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ベリー類の育種における野生種の利用 誌名 誌名 農業および園芸 = Agriculture and horticulture ISSN ISSN 03695247 巻/号 巻/号 943 掲載ページ 掲載ページ p. 202-214 発行年月 発行年月 2019年3月 農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センター Tsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat

ベリー類の育種における野生種の利用ベリー類の育種における野生種の利用 誌名 農業および園芸 = Agriculture and horticulture ISSN 03695247 巻/号

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Page 1: ベリー類の育種における野生種の利用ベリー類の育種における野生種の利用 誌名 農業および園芸 = Agriculture and horticulture ISSN 03695247 巻/号

ベリー類の育種における野生種の利用

誌名誌名 農業および園芸 = Agriculture and horticulture

ISSNISSN 03695247

巻/号巻/号 943

掲載ページ掲載ページ p. 202-214

発行年月発行年月 2019年3月

農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センターTsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research CouncilSecretariat

Page 2: ベリー類の育種における野生種の利用ベリー類の育種における野生種の利用 誌名 農業および園芸 = Agriculture and horticulture ISSN 03695247 巻/号

202

ベリー類の育種における野生種の利用

小松春喜*

〔キーワード〕:ブルーベリー,キイチゴ,育種素

材,種間雑種,節間雑種

子供の頃,刺の痛さに触れながら近辺の野山に自

生する赤や黄色のキイチゴを口にしたり,リンゴ畑

の境に植えられたクワの実を袋一杯にして服を汚

したりした思い出は多くの人に共通するものであ

ろう.欧米では,キイチゴやクワの実だけでなく,

プルーベリー,クランベリーなどのベリー類が食文

化に定着しており,ベリー類を採集してジャムやフ

ルーツソースなどに加工して利用することが古く

から行われ,山野に自生するベリー摘みは楽しみの

一つになっている.したがって,米国では野生種の

栽培化に始まり,研究や品種改良が積極的に行われ

てきた特に,ブルーベリーはプラックベリーと共

に 19世紀に入ってから栽培化と改良が行われた非

常に新しい果樹である.

一方,我が国にもキイチゴや栽培種のブルーベ

リーと同じスノキ属野生種が自生し,一部のものは

地元の人々により採集,利用されてきた.しかしな

がら,これまで我が国ではそれら野生種の栽培化は

もちろん,改良の母本としての利用にも至らなかっ

た.筆者らは,本邦自生のスノキ属野生種やキイチ

ゴ野生種を収集栽培し,育種素材として評価すると

共に,それらと栽培種との節間あるいは種間交雑系

統を育成し,評価してきた,ここではそれらの結果

を中心に報告する.

我が国の野生種を利用したブルーベリーの改良

ブルーベリーは,ッツジ科 (Ericaceae) スノキ属

(Vaccinium)に分類される北米原産の落葉性あるい

は常緑性の低木または半低木性の果樹である. ス

ノキ属は 10節に分類されるが(表 1), 果樹園芸上

および食品産業上重要なものは Cyanococcus節に属

する栽培プルーベリー (cultivatedblueberry)のハイ

フッミ/ュフルーベリー (Vacciniumcorymbosum L.)

(以下 HBと略記),ラビットアイブルーベリー (V.

virgatum Aiton) (以下 RBと略記)および野生種の

ローフッンュフルーベリー (V.angustifolium Aiton

とV.myrtilloides Aiton) (以下 LBと略記)の 3つで

あり (VanderKloet, 1988 ; Eck・Childers, 1966),

それらの果実は,生果はもちろんジャムやソースな

どの加工特性が広く,機能性食品としても注目され

ている果樹である.

表 l スノキ属植物の植物学的分類 (VanderKloet, 1988)

科 亜科(family) (subfamily)

属(genus) (節sect10n)

種(一般名)(species)

ッツジ スノキ スノキ I ハイブッシュブルーベリー

Cyanococcus -fラビットアイプルーベリー

*東海大学名誉教授 (HarukiKomatsu)

ロープッシュプルーベリー

Herpothamnus

Myrtillus ビルベリー

Oxycoccoides

Oxycoccus クランベリー

Polycodium

Pyxothamnus

Vaccinium

Vi tis-id a ea リンゴンベリー

0369-524 7 /19/¥500/1論文/JCOPY

Page 3: ベリー類の育種における野生種の利用ベリー類の育種における野生種の利用 誌名 農業および園芸 = Agriculture and horticulture ISSN 03695247 巻/号

小松:ベリー類の育種における野生種の利用 203

一般に,野菜や果物はビタミン C, ビタミン E,

カロチノイド (Caoら, 1996;Wangら, 1996) な

どに加え,フラボン,イソフラボン,フラバノン,

アントシアニン,カテキン (Caoら, 1997) などの

強い抗酸化力を持つ様々な抗酸化成分を含有して

おり,それら抗酸化成分の摂取が,癌,心臓疾患,

血管系疾患などの多くの疾病の原因または進行に

関与するとされるフリーラジカルを中和すること

により,これらの疾病予防に有効であると考えられ

ている (Halliwell, 1994 ; Yu, 1994). 中でもブルー

ベリーの果実については,抗酸化力が高いことが注

目され,これまでに HB,RBおよびサザンハイブッ

シュプルーベリー(以下 SHBと略記)などの栽培

種や LBを含む野生種などについて,アントシアニ

ン含量,フェノール含量および抗酸化力 (Oxygen

Radical Absorbance Capacity : ORAC) などが調べら

れており (Caoら, 1993; 1995 ; 1996; Wangら,

1996 ; Ballingtonら, 1987; Ballingerら, 1979;Gao・

Mazza, 1994) , 主に果皮に含まれる色素のアントシ

アニンが眼精疲労の回復に効果があることや抗酸

化作用が強く生活習慣病の予防に有効であること

などが指摘されている(梶本ら, 1998). このよう

な背景に加え,近年の健康志向の高まりによりブ

ルーベリーの機能性食品としての評価が高まり,ア

ントシアニン含量や抗酸化活性がより高いものが

消費者に求められている.

