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Vol. 19 No.100 電波研究所季報 January 1973 pp. 31-39 研究 UDC621. 375. 826 : 621. 3. 09 レーザ光の水中伝搬特性 三浦秀一’長友宏二郎事近藤喜美夫’岡本裕允* (昭和47.7. 19 受理) UNDERWATERTRANSMISSIONCHARACTE :STICS OFLASERBEAM By ShuichiMIURA,HirojiroNAGATOMO, KimioKONDO,andHironobuOKAMOTO Characteristicsoftransmissionofcollimatedgreenlaserbeamsinturbidwater are discussed, especiallywithturbidityofwater. Measurementhasbeenmadeinawater. tank(6 m L,1 m W, 1 m H) inadarkroom, withan argon laser which hadtheoutputofaTEMoo mode, 5,145 A wavelength,and0. 5 .% ofthelong-termamplitudestability. Citywaterwasusedaswaterwhich filledthetank, anditsturbidity, asa measuringparameter, was determined by controlling the totalamountofkaolinitesuspendedin. Theresultsofmeasurementareshowninfiguresandequationsabouttheattenuation charac- teristicsofthebeamaxisand aboutthetotalbeamshapes. 1. はじめに 近年,諸外国ならびにわが国において,海洋の資源, エネルギー,空間等の利用のために本格的な海洋開発が 検討されはじめ,各種のプロジェクトが活発に活動を開 始してきた。乙れに伴い海中での各種の情報を海上へ高 速,広帯域l ζ伝送するシステムが強く要望されてきた。 海中における情報伝送には,超音波,ケープJLI 長波 電波等が利用されてきたが,超音波は搬送周波数の増大 l ζ伴い減衰が急増するため広帯域化が不可能であり,ケ ープルは経済性および固定地点間以外には使用できない 難点があり,長波電波は大施設を必要とし,かつ全くの 狭帯域伝送以外には使用不可能である。また超音波レー ダーは解像力および海水密度の不連続等による疑似エコ ーの点で限界がある。 当研究室では,乙れらの点について,現在の研究の動 本通信機器部海洋通信研究室 31 静,技術開発状況,実用の可能性,実用の時期等を検討 した結果 (1 )大陸棚海底から海面上までのレーザ光による広帯 域情報伝送システムの開発 (2) レーザ光による海中目標物体の探査システム(レ ーザスコープ)の開発 (3 )以上2 つのシステムの完成に必要な,海中レーザ 光伝搬特性の研究 以上 3 つのプロジェクトを実行するとととなった。 レーザ出現以前においても,海中生物のエネルギー源 としての太陽光の海中への伝搬特性,気象学的見地から の太陽放射エネルギーの海中への伝達および海中,海面 からの光エネルギーふく射等,光の水中伝搬特性が研究 されてきた。しかし強力かっ安定でコヒーレントな単色 光波としてのレーザが開発され,その周辺技術としてレ ーザ光パルスの巨大化,連続発振レーザ光の広帯域変 調,超高速パルスレーザ等が可能となるにつれて,情報 伝送等の手段としてのレーザ光の応用が急速に脚光を浴

レーザ光の水中伝搬特性 - NICT...Vol. 19 No. 100 January 1973 れていない。乙の論文では,これら多重散乱光成分を含めた,平行 ビームレーザ光の水中伝搬特性について,散乱物質の濃

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Vol. 19 No. 100 電波研究所季報 January 1973 pp. 31-39

研究

UDC 621. 375. 826 : 621. 3. 09

レーザ光の水中伝搬特性

三浦秀一’長友宏二郎事近藤喜美夫’岡本裕允*

(昭和47.7. 19受理)

UNDERWATER TRANSMISSION CHARACTE阻:STICS

OF LASER BEAM

By

Shuichi MIURA, Hirojiro NAGATOMO,

Kimio KONDO, and Hironobu OKAMOTO

Characteristics of transmission of collimated green laser beams in turbid water are discussed,

especially with turbidity of water. Measurement has been made in a water. tank (6 m L, 1 m W,

1 m H) in a dark room, with an argon laser which had the output of a TEMoo mode, 5,145 A wavelength, and 0. 5 .% of the long-term amplitude stability. City water was used as water which

filled the tank, and its turbidity, as a measuring parameter, was determined by controlling the

total amount of kaolinite suspended in.

The results of measurement are shown in figures and equations about the attenuation charac-

teristics of the beam axis and about the total beam shapes.

