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オステオポローシスジャパン・プラス
Vol.4 No.2 2019
巻頭PHOTOレポート 医療連携を成功に導く方程式
スタッフ全員で糖尿病患者の骨折予防に挑戦◇大岡会 光クリニック
高齢社会のフレイル・サルコペニア対策監修:小川純人
特集
キーパーソンの本音トーク
1 フレイル対策で健康寿命を延ばす ◎小川純人 厚労省が対策検討――メディカルスタッフが果たすべき役割
2 知っておきたいサルコペニア診療の最新情報 ◎小川純人 骨格筋疾患と定義、診断基準も改訂の見込み
3 医原性サルコペニアに注意!◎若林秀隆 リハビリテーション栄養の考え方と指導のポイント
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メディカルスタッフのための骨代謝マーカー入門 第2 回測定値の見方と評価法 ◎三浦雅一
通いの場でフレイル対策高齢者に自助・互助をアドバイス
骨折した家族の介護で4人に1人が転職や離職を経験ネット調査が明らかにする介護負担の実態
副作用回避における薬局薬剤師の役割プレアボイドからわかる薬学的介入の意義
TOPIC
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編集委員長折 茂 肇 骨粗鬆症財団 理事長
編集委員(50音順)石 島 旨 章 順天堂大学大学院医学研究科整形外科・運動器医学 准教授石 橋 英 明 愛友会伊奈病院 整形外科部長小 川 純 人 東京大学大学院医学系研究科加齢医学 准教授三 浦 雅 一 北陸大学薬学部薬学臨床系 教授
編集アドバイザー(50音順)泉 キヨ子 帝京科学大学医療科学部長・看護学科 学科長上 西 一 弘 女子栄養大学栄養生理学 教授宮原富士子 ジェンダーメディカルリサーチ社長、薬剤師
編集協力公益財団法人骨粗鬆症財団
管理栄養士が本当に伝えたい栄養の話 第4回栄養素ってすごい!-4身体機能と代謝を調節する栄養素たち◎上西一弘
薬剤師でなくても知っておきたい薬の話 第6回薬ができるまでと、できてから-2治験の手順と薬効評価法◎中島孝則
レポート:骨粗鬆症財団の啓発活動WCO-IOF-ESCEO 2019 /兵庫骨を守る会 第1回市民講座/高齢者運動器疾患研究所 第28回板橋いきいき講演会
主な略語と骨粗鬆症治療薬・・・・2 /学会・セミナー情報・・・・60/読者アンケート・・・・61年間購読のご案内・・・・62 /バックナンバーのご案内・・・・63/ 次号予告 読者の声募集します・・・・64
SERIES
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地域を支える!健康サポート薬局 第13回地域住民の健康増進目指し骨量&ロコモチェックかかりつけ薬局から健康サポート薬局に̶八潮市・イトー寿薬局◎宮原富士子
運動指導 手がかり足がかり 第13回集団への運動指導②運動を継続してもらうには◎松井 浩 運動器をじょうぶにする栄養指導 第13回 高齢者の熱中症 ――食事で水分・ミネラル補給◎成田美紀
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医療連携を成功に導く方程式医療連携を成功に導く方程式巻頭PHOTOレポート
糖尿病患者は、非糖尿病患者よりも骨折リスクが高いことが知られています。2015年に骨粗鬆症専門外来を設立して、糖尿病患者を中心とする外来患者に対して、積極的に骨粗鬆症のリスクチェックや治療を実施している光クリニック(千葉県市原市)の取り組みを紹介します。(2019年5月取材)
スタッフ全員で糖尿病患者の骨折予防に挑戦大岡会 光クリニック
スタッフ全員で糖尿病患者の骨折予防に挑戦大岡会 光クリニック
6 Osteoporosis Japan PLUS Vol.4 No.2 2019
P.12
P.15
P.19
監修:小川純人(東京大学大学院医学系研究科加齢医学准教授、本誌編集委員)
特集
監修:小川純人(東京大学大学院医学系研究科加齢医学准教授、本誌編集委員)
高齢社会のフレイル・サルコペニア対策
フレイルは要介護状態の前段階と位置づけられ、身体的フレイル、精神的・心理的フレイル、社会的フレイルに分けられます。身体的フレイルの中核的な要因となるサルコペニアを早期に発見し、適切に介入して要介護状態への移行を防ぐことは、医療従事者の重要な役割の一つです。 サルコペニアは、ヨーロッパのワーキンググループ(EWGSOP)が2018年10月に骨格筋疾患と位置付けて、新たな評価方法を示しました。わが国でも2017年12月に日本サルコペニア・フレイル学会から「サルコペニア診療ガイドライン」が発表され、2019年3月には「サルコペニア診療実践ガイド」が発行されるなど、医療関係者の注目が集まっています。フレイルやサルコペニアの予防や診療についてメディカルスタッフが知っておきたい最新情報と、具体的な栄養・運動指導の方法を専門家が解説します。
11Osteoporosis Japan PLUS Vol.4 No.2 2019
フレイル対策で健康寿命を延ばす厚労省が対策検討――メディカルスタッフが果たすべき役割1
知っておきたいサルコペニア診療の最新情報骨格筋疾患と定義、診断基準も改訂の見込み2
医原性サルコペニアに注意!リハビリテーション栄養の考え方と指導のポイント3若林秀隆(横浜市立大学附属市民総合医療センターリハビリテーション科准教授)
小川純人(東京大学大学院医学系研究科加齢医学准教授、本誌編集委員)
小川純人(東京大学大学院医学系研究科加齢医学准教授、本誌編集委員)
12 Osteoporosis Japan PLUS Vol.4 No.2 2019
フレイルとは? わが国高齢者の11.2%が該当 加齢により生理的な予備能(最大の能力と平常時の生命活動を営む能力との差)が低下すると、ストレスに対する脆弱性が亢進して、生活機能が阻害されたり、要介護や死亡のリスクが高まります。欧米では、こうした状態を「frailty」と呼んでおり、従来、虚弱、老衰、脆弱などと訳されてきましたが、2014年に日本老年医学会は、適切な介入で要介護状態への移行を防げる中間的な段階と位置づけて、「フレイル」と呼ぶことを提唱しました。 フレイルは、①筋力の低下により転倒しやすくなるといった身体的な問題(身体的フレイル)、②認知機能障害やうつなど精神・心理的な問題(認知的フレイル)、③独居や経済的困窮など社会的な
問題(社会的フレイル)を含んだ概念です(図1)。わが国でフレイルに該当する高齢者は、地域在住高齢者 1万 6251人(平均年齢 75.1歳)を対象に実施した調査では、11.2%という結果でした(Geriatr Gerontol Int 2017;17:2629-34)。
身体的フレイルとサルコペニアや骨折との関係 身体的フレイルに関しては、本誌Vol.1 No.3の特集「今さら聞けないサルコペニアとフレイル」でも紹介したように、メタボ対策をはじめとする生活習慣病対策から、適正なエネルギーとタンパク質摂取によるフレイル対策への移行が重要な課題となっています(図2)。 加齢や栄養不良・運動不足などの生活習慣、疾患などが原因で筋肉量と筋力が減少するサルコペ
ニアは、身体的フレイルの中核的な病態と位置づけられています。日本人の 65歳以上の地域在住女性 273人を対象とした調査では、身体的フレイル該当者の 37.9%がサルコペニアという結果でした(J Am Med Dir Assoc 2015;16:120-4)。サルコペニアの診療や具体的な指導方法については、本特集で詳しく紹介します。 なお、フレイル該当者は非該当者に比べて将来骨折するリスクが 1.57倍という研究結果もあり(Bone 2016;90:116-22)、骨粗鬆症を合併している可能性も高いと考えられます。
デュアルタスクで認知的フレイル対策 認知的フレイルは、認知症がなく、身体的フレイルと軽度の認知機能障害が共存した状態(J Nutr Health Aging 2013;17:726-34)で、介 入 によって身体機能と認知機能が改善されうる状態を指しています。社会的フレイルは独居、社会参加
の機会がない、経済的困窮などの概念を広く含んでいます。 フレイル該当者が血管性認知症になるリスクは2.7倍、アルツハイマー型認知症に関しては 1.28倍とのわが国での報告(J Am Med Dir Assoc 2016;17:881-8)があります。認知的フレイル該当者は認知症に移行するリスクが高いことを踏まえたうえで、効果的な介入方法を検討することが重要です。 テレビを観ながら洗濯物をたたむなど、「ながら動作」で 2つのことを同時に行うデュアルタスク(図3)は、脳の血流量が増えて、認知症予防に効果があるといわれています。体を動かしながら同時に頭を使う方法は特に有効です。たとえば、椅子に座って足踏みをしながら、両手でじゃんけんをして必ず右手が勝つようにしたり、歩きながら、100から同じ数を連続して引き算をしていきます。1、5などキリの良い数ではなく、3、6、7といっ
た数を引いていくことがポイントです。
厚労省がフレイル対策を含めた健康寿命延伸プランを検討 現在、厚生労働省は 1971~ 1974年に生まれた団塊ジュニア世代が高齢者となる 2040年を展望した社会保障制度改革を検討中で、医療・福祉サービス改革プランとともに、介護予防・フレイル対策、認知症予防を含めた健康寿命延伸プランを今夏に発表することになっています。 具体的には、高齢者のフレイル対策は国の保健事業、介護予防は市町村の地域支援事業と、実施主体や制度が異なっている現状をあらためて一本化するとともに、介護保険制度の保険者機能強化推進交付金(インセンティブ交付金)を活用し、身近な場所で高齢者が定期的に集い、身体を動かす「通いの場」の大幅な拡充と、保健師など医療従事者によるフレイルチェックや保健指導を実施していく予定です(図4)。
こうした取り組みにより、2040年までに、2016年と比較して健康寿命を 3年以上延伸して、男女とも健康寿命を 75年以上(男性:75.14年以上 女性:77.79年以上)にすることを目指しています。
地域住民に通いの場を提供することが重要 メディカルスタッフが中心となって病医院や市町村の集会所、サロンなどで運動教室を開催すれば、高齢者が身体を動かす機会となり、身体的フレイルだけでなく、独居で閉じこもりがちな高齢者同士の交流を促し、認知的・社会的フレイル対策にもつながります。 さらに、骨折やサルコペニア、ロコモを防ぐための栄養や運動などの生活習慣や、転倒予防対策について指導すれば、一石二鳥です。地域住民の健康寿命延伸にメディカルスタッフが関与し、活躍していく機会は、今後ますます増えていくと予想されます。
図1 フレイルの概念
フレイル要介護
フレイル対策で健康寿命を延ばす厚労省が対策検討――メディカルスタッフが果たすべき役割1小川純人(東京大学大学院医学系研究科加齢医学准教授、本誌編集委員)
栄養・運動指導転倒予防認知症予防交流支援など
身体的フレイルサルコペニア骨粗鬆症
ロコモティブ・シンドロームなど
精神・心理的フレイルフレイル
認知機能障害うつ
社会的フレイル独居
閉じこもり経済的困窮など
・フレイルは健常と要介護状態の中間的な段階・生活習慣病対策からフレイル対策へのスムーズな移行が重要・2つの動作を同時に行うデュアルタスクで認知的フレイル対策・厚労省がフレイル対策を検討・「通いの場」がフレイル対策の鍵を握る
