27
廃棄物安全研究 ~福島第一原発事故に起因する 汚染物の再利用に関わる評価~ (独)日本原子力研究開発機構 安全研究センター サイクル施設等安全研究ユニット 廃棄物安全研究グループ 澤口 拓磨 平成24年度安全研究センター成果報告会 平成25116

廃棄物安全研究 ~福島第一原発事故に起因する 汚染物の再利用 ... · 2017-07-12 · 災害廃棄物再利用に係る評価の背景・目的(その1)

  • Upload
    others

  • View
    2

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

廃棄物安全研究~福島第一原発事故に起因する汚染物の再利用に関わる評価~

(独)日本原子力研究開発機構安全研究センター

サイクル施設等安全研究ユニット廃棄物安全研究グループ

澤口 拓磨

平成24年度安全研究センター成果報告会平成25年1月16日

1災害廃棄物再利用に係る評価の背景・目的(その1)

原発事故の影響により汚染された災害廃棄物の発生量は膨大であることから、可能な範囲で再利用等を行うことにより、その埋設処分量をできるだけ減少させることが望まれる。

原子力安全委員会「東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故の影響を受けた廃棄物の処理処分等に関する安全確保の当面の考え方について」(H23/6/3)汚染された災害廃棄物の一部を再利用して生産された製品は、市場に流通する前にクリアランスレベル※の設定に用いた基準(10μSv/y)以下になるよう、放射性物質の濃度等が適切に管理されていることを確認する必要がある。

※【クリアランスレベル】放射性物質の放射能濃度が十分に低く、人の健康への影響が無視できるものであるならば、その物質を放射性物質として扱う必要がない(規制の枠組みから外される)ものとして区分するレベルのこと。クリアランスレベル以下の廃棄物は、一般の廃棄物と同様の処分や再利用、再使用が可能である。セシウム(Cs‐134、Cs‐ 137)のクリアランスレベル:100 Bq/kg

JAEA安全研究センターは、汚染されたコンクリートがれきを再生資材として道路の路盤材等へ利用した場合の作業者、一般公衆の被ばく線量を評価するとともに、再利用可能な放射性Cs濃度の検討を行った。

2

原子力安全基盤機構の報告※によると、福島県内の災害廃棄物中の放射性Cs濃度は、クリアランスレベル(100 Bq/kg)を超えるものも確認されている。※第三回、第四回災害廃棄物安全評価検討会資料(H23/6/19、H23/7/14)

環境省「福島県内の災害廃棄物の処理の方針」(H23/06/23)・ 100 Bq/kgを超える災害廃棄物であっても、被ばく線量を10μSv/y以下に低くするための対策を講じつつ、管理された状態で利用することは可能であり、公共用地において路盤材など土木資材として活用する方法が考えられる。

災害廃棄物再利用に係る評価の背景・目的(その2)

井戸水

経根吸収、葉面沈着

・一般公衆(井戸水利用)(外部、吸入、経口)

⑤地下水移行

γ線

果実、野菜、穀類

塵埃

3

災害廃棄物(コンクリートがれき)

資源化施設

・作業者(積み下ろし作業、運搬作業)(外部・吸入・経口)・一般公衆(運搬経路周辺居住)(外部)

①運搬 ②資源化施設の運転

・作業者(ストックヤード周辺での移動作業、処理作業)(外部・吸入・経口)・一般公衆(施設周辺居住)(スカイシャイン外部、吸入、経口)

③道路建設

④道路の利用、道路周辺居住

・作業者(道路建設作業)(外部・吸入・経口)・一般公衆(建設現場周辺居住)(外部、吸入、経口)

道路建設現場

※資源化施設から道路建設現場までの運搬も包括

・一般公衆(完成道路利用)(外部)・一般公衆(完成道路周辺居住)(外部、吸入、経口)

