32
第1 問題意識と問題提起・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 187 第2 事務職員活用による弁護士業務の生産性向上の検討(第一部) 事務職員に関するこれまでの日弁連の取組,回顧と展望・・・・・・・・・・ 187 事務職員の活用による法律事務所の生産性向上に対する問題提起・・・・・・ 189 事務職員の実勢・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 192 事例紹介・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 199 事務職員活用の数値的分析・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 201 第3 事務職員初級レベルチェックのための制度の新設について(第二部) 初級レベルチェックのための制度の必要性について・・・・・・・・・・・・ 208 現状存在する民間の能力認定制度の検討・・・・・・・・・・・・・・・・・ 209 初級レベルチェックシート(仮称)の検討・・・・・・・・・・・・・・・・ 211 初級レベルチェックチェックシート(仮称)の活用可能性・・・・・・・・・ 213 資料編(付属のDVD-ROMに収録) 資料7-1 事務職員能力認定制度規則 資料7-2 事務職員能力認定制度細則 資料7-3 「弁護士事務職」制度についての答申-日弁連・法律職に関する調査委員 資料7-4 平成 15 年 1 月 27 日付け日弁連弁護士業務改革委員会答申書 資料7-5 法律事務員全国連絡会 見解と提言(第 3 次案) 資料7-6 事務職員能力認定試験の受験者・合格者の年度別推移 資料7-7 法律事務職員の業務に関する実態調査の概要 資料7-8 事務職員の実勢(2010 年~2018 年集計) 資料7-9 マチ弁事務所における業務展開の一形態 -「協働者(リーガルコーディネーター)」の活動に着目して- 資料7-10- 1~12 事務職員の活用による生産性向上例(1)~(12) 第21回弁護士業務改革シンポジウム【第7分科会】 事務職員活用の新展開 - 185 -

f °C Ç ·ü Ï...2 ºí 2 *Ë_6õM 1* $ ( q · Ì 1¤ »*Ë D Ø_X8Zb'Å #æ º_0¿*(I S S0 $ ( c>* 1¤ b 2 »" (@ - âI 'g 2 \KZ>* 2 » db »+ 9×u ²0[@6~>* 1¤ /õ *Ë D Øb%Ê'2í

  • Upload
    others

  • View
    0

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: f °C Ç ·ü Ï...2 ºí 2 *Ë_6õM 1* $ ( q · Ì 1¤ »*Ë D Ø_X8Zb'Å #æ º_0¿*(I S S0 $ ( c>* 1¤ b 2 »" (@ - âI 'g 2 \KZ>* 2 » db »+ 9×u ²0[@6~>* 1¤ /õ *Ë D Øb%Ê'2í

第1 問題意識と問題提起・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 187

第2 事務職員活用による弁護士業務の生産性向上の検討(第一部)

1 事務職員に関するこれまでの日弁連の取組,回顧と展望・・・・・・・・・・ 187

2 事務職員の活用による法律事務所の生産性向上に対する問題提起・・・・・・ 189

3 事務職員の実勢・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 192

4 事例紹介・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 199

5 事務職員活用の数値的分析・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 201

第3 事務職員初級レベルチェックのための制度の新設について(第二部)

1 初級レベルチェックのための制度の必要性について・・・・・・・・・・・・ 208

2 現状存在する民間の能力認定制度の検討・・・・・・・・・・・・・・・・・ 209

3 初級レベルチェックシート(仮称)の検討・・・・・・・・・・・・・・・・ 211

4 初級レベルチェックチェックシート(仮称)の活用可能性・・・・・・・・・ 213

資料編(付属のDVD-ROMに収録)

資料7-1 事務職員能力認定制度規則

資料7-2 事務職員能力認定制度細則

資料7-3 「弁護士事務職」制度についての答申-日弁連・法律職に関する調査委員

資料7-4 平成 15年 1 月 27 日付け日弁連弁護士業務改革委員会答申書

資料7-5 法律事務員全国連絡会 見解と提言(第 3次案)

資料7-6 事務職員能力認定試験の受験者・合格者の年度別推移

資料7-7 法律事務職員の業務に関する実態調査の概要

資料7-8 事務職員の実勢(2010 年~2018 年集計)

資料7-9 マチ弁事務所における業務展開の一形態

-「協働者(リーガルコーディネーター)」の活動に着目して-

資料7-10-

1~12

事務職員の活用による生産性向上例(1)~(12)

第21回弁護士業務改革シンポジウム【第7分科会】

事務職員活用の新展開

- 185 -

Page 2: f °C Ç ·ü Ï...2 ºí 2 *Ë_6õM 1* $ ( q · Ì 1¤ »*Ë D Ø_X8Zb'Å #æ º_0¿*(I S S0 $ ( c>* 1¤ b 2 »" (@ - âI 'g 2 \KZ>* 2 » db »+ 9×u ²0[@6~>* 1¤ /õ *Ë D Øb%Ê'2í

資料7-11 法律事務職員基本研修テキスト目次

資料7-12 応用研修テキスト目次

資料7-13 初級レベルチェックシート(仮称・案)

- 186 -

Page 3: f °C Ç ·ü Ï...2 ºí 2 *Ë_6õM 1* $ ( q · Ì 1¤ »*Ë D Ø_X8Zb'Å #æ º_0¿*(I S S0 $ ( c>* 1¤ b 2 »" (@ - âI 'g 2 \KZ>* 2 » db »+ 9×u ²0[@6~>* 1¤ /õ *Ë D Øb%Ê'2í

1

第1 問題意識と問題提起

これまでも弁護士業務改革シンポジウムで法律事務職員(以下「事務職員」という。)

の活用が分科会のテーマとして掲げられることがしばしばあった。 また,日弁連は事務職員の能力認定制度として研修と試験を立ち上げたが,この制度の

定着によって,意欲のある事務職員の能力を向上させ,一定のレベルを確保させるシステ

ムが確立された。こうして,多くの法律事務所では,「事務職員を活用した事務所の活性化」

を実現することができるようになった。 しかし,まだまだ,事務職員を十分に活用することをためらう事務所が多いという現実

がある。その要因として,法律的スキルを身に着けた事務職員を活用することの具体的な

メリットがどの程度なのかが,実証的に示されていないことによる説得力不足がまず挙げ

られる。また,実際に事務職員を採用したとして,既に制度化された能力認定研修や試験

に対応できるスキルに至るまでには,実質的に3年以上の実務経験が必要であり,その期

間,事務職員を成長させるためのメソッドが各事務所任せになっており,そのための制度

が不足していることも要因と考えられる。 そこで,当分科会としては,以下のことを検討する。

まず,第一部として,事務職員を有効活用することのメリットを実感してもらうため 「事務職員活用による生産性向上例」を紹介するとともに,生産性向上の程度の数値化を 試みる。

また,第二部として,法律に関して素人といえる人材を事務職員として採用し「法律事 務所職員」として一通り通用するまでのステップアップの制度,すなわち,現在の能力認

定制度に至るまでに刻むべき初期のステップで利用するスキルチェックテストを新設する

ことについて検討する。 第2 事務職員活用による弁護士業務の生産性向上の検討(第一部)

1 事務職員に関するこれまでの日弁連の取組,回顧と展望

事務職員について,日弁連が具体的な施策を打ち出したのは,2008年に開始された

「事務職員能力認定制度(研修・認定試験)」からである。研修制度は,事務職員に

対し全国規模で体系的な研修を受ける機会を付与することにより,事務職員の実務能

力の向上に寄与している。また,能力認定試験は,事務職員が身に付けるべき実務的

知見に対するナショナル・スタンダードを示すことにより,受験者には具体的な目標

を与え,合格者には高い評価を受ける契機として定着した制度となっている(DVD

-ROM資料7-1,7-2)。

この能力認定制度の目的は,弁護士の補助者である事務職員の実務能力等の向上を

図り,弁護士業務の円滑な遂行を担保し,国民の弁護士に対する負託に応えることに

あった。

では,この能力認定制度,ひいては日弁連の事務職員に対する施策はいかなる経緯

を経て実現したのか,能力認定制度の改革・改善はもとより,新たな施策を模索する

ためにも,事務職員に関する日弁連の取組について,その歴史を振り返ることとする。

- 187 -

Page 4: f °C Ç ·ü Ï...2 ºí 2 *Ë_6õM 1* $ ( q · Ì 1¤ »*Ë D Ø_X8Zb'Å #æ º_0¿*(I S S0 $ ( c>* 1¤ b 2 »" (@ - âI 'g 2 \KZ>* 2 » db »+ 9×u ²0[@6~>* 1¤ /õ *Ë D Øb%Ê'2í

2

(1) 1987 年・法律職に関する調査委員会活動報告「弁護士事務職制度についての答

申」

1984 年に設置された前記委員会は,弁護士の法律事務独占が支持される立法事

実として,法律事務所の実務能力を高める必要があり,弁護士補助職制度の研究・

答申を行った。答申の内容は,全国規模の研修制度及び能力認定試験の創設という

現行制度に通じるものばかりか,「弁護士事務職」という称号の付与及び研修受講

に対する弁護士の協力義務の賦課等,先駆的なものであった。但し,当初,念頭に

置かれた「簡裁代理権」等の資格化については,非弁助長懸念等を中核とする消極

論に配慮し見送られた(DVD-ROM資料 7-3)。

約 30 年前に現行制度の萌芽とも言える提言がなされたわけであるが,当時は事

務員の積極活用に関する会内意識の醸成が伴わず,制度の具体化には至らなかった。

研修・能力認定試験の具体化の機運が高まるのは,1990 年代の後半からである。

これは,過払金事案の増加による事務職員の積極活用の需要と管理方法,バブル

崩壊後の就職氷河期を迎え事務職員の求職が増大したこと,及び,隣接士業の権限

拡大傾向に対する弁護士の危機感等の会内事情の変化に負うところが多いと考え

られる。

(2) 1999年・第11回弁護士業務改革シンポジウム(以下「盛岡シンポ」という。)

「パラリーガル(分野制・一級秘書)の養成と活用~法律事務所活性化の一方策

~」

盛岡シンポは,日弁連の弁護士業務改革シンポジウムにおいて,事務職員の養成

と活用について,真正面から取り扱った最初のシンポジウムであった。その準備に

おいて,前記(1)の答申において配慮せざるをえなかった消極論の検証を行い,アメ

リカのパラリーガル事情の視察も行った。そして打ち出したのが,パラリーガル

(分野制・一級秘書)という資格創設の提言であった。これは,一定の能力認定試

験に合格した事務職員に対し,弁護士業務を補助するに有益且つ必要な「権限」を

付与するという,画期的なものであったが,その権限の「範囲」と「条件」につい

て煮詰め切れていなかったこともあって,非弁助長懸念論者からの批判だけでなく,

事務職員の階層化を嫌う事務職員団体からも反対を受けることとなり,制度として

実現するには至らなかった。

しかし,盛岡シンポは,10年以上もの間,会内において停滞していた「事務職員

論」を活性化する契機となったという重要な意義があり,その後,弁護士業務改革

委員会内に事務職員に関する常設のPT・小委員会が設置され,その後のシンポジ

ウムにおいては,定期的に事務職員に関するテーマが取り上げられることとなった。

(3) 2003 年・第 13 回弁護士業務改革シンポジウム(以下「鹿児島シンポ」という。)

