるため、

製造法に関する情報収集をすることも有効と考えられる。

また、沖縄本島で聞き取った処理法(焼き物等にする場合は、前処理として、

血抜きして水にさらし、その後、塩を振って冷蔵庫に一晩置く手法、日差しの

強い地域での干物の作り方として、伏せたざるや籠の外から内部の魚肉を突き

通して屋外で 3 時間干す手法(図 20 参照)等)も、マーシャル諸島での不人

気魚の処理に応用できるかもしれない。

図21 伏せたざるや籠の中で干物を干す

なお、マーシャルで実施した加工実習及び試食会では、ブダイ等の白身魚で

作ったみりん干しや、カマスサワラとカジキで作ったハンバーグやソーセージ

が好評であった。前者は、きれいな琥珀色に仕上がったことから、味付けを工

夫すれば需要拡大が期待され、後者も同じ加工方法がブダイ類に応用できるう

え、これらに使用した調味料はいずれも現地で入手できるものである。以上か

ら、味りん干し、ハンバーグ、ソーセージなどの加工法は有望だと考えられる。

(エ)商品化の観点

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みりん干し

ハンバーグ

ソーセージ

また、マーシャルでは、財団の専門家が過去に技術指導したフィッシュジャ

ーキーの製造が小規模ながら継続して行われている。原料とする魚については、

民間では一般にカジキ等の回遊魚が用いられているが、OIFMC では不人気魚

のジャーキーも製造していることから、民間に不人気魚のジャーキーづくりを

提案することも検討する価値がある。

さらに、ジャーキーは土産物として海外でも人気が高いため、一定量の生産

を確保できるようになれば、MIMRA が希望する輸出用の産物になる可能性も

ある。

参考まで、日本におけるブダイ類の食べ方に関する情報を表 3 に示す。

【表3】日本におけるブダイ類の食べ方~県による違い 29)