降雨浸透

道路完成前

道路完成後

汚染されたコンクリートがれきを道路の路盤材等に再利用する際に考慮すべき過程、評価の対象となる具体的な行為、対象者、被ばく形態(外部、吸入、経口)を整理し、評価経路を決定した。

道路路盤材等への再利用評価概要

4

評価対象核種はCs‐134とCs‐137 (存在比として0.806:1.0を仮定)とする。

評価パラメータは、専門家の意見を踏まえた「災害廃棄物の処理・処分の評価」※で実績のある設定の考え方を踏襲する。※放射性物質によって汚染された災害廃棄物の取扱いに係る意見聴取会(H23/6/1、6/13)※第三回災害廃棄物安全評価検討会 資料4(H23/6/19)

利用形態、再生資材の物性等は、福島県内における調査結果に基づき、実態に則した値を設定する。

保守的な設定として、処理に伴う希釈は考慮しない。

線量評価は、JAEA開発のクリアランスレベル評価コードPASCLR2を使用。

道路路盤材等への再利用評価の基本方針

・文献等により、標準的な人を対象として現実的な値(平均値、代表値)を設定例)作業時間、呼吸量、農作物・畜産物等の摂取量、分配係数 等

・データが無いものについては現実的な範囲で保守的に設定例)居住時間、道路下流端から井戸までの距離、市場係数 等

・外部被ばく換算係数、遮蔽係数は、JAEAが独自に計算した値を使用(MCNPコード、QADコード)線源の形状、材質、密度、および評価点までの距離等を考慮して計算

5クリアランスレベル評価コードPASCLR2の概要

PASCLR2は、ウラン・TRU廃棄物を対象にクリアランスされた後の用途や行き先を限定しない無条件クリアランスの評価に対応させるため、クリアランス後に産業廃棄物として埋設処分するシナリオとリサイクル資源として再利用するシナリオの両方について、我が国で想定される被ばく経路を網羅した被ばく線量評価が可能なコードである。

原子力関連施設の運転・解体時の廃棄物   (鉄、コンクリート等)

産業廃棄物として処分

操業シナリオ 処分場跡地の利用

跡地利用シナリオ

放射性核種の地下水への流出

日常生活品、建材の利用

再生利用シナリオ

再使用シナリオ

再使用品(ポンプなど)

・外部・粉じん吸入

・ラドンガス吸入

・農作物、畜産物摂取

による各被ばく

居住及び建設/農耕/牧畜作業

輸送・埋立作業・(外部・粉じん吸入被ばく)

地下水、河川水、海水  の各利用

・飲料水、水産物摂取

地下水移行シナリオ

再利用シナリオ

埋設処分シナリオ

リサイクル

利用時の外部・粉じん吸入、皮膚被ばく

金属・コンクリート再処理

クリアランス

再処理場の周辺居住

・皮膚付着

・各作業時の外部・粉じん吸入、直接摂取、皮膚被ばく

・周辺居住者の粉じん吸入、農作物摂取被ばく

・利用者の外部、経口摂取被ばく

放射性廃棄物としての処分へ

原子力関連施設の運転・解体時の廃棄物   (鉄、コンクリート等)

産業廃棄物として処分

操業シナリオ 処分場跡地の利用

跡地利用シナリオ

放射性核種の地下水への流出

日常生活品、建材の利用

再生利用シナリオ

再使用シナリオ

再使用品(ポンプなど)

・外部・粉じん吸入

・ラドンガス吸入

・農作物、畜産物摂取

による各被ばく

居住及び建設/農耕/牧畜作業

輸送・埋立作業・(外部・粉じん吸入被ばく)

