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Title ライフスキル形成を目的とした喫煙防止教育のPRECEDE -PROCEEDモデルによる検討 Author(s) 金城, 昇; 嘉陽, 宗芳; 野原, 賢一; 後呂, 健二; 金, 福柱 Citation 琉球大学教育学部教育実践総合センター紀要(11): 61-85 Issue Date 2004-03 URL http://hdl.handle.net/20.500.12000/5729 Rights

ライフスキル形成を目的とした喫煙防止教育のPRECEDE ...ir.lib.u-ryukyu.ac.jp/bitstream/20.500.12000/5729/1/No11...琉球大学教育学部教育実践総合センター紀要第11号2004年3月

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Title ライフスキル形成を目的とした喫煙防止教育のPRECEDE-PROCEEDモデルによる検討

Author(s) 金城, 昇; 嘉陽, 宗芳; 野原, 賢一; 後呂, 健二; 金, 福柱

Citation 琉球大学教育学部教育実践総合センター紀要(11): 61-85

Issue Date 2004-03

URL http://hdl.handle.net/20.500.12000/5729

Rights

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琉球大学教育学部教育実践総合センター紀要第11号2004年3月

ライフスキル形成を目的とした喫煙防止教育の

PRECEDE-PROCEEDモデルによる検討

金城昇*嘉陽宗芳**野原賢一**後呂健二**金福柱**

AnalysisofPreventionEducationforSmokingBasedon

FormationoftheLifeSkiIls

byPRECEDE-PROCEEDModel

KINJONoboru,KAYOHMuneyosi,NOHARAKenichi,

USHIROKenji,KINFukutyu

要約

2003年6月から7月にかけ、沖縄県内のS小学校4,5,6年生を対象に、ライフスキル形成を

目的とした喫煙防止教育を行った。本実践は初めに、タバコの害や影響に関する知識を深め、それ

に基づきタバコの広告分析の授業、喫煙を勧められた際の良い断り方の習得を目指した授業へと系

統立てて実施した。

Ⅷ児童から出されたアイディアや授業後の感想をPPモデルで分析した結果、児童は喫煙による急

性影響、長期影響、環境タバコ煙の影響についてそれぞれ理解し、その知識を基に家族とのタバコ

に関する対話がなされたことが示された。さらに、喫煙による事実とタバコ広告に隠されたテクニッ

クとを対比し、その矛盾点を明らかにするとともに、喫煙を勧められた際に、相手を尊重しつつ自

分の意思をはっきりと伝えるスキルの一定程度の習得がみられた。

尚、本実践研究は、本学大学院教科教育専攻保健体育専修の科目である「保健体育科教育法特

論」「保健体育科授業研究・教材開発」の一環として、S小学校から依頼のあった喫煙防止教育に

ついて院生が中心となり実践・分析・検討してまとめたものである。

環境的なサポートを組み合わせることである」

と述べている。

GreenL.WとKreuterM、W(1991)は、ヘ

ルスプロモーション活動を展開するため、プリ

シード・プロシードモデル(以下、PPモデル)

を開発した。このモデルでは、対象者のQOL

(生活の質)を最上位におき、その資源として

健康を位極づけており、それらを支えるものと

I.はじめに

オタワ憲章によると「ヘルスプロモーション

とは、人々が自らの健康をコントロールし、改

善することができるようにするプロセスである」

と定義されている。同様に、GreenLW

(1991)は、「ヘルスプロモーションとは、健康

的な行動や生活状態がとれるように教育的かつ

、琉球大学教育学部*、琉球大学大学院教育学研究科

-61-

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持続的に報酬やインセンティプを与えうる要因

のことである。それぞれの要因は他の全ての要

因の持つ影響力にも潜在的に影響を与えている

ため、それぞれの要因が実行の可能性を高めた

り低めたりする。通常は、前提要因、実現要因、

強化要因の三つの要因が揃うことによって行動

は実行に移され、維持されうる。このことは、

実現要因や強化要因を全く考慮に入れずに、自

覚や関心や知識(前提要因)だけを高めようと

して行われる健康情報の伝達プログラムが、資

源や報酬を手に入れやすい集団(通常は富裕集

団)以外では失敗に終わり、行動に影響を及ぼ

せないことが多いことからもうかがい知ること

ができる。

現在の児童・生徒は、説教、表面的な問題の

取り上げ方、教育技術のなさ、つまらないプレ

ゼンテーションに飽き飽きしている。このよう

な現状だからこそ、教師が、「自己の価値感を

子どもたちに伝えようとするのではなく、あく

まで子どもたち一人一人の価値観を尊重し、彼

らが自分の価値観にのっとりながら、自分にとっ

ても、周囲の人々や社会にとっても、より建設

的で有益な行動を選択できるように援助すると

いう姿勢で臨む」ライフスキル教育の必要性が

際立ってくる。生活習頒病など、今日の主要な

健康問題の発生には行動が深く関わっており、

行動変容をもたらすためにはライフスキルの形

成が必須要素となるため、今後の健康教育は、

ライフスキルという概念を抜きにしてはおそら

く価値を持ちえないであろう。

知識が増えたからといって必ずしも行動や組

織が変容するとは限らないが、知識の増大は行

動や組織の変容と正の相関があるため、ある行

動が起こされるには、ある一定レベル以上の知

識が必要となってくる。しかし、「知識は必要

であるが、通常、個人や集団の行動変容には不

十分である」ということを考えれば、「複数の

要因の組み合わせが動機に結びつき、複数の介

入がヘルスプロモーションに結びつく」という

観点から、正しい知識を伴って行動を選択でき

る能力を育成することは有益だと思われる。

ライフスキル教育の主な学習過程は、①確認

して支援的な環境、健康教育などが包括されて

いる。

本モデルは、ヘルスプロモーション戦略は、

「健康に資する諸行為や生活状態に対する教育

的支援と環境的支援との組み合わせである」と

いうことを前提として、「診断と計画」に関わ

るプリシードの過程と「実施、評価」に関わる

プロシードの過程から成り立っている。プリシー

ド(Precede)は、PredisposingReinforcing

andEnablingConstructsinEducational

/EnvironmentalDiagnosisandEvaluation

(教育・環境の診断と評価のための前提・強化・

実現要因)の略であり、「実施に先立って行わ

れる」という意味があり、計画の実行に入る前

の過程を指す。プロシード(Proceed)は、

Policy,Regulatory,andOrganizational

ConstructsinEducationalandEnvironmental

Development(教育・環境の開発における政策

的・法規的・組織的要因)を略した言葉であり、

「続いて行われる」という意味が込められ、計

画や政策を推進する意味を持つ。

モデルは最初、1981年にGreenLWと

KreuterM.Wによって、健康教育のための

「プリシードモデル」として開発された。その

後、健康的なライフスタイルを櫛築するために

は、教育の観点だけではなく、それを可能にす

るような政治、経済、環境要因などが必要であ

ることが強調されるようになってきたことを踏

まえ、ヘルスプロモーションの概念をモデルの

中に統合した形で提示するために、1991年にプ

ロシード過程を加えて改訂され、「PPモデル」

となった。

プリシードの第4段階として、教育・組織診

断(EducationalandOrganizationalDiagnosis)

がある。この段階では、前段階で選択された行

動・環境に影響する要因を前提要因、実現要因、

強化要因の三つに分けて検討する。前提要因と

は、行動の論理的根拠や動機となるもので、行

動に先立つ要因、実現要因とは、ある動機によ

る行動を実現させるために必要な要因、強化要

因とは、ある行動が起こった後に、その行動が

継続し、かつ繰り返し実践されていくように、

-62-

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する、②関係づける、③練習する、④応用する

という小集団学習を中心とする参加型学習によっ

て成り立っている。グループ全員が協力しなが

ら限られた時間の中で、ある課題についてでき

るだけ多くのアイディアを出すことを目的とす

るブレインストーミング(以下、B・S)やワー

クシートなどを通して健康に関する問題を確認

し、関係づける。また、参加者にある役割を与

えて演じさせ、その活動を通じて状況の問題点

を明らかにしたり、解決策を与えたりする学習

活動であるロールプレイ(以下、R・P)や家

庭での話し合いを通じて健康に関する問題につ

いて練習、応用していくことが可能である。授

業の中でB・SやR・Pなどのライフスキル教育

における手法を取り入れることで、健康に関す

る必要な知識・スキルを狸得し、健康上望まし

い行動変容が期待できる。

行動は新たな自覚や新しい知識に伴ってすぐ

に変わるものではないが、自覚が高まり、理解

が進み、事実認識が深まるにつれて、信念、価

値観、態度、意図、自己効力感を強化していく

ことにより最終的には行動へと結びついていく

と考える。

以上のような問題意識のもとに、2003年6月

から7月にかけ、沖縄県内のS小学校4,5,

6年生を対象に、ライフスキル育成を目的とし

た喫煙防止教育を行った。4,5,6年生それ

ぞれに、タバコについての「知識」を中心とし

た授業(以下、「知識の授業」)を実施した。そ

の後、5年生にはタバコ広告を分析することに

より、広告に使われているテクニックや喫煙に

関する事実を明らかにする授業(以下、「広告

分析の授業」)を行った.6年生にはR・Pによ

るタバコを勧められた際の「断るスキル」習得

を目指した授業(以下、「断るスキルの授業」)

を実施した。本稿では、授業について、PPモ

デルを用いて分析し、児童の授業時の反応、授

業後の感想を基に、授業の展開法を再検討する。

沖縄市S小学校4,5,6年生の各1クラス、

計3クラス。

(2)調査期間

各授業の際に調査を実施した。

2003年

6月10日…「知識の授業」(4年生)

6月24日…「知識の授業」(5年生・6年生)

7月1日…「広告分析の授業」(5年生)

「断るスキルの授業」(6年生)

(3)介入(授業)の内容

2003年6月から7月にかけ、ライフスキル育

成を目的とした喫煙防止教育を行った。4,5,

6年生それぞれに、タバコについての「知識の

授業」を実施した。その後、5年生にはタバコ

の「広告分析の授業」を行い、6年生にはR・

Pによる喫煙を勧められた際の「断るスキルの

授業」を実施した。

(4)評価客体

分析客体は以下のものである。

1)授業での会話

授業を予め、ビデオで録画し、その記録から

会話を文章に拾い上げる。

2)授業のワークシート:

授業で使ったワークシートを回収した。「知

識の授業」について回収できたワークシートは、

4年生(19人)、5年生(28人)、6年生(14人)

である。5年生の「広告分析の授業」では、グ

ループワークシート(6枚)と個人の感想(36

人)、6年生の「断るスキルの授業」では、R・

Pのワークシート(31人)と個人の感想(31人)

である。

(5)分析方法

武藤(1994)は健康教室の流れについて、企

画、実施、評価の三つに大別され、それを成功

させるためには、これらのどのステージも重要

であり、各ステージに対してそれぞれ評価が行

われるべきであることを指摘している。

本研究の分析では、武藤が例示した「健康教

育の各ステージ別の評価モデル」を元に、評価

基準を作成した(図1)。

喫煙防止教育プログラムの実践は、目標の設

定(第1ステージ)、喫煙防止教育の企画(第

Ⅱ研究方法

(1)実践対象

-63-

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 ̄「

図1喫煙防止教育の流れと各種評価との関連(武藤:1994を元に作成)

2ステージ)、喫煙防止教育の実施(第3ステー

ジ)、アンケートの実施(第4ステージ)の流

れで行った。喫煙防止教育の分析は、健康教育

の評価(第5ステージ)、評価の応用(第6ス

テージ)の流れで行われ、本実践の分析は、そ

れに該当する。以下に、各評価の分析方法を記

す。

1)健康教育の評価

ここでは授業目標、授業プログラムを除き、

授業自体について二つの分析により評価する。

初めに、JKYB(2000)が提唱した、①確認す

る、②関係づける、③練習する、④応用すると

いう参加型学習の学習過程と、本実践の学習状

況とを照らし合わせる。次に、目標と授業の流

れを分析し、本実践を目標の視点から見ていく。

2)評価の応用

健康教育の評価のまとめと、授業目標、プロ

グラムを分析する。それを基に、新たな指導案

を作成する。

の反応を中心に追っていく。

(1)指導案

表1.4年生「知識の授業」指導案(抄)

テーマ:「百害あって一利なし?!」5月31日って何の日?

