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/ キノコ栽培廃菌床からのエネルギーと肥料の同時生産 現場ニーズ対応型 平成23年度~25年度(3年間) 2 3 0 5 4 近年のキノコ栽培の多くはオガ粉等を主原料とする菌床を用いるが、栽培後は年間数千トンの廃 菌床が排出され、その(焼却)処分費用がキノコ栽培業者の経営を圧迫し、増産の阻害要因ともなっ ている。そのため、低コストかつ短時間で大量の廃菌床を処分する技術体系の確立が、社会的に喫 緊の課題である。本研究では、エノキタケ栽培に用いるコーンコブを主原料とする菌床を対象に、低 コスト乾燥、燃焼と熱利用、そして大量に排出される灰の水稲栽培向け肥料化による一連の地域循 環型キノコ栽培環境技術を確立する。 ○新潟県十日町市内において、規模を拡大した実証試験を引き続き実施しています。 ○寒冷、低肥沃土壌における水稲栽培で、灰肥料施用による食味向上も期待されています。 ○燃焼排ガスも環境基準を大きく下回り、ボイラーによる施設等での熱利用も心配ありません。 ○本研究の成果はパンフレットにより配信されていますが、灰肥料の施用は各地域の土壌に応じた 肥料設計が重要ですので、是非我々にご相談ください。 ○高含水率廃菌床の低コスト、短時間乾燥技術を確立する。 ○上記により得られる廃菌床を燃料とするクリーン燃焼、熱・灰の回収、利用技術を確立する。 ○廃菌床燃焼灰を水稲向け化学肥料代替とし、水稲栽培の低コスト化とブランド化を図る。 ○短時間、低コストで廃菌床の含水率を大幅に低減可能な発酵熱利用乾燥技術を開発しました。 ○発酵状態を高精度でシミュレーションすることで、異なる条件への適用も容易です。 ○エノキタケ栽培廃菌床は乾燥後に自立燃焼、多量の灰は水稲に好適な肥料となります。 ○化学肥料を灰肥料で一部代替、稲栽培コスト圧縮に加え、収量、玄米厚も増加傾向を示します。 大量、湿潤な廃菌床を、わずかなエネルギーと時間で燃料化したうえで、燃焼灰を地域の水稲栽培 に活用することができ、キノコ栽培のボトルネックを解消します。燃焼熱は水分乾燥に奪われないため、 木質バイオマス燃料と同等の熱量が得られます。灰肥料は容積、重量も小さく、流通にも便利です。食 品産業由来の安全な農業資材の導入は高価な化学肥料の使用量を抑え、地域の循環型農林産業社 会形成に寄与し、消費者は安心して美味しいコメとキノコを求めることができます。 125

キノコ栽培廃菌床からのエネルギーと肥料の同時生産 · エノキタケ栽培廃菌床は乾燥後に自立燃焼、多量の灰は水稲に好適な肥料となります。

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開発した技術・成果が普及することによる国民生活への貢献

開発した技術・成果の普及・実用化の状況

農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業(実用技術開発ステージ)/研究紹介2014

キノコ栽培廃菌床からのエネルギーと肥料の同時生産

〔研究タイプ〕 現場ニーズ対応型 〔研究期間〕 平成23年度~25年度(3年間)

23054 分 野 適応地域

林業-きのこ

研究の背景・課題 1

研究のゴール 2

ゴール到達のためのブレークスルーとなった技術・成果 3

近年のキノコ栽培の多くはオガ粉等を主原料とする菌床を用いるが、栽培後は年間数千トンの廃

菌床が排出され、その(焼却)処分費用がキノコ栽培業者の経営を圧迫し、増産の阻害要因ともなっ

ている。そのため、低コストかつ短時間で大量の廃菌床を処分する技術体系の確立が、社会的に喫

緊の課題である。本研究では、エノキタケ栽培に用いるコーンコブを主原料とする菌床を対象に、低

コスト乾燥、燃焼と熱利用、そして大量に排出される灰の水稲栽培向け肥料化による一連の地域循

環型キノコ栽培環境技術を確立する。

○新潟県十日町市内において、規模を拡大した実証試験を引き続き実施しています。

○寒冷、低肥沃土壌における水稲栽培で、灰肥料施用による食味向上も期待されています。

○燃焼排ガスも環境基準を大きく下回り、ボイラーによる施設等での熱利用も心配ありません。

○本研究の成果はパンフレットにより配信されていますが、灰肥料の施用は各地域の土壌に応じた肥料設計が重要ですので、是非我々にご相談ください。

○高含水率廃菌床の低コスト、短時間乾燥技術を確立する。 ○上記により得られる廃菌床を燃料とするクリーン燃焼、熱・灰の回収、利用技術を確立する。 ○廃菌床燃焼灰を水稲向け化学肥料代替とし、水稲栽培の低コスト化とブランド化を図る。