「事務職員との協働による業務革命 ~多様化する法律事務所の新たな展開~」

鹿児島シンポにおいては,従前の検討の成果としての『制度論』と共に,弁護士

と事務職員との『関係論』が提起された。前者は,2001 年に諮問を受けた「パラリ

ーガル認定制度」について答申を行った(DVD-ROM資料 7-4)。

後者は,事務職員に対する日弁連の取組のバックボーンとなる理念の策定であり,

具体的には,弁護士と事務職員とは法律事務所を構成するパートナーであることに

- 188 -

Page 5: f °C Ç ·ü Ï...2 ºí 2 *Ë_6õM 1* $ ( q · Ì 1¤ »*Ë D Ø_X8Zb'Å #æ º_0¿*(I S S0 $ ( c>* 1¤ b 2 »" (@ - âI 'g 2 \KZ>* 2 » db »+ 9×u ²0[@6~>* 1¤ /õ *Ë D Øb%Ê'2í

3

着目して【協働】という概念を提唱し,協働と言える具体的な好事例を紹介した。

以後,日弁連の事務職員に対する諸施策は,協働という理念に基づくものとなった。

ところで,前記「答申書」に対しては,事務職員団体から「法律事務職員を階層

化するものであり,改善されたい。」旨の要望が出された(DVD-ROM資料 7-5)。

その後の再検討を経て,事務職員団体の要望も斟酌した内容として,現在の「事

務職員能力認定制度」が誕生することとなった。

(4) 2011 年・第 17 回弁護士業務改革シンポジウム(以下「横浜シンポ」という。)

「事務職員の育成と弁護士業務の活性化~能力認定研修・試験をどう生かすか~」

鹿児島シンポ等の成果を踏まえ,2008 年,日弁連は,研修と試験から構成される

能力認定制度を創設・実施するに至り,多くの事務職員及び会員から支持されるこ

ととなったが,本制度の更なる普及と改善を目途として,横浜シンポが開催された。

横浜シンポにおいては,認定制度の有益・有効な活用事例の紹介と共に,米国にお

けるパラリーガルの実態調査等を踏まえた「日本型事務員の在り方」を考え,また,

多くのアンケート分析から本制度の改革の方向性について,多角的な議論を重ねた。

(5) 2015 年・第 19 回弁護士業務改革シンポジウム(以下「岡山シンポ」という。)

「弁護士業務拡大に資する事務職員の養成と確保~能力認定制度の改革と活用方

法~」

岡山シンポでは,改めて,事務職員との協働による法律事務所の活性化・業務拡

大の具体例を紹介し,能力認定制度による事務職員のレベルアップの有効性等を検

証した。また,今後の施策として,「初級・倫理研修の義務化」「上級・専門研修の

創設」「認定試験合格者に対する処遇改善」が提言され,現在,具体化作業の渦中

にある。

※事務職員に関する今後の展望と課題

以上の日弁連の歴史に照らせば,岡山シンポでの各提言の具体化はもちろんのこ

と,事務職員への称号付与・資格化等について,今日的検討と具体化の模索が必要

となろう。

2 事務職員の活用による法律事務所の生産性向上に対する問題提起

(1) はじめに

日弁連では,2008 年度に事務職員能力認定のための研修を,それを踏まえた試験

を 2009 年度に開始して,2019 年度及び 2020 年度には,12 回目の研修,試験の実

施が予定されている。第 11 回試験までに 4,176 名に及ぶ合格者を輩出しており,

事務職員能力認定制度そのものは既に定着している(DVD-ROM資料 7-6)。

日弁連の能力認定制度の定着によって,全国的に事務職員のスキルアップを確保

するための制度が全国的に網羅されたものとして確立された。

事務職員のスキルを向上させることによって各弁護士事務所の業務が飛躍的に

効率化することは一般論としては異論のないところであろう。見方を変えれば,事

務職員を活用することによって弁護士が本来弁護士でなければできない業務に専

念することができるということである。また,事務職員の活用の実態は,一部には,

単に事務処理の一端である書類作成の補助をしてもらうだけではなく,依頼者と直

- 189 -

Page 6: f °C Ç ·ü Ï...2 ºí 2 *Ë_6õM 1* $ ( q · Ì 1¤ »*Ë D Ø_X8Zb'Å #æ º_0¿*(I S S0 $ ( c>* 1¤ b 2 »" (@ - âI 'g 2 \KZ>* 2 » db »+ 9×u ²0[@6~>* 1¤ /õ *Ë D Øb%Ê'2í

4

接面談して事案のヒアリングや,弁護士事務所に依頼する事件かどうかの振り分け

をしたり,更には,個別の事件処理において弁護士の監督の下,現場における立会

いなどの業務を行うに及んでいる。

こうして,法律事務所の業務の多くを事務職員に担ってもらうことによって,具

体的な事件処理でも,弁護士が短時間の業務で効率的に同じ結果を導くことができ

るようになる。このことは抽象的には理解できよう。他方で,事務職員を雇用する

には相応のコストがかかることは否めない。そのため,事務所の財政基盤が脆弱で

あることや,将来の安定性に対する不安があることによって,事務職員を雇用して

積極的に活用することに二の足を踏むことは考えられる。実際に,近年,若手弁護

士を中心として,事務職員を雇用しないケースもみられるところである。しかし,

あらゆる業務と同様,弁護士業務においても,経済状況や将来性に対する不安があ

るからこそ,専門分野に対する学習を深めて業務の質的向上をはかり,弁護士自身

の魅力を増大するため教養を深化させ,また,各種交際に多くの労力と時間を割く

ことが不可欠であって,このような努力を怠れば各弁護士事務所の業務そのものの

質の低下を招くことは避けられない。

多くの弁護士がこのジレンマから脱却して,事務職員を有効活用するように方針

を打ち出すため,事務職員を活用することの有用性を,より具体的に示す必要があ

ると考えた。

(2) 事務職員の活用の方向性

弁護士業務は,伝統的に,法廷活動に代表される裁判所に関わる業務が中心であ

ると社会的に見られていた。しかし今日では,弁護士は,法律のスペシャリストと

して広い分野において,社会的病理現象の予防や解決,企業活動の積極的支援等を

行っている。事務職員を活用することによって,伝統的な業務における質を向上さ

せるだけではなく,業務の拡大,新規分野への進出に積極的に活用することも考え

られよう。実際に,事務職員を活用するに当たって,事務職員が弁護士の顧客の窓

口になって弁護士に繋げるべき業務の仕分けをしたり,積極的に営業活動の前線に

おいて活躍するような方法も検討されてきた。しかし,この点での活用をテーマと

することは本分科会ではひとまず措くこととする。

本分科会では,全ての弁護士にとって汎用性のある弁護士の伝統的業務に対して

事務職員がどの程度関与することができ,また,事務職員がそこでどの程度有用で

あり,事務所経営にどの程度有益であるのかを検討する。

なお,事務職員の役割は,弁護士の行う法律事務処理の一端を担うことだけでは

ない。ここで,忘れてはならないのは,弁護士が執務しやすくなるような業務一般

の補佐的役割,秘書的役割を持つ事務職員の存在である。弁護士と事務職員の仕事

が機能的にかみ合うことによって,弁護士が弁護士業務の本質とは言い難い業務の

周辺部分から来るストレスにさらされることなく自己の業務に専念し,業務上大き

な功績を挙げることができることが,従来,期待されていた事務職員としての役割

であった。このような業務を中心に行っている事務職員が能力認定制度を利用して

法律専門知識を取得することによって,弁護士の行っている業務の理解を深め,弁

護士業務を更に発展させることもできる。このことについても,しっかりと念を押

- 190 -

Page 7: f °C Ç ·ü Ï...2 ºí 2 *Ë_6õM 1* $ ( q · Ì 1¤ »*Ë D Ø_X8Zb'Å #æ º_0¿*(I S S0 $ ( c>* 1¤ b 2 »" (@ - âI 'g 2 \KZ>* 2 » db »+ 9×u ²0[@6~>* 1¤ /õ *Ë D Øb%Ê'2í

5

しておく必要がある。

(3) 認定試験合格者の業務に関する調査

2015年に大阪大学大学院法学研究科仁木恒夫教授による全国の法律事務所事務職

員の実情についての調査が法律事務所の約5パーセントを対象として行われた。こ

こで,明らかとなった事務職員の業務分野は以下のとおりである。

事務職員の業務について,まず全体の特徴を見てみたところ(下図),「来客

の接遇」94.7%,「電話の応対」97.9%,「郵便物の収受」95.8%,「資料等のコピー」

96.3%,「裁判所との連絡等」93.7%,「登記簿等の謄本申請」93.5%と,これらの業

務は非常に高い割合を示しているとされる。他方で,「訴状の起案」21.1%,「保全

申立書の起案」19.0%,「強制執行申立書の起案」37.4%,「その他裁判関係書面の作

成」19.5%,「強制執行の立会い」19.2%,「依頼者への報告書作成」34.1%などは,

いずれも5割を下回っているとされる。前者の作業は大半の法律事務職員に共通す

る一般的業務と考えて良いであろう。それに対して,後者の作業は必ずしも典型的

な事務職員の業務とは言えない。なお,「その他裁判関係書面の作成」の自由

記述には,準備書面,証拠説明書,陳述書,家事調停申立書,成年後見申立書,成

年後見報告書などがみられるとされる。

図 法律事務職員の業務内容

また,日弁連能力認定制度による能力認定試験合格者の事務職員が行っている業

務についても調査が行われた。その業務の内容を能力認定試験合格者とそうでない

者とで比較してみると,この典型的とは言えない作業において違いがみられる。す

なわち,未合格者では,「訴状の起案」18.8%,保全申立書の起案」15.4%,「強制執

行申立書の起案」31.5%,「その他裁判関係書面の作成」16.0%,「強制執行の立会い」

10.0%,「依頼者への報告書作成」28.7%であるのに対して,合格者では,「訴状の起

案」28.6%,「保全申立書の起案」29.5%,「強制執行申立書の起案」56.2%,「その他

裁判関係書面の作成」30.5%,「強制執行の立会い」33.3%,「依頼者への報告書作成」

51.4%であったとされている(DVD-ROM資料7-7)。

- 191 -

Page 8: f °C Ç ·ü Ï...2 ºí 2 *Ë_6õM 1* $ ( q · Ì 1¤ »*Ë D Ø_X8Zb'Å #æ º_0¿*(I S S0 $ ( c>* 1¤ b 2 »" (@ - âI 'g 2 \KZ>* 2 » db »+ 9×u ²0[@6~>* 1¤ /õ *Ë D Øb%Ê'2í