ブルーベリーの育種は 1908年から米国農務省が

中心となって開始された (Coville, 1910 ; 1921) .

HBの品種改良は,耐寒性,耐暑性など栽培適応性

が広く,大粒で品質に優れるものを野生種より選抜

し,その系統間交雑から 1920年に‘パイオニア',

‘カボット,,'キャサリン'が育成された (Galletta・

Ballington, 1996) . また, RBの品種改良は, 1925

年にジョージア州の試験場で始まり, 1940年には米

国農務省との協同育種事業が始まった.その結果,

1950年に‘キャラウェイ,''コースタル','ホーム

ベル', 1955年には‘ティフブルー', 1958年には

‘ガーデンブルー,''メンディト'が育成された(岩

垣• 石川, 1984). 現在,米国やニュージーランド

を中心として200を超える品種が登録されているが,

これらの品種はいずれも Cyanococcus節の種間およ

び種内交雑から育成されたものである.また,ブ

ルーベリーは倍数性作物であり,栽培ブルーベリー

である HBおよび RBはそれぞれ四倍体と六倍体で

ある. Cyanococcus節の野生種は栽培種と同様に四

倍体および六倍体のものも存在するが,多くが二倍

体で (Camp, 1945), 有用形質を持つものがあり

(Ballington, 1990), 欧米では以前より栽培種と野

生種との交配が行われている (Darrowら, 1949;

Lyrene, 1993). Lyrene・Ballington (1986) は,ブ

ルーベリーの遺伝資源を 3つに大別し, HB,RBお

よび LBの3種を第 1のプール,栽培化されていな

い Cyana coccus節の野生種を第 2 のプール,

Cyanococcus節以外の節の種を第 3のプールとして

分類している.フロリダ州で行われた低温要求量の

少ない暖地向けの HBの作出を目標とした育種には,

第 2のプールに属する二倍体野生種 V.darrowii

Camp. が利用され,ブルーベリー栽培種との交配よ

り得られた種間雑種は SHBとして現在広く普及し

つつある.しかしながら,これらのブルーベリー栽

培種はいずれも第 1 と 2 のプール,すなわち

Cyanococcus節内の非常に狭いバックグラウンドか

らなっている.近年,育種における変異の拡大を目

的として,第 3のプールに属する野生種の特性を明

らかにすると共に,それらを利用した節間雑種の作

出に関する研究が積極的に行われており (Darrow・

Camp, 1945 ; Ballington, 1980; Lyrene・Ballington,

1986) , Ehlenfeldt・Polashock (2014)はHemimyrtillus

節に属する四倍体野生種 V.padifoliumとHBとの節

間雑種を育成している.

このように,ブルーベリーの栽培種は我が国に比

ベ降雨量の少ない北米で改良されたものであり,生

育期に雨の多い地域ではブルーベリー本来の良品

質の果実が生産されているとは言い難い.品種につ

いても,栽培品種のほとんどが北米で改良されたも

のであり,我が国の気候,風士に適した品種の育成

や機能性改善を企図した育種はほとんど行われて

いないのが現状である.

1. 我が国のスノキ属野生種

我が国にはブルーベリーと同じ Cyanococcus節に

属する植物は自生していない(岩垣• 石川, 1984)

が, Lyrene・Ballington(1986)が分類した第 3のプー

ルに属するスノキ属植物は全国に広く分布してい

る(図 1,表 2). これらの中には果実が食用とされ

るものもあり,一部の趣味家や土地の人々によって

Page 4: ベリー類の育種における野生種の利用ベリー類の育種における野生種の利用 誌名 農業および園芸 = Agriculture and horticulture ISSN 03695247 巻/号

204 股業および園芸第 94巻第 3号 (2019年)

ゼキモバ

ハノモシ

ッスケク

ナウコア

.... {

布)

分<

に除を

的縄

国偉

・ヒメウスノキ

・アクシバモドキ9

(屋久島)

・クロマメノキ・クロウスゴ・イワッツジ・ツルコケモモ・ヒメツルコケモモ9

・マルバウスゴ

回 1 我が国に自生するスノキ屈野生種 18種の分布L'. 絶滅危惧種 IA類 (CR).

y : 絶滅危惧種II類 (VU).

生食,ジャムやジュースなどに利用されてきた.

執行 (2014)は,我が国のスノキ属野生種に着目

し,それらの育種素材としての評価を行い,次のよ

うに報告している野生種の中には栽培種と同様に

高次倍数性の四倍性や六倍性を示すものも存在 し

たが,ほとんどの種が二倍性であること ,果実は,

栽培種と 比べほとんどの種で小さかったが,クロマ

メノキのように比較的大きな果実を着生する種も

ある こと,また,常緑性,総状花序,果実成熟の晩

熟性,赤色果など有用な形質を有 している種も見ら

れる こと,果実中のアントシアニン,総ポリフェ

ノール含姑および抗酸化活性が栽培種に比べ高い

種も存在すること ,などから我が国に自生するスノ

キ属野生種の中には育種素材として有用な形質を

持つものが存在するとしている,

2. 栽培種と野生種との節間雑種の育成

前述したように産業上重要なブルーベ リー3種は

いずれも Cyanococcus節に属する.これらは染色体

数から見ると,二倍体 (2n=2 x=24), 四倍体 (2n

=4 x=48)および六倍体 (2n=6 x=72)の種から

なっている (Camp, 1945; Da1Towら,1944).一般

に,プルーベリーは同倍数体間では容易に交雑し,

得られた雑種の稔性もあるが,異倍数体間の交雑で

は全く交雑できなかったり ,雑種が得られても稔性

が低かったりする場合が多い (Darrowら,1944).