〔研究グループ〕 新潟大学工学部、新潟大学農学部 新潟県農業総合研究所、新潟県森林研究所 株式会社三高土木 〔総括研究者〕 新潟大学 小浦方 格

○短時間、低コストで廃菌床の含水率を大幅に低減可能な発酵熱利用乾燥技術を開発しました。

○発酵状態を高精度でシミュレーションすることで、異なる条件への適用も容易です。

○エノキタケ栽培廃菌床は乾燥後に自立燃焼、多量の灰は水稲に好適な肥料となります。

○化学肥料を灰肥料で一部代替、稲栽培コスト圧縮に加え、収量、玄米厚も増加傾向を示します。

大量、湿潤な廃菌床を、わずかなエネルギーと時間で燃料化したうえで、燃焼灰を地域の水稲栽培に活用することができ、キノコ栽培のボトルネックを解消します。燃焼熱は水分乾燥に奪われないため、木質バイオマス燃料と同等の熱量が得られます。灰肥料は容積、重量も小さく、流通にも便利です。食品産業由来の安全な農業資材の導入は高価な化学肥料の使用量を抑え、地域の循環型農林産業社会形成に寄与し、消費者は安心して美味しいコメとキノコを求めることができます。

全国

125

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発酵乾燥された廃菌床は、専用炉で燃焼します。助燃剤は不要です。 コーンコブが主原料のエノキタケ栽培廃菌床は、12~19%の灰を出します。 灰は95%以上が回収され、リン酸、ケイ酸の水稲用代替肥料となります。

問い合わせ先:新潟大学産学地域連携推進機構 TEL 025-262-7554

キノコ栽培廃菌床からのエネルギーと肥料の同時生産

廃菌床

キノコの菌床栽培

数千~ 数万トン/年

産廃

現状:燃料を使って焼却 含水率55%以上

乾燥 本事業では、発酵時の熱を利用して

含水率35%まで乾燥 約120時間

送風と撹拌のみ

外部加熱不要

モデル計算によりシミュレーションが

可能

含水率55%超の 廃菌床は圧搾脱水

により前処理

特許出願中 特開2013-237018

新潟県十日町市内、長岡市内の各圃場における灰肥料の肥効確認試験の結果

0102030405060708090

100

0 24 48 72 96 120 144経過時間[h]

温度

[o C]

0

1

2

CO

2発生

(小型

装置

)

[mol

/(min

t-w

et W

MC

)]3m3発酵槽温度実測 第3段温度(モデル)第2段温度(モデル) CO2発生(小型装置)

固定層高さ方向4段

分割モデル

15202530354045505560

0 24 48 72 96 120 144経過時間 [h]

含水

率 [%

]

モデル第4段モデル第3段モデル第2段モデル第1段実測値(上段)実測(中段)実測値(下段)

0

10

20

30

40

50

60

2.2< 2.1 2.0 1.9 1.85 1.8 1.7 1.6 1.6>

比率

[%]

[mm]

農総研2012年 慣行区

試験区

灰肥料を用いた圃場では、玄米の厚さも 大きくなる傾向に

玄米厚の分布

ほ場名 処理区 穂数 登熟歩合 一穂籾数 総籾数 千粒重 玄米タンパク質

含有率*

本/㎡ % 粒/穂 千粒/㎡ g %

農総研 慣行区 345 88.5 83.8 28.8 21.9 5.7

試験区 345 88.8 84.8 29.2 22.1 5.8

十日町A 慣行区 366 84.0 79.1 29.0 22.0 5.4

試験区 370 84.2 79.8 29.6 22.1 5.3

十日町B 慣行区 349 83.9 91.3 32.1 23.1 6.2

試験区 345 84.2 94.4 32.9 23.0 6.3

十日町C 慣行区 285 93.8 76.3 21.6 22.6 5.4

試験区 301 93.9 76.0 22.8 22.6 5.6*; 玄米タンパク質含有率は水分15%換算.

ほ場名 処理区 精籾重 精玄米重歩合 精玄米重 慣行区比

kg/a % kg/a %

農総研 慣行区 73.3 94.7 56.1 (100)

試験区 73.9 96.2 57.9 103

十日町A 慣行区 67.7 95.8 53.3 (100)

試験区 68.8 96.0 54.3 102

十日町B 慣行区 77.3 97.4 61.2 (100)

試験区 78.2 97.6 62.2 102

十日町C 慣行区 56.4 98.8 46.1 (100)

試験区 59.1 99.0 48.5 105

灰肥料の施用による玄米の増収効果が認められる

※右写真は市販の家畜糞尿処理用縦型発酵乾燥槽(20m3)

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研究のゴール

農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業(実用技術開発ステージ)/研究紹介2014

ポリ含有廃菌床の再生燃料化利用によるエネルギー自給型シイタケ生産システムの確立

〔研究タイプ〕 現場ニーズ対応型 〔研究期間〕 平成23年~25年(3年間)