目標

(1)喫煙で

①すぐに現れる症状(急性影響)

②長い間かかって現れる症状(長期影響)

③周りに及ぼす影響(環境タバコ煙の影響)

について把握する

(2)喫煙者である家族に対して、タバコをやめ

てもらいたい気持ちを持つ

(3)5月31日は「世界禁煙デー」であることを知る

(4)家族にも喫煙やタバコの影響について考え

てもらう(お土産で)

授業内容

STEP1本時の説明及びアイスプレイク(自己

紹介)

STEP2「タバコのイメージ」についてのB・S

STEP3「みんなが知っているタバコの影響」についてのB・S

STEP4タバコの影響の説明

STEP5タバコの影響の確認

STEP6まとめ

Ⅲ結果(実践報告及びその分析)

(2)授業の展開過程及び結果

1)STEP1本時の脱明及びアイスプレイク

(自己紹介)

児童は全てB・Sの経験がなかったため、そ

の定義の説明とルールの確認を念入りに行った。

B・Sでは、より多くのアイディアが出される

ことが望ましいため、「勝負やゲームをするよ

1-1.4年生「知識の授業」について

4年生を対象に『「百害あって一利なし?!」

5月31日って何の日?』をテーマに、「知識の

授業」をティームティーチング(以下、TT)

で行った。本項では、STEP方式で作成した本

授業の指導案を提示し、授業の展開過程を児童

-64-

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うに、たくさんのアイディアを出すこと」を意

識づけた。児童から、「いっぱい出せばいいん

でしよ」と確認の声があり、ゲーム感覚で積極

的にワークに参加しようとする雰囲気が感じら

れた。

各グループで一番出席番号が若い児童をその

リーダーに選出し、「5月31日って何の日?」

というテーマでB・Sの練習を行った。「世界禁

煙デー」について知っている児童はいなかった

ようで、語呂合わせなどの冗談半分での回答が

目立った。短冊を配布し、20秒間に思いつくだ

けのアイディアをそれに書かせ、グループ毎に

その中から代表のアイディアを決定させた。重

複も含め、全体で25個のアイディアがあがった。

授業への積極的な参加を図るため、授業の最後

にB・Sのテーマの正解を伝えることを児童に

告げ、ここでは正解を伏せておいた。表2は、

その時にあがったクラス全体のアイディアであ

る。尚、児童のアイディアや感想でみられた誤

字・脱字は修正し、適宜、漢字変換を行った。

「タバコのイメージ」は以下の通りである。

表3.「タバコのイメージ」についてのB・Sの結果

3)STEP3「みんなが知っているタバコの

影轡」についてのB・S

「タバコのイメージ」も参考に、「みんなが

知っているタバコの影響」について2分間のB・

Sを行い、全体で70個近くのアイディアがあがっ

た。グループ毎に出されたアイディアを数え、

それが最も多かったグループにクラス全員で拍

手を送った際、そのグループを素直に誉められ

る児童像が見られた。出されたアイディアの内

容を把握するため、同様のアイディアをまとめ

させた。しかし、リーダーが端に座っているグ

ループもあり、リーダーを中心に進めることを

ねらったグループワークのスムーズな進行を促

すことができなかった。

4)STEP4タバコの影響の脱明

「影響」、「症状」という言葉の意味について

具体例で説明した後、「急性影響」、「長期影響」、

「環境タバコ煙の影響」というタバコによる三

つの影響を紹介した。すると、「オレは家で煙

を吸わされてるんだ」「タバコは迷感だな」な

どの感想があった。未成年者の喫煙はリスクを

伴うため、タバコの悪い影響は、大人に比べ若

い年齢には大きくなること、未成年者の喫煙は

法律で禁じられていることを伝えた。「オレ、

吸ったことある」という素直な声もあったが、

クラス全体に「タバコを吸ったことがある人も、

この授業が終わって、タバコはいけないものだ

表2.「5月31日って何の日?」のアイディア

・子どもの日(2人)

・5月の最後の日(7人)

・父の日(13人)

・母の日(2人)

・5歳の日

2)STEP2「タバコのイメージ」について

のB・S

児童が「イメージ」という言葉を使い慣れて

いなかったようで、その意味を具体例で説明し、

「イメージ」に対する共通理解を図ることに時

間を割かれた。「タバコのイメージ」について

30秒間でB・Sを行い、全員を起立させ、一人

ずつ発表してもらった。しかし、授業者らの予

想に反し、「良いイメージ」は一つもあがらな

かった。重複した内容もあったが、全体で50個

以上のアイディアがあった。代表的なアイディ

アを読み合わせ、タバコにはそのような「悪い

イメージ」があるという共通理解を深めた。

「悪いのばっかりだね」という声が聞かれ、タ

バコにはそれだけ多くの悪いイメージがあるこ

とを認識した様子がうかがえた。児童による

-65-

良いイメージ

アイディアなし

悪いイメージ

.臭い(10人)・タバコ臭い・臭いから吸うなよ・

臭くなる(2人)・煙臭い(5人)・息が臭くな

る.周りの人も息が臭くなる.苦しい(2人).

苦しくなる.迷惑(4人)。汚い(2人)・歯が

汚い.体に悪い(8人).悪いもの.かっこ悪い.

かっこ悪く迷惑・吸ったらダメ(2人)・煙が出

る.のどが痛くなる.ガンになりやすい・病気に

なりやすい.長生きしない.火事になりそう(3

人)・死ぬ可能性もある(2人).細長く持つ所

が茶色い長四角

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わけではないが、この日を機会に、タバコを吸

う人も吸わない人もタバコのことについて考え

る必要がある」と返した。45分の授業時間をオー

バーしてしまったため、数人の児童は集中がき

れた様子であった。そのため、急いで「拝啓

お家の人へ:タバコを吸っていること、吸って

いないことについて」手紙を書くことと、家庭

で家族とタバコについて話し合い、その感想を

聞いて書く、ということを宿題として伝えた。

(3)家族への手紙と家族との話し合いの感想

家族への手紙、家族と話し合った感想を、P

Pモデルの前提要因と強化要因とにそれぞれ分

類した。従って、前提要因は、児童本人のタバ

コに関する知識、タバコに対する考え方、態度

を表し、強化要因は、親(家族)のそれらを表

している。前提要因では知識として、「血圧が

上がる」「病気(ガン)になる(14個)」「タバ

コを吸っている自分にも影響を与え、周りの人

にも影響を与える(3個)」などがあがった。

考え方には、「家にタバコを吸っている人がい

たら,かわいそうだと思います」「この街だけ

じゃなく、世界中の人がタバコを吸わないよう

になったらもっと良くなると思います」「体に

悪いタバコをお父さん・お母さんが吸ってなく

と思ったら、もう吸わないようにしてね」と伝

えた。

5)STEP5タバコの影響の確認

各グループで出されたアイディアを三つの影

響に分類させた。どちらの影響ともとれるアイ

ディアがあり、慣れないグループワークでもあっ

たため、その作業に大変手間取った。授業者ら

に加え、担任、養護教諭などが協力したが、グ

ループワークを活性化させることは困難であっ

た。当初、グループ毎にリーダーを中心に発表

させる予定であったが、分類作業に時間がかかっ

たため、黒板に3つの影響の分類のラベルを書

き、児童に分類したアイディアを貼らせた。こ

こでも時間を費やしたため、あやふやな分類も

みられたが、その適切性を全員で確認できず、

タバコによる影響についての共通理解を得られ

なかった。以下が、クラスで出されたアイディ

アをもとに授業者らが、あやふやな箇所に若干

の修正を加えた分類である。

表4.「タバコの影響」を分類した結果

前提要因

児童知識(38個)考え方(16個)態度(8個)

タバコに関する行動強化要因

家族知識(13個)考え方(12個)態度(9個)その他(4個)

図2.4年生の感想の分類

て良かつたです」などがみられた。態度として、

「自分を守りたければ,タバコは吸わないよう

に注意する」「この街ではタバコを吸わないよ

うにするのがいいです」「やめたほうがいい」

などがあった。強化要因では知識として、「病

気になる(6個)」「子どもを産んでいないお母

さんなどは,おなかの中で赤ちゃんが死んでし

まうか、手足がない赤ちゃんが生まれてくるか

もしれない(2個)」「タバコを吸った人よりも、

6)まとめ

5月31日は「世界禁煙デー」であることを告

げた。「この日は世界中でタバコを吸ったらダ

メなの」「この日はみんなタバコを吸わなけれ

ば良いんだ」という感想があった。そこで、

「世界禁煙デーにタバコを吸ったらダメという

-66-

すぐに現れる症状(急性影響)

.1回吸ったらやめられない(2人)・おなかを

こわす

長い間かかって現れる症状(長期影響)

.1回吸ったらやめられない(2人)・入院する.

病気になる(12人).みんな病気になる.ガンに

なる(14人)・何本も買ってしまう.なぜか吸っ

てしまう・胃が黒くなる(3人)・被害を受ける。

ガンになって病気になる・歯が汚くなる.歯がど

ろどろに溶ける.ガンになって死ぬ場合がある

(2人)・体に悪い影響が起こる!(7人)

周りに及ぼす影響(環境タバコ煙の影響)

.みんな病気になる.流産する.被害を受ける.