POINT
15Osteoporosis Japan PLUS Vol.4 No.2 2019
サルコペニアの新たな定義と診断基準 1989年に、Irwin Rosenbergによって、加齢による筋肉量の低下を表す「サルコペニア」という概念が提唱されました。その後、欧州老年医学会のサルコペニアワーキンググループ(EWGSOP:European Working Group on Sarcopenia in Older People)が 2010年に定義や診断基準を発表し、2014年 に は AWGS(Asian Working Group for Sarcopenia)によって、アジア人向けの診断基準が作成されました。 サルコペニアは 2016年には国際疾病分類
(ICD-10)に登録され、2018年にはわが国でも傷病名として登録されましたが、サルコペニアの検査や治療に健康保険は適用されないのが現状です。 2018年10月には、新たに組織されたEWGSOP2が、サルコペニアの定義を従来の「進行性および全身性の骨格筋量および骨格筋力の低下を特徴とする症候群」から、新たな定義へと変更するとともに、新たな評価方法を示したため、AWGSも今秋に現在の診断基準を改訂する予定となっています(表1)。
筋力低下の段階での介入を推奨 EWGSOP2が発表した新たなコンセンサスレポートでは、サルコペニアについて、「進行性・全身性の骨格筋疾患で、転倒、骨折、身体機能低下、死亡などのリスクが高まった状態」と定義づけ、発症から 6ヵ月未満の急性サルコペニアと、6ヵ月以上持続している慢性サルコペニアとに区分しています。 従来の基準では、骨格筋量の減少に加えて、筋力低下または身体機能低下があった場合にサルコペニアと診断されてきましたが、今回の改訂では、握力または椅子立ち上がりテストで筋力低下が認められた場合はサルコペニアの可能性ありと判定し、評価と介入を実施するよう推奨しています。筋力低下に加えて、DXAやBIAによる検査で骨格筋量減少が確認されればサルコペニアと診断し、さらに歩行速度や、高齢者の身体機能評価テスト「簡易身体能力バッテリー」(SPPB)の結果などから身体機能低下が認められた場合は重症のサルコペニアと判定します(図1)。 また、スクリーニングとして、①4~ 5 kgの荷物の持ち運び、②部屋の中での歩行、③椅子やベッドからの移動、④階段を 10段昇る動作、⑤1年間の転倒回数の合計 5項目をそれぞれ 3段階評
価で採点し、合計点で身体機能を評価する問診票である SARC-Fの使用を推奨しています。 わが国では、日本サルコペニア・フレイル学会と国立長寿医療研究センターにより、世界初となる「サルコペニア診療ガイドライン」が 2017年に発表され、現時点ではサルコペニアの診断にはAWGSが作成した診断手順を用いることが、推奨されています。
筋骨連関とビタミンD 40~ 88歳の日本人女性 2400人を対象とした調査では、サルコペニアと骨粗鬆症には有意な関連が認められました(J Bone Miner Metab 2013; 31:556-61)。また、3000人以上の地域住民を対象とした疫学調査では、サルコペニアと診断された対象者の約 6割が骨粗鬆症を合併し、骨粗鬆症と診断された対象者がサルコペニアを発症するリスクは 2.99倍だったと報告されています(Osteoporos Int 2017;28:189-99)。
骨代謝と骨格筋には相関関係(筋骨連関)があると考えられており、両者に影響する生理活性物質や性ホルモン、ビタミンDなどの研究が進められています。ビタミンDは骨の石灰化や、筋細胞の増殖や分化に関係しており、血清ビタミンD濃度が不足すると、腸管からのカルシウム吸収が減少して骨密度の低下を招くとともに、筋力低下や骨格筋の萎縮により転倒しやすくなり、骨折のリスクが高まります。 ビタミンD投与群の転倒発生率は、非投与の対照群に比べて 22%低いとの報告(JAMA 2004; 291:1999-2006)や、69歳以上の地域在住高齢者773人を対象とした 6年間の追跡調査で、ビタミンD濃度で対象を 4群に分けて検討したところ、血液中のビタミンD(血中25(OH)D)濃度がもっとも高い群では骨折の発生率が 58%低かったという報告があります(Osteoporos Int 2011;22:97- 103)。
サルコペニア対策を重視した「食事摂取基準」 厚生労働省は 5年ごとに「日本人の食事摂取基準」を改定しています。この 3月に発表された報告書によると、2020年版での主な改定点は、①18歳以上の 1日あたりのビタミンD摂取目安量 5.5μgを 8.5μgに引き上げ、②タンパク質の食事摂取基準について現在の 50~ 69歳、70歳以上の 2
区分から、50~64歳、65~74歳、75歳以上の 3区分に増やし、③総摂取エネルギー量に対するタンパク質の目標量を全年代で一律 13~ 20%から、50~64歳は 14~20%、65歳以上は 15~20%と段階的に下限量を引き上げ、④身体活動レベル別にみたタンパク質の目標摂取量を設定するなど、フレイルやサルコペニア対策を重視しています(表2~4)。 2017年(平成 29年)の国民栄養・健康調査の結果によると、1日あたりのビタミンD摂取量は60~69歳で 8μg、70~ 79歳で 9μg、80歳以上は 8.3μgとなっています。また、1683人を対象とした疫学調査で、ビタミンD不足(血清 25(OH)D濃度が 30ng/mL未満)の割合が 81.3%との報告(Osteoporosis Int 2013;24: 2775-87)もあり、高齢者に対してビタミンD摂取量を増やすよう指導することが重要になってきます。
フレイル、転倒、骨折などのリスクとサルコペニア肥満 サルコペニアにより全身の筋肉量の減少と肥満が重なった状態をサルコペニア肥満と呼びます。フレイル、転倒、大腿骨近位部骨折、死亡率などのリスク上昇や、交通機関の利用や家事、金銭管理、服薬管理など IADL(手段的日常生活動作)の低下を招くことがわかっています。もともと筋肉だっ
た部分が脂肪に置き換わってしまうため、BMIが標準でもサルコペニア肥満になっていることもあります。また、体格や体重の変化に気づかないことも多いため注意が必要です。定義や診断基準はまだ定まっていませんが、対策としては、エネルギー摂取量を調整しながらタンパク質の割合を増やし、それとレジスタンストレーニングを組み合わせることが有効と考えられます。
最新情報の共有と診療への活用が課題 今までに説明してきたように、サルコペニアの診断や治療に関しては、さまざまなエビデンスが蓄積されています。医師とメディカルスタッフが最新の情報を把握するとともに、診療に活用していくことが求められます。具体的な指導方法や多職種による介入については、本特集の「医原性サルコペニアに注意! リハビリテーション栄養の考え方と指導のポイント」で詳しく解説します。
知っておきたいサルコペニア診療の最新情報骨格筋疾患と定義、診断基準も改訂の見込み
2小川純人(東京大学大学院医学系研究科加齢医学准教授、本誌編集委員)
・欧州のワーキンググループがサルコペニアの定義と診断基準を変更・サルコペニアを骨格筋疾患と定義・筋力低下の段階でサルコペニアの評価と介入を推奨・アジアのワーキンググループでは今秋に診断基準の改訂を予定・ビタミンDは骨代謝と骨格筋に影響・改訂中の「日本人の食事摂取基準」でビタミンDの摂取目安量が変更・サルコペニア肥満でフレイル、転倒、骨折などのリスクが上昇
表1 サルコペニアの定義や診断基準などの変遷
POINT
1989年 Irwin Rosenbergがサルコペニアの概念を提唱
2014年 AWGSがアジア人向けの診断基準を発表
2016年 国際疾病分類(ICD-10)に登録
2017年 わが国で世界初となる「サルコペニア診療ガイドライン」発表
2019年 AWGSが診断基準の改訂を予定
2010年 EWGSOPが「進行性および全身性の骨格筋量および骨格筋力の低下を特徴とする症候群」
と定義、診断基準を発表
2018年 わが国でも傷病名として登録
EWGSOP2が「進行性かつ全身性の骨格筋疾患で、転倒、骨折、身体機能低下、死亡など のリスクが高まった状態」と定義を変更、新たな評価方法を提示
19Osteoporosis Japan PLUS Vol.4 No.2 2019
不適切な医療行為が引き起こす医原性サルコペニア サルコペニアは、加齢以外に明らかな原因がない一次性サルコペニアと、低活動、栄養摂取不足、疾患など加齢以外の原因で起きる二次性サルコペニアに分類されます。疾患には①手術、外傷、骨折、急性感染症、熱傷など外的要因で生体内の恒常性を乱す侵襲、②がん、慢性感染症、膠原病、慢性心不全、慢性呼吸不全などが原因で筋肉量の減少を伴う代謝症候群を引き起こす悪液質、③多発性筋炎、筋萎縮性側索硬化症といった神経筋疾患が含まれます。二次性サルコペニアの中でも、入院中の不適切な安静、禁食、栄養管理、ポリファーマシーなど、医療行為によって新たに引き起こさ
れる「医原性サルコペニア」には特に注意が必要です。
入院から2日以内にリスクを評価して対応 入院中にリハビリテーションが必要な高齢者の49~ 67%に低栄養、40~ 46.5%にサルコペニアを認めると報告(J Cachexia Sarcopenia Muscle 2014;5:269-77)されており、サルコペニアにかかっている地域在住高齢者の 57.3%が骨粗鬆症を併発していたとの報告(Osteoporos Int 2017;28: 189-99)もあります。入院中の高齢者は、加齢や低活動、低栄養によるサルコペニアの発症リスクや、骨粗鬆症による骨折のリスクの両方が高い可
能性があります。 医原性サルコペニアの要因はさまざまですが、たとえば誤嚥性肺炎で入院した患者に対して適切な評価が行われず、とりあえず安静、禁食、水電解質輸液のみで栄養管理を実施された場合、医原性サルコペニアを生じて寝たきりや摂食嚥下障害につながる可能性があります。 本当に安静や禁食が必要か、輸液だけでは足りないエネルギーや栄養素をどう補うか、入院後 2日以内に多職種が連携して低栄養やサルコペニアのリスクについて評価したうえで、適切な栄養管理とともに、できるだけ早期の離床と経口摂取の開始を目指したリハビリテーションプランを策定します。
低栄養のチェックとサルコペニアのスクリーニング 低栄養のチェック方法としては、2018年に欧州臨床栄養代謝学会(ESPEN)、米国静脈経腸栄養学会(ASPEN)など複数の学会が合同で発表した「GLIM基準」(図1)という診断基準があげられます。
GLIM基準では、大腿骨近位部骨折をはじめとする急性疾患や、関節リウマチなどの膠原病といった慢性疾患、炎症(悪液質など)があり、意図しない体重減少、低BMI、筋肉量減少のいずれかに該当すれば低栄養と判定できます。 サルコペニアのスクリーニングについては、下腿周囲長(入院患者の場合、ふくらはぎの最も太い部分が男性30 cm未満、女性29 cm未満)、握力(男性26 kg未満、女性18 kg未満)の測定が簡便です。2018年に発表されたEWGSOP2(欧州サルコペニアワーキンググループ 2)の基準では、5回椅子立ち上がりテストで 15秒以上かかった場合は「筋力低下」と判定されます。
QOLを最大限に高めるリハビリテーション栄養 低栄養の改善とサルコペニア治療の目的は、患者のADLの改善と社会参加への道筋をつけることです。そのためには、図2に示すように、国際生活機能分類(International Classi�cation of Functioning, Disability and Health:ICF)に 基 づいたリハビリテーション栄養の考え方が重要に