一方,野生種には少低温要求量,早熟性,耐寒性,

耐乾性,耐病性,高機能性など栽培種に無い形質を

持つものがあり (Ballinbton,1990; Lyrene・Sherman,

1980), これらの形質を栽培種に導入するためには

種間雑種の作出が不可欠である (Darrowら,1949;

Lyrene, 1993) . 実際に,アメ リカ合衆国で早熟性

や少低温要求量を目的と して育成された SHBは,

非還元の配偶子形成を利用して二倍体の V.darrowi

Campや六倍体の V.virgatum Aiton, 四倍体の V.

corymbosum Lを複雑に交雑して育成されている

(Sharpe・Sherman, 1976; Sherman・Sharpe, l 977).

(1) 六倍体野生種クロマメノキと栽培種との節間

雑種の育成

我が国に自生するスノキ属植物の中で食用とさ

れるものにはクロマメノキ,ナツハゼ,シャシャン

ボなどがある(玉田,1996). 特に,クロマメノキ

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小松:ベリー類の育種における野生種の利用 205

表 2 我が国に自生するスノキ属植物の分類および園芸学的特徴(北村・村田, 1974;佐竹ら, 1989a; 1989b ; 玉田,1996 ; Vander Kloet, 1988)

節・種・亜種

Myrtil/us節

クロウスゴ

マルバウスゴ

ヒメウスノキ

Oxycoccus節

ツルコケモモ

ヒメツルコケモモ

O.rycoccoides節

アクシバ

Bract ea/um節

学名

V. ova/ifolium J. E. Smith

V shikokianum Nakai

V xatabei Makino

V. oxycoccus L

V. microcarpum Schmalh.

V. japonicum Miq.

ギイマ V. wrighlii A. Gray

ムニンシャシャンボ V. boninese Nakai

シャシャンボ V. bracteatum Thunb.

Vaccinium節

ナツハゼ V. o/dhamii Mtq.

ナガボナッハゼ V. sieboldii M1q.

アラゲナツハゼ V. ci/iatum Thunb.

ウスノキ V. hirtum Thunb

スノキ var. glabn,m Koidz

オオバスノキ V. smallii A. Gray

カンサイスノキ var. versico/or (Koidz.) Yamazak

アクシバモドキ V. yakushimense Makino V.

クロマメノキ V. u/iginosum L

Vitis-idaea節

コケモモ

イワッツジ

V. vitis-idaea L.

V. praestans Lamb.

常緑 葉の形態 樹高 開花期 花冠の落葉 (cm) (月) 形態

落葉 広楕円形,広卵 50-120 7

落葉 広卵形,円形 20-100 6-7

落葉 卵形,広卵形 10-30 5-6

常緑 長楕円形,鈍頭 30

常緑 長楕円状卵形 30

つぼ形

っぽ形っぽ形

深く 4裂片

し反捲する深く 5裂片

し反捲する

落葉 卵形,鈍頭 50-IOO 7-8 披針形

常緑楕円形 100-300 3-4

常緑楕円形,広楕円 100 1-4

常緑 長楕円形,卵形 200-500 5-7

落莱 卵状長楕円形 150-300 5-6

落葉卵状楕円形倒 100-200 5

卵状楕円形

落葉 広楕円形,広卵 200 5-6

落葉長楕円状卵形 50-100 4-5

鈍頭落葉 長楕円形,楕円 100 5-6

落葉楕円形 100 4-5

落葉楕円形 100 4-6

落葉卵状皮針形鋭 30-70 5-6

尖頭,鈍頭

落葉倒卵形,楕円形 30-80 6-7

円頭

筒型

筒型

つぼ状鐘形

鐘形

鐘形

鐘形

鐘形

鐘形

鐘形

鐘形

鐘形

つぼ状筒型

分布 分布・備考

寒帯 北海道・本州(中部以北)温帯上部 の亜高山帯寒帯 本州(北睦の高山)

温帯上部 本州(中部以西)

寒帯 本州(中部以北)・北海温帯上部 道・千島寒帯 本州(中部以北)・北海

温帯上部 道・千島絶滅危惧II類

(VU)

暖帯 北海道・本州・四国・九湿帯 州の冷温帯

暖帯 奄美大島以南の沖縄・台湾

暖帯 小笠原(兄島・父島・母島・向島)絶滅危惧11類

(VU)

暖帯 本州(関東南部から石川温帯 県以西)• 四国・九州・

沖縄

暖帯 北海道・本州・四国・九温帯 州

暖帯 静岡県西部から愛知県東部絶滅危惧 IA 類

(CR)

暖帯 本州(福井県西部以西の日本海側)・九州(北部)

温帯 北海道・本州・四国・九州の山地

暖帯 北海道• 本州・四国温帯

温帯上部 本州(山梨県・長野県南部・静岡県東部)

暖帯 本州(東海・近畿・中部地方)• 四国

温帯上部 屋久島固有種(標高600m以上の山地)杉に着生する,絶滅危惧1I類

(VU)

寒帯 北海道・本州(中部以温帯上部 北)・千島

常緑倒卵状長楕円 5-15 6-7 鐘形 寒帯 本州・北海道・本州・九形 温帯上部州• 四国の高山

常緑倒卵円形 1-4 7 つぽ状鐘形 温帯上部 本州(中部以北)・北海道・千島

は六倍体で野生種の中では果実が大きく,長野県浅

間山付近に自生し,浅間ベリー,浅間ブドウという

地方名で親しまれてきた(原, 1953) ものである.