23058 分 野 適応地域

林業-きのこ

研究の背景・課題 1

ゴール到達のためのブレークスルーとなった技術・成果 3

①ポリ含有廃菌床を再燃料化できる装置を開発する。 ②燃料の燃焼で危惧されるダイオキシンの発生を抑制し、環境保全を達成する。 ③廃菌床の再燃料化による、エネルギー自給型シイタケ生産システムを確立する。

〔研究グループ〕 農研機構 東北農業研究センター 岩手大学工学部、(株)オーテック 〔総括研究者〕 (株)オーテック 小原 勝久

①ポリ含有廃菌床再生燃料化装置および廃菌床を燃料とする燃焼炉を開発した。

②ポリ含有廃菌床燃料化システムを実証し、エネルギー自給型シイタケ生産システムを確立した。

全国

①近年の燃料費の高騰による経費の圧迫 ②生産量の約2倍の廃菌床発生による廃棄物の経費負担

開発した技術・成果が普及することによる国民生活への貢献

開発した技術・成果の普及・実用化の状況

①(株)オーテックに再生燃料製造装置、高含水焼却炉を設置し、菌床とシイタケの生産を行っている。

②現在、これらの成果を利活用して震災地域(釜石市)に本施設の設置が進行中。

①ポリ廃菌床および類似廃棄物を再燃料化することで、産業廃棄物を削減(資源化)することができる。

②灯油に代替することで、燃料費を削減することができる。

③近隣製材所、近隣農家と連携することで、エネルギー自給型生産システムを構築できる。

④燃焼炉の開発により、ダイオキシンの発生を抑制し環境が保全される。

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問い合わせ先:(株)オーテック TEL 0197-71-5211

約300℃約160℃

ポリ含有廃菌床燃料

熱媒ボイラ

廃菌床再生燃料製造装置

廃植物油ポリ含有廃菌床

高含水燃焼炉

域内産バイオマス

シイタケ栽培施設菌床生産施設

菌床殺菌

燃料

燃料

燃料費(灯油)削減

約450℃約900℃

シイタケ販売

油熱

火熱

蒸気ボイラ

蒸気

写真 高含水燃焼炉から菌床製造工場に至るポリ含有廃菌床再生燃料化・利用プラント

図 エネルギー自給型シイタケ生産システムの工程フロー

高含水燃焼炉

小型貫流ボイラ

菌床製造工場

チップ定量供給装置

廃菌床再生燃料製造装置 蒸気ボイラ

熱媒ボイラ(建屋の中)

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開発した技術・成果が普及することによる国民生活への貢献

開発した技術・成果の普及・実用化の状況

農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業(実用技術開発ステージ)/研究紹介2014

シイタケ原木栽培における放射性セシウムリスクの低減技術の開発

〔研究タイプ〕 緊急対応型 〔研究期間〕 平成25年(1年間)

25098C 分 野 適応地域

林業-きのこ

研究の背景・課題 1

研究のゴール 2

ゴール到達のためのブレークスルーとなった技術・成果 3

2011年3月に発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故により、関東・東北ではコナラ等のシイタケ原木・ほだ木が、放射性セシウムに汚染されたものもあり、発生したシイタケからは基準値の100 Bq/kgを超える放射性セシウムが検出される場合もあり、放射能汚染のリスクを低減することが求められています。

そうしたリスクを低減するためには、放射性セシウム濃度の指標値50Bq/kg以下の原木・ほだ木を利用するだけではなく、放射性セシウムのリスクをさらに低減するための新たな技術によって、より安全なシイタケ生産を進める必要があります。

○栃木県、群馬県で、農林業関係者、きのこ生産者へ成果発表会の場で技術の普及に努めました。

○技術マニュアルを生産者、普及指導員を対象に配布しました。

○原木からの放射性セシウムの移行低減技術を開発する。 ○シイタケ原木の栽培適地を判別する技術を開発する。

〔研究グループ〕 独立行政法人森林総合研究所 栃木県林業センター 群馬県林業試験場 株式会社北研 〔総括研究者〕 独立行政法人森林総合研究所 根田 仁

○ナノサイズ粒子のプルシアンブルーを用いて、放射性セシウムの移行低減効果をあげました。 ○プルシアンブルーと塩化カリウムの噴霧による移行低減技術を開発しました。 ○シイタケ原木の露地栽培における環境から原木への再汚染の状況を明らかにして、シイタケ原木 栽培の適地判別技術を開発しました。 ○放射性セシウムのリスク低減に向けたマニュアルを作成しました。