地下水、河川水、海水  の各利用

・飲料水、水産物摂取

地下水移行シナリオ

再利用シナリオ

埋設処分シナリオ

リサイクル

利用時の外部・粉じん吸入、皮膚被ばく

金属・コンクリート再処理

クリアランス

再処理場の周辺居住

・皮膚付着

・各作業時の外部・粉じん吸入、直接摂取、皮膚被ばく

・周辺居住者の粉じん吸入、農作物摂取被ばく

・利用者の外部、経口摂取被ばく

放射性廃棄物としての処分へ

1E‐3

1E‐2

1E‐1

1E+0

1E+1

1E‐2 1E‐1 1E+0 1E+1 1E+2

単位濃度当たりの被ばく線量

[μSv/y  per  Bq/g]

経過時間 [y]

例)地下水移行・飲料水摂取

6

原安委による当面の安全確保の考え方(H23/6/3)に沿って整理-処理に伴って周辺住民が受ける線量は1mSv/yを超えないようにする-処理を行う作業者が受ける線量は、可能な限り1mSv/yを超えないことが望ましい-再利用して生産された製品から受ける線量は10μSv/y以下にする

線量評価結果の整理方法

道路完成前(運搬、資源化施設運転、建設)における基準線量: 1mSv/y道路完成後(完成道路、地下水移行)における基準線量 : 10μSv/y

災害廃棄物が再利用可能な放射性Cs濃度は、被ばく線量結果から、基準線量を満たす廃棄物中の全放射性Csの平均濃度(基準線量相当Cs濃度)として導出。

被ばく線量評価結果

例) 基準線量相当Cs濃度

0.8

①運搬に係る評価概要

資源化施設/道路建設現場への運搬に係る被ばく線量評価:

運搬に係る作業者(積み下ろし作業、運搬作業)外部被ばく、粉塵吸入被ばく、経口摂取(直接)-線源の形状:高さ1m×幅1m×長さ5mの直方体

かさ密度2.0g/cm3 (再生資材を想定)-評価点:荷台側面(1m×5m)中心から1m-遮蔽係数:積み下ろし作業(重機):0.4、運搬作業:0.9-被ばく時間:1000h/y(全労働時間2000時間の半分とした。)

運搬経路周辺居住者

外部被ばく-評価点:荷台側面(1m×5m)底辺中央から3m-遮蔽係数:1.0(遮蔽は考慮しない)-被ばく時間:450h/y

(運搬トラックが月に4500台走行し、そのうち半分のトラックが赤信号で停止している1分間に被ばくすると仮定した。)

7

1E‐2 1E‐1 1E+0 1E+1 1E+2 1E+3 1E+4 1E+5

運搬経路周辺居住者(子ども)外部

運搬作業者外部

積み下ろし作業者直接経口摂取

積み下ろし作業者吸入

積み下ろし作業者外部

8①運搬に係る評価結果

63 μSv/y per Bq/g

運搬に係る「単位濃度当たりの最大被ばく線量(μSv/y per Bq/g)」

【決定経路】基準線量相当Cs濃度が最も小さくなり(最も線量が高くなり)、評価上重要となる経路。

最大被ばくを与える経路

以降、各過程における「基準線量相当Cs濃度」も同様に評価

・吸入、経口被ばくの影響<外部被ばくの影響

・遮蔽係数が大きく、被ばく時間が長いほど外部被ばく線量は高くなる。

1E+1 1E+2 1E+3 1E+4 1E+5 1E+6 1E+7 1E+8

運搬経路周辺居住者(子ども)外部

運搬作業者外部

積み下ろし作業者直接経口摂取

積み下ろし作業者吸入

積み下ろし作業者外部

16,000Bq/kg

運搬に係る「基準線量相当Cs濃度(Bq/kg)」

決定経路

被ばく線量結果から、災害廃棄物が再利用可能な放射性Cs濃度(基準線量相当Cs濃度)を導出

運搬に係る各経路の、単位濃度当たりの最大被ばく線量と基準線量相当Cs濃度※を以下に整理する。※道路完成前における基準線量:1mSv/y

②資源化施設の運転に係る評価概要

資源化施設の運転に係る被ばく線量評価: 運転に係る作業者(ストックヤード周辺での移動作業、処理作業)

