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インスリン導入患者の 血糖コントロールに難渋した1例
第63回奄美ブロック合同研修勉強会
名古屋徳洲会総合病院2年次研修医 山口 拓海
どう考えますか???
82歳男性、COPD急性増悪の治療中に転倒し大腿骨転子部骨折のため
リハビリ中。
独居で家族がいないため生活保護申請中で退院後は施設に入所予定。
入院中尿路感染を起こし抗生剤加療を行っていた。
経過良好に見えたが突然ある日の昼食が0/0となった。
それまではおおむね10/10で摂取良好。 原因は???
症例:86歳女性
【現病歴】 もともと施設入所中。前医で肺炎契機の慢性心不全の 急性増悪で加療されていた。急性期は脱したが、 退院前の内服調整、リハビリを目的に転院となった。
【既往歴】 肺炎、慢性心不全、心房細動、高血圧症、糖尿病、 認知症
【内服】 ワーファリン1.75mg カンデサルタン4mg アムロジピン5mg ダイアート30mg ヒューマログ(6-6-6-0) トレシーバ(0-0-0-4)
Problem list
#1 糖尿病 #2 慢性心不全 #3 心房細動 #4 高血圧症
【検査所見】
血液検査: WBC 2600/µl
RBC 364×104/µl Hb 11.1g/dl Ht 33%
Plt 15.8×104/µl Na 136mEq/l K 4.4mEq/l Cl 99mEq/l Ca 8.5mg/dl
CRP 0.1mg/dl Glu 283mg/dl UA 5.4mg/dl BUN 28.7mg/dl CRE 1.00mg/dl PT 21.1sec PT-INR 1.78
TP 6.5g/dl Alb 3.7g/dl T-Bil 0.6mg/dl CPK 52U/l AST 37IU/l ALT 17IU/l LDH 255IU/l γ-GTP 22IU/l AMY 87U/I
HbA1c 7.3% C-peptide 0.1ng/ml
方針
まずは強化インスリン療法で安定 HbA1c →7.5%以下 食前血糖値 →150-200mg/dl以下
問題点:施設では3回/日までしか注射ができない
・準強化インスリン療法
・BOT
強化インスリン療法
超即効型、即効型
持効型
Basal supported oral therapy(BOT)
6/8
297-220-161-314 ノボラピッド(6-6-4-0)+トレシーバ(0-0-0-4) 6/9
303-230-244-278 ノボラピッド(6-6-6-0)+トレシーバ(0-0-0-8) 6/10
95-58-132-412 ノボラピッド(6-2-4-0)+トレシーバ(0-0-0-6) 6/11
233-322-342-380 ノボラピッド(6-4-6-0)+トレシーバ(0-0-0-6) 6/12
295-187-137-155 ノボラピッド(12-6-6-0)+トレシーバ(0-0-0-6) 6/13
87-283-220-137 ノボラピッド(4-8-8-0)+トレシーバ(0-0-0-8) 6/14
119-68-248-178 ノボラピッド(6-4-4-0)+トレシーバ(0-0-0-10) 6/15
58-169-208-198 ノボラピッド(4-4-4-0)+トレシーバ(0-0-0-10) 6/16
60-83-188-208 ノボラピッド(4-6-4-0)+トレシーバ(0-0-0-8)
血糖値の推移①
朝低血糖
朝低血糖
夕食前だけ高い
Assessment
♯1 早朝の低血糖 時効型を増やしたタイミングでなっている
♯2 夕食前の血糖高値が持続
→時効型10üに対して夜間の糖新生が追い付いていない
昼食前のインスリン量が足りていない? 食事量は本当に安定しているのか? 間食???
6/10の回診時(入院3日目)
医 :「おはようございます。」 患者:「おはようございます。私の担当の先生なの?」 医 :「・・・そうですよ。ご飯は食べれてますか?」 患者:「全部いただいてますよ。」 医 :「間食はしないでくださいね。」 患者:「はい。でもできないでしょ?」
6/16現在 食事10/10 施設入所中 家族は来ない
Plan ♯1 早朝の低血糖 30Mix製剤しかない →時効型増やせないから準強化療法は無理 DPP-4阻害薬導入し少しでも即効型を減らせないか試す
♯2 夕食前の血糖高値が持続 昼食後のインスリン量が足りていない? 食事量は本当に安定しているのか? 間食???
→安定 →できる環境にない
→これかな?
6/17
56-60-118-315 ノボラピッド(4-6-4-0)+トレシーバ(0-0-0-6) 6/18
110-180-186-230 ノボラピッド(4-6-4-0)+トレシーバ(0-0-0-6) 6/19
186-192-225-250 ノボラピッド(4-6-4-0)+トレシーバ(0-0-0-6) 6/20
86-341-329-394 ノボラピッド(4-6-4-0)+トレシーバ(0-0-0-6) 6/21
128-192-178-280 ノボラピッド(4-6-5-0)+トレシーバ(0-0-0-6) 6/22
127-115-72-98 ノボラピッド(5-7-5-0)+トレシーバ(0-0-0-6) 6/23
98-121-105-89 ノボラピッド(5-7-5-0)+トレシーバ(0-0-0-6) 6/24
69-72-73-131 ノボラピッド(5-7-5-0)+トレシーバ(0-0-0-6) 6/25
146-315-211-177 ノボラピッド(5-7-5-0)+トレシーバ(0-0-0-6)
血糖値の推移②
やっぱり夕食前眠前で高い
安定してきた
事件発覚
「先生、患者さんがスモモ食べてます。」
入院患者のうち何人かは、同じ施設の入所者。 その家族が来た時に食べ物を与えていた。
やめさせて、貼り紙をしました。
6/26
69-120-60 ノボラピッド(5-7-5)+トレシーバ(0-6-0) 6/27
94-244-153 ノボラピッド(5-7-5)+トレシーバ(0-6-0) 6/28
92-186-165 ノボラピッド(5-7-5)+トレシーバ(0-6-0) 6/29
92-141-94 ノボラピッド(5-7-5)+トレシーバ(0-6-0) 6/30
100-236-187 ノボラピッド(5-6-5)+トレシーバ(0-6-0) 7/1
96-123-108 ノボラピッド(5-6-5)+トレシーバ(0-6-0) 7/2
179-247-177 ノボラピッド(5-6-5)+トレシーバ(0-6-0)
夜間低血糖
血糖値の推移③ 1日3回に
おおむね安定
経過
施設に退院するため、3回/日に調整する必要があったが、 超即効型を減らせなかったため、BOTは断念した。 代わりに持効型を昼に打つことにより、 強化インスリン療法のまま3回/日とした。
7月のHbA1cは6.7%と良好であった。
考察
島の人たちは周りに顔見知りが多く、顔見知りでなくとも、 食べ物を共有する習性がある。
患者は認知症であり、間食したことも忘れている可能性が 高いことを見抜けなかった。
どう考えますか???
82歳男性、COPD急性増悪の治療中に転倒し大腿骨転子部骨折のため
リハビリ中。
独居で家族がいないため生活保護申請中で退院後は施設に入所予定。
入院中尿路感染を起こし抗生剤加療を行っていた。
経過良好に見えたが突然ある日の昼食が0/0となった。
それまではおおむね10/10で摂取良好。 原因は???
答
その辺の同年代の女性2人が昼食前に サンドイッチとオロナミンCを与えていたため、 満腹で食べれなかった
島特有の落とし穴があるので 気を付けてください
島特有の理由によって、インスリン導入患者の 血糖コントロールに難渋した1例を経験したため報告する。
ご清聴ありがとうございました。