なってきます。 ICFは 2001年に世界保健機関(WHO)が採択した医療基準です。生活機能を、①心身機能・身体構造、②活動(ADL)、③参加(社会参加や家庭内での役割)に分類します。それぞれに相互関係があり、他にも疾病(健康状態)、同居している家族や自宅などの環境因子、患者の価値観やライフスタイルを含めた個人因子が相互に影響し合っていることを示しています。 低栄養やサルコペニアを放置したままリハビリテーションを実施すると、身体機能の改善が遅れてしまい、ADLの改善や社会参加という目的の達成が困難になります。ICFを意識しながら患者を全人的に評価したうえで、生活機能改善というゴールを目指すために、退院後の活動や社会参加まで見据えた栄養指導とリハビリテーションプランを立案して実行します。服薬状況についても検討するとともに、1~ 2週間単位でモニタリングと再評価を実施(図3)して、患者のQOLを最大限に引き上げることがリハビリテーション栄養の目的です。 患者と接する時間が長いメディカルスタッフが患者の希望をよく聞き取り、性格や価値観を理解し、スタッフ同士で情報を共有することが重要です。内向的な性格で社会参加がストレスになる場合は、家庭内で掃除やゴミ出しといった家事を分担する役割を担ったり、一人で散歩を楽しむよう提案したりするなど、それぞれの患者に合わせたプランを作成しましょう。
レジスタンストレーニングと栄養の指導 サルコペニアの栄養指導では、レジスタンストレーニングを組み合わせたうえで、高エネルギー・高タンパクの「攻めの栄養管理」を実施します。理論的には、摂取エネルギーを 7000~ 7500kcal追加すれば、体重が 1 kg増加します。そのため、1日あたり 500kcalを追加すれば、1ヵ月に 2 kgの体重増加が期待できます。サルコペニア肥満がある場合は、プロテインパウダーなどを利用して低エネルギー・高タンパクの栄養管理を行います。レジスタンストレーニングはスクワットなど下肢の強化をメインに指導します(図4)。 レジスタンストレーニングができない患者に攻めの栄養管理を実施すると、筋肉を増やせず、脂肪だけが増えてしまうので、体重 1kgあたりの必要エネルギー(寝たきりの場合は 20~ 22 kcal/kgなど)を算定し、体重維持を優先します。 また、入院前の元気だったときの体重を患者や患者家族から聞き取り、現在の体重と比較するのも有効です。入院時のBMIが普通体重の範囲内であっても、元気だったときから 4~ 5 kgほど減っていたら、体重の増加を目指した方がよいでしょう。BMIが 18.5未満の低体重でも、元気だった頃の体重と同じであれば、その体重を維持すればよいと考えます。いずれにせよ、栄養管理によって、ADLが改善され、社会参加が可能になるかどうか、多職種で予後を予測してプランを考えることが大切です。
「食べられる食事」と「できる運動」を提案 退院後も食事や運動を継続してもらうためには、まず、患者が日常生活で栄養や運について気をつけていることがあれば、褒めてモチベーションを高めます。それとともに、「さらにこれくらいならもっとできますか?」と確認して、患者があまり負担に感じない程度に追加の提案をすることが重要です。 たとえば、肉が好きな患者で低栄養や低体重の場合は、改善のために脂肪が多いカルビを、逆に肥満の場合はロースやハラミなど脂肪が少ない肉を食べるよう勧めます。日頃から散歩をしている患者には、さらに 1日 3~ 5分間の筋トレの追加を提案するのもよいでしょう。 動物性タンパク質や乳製品が苦手な場合は、豆腐など豆類や玉子でのたんぱく質摂取を勧めます。何も運動をしていない場合は、朝起きてから、布団の中で 3分間だけでも体操をしたり、歯磨きしながらつま先立ちをするなど、患者が「これならできそうかな」と思える提案をして、日常生活の中でのルーチン化を目指しましょう。そのためにはやはり、食生活や食事の好みは管理栄養士、運動習慣は理学療法士など、職種の専門性を活かした聞き取りと指導が欠かせません。
サルコペニアの摂食嚥下障害のチェックと指導 入院前に摂食嚥下障害がなかった高齢の患者が入院後 2日間以上禁食となった場合、60日後に26%が摂食嚥下障害となり、その全員に全身のサルコペニアを認めたという報告があります(J Gerontol A Biol Sci Med Sci 2017;72:1290-4)。 2019年2月には、日本摂食嚥下リハビリテーション学会、日本サルコペニア・フレイル学会、日本リハビリテーション栄養学会、日本嚥下医学会の4学会が合同で作成した「サルコペニアと摂食嚥下障害 4学会合同ポジションペーパー(日本語訳)」を、4学会のウェブサイトに掲載しました。その中に、サルコペニアの摂食嚥下障害の診断フローチャートが掲載されています(図5)。 診断フローチャートは握力低下または歩行速度の低下、全身の筋肉量低下といったサルコペニアのスクリーニングと、摂食嚥下関連の判定項目を組み合わせた内容です。嚥下関連筋群の筋力低下(舌圧が 20 kPa未満)は舌圧計を用いて判定します。ただし、舌圧計がない場合でも、そこまでの評価が必要となった時点で、サルコペニアの摂食嚥下障害の可能性ありと判断して介入することが勧められます。 栄養・運動指導については、サルコペニア対策としてエネルギーとタンパク質の充足、全身のレ
医原性サルコペニアに注意!リハビリテーション栄養の考え方と指導のポイント3若林秀隆(横浜市立大学附属市民総合医療センターリハビリテーション科准教授)
・医原性サルコペニア予防には多職種によるリスク評価が必要・低栄養のチェックとサルコペニアのスクリーニングを早期に実施・リハビリのゴールは患者のADLの改善と社会参加・退院後の生活を見据えたマネジメントサイクルを回す・患者が日常生活でルーチン化できる栄養・運動指導を実施・高齢の入院患者は嚥下障害の可能性を念頭に置いて指導
図1 GLIM基準
(Clinical Nutrition 2019;38:1-9より改変)
ジスタンストレーニングを勧めます。それとともに、「嚥下おでこ体操」(図6)など喉の筋トレや、舌を上あごに 10秒間押しつける舌の筋トレを指導します。 基本的に、サルコペニアがある入院患者は嚥下障害を起こしやすく、大腿骨近位部骨折後の入院中に誤嚥性肺炎を起こす例などもあります。先に説明したように、サルコペニアと骨粗鬆症は併存している可能性があるため、嚥下障害の可能性を常に念頭に置きながら、必要に応じて言語聴覚士による早期介入も検討します。 筋力や身体機能は早ければ 1ヵ月ほどで改善効果が見られるケースもありますが、筋肉量の回復には 2~3ヵ月以上かかることが多く、急性期病院での入院期間ではフォローしきれないことも多い
です。そのため、メディカルスタッフと患者が同じ目標をしっかり共有したうえで、退院後もじっくり運動を続けてもらうことが大切です。
POINT
□意図しない体重減少・過去6ヵ月に5%超・6ヵ月以上の期間に10%超□低BMI・18.5 kg/m2未満(70歳未満)・20.0 kg/m2未満(70歳以上)□骨格筋量減少・体組成測定法(DXA、BIA、CT、MRIなど)の検査値が基準値以下
現症(患者の状態)
□摂取量減少または消化能力低下・エネルギー必要量の50%以下の状態が1週間を超える・エネルギー摂取不足が2週を超える・慢性的な消化器症状
□炎症・急性疾患・侵襲・慢性疾患
原因
© 2018 Elsevier Ltd, European Society for Clinical Nutrition and Metabolism and American Society for Parenteral and Enteral Nutrition. Reprinted with permission from Elsevier.
24 Osteoporosis Japan PLUS Vol.4 No.2 2019
メディカルスタッフのための骨代謝マーカー入門
測定値の見方と評価法監修:三浦雅一 (北陸大学薬学部薬学臨床系 教授、本誌編集委員)
マーカーの値から骨代謝の状態をどうやって判定するの?
一般に臨床検査の測定値は、なんらかの基準に照らして評価され、問題があるかないかを判定されます。この判定の基準となる数値を基準値といいます(正確には基準範囲*という)。血圧、血糖値、コレステロール値など、それぞれの検査項目について基準値があり、骨代謝マーカーについても各マーカーごとに基準値があります。基準値はどのようにして決められているのでしょうか。健康な成人をおおぜい集めて検査すると、ほとんどの場合、検査結果は図1のような正規分布になります。正規分布では平均値の近くに多くの人が集まり、値が極端に高い人や低い人はごくわずかです。ある検査の結果が正規分布をしているときに、平均値を中心として、各測定値がどのように散らばっているかを表すのが、標準偏差です。散らばり方が大きく、平均値の近くの値が比較的少なくてグラフの山が低いと、標準偏差が大きくなります。正規分布では平均値±標準偏差(SD)の範囲に全測定値のおよそ68.3%、標準偏差の2倍(±2 SD)の範囲にはおよそ 95.4%が含まれます。臨床検査の項目では通常、「平均値±2 SD」が基準値とされていますが、骨代謝マーカーの基準値は全体の 95.0%となる「平均値±1.96 SD」が用いられています。マーカーの測定値が基準値の範囲内なら骨代謝は正常と評価されます。測定値
が基準値の上限を超えていると骨吸収が活発すぎ、基準値の下限を下回っていると骨形成が弱いということになります。骨粗鬆症治療薬を選択するときは、このような骨代謝マーカーの測定結果から推測される骨代謝状態が考慮されます。
マーカーの値の変化から治療の効果をどうやって評価するの?
治療によって骨代謝マーカーが変化したかどうかを調べるときには、少なくとも薬物治療開始前
と開始後の 2回、骨代謝マーカーを測定します。このとき注意しなければならないことがいくつかあります。ヒトの脳には体内時計があり、これによって睡
眠と覚醒のリズムが調節され、体温、血圧などが周期的に変化します。これを日内変動といいます。骨代謝マーカーにも日内変動があり、朝は高く午後に低下します。したがって、治療効果を調べるときは、2回とも同じ時間帯に骨代謝マーカーを測定する(同じ時間帯に採血または採尿する)必要があります。しかし、骨代謝マーカーの値は身体活動に伴っ
て常に変化し続け、またそのときの体調にも影響を受けるので、同じ時刻に測定しても同じ値とはかぎりません。骨代謝マーカーの種類によっては食事の影響を受けるものもあり、それに加えて測定誤差もあります。このような種々の原因による測定値のゆれやバ
ラツキを、変動といいます。治療を続けた結果、骨代謝マーカーの値が変化したとしても、その変化がこのような変動の範囲を超えているのかどうかがわからないと、正しい評価ができません。そこで、それぞれの骨代謝マーカーについて、
測定条件を可能なかぎり同じにした場合に、それ以上の変化なら意味がある(変動ではなく明らかに変化したといえる)という値が決められていま
す。これを最小有意変化(MSCまたはLSC)**といいます。
2回目以降の測定値が基準値の範囲内か、または最小有意変化を超える変化がみられた場合は、「効果あり」と判断され、治療を継続します(図2)。
マーカーの値に変化がないときはどう考えればいいの?
