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平成 19 年度 中学校教職経験者5年研修講座 技術・家庭科(技術分野) ・技術分野における学習指導の工夫と改善 ・鋳造の基本技術 ・年間指導計画と評価規準表について ・教科指導上の課題とその解決策 平成19年9月21日(金)9 :00~14 :15 岩手県立総合教育センター 科学産業教育室

・技術分野における学習指導の工夫と改善 ・鋳造の基本技術 ...平成 19 年度 中学校教職経験者5年研修講座 技術・家庭科(技術分野)

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Page 1: ・技術分野における学習指導の工夫と改善 ・鋳造の基本技術 ...平成 19 年度 中学校教職経験者5年研修講座 技術・家庭科(技術分野)

平成 19年度中学校教職経験者5年研修講座

技術・家庭科(技術分野)

・技術分野における学習指導の工夫と改善・鋳造の基本技術・年間指導計画と評価規準表について・教科指導上の課題とその解決策

期 日 平成19年9月21日(金)9:00~14:15

会 場 岩手県立総合教育センター 科学産業教育室

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技術・家庭科教育の課題

• 食事や栄養に関することなどについて、学習した知識や技術などが実生活で十分生かされていない

• 食生活の乱れや消費者トラブルの増加などから、食育や消費者教育の充実が課題

• 資源や環境に配慮した生活の工夫が課題

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• ものづくりに関する経験や身の回りの技術的な製品の仕組みを知るといった経験が尐なくなっており、日本のものづくりを支える能力、技術を安全に活用できる力の育成を目指すべき

• 技術を評価・管理できる力の育成を目指した教育が必要

• 「B情報とコンピュータ」が選択履修のため、卒業時の生徒の能力に差が見られ、これが高等学校の情報に関する教科における指導上の課題となっている

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技術科に関する主な内容

• 産業立国を支える4つの技術的領域

→ ①材料の加工・リサイクル

②エネルギー変換・利用の技術

③情報を処理し活用する技術

④生物生産の技術

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• 「A技術とものづくり」(2)~(4)の指導

→ キット教材の利用が多い(時数不足)

• A(6) → あまり履修されていない

• 「B情報とコンピュータ」

→ 指導は十分なされている

情報モラルの指導の充実を

• 情報教育

→ 小・中・高の連携が大事

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教員の指導力に関して

• 小学校家庭科

→ 継続的な研究を積み上げにくい

※5,6年生だけ,学級担任による指導

• 中学校

→ 非常勤講師の増加

研修や研究の機会が不十分

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• 技術分野の指導

→ 「Aものづくり」 : 「B情報」

= 1 : 1

※大学での授業

木工,金工,機械,電気,栽培,情報

の履修単位はいずれも3単位程度

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評価を生かした授業づくりの実際

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技術分野の基礎・基本

• 基礎・基本=学習指導要領に示された内容

※ 「知識」 「技能」

「関心・意欲・態度」

「工夫・創造」

• 評価規準の作成

国立教育政策研究所教育課程研究センター「評価規準の作成,評価方法の工夫改善のための参考資料」を参考にhttp://www.nier.go.jp/kaihatsu/houkoku/styuugaku.htm

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指導と評価の一体化

指導の改善

学習の改善

学習目標の提示

個人目標の設定

教師

生徒

評価

評価

学習活動

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学習指導・評価計画のチェックリスト

• 学習指導

□技術分野・家庭分野の授業時数は,3年

間を見通して,偏らず配分されているか。

□A及びBの(1)~(4)の項目を,全ての生

徒に履修させているか。

□A及びBそれぞれの(1)~(4)の項目に

十分な授業時数を配分しているか。

(35h程度)

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□A及びB それぞれの(5),(6)の項目については,4項目のうち1または2項目履修させているか。(3年間で17.5h程度)

□地域,学校の実態及び生徒の発達段階や興味・関心,他教科等や分野間の連携を考慮しているか。

□教科目標の実現を目指し,3年間を見通して全体的な指導を計画しているか。

□指導上の留意点に,よくわかる授業,学ぶ喜びのある授業,生徒の個に応じた授業等を目指した工夫が記述されているか。

□今までの学習指導の反省点や評価結果を踏まえて,改善が図られているか。

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評価計画

□「国研参考資料の評価規準一覧表」をもとに,学校や生徒の実態に応じた評価規準を作成しているか。

□学習活動における具体の評価規準は,1時間あたり1~2程度になっているか。

□題材全体では,4観点が偏らないようバランスよく評価できるか。

□評価規準に二つの観点を入れていないか。

( ~がわかり, ~ができる)

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□観察やテストだけに評価方法が偏るといったことがないよう,評価場面に応じて様々な評価方法が適切に取り入れられているか。

□複数の教員で評価規準を作成するなど,評価の客観性・信頼性を高める工夫をしているか。

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□評価規準の文末は,次のような表現になっているか。

関心・意欲・態度

工夫・創造 技 能 知識・理解

~について関心をもっている。

~しようとしている。

~に取り組んでいる。

~の態度がみられる。

~について考え,工夫している。

~を工夫している。

~について課題をもち,自分なりの工夫をしたり,新たな方法を考えたりしている。

~ができる。

~することができる。

~について実践できる。

~について気づいている。

~がわかる。

~について説明できる。

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授業改善の視点

のこぎりびきの指導例から

-補助具・コンテンツの活用-

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学習状況の把握と分析

• 学習の流れ

両刃のこぎりのしくみ(縦びき,横びき)