6

つまり,能力認定試験合格者は一般的に,弁護士業務に必要な法律的な専門性を

一定程度備えていると言えるが,このような能力認定試験合格者が行っている業務

については,その能力を活用して特筆すべき状況があることが明らかとなった。

このように,能力認定試験合格者レベルの事務職員は,弁護士の法律事務そのも

のの補助的業務を行わせることが可能であり,能力認定制度を利用して積極的に事

務職員の資質の向上を図り,積極的に弁護士の法律事務そのものの補助的業務を担

わせることによって,弁護士業務の効率化を図っていくことが考えられる。

(4) 事務職員を利用することによる効率性向上の経営学的分析の試み

弁護士は,法人化することは可能であるが,法人であったとしてもその代表者で

ある社員は弁護士である。我が国の大多数の弁護士は個人事業主であり,弁護士自

身が経営者として事務所を切り盛りすることが予定されているものの,経営につい

てはまったくの素人と言わざるを得ない。

これに対して,事務職員の雇用や事務職員の活用は法律事務所の組織作りであり,

経営に属する事項である。ましてや,通常の弁護士は事務職員を雇用しなかったか

らといって一応業務を行うことは可能であるから,事務職員を雇用することをコス

ト面でのリスクと捉えて,リスクを避ける選択も経営的には当然考えられるところ

である。

一般的に,事務職員を活用することによって業務を効率化することができること

は抽象的には理解されている。もっとも,その理解は数値化されておらず,科学的

に分析されているとは言い難い。そこで,本分科会では,事務職員を具体的な業務

遂行に活用した結果,実際にどの程度効率的な事務所経営となるのかを,金銭面,

時間面において数値化して示すことによって,経営学的に事務職員活用の有用性を

示すことを試みることとする。すなわち,事務職員を活用することによって,事件

処理において具体的に,弁護士の時間を何時間節約することになるのか,また,い

くらのコストを抑えることができるのか,検証を試みた。

このように,経営学的に分析することによって,事務職員を雇用することに二の

足を踏んでいる弁護士が事務職員を雇用しようと考えるきっかけとして,あるいは,

既に事務職員を雇用している弁護士が更に効率的に事務職員を活用するためのきっ

かけとなることを期待したい。

更に,事務職員を積極的に活用することによって,時間的な余裕を作り事務所の

拡大に成功し,あるいは,業務を深化させて弁護士としての大きな成果を生み出す

ことに成功した具体的な事例を複数紹介したい。その事例においては,具体的にど

のように事務職員を活用したのか紹介する。

事務職員の積極的活用は,とりもなおさず,利益率の向上としてとらえることも

可能であるし,また,弁護士としての専門知識の陶冶や一般教養の涵養に充てる余

裕ととらえることも可能であろう。その判断は個々の弁護士の自由に委ねることと

したい。

3 事務職員の実勢

(1) 全国法律関連労働組合連絡協議会のアンケート調査

- 192 -

Page 9: f °C Ç ·ü Ï...2 ºí 2 *Ë_6õM 1* $ ( q · Ì 1¤ »*Ë D Ø_X8Zb'Å #æ º_0¿*(I S S0 $ ( c>* 1¤ b 2 »" (@ - âI 'g 2 \KZ>* 2 » db »+ 9×u ²0[@6~>* 1¤ /õ *Ë D Øb%Ê'2í

7

日本の法律事務所で働く事務職員の人数や年齢構成,勤続年数など基礎となる情

報は各地域の弁護士会がそれぞれ把握しているわけではなく,また,全国的にも統

一した形で集約している組織はない。そのため,事務職員の実勢を把握することは

困難な課題であるが,2015 年 10 月に岡山市で開催された第 19 回弁護士業務改革シ

ンポジウム(第 3 分科会「弁護士業務拡大に資する事務職員の養成と確保」)にお

いては,事務職員が加入している労働組合の全国的連絡組織である全国法律関連労

働組合連絡協議会(以下「全法労協」という。)が毎年実施している「要求と実態

調査アンケート」の過去 7 年間(2009 年~2015 年)の回答者属性データを集計・

分析して事務職員の実勢をできる限り明らかにして報告した。

全法労協のアンケート回答者数は 1,000 人を超えており,労働組合に加入してい

る事務職員からは 3~4 割,加入していない事務職員からも 6~7 割の回答を得てい

る。よって,事務職員の実像を把握する上で最も信頼できるデータであると考えら

れるので,前回と同様に活用させていただいた。本報告では,前回のものを踏まえ

つつ,2010 年から 2018 年までの過去 9 年分の回答者属性データを集計・分析し(回

答者数の平均は 1,394 人),約 10 年前の 2010 年と比較しながら 2018 年時点の最新

の事務職員の実勢を明らかにしていきたい。(DVD-ROM資料 7-8)

【全法労協「要求と実態調査アンケート】

平均値

回答者数 1741 1720 1654 1366 1322 1245 1249 1213 1040 1394

2014年 2015年2010年 2011年 2012年 2013年 2016年 2017年 2018年

(全法労協「要求と実態調査アンケート」2010~2018 年をもとに作成)

(2) 事務所における弁護士の人数と事務職員の人数

2018年3月31日現在の弁護士数は,男女合計4万0066人である。

【注】表中の( )内の数値は、各年代の弁護士総数である。

資料1-1-3 男女別年齢別構成(2013年)

2,296

10,064

7,661

3,669

3,911

3,273

1,730

552

3,108

2,290

821

376

216

99

02,0004,0006,0008,00010,000

20~29歳

(2,848)

30~39歳

(13,172)

40~49歳

(9,951)

50~59歳

(4,490)

60~69歳

(4,287)

70~79歳

(3,489)

80歳以上

(1,829)

(人)11,000

男性合計 3万2,604人 女性合計 7,462人

(2018年3月31日現在)男 性 女 性

資料1-1-4 男女別年齢構成

(日本弁護士連合会「弁護士白書2018年版」)

2,000 4,000 6,000 8,000(人) 10,000(人) 8,000 6,000 4,000 2,000

【注】表中の( )内の数値は,各年代の弁護士総数である。

- 193 -

Page 10: f °C Ç ·ü Ï...2 ºí 2 *Ë_6õM 1* $ ( q · Ì 1¤ »*Ë D Ø_X8Zb'Å #æ º_0¿*(I S S0 $ ( c>* 1¤ b 2 »" (@ - âI 'g 2 \KZ>* 2 » db »+ 9×u ²0[@6~>* 1¤ /õ *Ë D Øb%Ê'2í

8

事務所の規模別に見た所属弁護士数の割合(資料1-3-4)では,1人事務所が

20.05%,2人事務所が14.82%,3~5人事務所が23.81%,6~10人事務所が13.65%とな

っており,近年では事務所の共同化が進み弁護士2人以上の事務所が増加していると

言える(資料1-3-5)。

(単位:事務所)

2016年 2017年 2018年

9,404 9,689 10,038

2,934 2,990 2,968

2,489 2,546 2,638

693 736 746

217 228 232

54 56 52

20 21 27

8 8 8

10 10 11

15,829 16,284 16,720

【注】各年ともに3月現在。

(単位:人)

総 数 内女性数

9,404 9,689 10,038 1,256

5,868 5,980 5,936 1,290

9,027 9,222 9,540 1,901

5,092 5,377 5,469 1,222

3,047 3,192 3,282 692

1,339 1,377 1,278 266

769 823 997 178

531 556 536 77

2,603 2,764 2,990 580

37,680 38,980 40,066 7,462

【注】各年ともに3月現在。

101人以上事務所

合  計

101人以上事務所

合  計

31~50人事務所

51~100人事務所

2018年2016年

21~30人事務所

31~50人事務所

51~100人事務所

3~5人事務所

6~10人事務所

11~20人事務所

21~30人事務所

2人事務所

3~5人事務所

6~10人事務所

11~20人事務所

1人事務所

2人事務所

2017年

1人事務所

資料1-3-3 事務所の規模別に見た事務所数の推移

資料1-3-5 事務所の規模別に見た所属弁護士数の推移

1人事務所

60.04%2人事務所

17.75%

3~5人

事務所

15.78%

6~10人

事務所

4.46%

11~20人

事務所

1.39%

21~30人

事務所

0.31%

31~50人

事務所

0.16%

51~100人

事務所

0.05%101人以上

事務所

0.07%

(2018年3月31日現在)

1人事務所

20.05%

2人事務所

14.82%

3~5人

事務所

23.81%

6~10人

事務所

13.65%

11~20人

事務所

8.19%

21~30人

事務所

3.19%

31~50人

事務所

2.49%

51~100人

事務所

1.34%

101人以上

事務所

7.46%

(2018年3月31日現在)

資料1-3-2 事務所の規模別に見た事務所数の割合

資料1-3-4 事務所の規模別に見た所属弁護士数の割合

(日本弁護士連合会「弁護士白書 2018 年版」)

他方,法律事務所で働く事務職員の総数に関する統計データはないが,2015 年に

日弁連が実施した全国弁護士業務改革委員会委員長会議に向けたアンケート調査

によると「事務職員数は弁護士の何倍程度存在するか」という問いに対し,「1.0

倍前後」と回答した弁護士会が多数であった(地域によって差があるが,最小が

0.8 倍で最大が 3.0 倍,平均値は 1.38 倍であった。)。

したがって,2018年現在の事務職員の総数は,弁護士の総数(約4万人)とほぼ

同数か,もしくは弁護士より若干上回る程度ではないかと思われる。また,弁護士

総数の7割以上(約3万人)は弁護士2人以上の共同事務所に所属していることから,

事務職員の多数も共同事務所で勤務していると考えられる。

(3) 事務職員の男女別割合

事務職員の男女別の割合は,2018年時点で,男性が1割強,女性が9割弱である。

- 194 -

Page 11: f °C Ç ·ü Ï...2 ºí 2 *Ë_6õM 1* $ ( q · Ì 1¤ »*Ë D Ø_X8Zb'Å #æ º_0¿*(I S S0 $ ( c>* 1¤ b 2 »" (@ - âI 'g 2 \KZ>* 2 » db »+ 9×u ²0[@6~>* 1¤ /õ *Ë D Øb%Ê'2í

9

2010年と2018年を比較すると,男性の割合は11.9%から13.9%へ若干増加しており,

女性の割合は87.8%から85.8%へ若干減少している。

(全法労協「要求と実態調査アンケート」2010~2018 年をもとに作成)

(4) 事務職員の勤務形態

事務職員の勤務形態は,2018 年時点で,正規職員が 8 割強,パート・アルバイト

職員が 1 割弱である。

2010 年と 2018 年を比較すると,正規職員の割合は 87.2%から 84.4%へ若干減少し

ているが,パート・アルバイト職員は 8.9%から 10.9%へ若干増加している。

(全法労協「要求と実態調査アンケート」2010~2018 年をもとに作成)