高知県 刺身、煮つけ

静岡県

伊豆地方

煮つけ、洗い、ちり鍋。近年一般的に食されるようになってきてい

る模様。

東京都

伊豆大島

煮つけ、刺身、干物。干物は火であぶるか水で戻して煮物として食

べる、冬の風物詩。

沖縄県 刺身、みそ和え、天ぷら、煮つけ、干物、マース煮

沖縄県

石垣島

高級かまぼこの原料

(オ)国内市場化の観点

前述のように、試食会において、みりん干し、ハンバーグやソーセージが好

評であったことから、今後試食会等で人気だったこれらの加工品の PR イベン

トによる需要喚起及び加工実習等による技術移転を行えば、国内での消費拡大

が期待できる。具体的には MIMRA の希望が強い KAFMC(イバイ)での加工

講習の実施が望ましいが、1 度の講習では技術の習得が困難であるため、マジ

98

MIMRA としては、国内の流通促進と輸出促進の両方の希望があるが、国内

における魚の価格の高さ、安定供給の必要性及び一次処理における衛生管理の

現状等を勘案すれば、まずは、国内向けの商品化を図ることが現実的と考える。

ブダイ等がマーシャル諸島で不人気である理由は明確でないが、日本におい

ては、その魚体が有する特有の臭みが原因の一つとなっていると考えられる。

これらの臭みは藻食性魚類に見られ、アルデヒドやケトンの類であることが多

く、また、これらの化合物は水晒処理により容易に除去が可能であるため、水

晒処理を必要とする水産練り製品に向くと思われる。これに関しては、沖縄の

石垣島で、ブダイを利用したかまぼこを製造しているという情報があるため、

製造法に関する情報収集をすることも有効と考えられる。

また、沖縄本島で聞き取った処理法(焼き物等にする場合は、前処理として、

血抜きして水にさらし、その後、塩を振って冷蔵庫に一晩置く手法、日差しの

強い地域での干物の作り方として、伏せたざるや籠の外から内部の魚肉を突き

通して屋外で 3 時間干す手法(図 20 参照)等)も、マーシャル諸島での不人

気魚の処理に応用できるかもしれない。

図21 伏せたざるや籠の中で干物を干す

なお、マーシャルで実施した加工実習及び試食会では、ブダイ等の白身魚で

作ったみりん干しや、カマスサワラとカジキで作ったハンバーグやソーセージ

が好評であった。前者は、きれいな琥珀色に仕上がったことから、味付けを工

夫すれば需要拡大が期待され、後者も同じ加工方法がブダイ類に応用できるう

え、これらに使用した調味料はいずれも現地で入手できるものである。以上か

ら、味りん干し、ハンバーグ、ソーセージなどの加工法は有望だと考えられる。

(エ)商品化の観点

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100

ュロの受講者の再受講も兼ねて、イバイからマジュロへ受講生を呼び、一緒に

講習を行うことも考えられる。

ただ、加工に手間がかかる場合や高価格になる場合は、たとえ味が良くても

現地に根付かない可能性があるため、調理法の簡易化・低価格化あるいは簡便

な加工食品の開発にも引き続き取り組むべきである。

また、加工技術の普及に向けて解りやすいビデオ教材を制作して、講習会で

用いることや、ビデオを MIMRA の HP 等で公開することも考えられる。

ちなみに、ハンバーグ、ソーセージ、みりん干し以外の候補としては、タレ

漬けフィレ等が考えられ、これらを OIFMC 等の加工場で製造して、市場、小

売店及び外食等の業務向け等に販売する形が考えらえる。

また、前述のように不人気魚のフィッシュジャーキーの製造を民間にも提案

し、普及を図ることも考えられる。

(カ)海外市場化の観点(シーフードショーなどを利用した広報等)

価格や安定供給面での課題のクリアが条件になるが、マーシャル諸島の方々

が多く居住する米国のアーカンソー州向けなどに、冷凍フィレを輸出する方策

等が考えられる。

また、ハンバーグ、ソーセージ、みりん干し、タレ付きフィレ及びフィッシ

ュジャーキーなど、国内市場化で取り上げた加工品についても、シーフードシ

ョーに出展して、海外の方々の反応を把握することも有効だと考えられる。

(2)マガキガイ

ア 対象水産物の生物学的特徴

PNG のマガキガイに関する記述参照。

イ 対象水産物の現在の利用状況

マジュロで、ごく一部の漁業者が本種を採集し、むき身の瓶詰を路上で販売し

ていることを確認したが、全体像は不明である。おそらく、未利用資源に近いと

考えられる。

ウ 対象水産物の流通促進に向けての提案

(ア)資源管理・漁場保全の観点

日本の状況に関しては、PNG のマガキガイに関する記述参照。

マーシャルで調査した範囲ではあまり流通していないことから、漁獲量は少

なく、未利用資源に近いと考えらえる。ただ、マジュロ環礁の 5 カ所の調査に

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ュロの受講者の再受講も兼ねて、イバイからマジュロへ受講生を呼び、一緒に

講習を行うことも考えられる。

ただ、加工に手間がかかる場合や高価格になる場合は、たとえ味が良くても

現地に根付かない可能性があるため、調理法の簡易化・低価格化あるいは簡便

な加工食品の開発にも引き続き取り組むべきである。

また、加工技術の普及に向けて解りやすいビデオ教材を制作して、講習会で

用いることや、ビデオを MIMRA の HP 等で公開することも考えられる。

ちなみに、ハンバーグ、ソーセージ、みりん干し以外の候補としては、タレ

漬けフィレ等が考えられ、これらを OIFMC 等の加工場で製造して、市場、小

売店及び外食等の業務向け等に販売する形が考えらえる。

また、前述のように不人気魚のフィッシュジャーキーの製造を民間にも提案

し、普及を図ることも考えられる。

(カ)海外市場化の観点(シーフードショーなどを利用した広報等)