赤ちゃんが障害をもって生まれる(3人)・雲が

黒くなる.周りの人もガンになる(2人)・自然

破壊(2人)・煙のせいで、体が悪くなる.吸っ

てない人にうつる.周りの人も病気になる

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(周囲で)煙を吸った人の方が,早くもっと大

きな病気になる(4個)」などがあがった。考

え方には、「タバコを吸っている人は、格好良

いと思うかもしれないが、吸ってないお父さん

から見たら格好悪い」「タバコはまずそうで、

今にも病気になりそうな感じ」「お母さんは、

タバコは人だけではなく、環境や地球にも良く

ないと言った」などがみられた。態度として、

「タバコは人の体に悪い影響を与えるので、少

しずつでも吸う量を減らしてほしい」「お父さ

んは、元々吸うのは少ないが、それより少し減

らす」「タバコを吸っている人に、近づかない

ようにしよう」などがあった。その他の親との

会話として、「私の家にはタバコを吸っている

人がいません」「体に悪いタバコをお父さん・

お母さんが,吸ってなくて良かったです」など

があがった。

1-2.5年生「知識の授業」について

5年生を対象に「知識の授業」をTTで行っ

た。本授業は、4年生に実施した「知識の授業」

の反省による修正に基づき実施したが、後述す

る6年生と同じ指導案で実施した。そこで、5

年生の「(1)指導案」と「(2)授業の展開過程及び

結果」については省略する。省略部分に関して

は、6年生の授業の項で報告する。本項では、

「(3)家族への手紙と家族との話し合いの感想」

のみを提示し、児童側の前提要因と家族側の強

化要因についてのみ検討していく。

(1)指導案

省略。

(2)授業の展開過程及び結果

省略。

(3)家族への手紙と家族との話し合いの感想

前提要因では知識(107個)として、「タバコ

は肌荒れになる」「タバコを吸ったら吐き気が

するし息切れもする」「タバコを吸うと、頭痛

が起きたり、目眩がしたりするそうです」など

があがった。考え方には、「タバコは、やらな

いほうがいいと思います」「お母さんたちには

タバコを吸ってほしくありません」「お母さん

たちがタバコを吸わないのが私の一生のお願い

かもしれません」などがみられた。態度として、

「タバコは吸わないように言いたいです」「僕も

大きくなったら吸いません」「お母さんもタバ

コを吸わないで長生きしてね」などがあった。

強化要因では知識として、「周りの人に害に

なります」「食欲不振になる」「心臓に悪い」な

どがあがった。考え方には、「タバコの煙が服

などにつくとすごく臭いので、吸わない人から

するととても嫌な思いをします」「体のことを

考えると、止めた方が一番いいんですけどね」

「食堂やレストレンなどで、吸わない人は、食

事がおいしくなくなる」などがみられた。態度

として、「タバコを吸ったら肺が汚れるし、肺

ガンになる可能性もあるからタバコは吸わない

でね」「これからは、周りにいる人に気をつけ

て出来るだけタバコを吸わないようにする」

「2週間に1箱という程度で《あまり一気に吸

わないようにする」などがあった。

1-3.6年生「知識の授業」について

6年生を対象に『「百害あって一利なし?!」

5月31日って何の日?』をテーマに、「知識の授

業」をTTで行った。本授業は、4年生に実施

した「知識の授業」の反省から修正した指導案

に基づき行ったものである。本項では、本授業

の指導案を掲示し、授業の展開過程を児童の反

応を中心に追っていく。

(1)指導案前提要因

児童表5.6年生「知識の授業」指導案(抄)知識

考え方態度

(107個)(24個)(19個) タバコに関する行動

テーマ:「百害あって一利なし?!」5月31日って何の日?

目標(1)喫煙で①すぐに現れる症状(急性影響)②長い間かかって現れる症状(長期影響)③周りに及ぼす影響(環境タバコ煙の影響)について把握する

強化要因

家族知識(20個)考え方(37個)態度(13個)その他(2個)

図3.5年生の感想の分類

-67-

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(急性影響)」、「長い間かかって現れる症状(長

期影響)」、「周りに及ぼす影響(環境タバコ煙

の影響)」の三つの影響を紹介し、グループ内

であがったアイディアを三つに分類させた。分

類したアイディアは、三つに区切られた画用紙

にタバコの煙による影響別にそれぞれ貼った。

どちらの影響ともとれるアイディアもあり、児

童は分類作業に少し手間取っていた。授業者ら

に加え、担任、養漉教諭などが協力してからは、

グループワークも流れ始めた様子であった。当

初、タバコの煙による影響の確認をクラス全体

で行う予定であったが、各グループの発表後の

方が、自分たちのグループの分類と比較して、

その適切性を確認しやすいと授業者が判断し、

確認作業を次STEPに移行した。

4)STEP4各グループの発表

(2)喫煙者である家族に対してタバコ、をやめ

てもらいたい気持ちを持つ

(3)5月31日は「世界禁煙デー」であることを知ってもらう。

(4)家族にも喫煙やタバコの害に影響について

考えてもらう(お土産で)

授業内容

STEP1本時の説明及びアイスプレイク(自己

紹介).

STEP2「みんなが知っているタバコの害」についてのB・S

STEP3タバコの煙による影響の確認

STEP4各グループの発表

STEP5タバコの煙による影響の説明

STEP6まとめと家族へのメッセージ

(2)授業の展開過程及び結果

1)STEP1本時の説明及びアイスブレイク

(自己紹介)

B・Sの方法及びルール確認の後、「5月31日っ

て何の日?」というテーマでB・Sの練習をし

た。そこでは児童に口頭で答えてもらい、授業

者が板書するという形式をとった。「世界禁煙

デー」について知っている児童はなく、「5月

の最後」「父の日」「ごさい(531)」などの声は

聞かれたが、授業者側が意図したアイディアは

あがらなかった。そこで、5月31日は「世界禁

煙デー」であることを告げた。児童は、禁煙ブー

ムなどによりタバコに対しての関心が高いため

か、ワークに参加しようとする雰囲気が感じら

れた。

2)STEP2「みんなが知っているタバコの害」

についてのB・S

各グループ内で出席番号の一番若い児童をリー

ダーに任命し、「みんなが知っているタバコの

害」について3分間のB・Sを行った。その後、

リーダーを中心にB・Sで出たグループ全体の

アイディアを数え、グループ毎に発表させた。

クラス全体では100個以上のアイディアがあり、

最もアイディアの多かった1グループに対し全

員で拍手を送った。出されたアイディアの内容

を把握するため、リーダーを中心にグループ内

の同様のアイディアをまとめた。

3)STEP3タバコの煙による影響の確露

「みんなが知っているタバコの害」のB・S

を元に、タバコの煙による「すぐに現れる症状

表6.1グループによる影響の三分類

リーダーを中心に全てのグループに発表させ

る予定であったが、分類作業などに時間がかかっ

たため、「みんなが知っているタバコの害」の

B・Sで、最もアイディアの多かった1グルー

プに代表で発表してもらった(表6)。

ここで、発表されたアイディアと各グループ

のアイディアを比較し、分類の適切性を確認し

た。その際、児童の方から「中毒になるはど

こになる?」「酸欠状態になるって何ね?何で

すか?」などの質問があり、児童の授業に対す

る積極的参加がうかがえた。

-68-

すぐに現れる症状(急性影響)

.やめられなくなる・洋服が臭くなる・頭が悪く

なる.pの中が汚くなる.酸欠状態になる・体に

悪い

長い間かかって現れる症状(長期影響)

・赤ちゃんに影響がある・肺が汚れる.ガンにな

る・胃が悪くなる.歯にヤニがつく・背が伸びない・太る

周りに及ぼす影響(環境タバコ煙の影響)

・目にしみる.シンナーがある・火事になる・周

りの人に悪影響・臭い

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授業を終了した。

(3)家族への手紙と家族との話し合いの感想

前提要因では、知識(37個)として、「タバ

コを吸うと、肺に悪い」「運動能力も下がる」

「周りの人が吸っている煙の方が、自分で吸う

より害がある」などがあがった。考え方には、

前提要因

表7.クラス全体であがった「みんなが知っているタバコの害」の分類結果

知識(107個)考え(24個)態度(19個)

強化要因 タバコに関する行動

家族(72個)知識(20個)考え方(37個)態度(13個)その他(2個)

図4.6年生の感想の分類

「あまりタバコは吸ってもらいたくありません」

「やっぱりタバコはだめだと思った」「タバコを

いっぱい買ってお金のムダになるんじゃないか

と思います」などがみられた。タバコに対する

態度として、「家の中では吸わないでね」「やめ

られないのもわかるけど、家の中であまり吸わ

ないでよ」「(病気に)ならならないためにもタ

バコは絶対吸わないようにしよう」などがあっ

た。

強化要因では知識として、「若い女の子がタ

バコを吸うと、生まれてくる赤ちゃんは、病気

をもって生まれてくることがある」「20代まで

は成長期なのでタールやニコチンなどで害を及

ぼし、成長を止めたり、遅らせたりする」「体

力にも吸っている人と、吸っていない人との差

が出る(息切れ、動悸など)」などがあがった。

考え方には、「母さんと話したこと:タバコを

吸っても肺や血管などのいろいろな病気になる

だけで、良いことは一つもないことです」「お

父さんと話したこと:タバコを吸った人が、吸

い殻を道に捨てたりすると地球が汚れるので良

くない」「両方と話したこと:タバコはいろい

ろな害があるので、親戚のおじさんたちも絶対

吸わない方がいいと話し合った」などがみられ

た。態度として、「家の中ではタバコを吸わな

いで家の外でタバコを吸っています」があった。

5)STEP5タバコの煙による影響の脱明

タバコの煙による影響の確認で児童からあがっ

た質問がSTEP5の内容に触れてきたので、

「タバコの煙による影響の説明」に入った。教

材(イラスト)を使い、タバコの煙による急性

影響の説明を行った。イラストを使った説明が

理解しやすかったのか、授業後の感想において、

ここで扱った知識の感想が多くあがっていた。

急性影響の説明では、人体のどの部分が主に

影響を受けるかの具体例を示しながら、授業を

展開した。環境タバコ煙の影響は、主流煙と副

琉煙に含まれる有害物質の量の差から説明した。

その際、大人に比べ、若年者はタバコの煙によ

る悪影響は大きくなること、未成年の喫煙は、

法律で禁じられていることを説明する予定であっ

たが、法律のことには触れないまま、タバコの

煙の影響の説明だけで終ってしまった。

6)STEP6まとめと家族へのメッセージ

急性影響と環境タバコ煙に重点をおいてタバ

コの煙による影響の説明をまとめた。最後に、

「拝啓お家の人へ:タバコを吸っていること、

吸っていないことについて」の手紙を書くこと、

家庭で家族とタバコについて話し合い、その感

想を聞いて書く、ということを宿題として伝え、

-69-

すぐに現れる症状(急性影響)

・酸欠状態になる.洋服が臭くなる.火災発生.

ロの中が汚くなる.脳の活動が悪くなる.歯が汚くなる.頭が悪くなる.身体に悪い.頭が痛くなる.やめられなくなる.タバコを吸ったら身体に

影響良くない

長い間かかって現れる症状(長期影響〉

・赤ちゃんに影響がある・肺が汚れる.がんになる・胃が悪くなる.病気にかかりやすい.歯に、

やにがつく・煙でぜんそくになる.タバコを吸わ

ずにはいられなくなる.病気1N死亡・歯が汚く

て、ボロボロになる・死にいたることがある(早

く死ぬ)・ロが臭くなる・脳が悪くなる.抵抗力

が悪くなる.中毒になる・太る・背が伸びない

周りに及ぼす影響(環境タバコ煙の影響)・周りがタパ.臭くなる.周りに迷惑・火事にな

る・他人に迷惑がかかる・赤ちゃんに影響が出る.

タバコは臭い・息くせエ・目にしみる.シンナー

がある

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ツ石松」「バカ殿」「三瓶」「志村けん」などが

あがり、テレビ番組中に喫煙することもある芸

能人の名前もみられた。

3)STEP3タバコ広告に対するイメージ

(印象)をあげ、良いイメージ

と悪いイメージに分類する

B・Sのルール確認の後、各グループにタバ

コ広告のチラシを配布した。イメージ(印象)

の例を説明し、「タバコ広告からどのようなイ

メージ(印象)を受けるか」について3分間の

B・Sを行った。1グループ63個、2グループ

61個、3グループ43個、4グループ48個、5グ

ループ45個、6グループ35個のアイディアがそ

れぞれあがった。

最も多くアイディ表9.タバコのイメージ

2.5年生「広告分析の授業」

「知識の授業」をペースに、5年生を対象に

「広告分析の授業」を実施した。以下に指導案

を提示し、授業を録画した記録も参考にしなが

ら、授業の展開過程を児童の反応を中心に追っ

ていく.