(5) 年齢構成

事務職員の年齢構成は,2018 年時点で,40 歳代が最多で 32.8%,次いで 30 歳代

が 32.3%である。

2010 年と 2018 年を比較すると,20 歳代は 22.9%から 9.2%へ大幅に減少し,また

30 歳代も 40.6%から 32.3%へ減少している。反対に 40 歳代は 21.4%から 32.8%へ増

加し,また 50 歳代も 11.6%から 26.3%へ,60 歳代も 2.6%から 5.7%へ増加している。

- 195 -

Page 12: f °C Ç ·ü Ï...2 ºí 2 *Ë_6õM 1* $ ( q · Ì 1¤ »*Ë D Ø_X8Zb'Å #æ º_0¿*(I S S0 $ ( c>* 1¤ b 2 »" (@ - âI 'g 2 \KZ>* 2 » db »+ 9×u ²0[@6~>* 1¤ /õ *Ë D Øb%Ê'2í

10

こうした点から事務職員の年齢構成は上昇傾向であると言える。

また,弁護士の年齢構成(資料 1-1-4)と比較してみると,40 歳未満の弁護士は

全体の 40%(1 万 6,020 人)であり,40 歳未満の事務職員も全体の 41.6%であるの

で,ほぼ同数であると言える。

(全法労協「要求と実態調査アンケート」2010~2018 年をもとに作成)

(6) 勤続年数

事務職員の勤続年数は,2018年時点で,15年以上が最多で29.6%,次いで5年以上

10年未満が20.3%である。

2010年と2018年を比較すると,勤続3年未満の事務職員はほぼ2割前後のまま変わ

らない。勤続10年以上15年未満は13.0%から18.4%へ,勤続15年以上は20.0%から29.6%

へそれぞれ増加しており,全体として勤続10年以上の事務職員が勤務先法律事務所

あるいは法律事務所業界に定着していると言える。

(全法労協「要求と実態調査アンケート」2010~2018 年をもとに作成)

- 196 -

Page 13: f °C Ç ·ü Ï...2 ºí 2 *Ë_6õM 1* $ ( q · Ì 1¤ »*Ë D Ø_X8Zb'Å #æ º_0¿*(I S S0 $ ( c>* 1¤ b 2 »" (@ - âI 'g 2 \KZ>* 2 » db »+ 9×u ²0[@6~>* 1¤ /õ *Ë D Øb%Ê'2í

11

(7) 月額賃金(通勤手当を除く総支給額)

事務職員の月額賃金は,2018年時点で,15万円以上20万円未満が23.8%,20万円

以上25万円未満が22.6%,25万円以上30万円未満が16.9%となっている。これらを合

計すると63.3%であるので,約6割強の事務職員の月額賃金は15万円以上30万円未満

の範囲である。

【月額賃金 (通勤手当を除く総支給額)】

○万以上~○万未満 平均値

5万未満 0.2% 0.5% 0.4% 0.2% 0.3% 0.2% 0.8% 0.8% 0.8% 0.5%

 5万~10万 3.5% 2.8% 2.9% 3.1% 3.3% 3.8% 4.9% 5.9% 5.1% 3.9%

10万~15万 6.9% 7.3% 6.3% 11.9% 7.7% 10.0% 8.5% 8.4% 8.5% 8.4%

15万~20万 26.8% 27.2% 27.0% 24.7% 26.8% 26.5% 25.7% 24.6% 23.8% 25.9%

20万~25万 29.6% 29.2% 28.9% 25.3% 27.6% 24.7% 25.4% 24.2% 22.6% 26.4%

25万~30万 14.1% 14.0% 15.7% 14.9% 15.0% 13.7% 13.8% 13.9% 16.9% 14.7%

30万~35万 8.3% 8.2% 8.8% 7.9% 8.3% 9.6% 10.9% 10.1% 9.9% 9.1%

35万~40万 3.8% 3.9% 4.8% 5.9% 4.5% 5.5% 4.2% 5.0% 5.6% 4.8%

40万~45万 2.6% 3.1% 2.6% 3.4% 1.2% 1.1% 3.4% 3.9% 3.5% 2.7%

45万~50万 1.3% 0.8% 1.0% 1.0% 2.7% 3.2% 1.3% 0.5% 0.9% 1.4%

50万以上 1.0% 0.9% 0.8% 0.5% 0.5% 0.6% 0.5% 0.7% 0.8% 0.7%

No Answer 1.8% 2.2% 0.9% 1.2% 2.0% 1.0% 0.7% 2.0% 1.7% 1.5%

100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0%

2018年2015年 2016年 2017年2010年 2011年 2012年 2013年 2014年

(全法労協「要求と実態調査アンケート」2010~2018 年をもとに作成)

(8) 年収(通勤手当を除く総支給額)

事務職員の年収は,2018年時点で,300万円未満が40.4%,300万円以上400万円未

満が25.4%,400万円以上500万円未満が15.0%である。

2010年と2018年を比較すると,年収300万円未満は36.4%から40.4%へ増加しており,

年収300万円以上400万円未満は28.4%から25.4%へ減少している。それ以外では大幅

な変動はない。こうした傾向は,近年における弁護士の経済状態の悪化と直結して

- 197 -

Page 14: f °C Ç ·ü Ï...2 ºí 2 *Ë_6õM 1* $ ( q · Ì 1¤ »*Ë D Ø_X8Zb'Å #æ º_0¿*(I S S0 $ ( c>* 1¤ b 2 »" (@ - âI 'g 2 \KZ>* 2 » db »+ 9×u ²0[@6~>* 1¤ /õ *Ë D Øb%Ê'2í

12

いると考えられる。

【年収 (通勤手当を除く総支給額)】

○万以上~○万未満 平均値

100万未満 3.4% 3.0% 2.7% 4.0% 3.5% 5.1% 4.9% 5.0% 4.5% 4.0%

100万~125万 2.3% 1.7% 1.9% 2.7% 2.2% 2.4% 2.7% 2.8% 2.7% 2.4%

125万~150万 2.1% 2.3% 2.0% 1.7% 1.7% 2.4% 3.2% 2.4% 3.2% 2.3%

150万~ 175万 1.7% 1.7% 1.6% 2.6% 2.0% 1.7% 1.9% 2.1% 1.9% 1.9%

175万~200万 3.6% 3.8% 4.2% 4.4% 4.1% 5.1% 3.8% 4.0% 3.9% 4.1%

200万~225万 4.8% 4.3% 5.1% 7.0% 5.4% 5.8% 5.3% 6.8% 5.4% 5.5%

225万~250万 5.0% 6.2% 6.1% 5.9% 5.3% 5.1% 5.1% 5.9% 6.3% 5.7%

250万~275万 4.8% 6.2% 6.5% 5.4% 5.5% 5.9% 5.3% 4.9% 4.2% 5.4%

275万~300万 8.7% 7.9% 7.7% 10.0% 10.7% 8.0% 9.8% 8.2% 8.3% 8.8%

300万~350万 15.9% 16.1% 16.6% 13.0% 14.3% 13.9% 15.6% 14.0% 14.8% 14.9%

350万~400万 12.6% 12.1% 10.9% 10.4% 10.1% 9.3% 10.4% 9.2% 10.6% 10.6%

400万~450万 10.3% 10.1% 9.0% 8.9% 9.5% 9.2% 7.8% 10.6% 9.2% 9.4%

450万~500万 5.2% 6.3% 5.9% 5.1% 6.8% 3.9% 5.8% 7.2% 5.8% 5.8%

500万~550万 5.0% 4.2% 5.1% 5.4% 4.5% 4.4% 5.0% 5.3% 5.5% 4.9%

550万~600万 2.8% 3.3% 2.2% 2.3% 2.6% 4.9% 2.7% 2.0% 2.9% 2.8%

600万~650万 2.7% 2.6% 3.1% 2.9% 2.7% 2.7% 2.7% 2.2% 2.5% 2.7%

650万~700万 1.5% 1.5% 1.5% 1.5% 1.3% 2.1% 1.8% 1.8% 1.3% 1.6%

700万~800万 2.5% 1.9% 2.4% 2.2% 1.8% 1.9% 1.8% 1.6% 1.9% 2.0%

800万~900万 1.0% 0.8% 0.8% 0.6% 0.9% 1.0% 1.0% 0.7% 1.2% 0.9%

900万~1000万 0.3% 0.2% 0.6% 0.5% 0.4% 0.4% 0.6% 0.6% 0.4% 0.4%

1000万以上 0.2% 0.2% 0.2% 0.1% 0.0% 0.2% 0.0% 0.0% 0.0% 0.1%

No Answer 3.6% 3.7% 3.9% 3.5% 4.7% 4.7% 2.6% 2.9% 3.6% 3.7%

100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0%

2018年2015年 2016年 2017年2010年 2014年2011年 2012年 2013年

(全法労協「要求と実態調査アンケート」2010~2018 年をもとに作成)

- 198 -

Page 15: f °C Ç ·ü Ï...2 ºí 2 *Ë_6õM 1* $ ( q · Ì 1¤ »*Ë D Ø_X8Zb'Å #æ º_0¿*(I S S0 $ ( c>* 1¤ b 2 »" (@ - âI 'g 2 \KZ>* 2 » db »+ 9×u ²0[@6~>* 1¤ /õ *Ë D Øb%Ê'2í

13

4 事例紹介

(1) 事務職員を活用して交通事故の事件処理を多数受任することを可能としているケ

ースとして,弁護士法人サリュの事例を紹介する。

「弁護士法人サリュ法律事務所の交通事故事案のおける事務職員の有用性」

弁護士法人サリュ 代表社員 弁護士平岡将人

弁護士法人サリュでは,能力認定試験を合格したリーガルスタッフ(事務職員

をこのように呼称する。)が多数在籍し,法律事務を弁護士とともに協働すること

を心掛けてきた。以下,その取組とポイント,考え方を紹介させていただく。

① 法律相談の同席

当事務所では,法律相談に事務職員を同席させている。その理由は次の通りで

ある。

ア 依頼者(相談者)の状況,悩み,思いの直接的な共有

イ 現状の評価,今後の見通し,方針の直接的な共有

ウ 弁護士に対して敷居を高く感じる依頼者に対して話し易い雰囲気を作る

エ 弁護士単独より充実した法律相談を実践する

上記ア及びイは,ある事件の法律事務を,弁護士,事務職員,依頼者の三者が

ゴールに至るまで協働していくためには必須のことである。

次にウについて,当事務所の場合,弁護士が退席した後に,依頼者が事務職

員に対して「相談中は話せなかったのだけど…」と本当の思いや事実を伝えるこ

とはよくある。

また他事務所の場合であるが,事務職員を要件事実とは直接的には関係のない

依頼者の苦労や悩み,本当に言いたいことを引き出す役割と位置づけ,法律相談

や打ち合わせに同席させているケースもある。

このウは,より考え方を発展させていくことで,事務職員固有の付加価値を作

ることができるのではないかと感じている。

事務職員との協働に関する従来の研究(DVD-ROM資料 7-9)などでは,

一般民事事件の解決の目的は依頼者の自立支援にあるとしている。事務職員は弁

護士とともにその自立支援の目的のために,法律事務のほか,固有の役割として

依頼者を平常心へ戻す役割,弁護士と依頼者の紛争処理の目線を整合一致させる

役割などを果たすべきだとしている。この考え方によれば,新規相談はもとより,

日々の依頼者と事務職員の接触が大切になってくるだろう。

最後にエであるが,手続きの内容によっては,事務職員のほうが深い知識や別

の経験を有していることがある。その知識を相談中に直接補充することにより,

充実した相談が可能となる。当事務所の場合は,医療面の知識において事務職員

も相当程度習熟しており,相談中に弁護士が医療面の知識を聞くこともある。

② 資料収集・調査

方針が定まると,次は資料(証拠)の収集となる。当事務所では,どのような

- 199 -

Page 16: f °C Ç ·ü Ï...2 ºí 2 *Ë_6õM 1* $ ( q · Ì 1¤ »*Ë D Ø_X8Zb'Å #æ º_0¿*(I S S0 $ ( c>* 1¤ b 2 »" (@ - âI 'g 2 \KZ>* 2 » db »+ 9×u ²0[@6~>* 1¤ /õ *Ë D Øb%Ê'2í