1. はじめに

近年,諸外国ならびにわが国において,海洋の資源,

エネルギー,空間等の利用のために本格的な海洋開発が

検討されはじめ,各種のプロジェクトが活発に活動を開

始してきた。乙れに伴い海中での各種の情報を海上へ高

速,広帯域lζ伝送するシステムが強く要望されてきた。

海中における情報伝送には,超音波,ケープJLI,長波

電波等が利用されてきたが,超音波は搬送周波数の増大

lζ伴い減衰が急増するため広帯域化が不可能であり,ケ

ープルは経済性および固定地点間以外には使用できない

難点があり,長波電波は大施設を必要とし,かつ全くの

狭帯域伝送以外には使用不可能である。また超音波レー

ダーは解像力および海水密度の不連続等による疑似エコ

ーの点で限界がある。

当研究室では,乙れらの点について,現在の研究の動

本通信機器部海洋通信研究室

31

静,技術開発状況,実用の可能性,実用の時期等を検討

した結果

(1)大陸棚海底から海面上までのレーザ光による広帯

域情報伝送システムの開発

(2) レーザ光による海中目標物体の探査システム(レ

ーザスコープ)の開発

(3)以上2つのシステムの完成に必要な,海中レーザ

光伝搬特性の研究

以上3つのプロジェクトを実行するとととなった。

レーザ出現以前においても,海中生物のエネルギー源

としての太陽光の海中への伝搬特性,気象学的見地から

の太陽放射エネルギーの海中への伝達および海中,海面

からの光エネルギーふく射等,光の水中伝搬特性が研究

されてきた。しかし強力かっ安定でコヒーレントな単色

光波としてのレーザが開発され,その周辺技術としてレ

ーザ光パルスの巨大化,連続発振レーザ光の広帯域変

調,超高速パルスレーザ等が可能となるにつれて,情報

伝送等の手段としてのレーザ光の応用が急速に脚光を浴

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32 電波研究所季報

ζれらの問題点の解決のため,

われわれは第1段階と して, 水中

におけるcwレーザ光の距離減衰

特性およびレーザビームの散乱に

よる広がり等の点について,実験

室内で,光散乱物質の濃度をパラ

メーターとする各筏の実験,解析

も行なったので,乙乙 1r.報告す

る。

2. 距離減衰特性

2-1 レーザ光の水中距離減衰特

レーザ光の水中伝搬特性を考え

る場合,ビーム中心車Ii上の光電力

密度(放射l照度)が,距離とと も1r.'

写真1 レーザ光送信設備および実験水槽 どのように減哀してゆくかという

ro;;J I Iris S • IOmmZ

I.JD I Photo Diode UO.T. Pl>HO BiAS '0 V

tl1 l凶実験設備プロックダイアグラム

びてきた。しかしながら,乙のような新しい光の泌中に

おける伝搬特性,特に情報伝送iζ対応するような研究

は,いまだほとんど行なわれていない。乙のため,散乱

特性,偏光特性,伝送可能帯域問等,未開拓の問題が山

事!(している。

ζ とは,最も基本的な量である。従来から単色光を用い

た結果川や,太陽光の消散の測定等聞を含めて,次iζ述

べるいくつかの定量的結果が発表されている印刷。

平行光線の,ピーム中心軸上における水中伝搬特性

は3 多豆散乱の効果を考えない場合, Lambertの法則

で表わされる。とれは伝搬距同I~ r (m)における光屯カ

密度(放射限度)を H,0(w/mりとすると

HOγ=Hoe-aγ (1)

で表わされる。乙乙で Hoは r=Oにおける光電力密

度, α(1/m)は直接光減衰定数である。

しかしながら多重散乱のため,いったんビームの外に

散乱された光が,再びビーム内に入ってくる効果や,ビ

ーム中でも 2回以上の散乱を受けて受光器に到達する効

果等のため,遠距離ではζの式では記述できない乙とが

知られている。 ζの多重散乱効裂については,現在でも

じゅうぶんな解析がなされていないが,Duntley等川{引

は,中性子の拡散理論とのアナロ ジーから,点光源から

の光について,単位立体角当りの送信電力(放射の強さ〕

J (w /sr),多重散乱を受けない直接光による光電力密度

H,0(w /m2) , 多重散乱光による光';=~力密度 H戸(w /m2) ,

金光屯カ?を度 Hr(w/mりと したH寺,次式が成立する

としている。

Hr=品。+H,.*=と三+!・h・竺γ

7・ 4πy(2)