1回目に対する 2回目の測定値の変化が最小有意変化を超えなかった場合は、治療の効果が不十分だったと考えられます。その理由としては、治療薬の選択が適切でなかった可能性もありますが、服薬が不十分だった可能性もあります。コンプライアンスが悪く、きちんと服薬していなかったり、服薬の方法や時間帯が不適切だったりしていないか、患者に聞いて確認します。服薬に問題がないことがわかった場合は、測定
条件などが不適切でなかったかどうかも調べてみる必要があります。たとえば、1回目と 2回目で検体採取の時間帯が違う、季節の違いなどによる患者の体調の変化、測定依頼先の検査センターが変わった、などです。また、1回目の測定後に骨折していたり、骨代謝マーカーに影響する腎機能低下や他の疾患が発生していたりすると、正しい評価ができません。これらを一つひとつ検討して、有意な変化がみ
られない原因をはっきりさせることが重要です。そして、患者が「治療の効果がない」と思い込んで治療の意欲をなくすことがないように、適切なアドバイスが必要です。治療薬の効果不十分であること以外に原因が考
えられない場合は、治療薬の変更が検討されます。
前回は骨代謝マーカーを測定する目的、マーカーの種類とそれぞれの特徴、検査の仕方や注意点などを学びました。第2回は測定結果の数値をどのように読んでどう評価するのかを、少し詳しくみていきます。医師から説明された測定値の意味を、患者さんが忘れてしまったり、よく理解できていなかったりしたら、できる範囲でわかりやすく説明してあげましょう。
第2回
*注: 厳密にいうと「基準値」と「基準範囲」は意味が違う。「基準値」の本来の意味は「医学的にみて健康で正常な人(基準個体という)の検査値」。したがって、基準値の集合が正規分布になるときの平均値±2 SDが「基準範囲」。しかし実際には「基準範囲」の意味で「基準値」が使われている。
図1 正規分布と標準偏差(SD)
平均
68.3%
95.4%
骨代謝マーカーの基準範囲(全データの95.0%)
-1 SD +1 SD +2 SD
+1.96 SD-1.96 SD
-2 SD
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無理強いするのでなく、参加した高齢者ができる運動を考えて指導するように心がける必要があります。 また、教室参加後に自主的にグループを作って運動を続けた人たちも効果が続いていました。フレイルの方でも参加できますから、ハイリスク例にはグループ活動を勧めることで運動継続をサポートすることが大切です。 自主グループでは、DVDを見ながら参加者が自主的に運動したり、参加者の中から自分で勉強して指導者として前に立つ人が出ていました。運動を専門に学んだ経験のない素人ですから、やり方を間違えることもあったそうです。それでも「フレイルに介入して介護予防を目指すためには、まずは楽しく運動を始めて習慣づけ、楽しみながら長く続けることが肝心」と山田さんは言います。
通いの場を介護予防に活かす 山田さんの知っている高齢の女性は、地域の木工教室に 10年ほど通っています。木工教室といっ
グすることが推奨されます。 病院や施設で運動できる時間は限られています。たとえば、運動のやり方をパンフレットにして渡し、宿題にして自宅に戻って運動してもらうようにすれば時間を確保できます。このように指導方法を工夫して、運動習慣を長く継続してもらうよう心がける必要があります。
自主グループ活動で運動継続 1年間のうちに一般の高齢者の約 5%が要介護状態になります。残念なことですが、この割合は介護予防事業が開始されて以降も減少していません。介護保険による要支援 1~要介護 5までの平均費用負担額も 1人あたり年間約 200万円で、こちらもほとんど変化していません。この現状を変えるためには、やはりまず要介護リスクの高いフレイルを早期に発見して介入することが必要です。 高齢者が運動教室に参加して、指導を受けながら 12週間運動を継続すると、身体機能は改善されます。しかし山田さんが追跡してみると、多くの場合、改善された運動機能の維持は、運動教室の終了後 1~2年間に限られ、4年後には運動による改善は明らかでなくなり、7年後には非参加者と差がなくなってしまいます(図4)。 運動効果が長く続いた人もいて、その人たちの多くは「教室で指導された運動が自分にとってやりやすいものだった」と答えていました。運動指導を行う場合は、指導者が得意な運動を参加者に
ても高齢者がお茶やお菓子を持ち寄って集まり朝から夕方まで会話して、肝心の木工はあまりやらないそうです。10年通っても木工の腕は上達しませんが身体は元気で、山田さんはその人に今後も教室通いを続けるよう勧めています。 こうした通いの場に参加する高齢者はまだまだ多くないようですが、地域差があって 4人に 1人、25%の高齢者がグループ活動に参加しているという地域もあります。集まる頻度は月1回から週1回。活動の中心はやはり運動ですが、それ以外にも会食や喫茶、趣味活動など各地の公民館などでは高齢者向けにさまざまな活動を企画しています。医療や介護関係者は情報を入手して高齢者に的確に伝える必要があります。 実際に介護予防の成果が認められた自主グループの活動をみると、運動をするグループばかりではありませんでした。介護予防になるのか少々疑問に思えるような、たとえば茶話会や干し柿作りなどでも、参加者にフレイル予防の効果が認められたのです。とにかく活動の場に定期的に来てもらい参加することが重要で、通うこと自体が運動になる側面もあったのではないかと思われます。 高齢者はどんなことに関心をもって集まってくるのでしょうか。グループ活動に参加した高齢者の会話を山田さんが注意して聞いてみました。医療施設でも介護施設でも、高齢者が集まるとどこでも行われるのが不健康自慢。自分の身体のどこがどう悪いか、どこの病院でどんな治療をしてい
介護予防フォーラム公開講座(3月21日・東京)より
通いの場でフレイル対策高齢者に自助・互助をアドバイス
国立長寿医療研究センターが主催する介護予防フォーラム公開講座が、3月21日に東京・御茶ノ水で開催されました。介護関係者を中心に参加を呼びかけ、「フレイルと介護予防」をテーマに、高齢社会におけるフレイル対策の重要性と、運動や栄養による介入の効果をめぐる最新の知見を、専門家が講演しました。筑波大学人間系教授の山田実さんは、フレイルへの介入による介護予防効果に関する興味深いデータを紹介し、身体だけでなく、フレイルの社会的側面にも注目して介入することが重要と強調しました。
フレイル対策は早期発見が重要 運動機能の衰えばかりでなく、認知機能や口腔機能、さらに外出や人付き合いなどの社会的活動の側面からみて虚弱状態(フレイル)にあると評価される高齢者は、将来的に要介護状態に陥るリスクが高く、介護の対象になることが予測されます。介護予防の根幹はフレイル対策であり、フレイルを予防し、フレイルの進行を止め、可能ならばフレイルを改善することが目的といえます。 高齢者の 1割がフレイルと考えられており、その早期判別は医療や介護関係者の重要な課題です。厚生労働省では、さまざまな角度から虚弱状態を評価して、フレイルを判別する指標を提示しています。その詳細は、平成 30(2019)年度老人保
険健康増進等事業で作成された「介護予防ガイド」(図1、ウェブサイトで入手可能)で解説されています。 まず、運動機能を含めた活動性や口腔機能・認知機能、気分や社会参加について質問する「基本チェックリスト」に加えて、閉じこもりと転倒、栄養を総合的に測定する「介護予防チェックリスト」を使って、ハイリスク高齢者を包括的にスクリーニングします。 フレイルを構成する個々の要素については、身体的側面からフレイルの判定には「J-CHS基準」、サルコペニアの判定には本誌でもたびたび紹介している「AWGSの診断基準」や、スクリーニングには「指輪っかテスト」を用います。認知的側面や社会的側面、口腔的側面(オーラルフレイル)についても、「介護予防ガイド」ではそれぞれに診断基準を提示しています。医療や介護の現場でこれらの指標を活用して、早期にハイリスク高齢者を抽出してフレイル対策を講じる必要があります。
外出と運動の継続でフレイル改善 高齢者の虚弱というと、運動機能の衰えが最も大きな問題と考えがちです。関心はどうしても運動療法に向きがちですが、山田さんはそれに加えて社会的要素の重要性を強調します。 山田さんの調査によると、フレイルと判定され
た場合、4年間で 3割の人は改善されますが、要介護状態になる人が3割、亡くなる人も 2割いて、半数の人で状態が悪化しました(図2)。 フレイルが改善された人の生活習慣を調べてみました。タンパク質の摂
取を心がけた人が多く、特にもともと乳製品の摂取が多い人ほど改善が認められました。それ以外には中~強度の運動習慣や、社会活動への参加に改善効果が認められました。栄養や運動に加えて、家に閉じこもらず積極的に社会活動に参加することがフレイル改善のポイントといえそうです。 このことにも関連して、興味深いのは外出の男女差です。ふだん外を出歩いている男性の姿をあまり見かけないため、一般的に男性のほうが閉じこもりがちに思われますが、自宅の周りなど身近な場所を散歩している男性が意外に多くいて、閉じこもりはむしろ女性に多かったのです。特に女性の場合、加齢に伴って外出するかしないかがはっきり分かれる傾向があり、こうしたことも影響して、女性のほうが男性の 2倍も要介護状態になりやすいことがわかりました。家に閉じこもらずに出歩くように、男性よりむしろ高齢女性にアドバ
イスすることが、フレイル対策や介護予防に有効かもしれません。 一方、運動機能の衰えを防ぐためには、どれくらいの量、どれだけの期間、運動すればよいのでしょうか。さまざまな検討の結果で、レジスタンス運動、バランス運動、ウォーキングの 3つが効果的で、特に筋力改善にはレジスタンス運動が効果があることがわかってきました。レジスタンス運動には筋肉量の維持や増強にも効果がありますが、日常生活動作全般を改善するためには、複数の運動を組み合わせて行うマルチコンポーネント運動(図3)が有効で、転倒予防や抑うつ症状の抑制にも効果があることが示されています。 運動の頻度や期間によっても効果は違ってきますが、指導に際しては、たとえば期間が 12週間ならば、週 2回、1回 90分というように、合計 25時間以上になるようなセッション数でトレーニン
図1 介護予防ガイド
るか。それ以外にもテレビの健康番組で得た知識など、たくさんの健康関連情報が高齢者の間で話題になっていることがわかりました。こうした情報交換によって、新しい病院で診察を受けたり、予防接種があると知って受けてみることで健康状態が改善される場合もあるでしょう。高齢者が集まって不健康自慢をするのも、案外大切かもしれません。 高齢者の運動教室には、自分で身体を動かす自助と、運動にはこだわらずみんなで集まって活動する互助の二つのパターンがあります。「運動嫌いの人にいきなり運動を勧めても効果は期待できません。自助と互助を組み合わせることがポイント」と山田さんは言います(図5) 通いの場は全国で年々増加しています。運動をきっかけに人が集まってくることの効果は大きく、たくさんの自主グループが活動する地域は、参加者だけでなく地域全体で要介護度が改善されることもわかってきました。通いの場を増やし参加者を増やすことが住民の健康増進につながり、地域が活性化していくのです。 山田さんは、国立長寿医療センターおよび筑波大学山田研究室のウェブサイトに掲載している「介護予防ガイド」の冊子は全国の自治体に配布する予定なので、関係者はぜひ参照してほしいと呼びかけて、講演を締めくくりました。
(監修:山田 実、筑波大学人間系教授)