14

資料を取り付けるかが決まれば,事務職員が取り付ける実働を行う。例えば依頼

者から源泉徴収票を取り付けたり,病院から医療記録を取り付けたり,役所から

戸籍を取り付けたり,といった形である。

さらには,目撃者に話を聞きに行く,弁護士とともに事故現場に行く,病院に

医師面談に行くなど,証拠を作る作業も協働している。

次に,集めた資料を分析し,必要な情報をピックアップする作業である。

資料によっては,知識と経験が必要な作業であるので,必ずしも全員が適切に

できるわけではない。当事務所内では,この経験の偏在を防ぐため,この資料を

見る場合にはここの数字をピックアップする,など定型化しているものもある

(例えば自営業者の基礎収入の算定のためには,確定申告書のうち,収支内訳書

のこの項目を参照すると決めてある。)。

③ 調査報告書の作成

最後に,調査した結果の書面化である。

これは,見やすいようにワードやエクセルの定型書式とすることが多い。非典

型的・個別的な調査(例えば依頼者固有の事情調査や医学文献調査等)となると

自由形式の文章となる。

弁護士は,この調査報告を証拠と照らし合わせて確認し,ときに訂正し,最

終的には要件事実論や事実認定論の観点も含めて各種書面,訴状や準備書面,請

求書等を完成していくことになる。

④ 事務職員との協働によるメリット

端的に,弁護士の時間が,協働する方がより多く作ることができる(言い方

を変えれば生産性が高まる)。その作った時間を,新たな営業活動に使ったり,

研究に使ったり,それは人それぞれであろう。

当事務所では,交通事故分野での未解決課題について積極的に訴訟を行うこと

もある。そのひとつに,胸髄損傷の既往症を有していた人が交通事故に遭い,健

全であった頚椎損傷を新得したケース(重篤な神経障害を持っている人が無関係

の神経損傷を得たようなケース。)がある。この問題点は,既往症とは無関係な

ケガにもかかわらず,自賠責保険は絶対に後遺障害として認めてこなかったとい

うところにあった。それに対して,当事務所は加害者に加え,自賠責保険に対し

ても後遺障害として認めるよう提訴し,結果勝訴(東京高裁平成28年1月20日)

した。結局,現在の自賠責は運用を変更し,同様のケースでも後遺障害として認

める扱いになっている。

事務職員との協働によって,多数の事件を担当することができる結果,同様

の被害者が多数泣き寝入りしている姿を見たというのが動機としては大きい。

そして,事務職員と弁護士の協働によって生産性が高まる結果,このような

時間がかかり,しかもそれに見合う対価があるか分からないような事件を戦う

余力があることが大きな原因となっていると考える。

また,やはり同期の弁護士などの話を聞くと,強いストレスで心にダメージを

負っている人もいる。重圧のきついこの仕事で,弁護士と協働してくれる者の存

在というのは,弁護士の精神的な安定という点でも大変重要であると考えている。

- 200 -

Page 17: f °C Ç ·ü Ï...2 ºí 2 *Ë_6õM 1* $ ( q · Ì 1¤ »*Ë D Ø_X8Zb'Å #æ º_0¿*(I S S0 $ ( c>* 1¤ b 2 »" (@ - âI 'g 2 \KZ>* 2 » db »+ 9×u ²0[@6~>* 1¤ /õ *Ë D Øb%Ê'2í

15

(2) 本分科会では,その他,交通事故に限らず,弁護士業務の各分野で事務職員と合

理的に役割分担をして事務所の生産性を向上させている各種事例,それによって,

弁護士が困難な事件に時間を掛けるなどして様々に自己実現をしていっているこ

とについて,具体例を通して紹介したい。

また,具体的な業務に事務職員が関わって弁護士との協働を実現して生産性を高

めるというのではなく,事務職員がスケジュール管理や事務所の雰囲気づくり,依

頼者とのコミュニケーションの円滑化に大きな力を発揮してそれによって,弁護士

業務の効率化,生産性向上を実現し,弁護士が大きく飛躍する力となっている事例

も紹介したい。

5 事務職員活用の数値的分析

(1) 2015 年岡山シンポの成果から

先に紹介したように 2015 年の第 19 回業務改革シンポジウム(岡山シンポ)では,

大阪大学大学院法学研究科の仁木恒夫教授の「法律事務職員の業務に関する実態調

査」(DVD-ROM資料 7-7)及び一般社団法人日本弁護士補助職協会の行った,

日弁連事務職員能力認定試験合格者の業務実態アンケートの内容から,能力認定試

験合格者の業務実態について一般の事務職員との比較を行い,合格者の有用性につ

いての調査結果を明らかにした。 具体的には,合格者及びそれと同等の能力を持った事務職員であれば,弁護士が

細かな指示をしなくても,ある程度の包括的な指示に基づき,一定の実務をこなす

ことができることを,資料に基づき報告している。

包括的な指示に基づく事務処理というのは,例えば,

① 被相続人と基本情報を明らかにした上で,相続登記に必要な書類を集めること

を指示すれば,相続人確定に必要な戸籍謄本をはじめとした必要書類一式を揃え,

更に登記申請書に添付する相続関係図を作成し,法定相続情報証明書の申請を準

備し,依頼人が揃える書類のリストを作成する。

② 訴状が不送達となった場合に,調査の上必要な送達方法を検討する旨の指示に

基づき,書記官と具体的な送達方法を打ち合わせし,住民票その他の必要書類を

揃え,再送達の上申書や公示送達の申立書等必要に応じた書面を作成する。

等々,弁護士が細かな指示をしなくても必要な事務をある程度自分で判断し,下

準備を整えた上で,弁護士に提示できるようなスキルのことであり,詳しくは,

岡山シンポの基調報告書及び同添付のCD-ROMに収録された資料を参照され

たい。

(2) 今回のシンポジウムにおける問題提起

上記(1)の成果を受けて,今回のシンポジウムでは,合格者レベルの事務職員を

雇用しその能力を活用することにより,各法律事務所においてどのように生産性が

向上するかを検証した。

① 検証の方法

4で紹介した「弁護士法人サリュ法律事務所の交通事故事案のおける事務職員

の有用性」について,サリュ法律事務所に依頼して,具体的にどれだけ事件ごと

- 201 -

Page 18: f °C Ç ·ü Ï...2 ºí 2 *Ë_6õM 1* $ ( q · Ì 1¤ »*Ë D Ø_X8Zb'Å #æ º_0¿*(I S S0 $ ( c>* 1¤ b 2 »" (@ - âI 'g 2 \KZ>* 2 » db »+ 9×u ²0[@6~>* 1¤ /õ *Ë D Øb%Ê'2í

16

のコストが削減され,弁護士に時間的余裕が生まれるかを数値化した資料を作成

してもらった(DVD-ROM資料7-10-11及び7-10-12)。

これをモデルとして,一般の法律事務所でも行われることの多い事例にこの方

法を応用して作成したのが,DVD-ROM資料7-10-1ないし7-10-10の資料で

ある。

すなわち,具体的な事件を題材とした弁護士と事務職員の業務分担とその業務

に必要な時間を報告してもらい,弁護士が一人で全ての業務を行った場合と比較

できるデータを作成して,検証を試みたものである。作成にあたっては,十名ほ

どの能力認定試験合格事務職員に協力いただいた。

検討した事例は後述の通りだが,それぞれの事例で,事務職員が一定の業務を

分担して行った場合と,弁護士一人で全て行った場合とで比較して,事務所とし

てのコストがどれだけ軽減されるかを明らかにするとともに,弁護士が事件処理

に割かなければならない時間をどれだけ減らせるかも明らかにした。

なお,その事案における事務所が得た報酬額が分かるものは記載してもらい,

その報酬を得るために必要とされる労力を金銭的に換算し,利益率の比較も行え

るようにした。

各事例を同一条件での比較をするために,弁護士を年間2000時間の労働で2000

万円の収入(1時間当たり1万円),事務職員の雇用によるコストを給料,賞与,

社会保険料,交通費等を含め年間540万円(年間1800時間の労働時間として1時間

当たり3000円)と単純化して計算している。

② 検討した事例と効果

具体的に検討した事例は下記のとおりで,その結論は表1の通りとなっている

(資料番号は添付DVD-ROMの資料番号)。

ア 不動産仮差押 資料7-10-1

イ 不動産占有移転仮処分 資料7-10-2

ウ 遺産分割 資料7-10-3

エ 破産管財(東京) 資料7-10-4

オ 破産管財(名古屋) 資料7-10-5

カ 破産管財(群馬) 資料7-10-6

キ 小規模個人再生 資料7-10-7

ク 成年後見 1 資料7-10-8

ケ 成年後見 2 資料7-10-9

コ 相続放棄 資料7-10-10

- 202 -

Page 19: f °C Ç ·ü Ï...2 ºí 2 *Ë_6õM 1* $ ( q · Ì 1¤ »*Ë D Ø_X8Zb'Å #æ º_0¿*(I S S0 $ ( c>* 1¤ b 2 »" (@ - âI 'g 2 \KZ>* 2 » db »+ 9×u ²0[@6~>* 1¤ /õ *Ë D Øb%Ê'2í

17

表 1

弁護士 事務職員

不動産仮差押 13時間 6.5時間 9時間 70.7% 50.0%占有移転禁止の仮処分 18時間 6.5時間 14時間 59.4% 36.1%

相続(遺産分割) 9.5時間 4時間 6.5時間 62.6% 42.1%破産管財(東京) 7.75時間 2.5時間 7時間 59.4% 32.3%破産管財(愛知) 35.5時間 10時間 32時間 55.2% 28.2%破産管財(群馬) 80時間 36時間 56時間 58.5% 45.0%小規模個人再生 19時間 3.45時間 16.35時間 45.8% 18.2%

成年後見1 141.3時間 45.3時間 98時間 52.9% 32.1%成年後見2 70.3時間 40時間 42.3時間 75.0% 56.9%相続放棄 4.25時間 1.5時間 3.25時間 58.2% 35.3%

弁護士・事務職員で分担弁護士のみの場合の必要時間

弁護士の労力(時間短縮効果)

コスト削減率(弁/弁+事)