価格や安定供給面での課題のクリアが条件になるが、マーシャル諸島の方々

が多く居住する米国のアーカンソー州向けなどに、冷凍フィレを輸出する方策

等が考えられる。

また、ハンバーグ、ソーセージ、みりん干し、タレ付きフィレ及びフィッシ

ュジャーキーなど、国内市場化で取り上げた加工品についても、シーフードシ

ョーに出展して、海外の方々の反応を把握することも有効だと考えられる。

(2)マガキガイ

ア 対象水産物の生物学的特徴

PNG のマガキガイに関する記述参照。

イ 対象水産物の現在の利用状況

マジュロで、ごく一部の漁業者が本種を採集し、むき身の瓶詰を路上で販売し

ていることを確認したが、全体像は不明である。おそらく、未利用資源に近いと

考えられる。

ウ 対象水産物の流通促進に向けての提案

(ア)資源管理・漁場保全の観点

日本の状況に関しては、PNG のマガキガイに関する記述参照。

マーシャルで調査した範囲ではあまり流通していないことから、漁獲量は少

なく、未利用資源に近いと考えらえる。ただ、マジュロ環礁の 5 カ所の調査に

101

おいて本種の分布を確認したが、群生地は確認できていないため、資源が豊富

にあるかどうかは不明である。

マーシャルにおいては本種の分布状況や漁獲の実態が全く解明されていな

いことから、本種を本格的に利用するに当たっては、まずは MIMRA が中心と

なって資源の実態調査を実施し、持続的利用と資源管理に必要な基礎情報を集

積していく必要がある。その際、マガキガイを対象とする漁業がコミュニティ

による漁業である場合には、MIMRA がコミュニティと連携をとりながら、漁

業者の協力を得つつ慎重に調査に臨む必要があろう。

(イ)漁業の観点

PNG のマガキガイに関する記述に準拠し国名(PNG)をマーシャルと読み替

える。

(ウ)水揚げの観点

PNG のマガキガイに関する記述に準拠。

(エ)商品化の観点

PNG のマガキガイに関する記述に準拠するが、中国の加工業者による違法輸

出問題に関する部分など、PNG に特有の部分を除く。

(オ)国内市場化の観点

PNG のマガキガイに関する記述に準拠するが、以下を付記。

今年度は、むき身の掻き揚げを試食会に提示した。今後も、現地に好まれる

レシピの提案と普及手法の開発が必要である。

(カ)海外市場化の観点

PNG のマガキガイに関する記述に準拠するが以下を付記。

輸出商材に必要となる数量の確保と安定供給を担保できるかの情報収集が

必要である。

(3)ウミブドウ及びオゴノリ

ア 対象水産物の生物学的特徴

ウミブドウ(スリコギヅタ Caulerpa peltata ecad laetevirens / C. chemnitzia ecad

laetevirenns とする研究者もいる)の生物学的特性は PNG の記述を参照。

オゴノリ類 Gracilaria(種は未査定。)

紅藻類の一種で、熱帯から温帯の浅海域に広く分布し、外海に面した岩礁域か

ら内湾の砂泥域など様々な環境に生育する 30)。特に内湾の栄養塩が豊富な陸水

の影響による塩分変動が激しい干潟域に多い 31)。食品として利用されてきた歴

Page 10: し、アンケート調査を行った。...モのアクアポニックス、ココナッツの副産物を用いた飼料開発の研究を始めた とのこと。施設は主にアメリカ農業省(USDA)による援助とのことであった。