○放射性セシウムリスクの低い安全なシイタケを生産することができます。

○原木シイタケの安全性を高めて消費者の信頼を回復します。 ○東北・関東地方のシイタケ原木の利用を促進させます。

関東ブロック・ 東北ブロック

129

Page 6: キノコ栽培廃菌床からのエネルギーと肥料の同時生産 · エノキタケ栽培廃菌床は乾燥後に自立燃焼、多量の灰は水稲に好適な肥料となります。

問い合わせ先:独立行政法人森林総合研究所 TEL 029-873-3211

シイタケ原木栽培における放射性セシウムリスクの低減技術の開発

シイタケへの放射性セシウム移行低減技術

研究の背景:2011年3月の東京電力福島第一原子力発電所の事故により、関東・東北のコナラ等のシイタケ原木・ほだ木は、放射性セシウムに汚染されたものもあり、発生したシイタケから基準値の100 Bq/kgを超える放射性セシウムが検出されることもあり、そのリスクを低減することが求められています。

シイタケ原木栽培 適地判別技術

原木からの放射性セシウム移行低減技術

シイタケ原木栽培適地の判別

ほだ場の空間線量率 (μSV/h)

0.40 汚染顕著

0.28 汚染明らか

0.10 汚染軽微

ナノサイズ粒子のプルシアンブルーによるセシウム移行低減技術

プルシアンブルー・ 塩化カリウム混合液 噴霧技術の開発

研究目的:原木からシイタケへの放射性セシウムの移行を低減させるための実用的な原木処理技術及び原木栽培に適したほだ場の判別技術を開発します。

Cs

Cs

130

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開発した技術・成果が普及することによる国民生活への貢献

開発した技術・成果の普及・実用化の状況

農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業(実用技術開発ステージ)/研究紹介2014

林業被害軽減のためのニホンジカ個体数管理技術の開発

〔研究タイプ〕 現場ニーズ対応型 〔研究期間〕 平成22年~25年(4年間)

22030 分 野 適応地域

林業-森林保護

研究の背景・課題 1

研究のゴール 2

ゴール到達のためのブレークスルーとなった技術・成果 3

林業は生産現場がニホンジカの生息地と重複していることから、個体数管理を中心とした被害対策

が有効です。 狩猟者の減少と高齢化により「計画的な捕獲が進まない」ことが問題なっており、個体数管理技術の

大幅な改善が求められています。 この研究では、計画性、効率性、安全性を確保した伝統的な猟法とは異なる新たなニホンジカ個体

数管理技術を開発することを目的としています。

○広域高精細シカ密度分布図は、九州地域におけるシカ管理の実務に活用されています。

○誘引法は関東森林管理局静岡森林管理署における富士山国有林シカ捕獲事業に活用され、効率よくシカを捕獲できることが実証されています。

○「森林用囲いわな」「森林用ドロップネット」 は、北海道や近畿地方で試験的な導入が進められています。

個体数管理のための計画手法の開発 個体数管理のための捕獲システムの開発 個体数管理のための評価手法の開発

〔研究グループ〕 (独)森林総合研究所、静岡県農林技術研究所森林・ 林業研究センター、長野県林業総合センター、 熊本県林業研究指導所、信州大学農学部、 岐阜大学応用生命学部、九州大学農学部 〔総括研究者〕 (独)森林総合研究所 小泉 透

シカ密度分布を広域に高精細に推定する技術を開発しました。

野生のシカを決められた時刻に決められた場所へ出現させる「誘引法」を開発しました。

森林内で使用可能で、安価で携帯性がよく設置の容易な「森林用囲いわな」「森林用ドロップネット」を開発しました。

シカ個体数管理のためのガイドブック「新たなシカ管理に向けて」を刊行しました。

○シカ密度の高い地域を可視化できるので、シカ管理を効率よく進めることができるようになります。

○誘引法と捕獲手法(わな、銃器など)の組み合わせにより、状況に応じてさまざまな捕獲システムが実施可能になります。

○誘引場所に出現したシカを繰り返し捕獲除去することにより、地域のシカ管理をスピードアップさせることができます。

全国

131

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「誘引法」を開発しました 野生のシカを きまった場所、きまった時刻に出現させることが可能に

餌を置いてから26分後に野生のシカが 自発的に出没

静岡森林管理署のシカ捕獲事業に技術提供 平成24年度森林業白書で紹介されました

問い合わせ先:(独)森林総合研究所 TEL 029-873-3211

林業被害軽減のためのニホンジカ個体数管理技術の開発

Plan:(計画分野)どこを管理するか

計画性、効率性、安全性を確保した新たなニホンジカ個体数管理技術を開発する

研究の目的

成果の概要

点在する密度データをGIS処理し

面的に表示すると 重点地域を選定しやすい

ココ!