ζとで第2項の k(1/m)は多重散乱光成分1r.対する

減衰定数である。

(2)式は,点光源からの光に対する関係式であって,平

行光線lζ対しては,若干のflli正をほどとした式も示され

ている川山川が,一般的lζ成立する式としては,確立さ

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Vol. 19 No. 100 January 1973

れていない。

乙の論文では,これら多重散乱光成分を含めた,平行

ビームレーザ光の水中伝搬特性について,散乱物質の濃

度をノfラメータとした実験,解析を行ない,従来の結果

第lj表送受信設備主要諸元

TRANSi叫TTERAr-LASER W嵐vel町、gth s14sJ..

Polari田.t1on Verti国 lOutput 200mW

Stability ! 0.5・hB岨md岨met肝 1.5 mm C1/e2l Beam divergence O.Smrad.

句ticalattenuator 0・80dB

TranS11首ttingt~s;~m F2 & f o300mm F4

Transmittd beam ぬmeter 16mm (・3dBl

RECEIVER 門内事0湖伽町lu:;附lier E.M.J.鰯 88

Volt叫ie 300-2000V Stability !0.05・品

Power阿梅ter C町開明tInd隠at町 10・11・10・3A

Accur冒司V !1・t.R例刻Yir百gte除SC句国E

f=35mm F2 晶 f=日lOmmF1.4 Dian曹幅, 35mm Field of view 23.7・加治Ifilter 』A=20A

WATER TANK

9色9

water tank

Wind仰

Ins協 Black frost“ Dim・間i。ns Har咽混~『!”l chrolidt

!mW x&mL Sur句i:er句ul町ity A /10 Wedge 10” Anti-開flection冊以 BK・7陥官剥elSi揖 50mmfx7mmt

(I) 1961 Tht Wtst PacHic 凶 1!1!謁N岨rTiit C幅stof The No巾 S岨1311970 Cllt割問副0・Bay

2 3 4 56789}' PARTICLE DIAMETER

II甘録第1図 Kaoliniteおよび海中浮遊物の粒径分布

33

より,より広範囲の濃度においての新しい表現式を導き

出した。

2-2 実験概要,測定結果および解析

2-2-1 送受信装置および測定結果(写真 1参照)

送信レーザは,安定度のよいアルゴンレーザを使用

し,受信には光電子増倍管を使用している。実験用水槽

は幅 lm,高さ lm,長さ 6mで,内面を思色lζ仕上げ

である。主要送受信設備諸元を第1表に示す。第l図の

フーロックダイアグラムに示すように,写真用レンズを組

み合わせた望遠鏡により,レーザ光ビームを拡大し,平

行光線化し,無反射コーテイングをした光学ガラス窓よ

りレーザビームを水槽中に導入している。光電力密度の

測定には,水槽中のレール上を移動する水密きょう体内

に収容した,受信望遠鏡および光電子増倍管からなる受

光器と,ディジタル電流計型光電力計を使用している。

又散乱物質として, Kaolinite(白陶土, Al20a・2St02・2H20,粒子径2μ以下のもの809ぢ以上の市販品,粒土分

布は附録1図参照)を水中に拡散させ,乙の濃度をパラ

メータとして測定を行っている。

2-2-2 直接光の減表特性

水槽中i乙水道水を入れて24時間放置後, Kaoliniteを

E

.x.

MONO”& MULTI-PATH ATT.COEFF. O(,k 20ト VS.CONTENTOF KAOLINITE

15

ol=0.194+ Q593P

k = 1.177+ 0.0477P

~10 0.

5

10 20 30 K却LINITE: P (mg/I)

第2図 Kaolinite濃度Pと直接光減衰定数αおよび散乱光減衰定数h

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34

投入滋持し,水松t中のレールl乙沿って水密式受光器を光

軸方向に移動し,アルゴンレーザ光(波長 5145A, 垂

直偏光, 平行光線 Ho=3.08×10w/m2)のビーム中心

軸上における距離減衰特性を測定した。なお受光器の視

野は23.7度,透過波長半値幅 20Aの光学フィJレターを

使用している。

投入した Kaolinite濃度 P(mg/l)と直接光減衰定

数 αClim)との関係を第2図に示す。乙の測定結果

は,水槽中にフォトダイオード(U.D.T.PIN-10,視野

90度,受光面積10mm2)を入れて測定した結果とも一致

していて,図より明らかなように,乙の程度の濃度まで

は, Kaolinite濃度Pと直接光減衰定数αは, ほとん

ど一次の比例関係にある。最小二乗法により,との関係

を求めると

α=0.19HO. 503 P

と表わす事ができる。

2-2-3 散乱光の減衰定数

(3)