事件名

以上の結果を見ると,事務所の事案当たりのコストは,最小25%から最大50%以

上削減され,また弁護士の作業時間も20%から50%程度で済むことになり,経済効

率のみでなく,弁護士の時間的な余裕の点でも著しい効果が期待できることが明ら

かとなった。

もちろん,実際には弁護士が全て一人で行うという事務所はほとんど無いであろ

うが,上記資料の各事例を,自分の事務所における弁護士と事務職員との作業の分

担に置き換えて計算し直し,実際に現在雇用している事務職員のスキルアップをは

かることにより,どの点が改善できるかが一目瞭然となると思われる。

その効果をご確認いただき,ぜひ事務職員のスキルアップのために能力認定制度の

積極的な活用を検討していただきたい。

(3) 具体的な事例紹介

前述の 10 の事例の内,アないしエの 4 つの事例についてここで紹介する。残りに

ついては付属のDVD-ROMに納めてあるので参照されたい。

- 203 -

Page 20: f °C Ç ·ü Ï...2 ºí 2 *Ë_6õM 1* $ ( q · Ì 1¤ »*Ë D Ø_X8Zb'Å #æ º_0¿*(I S S0 $ ( c>* 1¤ b 2 »" (@ - âI 'g 2 \KZ>* 2 » db »+ 9×u ²0[@6~>* 1¤ /õ *Ë D Øb%Ê'2í

18

① 不動産仮差押

具体的業務 弁護士 事務職員 所要時間 備考(その他付記事項)

依頼者からの相談・受任 〇 60分

依頼者からの聴き取りと打合せ・方針決定 〇 60分

事務職員との打合せ 〇 〇 30分

実費費用概算計算 〇 15分 申立費用、登録免許税等

必要書類の取り寄せ(インターネット・郵送) 〇 45分 登記事項証明書、評価証明書

申立書、陳述書の作成 〇 120分

目録の作成 〇 30分

疎明書類の作成(コピー)、申立書提出準備 〇 60分

申立書等提出、面会予約(移動時間含む) 〇 60分 事前申立て

裁判官面会(移動時間含む) 〇 120分

        担保決定

供託書、目録、追完書類等準備 〇 60分 面会結果を反映

供託(移動時間含む) 〇

裁判所への供託書、目録等提出 〇 後で決定正本受領

        本案訴訟

担保取消申立て書類の作成・提出 〇 40分

供託金取り戻し(移動時間含む) 〇 80分

合計時間(概算) 6.5時間 9時間

弁護士が全て1人で行った場合(概算) 13時間 打合せ、提出時間等若干減るため

時間単価(収入・賃金の時給換算) 1万円 3000円事務職員時給は、年間労働時間1800時間、人件費を540万円として計算(賞与、法定福利費、交通費等含む)

事務職員の活用による生産性向上例(1)「民事保全事件」(不動産仮差押事件:東京地裁の例)

] 120分

担保取消は、本案後になるが、保全事件の後始末としてここでは含んで計算

※ 単純に事務所としての利益が増える上、弁護士が案件当たりの必要とする業務時間は 6.5/13=1/2 で半分になる。

保全事件のみの着手金として20万円で受任した場合の案件当たりの人件費は、

 弁護士のみで行った場合は、10,000×13=130,000

 事務職員と共同作業で行った場合は、10,000×6.5+3,000×9=92,000

- 204 -

Page 21: f °C Ç ·ü Ï...2 ºí 2 *Ë_6õM 1* $ ( q · Ì 1¤ »*Ë D Ø_X8Zb'Å #æ º_0¿*(I S S0 $ ( c>* 1¤ b 2 »" (@ - âI 'g 2 \KZ>* 2 » db »+ 9×u ²0[@6~>* 1¤ /õ *Ë D Øb%Ê'2í

19

② 占有移転禁止の仮処分

具体的業務 弁護士 事務職員 所要時間 備考(その他付記事項)

依頼者からの相談・受任 〇 60分

依頼者からの聴き取りと打合せ・方針決定 〇 60分

事務職員との打合せ 〇 〇 30分

実費費用概算計算 〇 30分 申立費用、執行費用その他

必要書類の取り寄せ(直接取り寄せ) 〇 登記事項証明書、評価証明書、住民票

執行場所の下見(移動時間含む) 〇

申立書、陳述書の作成 〇 120分

目録の作成 〇 30分

疎明書類の作成(コピー)、申立書提出準備 〇 60分

申立書等提出、面会予約(移動時間含む) 〇 60分 事前申立て

裁判官面会(移動時間含む) 〇 120分

        担保決定

供託書、目録、追完書類等、執行申立書準備 〇 60分 面会結果を反映

供託(移動時間含む) 〇

裁判所への供託書、目録等提出 〇

決定正本受領~執行申立て 〇 60分

執行官との打合せ 〇 30分

執行立会(移動時間含む) 〇 120分

        本案訴訟

担保取消申立て書類の作成・提出 〇 40分

供託金取り戻し(移動時間含む) 〇 80分

合計時間(概算) 6.5時間 14時間

弁護士が全て1人で行った場合(概算) 18時間 打合せ、提出時間等若干減るため

時間単価(収入・賃金の時給換算) 1万円 3000円事務職員時給は、年間労働時間1800時間、人件費を540万円として計算(賞与、法定福利費、交通費等含む)

保全事件のみの着手金として30万円で受任した場合の案件当たりの人件費は、

 弁護士のみで行った場合は、10,000×18=180,000

 事務職員と共同作業で行った場合は、10,000×6.5+3,000×14=107,000

※ 単純に事務所としての利益が増える上、弁護士が案件当たりの必要とする業務時間は 6.5/18=0.36 で36%になる。

事務職員の活用による生産性向上例(2)「民事保全事件」(占有移転禁止仮処分事件:東京地裁の例)

] 120分

担保取消は、本案後になるが、保全事件の後始末としてここでは含んで計算

] 120分

- 205 -

Page 22: f °C Ç ·ü Ï...2 ºí 2 *Ë_6õM 1* $ ( q · Ì 1¤ »*Ë D Ø_X8Zb'Å #æ º_0¿*(I S S0 $ ( c>* 1¤ b 2 »" (@ - âI 'g 2 \KZ>* 2 » db »+ 9×u ²0[@6~>* 1¤ /õ *Ë D Øb%Ê'2í

20

③ 遺産分割

具体的業務 弁護士 事務職員 所要時間 備考(その他付記事項)

依頼者からの相談・受任 〇 60分

相手方との交渉(文案等作成含む) 〇 60分 20分×3

交渉経過を踏まえての依頼者との打合せ 〇 30分 10分×3

事務職員との打合せ 〇 〇 30分 初回15分+5分×3

実費費用概算計算 〇 30分 資料取り寄せ費用、登記費用その他

必要書類の取り寄せ 〇 60分戸籍謄本、登記事項証明書、評価証明書等

遺産分割協議書の作成 〇 30分

遺産分割協議書等の依頼者・相手方への郵送 〇 30分 必要書類等の連絡、押印等の指示

法定相続情報証明書の申請(郵送) 〇 60分 申請書類の作成含む

不動産登記申請(相続登記) 〇 60分 申請書類の作成、郵送

銀行での預金の請求 〇 120分 60分×2

依頼者への報告、費用精算 〇 30分

合計時間(概算) 4時間 6.5時間

弁護士が全て1人で行った場合(概算) 9.5時間 打合せ、提出時間等若干減るため

時間単価(収入・賃金の時給換算) 1万円 3000円事務職員時給は、年間労働時間1800時間、人件費を540万円として計算(賞与、法定福利費、交通費等含む)

着手金・報酬30万円で受任した場合の案件当たりの人件費は、

 弁護士のみで行った場合は、10,000×9.5=95,000

 事務職員と共同作業で行った場合は、10,000×4+3,000×6.5=59,500

※ 単純に事務所としての利益が増える上、弁護士が案件当たりの必要とする業務時間は 4/9.5=0.421で42.1%になる。

事務職員の活用による生産性向上例(3)「遺産分割」(調停を行わず交渉のみで成立した事案)

- 206 -

Page 23: f °C Ç ·ü Ï...2 ºí 2 *Ë_6õM 1* $ ( q · Ì 1¤ »*Ë D Ø_X8Zb'Å #æ º_0¿*(I S S0 $ ( c>* 1¤ b 2 »" (@ - âI 'g 2 \KZ>* 2 » db »+ 9×u ²0[@6~>* 1¤ /õ *Ë D Øb%Ê'2í

21

④ 破産管財(東京)

具体的業務 弁護士 事務職員 所要時間 備考(その他付記事項)

申立人・申立代理人との打合せ 〇 〇 30分

事務職員との打合せ 〇 〇 15分

破産開始決定・その他の書類の受領   〇 60分 東京地裁への往復時間含む

管財口座の開設 〇 30分 銀行の待ち時間含む

管財シートの入力 〇 30分  

申立代理人への事務連絡文書の作成・送付   〇 15分

債権届の整理・入力・知れたる債権者への通知等 〇 60分 日々の短時間の作業の合計

債権報告集会準備 〇   30分

債権報告集会 〇   60分  

管財口座の解約 〇 30分 銀行の待ち時間含む

弁護士が全て1人で行った場合(概算) 4.75時間  

弁護士・事務職員が共同で行った場合 2時間 4.5時間

受任した場合の案件当たりの人件費は、

①弁護士のみで行った場合は、10,000×4.75=47500

②事務職員と共同作業で行った場合は、10,000×2+3,000×4.5=33500

①/②=70.5% 弁護士の作業時間は42.1%

配当表の作成 〇 30分  

配当表の確認 〇 30分

通知の作成・発送作業 〇 30分

集計作業 〇 30分

配当作業 〇 60分 銀行での待ち時間含む

弁護士が全て1人で行った場合(概算) 7.75時間  

弁護士・事務職員が共同で行った場合 2.5時間 7時間

受任した場合の案件当たりの人件費は、

①弁護士のみで行った場合は、10,000×7.75=77500

②事務職員と共同作業で行った場合は、10,000×2.5+3,000×7=46000

①/②=59.4% 弁護士の作業時間は32.3%

   

事務職員の活用による生産性向上例(4)

「破産管財(個人の場合債権者数10社程度)」(東京地裁の例)

 簡易配当がある場合

- 207 -

Page 24: f °C Ç ·ü Ï...2 ºí 2 *Ë_6õM 1* $ ( q · Ì 1¤ »*Ë D Ø_X8Zb'Å #æ º_0¿*(I S S0 $ ( c>* 1¤ b 2 »" (@ - âI 'g 2 \KZ>* 2 » db »+ 9×u ²0[@6~>* 1¤ /õ *Ë D Øb%Ê'2í

22

第3 事務職員初級レベルチェックのための制度の新設について(第二部)