(1)指導案

表8.5年生「広告分析の授業」指導案(抄)

目標

(1)子どもたちは、タバコ広告から伝わってく

るイメージ(印象)について考える

(2)子どもたちは、タバコ広告で使われている、

人を引き付けるためのテクニックを明らかに

する

(3)子どもたちは、タバコ広告のイメージと喫

煙に関する事実を対比する

授業内容

STEP1アイスプレイク(前回の復習を兼ねて)

STEP2導入(本時の内容の大まかな説明)

STEP3タバコ広告に対するイメージ(印象)

をあげ、良いイメージと悪いイメージに

分類する

STEP4タバコ広告で使われているテクニック

を砿腿する

STEP5広告の銃み取り方を砿認する

STEP6授業の感想・意見を轡く

アを出したlグルー

プに対し、皆で拍

手を送った。

:;-吟:|:

各グループでリーダーを中心に、グループ内

のアイディアを「良いイメージ」と「悪いイメー

ジに分類した。グループワークにも慣れてきた

のか、5分程で全てのグループが分類作業を終

えた。授業者が「良いイメージと悪いイメージ

とでは、どちらが多く出てきたか」を問うと、

「良いイメージ(58個)」が「悪いイメージ5個」

より圧倒的に多かった(表9)。さらに、「タ

バコはどういうものだったか」を尋ねた際には、

「悪いもの」という答えが多く出てきた。

4)STEP4タバコ広告で使われているテク

ニックを確認する

タバコは悪いものとわかっていながら、広告

には良いイメージが多くみられる。この矛盾を

解きほぐすためにまず、広告の良いイメージを

グループ毎に書き出させた.続いて、タバコを

売る側は、良いイメージを持たせるためにどの

ような工夫を用いているか書き出してもらった。

クラスの代表として、1グループに「KOOL」

の広告を紹介させた。その際にあがったテクニッ

クは、「カッコよく見せている」「高級みたいに

見える」「プレゼントを付けたり、キャンペー

ンを行ったりしている」「周りの景色をキレイ

に見せている」「喫煙の注意事項を見えにくく

(2)授業の展開過程及び結果

1)STEP1アイスブレイク(前回の復習を

兼ねて)

グループリーダーを前週のリーダーの右隣に

座る児童に任せた。「知識の授業」の内容を思

い出してもらうため、喫煙による三つの影響の

確認をした。めまい、吐き気、ノドの痛みなど

主に、急性影響について児童から声があがった。

そこで、喫煙を続けることで長期影響が生じ、

喫煙者よりも周囲の人が悪い影響を受ける環境

タバコ煙の影響を全体で復習した。

2)STEP2導入(本時の内容の大まかな説

明)

タバコを売る側は、タバコを売るためにいろ

いろなテクニックを使っている。時にはテクニッ

クの一つとして芸能人を利用することもあるた

め、「芸能人(有名人)でタバコを吸っている

印象の強い人は」というテーマでB・Sを行っ

た。「宮崎験」「美川憲一」「明石家さんま」「ガッ

-70-

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授業当日は7月1日であり、偶然にもタバコ

税の上昇によりタバコの値段が上がる日であっ

たため、児童に「今日からタバコはどうなるか」

を尋ねたところ、「高くなる」「値段が上がる」

などといった声が多く聞かれた。

6)STEP6授業の感想・意見を書く

本時の学習内容を基に、1.タバコ広告でわ

かったこと、2.タバコに対する私(僕)の考

え、3.授業全体の感想を、授業後に宿題とし

て書かせた。

(3)授業の感想・意見

タバコ広告でわかったこととして、目標の三

番目に掲げた「『子どもたちは、タバコ広告の

イメージと喫煙に関する事実を対比する』に関

連するもの」、「広告に使われているテクニック

を理解しているもの」、「タバコに関する知識に

ついて述べているもの」の三つに分類できた。

各項目の数は順に5個、25個、2個であった。

「『子どもたちは、タバコ広告のイメージと喫煙

に関する事実を対比する』に関連するもの」と

して、「タバコを売る会社は、タバコはいいイ

メージと思わせるために、広告をキレイに見せ

ていることがわかった」「タバコのイメージを

良いイメージにしている。注意を見えにくいよ

うにしているということがわかった」などがみ

られた。「広告に使われているテクニックを理

解しているもの」は、「おいしそうに見せてい

る。ポイントをためて、自転車などがもらえる

ようにしている」「①タバコを格好良く見せて

いる。②悪いところを小さくしている。③吸っ

ても害のないように見せている」などがあがっ

た。「タバコに関する知識について述べている

もの」としては、「タバコはとっても危ない」

「ガンになる。売る」がみられた。

タバコに関する私(僕)の考えは、四つに分

類できた(表11)。一つ目は、「タバコに関する

私(僕)の考え」(11個)、二つ目は、「喫煙を

しないという私(僕)の意思」(5個)、三つ目

は、「他人に対する禁煙の勧め」(3個)、四つ

目に「環境(政策、法規等)に関する私(僕)

の考え」(18個)である。「タバコに関する私の

考え」として、「タバコは、体に悪いと思う」

表10.タバコ広告に使われている工夫の分類

している」などであった。

ワークシートに書かれたタバコ広告に使われ

ている工夫を三つに分類した(表10).-つ目

は、「広告の分析ができているもの」(21個)、

二つ目は、「広告の分析ができていないもの」

(5個)、三つ目が、「その他」(2個)である。

「分析ができている」とは、タバコを良いイメー

ジにするために、売る側が工夫しているテクニッ

クを理解していること、「分析ができていない」

とは、そのテクニックを理解していないことと

定義した。また、「その他」とは、広告の分析

とは異なるものとして別に、分類を行った。

「広告の分析ができている」ものとして、「プレ

ゼントで買わせようとしている」「格好良く見

せようとしている」「格好良い男性を使ってい

る」などがあがった。「広告の分析ができてい

ない」ものとして、「注意の広告もある」「周り

をキレイに見せている」「すごい人みたいにす

る」などがあった。「その他」として、「キレイ

な景色」「灰皿が隣にある」などがみられた。

5)STEP5広告の読み取り方を確認する

クラス代表の分析と他のグループであがった

分析内容を基に、タバコを売る側のテクニック

について考えた。タバコ広告には必ず、吸い過

ぎに注意すること、未成年者の喫煙は法律で禁

じられていることが記されている。しかし、タ

バコを売る側は、タバコ広告を作る際に、その

ような注意事項は目につきにくいようにし、爽

やかさ、格好良さ、落ち着いた感じなどを見た

人に伝えるようにレイアウトを工夫している。

また、テレビで著名人が喫煙することも、喫煙

を勧めるための一つのテクニックという見方が

できる。私たちは、喫煙によって生じる急性影

響、長期影響、環境タバコ煙の影響といった知

識に基づき、タバコ広告の矛盾点を見抜く必要

があることを説明しながら全体で確認した。

-71-

分析できている

、できていない

21個

5個

その他 2個

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わかりました」「病気になるし、お金の無駄に

なることがわかりました」といった感想がみら

れた。「広告分析についての理解」は、「芸能人

もわからないうちに、タバコの宣伝をしている

ようなもの」「タバコの広告は、悪いものを良

いものに見せようと、タバコを作っている会社

が、いろいろな工夫をしていることがわかりま

した」「このチラシ(広告)を出してほしくな

い」などがあがった。「授業のわかりやすさ」

では、「タバコについてよくわかりました」「とっ

てもわかりやすく教えてくれたので、タバコの

害や、タバコを吸ってはいけないということが

よくわかりました」「この授業は、10代の人に

も30-40-50代の大人にもわかりやすいので、

すごかったです」といった嬉しい感想があった。

「タバコに対する態度について」は、「タバコは

絶対吸いたくないと思った」「タバコは吸って

いけないと教えることは良いことだと思う。やっ

ぱり、タバコは吸わない方が良いということが

わかった」などがみられた。「授業参加につい

て」は、「今日はいっぱい書けたから良かった」

という参加型の授業を楽しむ声があった。

一方、授業者側の反省材料である授業の悪かっ

た点として、次のような授業に対する批判がみ

られた。それらは、クラスの全ての児童をうま

く授業に参加させきれなかったためか、「暇だっ

た」、授業者側の力不足で「知識の授業」、「広

告分析の授業」ともに45分の授業時間をオーバー

してしまい、「いつもなぜに休み時間を10分と

る!」といった当然の意見であった(表12)。

表11.タバコに関する私(僕)の考え

数個

個38

個Ⅱ

「害が多い」「金を払っているのに、害がある」

などがあがった。「喫煙をしないという私(僕)

の意思」として、「タバコを吸わないで、ちく

わをタバコと思って吸う」「タバコを吸うと肺

が黒くなり、早く死ぬようになるから、吸わな

いようにしたいです」「絶対吸いたくない」な

どがあった。「他人に対する禁煙の勧め」とし

て、「私は、絶対大人になったら子どもにタバ

コを吸わさないようにしたい」「タバコを『吸

うな』と言う」「煙出すなや!まず、吸うな!」

などがみられた。「環境(政策、法規等)に関

する私(僕)の考え」として、「タバコを吸う

と、いろいろな病気になったり早く死んだりし

てしまうので、タバコの値段を2000円ぐらいに

したら、タバコを吸う人は、少なくなると思う」

「タバコは、なければいいのに。罰金とかすれ

ばいいのに」「売らなければいいのに。高くて

いいのに」「早く、この世界からタバコを消し

たい」などもあった。

授業全体の感想は、「タバコの害について」

「広告分析についての理解」「授業のわかりやす

さ」、「タバコに対する態度について」「授業参

加について」を授業の良かった点、授業に対す

る批判を授業の悪かった点として分類した。

授業の良かった点として「タバコの害につい

て」は、「この授業で、タバコが人間の体にど

れだけ悪いかと力】がよくわかりました。私は、

この世にタバコという存在がなくなったらいい

と思いました」「タバコを吸ったら、ダメだと

3.6年生「断るスキルの授業」

「知識の授業」をペースに、6年生を対象に

「断るスキルの授業」を実施した。以下に指導

案(表13)を提示し、授業を録画した記録も参

考にしながら、授業の展開過程を児童の反応を

中心に追っていく。尚、授業の中で児童がつくっ

表12.「広告分析の授業」の実施後の感想

良かった点

悪かつた点

-72-

分類項目 個数

タバコに関する私(僕)の考え 11個

喫煙をしないという私(僕)の意思 5個

他人に対する禁煙の勧め 3個

環境(政策、法規等)に関する私(僕)の考え 18個

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たR・Pのそれぞれのセリフは、アサーティプ・

トレーニング法のコミュニケーション対応に基

づき分類した。

(1)指導案

の影響)」の三つの影響が生じることを全体で

読み合わせながら確認した。児童は、主流煙よ

りも副流煙である環境タバコ煙の影響が3倍か

ら5倍大きくなることを記憶しており、「知識

の授業」によって、タバコについて一定程度の

知識を得ているように思われた。

3)STEP3「タバコを吸うきっかけ」

「タバコを吸うきっかけってな~に?」とい

うフラッシュカードを黒板に貼り付け、児童に

口答してもらった。「脅されて吸う」「大人なら

わかるかな」「誘われて吸う」「友だちが吸って

いるから」「自分で吸う」「かっこいいから吸う」

「人に吸って~って言われて吸う」「見た目」

「お父さんに誘われて」など、多くのアイディ

アがあがった。「お父さんに誘われて」という

アイディアに対しては、「どんな親が」という

疑問がすぐにあがっていた。タバコを吸うきっ

かけの意見が多く出てきたことから、そのよう

なきっかけに鴎されなければタバコは吸わない

のかを尋ねると、「うん。吸わない」という答

えが複数寄せられた。

4)STEP4「ロールプレイの進め方の説明」

R・Pのワークシートを配布し、R・Pの説明

と注意事項の確認を行った。その後、授業者ら

が、友人にタバコを勧め、勧められた方は自分

の意思をハッキリと相手に伝えて断るというR・

Pを実演し、児童にはワークシートのシナリオ

を追いながら見てもらった。児童は時節笑いな

がら眺めているようであった。

5)STEP5セリフをつくり、各グループで

ロールプレイを練習する

表14.R・Pの練習で出てきた例

表13.6年生「断るスキルの授業」指導案(抄)