102

史は長く、茹でると鮮やかな緑色に変わり見た目が良いことから、日本では刺身

のツマなどに用いられる他、粉末寒天の原藻として重要である。寒天は工業用に

も利用されている。

マーシャルのオゴノリ類

イ 対象水産物の現在の利用状況

マジュロ環礁で分布調査を実施して、ウミブドウ(ウミヅタ科)の分布は確認

したが、ウミブドウ、オゴノリとも群生地は確認できなかった。

マーシャル内での流通が確認できなかったことから、両種とも基本的に未利用

資源だと考えられる。

マーシャルでは、もともとウミブドウを食する習慣が無いが、フィジーとソロ

モンからの移住者は食用にする模様である。

オゴノリについては、ATMI(モイ養殖場)で試験栽培しており、地域の女性グ

ループに栽培を提案しようと企画中である。生鮮の状態でハワイへの輸出を検討

している。

ウ 対象水産物の流通促進に向けての提案

(ア)資源管理・漁場保全の観点

ウミブドウについては PNG のウミブドウの記述に準拠。

オゴノリについても天然資源の採捕を行う場合は、ウミブドウに準拠。養殖

を志向する場合は、資源管理上の問題は少ないため、まずは、安定的に生産す

るための技術を開発することが課題であり、漁場環境や食害の問題はその後の

課題と考える。

(イ)漁業の観点

ウミブドウについては PNG のウミブドウの記述に準拠するが、漁業自体が

無い可能性があることが相違点。

Page 11: し、アンケート調査を行った。...モのアクアポニックス、ココナッツの副産物を用いた飼料開発の研究を始めた とのこと。施設は主にアメリカ農業省(USDA)による援助とのことであった。

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史は長く、茹でると鮮やかな緑色に変わり見た目が良いことから、日本では刺身

のツマなどに用いられる他、粉末寒天の原藻として重要である。寒天は工業用に

も利用されている。

マーシャルのオゴノリ類

イ 対象水産物の現在の利用状況

マジュロ環礁で分布調査を実施して、ウミブドウ(ウミヅタ科)の分布は確認

したが、ウミブドウ、オゴノリとも群生地は確認できなかった。

マーシャル内での流通が確認できなかったことから、両種とも基本的に未利用

資源だと考えられる。

マーシャルでは、もともとウミブドウを食する習慣が無いが、フィジーとソロ

モンからの移住者は食用にする模様である。

オゴノリについては、ATMI(モイ養殖場)で試験栽培しており、地域の女性グ

ループに栽培を提案しようと企画中である。生鮮の状態でハワイへの輸出を検討

している。

ウ 対象水産物の流通促進に向けての提案

(ア)資源管理・漁場保全の観点

ウミブドウについては PNG のウミブドウの記述に準拠。

オゴノリについても天然資源の採捕を行う場合は、ウミブドウに準拠。養殖

を志向する場合は、資源管理上の問題は少ないため、まずは、安定的に生産す

るための技術を開発することが課題であり、漁場環境や食害の問題はその後の

課題と考える。

(イ)漁業の観点

ウミブドウについては PNG のウミブドウの記述に準拠するが、漁業自体が

無い可能性があることが相違点。

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オゴノリについても、天然資源の採捕の場合は、ウミブドウに準拠。養殖の

場合は、安定的に生産する技術開発が課題である。

(ウ)水揚げの観点(水揚げ場所、水揚げ後の一次処理の改善点など)

ウミブドウ、オゴノリとも PNG のウミブドウに準拠。

(エ)商品化の観点(具体的な商品と商品化に必要な施設)

ウミブドウは日本産のものとは、形状が異なるため、日本人に受け入れられ

るかどうかの確認が必要である。用途としては、海鮮丼、サラダ、あるいは刺

身のつまが考えられる。なお、2019 年度の輸送試験では、短時間で萎れたこと

から、取り扱いに注意が必要である。オゴノリは、サラダ用等に輸出すること

を想定している。

(オ)国内市場化の観点

ウミブドウは、生鮮の形で、海鮮丼、サラダあるいは刺身のつまとして、外

食チェーンなどに流通させることをめざすのが適当だと考える。

オゴノリは、当面は国内での市場化を想定しない。

(カ)海外市場化の観点(シーフードショーなどを利用した広報等)

ウミブドウについては、PNG のウミブドウの記述に準拠するが以下を追記す

る。

出荷形態は、生鮮あるいは塩蔵で、空輸で東京市場に搬入することを想定す

るが、到着するまでに形状を維持する保存法を確立することが課題である。

オゴノリは生鮮で、ハワイあるいは日本向けの輸出が想定される。

ただ、前出したように、いずれもある程度の量を安定供給できること、及び

夾雑物の除去等が担保できることを前提としている。