九州全域の高精細シカ密度分布マップを作成しました シカ管理の現場で活用されています

Do:(捕獲分野)どのように管理するか

森林用ドロップネットを開発 森林用囲いわなを開発 ブラインドから狙撃 車両から狙撃 (許可が必要です)

誘引法と組み合わせることにより、さまざまな状況に対応したシカ捕獲が可能に

Check:(評価分野)被害は減ったか 繰り返し捕獲により造林木被害は4割減少を実証

技術普及分野(ガイドブックを刊行)

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開発した技術・成果が普及することによる国民生活への貢献

開発した技術・成果の普及・実用化の状況

農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業(実用技術開発ステージ)/研究紹介2014

花粉症対策ヒノキ・スギ品種の普及拡大技術開発と雄性不稔品種開発

〔研究タイプ〕 研究領域設定型 〔研究期間〕 平成22年~25年(4年間)

22029 分 野 適応地域

林業-造林

研究の背景・課題 1

研究のゴール 2

ゴール到達のためのブレークスルーとなった技術・成果 3

社会問題となっているスギ・ヒノキ花粉症の対策として花粉の少ないスギ・ヒノキが選抜され普及が

図られているが、スギでは効率的な採種園経営、花粉症対策品種の性能や材質が問題であり、ヒノ

キではさし木や着花促進など、普及拡大に必要な技術が確立されていない。従って、これらの問題を

解決するための技術開発研究を行う必要がある。

○少花粉スギ・ヒノキ、無花粉スギの生産・普及が進んでおり、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、山梨の6県でスギの花粉症対策苗木の割合が100%になりました。

○少花粉ヒノキのミニチュア採種園が整備され供給体制が整備されています。

○スギ・ヒノキ精英樹DNA型データベースが構築され、全国の精英樹の系統管理に活用されています。

①性能の高いスギの花粉症対策品種の安定生産により、材質に優れ花粉抑制効果の明らかなスギ花粉症対策品種の供給及び普及 ②ヒノキの早期着花技術及びヒノキのさし木技術の確立によるヒノキ花粉症対策品種の早期の安定供給技術の確立 ③的確な採種園の系統管理手法の確立

〔研究グループ〕 (独)森林総合研究所林木育種センター、 神奈川県自然環境保全センター、 福島県林業研究センター、茨城県林業技術センター、埼玉県農林総合研究 センター、群馬県林業試験場、千葉県農林総合研究センター、(公財)東京都 農林水産振興財団東京都農林総合研究センター、山梨県森林総合研究所・ 静岡県農林技術研究所森林・林業研究センター、岐阜県森林研究所、 宇都宮大学 〔総括研究者〕 神奈川県自然環境保全センター 齋藤 央嗣

○スギミニチュア採種園の外来花粉の影響が明らかになり、この対策として簡易な覆いでも改善の効果があること、人工交配での労務の25%削減、閉鎖系施設の運用と環境改善、適切な花粉散布手法を明らかにしました。 ○10年輪以内で実大材曲げ性能を推定可能であること、少花粉スギ材質は一般的なスギと大きな差がないこと、少花粉品種でも材質は、遺伝率が高く親の性質の影響が大きいことを明らかにしました。 ○少花粉ヒノキ苗木にビニールハウスを設置することで、外部花粉の侵入を軽減する技術を開発するとともに、コンテナ栽培手法を検討しました。さらにヒノキ少花粉品種の種子を早期供給する技術についてのマニュアルを作成しました。

○既存さし木の各工程における条件の最適化、並びにさし穂生産条件の調節による発根向上法を融合させることで、さし穂の安定確保と少花粉ヒノキの発根率を事業レベルに引き上げる技術を開発しました。 ○スギ・ヒノキ精英樹DNA型データベースを構築するとともに、ICタグやバーコードなどのラベルの高度化による林木のトレーサビリティーシステムを開発しました。

5 ○スギ・ヒノキ花粉症対策種苗の供給量が増加することにより、花粉症の原因となるスギ・ヒノキ花粉飛散量が軽減され、花粉症を緩和しながら、森林資源を維持するための管理を推進することができます。 ○外来花粉を軽減し、正確な系統管理、材質が評価され、少花粉の形質が向上した種子がより簡易に生産でき、スギ・ヒノキ花粉症対策種苗の安定供給による林業の活性化が期待されます。

全国

133

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問い合わせ先:神奈川県自然環境保全センター TEL 046-248-0321

① ジベレリンペーストによる 着花性向上手法を確立 ② カメムシ防除ネットによる 種子生産性向上を検証 ③ 閉鎖環境内コンテナ 採種木の種子生産技術を開発 ④ 半閉鎖系採種園での 着花制御技術を開発 ⑤ 閉鎖系・半閉鎖系施設

での種子品質向上手法を明確化

1 スギ花粉症対策品種採種園産種苗の交配実態と効率的採種園経営手法

① さし木発根性を向上 させる各種条件を解明 ② 関東育種基本区選定 少花粉品種のさし木 増殖適性を確認 ③ コンテナ容器への 直ざし技術を開発 ④ 組織培養で発根の 好条件を解明 ⑤ マイクロカッティング の可能性を提示 ⑥苗木生産者及び実務者向け の少花粉ヒノキさし木増殖マニュ アル作成

2 ヒノキ少花粉品種の早期着花手法及びさし木増殖手法の確立

ミニチュア採種園による 種苗の普及 実態は 外部花粉による汚染率 →55〜63%!