外部被ばく※、粉塵吸入被ばく、経口摂取(直接)

資源化施設周辺居住者ストックヤードからのスカイシャイン外部被ばく※

粉塵吸入被ばく、経口摂取(農作物)※福島県の資源化施設で想定されるストックヤードの形状データを基に以下の2ケースを設定。

9

大きなストックヤードを一つ想定したケース ストックヤードを複数想定したケース

ストックヤード

56m

36m

移動作業者の評価点(ストックヤード底辺の中心からの距離:3 m)

資源化施設周辺居住者の評価点(ストックヤード底辺の中心からの距離:

2-100 m)

処理作業の評価点(重機)

36m

20m

4m2m

1m

資源化施設周辺居住者の評価点(6つのストックヤードの中心からの距離:

2-100 m)

ストックヤード

25m

20m

ストックヤード

25m

20m

ストックヤード

25m

20m

25m

20m

ストックヤード

25m

20m

ストックヤード

25m

20m

10m

10m

移動作業者の評価点(最も近いストックヤード底辺の中心から距離:3 m)

処理作業者の評価点(重機)

25m

13m

3m2m

1m

ストックヤード:かさ密度1.6 g/m3

のコンクリート

作業時間:1000 h/y居住時間:8760h/y

1E+0 1E+2 1E+4 1E+6 1E+8

ストックヤードを

複数想定したケース

1E+0 1E+2 1E+4 1E+6 1E+8

ストックヤード周辺処理作業者直接経口

ストックヤード周辺処理作業者吸入

ストックヤード周辺処理作業者外部

ストックヤード周辺移動作業者直接経口

ストックヤード周辺移動作業者吸入

ストックヤード周辺移動作業者外部

大きなストックヤードを

一つ想定したケース

資源化施設の運転に係る各経路の、基準線量相当Cs濃度※を以下に整理する。※道路完成前における基準線量:1mSv/y

10②資源化施設運転に係る評価結果

21,000Bq/kg

1E+0 1E+2 1E+4 1E+6 1E+8 1E+10

ストックヤードを

複数想定したケース

2,600 Bq/kg

3,700 Bq/kg

1E+0 1E+2 1E+4 1E+6 1E+8 1E+10

経口農作物(子ども)

吸入(子ども)

経口農作物(成人)

吸入(成人)

(100m)

(10m)

(4m)

スカイシャイン外部(子ども)(2m)

大きなストックヤードを

一つ想定したケース

資源化施設周辺居住者

2,500 Bq/kg

3,500 Bq/kg

決定経路

決定経路

資源化施設運転(作業者)に係る「基準線量相当Cs濃度(Bq/kg)」

資源化施設運転(一般公衆)に係る「基準線量相当Cs濃度(Bq/kg)」

資源化施設(居住者)スカイシャイン外部被ばくの影響は、・ストックヤード複数< 大きなストックヤード一つ

資源化施設(作業者)外部被ばくの影響は、・移動作業<処理作業・大きなストックヤード一つ< ストックヤード複数

道路の評価体系

道路建設、完成道路(道路利用、地下水移行等)に係る評価では、再生資材が使用される部材に応じてケース分けを行った。

11

不透水性アスファルト

上層路盤材

下層路盤材

路床・路体

9 m

0.10 m

0.20 m

0.30 m

2 m

0.04 m 透水性アスファルト

路盤材

フィルター層(砂)

路床・路体

0.15 m

0.10 m

2 m

道路 歩道

※道路延長:100 m

透水性アスファルト

路盤材

フィルター層(砂)

路床・路体

歩道

5.5 m

【評価ケース】

ケース1:不透水性アスファルトのみに使用

ケース2:下層路盤材のみに使用

ケース3:歩道路盤材のみに使用

1 m

作業者(歩道中央、高さ 1 m)

一般公衆(歩道端、高さ 1 m)

