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平成25年1月 公益社団法人 東京都宅地建物取引業協会

マンガでわかる 実務本位 不動産取引に役立つコン …不動産取引に役立つコンプライアンスQ&Aマンガでわかる実務本位 平成25年1月 公益社団法人

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Page 1: マンガでわかる 実務本位 不動産取引に役立つコン …不動産取引に役立つコンプライアンスQ&Aマンガでわかる実務本位 平成25年1月 公益社団法人

不動産取引に役立つコンプライアンスQ&A

マンガでわかる

実務本位

平成25年1月公益社団法人

東京都宅地建物取引業協会

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発刊にあたって

本会では、不動産取引業の専門家としてノウハウ向上に役立てていただくために小冊子「実務本位シリーズ」

を発行し、会員の皆様からご好評をいただいておりますが、本年度は、実際の取引業務の現場で起こりうるコン

プライアンスの逸脱・軽視・認識不足に伴うトラブル事例をまとめた『不動産取引に役立つコンプライアンス Q

&A』を発刊する運びとなりました。

不動産取引業では、日常生活に直結する高額な商品を取り扱います。顧客にとっては「穏やかなくらしをした

い」「一生に一度の買い物で失敗したくない」という心理が強く、トラブルの発生しやすい業務です。顧客から

何も注文がつかない取引のほうがむしろ少ないのかもしれません。

不動産取引業におけるトラブルとしては、瑕疵に起因するもの、業者の調査・説明義務を怠ったことに起因す

るものなども挙げられますが、法律的なものばかりではなく、顧客への配慮を欠いた対応に起因するものもあり

ます。

また、最近では、対外的な問題だけではなく、内部的なトラブルが、企業活動にとって深刻な問題になるケー

スもみられます。

このようなことから、注目を集めているキーワードが“コンプライアンス”です。コンプライアンス(Compli-

ance)とは、企業活動を行ううえで、法令や社会の諸ルールを遵守することを意味します。これを実現するため

には経営者と従業員が一体となって、企業の存続・発展のために社内のコンプライアンス体制を確立する必要が

あります。

本書は、【コンプライアンス総論編】【売買編】【賃貸編】の3編で構成しており、コンプライアンスの重要性

と特徴的な事例を Q&A形式の解説とマンガで構成することで、問題点や、解決法についてよりイメージしやす

くし、コンプライアンス意識を高めるだけでなく実践力を備えるにも最適な内容となっております。

また、一般の消費者の皆様が不動産の売買や賃貸の取引を行う際や、不動産取引を依頼する際にも役立つ内容

としてまとめました。

なお、本書に掲載されている事例の判断は、実際には個々の取引のケースによって異なり、すべての事例が同

じ結論になるとは限りません。最終的には司法判断になる場合もありますので、トラブルの未然防止の観点から

注意点やアドバイスを参考にしていただき、取引の際にお役立ていただけますと幸いです。

最後になりますが、本書の発刊にあたりまして、監修をいただきました渡辺晋弁護士(山下・渡辺法律事務所)