①簡易な覆いで改善! ③閉鎖系施設 運用手法と環境改善 ②人工交配 25%労務削減 ④適切な花粉散布 手法確立

ヒノキ少花粉品種の供給技術確立

3 的確な採種園経営に向けた系統管理に資するDNAマーカーの効率的適用手法の開発

現状:少花粉ヒノキの早期普及手法が未確立

対策!

材質は?

・花粉症対策 品種の材質 流通木材と比較 しても遜色なし!

さし木 採種園

植栽本数 エラー率(%)

254 48.6

353 35.1

ヒノキ採種園の誤植率 →35〜49%の高率!

IC(RFID)タグ個体管理システム →長期間(10〜20年)のモニタリングに利用可能 →PDAの利用で記録が紙媒体から電子媒体へ →不明瞭な記載がなくなる →調査時の個体の取り間違いがなくなる

二次元バーコードモバイルプリントシステム →シール型ラベルで安価 →アンドロイド端末とバーコードで手入力工程不要 →短期間であれば野外でも使用可能

人工交配での 複雑さ・煩雑さがミス の誘発の原因

対策!

対策!

134

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開発した技術・成果が普及することによる国民生活への貢献

開発した技術・成果の普及・実用化の状況

農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業(実用技術開発ステージ)/研究紹介2014

北海道固有の森林資源再生を目指したエゾマツの早出し健全苗生産システムの確立

〔研究タイプ〕 現場実証支援型 〔研究期間〕 平成22年~25年(4年間)

22060 分 野 適応地域

林業-造林

研究の背景・課題 1

研究のゴール 2

ゴール到達のためのブレークスルーとなった技術・成果 3

エゾマツは北海道天然林の重要な構成要素であるが、資源量は減少し続けている。苗木生産では、播種床における得苗率が低く、播種から山出しまでの育苗期間が6年と長いために、育苗にかかる

労力やコストの低減、育苗期間の短縮という技術的な課題があった。本研究では、播種床の幼苗生産技術を改良するとともに、コンテナを用いたエゾマツの早出し健全苗生産システムを開発し、北海道のエゾマツ資源の再生復元に資する研究を行う。

〇平成25年10月に、成果発表会と植樹祭を行い、エゾマツの資源回復に対する普及活動を行った。

〇雑誌「北海道の林木育種」で本事業の成果に関する特集号を刊行し、普及に貢献した。

〇マニュアルとして、本事業の成果を分かりやすく取りまとめ、普及活動に利用した。

〇平成26年1月に、一般向け成果発表会とマニュアルの配布を行い、技術を広く普及した。

播種床における幼苗生産の効率化を図る。 コンテナを利用した早出し健全苗生産のシステムをつくる。 マニュアルを作成し、得られた知見・技術を広く普及し、エゾマツの資源回復に貢献する。

〔研究グループ〕 東京大学 北海道立総合研究機構・森林総合研究所 北海道山林種苗協同組合 〔総括研究者〕 東京大学大学院農学生命科学研究科 後藤 晋

〇エタノール選で精度の高い充実種子選別法を開発し、春播きで得苗率を高めることを実証した。

〇播種床で2年、コンテナで2年の2-2方式で、育成期間を6年間から4年間に短縮した。

〇エゾマツの早出し健全苗生産についてのマニュアルを作成した。

○播種床における幼苗生産の効率化やコンテナ苗育成技術による育苗期間の短縮により、生産コスト を大幅に低減できる育苗技術を提供。

○北海道固有のエゾマツ資源の回復に貢献。

北海道

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北海道固有の森林資源再生を目指したエゾマツの早出し健全苗生産システムの確立

問い合わせ先:東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林 後藤晋 TEL 03-5841-1856

【エゾマツの苗木生産における課題】

播種から山出しまで育成期間が長い(6年)

病害・気象害のリスク(低い得苗率30%)

1.充実種子選別法

2.暗色雪腐病回避のための春播き技術の開発

3.暗色雪腐病・苗立枯病に 有効な農薬と接種方法

4.樹木類の農薬適用登録 拡大に向けた実証試験

1.育苗条件の最適化

2.冬期屋内保管技術の開発

3.活着促進技術の開発

置肥+液肥で効果的な成長促進! 長日処理でさらなる早出しの可能性

ビニール袋併用でコストダウンを実現!

植付け時間の短縮と高い生存率を実現!

エゾマツの種苗生産の効率化

コンテナを用いた早出し健全苗の生産

種子選別で発芽率を23%アップ!

春播きで発芽数13-15%アップ!