実生が得られないことを示し,得られた実生の内,

クロマメノキと HB(四倍体)との交配より得られ

た KB(クロマメノキ X'ブルークロップ')4系統

およびクロマメノキと RB (六倍体)との交配より

得られた KT(クロマメノキ XTIOO) 12系統がいず

れも節間雑種であることを確認している.また, KB

系統は長い果柄に 1対の小葉を着生する両親と異な

る特徴を示し,いずれも五倍体であったが,花粉稔

性があり,自然条件下で果実を着生し,種子も形成

することから,育種親としての利用は十分に可能で

執行ら (2014a,2014b)は,クロマメノキ (Vaccinium

節)と栽培種である四倍体の HBおよび六倍体の

RB (Cyanococcus節)との正逆交雑を行い,節間雑

種の獲得を試みると共に,得られた節間雑種の特性

などを調査したすなわち,クロマメノキを種子親

とした場合には比較的多くの実生を得ることがで

きたが,栽培種を種子親にした逆交雑ではほとんど

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206 農業および園芸第 94巻第3号 (2019年)

あるとしている.一方, KT系統はいずれも両親と

同様の六倍体であり,クロマメノキと HBとの雑種

に比べ樹勢が強く,系統により果実の大きさや糖・

有機酸含量に差が見られたことから,クロマメノキ

とRB品種間の交雑より直接優良な品種を選抜する

ことも可能であろうとしている.

スノキ属の種間交雑において,正逆による雑種獲

得率を調査した報告は比較的少ないが,二倍体種間

の交雑において正逆交雑で雑種獲得率に違いがあ

る (Ballington・Galletta, 1978 ; Galletta, 1975) こ

と,四倍体 HBX六倍体 RBの交雑ではその逆交雑

に比べて雑種獲得率が高かった (Galletta, 1975)こ

となどが報告されている.一方,いくつかの被子植

物の種間または節間では,ー側交雑不和合性が報告

されている (Ascher・Peloquin,1968 ; Nkongoloら,

1991 ; Pandey, 1969). ブルーベリーの属するッツ

ジ科においても, Ureshinoら (2000) が,常緑性ツ

ッジとキレンゲッツジとの正逆交配では,キレンゲ

ッツジを花粉親に用いた場合にのみ着果し,種子が

得られる一側交雑不和合性を示し,その原因はキレ

ンゲッツジを種子親に用いた場合に花粉管が花柱

上部で伸長を停止することによるとしている.また,

HB品種と北欧に自生する四倍体のクロマメノキと

の正逆交雑では,クロマメノキを花粉親にした場合

には種子が得られたものの発芽には至らず,逆交雑

の場合には種子が発芽し,節間雑種が得られている

(Rousi, 1963). HB品種と六倍体クロマメノキと

の交雑で,着果や種子がほとんど得られない原因は

倍数性の相違というよりも,ー側交雑不和合性によ

るものと推察されたが,今後花柱における花粉管伸

長などについて調査が必要であると考えられる.な

お,ー側交雑不和合性については,近年アブラナ科

植物で自家不和合性制御遺伝子座 (S遺伝子座)と

は異なる遺伝子座に座乗する遺伝子により支配さ

れており,自家不和合性と同様に雌ずい側制御因子

と花粉側制御因子が密接に連鎖していることが報

告されている (Takadaら, 2013).

Moore (1965)は, HB品種と RB品種の交雑から

得られたEの五倍体雑種は,一般に樹勢は強いが,

育種素材としてはほとんど価値がないことを報告

した.しかしながら, Jelenkovic・Draper(1973)は,

これらの五倍体雑種に両親を戻し交雑することが

可能であることを示している.また, Vorsaら(1986)

は,五倍体雑種と HB品種とで正逆交雑を行い,染

色体数 48~58本の四倍体および異数体の後代が得

られることを示し,五倍体雑種が染色体数 24~34

本の異数性花粉および卵を高い頻度で生産し,それ

らに生殖能力があることを推察し,五倍体がいわゆ

る『橋渡し植物』として利用できることを報告して

いる (Vorsaら, 1987a, 1987b). 種間雑種と節間雑

種の違いがあるが, KB系統は生殖能力のある配偶

子を形成しているものと推察され, HB品種の戻し

交雑が可能と考えられる.野生種を品種育成に用い

る際には戻し交雑が有用であり, Draperら (1982)

は, 6種のスノキ属植物を用いた種間交雑集団にお

ける果実の形態や収量調査により,栽培種側に繰り

返し戻し交雑を行って得られた系統が選抜基準を

満たすことを報告している.したがって,これらの

節間雑種は,栽培種を戻し交雑するための中間母本

や父本としての利用が可能であると考えられる.

(2) 二倍体野生種およびその倍加系統と栽培種と

の節間雑種の育成

我が国に自生するスノキ属野生種は,クロマメノ

キを含む数種を除きほとんどが二倍体である.スノ

キ属では,形態的相違や自生地および生育環境の違

いにもかかわらず,同倍数体間では自然界でも容易

に交雑し,稔性を有する樹勢の強い雑種が生じてい

る (Camp, 1945 ; Lyrene・Sherman, 1983) が,一

方で,異なる倍数体間の交雑では全く交雑できな

かったり,雑種が得られても稔性が低かったりする

場合が多い (Darrowら, 1944). Lyreneら (2003)

は,これまでに行われたスノキ属植物の二倍体種と

四倍体種との正逆交雑結果の一部をまとめており,

雑種の獲得率が極めて低いことを指摘している.ま

た,その原因について,三倍体雑種では胚と胚乳の

ゲノムバランスが崩れ,接合体が退化することによ

る強い三倍体ブロックが働くためであると考察し

ている.したがって,二倍体種と四倍体種との交雑

は容易ではない (Munoz・Lyrene, 1985) と考えら

れている.このような三倍体プロックがあるため,

二倍体野生種と四倍体栽培種である HBまたはSHB

との種間交雑で雑種を得る確率は,二倍体野生種の

生産する非還元 (2n)配偶子の出現頻度に高く依存

することになる (Dweikat・Lyrene,1988 ; Megalos・

Ballington, 1988). 北アメリカに自生する二倍体野

生種については,種間および種内系統間での特性や

Page 7: ベリー類の育種における野生種の利用ベリー類の育種における野生種の利用 誌名 農業および園芸 = Agriculture and horticulture ISSN 03695247 巻/号

