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112010年6月17日
ユビキタス無線工学(参考資料 ・・・ 2SC3356 高周波アンプの設計)
株式会社アンプレット 代表取締役 社長 東京電機大学 工学部 電子工学科 講師横須賀テレコムリサーチパーク(YRP) 情報通信技術研修 講師大韓民国 通産業部 中小企業振興公団 無線通信専門家電子航法研究所 次世代衝突防止レーダ 研究メンバー
工学博士 根日屋 英之 Dr. Hideyuki Nebiya
授業資料はhttp://www.amplet.co.jp/tduまたは,http://amplet.com/tduからダウンロードできます.
222010年6月17日
高周波回路設計の流れ
高周波回路の設計
バイアス(電源)設計
インピーダンス整合設計
Step-1リアクタンス成分のキャンセル
Step-2抵抗成分の整合(L型インピーダンス整合回路)
2
332010年6月17日
バイアス(電源)設計2SC3356の基礎設計
442010年6月17日
拡大
2SC3356のデータシート
直流電流増幅率 hFE = 120 (標準)
特徴
○低雑音,高利得
NF=1.1dB, Ga=11dB @f=1GHz, VCE=10V, Ic=7mA
○高電力利得 MAG 12dB TYP. @f=1GHz
3
552010年6月17日
ベース電流(例 0.058mA)
コレクタ電流(例 7mA)
エミッタ電流(例 7.058mA)
例 :直流電流増幅率 hfe=120
コレクタに流れる電流はベースに流し込む電流の直流電流増幅率(hfe) 倍になる.エミッタ電流はベース電流とコレクタ電流の合計となる. ← 重要!
Ic / 直流電流増幅率 = 7mA / 120
トランジスタの基本特性(2SC3356に限らず,どんなトランジスタでも)
662010年6月17日
0.6~0.7Vの電位差
ベース電圧(例 +0.6V)
コレクタ
エミッタ電圧(例 0V)
トランジスタが動作しているとき,ベース電圧はエミッタ電圧より0.6~0.7V高くなる. ← 重要!
トランジスタの基本特性(2SC3356に限らず,どんなトランジスタでも)
4
772010年6月17日
部品の選択
抵抗,コンデンサ,コイル等の部品は全ての値があるわけではなく,E6,E12,E24…等の系列がある.
E24系列 : 1.0,1.1,1.2,1.3,1.5,1.6,1.8,2.0,2.2,2.4,2.7,3.0,3.3,3.6,3.9,4.3,4.7,5.1,5.6,6.2,6.8,7.5,8.2,9.1 (1~10を24分割)
882010年6月17日
出力側インピーダンス整合回路入力側
インピーダンス整合回路
Rb
RFC
C
C
Cdc
Ic = 7mA
出力(50Ω)
入力(50Ω)
電源+Vc = 10V
2SC3356 高周波アンプの回路図
データブック測定条件
NF=1.1dB, Ga=11dB @f=1GHz, VCE=10V, Ic=7mA
より,電源電圧 = +10V,コレクタ電流(Ic) = 7mA
5
992010年6月17日
コンデンサには自己共振周波数がある.
設計周波数の1GHzにて挿入損失の小さい47pF程度を選ぶ.
コンデンサ Cc と Cdc の容量値の決め方
10102010年6月17日
コンデンサ Cdc は電源ラインの1GHzにおけるインピーダンスを低くする目的,Cc はトランジスタのベースとコレクタの直流電圧が入・出力に出てこないように直流をカットすることが目的である.
出力側インピーダンス整合回路入力側
インピーダンス整合回路
R
47pF
入力(50Ω)
電源+10V
47pF
47pFRFC
2SC3356
Cdc
Cc
Cc
2SC3356 のバイアス(電源)設計
出力(50Ω)
6
11112010年6月17日
トランジスタ(2SC3356)のデータシートの推奨値から,TRに流すコレクタ電流を7mAとする.このとき,ベースにはコレクタ電流のhfe分の1,すなわち7mA/120=0.058mA の電流が流れる.