実験室等で絞り込んだ有望な農薬を苗畑で実証!農薬適用登録申請へ!

幼苗生産の歩留まり向上と省力化、コストダウンを達成!

播種床2年

コンテナ2年

床替床が不要に

病害、気象害の回避に成功。床替床の除草不要に!

幼苗生産のコストを最大14%カット 育苗期間6年を2+2=4年に短縮。 コンテナ利用で病害・気象害回避 誰でも確実な植付けが可能 エゾマツの資源回復に貢献!

マニュアル作成

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開発した技術・成果が普及することによる国民生活への貢献

開発した技術・成果の普及・実用化の状況

農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業(実用技術開発ステージ)/研究紹介2014

安全な間伐作業を実現する遠隔操作型伐倒マニピュレータシステムの開発

〔研究タイプ〕 現場ニーズ対応型 〔研究期間〕 平成23年~25年(3年間)

23056 分 野 適応地域

林業-木材生産

研究の背景・課題 1

研究のゴール 2

ゴール到達のためのブレークスルーとなった技術・成果 3

政策では素材生産量の急増と木材自給率の向上が謳われ、吸収源対策でも間伐作業が必要とされています。また一方で、手入れ不足により、不健全な山林が広がり、山地災害も発生しています。このような理由からも、大量の立木を伐り倒す作業が急務です。

しかし林業従業者は、昭和55年の17万人から、現在約6万人になり、作業量の確保も難しいです。さらに林業では毎年、死傷が約2000件、死亡が約50件発生しています。その中でも、立木の伐倒作業は大変危険で、多くの事故が起こっています。

高性能林業機械も導入されていますが、我が国の急峻な山林においては稼働範囲も限られ、その多機能を十分に発揮する事も難しいです。このため伐倒作業も人手によるチェーンソにより、安全性にも課題が残っています。さらに、この伐倒作業は、急峻な山中で人の経験や職能を必要とする難易度の高い作業でもあります。

そこで本研究では、日本の森林・林業の現場に根ざし、これまでの林業機械化にはなかった発想から、伐倒作業を安全に行うマニピュレータシステムの開発を目的としています。

○ポータブルマニピュレータ、伐倒マニピュレータに関して、ともに特許を出願しました。

○IEEEプレスセミナーの依頼で、本研究について発表をしました。

○日刊工業新聞社、日本経済新聞社など、最終年度の報道件数は12件です。

○ポータブルマニピュレータ (チェーンソを搭載、受け口・追い口伐りで伐倒 小型・軽量で、持ち運び可能)を開発する。

○伐倒マニピュレータ (ドリル・エンドミルを搭載、三ツ紐伐りで伐倒)を開発する。

○路網を外れた林地を走行するモビリティに関する基礎研究を行う。

〔研究グループ〕 早稲田大学、 (独) 森林総合研究所、 静岡県 農林技術研究所森林・林業研究センター、 フォレストテック株式会社 〔総括研究者〕 早稲田大学 理工学術院 菅野重樹

○チェーンソを操作して、伐倒作業を行う、一つの「マニピュレータモデル」を提示しました。

○ドリル・エンドミルを操作して、伐倒作業を行うマニピュレータについて

搭載刃物が切削断面の直径分、半径分の刃長を持つ、それぞれのモデルを提示しました。

全国

○作業者が倒れる木に接触するのを減らし、伐倒作業中の労働災害を低減します。

○安全性の向上に伴う、生産性の改善により、作業コストを削減します。

○急務となっている間伐の促進に貢献します。

○間伐促進により、森林環境の健全性回復に寄与します。

○林業の振興と農山村の活性化に寄与します。

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問い合わせ先:早稲田大学 理工学術院 白井裕子 TEL:03-5286-3000(代)

Ⅰ号機 Ⅱ号機

Ⅲ号機 Ⅳ号機

伐倒マニピュレータ “まったく新しい可能性を!” 安全性が高く、儀式で用いられる 手作業の“三ツ紐伐り”を ドリル・エンドミルで行う

Ⅲ号機

Ⅰ号機 Ⅱ号機

Ⅳ号機実証実験

Ⅲ号機実証実験

モビリティ クローラと牽引アームによるモビリティを考案、開発 実証実験

ポータブルマニピュレータ “誰もが使うチェーンソで!” 統計上20万台普及しているチェーンソを 簡便に装着して伐倒作業を行う

提案を実機として設計・製作し、林内の現場で作業を実証し、安全性を評価しました。

安全な間伐作業を実現する遠隔操作型伐倒マニピュレータシステムの開発

クローラ 牽引アーム

一部の部材加工と、ドリル・エンドミルの製作を外注した他は すべて早大内で設計から製作までを行いました。

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開発した技術・成果が普及することによる国民生活への貢献

開発した技術・成果の普及・実用化の状況

農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業(実用技術開発ステージ)/研究紹介2014

山側における「間伐材から機能化混練型WPC変換まで一貫したシステム」の実証研究

〔研究タイプ〕 現場ニーズ対応型 〔研究期間〕 平成23年~25年(3年間)