前項の測定で,伝搬距離を延ばしてゆくと,第3図の

測定結果l乙示されるように,光電力密度(放射照度,

w/m2)が αとはちがった減衰定数によって支配される

領域に入るととがわかる。乙の部分は,散乱光成分が,

伝搬モードを支配してい~領域である。なお第3図の横

自こl1J 3: 0 且J .7

・10’

10 9

POWER DENSITY "VS

NORMALIZED PROPAGATION DISTANCE

KAOLINITE

20 40 60 80 PRO臥GATIONDIST.州 CE(A-L-)

第3図距離減表特性〈規格化〉

電波研究所季報

軸は伝搬距離を直接光減衰定数日の逆数(減衰距離,

Attenuation Length(m) : A.L.。光の強度が 1/eにな

る距離)で規格化したものである。

乙の領域の散乱光減衰定数 k(1/m)と Pとの関係を

αとともに第2図に示す。この関係を最小二乗法によ

り,一次近似式として求めると

k= 1. 18+0. 0477 p

と表わされる。

(4)

次に直接光減衰定数 aと散乱光減衰定数 hとの関係

を求めてみると一次式近似として

k=l.17+0. 0834α (5)

と表わされる。 Kornstein等聞が,海水中の単色光伝扱

特性について,散乱光減衰定数hが,直接光減衰定数百

の30%~40%であるとしているが, この実験結果から

k/aを Pの関数として求めてみると,第4図lζ示すよ

うに, Pとともにとの値は減少し, Kornstein等が主張

する30~ぢ~40%という値は,濁度の小さい領域の状態を

観測していることがわかる。乙の関係は,三次近似式と

して求めると

klα=0. 400-0. 023P十O.OOIP2

で表わされる。

(6)

乙の散乱光成分を含む光の受光にも,視野23.7度の光

学系を使用しているが,これ以上の受光角については,レ

ンズのF値,受光素子の有効受光面積,干渉フィルター

の入射角依存性等の点から,実用上はかなり難かしい間

04

。3k/o(

。2

0.1

、、、、

RATIO OF MONO PATH TO

MULTI PATH AH COEFF・ VS・ CONTENT OF KAOLINITE

k/≪ = 0.40-0D23P 、、、、 ・ 0.001~0.β0002丙

10.0 副主O 30.0 K.的UNITEP(mg/I)

第4図 Kaolinite濃度Pと減衰定数比klα

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Vol. 19 No. 100 1973 January

題となる。

2-2-4距離減衰特性の一般式

第3図l乙示されるような,ビーム中心軸上における距

離減衰特性の測定結果について,一般的な特性を表現す

る式を考えてみる。図から明らかなように,金受信光電

力密度 Hト(w/mりは,直接光成分による電力密度H戸

(w/m2)と,散乱光成分による電力密度 H戸(w/m2)

の和の形iとなっている。とのうち散乱光成分について,

無限平面からの均一なわき出しを記述する中性子拡散理

論聞を応用して,一般式を次のようにおいてみる。

Hγ=H戸+H戸=H0e-ar+c・Ho・!.e-kγα

cは定数, Hoは乙の実験では品=3.077×10 w/m2

である。

乙れを計算したのが,第3図の実線である。 10~15減

衰距離附近を除いて,実測値と計算値は,非常に良くあ

っている。 ζの α,k,cを表iとしてみると,第2表の

ようになり, α,kの大幅な変化iと対して, cのばらつ

きが小さいので,乙の式でじゅうぶん減衰特性が記述で

きていると考えられる。

しかし,乙のcが受光角特性を持っととも考えられる

ので,今後乙の研究を進めてみる必要がある。

2-2-5 多重散乱光成分ど直接光成分

次iと,第(7)式に基づき,伝搬距離に対して,多重散乱

光成分 H〆と直接光成分 H,oの比を求めると

H戸-r・k• .ola-k】7H;o一ν -a ~

となる。乙れを表わしたのが第5図である。乙の図から

も明らかなように,減衰距離の14~15倍を過ぎたあたり

から多重散乱光成分が直接光成分を上回り始め,減衰距

離の30倍程度の伝搬距離では 1Q5倍以上にも達するとと

がわかる。したがって,通常の沿岸海水として減衰距離

第2表 定数 cの値

ct 11/m』 k 11/mJ c 3.81 1.07 5.34'x.1σ5

6.58 1.64 7.42

8.79 1.91 5.62

11.0 2.14 5.29

13.5 2.37 4.79

18.1 2.60 4.55

ぽf=5.58x10・5

35

10・

106

104

(7) 且…

wm

10 zo 吋色刷1;徐附EA・L・

散乱光成分H,*第5図 と伝搬距離

直接光成分H川

(8)