小松:ベリー類の育種における野生種の利用 207

非還元配偶子の発生頻度などが詳細に調査されて

いる (Cockerham・Galletta,1976; Megalos・Ballington,

1987; Ortizら, 1992).前述した SHBの育種におい

ても,二倍体の非還元雄性配偶子 (2n)が利用され

ており,四倍体 V.coかmbosumの還元雌性配偶子 (n)

と二倍体 V.darrowiの非還元雄性配偶子 (2n) が受

精することで四倍体雑種が得られている (Sharpe・

Sherman, 1971). いずれにしても,倍数性の相違が

雑種作出の障壁となっている場合には,非還元配偶

子を高率で形成する系統やコルヒチンで誘導され

た倍数体を片親に使うことで雑種獲得が可能であ

る (Lyrene, 2011). Cyanococcus節内の交雑では,

コルヒチン処理によって誘導された四倍体は,同じ

倍数体の他種と交雑が容易である (Chavez・Lyrene,

2009). 四倍体の SHB品種に二倍体野生種の V.

elliottiiを交配した場合には交配花当たり 0.01%しか

実生が得られなかったのに対し,同野生種の同質四

倍体である FL519を交配した場合には 3.86%の実

生が得られている (Dwekat・Lyrene, 1991). Lyrene

(2011), Lyrene・Olmstead (2012)は四倍体間の交

配により節間雑種を獲得している.

筆者らが栽培種に二倍体スノキ属野生種 10種を

交配したところ.いずれの交配でも着果率が低く,

得られた完全種子も少なかったが,これまでに 58

個体の実生が得られ,少なくとも SHB'リベール'

Xカンサイスノキ, HB'ブルークロップ'Xナッ

ハゼ 2系統および HB'ウェイマウス'Xアクシバ

が節間雑種であることを確認しており,斑入り葉を

伴うもの,枝により倍数性が異なるものなど興味あ

る特性を示し,我が国の野生種の遺伝質を取り込む

ための中間母本としての活用だけでなく,今後の研

究材料としても興味深く,今後の調査が期待される.

一方, Tsudaら (2013)は,常緑の野生種であるシャ

シャンボの種子にコルヒチン処理して得られた四

倍体シャシャンボを種子親に四倍体 HB'スパータ

ン'(落葉性)の花粉を受粉して得た実生を低温遭

遇させ,茎葉が暗赤色に変化する落葉タイプを選抜

することで 5系統の節間雑種 (JM1~5) を得てい

る.これらの節間雑種は,いずれも四倍体で, 4系

統が圃場下で着果し, 2系統は花粉稔性も高かった

こと,‘スパータン'に比べて可溶性固形物含量が

高いだけでなく,果肉はシャシャンボ同様赤みを帯

びていたこと,などから,環境適応性が広く,晩生

で,糖含量が高く,ファイトケミカル豊富な新たな

品種育成の素材として有用であると考察している.

我が国の野生種を利用したキイチゴの改良

キイチゴは,バラ科 (Rosaceae) キイチゴ属

(Rubus)の落葉または常緑性の低木性果樹であり,

野生種は南極大陸を除くすべての大陸でみられ

(Gustafsson, 1942 ; Hummer, 1996), 北半球の亜

寒帯から温帯を中心に分布している.大きな被害を

もたらす病害虫が少なく,家庭果樹向きの小果樹で

あり,生果はもちろん,ジャムやジュースなどの加

エ原料としても利用されている.果実(難波ら,

1986)や葉(鵜飼 1997; 中原, 1998) に高い健康

機能性を有しており,特に果実に含まれるアントシ

アニンやプロアントシアニジンを含むポリフェ

ノール類やフェノール酸には,フリーラジカルによ

る細胞の酸化ダメージを抑制する抗酸化作用など

の機能性があることが明らかにされ (Wada・Ou,

2002), 病気の予防や健康維持に有効な機能性食品

として注目されつつある果樹である.

現在の栽培種は,収穫時に花托が花盤に残り,集

合果が中空になるラズベリーと花托が集合果に付

着して花盤より分離するプラックベリーに大別さ

れる.いずれも地上部の茎は二年生であり,地下部

の根は永年性である.すなわち,その年に発育した

新茎(プライモケーン)が年を越して結果母枝(フ

ロリケーン)となり,この結果母枝より発生した新

梢上に開花・結実する.ラズベリーの栽培は 16世

紀にイギリスで始まり, 18世紀の終わりには欧州か

ら米国へ導入され, 19世紀の後半から栽培が盛んに

なった.また,ブラックベリーについては 17世紀

にヨーロッパで, 19世紀に北米で栽培化されるよう

になり, 20世紀に入って現在の経済品種の多数が育

成された(小松, 2008). このように現在のキイチ

ゴ栽培種は,いずれも欧米で改良されたものである.

一方,我が国にも 50種内外のキイチゴ属植物が分

布し,ホロムイイチゴ亜属 (Chamaemorus), ゴヨ

ウイチゴ亜属 (Cylactis), コバノフユイチゴ亜属

(Chamaebatus), フユイチゴ亜属 (Malachobatus)

およびナワシロイチゴ亜属 (Jdaeobatus) に分類さ

れている (Naruhashi, 1980). これら我が国原産の

キイチゴについては,それらの分布(嗚橋・里見,

1972, 1973; Naruhashi, 1982; Naruhashi・Sato, 1983)

Page 8: ベリー類の育種における野生種の利用ベリー類の育種における野生種の利用 誌名 農業および園芸 = Agriculture and horticulture ISSN 03695247 巻/号

208 農業および園芸第94巻第3号 (2019年)

や形態学的差異(鳴橋・豊島, 1979;Naruhashi,1980;

鳴橋, 1984; Naruhashi・Tawan, 1985), 種間雑種

(鳴橋, 1976) などについて植物分類学上の調査,

報告はあるものの,栽培利用の観点から調査した報

告は極めて少ない.