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学科)は、「骨折した患者さんを支えている家族の負担や苦労が調査によって顕在化されました。また、介護負担の大きさから離職を余儀なくされている介護者が多いことも示唆され、骨粗鬆症に伴う介護負担が、社会全体で取り組む課題であることが示されました」と語っています。脆弱性骨折を起こした患者だけでなく、患者を
介護する家族とも接する機会が多いメディカルスタッフにとって、介護者が抱える身体的・精神的負担の大きさに配慮して、メンタルケアや生活環境改善の提案を行い、地域内の福祉関係者や介護施設とも連携するなどして、介護者の負担軽減に取り組むことも重要な役割の一つといえそうです。
骨折原因の介護離職で再就職・復職できるのは5人に1人
アンケートの調査対象は、脆弱性骨折を起こした50歳以上の親族を介助・介護する家族3071人で、介護が必要となった原因は椎体骨折が 26.6%で最も多く、次いで大腿骨近位部骨折(19.2%)でした。働いていて親族を介護することになった 2639人のうち、25%が転職または離職(休職中、無職)しています。離職した人のうち、再就職または復職したのは 5人に 1人(20.3%)、現在離職中の介護者の半数近く(47.9%)が社会復帰を望む一方、働くことが難しいと考える人は76%にのぼります。
骨折原因の介護離職者の3割が5年以上介護を継続
離職者の内訳は働き盛りの 40~ 50歳代が53.2%と半数を占め、60歳代が 36.5%で続きました(図1)。ここでも中高年が高齢者を介護する老老介護の実態が浮き彫りになっています。骨折した親族を 5年以上介護している人の割合は、介護者全体では 24%でしたが、介護離職者に限ると33.7%と高くなり、離職した人ほど介護が長期にわたり(図2)、介護される親族の介護度も要介護4以上と重度の割合が多くなっていました(図3)。
介護者が身体的に負担に感じていることでは、①「外出の付き添い・サポート」が 54.9%、②「トイレへの移動、お風呂に入れること」が 50.3%、また、介護者自身の体力ヘの不安として、③「自分自身が疲れてしまい、寝込みそうになる・寝込んだことがある」が 44.6%という結果でしたが、介護離職者でみると、①が 63.5%、②が 57.2%、③が53.7%と、それぞれの項目で高い割合になっていて、介護離職者ほど身体的な負担が大きくなる傾向がみられました。精神的な負担では「自分自身の人生を憂うことがある」と答えた割合が、全体では 43.1%だったのに対して、介護離職者では 56%と高く、自分のことがいつも後回しになって、休息がとれず、他の家族と過ごす時間が減って、外出やイベントへの参加も制限されることを負担に感じる人の割合が多いことがわかりました。
骨折原因の介護離職者の精神的負担軽減が重要
負担の軽減に関する質問では、全体では身体的負担の軽減を望む回答が多かったのですが、介護離職者に限ると、むしろ精神的負担の軽減を望む回答が多くなっていました。調査を監修した萩野浩氏(鳥取大学医学部保健
骨折した家族の介護で4人に1人が転職や離職を経験
ネット調査が明らかにする介護負担の実態
骨粗鬆症による脆弱性骨折は長期にわたり増加を続けています。2016年の国民生活基礎調査では、介護が必要になった原因の22.3%が骨折・転倒または関節疾患でした。医療や介護の費用の増大とともに、介護に追われる家族の負担も大きな社会問題になって
います。今年3月にアステラス・アムジェン・バイオファーマ株式会社が発表したインターネット調査の結果によれば、家族を介護する4人に1人が転職や離職を経験していました。家族介護は身体的にも精神的にも負担が大きく、仕事と介護の両立が難しいことが示唆されます。介護離職者は年間10万人に上ります。要介護になった原因の多くが骨折と考えると、社会に及ぼす影響からみて骨粗鬆症はけっして侮ることのできない疾患なのです。
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剤師と病院薬剤師の連携事業の一環として、会員薬局からのプレアボイド(事例報告)を収集しています。2016年からはオンラインで報告できるようになり、収集されたプレアボイドは同薬剤師会のウェブサイトで公開され、会員間で情報共有されています。今回の報告は、同薬剤師会と福岡大学、第一薬
科大学が共同で 2010~ 2017年の収集事例を解析し、薬局薬剤師による副作用回避事例の特徴その医療経済効果を明らかにしたものです。プレアボイドの事例を有害事象の未然回避事例と重篤化回避事例に分類し、患者の年齢や性別、発見のきっかけ、介入理由や介入の結果(処方変更内容)と、回避されたリスクを検討しました。この期間の年間報告数は平均 37件で、有害事
象の未然回避事例は 287件、重篤化回避事例は 10件でした。なお、この報告では、通常の副作用に加えて、原疾患の重篤化、副作用の再発、残薬などを合わせて「有害事象」としています。
介入により有害事象を未然回避した事例件数の患者年齢分布では、70歳代が 24.1%と最多で、60歳代 14.7%、80歳代 12.2%がこれに続きます。年齢が報告されなかった 45例を除くと、70歳以
上の高齢者が半数近く(108例 /233例)を占めました(図 1)。リスク発見のきっかけとなったのは、「お薬手
帳」が 120件(41.8%)と最多で、「服薬履歴」56件(19.5%)、「症状の訴え」44件(15.3%)、「処方 箋」37件(12.9%)と 続 き ま し た。ま た、2013年から報告されるようになった「検査値」がきっかけとなった事例も 16件(5.6%)あり、うち 11件は腎機能の検査値でした。60歳代以下と 70歳代以上に分けて発見のきっかけをみると(図 2)、「お薬手帳」と「検査値」の割合が 70歳代以上で有意に高く、「症状の訴え」の割合は有意に低いという結果でした。薬局薬剤師による薬学的介入の理由としては、
同種同効薬の重複、禁忌、同成分の重複、処方エラー疑い、薬物相互作用、過量投与などが多く認められました。その結果、不要な薬剤の中止や他剤への変更などの処方内容変更が行われ、重大なものを含む副作用の発現(226件)や再発(13件)、原疾患の増悪(42件)などの有害事象を回避することができました。一方、介入により有害事象の重篤化を回避した
事例は 70歳代が 5例、80歳代が 2例で、30歳代、50歳代、60歳代が 1例ずつでした。発見のきっかけは「症状の訴え」8件と「検査値」2件。介
多くの疾患を抱える高齢者は服用する薬剤も多く、副作用のリスクが高くなります。高齢患者における薬剤の適正使用と安全管理には、医師だけでなく薬剤師も積極的に関与する必要があります。
1997年に「重大な副作用回避のための服薬指導情報集」の年 1回発行を開始した日本病院薬剤師会では、1998年に副作用回避事例報告の制度をスタートさせました。そして 1999年 2月、この制度のいっそうの普及・浸透を図るため、呼称を「プレアボイド」(PRE-AVOID: prevent and avoid the adverse drug reaction)に変更しました。この制度は、病院薬剤師が入院患者の服用薬や検査結果をチェックして、医師に報告や提案を行うことにより、副作用を未然に回避したり重篤化を防いだりした事例や、より有効な薬物治療を行うことができた事例を報告するもので、2015年度末までの 17年間に 3万件を超える副作用重篤化回避事例と、23万件を超える未然回避事例が集積されています。そしてこれらの事例の解析から、病院薬剤師による医師への処方提案や処方設計支援が副作用のリスクの回避につながっていることも明らかにされ、行政や地域薬局にも同制度の意義が知られるようになってきました。
薬剤の副作用が問題になるのは入院患者ばかり
ではありません。外来通院患者や、保険薬局で服薬を管理されている患者も同様です。病院薬剤師に比べて、薬局薬剤師が医師と連携することのハードルは高いと思われます。ですから、とくに施設や自宅で療養を続ける高齢患者の場合は、地域連携で服薬の安全管理を支援する必要があります。その意味で、今後、地域薬局の果たす役割に期待が集まります。患者が処方箋とお薬手帳を持参して薬局を訪れた機会に、薬局薬剤師が副作用やそのリスクに注意して処方をチェックして、病状に関する患者の話を聞くようにすれば、多くの副作用を回避できる可能性があります。本誌で紹介している健康サポート薬局は、すでに全国各地でこうした役割を担っています。しかし、それらの事例が病院薬剤師会によるプレアボイドのように集積されないと、特徴や傾向などを分析して問題点を見つけ出すことができず、事例報告を模範や教訓として医療現場に還元することもできません。
薬局薬剤師による副作用回避事例報告の検討としては、これまで少数の薬局が短期間に収集した事例に関するものがあるだけでした。しかし最近、久留米三井薬剤師会(福岡県久留米市、会員数
270名)から興味深い調査結果が報告されました(薬理と治療(Jpn Pharmacol �er)2019;47:375- 82)。久留米三井薬剤師会では 2009年から、薬局薬
入による処方変更は被疑薬の中止が 6件、薬剤の変更と減量が各 2件で、これらの薬学的介入により全例が回復しました。
薬局薬剤師によるこれらの介入によって、241例 249件が処方変更されました。これらは重複投薬・相互作用等防止加算の算定対象であり、その保険請求金額は 7万 2300円でした。しかし、仮に介入が行われなかったとすると、副作用の発生や増悪によって 249件が「医薬品副作用被害救済制度」の対象となり、被害救済のために 7708万円が支払われたと推定されました。薬局薬剤師の介入によって医療費は 1066分の 1に抑えられたことになります。介入と事例報告そのものにかかるコストを考慮しても、薬局薬剤師による有害事象回避のための介入は、医療経済効果がきわめて大きいといえるでしょう。
この調査で、薬局薬剤師が報告した有害事象の未然回避事例は、入院患者での報告と同様、70歳代を中心に高齢者が多いことが明らかになりました。
入院患者の場合と比較して特徴的だったのは、お薬手帳が他科や他院での処方薬との重複・相互作用の発見のきっかけとなった事例が多かったことです。この傾向はとくに高齢患者で顕著でした。また、検査値が発見のきっかけになった事例がみられたのは、近年、処方箋に検査値を印字する医療機関が増えていることを反映したものと思われます。薬学的介入の理由としては、同種同効薬の重複や、同成分の重複が発見されて中止になることが多く認められました。こうした重複は、複数の医療機関で受診することの多い高齢患者に起こりがちで、医療機関では受診時に患者がお薬手帳を提示しないと発見が難しいでしょう。今回の検討で、薬局薬剤師による処方チェックの医療経済効果はきわめて大きいことがわかりました。もちろん、副作用のリスク回避は患者にとっても大きなメリットになります。患者が薬局薬剤師からアドバイスを受けることは、服用忘れの予防にもつながるかもしれません。薬局薬剤師が医療機関と連携して患者の服薬を支援する、今後こうした動きがさらに広がっていくことが期待されます。
(監修:神村英利、福岡大学病院薬剤部)
薬局薬剤師によるプレアボイドの収集
事例収集は通院患者の管理でも重要
注目される副作用回避事例収集の意義
副作用回避における薬局薬剤師の役割プレアボイドからわかる薬学的介入の意義
36 Osteoporosis Japan PLUS Vol.4 No.2 2019
エネルギー源ではなく身体機能と代謝を調節五大栄養素のうちエネルギー源となるのは炭水化物、脂質、タンパク質のみで、ビタミンとミネラルはエネルギー源にはならず、身体の機能や代謝を調節するのがおもな役目です。ただし、前々回の「身体を作る栄養素たち」で紹介したとおり、ミネラルの中には身体の構成成分となっているものもあります。ビタミンとミネラルの大きな違いは、有機物(炭