1 初級レベルチェックのための制度の必要性について

(1) 初心者の事務職員を養成する観点から

第一部では,事務職員活用による生産性向上の数値化などの具体的な事例などを

通して,事務職員の活用による弁護士業務の生産性を向上させる方法を考察した。

ただし,この事務職員の活用は,一定の程度,法律事務処理に習熟した事務職員

を前提として検討したものであり,具体的には日弁連事務職員能力認定試験の合格

者レベル(DVD-ROM資料 7-11,7-12)の事務職員を基準として検討している。

実際にこのレベルに到達している事務職員を雇用している弁護士であれば,その事

務職員に事例のような業務を担当してもらうことにより生産性向上を図ることが

可能である。しかし,現実にはそのようなレベルに達していない事務職員を雇用し

ていたり,これから事務職員を雇用しようとしている弁護士も多いのではないかと

思われる。このような弁護士にとっては,初心者の事務職員を具体的にどのように

養成していくかが喫緊の課題となる。

日弁連事務職員能力認定試験の合格者などに関する調査をされた大阪大学大学

院法学研究科仁木恒夫教授の分析によると,合格者の事務職員としての経験年数の

分布をみると 3 年以下はほとんどおらず,7~9 年目から 19~21 年目までがほぼ同

じくらいの人数で分散している(DVD-ROM資料 7-7)。すなわち,認定試験の

合格者レベルの事務職員を養成するには最低でも3年程度の期間を要することが明

らかとなっていることからすると,事務職員の能力に応じた段階的な養成をする必

要性があるといえる。

日弁連では,初心者の事務職員の能力向上のための初級研修にも力を入れており,

「日常業務と事務職員の役割」(2010 年),「書類の取り寄せ方・見方」(2012 年),

「裁判制度の仕組みと民事訴訟手続」(2014 年),「事務職員のための弁護士倫理入

門」(2017 年)といった 4 科目の初級研修を行い,内容が古くなったものについて

は順次内容を更新して研修を行っている。これらの初級研修は,日弁連ホームペー

ジの会員専用ページ(総合研修サイト)にアクセスすれば視聴が可能となっている。

この初級研修の内容は,初心者の事務職員が法律事務所における仕事を身につけて

いくための初歩の研修としては十分な内容となっており,まずは,このような初心

者用の研修などを利用してもらうことが有効な方法であるといえる。

しかし,弁護士としては,事務職員がこのような初級研修を受講したというだけ

では,実際にその事務職員の獲得した事務処理能力の程度を知ることはできない。

弁護士が安心して一定の法律事務を事務職員に担当させるには,その前提として事

務職員の習熟度を知る必要がある。事務職員の習熟度を知る方法としては,事務職

員の日常の職務における対応などを通じて推し量るといった方法もあるが,習熟度

を適切に診断することのできるテストを行うことより直接的である。このようなテ

ストは,初心者の事務職員にとっても,自己の法律事務に関する習熟の程度を知り,

今後自分が習得すべき法律事務の内容を確認することができる点で,有益である。

ただし,現在実施されている日弁連事務職員能力認定試験の問題は,高度すぎる

- 208 -

Page 25: f °C Ç ·ü Ï...2 ºí 2 *Ë_6õM 1* $ ( q · Ì 1¤ »*Ë D Ø_X8Zb'Å #æ º_0¿*(I S S0 $ ( c>* 1¤ b 2 »" (@ - âI 'g 2 \KZ>* 2 » db »+ 9×u ²0[@6~>* 1¤ /õ *Ë D Øb%Ê'2í

23

ため,初心者の習熟度を適切に測定するために利用することができない。また,現

状における基本的な法律知識を試す制度として,ビジネス検定 3 級,相続アドバイ

ザー3 級などがあるが,これらの制度も高度なものであり,初心者事務職員の研修

や習熟度の測定にふさわしいものとは言えない。

そこで,初心者の事務職員に理解・習熟してもらいたい事項を○×式の問題とし

て,初心者の事務職員の到達度を測定することができる,「初級レベルチェックシ

ート(仮称)」の必要性を提言する。

この初級レベルチェックシートの問題は,初心者の事務職員に理解して習得して

もらいたい内容である,前述した初級研修で習得すべき法律実務に関する問題に,

社会生活上の常識といえる法律知識に関する問題を加えた範囲の問題とする。ここ

で,社会生活上の常識といえる法律知識に関する問題を加えているのは,初心者の

事務職員に社会生活や経済活動の基本的な常識と言える法律知識についても習得

してもらうことを目的とし,これによって依頼者に対する対応などにおいて,弁護

士業務の補助を的確に行ってもらうことを期待している。

また,現在,初級研修が行われていない弁護士会が多く,日弁連作成の初級研修

DVDも十分活用されていない状況にあるが,初級レベルチェックシートを利用し

た初級試験の実施を契機に初級研修の弁護士会での実施や積極的な研修受講を促

す効果も期待できる。

そして,初心者の事務職員が,初級研修と併せて,このような初級試験を利用す

ることによって,基本的な法律事務や法律知識を習得し,更に,高度な基本研修や

応用研修,既存の事務職員能力認定試験につなげ,第1部で検討するような法律事

務を担当できる事務職員を養成することができると考えられる。

(2) 初級レベルチェックシートの発展的な利用

この初級レベルチェックシートを,事務職員を採用する際に使用することも考え

られる。すなわち,弁護士が事務職員を採用する際に,採用する事務職員に期待す

る法律事務に関する習熟度はそれぞれ異なると考えられるが,採用希望者が法律事

務の経験者であったような場合,採否判断の資料とするために,初級レベルチェッ

クシートを使用して採用希望者の法律事務に関する理解度を知ることができる。

また,事務職員として法律事務所に就職することを希望する人たちなどが,初級

試験の問題を使用して,勤務するのに必要な能力を取得することに役立てることも

期待できる。

(3) 検討する内容など

以上のような観点から,「初級レベルチェックシート(仮称)」を初心者の事務職

員の初級研修を補完する制度として実施していくこと,また実施する場合の具体的

な問題の内容や,どのように問題の公開などをしていくのが利用しやすく,有益な

ものとなるのかという点などに関しても検討したいと考えている。

2 現状存在する民間の能力認定制度の検討

本分科会では,「初級レベルチェックシート(仮称)」の創設を提言するが,現状既

に存在している民間の能力認定制度に同様のものがあるとすれば,それらを利用すれ

- 209 -

Page 26: f °C Ç ·ü Ï...2 ºí 2 *Ë_6õM 1* $ ( q · Ì 1¤ »*Ë D Ø_X8Zb'Å #æ º_0¿*(I S S0 $ ( c>* 1¤ b 2 »" (@ - âI 'g 2 \KZ>* 2 » db »+ 9×u ²0[@6~>* 1¤ /õ *Ë D Øb%Ê'2í

24

ば足りる。

そこで本項では,現状存在する民間の能力認定制度の例として,以下の3つを紹介し,

これらが初心者の事務職員の習熟度を測定する制度としてふさわしいものであるかに

ついて検討する。

(1) ビジネス実務法務検定試験3級

ビジネス実務法務検定試験は,東京商工会議所が主催するものであり,3級の基

準は,ビジネスパーソンとして業務上理解しておくべき基礎的法律知識を有し,問

題点の発見ができることとされている。

試験問題は,「企業取引の法務」など,もっぱら企業活動に関連する範囲から出

題されるが,一般民事及び家事事件を主たる業務とする多くの法律事務所では,事

務職員が企業活動に関連する法律実務等を習得する必要性も相対的に低く,本検定

試験は,事務職員の習熟度を測るテストとしては実践的ではない。また,例えば独

占禁止法の内容を問う問題,知的財産権に関する問題といった専門的かつ相当高度

な問題も出題されており,初心者の事務職員に最低限度理解し習得してもらいたい

基本的な法律実務等の習熟度を測定する試験としては,利用しにくい。

(2) 銀行業務検定試験相続アドバイザー3級

相続アドバイザーは,銀行業務検定協会が主催する検定試験であり,3級の試験は,

主として金融機関の窓口担当者等を対象に,相続に関する相談業務において求めら

れる基礎知識,実務知識について,その習得程度を測定するものとなっている。

弁護士業務の中でも相続は離婚と並んで家事事件の中心的業務の一つであり,事

務職員に相続に関する法律実務等を習得してもらいたいという要求は大きいが,本

検定試験の問題を見れば,金融実務に関する問題など,弁護士業務と関連性の低い

出題も多数あり,他方,法律知識を問う問題でも,例えば相続税法や戸籍法の知識

を問うなど難易度の高い出題がなされており,初心者の事務職員が習得すべき基本

的な法律実務等の習熟度を測定するテストとしては利用しづらい。

(3) 法学検定試験ベーシック<基礎>コース

法学検定試験は,法律学の知識・能力の客観的到達度を測るものとして,財団法

人日弁連法務研究財団及び社団法人商事法務研究会が共同で組織する法学検定試

験委員会が主催している。

ベーシック<基礎>コースは,法学入門・憲法・民法・刑法といった基本法につ

いての基礎的知識・能力を測定する試験として実施されているが,出題内容はあく

まで基本的な法律学の知識を問うものであり,弁護士業務の補助的役割を期待され

る事務職員に,最低限度理解し習得してもらいたい基本的な法律実務及び社会生活

上の常識的な法律知識の習熟度を測定するものとして機能的に不足していること

は否定できず,法律事務所において普遍的に利用される可能性は低いと思われる。

以上,現状存在する民間の能力認定制度 3 例について検討したが,いずれも初心

者の事務職員の習熟度を測定するテストとしては,必ずしもふさわしいものとはい

えず,新たな制度である「初級レベルチェックシート(仮称)」の創設が要望され

る。

- 210 -

Page 27: f °C Ç ·ü Ï...2 ºí 2 *Ë_6õM 1* $ ( q · Ì 1¤ »*Ë D Ø_X8Zb'Å #æ º_0¿*(I S S0 $ ( c>* 1¤ b 2 »" (@ - âI 'g 2 \KZ>* 2 » db »+ 9×u ²0[@6~>* 1¤ /õ *Ë D Øb%Ê'2í