1. 野生種数種の育種素材としての評価

野生種の改良,栽培化や海外からの導入品種との

交雑育種を行う上で,個々の野生種の開花期や成熟

期,果実品質,樹の特性,自生地の特徴などを理解

することは極めて重要である.自生地については,

クマイチゴやナワシロイチゴに代表されるような

日当たりのよい草地や荒れ地に自生するものとク

サイチゴやフュイチゴに代表されるような林床お

よびその周辺に自生するものに大別され,クマイチ

ゴやナワシロイチゴは全国的にも分布している(佐

竹ら, 1989).

執行ら (2013)は,西南暖地に自生する野生種数

種(表 3) を供試し,形態及び生態学的特性の調査

を行なうと共に,果実品質や機能性の比較を行い,

野生種の育種素材としての評価を行っている.すな

わち,栽培種はいずれも二倍体であったが,野生種

はゲノムサイズの異なる二倍体と少数の六倍体か

らなり,ほとんどが直立性であるが,ナワシロイチ

ゴなどのようにほふく性の種もあること,果実の成

熟期はほとんどの種が 5~6月であるが,冬期に成

熟する種もあること,など育種素材として極めて興

味ある種が存在するとしている.また,野生種の果

実はほとんどが栽培種と同程度の大きさであり,中

には栽培種に比べ果実中の糖含量が高く,有機酸含

量が低い種や総ポリフェノール含量あるいは抗酸

化活性が高い種があることなどを示し,我が国自生

の野生種のいくつかは,栽培し易く,果実品質が優

れかつ機能性の高い品種を育成するための育種素

材となり得るものと推察している.なお,キイチゴ

栽培における最大の欠点は刺があることであり,我

が国の野生種も刺を有するものがほとんどであっ

たが,カジイチゴのように刺のないものも育種素材

として重要であるとしている.

2. 刺無しのラズベリー品種と野生種との種間雑種

の育成

ラズベリーの育種については,樹勢,直立性,大

果,豊産性,熟期の斉一性と拡大,耐病虫性などが

主な目標とされ,交雑育種,倍数性育種および突然

変異育種が行われている (Daubeny, 1996) . 交雑育

種では,これまでに大果性 (Keepら, 1980), 収穫

の早期化 (Knight, 1991), 秋成り (Keep, 1988)

病害虫耐性 (Keepら, 1980; Dossett・Finn, 2010)

および環境適応性品種の作出 (Williams・Darrow,

1940)などが報告されている.Lawrence (1986)は,

ラズベリーの栽培品種に環境適応性や病害抵抗性

などの有用形質を導入するためには,栽培種と野生

種の種間交雑が有望であることを報告している.ま

た, Knight(1991) は,栽培種と野生種の交雑によ

り, 目的形質の導入に成功している.

我が国で栽培されているラズベリーは,そのほと

んどが欧米で改良された品種であり,夏季冷涼な気

候を好み,耐暑性に乏しい.したがって,北海道や

東北地方での栽培は比較的容易であるが,西南暖地

表 3 キイチゴの野生種および栽培種における形態的特徴,開花期,花粉稔性および果実の成熟期

種および品種 自生地 樹姿 刺の 葉の形態 花序花色花弁がく片 開花期 花粉稔性(%) 成熟期

有無 数 数 (月) 稔実率 発芽率 (月)

野生種

クサイチゴ 林床およびその周辺直立性 有 奇数羽状複葉 単一 白 4-5 96 4 42.9 5中-6上

ヒメバライチゴ 林床およびその周辺直立性 有 奇数羽状複葉 単一 白 5 J:-6中 87 9 22.7 5下-6上

クマイチゴ 草地 直立性 有 心形単莱 集散 白 5 97 4 48 8 6中-6下

ナワシロイチゴ 草地 ほふく性 有 奇数羽状複葉 集散赤紫 5-6 96.6 7.2 6下-7中

カジイチゴ 暖地の太平洋沿岸 直立性 無 掌状 3・7中裂単葉 集散 白 4-5' 97.1 54.4 5中-6上’

ナガバモミジイチゴ 草地 直立性 有 心形単葉 単一 白 4 J:-4中 99.6 85.1 5下-6下

シマバライチゴ 林床およびその周辺ほふく性 有 広卵形単葉 円錐 白 10' 89 3 44 11-12'

フユイチゴ 林床およびその周辺ほふく性 有 心形単葉 円錐 白 9-10 11-12

栽培種

サマーフェスティバル 直立性 有 y 奇数羽状複葉 集散 白 69.8 5.4 6中-7上

キューティーレッド 直立性 無 奇数羽状複葉 集散 白 87 4 62 2 6中-7上

ワインダーベイレッド 直立性 無 奇数羽状複葉 集散 白 97 8 I 6 6中-7上

ワインダーイエロー 直立性 有 y 奇数羽状複葉 集散 白 76 4 6 8 6中-7上

':熊本県菊池郡大津町における期間.

)':栽培上問題にならない程度の柔らかい刺.

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小松:ベリー類の育種における野生種の利用 209

での栽培は困難な点が多い.また,栽培品種の多く

が有している刺は,栽培管理上の障害になるため,

ラズベリー栽培の拡大のためには,耐暑性を有した

刺無し品種の育成が必要である.

筆者らは,西南暖地でも栽培可能な刺無しラズベ

リー品種の育成を目的として,タキイ種苗(株)か

ら導入した刺無しラズベリー (Rubusidaeus L.)