素を含む化合物)か無機物(栄養素としては化合物ではなく単体で、多くは金属元素)かです。代謝とは、生命現象の維持に必要な、細胞内外で
のさまざまな化学反応(物質の合成・分解、エネルギーの産生・消費)です。代謝の調節とはこれらの反応を引き起こしたり促進したり、あるいは抑制したりすることです。代謝を調節する物質としては他に酵素やホルモン
などがありますが、これらは体内で合成されます。これに対してビタミンは体内でまったく、または十分には合成されません(ビタミンDは紫外線の刺激により皮膚でも生合成され、またビタミンKは腸内細菌によって体内でも作られる)。多くのビタミン、とくにビタミンB群は、生体内
で補酵素(コラム参照)として働きます。
「ビタミン~」は発見順の仮の名前ビタミンとは「微量で体内のさまざまな機能を調節する、生命活動に必須の有機物」の総称です。「ビ
補酵素とは、酵素のタンパク質部分と結合することによって酵素を活性化する物質のことで、助酵素、コエンザイムともいわれます。補酵素自体はタンパク質ではなく、ビタミン類のような低分子の有機化合物です。もっとも有名なのは補酵素A(コエンザイムA、CoA)です。
補酵素、コエンザイム
監修:上西一弘[女子栄養大学栄養生理学教授、本誌編集アドバイザー]
管理栄養士が本当に伝えたい栄養の話 第4回
ンG、ビタミンH、ビタミンM(葉酸)はその機能から、現在ではビタミンB群とされています。
水溶性と脂溶性とで異なるビタミンの機能ビタミンには水溶性のものと脂溶性のものがあり、ビタミンB群とビタミンCは水溶性ビタミンです。ビタミンB群はおもにエネルギー源である栄養素の代謝を調節し、ビタミンCはコラーゲンや副腎皮質ホルモンの合成など多くの生化学反応にかかわっています。ビタミンA、D、E、Kは脂溶性ビタミンで、目や皮膚の健康維持(ビタミンA)、カルシウムの吸収(D)や沈着(D、K)、細胞内カルシウム濃度の調節(D)、血液凝固反応(K)、抗酸化反応(E)などに不可欠です。脂溶性ビタミンは水に溶けにくいので、過剰に摂取すると体内に蓄積され、頭痛(A)、食欲不振(D)、出血(E)などの症状が現れます。ビタミン類の中で高齢者にとってとくに重要で、しかも不足しがちなのは、カルシウムの吸収と骨への沈着を助けるビタミンDです。また、葉酸(ビタミンB9)が不足すると血液中のホモシステイン(ア
ミノ酸の一種)濃度が高くなり、動脈硬化をはじめとする高齢者に多い疾患を引き起こします。
ミネラルは微量でも摂取基準が示されている「ミネラルmineral」のもともとの意味は「鉱物」「無機(化合)物」です。栄養素としてのミネラルは十
タミン」は「生命のvital」「アミンamine」から作られた合成語で、ビタミンとして最初に発見された物質が「アミン」と呼ばれる構造をもっていました。ビタミンは上記の定義にあてはまる栄養素(アミン構造とは限らない)に対して、発見された順にアルファベットの記号をつけたものです。つまり、「ビタミンA」「ビタミンB」…というのは、いわば仮の呼び名であって、それぞれに物質としての化学構造にもとづく正式な名称(化学名)があります(表1)。「発見された順に記号を付けた」といいましたが、後から発見されてもビタミンBとよく似た性質と機能をもつ物質は、ビタミンB2、B3、B6…と、ビタミンB群にまとめられています。ただし、ビタミンB4、ビタミンB8などは、その後ビタミンの定義にあてはまらないことがわかりました。発見時にビタミンFやビタミンGとされた物質も、その後ビタミンではないことがわかったため、これらの呼び名は使われなくなりました。また、ビタミ
数種類で、「日本人の食事摂取基準」では体内の量が比較的多い多量ミネラルと、きわめて少ない微量ミネラルとに分けられています(表2)。これらの他に硫黄、コバルトなども必須のミネラルですが、これらは他の栄養素の一部として摂取されるので、摂取基準は示されていません。多量ミネラルであるナトリウム、カリウム、カル
シウム、マグネシウムは単独でさまざまな細胞機能を助け、体内環境を調節しています(体内のカルシウムの大部分、ナトリウムの1/3は骨に蓄えられている)。一方、微量ミネラルの多くは、各種酵素のタンパク質部分の構成成分として、またはそれらタンパク質と結合することによって、さまざまな代謝を調節しています。
過剰摂取や有毒金属摂取も通常は心配ないほとんどのミネラルは一時的に過剰に摂取しても
排泄されるので、問題が起こることはありません。しかし、慢性的・恒常的な過剰摂取は健康障害を起こします。ミネラル系のサプリメントは、ビタミン・サプリメントと同様に注意が必要です。なお、ミネラルの中には鉛、ヒ素、アルミニウム、
水銀など人体に有毒とされるものがあります。実際にはこれらの物質も、ごく微量ながら食物の一部として摂取されていますが、他の栄養素を十分に摂取していればこれらはすべて排泄されます(コラム参照)。しかし、特定の地域の特定の農水産物を大量に食べ続けることには、体内への蓄積に伴う健康上のリスクがあります。高齢者では食事量の減少に伴ってさまざまなミネ
ラルが不足しがちで、とくに重要なのはナトリウムとカルシウムです。ナトリウムは摂りすぎも要注意ですが、不足すると生命活動の基本単位である細胞の機能を維持できなくなり、熱中症などを招きます。カルシウムの摂取不足が続くと、骨に蓄えられたカルシウムが血液中に多く溶け出し、余分なカルシウムが血管壁などに沈着します(血管の石灰化)。
食物繊維も身体機能を調節している食物繊維は、「ヒトの消化酵素によって消化されない、食物中の難消化性成分の総称」と定義されていますが、実際にはそのほとんどが炭水化物のうちの多糖類です。食物繊維の多くは身体機能の調節に役立っています。セルロースなどの水に溶けない(不溶性)食物繊維は、腸を刺激して蠕動運動を盛んにし、また便の量を増やして排便を促進します。ペクチン、オリゴ糖などの水溶性食物繊維は他の栄養素の消化・吸収を促進したり抑制したりします。これらの働きはさまざまな腸疾患、糖尿病、動脈硬化症などの予防や症状改善に役立っています。
上西一弘[女子栄養大学栄養生理学 教授]
身体機能と代謝を調節する栄養素たち
栄養素ってすごい!̶ 4
40 Osteoporosis Japan PLUS Vol.4 No.2 2019
Ⅱ相で決めた用法・用量(推奨用量)で有効性と安全性を検証します。
「対照」との比較で有用性を評価
第Ⅲ相試験では薬物としての真の有効性を厳密に評価しなければならないので、そのためにいくつかのくふうが必要です。できるだけ多くの患者さんに投与することもその一つで、複数の医療機関で数百例から数千例が集められます。 治療効果を評価するときに、投与する前と後とを比較するだけでは正しい評価はできません。被験薬を投与しない場合と比較する、しかも「被験薬を投与しない」ということ以外は全く同じ条件で比較する必要があります。これを対照(英語でcontrol)といいます。そして治験に参加した患者さんを被験薬投与群と対照薬投与群とに振り分けます。 なお、治験で検討される候補物質は一般的に治験薬といわれていますが、旧厚生省による「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」(1997年)では、「治験薬」とは「被験薬及び対照薬(治験に係るものに限る)をいう」とされています。つまり、治験で検討の対象となる「被験薬」(候補物質)と、比較対象の「対照薬」(医薬品またはその他の物質で、後述のプラセボを含む)とを合わせて、「治験薬」と呼びます。
プラセボ効果を差し引いて真の効果をみる
対照薬群にはプラセボ(偽薬)を投与する場合と、すでに有効性と安全性が確立された同類の既存薬を投与する場合とがあります(コラム参照)。 プラセボであっても、患者さんがプラセボだということを知らずに本物の薬だと思っていると、ある程度の効果が得られることがわかっています(プラ
セボ効果)。そこで、プラセボ群との比較では、被験薬の効果とプラセボの効果との差が被験薬の真の効果ということになります。既存薬との比較では、既存薬と同等またはそれ以上の有効性と安全性があれば有用とされます。
登録基準や評価項目を明確にしておく
被験薬の効果を正確に評価するには、当該疾患の病態と背景因子(年齢、重症度、合併症、すでに受けている他の治療法など)の個人差があまり大きくないほうがいいので、登録基準と除外基準(重症患者や他疾患を合併している患者、妊婦や授乳婦など)
ヒトを対象に安全性にも最大限に配慮
新薬の開発過程のうち、前回は基礎研究と非臨床試験についてお話ししました。今回はいよいよヒトを対象とした臨床試験で、治験といわれるものです。 非臨床試験(動物実験、培養細胞実験)においても効果と安全性は詳しく調べられますが、動物とヒトとでは同じ薬物でも反応が違う可能性があります。そこで効果と安全性をヒトでも確認しなければならないのですが、確認する方法(試験方法・手順)それ自体も安全性と倫理性に十分配慮しなければなりません。 そこで、治験は表1のようにいくつかの段階に分けて行われます。この仕組みは、GCP(Good Clini-cal Practice)と呼ばれる「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」(1997年、旧厚生省)で決められています。
第Ⅰ相~第Ⅲ相で段階的に検討
第Ⅰ相臨床試験では少数の健康なボランティア(通常は男性のみ)に単回投与します。おもに調べることは、①ヒトに投与すること自体の安全性と忍容性(副作用があってもそれに耐えられるか)と、②ADME(吸収・分布・代謝・排泄)の2つです。対象が患者さんではないので、有効性は評価できません。 第Ⅱ相臨床試験の多くは前期と後期とに分けて行われます。前期では少数の比較的軽症の患者さんを対象に、条件をいろいろ変えて、安全で有効な用法・用量を探ります。後期ではもう少し多数の患者さんを対象に、前期で検討された投与量の範囲で用量反応試験を行って、適切と考えられる用法・用量を詳しく検証します。 第Ⅲ相臨床試験では多数の患者さんを対象に、第
を設けて患者さんを選びます。 また、試験計画(プロトコール)を定めて方法・手順を細かく決めておき、逸脱した患者さんは治療を中止したり、評価対象から除外したりします。 あらかじめ評価項目を設定することも重要です。薬の真の価値は、治療の本来の目的を達成したかどうかで評価するべきですが、それには長い期間を要する疾患もあります。たとえばがんでは生存期間の延長、高血圧では心血管疾患の発症予防、骨粗鬆症では骨折の予防が治療の最終目的です。しかし、治験では5年や10年も観察期間を設けることはできないので、腫瘍サイズ、血圧、骨密度などの代替評価項目が使われます。 事前に治験の内容や注意事項などを患者さんに説明し、理解を得たうえで自由意志による同意を文書で得るという、インフォームド・コンセントも必須です。
ランダム化と盲検法でバイアスを避ける
治験参加者を被験薬群と対照薬群とに振り分けるときは、背景因子に偏り(バイアス)がないようにしなければなりません。そこで、ランダム化(無作為化)と呼ばれる操作が行われます。たとえばコインを投げてオモテなら被験薬群、ウラなら対照薬群というように単純に決めることもありますが、多くの背景因子を考慮しなければならないときは、より複雑な方法をいくつか組み合わせて行います。 こうして患者さんをランダムに振り分けても、どの患者さんが被験薬群かがわかってしまうと、結果やその判断にバイアスがかかって、客観的な判断ができないおそれがあります。そこで、盲検法が採用されます。被験薬かプラセボ(または既存薬)かを患者さんだけに知らせないのが単盲検、患者さんにも治療する医師にも知らせないのが二重盲検です。医師にも知らせないのは、期待した効果にそぐわない結果を医師が見すごしてしまったり、医師のなんらかの言動が患者さんに影響を与えてしまったりするのを避けるためです。