目標

子どもたちは、友だちからタバコを勧められた

場合、自己主彊的に対処するためのスキルを習得

する

授業内容

STEP1アイスプレイク

STEP2前週の意見の確認

STEP3「タバコを吸うきっかけ」

STEP4ロールプレイの進め方の説明

STEP5セリフをつくり、各グループでロールプレイを練習する

STEP6各グループの代表が発表を行う

STEP7断り方のいろいろな例の説明

STEP82時間の授業の感想を書く

(2)授業の展開過程及び結果

1)STEP1アイスブレイク

自己紹介の後、アイスブレイクとして「断る

スキル」の紹介を行った。授業者が、「体育好

きな子」と問いかけた。男子児童を中心に勢い

よく、「はい、はい」とあちこちから声があがっ

た。そこで、一人の男子児童に授業者が、「じゃ

あ、一緒にフォークダンスを踊ろうか」と尋ね

た。その児童は驚いた様子で、「いいよいいよ、

いいよ」と身振りも加えて断った。同じく、フォー

クダンスに誘われた時に今、何をしたかを問う

と、「断る」という返答があった。そこで、本

時は「断る」ことについて学習することを告げ

た後に、タバコのイメージをクラス全体に聞く

と、「悪いさ-」「悪い」という声が一斉にあがっ

た。そこで授業者は、皆が悪いと思っているタ

バコを勧められた時に断る練習をすることを伝

えた。

2)STEP2前週の意見の確認

前週の「知識の授業」の際に行った「タバコ

の影響」についてのB・Sのクラス全体の意見

を授業者側がまとめ直した資料を配布した。タ

バコには、喫煙によって「すぐに現れる症状

(急性影響)」、「長い間かかって現れる症状(長

期影響)」、「周りに及ぼす影響(環境タバコ煙

ムネオ:「どう吸ってみれば?」C:「タバコ吸うわけ~、やばいんじゃない?」

ムネオ:「雛も見てないからばれないよ~・大丈夫。」

Cl:「いや~、いいよ~。」C2:「100円渡して先生に言うぞ。」C3:「吸わない。」C4:「嫌だ。誰も見てないからって吸うのは

嫌。」C5:「大丈夫じゃない。」

ムネオ:「友だちだろ?」C1:「※聞き取れなかった。」C2:「友だちじゃねえよ、てめえなんか。」

:iil禦灘難い合ネオも止めれば?」C5:「友だちじゃない。」

-73-

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ワークシートにセリフを書き込み、各グルー

プでR・Pの練習を行った。子どもたちがタバ

コを勧める役を演じることは、喫煙を開始する

恐れを高くすると言われている(高石ら、1993)。

そのため、児童には喫煙を勧める役を演じさせ

ず、それは授業者、担任、養護教諭を含む大人

が演じることとした。3分間の練習の後、グルー

プ内で最も良い断り方をしている児童を、各グ

ループで相談して代表に選出させた(表14)に、

練習の中で聞かれた例を提示する。尚、Cは児

童を表し、共通部分はCのみで表現した。C1

からC5は5人の児童によるセリフである。

児童がワークシートに記入した断り方を六つ

に分類した(表15)。六つの分類は、-つ目に、

タバコを吸わないという意思を伝えると同時に

吸わない理由を述べたもの。二つ目に、タバコ

を吸わないという意思は伝えているが、吸わな

い理由を述べていないもの。三つ目に、タバコ

を吸わないという意思は伝えていないが、吸わ

ない理由を述べたもの。四つ目に、吸わない意

思を伝えず、吸わない理由も述べていないもの。

五つ目に、攻撃的に断っているもの。六つ目に、

相手に禁煙を求めているものからなる。実際の

具体例を表16に示す。

6)STEP6各グループの代表が発表を行う

表17.各グループの代表によるR・Pの例

「どう吸ってみれば?」

「タバコ吸うわけ~、やぱいんじゃない?」「誰も見てないからばれないよ~・大丈

夫。」

「友だちにならないぞ~。」

「母ちゃん言うぞ、コラ。」「やだよ。もう1度言ったらシバクぞ。」

「タバコ吸いたくないからいいよ。」「背縮むから嫌だよ。」

「友だちだろ?」

もつさい、しつこいんだよ、てめえ。」「お前なんか友だちじゃねえよ。」「てめぇなんか友だちじゃない。ざけん

じやねえよ。」

「友だちのことも考えているなら、タバ

コ吸ってって誘うのは友だちじゃないさ゜」「友だちだからって勧めないで。」

ムネオ:

G:

ムネオ:

表15.断り方の分類

私の意思

有一麺一烟

無一晒一咽

①中●●■□●●●●●●●■●●BG

12345オll23

GGGGGネGGG

吸わない理由

攻撃的な発言あり

禁煙を求める

銅一咽

表16.断るスキルのタイプの分類

45

GG

R・Pの練習終了後、各グループで代表者を

決め、その代表者による発表を行った。ここで

は先に、各グループ代表の例を提示する

(表17)。

-74-

・見てる、見てない関係ないじゃないか。絶対吸

わないよ。

タバコを吸わないという意思は伝えていないが、

吸わない理由を述べたもの。

・誰も見てないからとか関係ないよ-゜それに夕

バコは体に悪いもん。

・誰も見てないからって、吸ってたらだめだよ。

.ばれたらど_する?やくつすよ・

吸わない意思を伝えず、吸わない理由も述べてい

ないもの

・うっさいよ。

攻撃的に断っているもの

・フザけんじやね一ぜこのやる_。先生に言いつ

けてやる一。この大馬鹿野郎。

・ヤダ1タバコはくせ_し高いぞ-.その前に、

煙ではばれるぞ。つ-かムネオ、あなたの金で

買ったのか-。

・タパコを吸うのは友だちじゃねエー。絶交だぁ弁~

相手に禁煙を求めているもの

・ガンとかの病気になるから嫌だ。君もやめた方

がいいよ。

・自分が吸っていても、人に勧めるのは良くない

ことだよ・悪いこと言わないからやめたら。

タバコを吸わないという意思を伝えると同時に、

吸わない理由を述べたもの

・タバコなんて人に迷惑かけるし自分にも悪いか

ら吸わない。

・誰も見てなくても、体に悪いから遠慮しとく~。

・成績落ちるだる・だから吸いたくないよ。

タバコを吸わないという意思は伝えているが、吸

わない理由を述べていないもの

・友だちでも嫌だよ-。だって、タバコは吸わないって決めてるもん。

・タバコ吸いたくないからい-よ。

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Gはグループ代表者の共通部分、各グループ

の代表者をG1からG5で表している。次に、

授業者が選出したクラス代表者の例を提示する

(表18)。

Iま、「オレだ」という声が複数聞かれた。はっ

きりタイプとけんかタイプの相違点をうまく理

解できていないように思われたので、代表の児

童はどちらのタイプになるかを尋ねた。その問

いに答えた児童の全てが「はっきりタイプ」と

答えた。児童から、「相手が団体の場合や囲ま

れた場合はどうするのか」という内容の質問が

あった。授業者は、相手がどうという問題では

なく、他者との関係を崩さずに自分の意思を伝

えることが大切であることを伝えた。けんかタ

イプで断ると「けんかになる」「絶対キレる」、

弱気タイプで断ると「友だちにはなれるが、吸

わされるかもしれない」という感想があがった。

けんかタイプで断った児童と代表の児童に前

に出てもらい、それぞれに感想を尋ねた。けん

かタイプで断った児童は「微妙」、代表の児童

は「まあこれで良かったかな」とそれぞれ答え

た。

8)STEP82時間の授業の感想を書く

本時の学習内容を基に、1.「断るスキルの

授業」で感じたことやわかったこと、2.タバ

コに関する私(僕)の考え、3.授業全体の感

想を書いた。

(3)授業の感想・意見

表18.クラス代表児童によるR・Pの例

ムネオ:「どう吸ってみれば?」

代表:「タバコ吸うわけ~、やぱいんじゃない?」ムネオ:「誰も見てないからばれないよ~・大丈

夫。」

代表:「人が見ている見ていないなんて関係ないだろ。人体にも影響があるから一人で

吸えばいいだる・」

ムネオ:「友だちだろ?」代表:「自分が吸っていても人に勧めるのは良

くないことだよ。悪いこと言わないから

止めたら。」

7)STEP7断り方のいろいろな例の説明

iiliiliijijliiiiIlliiil〕I 錨ijliiilj○

表19.タバコの断り方の授業でわかったこと

数個

他者の権利へ 他者への尊重と梅他者への尊重より

の尊重に欠ける利を守るも自己防衛的で他者の権利も守って

ない

図5断り方のタイプ

アサーティプ・トレーニングのコミュニケー

ションタイプに基づき、タバコを勧められた際

の断り方についての説明を行った。コミュニケー

ションタイプは、アグリッシブな自己表現(以

下、けんかタイプ)、アサーティプな自己表現

(以下、はっきりタイプ)、受け身的でノンアサー

ティプな自己表現(以下、弱気タイプ)に分類

した(図5)。けんかタイプについて話すと、

児童から「ジャイアンタイプだ」という声があ

がった。続いて弱気タイプ、はっきりタイプの

説明を行ったが、はっきりタイプの説明の際に

「断るスキルの授業」で感じたことやわかっ

たことを、四つに分類した(表21)。一つ目は、

「はっきり断ることについて」(15個)、二つ目

は、「けんかタイプで断ることについて」(1個)、

三つ目は、「断り方について」(3個)、四つ目

は、「その他のこと」(9個)である。

「はっきり断ることについて」として、「タ

バコを勧められたら、思ったことをはっきり言

えば良いことがわかった」「タバコを断る時は、

はっきり言う方が良いと思った」「けんかタイ

-75-

項目 ・個数

はっきり断ることについて 15個

けんかタイプで断ることについて 1個

断り方について 3個

その他のこと 9個

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プとかよりもはっきりタイプの断り方のほうが

友だちとかをなくさなくてすむことがわかった」

などがあがった。「けんかタイプで断ることに

ついて」は、「ネチネチした人にはいっそのこ

と、けんかタイプですっきりさせた方が良いか

もしれない。あと、いろんな断り方があるなぁ

とも思った」という感想がみられた。「断り方

について」としては、「タバコの断り方は、け

んかタイプ、弱気タイプ、はっきりタイプがあ

ることがわかった。マジでタバコは吸いたくな

い」「いろんな断り方があると思った。誰が勧

めても断れる方法がわかった」「あ-あっ、こ

ういう断り方があったんだ」などがみられた。

タバコに対する私(僕)の考えは、四つに分

類できた(表20)。-つ目は、「タバコに関する

私(僕)の考え」(13個)、二つ目は、「喫煙を

しないという私(僕)の意思」(10個)、三つ目

は、「他人に対する禁煙の勧め」(1個)、四つ

目に、「環境(政策、法規等)に関する私(僕)