5mの海水中の伝搬を考えると,伝搬距離70~75mで散

乱光成分が上回り始め, 150m程度では散乱光成分が直

接光成分の 1Q5倍にもなり,との散乱光成分の利用の仕

方が,伝送システムの最大のポイントとなるであろう。

s. ビーム特性

3-1 ビームの広がり

2章で述べたように,海水中を伝搬する光は,強く散

乱,吸収を受け,その軸上での強度は,指数関数的l乙減

衰する。散乱された光は光軸のまわりに拡散し,実効的

に光ビームの径を広げる事になる。水の濁度によってど

のようにビームが広がるかに関するデータは,あまりな

いωω。しかし水中での像の見え方,照明の効果,レー

ザレーダの効果等を知るため,また通信回線,特iζ受信

光学系の設計のためには,ビーム特性は最も基礎的なデ

ータとなるものである。このためレーザ光の距離減衰特

性の測定と並行して,ビーム形状の測定を行なったの

で,その結果について述べる。

3-2 実験概要

第 6図に示すような指向性を持った,受光面積10mm2

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36

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・お-20 -10 ・旬 初~ Id句JAN印 L絹 DISPLACEMENT

第6図水密フォトダイオード受光器の指向性

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第7図 ピームの形状(水道水)

電 波 研 究 所 季 報

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第8図 ビームの形状(Kaolinite濃度 5mg/f)

IArbltr町yUnits]

KAOUNηE 20mg/l

AL:QO町阿、1tf>

とトポ

~ U』。

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面百一一一一一 面 叩 jmm)

DISPLACEMENT FROM TトIEBEAM CENTER

~9 図 ピームの形状(Kaolinite濃度20mg/l)

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Vol. 19 No. 100 January 1973

のフォトダイオード(U.D.T.PIN-10)を入れた水密容

器を水槽中i乙沈め,各伝搬距離において受光面が光軸と

直角となるようにセットし,そのまま光軸と直角方向に

水平に辛行移動させて受光している。したがって,乙の

論文における光源からの伝搬距離というのは,光軸上に

おける距離である。光電力密度の測定は,フォトダイオ

ードの出力電流をデジタル電流計型光電力計(U.D.T.-

21A)で読み取るようにしである。

KA乱INITE&mg/I

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11 "'吟議争>~~ ~

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郵欄W.FOV恒岡田制SITYlll釘開鳳mo”第10図等光電力密度分布曲線(Kaolinite濃度5mg/の

KAOLINITE 10"唱/ I

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SIWIALl'I却時四DENSITYDIST1制BUTION

第11図等光電力密度分布曲線(Kaolinite滋度lOmg/l)

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KAOLINITE 17.Bmgll AL•副田刷

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第12図等光電力密皮分布曲線(Kaolinite濃度17.Bmg/l)

37

3-3 測定結果

水道水および 5mg/l, 20mg/lの Kaolinite濃度に

対して,横軸をビーム中心軸からの水平移動距離,縦軸

を光電力密度として表わした測定結果を,第7図~第9

図に示す。また,これらの測定から空間的な等光電力密

度曲線を求めたものを,第10図~第15図に示す。

乙の結果は,ビーム中心附近の直接光成分が伝搬距離

KAOUNITE 20mg/I

AL•D園田岡... ... 2・a・"1-10:!