両群間の差に「意味がある」かを調べる
治験の結果は統計処理されます。単に「有効」だった患者さんが対照薬群よりも多かったとか、測定値の平均がより大きく変化したというだけでは、偶然や誤差の範囲ではないとは言い切れないからです。決められた評価項目について、被験薬群と対照薬群の結果の差が、偶然とは考えられないような意味のある差(有意差)なのかどうかを、統計学的に調べます(コラム参照)。 効果だけでなく、副作用についても比較し、同様に両群の間に有意差があるかどうかを調べます。 こうして有効性と安全性において意義のある結果が得られたら、非臨床試験と治験のデータを揃えて、厚生労働省に製造販売の承認を申請します。それに対して、医薬品医療機器総合機構(PMDA)でさまざまな分野の専門家からなるチームが審査し、問題がなければ承認されます。
表1 新しい医薬品の開発プロセス
監修:三浦雅一[北陸大学薬学部薬学臨床系 教授、本誌編集委員]
薬ができるまでと、できてから-2
治験の手順と薬効評価法中島孝則[日本薬科大学臨床薬剤学 教授]
薬剤師でなくても知っておきたい薬の話 第6回
基礎研究
非臨床試験
臨床試験(治験) 第Ⅱ相少数の患者で投与方法・投与量を検討
比較的多数の患者で適切な用法・用量を設定
多数の患者で有効性と安全性を検証
製造販売承認
化合物の合成、スクリーニング
毒性試験、薬理試験、薬物動態試験
第Ⅰ相(臨床薬理試験) 健康な志願者で忍容性と体内動態を評価
前期(探索試験)
後期(用量反応試験)
第Ⅲ相(検証試験)
申請→医薬品医療機器統合機構(PMDA)による審査→厚生労働大臣による承認→販売
製造販売後調査、製造販売後臨床試験(臨床第Ⅳ相試験)
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地域を支える! 健康サポート薬局 第13回
地域住民の健康増進目指し骨量&ロコモチェックかかりつけ薬局から健康サポート薬局に̶八潮市・イトー寿薬局
宮原富士子(薬剤師・本誌編集アドバイザー)
(株)ジェンダーメディカルリサーチ代表取締役社長NPO法人 HAP(Healthy Aging Projects for Women)理事長(有)ケンコーポレーション取締役 ケイ薬局薬剤師
Osteoporosis Japan PLUS Vol.4 No.2 2019
埼玉・八潮市の健康サポートキャンペーン展開
NPO法人HAPが展開している骨量&ロコモチェックキャンペーンは、健康サポート薬局が開催する健康イベントに連動して、全国各地に着実に広がっています。一般市民の骨粗鬆症やロコモ予防への関心は想像以上に高く、従来のイベントにもましてたくさんの参加者があることに、HAPには薬局関係者から驚きと喜びの声が多く寄せられています。 埼玉県八潮市のイトー寿薬局で3月に行われた健康イベントでは、骨量&ロコモチェックキャンペーンに合わせて私も参加して講演を行いました。 イトー寿薬局のある八潮市は、埼玉県の東南に位置し、都心から20kmほどの好立地で高度経済成長期に着実に人口が増加してきました。さらに、2005年のつくばエクスプレス八潮駅の開業で人口は8万人を超え、その後も増加傾向をたどって、現在は9万1千人にのぼっています。ただ、年齢別の変化をみると、高齢者人口の増加と若年者人口の減少傾向が認められます。一方で、さまざまな健康情報に接する機会も多いことから、高齢者を中心に地域住民の健康への関心も年々高まっています。 ロコモ&骨量チェックキャンペーンの様子とともに、イトー寿薬局が健康サポート薬局として活動を始めるまでのさまざまな苦労を、伊藤達紀さんに語ってもらいました。
健康サポート薬局届け出を目指して
「健康サポート薬局として活動することになった
ただいたことが良いきっかけになりました」(伊藤さん)。
研修後の書類準備に追われる
健康サポート薬局になるための要件として、24時間対応や在宅対応が求められ、疑義紹介や受診勧奨などで日ごろから地域の医療機関と連携するとともに、医師以外の多職種との連携の実績が必要です。かかりつけ薬局としての基本をおさえたうえで、連携する機関のリストを作成し、医療機関以外の関連団体も含めた協力体制を整備する必要があります。かかりつけ薬局としての活動にプラスアルファが求められるわけです。健康サポート薬局に常駐する薬剤師には、5年以上の実務経験に加えて、事前研修を受けることが求められます。 この研修は30時間に及び、健康サポート薬局の基本理念に加えて、利用者の現状把握や地域住民の健康増進のための医療・介護の連携と薬剤師の役割について学び、禁煙や健康食品、感染症や認知症対策などの知識を習得する必要があります。 「さっそく宮原さんが主催する健康サポート薬局の研修に参加しました。何時間もパワフルに講義する宮原さんの姿には圧倒されましたが、楽しく学ぶことができて、研修はあっという間に終了しました」(伊藤さん)。ただ、eラーニングを含む研修はスムースにクリアできたものの、届出に必要なさまざまな書類があり、毎日の薬局業務のため、伊藤さんはその作成になかなか取り組めないまま半年が経過してしまいました。 届出書類には、かかりつけ薬局の基本的機能に関するものと、健康サポート機能に関するものとがあ
り、前者は法令手順書に加えて薬剤師の勤務表や各種説明用資料、指導管理の実績を示す書類なども必要です。後者は研修の修了証と業務手順書、健康サポート薬局として活動するための掲示物や、すでに行ってきた健康増進の取り組みの実績を示す資料なども揃えなければなりません。薬局薬剤師にとってこうした書類準備はたいへんな作業といえるでしょう。
もう一人研修を受ける必要が!
当時、イトー寿薬局では月に1回「健康講座」を開催して、伊藤さんが研修で学んだロコモ体操などを参加者に紹介していました。店舗での講座開催に慣れて、届出準備の時間もとれるようになった頃、3日間かけて業務手順書を何とか完成させて届け出たといいます。 ただ、初回の届出時には、伊藤さんが学校薬剤師として勤務したり、在宅対応で薬局を離れることがあったため、健康サポート薬局の研修を受けた薬剤師が不在になっては「常駐」の条件に反することから、届出は受理されませんでした。これまでどおりイトー寿薬局で学校薬剤師を務め、在宅対応も続けていくためには、もう一人薬剤師が健康サポート薬局の研修を受ける必要があったのです。そこで伊藤さんは、当初健康サポート薬局になることに腰が重かった父親の憲治さんを説得して、研修を受けてもらうことにしました。
すべての始まりは、地域の健康関連の集会での宮原さんとの出会いでした」と伊藤さんは言います。 1973年に創業したイトー寿薬局は、当初から医薬品以外に化粧品や日用品の販売を手がけ、薬局としても調剤業務に加えて健康相談や漢方相談、さまざまな健康指標の測定会など、健康関連の企画に積極的に取り組んできました。急速な人口増加と高齢化の進展という八潮市の変化に合わせて、地域薬局として近隣住民の健康を見守り続けてきたのです。 「2016年9月に埼玉で、スカイツリーライン沿線の医療や介護関係者が、情報を共有して連携を強化するために『ほぼスカイツリーライン地域ケアコンソーシアム第1回年次学術集会』という集まりが開催されました。地域住民の健康支援のためには、医療機関や介護施設が連携して対応することが必要と考え、この集会に参加したのですが、その際に会場で、講師として参加していた宮原さんから『健康サポート薬局、目指そうよ!』と直接声をかけてい
憲治さんが研修を修了して、伊藤さんは再度保健所に届出に赴きましたが、今度は内容面で指摘を受けてしまい、申請書類を整えるためにさらに数回、保健所に通うことになりました。おかげで保健所の担当者とすっかり顔見知りになって、質問があれば何でも親切に答えてくれるようになりました。こうしたやりとりと苦労が奏効して、2016年12月に届出が受理され、イトー寿薬局は晴れて健康サポート薬局になったのです。
健康サポート薬局として活動開始
「健康サポート薬局となってからは、店舗でいろいろな健康関連企画を行い、啓発のための店頭や店内の掲示も、工夫を凝らして数を揃えました。2017年11月には「第1回幸年期Café@やしお」と題して、宮原さんをはじめ、管理栄養士やスポーツトレーナーを講師陣として迎え、講演会を開催しました。地域住民だけでなく、地域包括支援センターに勤める介護関係者や他の薬局関係者も招待しました。この企画では宮原さんが更年期の女性をめぐるさまざまな問題とその対処法について解説し、骨粗鬆症やロコモを予防するための栄養や運動について紹介しました。また、トレーナーの方は上手に身体を動かすコツをテーマに、実践的なトレーニング法を披露しました。盛りだくさんの内容で参加者の好評を博しました」(伊藤さん)。 この後もさまざまなイベントを展開してたくさんの来店者を集め、健康サポート薬局としての活動も
広く地域住民に知られるようになってきました。その中で今回、3月11日から5日間にわたり行った骨量&ロコモチェックキャンペーンには、骨粗鬆症やロコモに関心のある市民が多く来店しました。11日夜に講演会が行われましたが、たまたま1ヵ月ほど前にテレビのワイドショーの特集でかかりつけ薬剤師が取り上げられ、その際にイトー寿薬局が紹介されたこともあって、関心をもった多くの市民が集まり、熱心に講演に聞き入っていました。 こうした企画以外に毎月の薬局店舗での健康講座や、地域包括支援センターへの出前講座、認知症サポーター養成講座など、さまざまな催し物を行い、ポスター掲示や資料の配付などで、日々啓発活動に取り組んでいます。
今後は健康サポート薬局を増やす手伝いも
「調剤報酬点数の加算にはならなくても、地域住民や、目の前にいる患者さんのために何かしてあげたい。私たちの薬局を選んでくださった患者さんを、かかりつけ薬剤師として支え続けていきたいと考えています」。伊藤さんはこうした気持ちで活動することこそが、地域住民の健康増進に貢献する健康サポート薬局のあり方ではないか、と思っているそうです。 「健康サポート薬局をめぐっては、薬剤師の負担が大きいとか責任が重くなるといった声も聞かれますが、実際に健康サポート薬局になってみると、患者支援のための活動はこれまでやってきたことと変わりありません」と伊藤さんは言います。「患者さんのことを想い、自分たちができる精一杯のことを行っていくだけです。今後は健康サポート薬局を増やすお手伝いをしていきたいですね」とこれからの希望を語ってくれました。 イトー寿薬局ではホームページやフェイスブックを活用して、講演会などの情報だけでなく、服薬をめぐる患者さんのさまざまな疑問や悩みに答える対応をしていて、来店できない場合は在宅での服薬指導も行っています。 6月には姫路でも骨量&ロコモチェックキャンペーンを行い、好評を博しています。私たちはこのキャンペーンを通じて、全国各地で健康サポート薬局の活動を支援し、地域住民の健康増進に向けた動きをさらに大きくしていきたいと考えています。
イトー寿薬局外観
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運動コーディネーター松井 浩(国立病院機構京都医療センター臨床研究センター)航空自衛隊、大阪府河内長野市消防職員を経て、医師会、病院、自治体などで運動指導に従事。若い時の怪我をきっかけに、運動を取り入れた健康づくりを提唱。 (有)ヒューマンモア代表。
運動指導 手がかり足がかり
継続につながる指導のポイント
運動習慣が続かないのはなぜ?