の考え」(4個)である。「タバコに関する私

(僕)の考え」として、「タバコを吸うと、自分

にも悪いし、周りの人にも迷惑がかかるから悪

い」「タバコを吸ったら、体に悪いからこわい

なと思いました」「タバコは臭いし、百害あっ

て一利なし。しかも、ガキ(子ども)が吸ったら、

害が強くなると思う」などがあがった。「喫煙

をしないという私(僕)の意思」として、「タ

バコは、病気になるからヤダ」「タバコは体に

悪いので吸わない」「タバコは、人体とかにとっ

ても悪影響を受けるので、吸いたくないと思っ

た」などがみられた。「他人に対する禁煙の勧

め」は、「タバコを吸ったら、体に悪いから、

やめた方がいい」というものであった。「環境

(政策、、法規等)に関する考え」として、「人体

にも影響があるし、なによりタバコの煙で地球

が汚れるのは許せない」、「タバコは、20歳未満

禁止と言ってるけど、未成年者にも簡単に買え

るような自動販売機を取りつけるのは、超おか

しいと思います。つじつまが合わない」「タバ

コは、吸っても得はしないから、吸わない方が

良いと思う。これから、タバコを吸わない人が

増えたら、良いと思う」などがあがった。

喫煙防止教育を受けての感想も、「授業展開

について」(4個)、「断り方について」(7個)、

「前提要因に関すること」(5個)、「その他のこ

と」(12個)という四つに分類できた(表21)。

「授業展開について」として、「大学の人の説明

が分かりやすかった」「いろいろ聞いたり、実

演したりして楽しかった」「断り方など、いろ

いろな事がわかった。ちょっとR・Pもできて、

緊張したけど、楽しかった」などがあった。

「断り方について」としては、「タバコを勧めら

れた時にどうするかわかった」「いろいろな断

り方や良い断り方がわかって良かった」「タバ

コのことがよくわかり、断り方などを習って、

とても面白かった」などがみられた。「前提要

因に関すること」としては、「タバコの害のこ

とがもっとわかって良かった」「さらにタバコ

はダメだと知った」「タバコがとても体に悪い

ことがわかった」などがあがった。「その他の

こと」は、「タバコについていろいろ知らない

こともあって、新たに発見をした」「タバコの

ことがよくわかったし、面白かったです」「楽

しかった。またやってほしいです」「タバコに

ついていろいろわかった」などであった。

表21.喫煙防止教育を受けての感想

表20.タバコに対する私(僕)の考え

数個

-76-

項目 個数

授業展開について 4個

断り方について 7個

前提要因に関すること 5個

その他のこと 12個分類項目 個数

タバコに関する私(僕)の考え 13個

喫煙をしないという私(僕)の意思 10個

他人に対する禁煙の勧め 1個

環境(政策、法規等)に関する考え 4個

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、考察 表22参加学習のメリット(JKYB・2000))

●子どもたちは、自分たちの経験や知識をもとに、

自らの力で解決の方法を見つけ、実際に畷題を

解決する経験を頼むことによって、自己有能感

が高まる。

●子どもたちは、共同作業の中でお互いの長所や

能力を認め合うことによって、自己尊重感が高

まる。

●子どもたちは、相互作用が起こる過程において

自他の意見を鯛整する機会を持ち、対人関係能

力が育つ

1.「知識の授業」の考察

4年生

(1)健康教育の評価

Ⅲの1-1に基づき、児童の反応に視点を置

いた分析から、授業展開の方法が授業の目標を

達成するのに十分であったか否かを検討してい

く。

目標の(1)であった「知識の習得」は達成でき

たかをライフスキルの展開の留意点、参加学習

のメリットの観点から考察する。

皆川(1999)は、ライフスキルトレーニング

の展開いかんによってトレーニング効果が左右

されることを指摘し、以下の三つの留意点を提

示している。一つ目に「大切なアイスプレイク」、

二つ目に「大切な子ども参加型トレーニング」、

三つ目に「大切なシェアリング」である。「大

切なアイスプレイク」は、気持ちをもりあげる

こと、楽しく集中することに留意する。「大切

な子ども参加型トレーニング」は、授業者は、

司会者・援助者に徹することに留意し、必要に

応じてコメントする。「大切なシェアリング」

はみんなでふりかえり、得られた知識やスキル

を共有することが留意される。

「知識の習得」は本授業において、皆川が提

示したライフスキルトレーニングにおける三つ

の留意点を考慮したプログラムになっていた。

しかし、後述するようにB・Sの発問が適切で

なかったこと、児童がB・Sを知らなかったこ

とがあり、発問の説明、B・sの説明に多くの

時間が費やされた。発問は「みんなが知ってい

るタバコの影響」であり、「影響」という言葉

は4年生が日頃使い慣れている言葉ではなかっ

た。「みんなが知っているタバコの害」のよう

に表現を変える工夫が必要であろう。

JKYB(2000)は参加型学習のメリットを示

した(表22)。B・Sが正確に行われることは、

参加型学習のメリットを保障することになると

考えられる。B・Sの説明に時間を費やしたこ

とは、参加学習のメリットを保障するためにも

必要であったと考える。今回のように、対象者

がB・Sを知らない場合には、その説明に時間

をとることが必要であろう。また、日頃からB・

Sに慣れることも必要だと思われる。

本授業では、タバコの煙による影響(急性影

響、長期影響、環境タバコ煙の影響)の分類を

した。発問の説明、B・Sの説明に多くの時間

が費やされたことから時間が足りなくなり、シェ

アリングを十分に行えなかった。また、影響の

分類における正誤の確認を行わなかったため、

それを誤認したままの児童がいることが予想さ

れる。影響の分類における正誤の確認が短時間

でできる教材を作ることが必要であろう。

目標の(1)であった「知識の習得」については、

ライフスキルトレーニングの展開が不十分であっ

たこと、児童の誤認を生んだ可能性があること

から、十分に達成できたとはいい難い。発問の

修正、イラスト等の教材使用により、目標達成

の可能性は高くなるであろう。

次に目標の(2)であった「喫煙者である家族に

対してタバコをやめてもらいたい気持ちを持つ」

と目標の(4)であった「家族にも喫煙やタバコの

害に影響について考えてもらう」について考察

する。

小川ら(1985)は、小学生や中学生は、好奇

心から自宅で、家にあるタバコを一人または複

数で喫煙する危険性が高いことを報告している。

また、喫煙開始動機として、「好奇心」「なんと

なく」「わからない」などの理由が多く、次い

で「友だち」、「先輩」、「親、家の人」、「兄姉」、

「その他の人」に勧められて、といった対人関

係による理由が多い。

家族への手紙と家族と話し合ったこととで、

-77-

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Sで、「5月の最後の日」など、冗談交じりの

発言が聞けたことは、アイスプレイクの趣旨を

はずれず、児童の緊張緩和に役立ったとみても

良いだろう。

小学校指導要領体育編(1999)の第3章第5

学年・6学年の目標及び内容で、「喫煙につい

ては、せきが出たり心拍数が増えたりするなど

呼吸や心臓のはたらきに負担をかけるなどすぐ

に現れる影響や、長い間続けると肺がんや心臓

病などにかかりやすくなるなどの影響があるこ

と、また、受動喫煙により、周囲の人々にも影

響を及ぼすことを理解できるようにする。なお、

ここでは、低年齢からの喫煙は特に害が大きい

ことについても取り扱うようにし、未成年の喫

煙は法律によって禁止されていることについて

触れるようにする」とうたわれている。

世界禁煙デーが制定されていることは、喫煙

は自他のからだや環境に悪いという社会規範で

あり、児童の喫煙しない態度を補完するものと

考える。本授業では行わなかったが、日本の法

律で未成年者の喫煙が禁じられていることを児

童に伝えることが必要であろう。

本授業では、タバコの害のB・Sを行う前に、

タバコに対するイメージのB・Sを行った。タ

バコに関する知識に留まらず、タバコに対して

良いイメージを持っている児童に、実際のタバ

コの害と対比すると、決して良いイメージには

ならないということを理解してもらい、適切な

タバコのイメージ化をねらったためである。し

かし、本実践の目標を達成するためには、タバ

コに対するイメージのB・Sは省いてよいだろ

う。授業者の意図は、タバコに対する良いイメー

ジを持つ児童がいる中で、タバコには害があり

実際には違うということを理解させることであ

る。「イメージについて」、「害について」B・S

を2回行うよりも、「害について」の1回のB・

Sで、タバコは悪いものだと理解させる方が、

授業がよりスムーズに進むと考えられる。

2)新「知識の授業」の目標と流れ

健康教育の評価と授業分析、流れとをもとに

新しい指導案を作成した。それが5.6年生の

指導案である。ここでは、6年生の「知識の授

児童から「家の中では吸わないでね」「やめら

れないのもわかるけど、家の中であまり吸わな

いでよ」「(病気に)ならならないためにもタバ

コは絶対吸わないようにしよう」といったタバ

コに対する態度に関する言葉がでてきた。家族

と話し合ったこととして「お母さんと話したこ

と:タバコを吸っても、肺や血管などのいろい

ろな病気になるだけで、良いことは一つもない

ことです」「お父さんと話したこと:タバコを

吸った人が、吸い殻を道に捨てたりすると地球

が汚れるので良くない」などのタバコに対する

考え方があがった。家族への手紙では、喫煙を

開始する動機を抑えること、喫煙しないことを

周りに支持してもらうことに貢献することが予

想された。

西川ら(1987)は、小学校6年生を対象に

「タバコの害」についての知識に関する授業を

行い、その学習記録を家族に読んでもらう実践

を行っている。それによると、「タバコの害を

授業で受身的に学習するだけにとどめず、家族

の喫煙者(主に父親)に対して禁煙、節煙を訴

えるなど、子ども自身が喫煙防止の介入行動を

とることによって、将来自分たちがタバコの広

告や友達からの圧力を受けたときに、このよう

な行動体験が喫煙開始を阻む歯止めとしての心

理的抵抗力となって働くことが期待できる。さ

らに、受動喫煙の害から自分を守ることにもつ

ながる」という学習記録を家族に読んでもらう

ことの意義が示されている。

本授業は、西川らの論を支持する結果であっ

たと考える。目標の(2)であった「喫煙者である

家族に対してタバコをやめてもらいたい気持ち

を持つ」と目標の(4)であった「家族にも喫煙や

タバコの害に影響について考えてもらう」とは、

児童の感想より、達成できたと考える。

(2)評価の応用

1)授業目標、流れの分析

皆川(1999)は、アイスブレイクはトレーニ

ングや授業内容に添うようなものがよいと述べ

ている。目標の(3)である「5月31日は『世界禁

煙デー』であることを理解する」に関し、アイ

スブレイクで「5月31日は何の日」というB・

-78-

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業」の指導案を参照されたい。 2)新しい指導案の作成

健康教育の評価と授業分析、流れとをもとに

新しい指導案を作成した(表23)。6年生

(1)健康教育の評価

Ⅲの1-3に基づき、児童の反応に視点を置

いた分析から、指導案の修正が授業の目標を達

成するのに効果的であったか否かを検討してい

く。それにより、新たなタバコに関する「知識

の授業」の指針を作成する。

目標(1)のタバコの煙による影響について本授

業では初めに、児童が「タバコの煙の害」につ

いてB・Sで多くのアイディアを出した。次に

タバコの煙の害を、急性影響、長期影響、環境

タバコ煙の影響の三つに分類し、説明を行った。

児童が出した「タバコの煙の害」を三つに分類

することは困難であり、時間がかかった。「そ

の他」分類枠を増やす方法をとり、「その他」

分類枠のものは、授業者が請けおい、正誤の確

認を行うステップを踏むことで時間を効率よく

使うことができるだろう。

児童の家族に対する手紙をみると、タバコの

知識に関することが最も多く書かれている。目

標(1)のタバコの煙による影響については、児童

が知識を得たと考えてよいだろう。

(2)評価の応用

1)授業目標、流れの分析

へルスプロモーションでは、知識、考え方、

態度のこれら三つが相互に作用し、知識が高ま

ることによって、考え方、態度にも影響を与え

ると捉えられる。このことを考慮すると、今回

の実践で目標に、態度や家族との話し合いを盛

り込んだことは、知識をより深めるために貢献

したものと考えられる。実際、児童が書いた手

紙にはタバコに関する知識が多く(37個)、家

族からはタバコに対する考え方が多かった。児

童は、家族との話の中で、タバコに関する知識

を家族に伝え、家族は知識をもとに、タバコに

対する考え方を児童に話したことが推測される。

「知識の授業」は、授業時間内に終わらせるこ

とができなかった。本実践が他で応用されるこ

とを考慮すると、授業時間内に確実に終わらせ

るための工夫が必要と思われる。

表23「知識の授業」の指導案

2.「広告分析の授業」の考察

(1)健康教育の評価

授業の中で各グループが行ったタバコ広告の

分析は、広告に使われているテクニックを見抜

くことができるか否かという視点で分析した。

各グループの広告分析のワークや、その際の感

想などを基に児童の反応をみていき、授業展開

の方法が授業の目標を達成するのに十分であっ

たかを検討する。さらに、プログラムの修正が

必要な箇所及び修正方法をあげることで、「知

識の授業」を基にした「広告分析の授業」の一

連の体系をつくっていく。

本授業では初めに、①タバコはからだに悪い

影響を与えるものである、という復習を行い、

②それにも関わらず広告では、良いイメージを

与えるテクニックが使われていることを確認し、

③タバコ広告のテクニックの内容を明らかにし

た。その後、タバコに関する知識に基づき、タ

バコ広告を健全的かつ批判的に見ることが大切

であることを伝えた。これは、JKYB(2000)