粉塵

路盤材

フィルター層

路床・路体

歩道

5.5 m

0.15 m0.10 m

2 m

下層路盤材

路床・路体

9 m

0.30 m

2 m

道路

1 m 粉塵

作業者(道路中央、高さ 1 m)

一般公衆(道路端、高さ 1 m)

粉塵

不透水性アスファルト

上層路盤材

下層路盤材

路床・路体

9 m

0.10 m

0.20 m

0.30 m

2 m

1 m

道路

粉塵

作業者(道路中央、高さ 1 m)

一般公衆(道路端、高さ 1 m)

粉塵

作業時間:1000 h/y遮蔽係数:1.0

汚染された再生資材が露呈している時の居住者の被ばく時間:24 h/y遮蔽係数:0.2

③道路建設に係る評価概要

道路建設に係る被ばく線量評価: 道路建設作業者

外部被ばく、粉塵吸入被ばく、経口摂取(直接)

道路建設現場周辺居住者外部被ばく、粉塵吸入被ばく

12

ケース1:

不透水性アスファルトのみに使用

ケース3:

歩道路盤材のみに使用

ケース2:

下層路盤材のみに使用

13③道路建設に係る評価結果

基準線量相当Cs濃度 (Bq/kg)

1E+0 1E+2 1E+4 1E+6 1E+8 1E+10

ケース3:

歩道路盤材のみに使用

1E+0 1E+2 1E+4 1E+6 1E+8 1E+10

ケース2:

下層路盤材のみに使用

ケース2:

下層路盤材のみに使用

1E+0 1E+2 1E+4 1E+6 1E+8 1E+10

周辺居住者吸入(子ども)

周辺居住者外部(子ども)

周辺居住者吸入(成人)

周辺居住者外部(成人)

建設作業者直接経口

建設作業者吸入

建設作業者外部

ケース1:

不透水性アスファルトのみに使用

5,300 Bq/kg

決定経路

5,300 Bq/kg4,300 Bq/kg

決定経路の「建設作業者外部被ばく」の影響は、ケース1 ≒ ケース3 < ケース2 (線源の厚さに起因)

道路建設に係る各経路の、基準線量相当Cs濃度※を以下に整理する。※道路完成前における基準線量:1mSv/y

不透水性アスファルト

上層路盤材

下層路盤材

路床・路体

9 m

0.10 m

0.20 m

0.30 m

2 m

1 m

道路

評価点(道路中央、高さ 1 m)

評価点(道路端、高さ 1 m)道路利用時間:400 h/y

(約1h/dを想定)遮蔽係数:1.0

居住時間:8760h/y遮蔽係数:0.2

④完成道路に係る評価概要

完成道路利用、周辺居住に係る被ばく線量評価: 道路利用者外部被ばく

完成道路周辺居住者外部被ばく、粉塵吸入被ばく経口摂取(直接)

14

【評価点】

ケース1:

道路中央(利用者)、道路端(居住者)

ケース2:

道路中央(利用者)、道路端(居住者)

ケース3:

歩道中央(利用者)、歩道端(居住者)

1E+0 1E+2 1E+4 1E+6 1E+8 1E+10

ケース3:

歩道路盤材のみに使用

1E+0 1E+2 1E+4 1E+6 1E+8 1E+10

ケース2:

下層路盤材のみに使用

ケース2:

下層路盤材のみに使用

1E+0 1E+2 1E+4 1E+6 1E+8 1E+10

直接経口(子ども)

吸入(子ども)

外部(子ども)

吸入(成人)

外部(成人)

外部(子ども)

外部(成人)

ケース1:

不透水性アスファルトのみに使用

道路利用者

道路周辺居住者

15④完成道路に係る評価結果

基準線量相当Cs濃度 (Bq/kg)

43 Bq/kg

決定経路

2,700 Bq/kg 76 Bq/kg

外部被ばくの影響は、道路利用者(遮蔽なし、被ばく時間400 h/y) < 周辺居住者(遮蔽あり、被ばく時間8760 h/y)ケース2 << ケース3 < ケース1 (遮蔽効果を有する資材の厚さに起因)