‘キューティーレッド, ('キューティー,)および

‘ワインダーベイレッド, ('ワインダー,)と本学

周辺(標高:約 450m) に自生している 5種の野生

種を用いて正逆交雑させ,種間雑種の獲得を試みた.

その結果,刺無しの栽培品種を種子親にした場合に

はほとんどの組合せで種子が得られたが,野生種を

種子親にした場合には種子数が少なかった.得られ

た種子を層積後播種した結果,発芽実生の多くは樹

勢が弱く,数年内に枯死したが,ナワシロイチゴ(以

下ナワシロと略記)を花粉親とした‘キューティー'

xナワシロ (QNw-1,2) 2系統と‘ワインダー'x

ナワシロ (WBNw-1~4) 4系統は,樹勢が強く旺盛

な生育を示し,花や葉の形態および DNA解析によ

りいずれも種間雑種であることが確認された(デー

夕未掲載).

一般に種間交雑では,分類学上の類縁関係が遠い

ものほど生殖的隔離機構が強く働き,交雑種子を得

ることが困難であり,この交雑の難易性が分類学上

の1つの目安となっていることもある(岩田, 1991).

種間交雑をはじめとする遠縁の交配では,交配して

も受精率が極めて低かったり,受精卵から胚への発

達がうまく進行しないなどの理由で,雑種が得られ

なかったり(米澤, 1997), 雑種が得られても,雑

種致死や雑種不稔性,雑種崩壊などの障害が生じる

(亀谷, 2000) ことが知られている.渡邊 (2005)

は,キイチゴ栽培種と野生種との類縁関係を解析し,

ラズベリー栽培種はナワシロと最も近い類縁関係

にあることを明らかにしている.筆者らの種間交雑

でも,他の野生種に比ベナワシロを花粉親に用いた

場合により多数の種子が得られている.また,ナワ

シロは環境遮応性が広く,北海道から沖縄まで自生

しており(北村・村田, 1979), 地域ごとの変異が

大きい(新森・鳴橋, 1977). したがって,ナワシ

口は他のキイチゴ野生種よりも育種親として優れ

ているものと考えられた.

ナワシロを花粉親として得られた種間雑種を育

成したところ,いずれの系統も刺を有し,側匈性で

種子親の栽培種に比べ樹勢が強く,多数の花を培生

したしかしながら, WBNw-1を除く種間雑種系統

は,着果はするものの種子親の栽培種に比べ集合果

の小果数が少なく,成熟時に小果が容易に離脱し,

収穫が困難であった.これらに対し, WBNw-1は小

果数が比較的多く,収穫が可能であり,極めて多収

であった(データ未掲載).

Jennings・Brydon (1990) は,キイチゴの刺無し

品種のほとんどは,劣性遺伝子 sもしくは L,層にの

み刺無しの遺伝子を持ち, L2層にその遺伝子を持た

ない周縁キメラの場合であることを報告している.

すなわち,今回得られた F1雑種は,いずれも刺有

りの優性遺伝子を持っているため刺有りであった

が,刺無しの栽培品種より導入された劣性遺伝子 s

を有している可能性が考えられた.また,ラズベ

リー栽培種と Jdaeobatus亜属以外の種との交雑では,

得られた種間雑種の稔性に関する問題点が指摘さ

れている.例えば,野生種である R.arcticus (Cylactis

亜属)とラズベリー栽培種との E雑種の種子数は

極めて少なかったが,得られた数個体の実生には生

殖稔性があったことが報告されている (Hiirsalmi,

1989). また, Jennings・Ingram(1983)は,ラズベ

リー栽培種と R.parvifoliusとの交雑実生の不稔性に

ついて述べており,それらの個体群では多くの着花

が見られたものの,花粉稔性はいずれも両親よりも

顕著に低く,ほとんどの雑種で集合果が形成されな

かったとしている.本種間雑種についても,樹勢が

強く,多数の花が着生し,着果率は比較的高かった

ものの,集合果の小果数が少ないため,円形または

シンブル状の果実を着生する系統は存在しなかっ

た.國武ら (1998) も,キイチゴの種間交雑により

得られた雑種個体は,そのほとんどに花粉稔性の低

下が認められ,完全な集合果が結実しないことを報

告している.

3. 種間雑種の戻し交雑による刺無し系統の作出と

その評価

キイチゴの育種において,刺無し品種の作出は,

栽培利用上極めて重要な課題であり,育種目標の l

つである (Graham・Jennings,2006). また,雑種不

稔については,雑種の染色体倍加による複二倍体の

作出あるいは片親の連続戻し交雑系統の育成によ

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210 農業および園芸第 94巻第3号 (2019年)

り不稔性が回復する(鵜飼, 2003). ラズベリーの

種間交雑においても F1雑種は稔性が低下するが,

戻し交雑により多少稔性が回復することが報告さ

れている (Knight, 1991).

そこで, WBNw-1の稔性回復と刺無し系統の作出

を目的として‘ワインダー'を戻し交雑した結果,

32花の交配で 477粒の種子が得られた.層積後のラ

ズベリ一種子の発芽率は低く,発芽したのは 5個体

のみであったが, 1年後には戻し交雑 4 系統

(BC1No.l ~4) を育成することが出来た(表 4).

これらのうち, No.1は刺有りで‘ワインダー'と同

様の直立性を示し, No.2~4の3系統は刺無しでナ

ワシロ同様のほふく性を示した.BC1系統の着果率

は, No.1が 29.1%と極めて低い値を示したものの,

No.2および 4は 90%以上と‘ワインダー'および

F1以上の値を示したまた,これらの中で, No.2

は樹勢も強く旺盛な生育を示し,株当たりの果実収

量が凡雑種の WBNw-1には及ばないものの,約 4kg

と極めて多収であり,集合果の重さ,縦径・横径,

小果数および糖度は‘ワインダー'に近い値を示し

た.