および柴田龍太郎顧問弁護士(深沢綜合法律事務所)には心より感謝いたします。

平成25年1月

公益社団法人 東京都宅地建物取引業協会

会 長 池 田 行 雄

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目 次

コンプライアンス総論編

Q1 コンプライアンスの意味 ……………………………………………………………………………………………6

Q2 トラブル防止の視点 …………………………………………………………………………………………………8

Q3 個人情報保護法 ………………………………………………………………………………………………………10

Q4 宅建業者の守秘義務 …………………………………………………………………………………………………12

Q5 プライバシーの権利 …………………………………………………………………………………………………14

Q6 犯収法の本人確認 ……………………………………………………………………………………………………16

Q7 暴力団排除条例 ………………………………………………………………………………………………………18

Q8 暴力団関係者のチェック ……………………………………………………………………………………………20

Q9 専任の取引主任者 ……………………………………………………………………………………………………22

売買編

Q10 媒介契約書(仲介契約書) …………………………………………………………………………………………26

Q11 広告表現のルール ……………………………………………………………………………………………………28

Q12 おとり広告 ……………………………………………………………………………………………………………30

Q13 売り物件の問い合わせに対する対応 ………………………………………………………………………………32

Q14 景品の規制 ……………………………………………………………………………………………………………34

Q15 売買契約の成立 ………………………………………………………………………………………………………36

Q16 値引きの可否 …………………………………………………………………………………………………………38

Q17 重要事項説明 …………………………………………………………………………………………………………40

Q18 騒音調査 ………………………………………………………………………………………………………………42

Q19 隣人トラブル …………………………………………………………………………………………………………44

Q20 自殺 ……………………………………………………………………………………………………………………46

Q21 土壌汚染 ………………………………………………………………………………………………………………48

Q22 アスベスト ……………………………………………………………………………………………………………50

Q23 耐震診断 ………………………………………………………………………………………………………………52

Q24 マンションの管理費滞納 ……………………………………………………………………………………………54

Q25 物件調査の方法 ………………………………………………………………………………………………………56

Q26 不実の告知と契約の取消し …………………………………………………………………………………………58

Q27 住宅性能評価制度 ……………………………………………………………………………………………………60

Q28 住宅瑕疵担保履行法 …………………………………………………………………………………………………62

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Q29 手付に関する信用供与の禁止 ………………………………………………………………………………………64

Q30 手付解除の時期 ………………………………………………………………………………………………………66

Q31 重要事項説明書と契約書の関係 ……………………………………………………………………………………68

Q32 現状有姿 ………………………………………………………………………………………………………………70

Q33 直接取引 ………………………………………………………………………………………………………………72

賃貸編

Q34 賃借人募集広告の規制 ………………………………………………………………………………………………76

Q35 賃貸物件における景品 ………………………………………………………………………………………………78

Q36 広告費用 ………………………………………………………………………………………………………………80

Q37 自殺の説明 ……………………………………………………………………………………………………………82

Q38 抵当権の説明 …………………………………………………………………………………………………………84

Q39 賃借人の選択 …………………………………………………………………………………………………………86

Q40 入居審査での必要書類 ………………………………………………………………………………………………88

Q41 保証契約 ………………………………………………………………………………………………………………90

Q42 鍵の交換 ………………………………………………………………………………………………………………92

Q43 修理費用の負担 ………………………………………………………………………………………………………94

Q44 更新料特約の有効性 …………………………………………………………………………………………………96

Q45 自力救済の禁止 ………………………………………………………………………………………………………98

本書に掲載されている事例の判断は、実際には個々の取引のケースによって異なり、すべての事例が同じ

結論になるとは限りません。最終的には司法判断になる場合もありますので、トラブルの未然防止の観点か

ら注意点やアドバイスを参考にしていただき、取引の際にお役立ていただけますと幸いです。

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Q5 プライバシーの権利

事例 宅建業者には、いろんな情報が入るけど……

営業部のAさんは、賃貸マンションの仲介でお客様を案内する際、「このマンションにはタレ

ントのXさんが住んでいるんですよ。会えるかもしれませんよ」といって営業しているようで

す。そのマンションには本当にXさんが住んでいるらしいのですが、このような営業をしても

いいのでしょうか。

プライバシーを侵害する行為であり、損害賠償を請求される可能性もあります。

Answer

宅建業者は、業務上取り扱ったことについて知り得た秘密を他に漏らしてはならない義務を負います(宅建業

法45条)。宅建業者は、他人の秘密に属する情報を知る機会の多い立場にあり、秘密が守られるという安心感が

あってこそはじめて、依頼者や社会からの信頼を得ることができるのであり、秘密保持は、信頼の基礎です。

賃貸マンションの仲介を業務として行った以上は、マンション全体について、様々な情報を知ることになりま

す。宅建業者として取り扱わなかった部屋に関する情報も秘密にあたりますから、Xさんが住んでいることも、

他に漏らすことは禁止されると考えられます。

また、人がみだりに他人に知られたくないと考える事柄のことを「プライバシー」といい、法律上手厚い保護

を受けています。Xさんにとってどこに住んでいるかは他人に知られたくない事項であることは明らかであって、

この Aさんの行動はこのタレントのプライバシーを侵害する行為ともなります。損害賠償を請求される可能性も

ないとはいえません。

宅建業者は人に知られたくない事項を取り扱う業務を行いますから、依頼者から受領した個人情報に限らず、

業務上知ったすべての情報に関し、取扱いには十分気を使わなければなりません。

コンプライアンス総論編

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えー!?

いい物件ですよ 気に入ったけどちょっと予算が…

あのグラビアアイドルのもものちゃんも住んでいるのですよ

ここだけの話

え♡ マ、マジっすか? さきほど管理人に聞いたから確かです

か、貸りちゃおうかな!―――しかし予算が…

ちょっと中西さん

カホリン先生

秘密保持義務違反よ

宅建業者には守秘義務があります

他人のプライバシーを漏らすことも禁止されてます

最悪の場合、損害賠償を請求されますよ

えー!?