-・・・’ ト1町宮 AL

-一一一一一’...・' l ‘ m .. .. 組I札 RAI時E

’曲

SIWIAL FOii厄RD副S11YDISTRI即T剛

第13図等光電力需度分布尚線(Kaolinite浪皮20mg/l)

民Mil』NITE25府唱,t

AL•D.DI姐‘命唱

’個

雌IALRAI幅E

SIWIAl.fl湖底Riii副SITYlllST悶BIJllON

第14図等光電力密度分布曲線(Kaolinite濃度25mg/l)

KAOLINITE 30開唱/I

AL•QD田町叫

’0・

雌1札 RAI暗E

SIWIAL開測慌RDEI峨TYDI釘陪凪mo”

第15図等光電力密度分布曲線(Kaolinite濃度30mg/l)

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38

の増大とともに,急搬に減衰し,散乱光成分の中に埋も

れてゆく ζとを示している。この傾向は濁度の大きいと

きほど強く, Kaolinite濃度 5mg/lでは 14A.L.でも

ビームの形が保存されているのに対し, 30mg/lでは8

AL.でもほとんど埋もれてしまっている。

各種 Kaolinite濃度に対して SAL.におけるビーム

の形状を第16図に示す。との図iζ示されるように,ピー

ムの形は誠表距離で規格化しても一定とはならない。ピ

ーム幅として半値幅を取り, Kaolinite濃度をパラメー

ターとして,伝搬距離とビーム幅の関係を求めたもの

を,第17図に示す。第16図,第17図から濁度が大きい

程,ビーム中心附近の散乱光成分が強い乙とがわかる。

したがって,レーザレーダ等水中の探査では,濁度が

大きし透明度の悪い水中では,たとえ距離を短くして

減衰量を小さくし,じゅうぶんな照度が得られる場合で

も,乙のピームの広がりのため,解像度が悪くなり,減

衰量では規格化できない乙とが考えられる。

4. まとめ

Kaoliniteを散乱物質として,水中に投入し,濁度を

変えて各種のレーザ光水中伝搬実験を行なった結果

1)平行ビームレーザ光の水中伝搬特性は,直接光成

分と散乱光成分の2つのモードの和の形で表わされ

IA市街町,!Ml凶SAL d胸間

111'6

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第16図 5減衰距離におけるピームの形状

(パラメーター:Kaolinite濃度〉

電波研究所季報

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の形で示すζ とができる。

2) 散乱光減衰定数hと,散乱光減衰定数αの比は,

Kaolinite濃度 5mg/l~30mg/lの間で

.!=0.400一O.023P+O. 001P2 a

で近似される。

3) したがって十0.3-0.4という Korns蜘等の

値は透明度のよい,きれいな海水についてのみ成立

する値であるζ と。

4) 同じ減衰量となる伝搬距離であっても,漉度の大

きい水中の方が,ビームの広がりがはげしい。

等が明らかとなった。

5. おわりに

以上のように,レーザ光水中伝搬では,多重散乱光の

影響は大きし一般的な形で乙れを完全に記述すQのは

難かしい。今後,多重散乱光の受光角度特性,偏光特

性,ビームの形状の保存特性と解像度との関係等,重要な

問題が山積しているので,乙れらの問題について実験,

解析を続ける予定である。また,エネルギーの伝搬特性

だけでなく,情報伝送特性として重要な,伝送可能帯域

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第17図伝搬距離(規格化)とピーム幅

(パラメーター: Kaolinite濃度)

Page 9: レーザ光の水中伝搬特性 - NICT...Vol. 19 No. 100 January 1973 れていない。乙の論文では,これら多重散乱光成分を含めた,平行 ビームレーザ光の水中伝搬特性について,散乱物質の濃

Vol. 19 No. 100 January 1973

幅iと関係して,伝搬時間,位相等lと関連した量の測定,

解析を行なう予定である。

なお,散乱物質として採用した Kaoliniteと実際の海

中浮遊粒子との関係であるが,附録第1図(31頁に掲載)

に示すように,大略,自然状態に近い粒径分布を持って

いるものと考えられる。しかし,実際の海中浮遊物を考え

た場合,無機鉱物質はKaoliniteでじゅうぶん代表でき

ると考えられるが,有機物については,単純な結局と複雑

で各種の形や光学的性質を持った生物体との相違に基づ

く,伝搬特性のちがいも考えられる。とれらの点を考慮し

て, Kaoliniteの妥当性の検討と長い伝搬距離を必要と

する時間,位相を含んだ伝搬特性の測定実験を合わせて,

実際の海水中における伝搬実験を,近々行う予定である。

6. 謝 辞

本実験の実施,ならびに解析にあたって,協力を頂い

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た当研究室藤間研究官に感謝致します。

参考文献

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(2) Tyler, J.E. and Smith, R. C., J. Opt. Seo.

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(5) Kornstein, E. and Wetぉtein,H., Electronics,

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