完成道路利用、周辺居住に係る各経路の、基準線量相当Cs濃度※を以下に整理する。※道路完成後における基準線量は10μSv/y

不透水性アスファルト

上層路盤材

下層路盤材

路床・路体

9 m

0.10 m

0.20 m

0.30 m

2 m

道路

※道路延長:100 m

下層路盤材

9 m

0.30 m

道路

※道路延長:100 m

現実 評価体系

~~

帯水層

帯水層

降雨浸透

降雨浸透

3 m

~~

~~3 m

生物圏へ

生物圏へ

⑤地下水移行に係る評価概要 16

【評価条件】

・保守的に再生資材を使用しない部材の影響は無視する。

・浸透水量は、道路:0.4 m/y、歩道:1.6 m/yとする。

・保守的に完成道路下流端から井戸までの距離は0 mとした。

・生物圏の設定は災害廃棄物評価の設定を踏襲した。

井戸水

経根吸収、葉面沈着

γ線

果実、野菜、穀類

塵埃

完成道路からの地下水移行に係る被ばく線量評価: 井戸水利用者飲料水摂取(経口)農耕作業(外部、吸入)農産物摂取(経口)飼料経由畜産物摂取(経口)飼育水経由畜産物摂取(経口)養殖淡水産物摂取(経口)

例)ケース2:

下層路盤材のみに使用

1E+2 1E+4 1E+6 1E+8 1E+10

ケース3:

歩道路盤材のみに使用

1E+2 1E+4 1E+6 1E+8 1E+10

ケース2:

下層路盤材のみに使用

1E+2 1E+4 1E+6 1E+8 1E+10

養殖淡水産物摂取(子ども)養殖淡水産物摂取(成人)

飼育水経由畜産物摂取(子ども)飼育水経由畜産物摂取(成人)飼料経由畜産物摂取(子ども)飼料経由畜産物摂取(成人)

農作物摂取(子ども)農作物摂取(成人)農耕作業者吸入

農耕作業者外部

飲料水摂取(子ども)飲料水摂取(成人)

ケース1:

不透水性アスファルトのみに使用

17⑤地下水移行に係る評価結果

基準線量相当Cs濃度 (Bq/kg)

28,000 Bq/kg

決定経路

13,000 Bq/kg 18,000 Bq/kg

地下水移行による被ばくの影響は、ケース1 < ケース3 < ケース2 (線源厚さと浸透水量に起因)

地下水移行に係る各経路の、基準線量相当Cs濃度※を以下に整理する。※道路完成後における基準線量は10μSv/y

1E+1 1E+2 1E+3 1E+4 1E+5 1E+6

ケース3:

歩道路盤材のみに使用

大きなストックヤードを

一つ想定したケース

ストックヤードを

複数想定したケース

1E+1 1E+2 1E+3 1E+4 1E+5 1E+6

ケース2:

下層路盤材のみに使用

大きなストックヤードを

一つ想定したケース

ストックヤードを

複数想定したケース

1E+1 1E+2 1E+3 1E+4 1E+5 1E+6

飼料経由畜産物摂取(成人)

周辺居住(子ども)外部

建設作業者外部

周辺居住者(子ども)スカイシャイン(4m)

ストックヤード周辺処理作業者外部

運搬作業者外部

ケース1:

不透水性アスファルトのみに使用

運搬

地下水移行

完成道路

道路建設

資源化

施設運転 大きなストックヤードを

一つ想定したケース

ストックヤードを

複数想定したケース

道路の路盤材等への再利用評価結果まとめ各過程で最も基準線量相当Cs濃度が小さかった経路の結果をケースごとに整理

18

基準線量相当Cs濃度 (Bq/kg)