23045 分 野 適応地域

林業-木材利用

研究の背景・課題 1

研究のゴール 2

ゴール到達のためのブレークスルーとなった技術・成果 3

○間伐材利用においては、価値レベル、規模や立地等が課題となり、有力なビジネスモデルが乏し

い。この有効利用法の一つとして、自動車の内装用途等のプラスチック製品の膨大な代替市場を有

している混練型WPCは注目されているが、現在、これに対応できるスペックが確保できていない。こ

の様な背景の中、本研究は、間伐材から代替市場に適合する混練型WPC開発を実施し、さらに、山

側(間伐材が発生する森林組合等、林業従事者を言う)の規模を問わず、間伐材から混練型WPC変

換まで一貫した、国内の山側で広く利用できるビジネスモデルの構築が目的となる。

○混練型WPCを使用したベンチを試作し、岐阜県の国体会場へ設置した。

○本技術をベースとした混練型WPCのサンプルワークを開始した。

○いび森林資源活用センター等の普及支援機関において、間伐材おが粉から高機能バイオフィラーを製造する実証ベースの評価を開始した。

○展示会を利用して本技術の普及啓発活動を実施してる。

○代替市場の性能及びコストに適合する混練型WPC変換技術を開発する。 ○混練型WPC変換を山側の付加価値事業として実施できる事業モデルを構築する。

〔研究グループ〕 静岡大学、産業技術総合研究所、岐阜県生活技術研究 所、山口大学、トクラス株式会社 〔総括研究者〕 静岡大学 鈴木滋彦

○間伐材おが粉から、木粉表面に微細な毛羽立ちを有したを補強効果が高い機能化木粉(以下、高機能バイオフィラーと称す)に変換する量産技術を開発した。

○特殊な設備を用いず高機能バイオフィラーを利用した混練型WPCを製造する技術を開発した。

○山側で実用化できる規格・基準まで踏み込んだ生産モデル及び、市場で活用できるマニュアルを 作成した。

○自動車等輸送機器の内装に利用することで、軽量化によるエネルギーコストの削減に資する。

○家電等機械部品に利用することで、部品コスト軽減による価格への還元、デザイン性向上に資する。

○建材、日用品等に利用することで、木質感の向上や長寿命化への貢献に資する。

○汎用のプラスチック代替であり、消費することで森林資源の有効利用に資する。

○新規林産業の創出が実現でき、国内産業の活性化に寄与する。

全国

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問い合わせ先:トクラス株式会社 TEL 053-485-7154

山側における「間伐材から機能化混練型WPC変換まで一貫したシステム」の実証研究

C材、D材等の 未利用材が原料

x 50,000200nm

均一分散化

生産量 1200t/年

売上 480百万円/年

製品原価 214百万円/年

事業原価 114百万円/年

原価計 328百万円/年

粗利 (粗利率)

152百万円/年 (32%)

沈降法

作業の基準化

木粉表面に微細な毛羽立ちを有した 高い補強効果を有するフィブリル化木粉

間伐材おが粉

アロイ剤 (変性樹脂)

山側が有する固化機とディスクミルを組合わせた多段階粉砕法を確立し、高機能バイオマスフィラーを作った

高機能 バイオフィラー

マスターバッチ原料

山側の資源で対応できる設備、作業基準、品質規格にて汎用性の高いマスターバッチ量産化を実現した

均一分散するマスターバッチを確立することで、 代替市場以上の混練型WPC

代替市場

マスターバッチ

性能 タルク 炭カル 本技術

比重 1.08 1.10 0.99

曲げ強度 44MPa 37MPa 53MPa

熱変形 107℃ 87℃ 123℃

利益を 山へ還元!!

設備、人員負荷の少ない品質管理手法

上澄みの透過度でサイズ、フィブリル量、粒度分布の管理が可能

山側で生産できるシステム構築

品質規格値

市場側の要求性能と開発技術の管理に必要な品質基準を兼ね備えた生産システム

用途マッピング

実用できる環境整備

利用マニュアル

市場にてマスターバッチを利用するための、技術情報の整備

高機能バイオファラーの合成

高機能バイオファラーを利用した混練型WPC

山側で一貫した事業モデルの構築

小規模山側でも高粗利が 確保できる事業モデル

用語注釈 ◆高機能バイオフィラー:表面に微細な毛羽立ちを有した補強効果のある木粉 ◆混練型WPC:木粉とプラスチックの複合素材 ◆コンパウンド:木粉とプラスチックを溶融混練した混練型WPC原料 ◆マスターバッチ:成形時に任意量の樹脂で希釈して利用する木粉高充填のコンパウンド

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