刺有りと刺無しの分離比は 1: 3であったが,‘ワ

インダー'はラズベリーの実生を選抜した品種であ

ることから, L1層が刺無しに変化した周縁キメラと

は考え難い.‘ワインダー'を劣性遺伝子 sのホモ

個体,ナワシロを優性遣伝子 Sのホモあるいはヘテ

ロ (Ss) と考えると, WBNw-1は刺有りであること

から, Ssのヘテロであることが予想される.それに

‘ワインダー’を戻し交雑した場合, Ss:ssの分離

比は 1: 1となる.‘ワインダー'を種子親として

WBNw-1の花粉を交配した戻し交雑では,樹勢が弱

い6個体の実生が得られ,刺有りと刺無しの分離比

は 2: 1であった.得られた実生数が少ないため必

ずしも明らかではないが,刺有り:刺無しの分離比

は 1: 1に分離しているものと思われた.今後,

WBNw-1 X'ワインダー'が刺の有無に関してど

のような分離をするのか,逆交雑を含め数多くの実

生について検討することが必要と考えられた.

ラズベリーの育種において,戻し交雑による成功

例はいくつか報告されている.例えば, Jennings・

Brydon (1989) は,戻し交雑 3世代目で灰色カビ耐

性の導入に, Keepら (1967) は,戻し交雑 4世代

目でアブラムシ抵抗性の導入に成功している.筆者

らは, Eに‘ワインダー'を戻し交雑することによ

り,稔性の回復に加え,いずれもほふく性で刺無し

のBC13系統 (No.2~4) を得ることができた.

一般に,ほふく性のラズベリーはその栽培におい

て誘引が必須となるため,ラズベリーの育種目標と

しては直立性が求められている (Jenningsら, 1976;

Keepら, 1967). しかしながら,我が国の果樹栽培

は集約栽培であることに加え,屋上緑化資材として

のキイチゴの利用(黒田ら, 2012)や,鉢植えとし

ての利用を考えると,ほふく性の広がる性質や枝の

柔軟性は,アレンジの容易さなどの点でメリットと

なる.特に BC,No.2のプライモケーンは,落葉する

までに 3m以上伸長することから,壁面緑化などの

表 4 ‘ワインダー, Xナワシロ F1(WBNw-1) とBC1系統およびその両親における刺の有無,収量および果実形態

種・品種・系統 刺の 収量 果色 集合果 糖度 種子

有無 (g/株) 重さ 縦径 横径 小果数 (°Brix) 重さ 縦径 横径(g) (mm) (mm) (個) (mg) (mm) (mm)

両親

‘ワインダーベイレット' 細‘‘‘ 75.5 赤 3.0 C 18.7b 19.3c 47.1 d 10.6 d 2.7 be 3.0 d 1.7 a

ナワシロイチゴ 有 深紅 0.6a 11.8 a 9.6 a 11.2 ab 7.0 ab 1.4 a 2.1 a 1.2 d

F,

WBNw-1 有 6832.3 赤 2.3b 16.6 b 19.1 c 16.9 C 8.3 be 3.7 e 3.0 d 1.8 d

BC, 系統

No.I 有 23.0 赤 0.5 a 9.2 a 12.1 ab 3.8 a 6.4 a 3.3 d 2.7b l.7bc

No.2 細‘‘‘ 4064.5 赤 3.4 be 18.9 b 20.8 c 48.0d 9.5 cd 3.2 b 1.9 cd 1.9 a

No.3 無‘‘ 192.0 赤 2.4b 17.lb 18.3c 28.4 C 7.7 ab 2.8 C 1.7 b 1.7 b

No.4 無‘‘ 220.3 赤 0.8 a 11.0a 14.2b 14.1 b 10.4 d 3.1 d J.8 C 1.8 cd 有意性 y ** ** ** ** * * ** *

z: Tukeyの多重検定により,異なる英文字間に有意差があることを示す.y : **は 1%, *は 5%水準で有意差がある.

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小松:ベリー類の育種における野生種の利用 211

園芸資材としての利用も可能と思われる.このよう

に,刺無しの‘ワインダー'とナワシロの F』こ‘ワ

インダー'を戻し交雑することにより,西南暖地で

も栽培が容易で極めて多収な刺無し系統を育成す

ることができた.本系統の果実品質は‘ワインダー'

とほぼ同等であるが,さらに果実形状が円錐あるい

はシンブル状で店持ちの良い系統の育成を目指し

た研究を進めている.

おわりに

我が国の果樹園芸の発展は,明治維新政府が欧米

を中心に海外より導入した多数の果樹品種に負う

ところが大きい.それらの導入品種がもととなり,

栽培のし易さ,耐病虫性の付与,大果,品質(味)

など様々な改良がなされ,今日の我が国の果樹産業

の隆盛があることは言うまでもない.一方で,我が

国にも多数の果樹の野生種が自生していたにも拘

わらず,これまでカキやナシを除きほとんど栽培化

や改良がなされてこなかった.野生種には環境適応

性(耐寒性,耐乾性,耐湿性など),早晩熟性,耐

病虫性,高機能性など栽培種に無い形質を持つもの

がある.筆者らは,これまで顧みられなかった本邦

自生のスノキ属野生種とキイチゴ野生種に着目し,

育種素材として評価すると共に,貴重な栽培種との

節間あるいは種間雑種を育成することに成功して

いる.果樹の育種目標には,多収性,耐病虫性,自

家和合性の付与などもあるが,果実の品質改善に関

しては,大果や栄養価の改善に加え,健康機能性成

分高含有果実の育成が近年の目標となっている.今

後育成した節間あるいは種間雑種が中間母本とし

て利用され,我が国の環境に適した高機能性の新た

な品種育成につながることを期待したい.

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