コンプライアンス総論編

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Q17 重要事項説明

事例 重要事項説明なんて面倒なことは結構です�

札幌に住んでいる買主と来週契約予定で、東京で契約することになっています。ところが、買

主からは、「これまでに何度も不動産の取引をしたことがある。重要事項説明書を送ってもらえ

れば理解できるし、わざわざ東京まで行くのは大変なので、重要事項説明は必要ない。書類だけ

送ってくれれば十分である」と言われました。確かにこれまでに不動産を売買した経験も豊富な

お客様です。そのため、先に重要事項説明の書面をお送りして、わからないことがあれば電話で

やり取りすればいいのではないでしょうか。

契約締結までに、直接に面談して説明を行わなければなりません。Answer

重要事項説明は、仮に買主・賃借人が希望しても省略することはできません。売買や賃貸借の契約を締結する

場合には、宅建業者は、必ずこれに先だって重要事項説明を行わなければなりません。

不動産は金額が大きいため、その取引に際しては慎重に判断される必要があります。また、不動産の取引には、

様々な法律知識をはじめとする専門知識が必要です。そのため、買主、賃借人は専門知識を持っている取引主任

者から契約前に十分な情報を得て、契約するかどうかの最終的な判断をする機会を与えられる必要があるわけで

す。

そして、このような重要事項説明の意義を考えると、十分なコミュニケーションがとれる方法によって説明を

行わなければなりません。そこで、直接に面談して説明を行わなければならないのであって、メールや電話のよ

うな顔が見えない方法での説明では不十分なのです。

売買編

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はい

仕事が忙しくて札幌から東京まで行く時間がない

重要事項説明は郵送してくれないか?

いえ、直接ご面談して行う必要があります

私は今まで何度も不動産の取引をしてきたからそういうのは理解できる

では書面を送りますから、不明な点はメールか電話でお願いします

よろしく頼む

重要事項説明を省略するのはダメよ

あっカホリン先生

でも先方は経験者ですし

重要事項説明は物件を契約する際の重要な判断材料よ

不動産取引には様々な法律など専門知識が必要です。だから、それを持つ取引主任者からの十分な説明が必要なのです

来週契約のために東京にお見えになるのなら、契約締結前に改めて取引主任者に説明をさせましょうね

売買編

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Q42 鍵の交換

事例 新しい入居者が、鍵の交換費用は「支払わない」と言っている!

当社で管理している賃貸マンションでは、新しく入居者が入る場合、鍵の交換費用を新しい入

居者に負担してもらっているのですが、今回の入居者は「鍵の交換費用を賃借人が負担するのは

納得できない」と言って、交換費用を支払ってくれません。仕方がないので、鍵を交換しないで

引渡しをすることにしようと思いますが、それでいいでしょうか。

鍵の交換は賃貸人の責務を果たすための費用であり、本来は賃貸人が負担するべきです。

Answer

賃貸人は、部屋を明け渡してもらうときには、鍵の返還を受けます。しかし、鍵を紛失して返還を受けられな

い鍵もありますし、コピーされた鍵があるかもしれません。前の入居者が第三者に合鍵を渡していることも珍し

いことではありません。建物の管理者としては、鍵を交換しないまま新しい賃借人に鍵を渡してしまうと、返し

てもらわなかった鍵やコピーされた鍵を使って建物に無断で侵入される危険性があります。万が一、第三者が建

物に侵入した場合、管理者としての責任が問われる可能性も否定できません。

このようなトラブルを避けることは、賃貸人の責務です。鍵の交換費用について、当然新たな賃借人の負担だ

と思っている賃貸管理業者もいますが、正しい考え方とは思えません。鍵の交換は賃貸人の責務を果たすための

費用であり、賃貸人が負担するべきです。この点は、賃貸人にも理解を求めるべきです。

鍵の管理の問題については、かつて、管理者である不動産業者が管理している建物の合鍵の管理が不十分であっ

たため、建物に不法に侵入することによる犯罪が発生した事件もありました。鍵の管理は賃貸管理の基本です。

十分に気をつけなければいけません。

賃貸編

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先生、ありがとうございました

鍵の交換費用が必要ですって?

そんなの聞いてないわ

当社では新鍵は入居者負担となっております

納得できないわ!

では、旧鍵で引渡しとなります

そんなのイヤです

鍵の交換費用は賃貸人の責務ですよ

あ、カホリン先生

以前の鍵はコピーされたり第三者に渡っている可能性もあります

不法侵入された場合は管理者の責任になりますよ

トラブルを避けるためにも鍵は賃貸人が新しく交換しておくべきです

賃貸人にも理解を求めます

わかりました

それと鍵の保管や管理も十分気をつけましょう

賃貸編

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