練習材による切断体験

(材料の固定,切断時の姿勢)

• 切断結果

「けがき線からずれてしまう」

「切断面が垂直にならない」

「固定がうまくいかない」

「切り口ががたがたになってしまう」

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• 結果の分析(つまずきの要因)

固定の問題 → 体重をかけてしっかり固

定できない

切断の姿勢の問題

→ のこ身と顔の中心が一致するように

材料の真上から切断することは理解

できても,実際にはのこぎりがぶれ

て垂直に切断できない

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分析に基づく授業改善

• 授業改善のポイント

① 固定する力が弱い生徒でも,材料を置く

イスや,材料そのものをしっかり固定でき

るための援助が必要。

② のこぎりの「ぶれ」を解消できたり,「垂直

の状況」を実感できる援助が必要。

③ 適切な姿勢や目線について,必要に応

じて確認できる援助が必要。

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• 改善の具体的方策

①について → 確実に固定できる補助具

の工夫(滑り止めマット)

②について → 切断ジグの使用

(のこラク)

③について → 正しい姿勢や目線をいつで

も確認できるための視覚的

な教具の利用(PC)

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指導方法の工夫

• 基礎的な知識と技術について

→ 「けがき」「のこぎりびき」「かんながけ」

のように,必要な道具の使い方を指導

することだけではない

• 学んだことが将来に生きるように

→ その学習活動を通して課題が次々と発

想され,その解決に取り組める生徒

※簡単な内容や技能であっても,将来的に

応用・発展できる知識と技術の習得

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評価の客観性・信頼性を高めるために

• 「国研参考資料の評価規準一覧表」をもとに評価規準を作成する

※学校間格差,教師間格差の解消

• 研究授業等の際に,参加教員全員が評価を行い,その結果について話し合う

※評価を行う教員の判断や裁量を共通

的なものに

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【研究協議】 指導上の課題とその解決策

指導上の課題(生徒の実態) 原因として考えられること 解決に向けた手立て

A技

B情

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指導上の課題(生徒の実態) 原因として考えられること 解決に向けた手立て

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平成19年度中学校教職経験者5年研修講座

技術分野 教科分科会<鋳造の基本技術>

平成19年9月21日(金)

9:00~14:15

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鋳造とは

• 材料(主に鉄・アルミ合金・銅・真鍮などの金属)を融点よりも高い温度で熱して液体にしたあと、型に流し込み、冷やして目的の形状に固める加工方法

• 鋳造に使用する型のことを鋳型

• 鋳造でできた製品のことを鋳物

• Castingは、鋳造と鋳物の双方を指す

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鋳造法の種類

• 砂型鋳造法(Sand Mold Casting)

• 金型鋳造法(Metal Mold Casting)

• 石膏鋳造法(Plaster Casting)

• 精密鋳造法(Precision Casting)

• 遠心鋳造法(Centrifugal Casting)

• 連続鋳造法(Continuous Casting)

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砂型鋳造について

• 砂を型に利用した,中世以前からある加工方法

• 寺の梵鐘の製造などで用いられていた

• 少量生産品、特注品の鋳造に用いられている鋳造法

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金型鋳造について

• 自動車のエンジンブロック、シリンダブロックなどの大量生産品の鋳造に幅広く用いられている

• 金型に溶融した金属を圧入することにより、高い精度の鋳物を短時間に大量に生産することができる(ダイカスト法)

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砂型鋳物と金型鋳物の比較

• 砂型鋳物

大型の物が作れる

ダイカストにできない鉄や銅が使える

少量の生産に経済的

• 金型鋳物

金型費が安い

使用される合金の種類が多い

熱処理、溶接が容易

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鋳物の製作<南部鉄器の例>1 原型の製作

まず、どのような鉄瓶を作るかデザインを行います。次に原寸大の図面を引き厚さ1.5ミリ程の鉄板に写し取りそれを切り抜いて挽型板を作ります。

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2 鋳型の製作

鉄瓶の大きさにあった素焼の型に「牛」という道具を用いて鋳物土と粘土汁をまぜ挽型板を回して型を作ります。

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3 鋳型の組立

中子は胴型と尻型との上下に分かれる外型に対して中に入る型です。横にした胴型に片手で持った中子を入れ、更に尻型をかぶせて鋳型を組みたてます。外型と中子とのすき間が鉄瓶の厚みとなります。

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4 鋳込み

溶解炉で1,400℃~1,500℃に

溶かされた鉄を「湯汲み」と呼ばれる柄杓で受け、鋳型に注ぎ込みます。

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5 型出し、砂落とし

鋳込んだ鉄が固まり、鋳型から引き出されます。そして中子の砂を落とし、鋳バリを取ります。

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6 着色

鉄瓶を約250℃に加熱し、その表面に

「刷毛」を用いて漆を焼付けます。更に100℃~150℃位の温度で「おはぐ

ろ」又は「茶汁」をむらのないように刷きつけます。その後、よく水気を切った布で何回も丁寧に拭き上げます。

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7 完成

きれいに拭き上げた鉄瓶を丹念に調べ、ツルをつけて完成します。