第13回第13回
集団への運動指導 運動を継続してもらうには
Osteoporosis Japan PLUS Vol.4 No.2 2019
ウォーキングは人気の高い運動です。しかし、効果が実感できなかったり、「雨が続いたから」などを理由にやめてしまう人が多いのも事実。また、ウォーキングは肘を曲げて腕を振りながら行うと効果的と知っている人は多いのですが、実行できている人は少ないようです。高齢者では歩幅が小さく、歩行スピードも遅くなりがちです。そこで今回は、高齢者のための肥満予防の運動教室を例に、運動継続につながる指導と、屋内でできるウォーキング「前後歩き」を紹介します。
●クイズでアイスブレーク、知識を得る最初に運動に関するクイズを出し、挙手で答えてもらいましょう。参加者の知識レベルを把握できるとともに、場の雰囲気が和やかになり、運動意欲も高まります。指導者側もリラックスして本領発揮できるという効果もあります。<クイズのシナリオ例>「同じ人が同じ歩き方をした場合、屋外と屋内のどちらが肥満予防に効果的でしょうか?」「屋外だと思う人は? 次に屋内だと思う人?」「正解は……実は効果はほとんど同じです! ウォーキングは外でやるものと思ってましたか?自宅でも、腕を振って前後歩きをすれば肥満予防になります。屋内だと、天候に関係なく運動が続けられます。交通事故の危険性もありません。日焼けも気にしなくていいですね」●体感ワークで正しい動作を知るウォーキングのポイントは腕の振り方にありま
す。骨格筋の収縮を体感してもらうため、参加者同士でペアを組み、前後に並びます。「後ろの人は前の人の肩甲骨辺りに、湿布を貼るように手の平をピタッと当ててください」「前の人は、腕は下げたまま振らないで、その場で足踏みをしてください」「次に、腕を伸ばしたまま振ってみましょう。足踏みは続けてください」「最後は、肘の角度を90度くらいに曲げて振りましょう。足踏みは続けてください」「どうですか? 肘を90度に曲げて振ったときがいちばん肩甲骨が動いていますね。このように上半身の筋肉をしっかり使うと、エネルギー消費量が増えます。同じ時間、同じ距離を歩いても、腕を振らずに省エネで歩いているとやせる効果が小さくなってしまいますよ」体感ワークで肩甲骨や腕の動きがわかったら、「前後歩き」の運動に進みます。
2
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高齢者熱中症の現状と背景私達は体温を平熱に保つために発汗しますが、その際に体内の水分や塩分(ナトリウムなど)が減少したり、血液の流れが滞ることがあります。その結果、体温が上昇して重要な臓器が高温にさらされることにより発症する障害を熱中症といいます。総務省消防庁報告データ(2013~ 17年)によると、熱中症で救急搬送された人は年齢層別では65歳以上の高齢者が最も多く、全体の約5割を占めています。また、65歳以上の熱中症患者数の発生場所別の割合をみると、住宅での発生が半数を超えており、屋内での熱中症を予防するための対策が必要であることがわかります。熱中症死亡総数をみても男女ともに80~ 84歳
の年齢層で多く、65歳以上の割合は2015年では81%と非常に高くなっています。高齢者が熱中症になりやすい背景として、暑さや喉の渇きを感じにくいことに加え、体内水分量や血液量が少なく脱水に陥りやすいこと、体温を調節する機能が鈍化していることなどがあげられます。そのため、急激な気温上昇に対応できず、体に熱がたまって熱中症につながりやすいのです。
熱中症を防ぐ食の工夫喉の渇きを感じていなくても、普段からこまめに水分補給をするように指導します。暑さによる食欲減退を防ぐために、水分やミネラルを多く含
む野菜や果物を摂取し、調味料を上手に使うこと、暑くて調理がおっくうなときのために、火を使わずに簡単に調えられる料理を教えることも大切です。欠食を避けて栄養バランスのよい食事を心がけるように指導しましょう。また、暑くなる前の時期(5~ 6月頃)に、汗をかく運動を定期的に継続して行うことと、運動直後に牛乳など水分・糖質・タンパク質を多く含む食品を摂取することを勧めましょう。血流量が増加して体温調節機能を高めることができるので、こうした指導も熱中症対策になります。
指導のポイント高齢になると暑さを自覚しにくく、体温の調節機能も落ちてくるため、室内でも熱中症にかかりやすくなります。屋外・屋内の環境に応じた適切な水分補給について説明し、必要以上に体を動かさなくなることによる機能低下にも留意することが大切です。
高齢者の熱中症
管理栄養士 成田美紀(東京都健康長寿医療センター研究所)
青山学院大学大学院理工学研究科博士前期課程化学専攻(理学)、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科修士課程(医科学)修了。日本原子力研究所東海研究所、東京都老人総合研究所などを経て2011年より現職。主に虚弱予防のための栄養改善プログラム作成や食を通じたコミュニティ作りの提案、普及啓発を行っている。
運動器をじょうぶにする栄養指導 第13回
食事で水分・ミネラル補給
Osteoporosis Japan PLUS Vol.4 No.2 2019
レポート:骨粗鬆症財団の啓発活動
WCO-IOF-ESCEO 2019
国際会議「WCO-IOF-ESCEO 2019」、パリで開催効果的な啓発活動の方法を議論。動画コンテストの結果発表も。
54 Osteoporosis Japan PLUS Vol.4 No.2 2019
「国際骨粗鬆症財団」(IOF)と「骨粗鬆症と変形性関節症および筋骨格系疾患に関する臨床経済的視点に
ついての欧州会議」(ESCEO)が主催する、骨粗鬆症・変形性関節症・筋骨格疾患に関する世界会議
「WCO-IOF-ESCEO 2019」が、4月 4日~ 7日にパリで開催された。主催者の発表によると、参加者は
4136名で、集まった抄録数は 1416題、うち口演発表が 78題、それ以外はポスター発表であった。参加者はヨーロッパ諸国からが多く、アジア諸国からの参加は
全体の 10.6%、そのうち日本からの参加者が 1割を占めた。
今年は、IOFが 2年ごとに主催・開催する骨粗鬆症患者会(Patient Society)の世界大会の開催年にあたる。前回は2017年にフィレンツェ(イタリア)で開催され、WCOの本会議の前に 1日半のワークショップが行われたが、今回は会期中の 1日をCNS Day(Committee of National Society;各国の骨粗鬆症関連団体の日)として、WOD(世界骨粗鬆症デー)での活動報告や効果的な啓発活動への取り組み方、行政への働きかけ、
今後のあり方などが話し合われた。以下、CNS dayでの話題を中心に紹介する。
各国のWODの活動では、オーストラリアの団体
(Osteoporosis Australia)が厚生大臣をWODのイベントに招聘したこと、英国の団体(Royal Osteoporosis Association)がオレンジを基調としたTシャツやポスターで、子供たちに骨の大切さや骨粗鬆症の怖さを伝
えたこと、フランスの団体が「骨粗鬆症白書」をまと
めたことなどが報告された。ナイジェリアの団体から
「WODでは何か共通のイメージカラーはあるの?」との質問があった。IOFでは骨粗鬆症のカラーについての規定をしておらず、英国ではオレンジ、またカナダ
では紫を使っていると返答された。わが国の場合はブ
ルーで、WODの際には松本城や大阪ホイールをブルーでライトアップしたが、今後は、ぜひとも IOFでWODのイメージカラーを世界共通に統一してほしいものである。
続いて IOF事務局のMarta氏から、効果的な啓発活動について 10のポイントが提示され解説された。いずれもメディアを活用したマーケティング手法に則った
定石であったが、考え方を整理し、啓発される立場に
なってみると気づきを自覚するのに役に立つ内容で
あった。以下に具体的に示したので、今後の啓発活動
の参考にしていただきたい。
成功事例として、アイス・バケツ・チャレンジ(筋
萎縮性側索硬化症:ALS患者を支援するために、バケツに入った氷水をかぶるという動画が 1億 1500万回視聴された)のように、SNSで短時間に拡散するようなものがよいと紹介された。この手法が成功するための
決まりごとはなく、その動画に共感する人が多ければ
自然に拡散する。このアイス・バケツ・チャレンジには、
重要な要素として啓発のターゲットとなる視聴者が共
有できる「誰でもできるわかりやすいこと」、伝えたい
「キーメッセージ」が盛り込まれている。これらの要素
は非常に重要であるが、自然拡散や連鎖反応に繋がる
定石は、すぐに見つかるようなものではないため、そ
のアイディアを考えること時間がかかると感じた。
一 方、2019年 に 公 募 し た「Give Patients a Voice Contest」では、17カ国から 23のメッセージが寄せられたが、残念ながら日本からの応募はなかった。SNSを介した投票には 5538人が参加し、最終的にコロンビアのホセ・エッピナン氏が 1789票を獲得して 1位に輝いた(QRコード参照)。
「骨折したことがありますか?」
の問いから始まるこの映像は、「最
初に手首の骨を折った。その後、
背骨を何カ所か骨折したんだ」と
続く。「骨折したことで、生活に
支障がありましたか?」の問いに、
「そりゃぁ、大変だった。暮らしが一変したよ。何もで
きないんだ。痛みがひどくてね。歩くことさえ本当に
辛かった。もう、運動だってできやしない。しゃがむ
ことだって駄目なんだよ。どれも痛くてさ。骨折で生
活そのものが変わってしまったよ」との返事。「若い世
代に何か伝えたいことはなんですか?」と尋ねると、「生
活習慣を変えろってことにつきるね。食事さ。体のこ
とに気を遣って、禁煙すること、酒は飲まないこと。
そしてちゃんとしたコーチについて体を動かすことだ
ね。でないと、大変なことになるからさ」。
男性でも骨粗鬆症になる確率は高く、5人に 1人が骨折する。ホセ氏の言葉から、男性だからといって骨
粗鬆症を甘く見てはいけないというメッセージが強く
伝わってきたことが、選ばれた理由だと思われる。
WCOのオープニングセレモニーでは、壇上にホセ氏自身が登場し、IOF代表のクーパー氏から表彰された。骨粗鬆症は、全身の骨密度がさまざまな要因で低下、
または骨質が劣化して骨折しやすくなる疾患であり、
骨折するまでは自覚症状がない。ビスホスホネート薬
が初めて承認された約 20年前と比較して、現在では複数のビスホスホネート薬や SERMなどの骨吸収抑制薬、複数の骨形成促進薬を使うことで骨折を防ぐこと
ができる時代になっている。
IOFに参加している国々の医療の水準はさまざまだが、その中でわが国は、躯幹骨密度測定機器(DXA)の保有率が高く、骨代謝マーカーの検査率も高い。「骨
粗鬆症の予防と治療ガイドライン」が 20年以上も前から公開され、世界標準の治療薬が処方できる医療環境
がそろっている。骨粗鬆症マネージャーによるリエゾ
ンサービスも徐々に浸透してきており、骨粗鬆症診療
の先進国と言っても過言ではない。
今その日本が、超高齢社会でいかに骨折を抑制でき
るか、世界中から注目されている。今回のパリの会議
に参加し、骨折の怖さを一般市民に伝えることの重要
さをあらためて感じた。SNSやメディアを介した情報発信、啓発に今後わが国でも注力していきたい。
(骨粗鬆症財団事務局 )
次号予告
2019No.3
2019年9月30日発売予定
全国に広がる骨粗鬆症リエゾンサービス
特集
骨粗鬆症や加齢性運動器疾患など、運動器について本誌でとりあげてほしいテーマや取材してほしい施設など、さまざまな声をお待ちしております。
2019年6月29日発行 第4巻 第2号発行所 ライフサイエンス出版株式会社 〒105-0014 東京都港区芝3-5-2 TEL 03-6275-1522 FAX 03-6275-1527 e-mail:[email protected] URL:http://www.lifescience.co.jp
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PHOTOレポート連載◎管理栄養士が本当に伝えたい栄養の話/地域を支える! 健康サポート薬局/ 運動指導 手がかり足がかり/運動器をじょうぶにする栄養指導/ 薬剤師でなくても知っておきたい薬の話 ほか
オステオポローシスジャパン・プラス
Vol.4
日本骨粗鬆症学会が認定する骨粗鬆症マネージャーの活躍もあって、医療機関や地域内での多職種連携が進んでいます。全国でさまざまな研究会や協議会が立ち上がり、情報共有や連携が広がっている骨粗鬆症診療の現場からレポートします。