0.3 m(不透水性アスファルト0.1 m+上層路盤材0.2 m)の遮蔽がある「ケース2:道路の下層路盤材のみ」の使用に限定すれば、2,700 Bq/kgの当該廃棄物を再利用することが可能である。

※資源化施設周辺居住者(子ども)の評価点をストックヤードから4m以上とした場合

43 Bq/kg 2,700 Bq/kg 76 Bq/kg

※基準線量

道路完成前:1mSv/y道路完成後:10μSv/y

まとめ

災害廃棄物の道路の路盤材等への再利用に係る評価:

19

本評価結果に基づき、環境省は「管理された状態での災害廃棄物(コンクリートくず等)の再生利用について(H23/12/27)」および都道府県宛通知「東日本大震災からの復旧復興のための公共工事における災害廃棄物由来の再生資材の活用について(H24/5/25)」において、管理された状態での災害廃棄物の再生利用の方針を示した。

現在、仙台市、長野県等で、災害廃棄物の道路への再生利用が進みつつあるところである。仙台市:震災がれき等をかさ上げ道路の盛土材として利用長野県:汚泥焼却灰を処理して道路の人工骨材(路盤材)として再利用する予定

基準線量相当Cs濃度が最も小さくなる(被ばく線量が最も高くなる)経路は「完成道路周辺居住(子ども)外部」であることを示した。

遮蔽効果を有する資材を0.3 m上部に確保することで、Cs平均濃度で 2,700 Bq/kgの資材を「道路・下層路盤材」として利用できる見通しを示した。

災害廃棄物を、発生場所の近くで十分な管理の下で利用する場合、→30cmの遮蔽材を有すれば、放射性Csの平均濃度が3,000 Bq/kg程度までの資材を利用可能。→より高い放射性Csの濃度の資材を用いる場合は、遮蔽材の厚さを増す必要がある。

→上記指標は、道路構造以外の構造物に対する目安として活用しても良い。

以下、補足

災害廃棄物の放射能濃度

災害廃棄物の放射能濃度の上限と平均放射能濃度

1E+2 1E+3 1E+4 1E+5

なし

あり

上層路盤材厚さ(0.4m)

上層路盤材厚さ(0.3m)

上層路盤材厚さ(0.2m)

上層路盤材厚さ(0.1m)

「完成道路周辺居住者(子ども)外部の外部被ばく」経路

の基準線量相当Cs濃度 [Bq / kg]

ケース

2'‐Ⅰ

路床・路体への

再生資材の使用

ケース

2'‐Ⅱ

ケース2

ケース2

ケース2に対する追加計算

ケース2の「完成道路周辺居住(子ども)外部」経路に対して以下の追加計算も実施。・上層路盤材の厚さを0.1、0.3、0.4 mに変えた場合の計算(ケース2’‐Ⅰ)・路床・路体にも再生資材を使用した場合の計算(ケース2’ ‐Ⅱ)

・基準線量相当Cs濃度に対する上層路盤材の厚さの感度を把握(ケース2’-Ⅰ)・路床・路体への再生資材の使用は基準線量相当Cs濃度に影響を与えないことを明確にした(ケース2’-Ⅱ)。

→ 遮蔽効果を有する資材を0.3m上部に確保することで、放射性セシウムの平均濃度が2,700 Bq/kgの資材を利用出来る可能性が示唆された。

不透水性アスファルト

上層路盤材

下層路盤材

路床・路体

9 m

0.10 m

0.10~0.40 m

0.30 m

2 m

1 m

道路

評価点(道路端、高さ 1 m)

※道路延長:100 m

不透水性アスファルト

上層路盤材

下層路盤材

路床・路体

9 m

0.10 m

0.20 m

0.30 m

2 m

1 m

道路

評価点(道路端、高さ 1 m)