が示した学習過程の①確認する、②関係づける、

③練習するが行われたと考えることができる。

-79-

授業目標

①タバコに関する知識(急性影響、長期影響、環

境タバコ煙の知繊)がわかる。

②未成年者の禁煙は法律で禁止されている理由がわかる。

③喫煙者である家族に対して、タバコをやめても

らいたい気持ちを持つ。

④家族にも喫煙やタバコの影響について考えても

らつ。

授業展開

STBP1アイスプレイク

STEP2喫煙による影響をあげる(B・S)

STEP3喫煙による影響の分類・確認

STEP4「タバコは悪いもの」という考えを持

つ(STEP3の確認)

STEP5「タバコは吸わない」という態度を持

つ(家族に手紙を書く)

STBP6まとめ(未成年者の禁煙について)

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「良い面だけを伝える戦略」とは、「広告で良い

面だけを伝え、商品に関する様々な情報を伝え

ないこと」としている。児童が分析したタバコ

広告のテクニックを、沖縄ライフスキル教育研

究会による広告の戦略に当てはめた(表24)。

その結果、「ターゲット戦略」は0個、「イメー

ジ戦略」は15個、「良い面だけを伝える戦略」

は10個、「その他」は3個であった。

④応用するは、タバコ以外の広告を分析する、

あるいはタバコ広告の分析を家族に話すなど、

本授業外で行われることが求められると考える。

その際、応用することを児童任せにするのでは

なく、宿題等を用いたり、他の教材を用いたり

して、広告を分析する機会を作ることが必要で

あろう。

次に、授業目標の観点から、授業の流れを分

析する。

授業では、児童はB・Sを用いてタバコのイ

メージを確認し、授業者の説明によりタバコの

イメージと喫煙に関する事実とを対比した。目

標の(1)にあげた「タバコのイメージを明らかに

する」ことについてはタバコのイメージを確認

し、「良いイメージ」が多く出た(表9)こと

で達成されたと捉えることができる。

JKYB(2000)は、「ライフスキル教育の主

な学習形態は、小集団学習を中心とする参加型

学習であり(中略)、ライフスキル教育におい

ては、学習過程とともに学習方法や学習形態が

極めて重要な役割を果たしていることに留意す

べきである」と述べている。目標の(3)にあげた

「タバコのイメージと喫煙に関する事実を対比

する」ことに関しては、本授業においては授業

者の説明で行われた。「タバコのイメージと喫

煙に関する事実を対比する」ことが児童の学び

から行われていくためには、学習方法に工夫が

必要である。具体的には、ワークシートにタバ

コの事実を記入する欄を設ける、「タバコの事

実とタバコのイメージを比べて気づくことはあ

りませんか」という発問を行う等である。

沖縄ライフスキル教育研究会は、広告分析ス

キルの実践報告を行っている(2001)。その実

践では広告の戦略を、「ターゲット戦略(広告

の標的)」「イメージ戦略(イメージ広告)」「良

い面だけを伝える戦略(広告の一面提示)」の

三つに分け、説明している。「ターゲット戦略」

とは、「商品を販売する標的を決め、その相手

の特性を考慮しながら広告が作られていること」

としている。「イメージ戦略」とは、「関係なさ

そうな映像等を見せたり聞かせたりすることで、

商品のイメージを作り出すこと」としている。

表24広告の戦略分析

本授業におけるタバコの広告分析は、各グルー

プで広告のテクニックを考え、それに基づき、

全体で広告のテクニックについて話し合った。

代表のグループに発表してもらった後、全体で

タバコ広告のテクニックの確認を行った。しか

し、タバコ広告のテクニックを確認する際、授

業者が広告の戦略の分類枠を持たないままに説

明を行ったので、確認が抽象的になったように

思われる。

目標の(2)であげた「タバコ広告のテクニック

を明らかにする」ことに関して児童は、タバコ

広告には売るための工夫がなされていることに

気づくことができたと考える。しかし、授業者

らは、児童が他の広告の分析もできるようになっ

たとは考えていない。児童がタバコ広告のテク

ニックを分析するスキルを正確に獲得するため

に、授業者がタバコ広告の特徴とテクニックを

確実に把握し、児童が広告の特徴を理解して、

その内容を細かく分析するスキルを猿得するた

めのステップを踏んだプログラムの作成が必要

だと考えられる。

(2)評価の応用

1)授業目標、流れの分析

JKYB(2000)は、広告分析の授業目標を、

広告を批判的に分析し、広告からの影響を一方

的に受けるのではなく、広告と能動的に関わる

-80-

ターゲット戦略 0個

イメージ戦略 15個

良い面だけを伝える戦略 10個

その他 3個

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能力の形成を図ることとしている。授業者らは、

広告と能動的に関わる能力とは、①広告の特徴

に関する知識、②広告を分析するスキル、③広

告を健全的かつ批判的に分析する態度、からな

ると考える。本授業ではその中の、②(タバコ)

広告を分析するスキルに終始した。JKYB

(2000)は広告の特徴として、広告の情報提供

は基本的に-面表示であり、製品の良いイメー

ジが強調されていること、広告は多様なテクニッ

クを使い、人目を引いたり製品情報を提供した

り製品を売り込む機能を持つこと、広告はター

ゲットを想定していることなどをあげている。

タバコ広告の特徴を把握することは、タバコ

広告を分析するための基礎となる。タバコ広告

を健全的かつ批判的に分析する態度を身につけ

るためには、タバコ広告のテクニックを他人に

伝える、他の広告を分析する等のワークを授業

の最後に行うことも必要であると考える。児童

がタバコ広告と能動的に関わる能力を形成する

ためには、本授業で行ったタバコ広告を分析す

るスキルを猫得するためのステップとともに、

タバコ広告を理解するためのステップ及び、タ

バコ広告を健全的かつ批判的に分析する態度を

持つためのステップを設けることが必要と考え

る。以下に、評価の応用として、新しい授業目

標、授業の流れを示す。

2)新しい指導案の作成

健康教育の評価と授業分析、流れとをもとに

新しい指導案を作成した(表25)。

(1)健康教育の評価

3.「断るスキルの授業」の考察

本項では、児童がつくったR・Pのセリフや、

その際の感想などを基に児童の反応を分析し、

授業展開の方法が授業の目標を達成するのに十

分であったか否かを検討する。さらに、プログ

ラムの修正が必要な箇所及び修正方法をあげる

ことで、「知識の授業」を基にした「断るスキ

ルの授業」の一連の体系をつくっていく。

本授業では初めに、①タバコはからだに悪い

影響を与えることの復習を行い、タバコを吸う

きっかけを児童に尋ねた。次に、②タバコの誘

いに鰯されなければタバコを吸わないかを確認

した。最後に、③R・Pを行い、④授業のまと

めを行った。

①確認するに関し高石ら(1993)はR・Pの

注意点として、R・Pを行う場面において、知

識の上でも、気持ちの上でも子どもに十分な準

備が必要であることを述べている。さらに、正

しく反論するだけの理論的な根拠を持たないま

まで、子どもにR・Pをさせると、良いR・Pが

できなくなるだけでなく、感情的な対応など、

誤った対処の仕方を学んでしまう危険性がある

こともあげている。本授業は、高石らが指摘し

たR・Pの注意点に配慮した実践であったと考

える。しかし、参加型学習を目指すためには、

R・Pの前提要因となる知識の確認は、プリン

トを配るだけでなく、児童から聞きだす工夫が

必要であろう。

野津(1985)は高校生の調査により、喫煙す

る友だちを多く持つ子どもにおいて禁煙率が高

いという結果を報告している。本授業の、①確

認するにあたる、喫煙を始めるきっかけを子ど

もたちに質問したところ、「誘われて吸う」「友

だちが吸っているから」など、児童同士の誘い

をあげたが、それ以外にも、「かっこいいから

吸う」「自分で吸う」など、さまざまな意見が

出た。R・Pの成果をより高めるためには、授

業者が、「喫煙する友だちを多く持つ子どもに

おいて喫煙率が高い」という補足説明をした方

が良かっただろう。本授業で②関係づけるも、

「喫煙する友だちを多く持つ子どもにおいて喫

煙率が高い」ことを提示することにより、児童

表25「広告分析の授業」の指導案

授業目標

①体に悪いタバコを売るための方法(戦略)とし

て、広告があることを確認する。

②タバコ広告の特徴(売るためのテクニック)を

分析する.

③タバコ広告を健全かつ批判的に分析する態度を

身に付ける。

授業展開

STEP1アイスプレイク(知識の確露)