7mA
出力側インピーダンス整合回路入力側
インピーダンス整合回路
Rb
47pF
電源+10V
0.058mA
47pF
47pF
RFC
2SC3356
2SC3356 のバイアス(電源)設計
入力(50Ω)
出力(50Ω)
12122010年6月17日
トランジスタのエミッタ電位は 0V,べース電位は +0.6V であるから,バイアス抵抗Rの両端には 10 - 0.6 = 9.4V の電位差がある.ここに0.058mA の電流が流れるので,Rb = 9.4V÷0.058mA = 160kΩとなる.
出力側インピーダンス整合回路入力側
インピーダンス整合回路
Rb
電源+10V
0.058mA
47pFRFC(高周波チョークコイル)
2SC3356
+0.6V
+10V
0V
0.6V
160kΩ
47pF47pF
2SC3356 のバイアス(電源)設計
入力(50Ω)
出力(50Ω)
7
13132010年6月17日
トランジスタのコレクタにはRFC(高周波チョークコイル)を介して,直流電源を供給する.コイルは直流抵抗は0Ωであるが,交流ではインピーダンスを持っているので,電源ラインとトランジスタのコレクタはRFCで,直流的には短絡し,交流的に分離される.RFCのリアクタンスは,トランジスタのコレクタ抵抗(後述するが,2SC3356 は 1GHz において 75Ω)に影響しないように,75Ωの 5~10 倍程度とすればよいので,XL = 2πfL → L = (75×5)/(2π×1×109) より,L = 60nH 程度を挿入する.
出力側インピーダンス整合回路入力側
インピーダンス整合回路
電源+10V
47pF
RFC (XL)
2SC3356
160kΩ
47pF47pF
2SC3356 のバイアス(電源)設計
入力(50Ω)
出力(50Ω)
60nH
14142010年6月17日
2SC3356のインピーダンス整合設計
8
15152010年6月17日
2SC3356 の入・出力インピーダンスをデータシートから読み取る
16162010年6月17日
7.31266.05.16426.0
22
11
SS
2SC3356 の Sパラメータ
(2SC3356 のデータブックより)
入力インピーダンス →出力インピーダンス →
NEC 2SC3356 データシートから
9
17172010年6月17日
22
22
22
sincos1sin250
sincos1sincos150
X
R
Sパラメータ(反射係数∠位相角)からトランジスタの入・出力インピーダンスを計算する
Sパラメータを 「S=反射係数∠位相角 ( )」で与えられたとき,そのインピーダンス は右の式から計算できる.
S
6.2275 jjXRZ OUTOUTOUT
4.430 jjXRZ INININ
5.16426.0
11
11
7.31266.0
22
22
30Ω 75Ω
+j 4.4Ω-j 22.6Ω
Pb
Pc Pb Pc
2SC3356 の等価回路
ベース コレクタ
エミッタ
エミッタ
ベース
コレクタ
18182010年6月17日
2SC3356 のインピーダンス整合リアクタンス成分のキャンセル
Step-1
10
19192010年6月17日
リアクタンス成分のキャンセル方法 インダクティブ(+jX)な回路の場合
インダクティブ(+jX)な回路 インダクティブ(+jX)な回路
直列共振となるキャパシタンス(-jX)を付加する
抵抗成分Rのみの回路となる
R RR
jXL
jXC
RRjXjXZ
は周波数ここで ffC
jjX
fLjjX
21
2
jXL
リアクタンス成分をキャンセルできる条件は
LC
ffLfC
2
122
1共振
20202010年6月17日
リアクタンス成分のキャンセル方法 キャパシティブ(-jX)な回路の場合
キャパシティブ(-jX)な回路
直列共振となるインダクタンス(+jX)を付加する
抵抗成分Rのみの回路となる
R RjXL
jXC
RRjXjXZ
は周波数ここで ffLjjXfC
jjX
22
1
リアクタンス成分をキャンセルできる条件は
LC
ffC
fL
2
12
12 共振
キャパシティブ(-jX)な回路
R
jXC
11
21212010年6月17日
インピーダンス (Z = R + jX)R : エネルギ伝送のパラメータ, X : 損失(リアクタンス)
6.2275 jjXRZ OUTOUTOUT
4.430 jjXRZ INININ
5.16426.0
11
11
7.31266.0
22
22
30Ω 75Ω
+j 4.4Ω-j 22.6Ω
Pb
Pc
Pb Pc
抵抗成分 抵抗成分
リアクタンス成分 リアクタンス成分
FfXc
C
Hf
XL L
21
2
fCXc
fLX L
21
2
★抵抗成分 : エネルギーの伝送に関与する.