※道路延長:100 m

路床・路体

ケース2’-Ⅰ ケース2’-Ⅱ

710 Bq/kg

2,700 Bq/kg

2,700 Bq/kg

2,700 Bq/kg

41,000 Bq/kg

11,000 Bq/kg

一般的再利用の評価概要

経緯: 環境省「災害廃棄物安全評価検討会」の設置し、災害廃棄物の基準や処理方法について検討(H23/05/ ~)

同検討会において、JAEA安全研究センターは、その処理・処分の方策の検討のための安全評価の実施を担当。※第3回、第9回災害廃棄物安全評価検討会(H23/6/19、 H23/6/19 )で報告

評価の一環として、一般的な再利用を行った場合の公衆(消費者等)、作業者に与える影響を評価。

評価方法: 原安委及び文科省の既往のクリアランスレベル評価に用いられた手法(シナリオ・モデル・パラメータ)を基本的に使用する。評価コードはPASCLRを使用。

災害廃棄物の一般的再利用に係る評価経路として、汚染された金属やコンクリートを日常生活品、作業用品、壁材、駐車場に再利用したときにおける、消費者、処理施設周辺居住者、作業者への被ばく経路を考慮する。可燃物の再利用は想定しない。

評価対象核種はCs‐134とCs‐137 (存在比として0.806:1.0を仮定)とする。 原安委による当面の安全確保の考え方(H23/6/3)に沿った評価

-処理に伴って周辺住民が受ける線量は1mSv/yを超えないようにする-処理を行う作業者が受ける線量は、可能な限り1mSv/yを超えないことが望ましい-再利用して生産された製品から受ける線量は10μSv/y以下にする

評価シナリオ(災害廃棄物)

溶融固化物再利用 駐車場 外部

スラグ再利用 駐車場 外部

コンクリート再利用 駐車場 外部

コンクリート再利用 壁材 外部(子ども)

冷蔵庫 外部

船舶 外部

1E-2 1E-1 1E+0 1E+1 1E+2 1E+3 1E+4 1E+510μSv/y相当の災害廃棄物/溶融固化物中の放射性セシウム濃度 (Bq/g)

災害廃棄物の一般的再利用に係る評価結果

埋設処分シナリオ

10Bq/g(最小濃度)脱水汚泥と同様に、跡地の居住などの用途への利用制限により、8,000Bq/kg以下の災害廃棄物は埋設処分可能

再利用シナリオ

コンクリートの壁材、スラグや溶融固化物の建材の利用時の線量が高く、これらに対して再利用時の適切な濃度管理の必要性を示唆

解体・分別シナリオ

24Bq/g金属廃棄物解体作業 外部

コンクリート解体作業 外部

山積み廃棄物の分別作業 外部

1E-2 1E-1 1E+0 1E+1 1E+2 1E+3 1E+4 1E+51mSv/y相当の災害廃棄物中の放射性セシウム濃度(Bq/g)

*主な被ばくの経路を表示

埋立作業 外部

運搬作業 外部

1E-2 1E-1 1E+0 1E+1 1E+2 1E+3 1E+4 1E+51mSv/y相当の災害廃棄物中の放射性セシウム濃度(Bq/g)

作業者

15Bq/g

焼却処理シナリオ

焼却炉周辺居住 外部(子ども)

溶融炉補修 外部

焼却灰積み下ろし 外部

焼却炉補修 外部

可燃物運搬 外部

1E-2 1E-1 1E+0 1E+1 1E+2 1E+3 1E+4 1E+51mSv/y相当の災害廃棄物/焼却灰/溶融固化物中の

放射性セシウムの濃度(Bq/g)

居住 外部(子ども)

公園利用 外部(子ども)

1E-2 1E-1 1E+0 1E+1 1E+2 1E+3 1E+4 1E+510μSv/y相当の災害廃棄物中の放射性セシウム濃度(Bq/g)

跡地利用 跡地を居住などの用途に利用することは好ましくない。

焼却処理の量(汚泥<災害廃棄物)作業時間が長く、より線量が高い焼却処理の量(汚泥<災害廃棄物)作業時間が長く、より線量が高い