STEP2タバコ広告の影響力を考える

STEP3タバコ広告のテクニックを探る

STEP4タバコ広告のテクニックを明らかにする

STEP5タバコ広告のテクニックを家族に伝える

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が断るスキルをより実践的に捉えることができ

たのではなかろうか。

③練習するに関して、JKYB(1997)はR・

Pの目標を、「健康教育におけるR・Pは、(社

会免疫理論に基づき)1.教室の外で経験する

おそれの高い社会状態に対して、2.より危険

の少ない教室の中で、3.スキルを練習し向上

させることによって、「免疫」を作る機会を提

供するもの」としている。同時に、スキルを練

習し向上させるためには、解決が簡単な状況か

ら始める必要があり、練習や、試行に対するフィー

ドバックも欠かせないとしている。本授業では、

喫煙の危険を回避するために、養讃教諭等の協

力をもとに、喫煙を誘う側はすべて、大人が行っ

た。また、誘いは、2回までにし、児童はワー

クシートの活動により、2回の断り方を予め作

成した。R・Pには、断り方を予め作成する構

成済みロールプレイング(structuredあるいは

preplannedroleplaying)に対し、断り方が

予め作成されない、自発的ロールプレイング

(spontaneousroleplaying)という二つの方

法がある(高石ら、1993)。後者はシナリオが

ないので、より現実の状態に近い場面での練習

ができるという利点がある。一方、前者は事前

に準備できるので、用意周到な、失敗しにくい

R・Pができるという利点がある。本授業の喫

煙の誘いは、児童以外の大人が、予め作成され

たシナリオで、しつこくない程度に2回誘った

ことにより、断ることが簡単で、失敗する危険

を回避する内容であったと考える。実際、児童

のR・Pでは、断りきれないというケースは見

受けられなかった。

練習や試行に関するフィードバックについて、

本授業では、児童がR・Pを行った後、グルー

プの代表が全員の前でR・Pを示した。さらに、

模範となる断り方をした児童一人に発表させた。

その後、断り方のいろいろな例を説明した。そ

の際に、「けんかタイプ」の断り方をした児童

の数人が、自分の断り方を「はっきりタイプ」

だと発言した。有効的なフィードバックを行う

ために、グループの代表がR・Pを行う前にい

ろいろな断り方の確認をする必要があっただろ

つ。

本授業において}ま、④応用するに相応する内

容がない。本授業における④応用するとは、日

頃の話し合いの中で、相手の意見を尊重しなが

ら、自分の意思をはっきり伝えることと考えら

れる。

子どもたちが恥ずかしがってR・Pが盛り上

がらない場合には、シナリオを書かせたり、グ

ループごとに作業させたりすることにより、ど

のグループが一番うまい反論を考えつくかを競

争させるなどの方法が有効である。このことは

R・Pの解決策であると同時に、学校教育で今

日叫ばれている問題解決的な学習への発展性を

秘めていると思われる。

(2)評価の応用

1)授業目標、流れの分析

JKYB(1997)によると健康教育におけるR・

Pの目標は、「(社会免疫理論に基づき)1.教

室の外で経験するおそれの高い社会状態に対し

て、2.より危険の少ない教室の中で、3.ス

キルを練習し向上させることによって、「免疫」

を作る機会を提供するもの」と示されている。

本実践においてはこの目標に基づき、事前に準

備ができて用意周到な、失敗しにくいR・Pで

ある構成済みロールプレイングを実施した。R・

Pにおける喫煙を勧められた際の断り方のタイ

プは、アサーティブ・トレーニング法のコミュ

ニケーション対応に基づき、「けんかタイプ」

「はっきりタイプ」「弱気タイプ」の三つに分類

した。そして、他者への尊重と権利を守る「はっ

きりタイプ」を最も良い断り方と位圃づけ、相

手を尊重しつつも自己主張を明確にして喫煙の

勧めを断るというスキルの獲得を狙って授業を

展開した。

高石ら(1993)が指摘するように、R・Pを

行う場面においては、知識の上でも気持ちの上

でも子どもに十分な準備が必要であろう。また、

感情的な対応など、誤った対処の仕方を学ぶ危

険性を下げて良いR・Pを進めるためにも、子

どもたちに正しく反論するだけの理論的な根拠

を獲得させることには意義がある。本実践のよ

うに「知識の授業」で喫煙に関する知識を高め、

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方のタイプを説明し、代表選出、断り方の基準

の確認につなげる展開が望ましいであろう。さ

らに、「断るスキルの授業」を教室の中だけに

とどめず展開を図るためにも、「断るスキル」

を家族に伝えるワークを設定することが望まし

しと考える。以下に、評価の応用として、新し

い授業目標、授業の流れを示す。

2)新しい指導案の作成

本項では、健康教育の評価と授業分析、流れ

とをもとに新しい指導案を作成した(表26)。

表26「断るスキル」の指導案

授業目標

①子どもたちは、断り方のタイプについて理解す

る。

②子どもたちは、友だちからタバコを勧められた

場合、相手のことを尊重しつつ自分の意思をはっ

きりと伝えるスキルを習得する

授業展開

STEP1アイスプレイク(タバコの影響につい

て確認する)

STEP3ロールプレイの進め方の説明STEP4セリフをつくり、各グループでロール

プレイの練習

STEP5良い断り方のタイプの確認

STEP6グループ代表の決定と発表

STEP7断り方の基準の確認

STEP8「断るスキル」を家族に伝える

V・おわりに(展望にかえて)

喫煙は、身体的、心理的依存性を持つと止め

ることが難しい。また、日本では、テレビによ

るタバコの宣伝、広告に関する法的規制がまだ

定まっていない。このようなことから、喫煙が

依存性を持つ前に、喫煙防止教育などを通して、

タバコに関する知識、喫煙しない態度、喫煙の

勧めを断るスキルを身につける必要があると考

えられる。

本実践における喫煙防止教育は、タバコに関

する「知識の授業」で、児童は「タバコに関す

る知識」「タバコの考え方」「タバコに関する態

それに基づき「断るスキルの授業」によって喫

煙の勧めを断る練習をする展開は妥当であると

考える。しかし、児童に断り方のタイプを説明

しないでグループ代表を選出させた展開は実際、

「けんかタイプ」を多く輩出させる結果となっ

た。児童が前もって断り方のタイプを理解でき

れば、適切な基準によって代表を選出できるよ

うになることが期待される。そのため、「レディ

ネスとして喫煙による三つの影響などの知識を

獲得させ、それを基にしたR・P実践後に断り

前提要因

●タバコに関する知識●タバコの考え方●タバコに対する態度●広告分析能力●断るスキル ①

実現要因|⑦

●世界禁煙デー●法律で未成年の喫煙は禁止

●タバコの値が上がる●専門家

-----1---1

②ノ

□}一

⑤一一一一一〆

、ヴロヮ

ノノノと一一

強化要因|⑥

●家族●友だち●授業者

図6本実践のPPモデルによる検討

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---

③--

-----

---

--

---

一一一

--

---

---

~、坐

--

----

--

----

--ニア

●家族に対して、禁煙していないことへの感謝の気持ち 。

あるいは、喫煙している家族に禁煙を求める気持ち

●友だちからタバコを勧められた時に、上手に断る。

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度」を学習した。授業終了後、家族に対し、

「喫煙していないことへの感謝の気持ち、ある

いは、喫煙している家族に禁煙を求める気持ち」

を伝える手紙を書いた。児童は家族に対し、手

紙の内容を伝えた。それに応え、家族はタバコ

に対し、否定的な態度を示した。家族のタバコ

に対する否定的な態度は児童の態度へとつなが

ることが予想される。そのことにより、児童の

タバコに関する知識はより喫煙行動を抑制する

ための強力な要因になるであろう。授業者は児

童の行動(手紙やワークシート)により、彼ら

のタバコに関する知識の正誤を調べた。それに

より、新たな教育プログラムを作成し、実行へ

と移る。5年生は広告分析のスキルを学習し、

6年生は断るスキルの学習を行った。児童は、

喫煙を勧められた際の断り方を覚え、加えてタ

バコに関する正しい知識や態度を理解した。児

童はR・Pを用い、喫煙の勧めを断る練習を行っ

た。また、授業者の説明を受け、断り方のスキ

ルをより現実的なものにした。授業者は、児童

のワークシート等をもとに新たな指導案を作成

した。

本実践は、喫煙予防を大きな柱に、タバコに

関する知識、考え方・態度、スキルの相互作用

を持たせながら展開した。このような実践は以

下の示唆により、その有効性を裏づけることが

できる。

実現要因や強化要因を全く考慮に入れずに、

自覚や関心や知識(前提要因)だけを高めよう

として行われる健康情報の伝達プログラムが、

資源や報酬を手に入れやすい集団(通常は富裕

集団)以外では失敗に終わり、行動に影響を及

ぼせないことが多いことからもうかがい知るこ

とができるは前述した。JKYB(1996)は、知

識と喫煙行動に関し、恐らくは、知識が喫煙行

動に直接の影響を与えるのではなく、知識の獲

得が徐々に態度や価値観などの情意面に影響を

与え、非喫煙者の行動を選択する動機づけを高

めるものと考えられると述べている。

タバコに対する態度は、児童の喫煙開始と強

い関係を持ち、JKYBの高校2年生を対象にし

た研究(1984)では、将来、喫煙するだろうと

考えている生徒ほど、20歳では喫煙を始めてい

る確率が高くなることを報告している。

喫煙のきっかけ、いわゆる社会的要因として、

高石ら(1993)の報告では、「好奇心」が最も

多く、次いで「なんとなく・わからない」「友

達に勧められて」があがっている。本実践で行っ

た「広告分析の授業」は、「好奇心」に対処す

るためのスキル獲得がねらいであり、「断るス

キルの授業」は「友達に勧められて」に対処す

ためにスキルである。

授業者は今回の実践により、児童が「広告分

析能力」や「断るスキル」を確実に習得したと

は考えていない。これらの能力を習得するため

にはより長期的な児童との関わりが必要であろ

う。長期的な児童との関わりを可能にするため

には、今回の授業を学級担任が行っていけるよ

うになることが必要であろう。また、児童が健

康行動(喫煙予防行動)を続けていくために、

授業者ばかりでなく、家族や友だちも補足的な

要因となる。ヘルスプロモーションを実施して

く中で、家族や友だちが補足的な要因となるよ

うに系統的な計画をすることが大切になるであ

ろう。

最後に、喫煙防止教育全体の目標を提示し、

まとめとする(表27)。

表27喫煙防止教育全体の目標

授業目標

児童は、喫煙防止教育を受けることで以下のことを身につける。

タバコに関する知識、考え方

・児童は、タバコの急性影響、長期影響、環境タ

バコ煙の影響がわかる。

・喫煙は法的規制もあり、社会的に禁煙を減らすように動いていることがわかる。

タバコに対する態度

・タバコに対する否定的な態度を示す。

タバコの喫煙のきっかけ

・タバコ広告を健全的かつ批判的に分析する。

・仲間などから喫煙を勧められたら、喫煙しない

ための根拠、や態度を自己主張的に対応する。

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Ⅵ、参考文献・資料 教科をクロスする授業第4巻「健康教育

とライフスキル学習」理論と方法JKYB研

究会

・川畑徹朗ほか1984中・高校生の喫煙行動

および喫煙に対する態度と知識東京大学教

育学部紀要

・小川浩・富永祐民1985中学生の喫煙一

喫煙状況と関連要因一日本公衆衛生雑誌6月

・ローレンスW・グリーン・マーシャル

W・クロイター神馬征峰・岩永俊博・松

野朝之・鳩野洋子1991ヘルスプロモーショ

ンPRECEDE-PROCEEDモデルによる活

動の展開医学書院

・文部省1998小学校学習指導要領

・武藤孝司・福渡靖1994健康教育・ヘルス

プロモーションの評価篠原出版

・吉田亨1998「生活習慣病」対策にプリシー

ド/プロシードモデルをどう使うか保健婦

雑誌VoL54No9

・鳩野洋子2000プリシード・プロシードモ

デル保健婦雑誌VoL56No、12増刊号

・高石昌弘1993喫煙防止教育のすすめぎよ

うせい

・日本公衆衛生協会2003たばこアトラス

日本公衆衛生協会

・JKYB研究会編2000ライフスキルを育む

喫煙防止教育東山書房

・大阪がん予防検診センター199Oがん予防

対策普及のための調査研究一青少年用健康教

育プログラム開発のための基礎研究一

・皆川興栄1999総合学習でするライフスキ

ルトレーニング明治図書

・西川房代ほか1987小学校における禁煙防

止教育の試み、学校保健研究1月号

pp51~69

.JKYB第9回JKYB健康教育ワークショッ

プ報告書JKYB研究会

・沖縄ライフスキル教育研究会2001第1回

(2001年度)ライフスキル教育研修会ワーク

ショップ報告書沖縄ライフスキル教育研究

・JKYB研究会編1997第5回JKYB健康教

育ワークショップ報告書JKYB研究会4月

号ppl90~200

・野津有司1985青少年の喫煙に関する調査

研究第2報一高校生の禁煙行動に関連する

諸要因の検討一学校保健研究

・JKYB研究会編1996総合学習への提言一

号pp305-314

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