★リアクタンス成分 : 損失を発生する.
↓
交流回路の設計は,リアクタンス成分 X=0 にすること.
22222010年6月17日
2SC3356 の入・出力インピーダンスのリアクタンス成分をキャンセルする方法
30Ω 75Ω
-22.6Ω
Pb
Pc
Pb Pc 30Ω 75Ω
-22.6Ω
Pb
Pc
+j 4.4Ω
-j 4.4Ω
+22.6Ω
+j 4.4Ω
+22.6Ω→ 3.6nH @ 1GHz
-j 4.4Ω→ 36pF @ 1GHz
Pi
Po
Pi
Po
30Ω 75Ω
Pi Po
2SC3356 の等価回路 2SC3356 の入・出力のリアクタンス成分をキャンセル
2SC3356 の入・出力のリアクタンス成分をキャンセル
fXcC
21
fXL L
2
トランジスタの外部に付加
トランジスタの外部に付加
12
23232010年6月17日
2SC3356 のインピーダンス整合抵抗成分の整合回路
Step-2
24242010年6月17日
L型インピーダンス整合回路
13
25252010年6月17日
)(22
)(2
12
1
2
1
HQf
RQf
XL
FQfR
QfX
C
Q
L
C
帯域
中心周波数
C
L
R2R1
L型インピーダンス整合回路
( R1>R2 の時 )
26262010年6月17日
ffQ
2
0
2f
f0
3dB
周波数
|電圧|
共振回路のQとは
14
27272010年6月17日
L型インピーダンス整合回路の実際の設計
28282010年6月17日
5
2001000
2001
MHzMHz
MHzGHzQ
帯域
中心周波数
L型インピーダンス整合回路中心周波数 1GHz / 帯域 200MHz (900~1100MHz)
C1
L1
R1
= 50ΩR2
= 30Ω
)(249.23578.4
51010002
302 6
21
nH
Qf
RL
)(169.15518.3
5501010002
12
16
11
pF
QfR
C
E24系列
E24系列
対応対応
15
29292010年6月17日
5
2001000
2001
MHzMHz
MHzGHzQ
帯域
中心周波数
L型インピーダンス整合回路中心周波数 1GHz / 帯域 200MHz (900~1100MHz)
C2
L2
R3
= 75Ω
R4
= 50Ω
)(39)(40596.7
51010002
502 6
42
nHnH
Qf
RL
)(10512.2
5751010002
12
16
32
pF
QfR
C
E24系列
E24系列
30302010年6月17日
2SC3356 高周波アンプの回路
16
31312010年6月17日
電源+10V
47pF
2SC3356
160kΩ
36pF
47pF
2SC3356 高周波アンプの回路
入力(50Ω)
出力(50Ω)
60nH
3.6nH 39nH
16pF
24nH
47pF
10pF
この 47pF は,トランジスタのベースの直流電圧が入力端子に出てこないように直流をカットすることが目的であるので,36pF のみでこの機能はまかなえる.
2SC3356
36pF
入力(50Ω)
16pF
24nH
32322010年6月17日
電源+10V
47pF
2SC3356
160kΩ
36pF
47pF
2SC3356 高周波アンプの最終回路
入力(50Ω)
出力(50Ω)
60nH
3.6nH 39nH
16pF
24nH
10pF
17
33332010年6月17日
[参考]公称 入・出力インピーダンス50Ωの回路とは(設計現場では)
34342010年6月17日
電源+10V
47pF
2SC3356
160kΩ
36pF
47pF
公称入・出力インピーダンス50Ωの高周波アンプとは,VSWR<2 の仕様でよい
入力(30Ω)
出力(75Ω)
60nH
3.6nH
民生機器では,50Ω系回路は VSWR < 2 まで仕様の範囲となるので,50Ωの1/2倍( = 25Ω)から2倍( = 100Ω)まで,公称入・出力インピーダンスを50Ωとしてよい.前述の回路設計の,入力側インピーダンス整合回路(50Ω→ 30Ω)と,出力側インピーダンス整合回路(75Ω→ 50Ω)は省略してしまってもよい.
公称入・出力インピーダンスを50Ωの2SC3356 の高周波増幅器の回路