25

3 初級レベルチェックシート(仮称)の検討

法律事務所に採用されて 1 年程度の事務職員に期待される知識を得るための研修と

して,既に日弁連では初級研修(「日常業務と事務職員の役割」,「書類の取り寄せ方・

見方」,「裁判制度の仕組みと民事訴訟手続」,「事務職員のための弁護士倫理入門」)が

存在している。当分科会では,試みに,この研修を履修した者のレベルを対象とする

初級レベルチェックシート 30 問(案)を作成した。これは,初級研修を受講した事務

職員に知っておいてもらいたい知識の一例であり,このようなチェックシートは,事

務職員の到達度を図る意味で利用価値がある。

【初級レベルチェックシート(初級研修内容より)】

問1 民事訴訟には,その内容により「給付の訴え」「確認の訴え」「形成の訴え」の3

種類があるが,離婚請求訴訟は「確認の訴え」である。

問2 民事訴訟における事物管轄は,原則として訴訟物の価額(訴額)が140万円以下

の事件の第一審は簡易裁判所が管轄し,それを超える場合や非財産上の請求,価額

算定困難(算定不能)なものは訴訟物の価額を160万円とみなされ,常に地方裁判

所の管轄となる。

問3 訴えを提起された被告が答弁書を提出せず,口頭弁論期日にも出頭しないと,原

告の主張をそのまま認めたものとみなされ,通常は,原告勝訴の判決が言い渡され

る。

問4 当事者,法定代理人,訴訟代理人は,送達場所を書面で届けなければならない。

被告の送達場所は,まず裁判記録に記載された住所などに送達し,その送達がで

きた場合で被告から特に送達場所の届け出がない限り,原則として直前の送達を

した場所が被告の送達場所となる。

問5 被告に対する1回目の送達が「留置期間徒過」により送達できなかった場合,住

民票に異動がなければ,被告が当該住所地に居住していることは間違いないので,

直ちに書留郵便に付する送達が可能である。

問6 当事者の主張や争点の整理,証拠関係の整理などのために行われる期日を弁論準

備手続期日というが,この期日も原則として公開の法廷で行われる。

問7 裁判上の書類の提出方法は,裁判所に正本と副本を提出して,裁判所から相手方

に副本を送達してもらう方法と,直接裁判所や相手方にファクシミリ等で送付す

る方法(直送)がある。主な送達すべき書類は,訴状,答弁書,訴えの取下げ書

があり,直送しなければならない(又は送達することができる)書類には,準備

書面,証拠説明書,書証の写しがある。

問8 民事事件の記録謄写は,当事者や利害関係がない第三者でも申請することができ

る。

問9 原告は,判決が確定するまでは,訴えの全部又は一部を取下げすることができる

が,口頭弁論や弁論準備手続期日を実施した後の取下げは被告の同意を得る必要

がある。

問10 民事裁判の判決言い渡しは,訴訟当事者が出頭しないと行うことができない。

- 211 -

Page 28: f °C Ç ·ü Ï...2 ºí 2 *Ë_6õM 1* $ ( q · Ì 1¤ »*Ë D Ø_X8Zb'Å #æ º_0¿*(I S S0 $ ( c>* 1¤ b 2 »" (@ - âI 'g 2 \KZ>* 2 » db »+ 9×u ²0[@6~>* 1¤ /õ *Ë D Øb%Ê'2í

26

問11 被告が口頭弁論において原告の主張に対し争わずなんらの防御もしない場合や

公示送達で呼び出しを受けて口頭弁論に出頭しない場合には,判決書の原本に基

づかずその場で判決の言い渡しをすることができ,その場合には判決書の作成に

変えて,判決の内容を口頭弁論期日調書に記載する。これを「調書判決」という。

問12 民事裁判の控訴は,判決書又は調書判決が送達されてから2週間以内に提起しな

ければならないが,その期間満了日が土曜日,日曜日,国民の祝日,年末年始の

12月29日から1月3日などに当たる場合は,その翌日まで期間は延長する。

問13 第一審の地方裁判所で言い渡された判決に不服がある場合,控訴状は控訴期間

内に第二審を取り扱う高等裁判所へ提出する。

問14 上告や上告受理申立ては,第二審(控訴審)の判決に対して不服があれば,い

かなる理由であっても提起でき,審理されることが保障されている。

問15 民事調停は,裁判官のほか民間から選ばれた調停委員も参与し,社会人として

の良識に基づき,時には法律の枠を離れ,当事者間の円満な話合いによる解決を

図る制度である。

問16 支払督促は,金銭その他の代替物などの給付を目的とする請求権について,簡

易,迅速に債務名義を得るための手続きであるため,債権者の一方的な申立てと

書面審理により支払督促が発布されるが,債務者が異議を申立てると通常訴訟に

移行する。

問17 不動産登記事項証明書(不動産登記簿謄本)は,土地の地目や面積,建物の種

類や構造等のほか,所有者の住所,氏名,抵当権等の権利が表示されているため,

個人情報保護の観点から,所有者本人又は利害関係人,その他これらの者から委

任を受けた代理人でないと交付されない。

問18 不動産登記について,土地の地番や家屋の家屋番号は必ずしもその住所とは一

致しない。

問19 不動産登記事項証明書の「表題部」には,所在,種類,大きさ(面積)の他,

所有権に関する事項が記載されている。

問20 法人登記事項証明書は,法人の代表者の資格を証する書面として,裁判や登記・

供託の申請に必要となる。

問21 登記簿は,他の法務局の管轄に会社本店を移転させたり,清算結了登記を行う

などすると閉鎖登記簿となるが,その他コンピュータ化によっても古い登記簿は

閉鎖となる。

問22 法人登記事項証明書は,法人の本店所在地を管轄する法務局(地方法務局・支

局,出張所)に交付申請しなければ取得できない。

問23 大日本帝国憲法下の戸籍で戸主が家督相続などにより代わったり,現在の戸籍

で本籍を他の市区町村に移した場合,その戸籍は登記簿から除かれて「除籍」と

なるが,同じ戸籍に筆頭者以外の者が残っていても筆頭者が死亡した場合は,そ

の戸籍も同様に「除籍」となる。

問24 法律の改正などに伴い新しく戸籍を作り直した場合,従来の戸籍は改製原戸籍

として扱われる。

問25 相続人から委任を受け,代理人として遺産分割調停申立てを行う準備として相

- 212 -

Page 29: f °C Ç ·ü Ï...2 ºí 2 *Ë_6õM 1* $ ( q · Ì 1¤ »*Ë D Ø_X8Zb'Å #æ º_0¿*(I S S0 $ ( c>* 1¤ b 2 »" (@ - âI 'g 2 \KZ>* 2 » db »+ 9×u ²0[@6~>* 1¤ /õ *Ë D Øb%Ê'2í

27

続人確定のために戸籍を申請する場合,使用する職務上請求書は日本弁護士連合

会統一用紙のうち「戸籍謄本等職務上請求書(A用紙)」である。

問26 住民票に記載された全員が他の市区町村へ転出,あるいは死亡すると住民票は

除かれた住民票(除票)となるが,この保存期間は5年間である。

問27 戸籍単位でその戸籍に記載された人の住民登録上の住所を記載したものを戸籍

の附票というが,この戸籍の附票を取り寄せる場合は住民票と同様に住民登録上

の住所がある市区町村に請求する。

問28 弁護士委任事件処理のために不動産の固定資産評価証明書を取り寄せる場合,

通常は日弁連の統一用紙を使用するが,使用目的さえ明らかにすれば,あらゆる

事件のために取り寄せることが可能である。

問29 法律事務所で働く者は,依頼者の秘密を漏らさないことは当然であるが,加え

て,どんなに些細なことであっても事務所内の情報(取り扱い事件や弁護士自身

に関する内容なども含む)を外部に発信しない,ということは法律事務職員の心

構えとして重要である。

問30 法律事務職員が弁護士に無断で法律事務を処理する行為は,弁護士法72条違反

の非弁行為に該当するが,非弁を行った事務職員のみが責任を追及され,弁護士

が責任を負うことはない。

正答 1×,2〇,3〇,〇,5×,6×,7×,8×,9〇,10×,

11〇,12〇,13×,14×,15〇,16〇,17×,18〇,19×,20〇,

21〇,22×,23×,24〇,25〇,26〇,27×,28×,29〇,30×

なお,正答の理由,解説は,付属のDVDに収められた資料7-13を参照されたい。

上記の設問例のレベルは,法律事務所で事務処理を正確・円滑に行うために必要と

なる知識を中心としている。しかし,2で述べたように,それだけではまだ不十分であ

る。弁護士業務とは縁のなかった全くの素人が事務職員となることが多いのであり,

新規採用職員に弁護士業務の守備範囲や,その業務の中身が何なのか,誤解なく知っ

てもらう必要がある。しかし,これらは常識のようではあるが,一般社会人に誤解さ

れていたり,理解されていなかったりする知識が多い。言うなれば社会常識となるべ

きだが,誤解をされがちな「法律のトリビア」のジャンルも理解してもらう必要があ

るのである。これらの「トリビア」とされるべき知識を知っていなければ,事務職員

が弁護士と依頼者との接点としての役割を十分に果たし得ないからである。そのため

の新たな初級チェックシートの必要性や有用性についても本分科会において検討した

い。

4 初級レベルチェックチェックシート(仮称)の活用可能性

(1) 初級レベルチェックシートの目的

初級レベルチェックチェックシートは,法律事務所の事務職員として採用されて1

年程度ないしそれ以内の者を対象としている。

法律事務所の事務職員を採用にあたって,法律的素養を持ち合わせていることを

採用条件とすることは少なく,むしろ,採用対象者のコミュニケーション能力や性

- 213 -

Page 30: f °C Ç ·ü Ï...2 ºí 2 *Ë_6õM 1* $ ( q · Ì 1¤ »*Ë D Ø_X8Zb'Å #æ º_0¿*(I S S0 $ ( c>* 1¤ b 2 »" (@ - âI 'g 2 \KZ>* 2 » db »+ 9×u ²0[@6~>* 1¤ /õ *Ë D Øb%Ê'2í

28

格を選定理由としていることが多い。多くの事務職員は,法律事務所に採用されて

初めて,弁護士業務の多様さに気が付き,顧客である一般市民や企業のどのような

問題に弁護士が相談を受け,どのように事案の解決に当たっているのかの概略のイ

メージを作っている。このレベルを期待できるのは,法律事務所に採用されて6か

月ないし1年程度経過した段階であると言えよう。

(2) 中小企業経営者等の弁護士へのアクセス障害の実態

ここで,視点を変えて,弁護士のユーザーである企業や市民の立場から考える。

弁護士に依頼するべき法律問題が何なのか,弁護士に依頼したらどのような方向

性で解決されるのか,といったイメージを概略でも持ち合わせてもらうことは,依

頼者が弁護士にアクセスするために欠かせない前提であることは言うまでもない。

しかし,法務部を持つような法律事務に関するノウハウを有する企業は別として,

一般の中小企業経営者や市民のレベルでは,このような理解を持ち合わせておらず,

弁護士に対するアクセス障害の一要素となっているのではないだろうか。

日弁連では,2007年及び2017年に中小企業の弁護士ニーズ全国調査を行った。

この調査によると,「この10年間で弁護士を利用したことがない」と回答した割合は

47.7%から55.2%に上昇している。そのうえで,「弁護士を利用したことがない理由」

としては,「弁護士に相談すべき事項がないから」との回答が86.3%と極めて大きな

割合であるうえに,10年前の調査では74.8%であったものから10%以上上昇した。

また,2017年調査では,困りごとを解決するために「弁護士を利用せずに社外の

専門家等に相談した理由」として,「弁護士の問題とは思わなかったから」との回答

が52.3%で10年前の調査の46.6%から上昇し,「社内で解決し弁護士に相談しなかっ

た理由」として「弁護士の問題とは思わなかった」との回答が51.5%で,10年前の

調査の20.6%を大幅に上回っている。しかも,「困りごと」があるとして挙げている

多くの事項が法律問題であるにもかかわらず,である。

この調査結果は,「多くの中小企業経営者において,弁護士の業務内容が一般に

知られていないことに起因するものと考えられ,弁護士の活動内容として,中小企

業の抱える法的問題が対象となっていることを周知し,その活動内容を理解しても

らえるような取組が必要である」と,2017年調査における提言においても分析され

ている。

(3) 初級レベルチェックシートの中小企業経営者に対する適応

弁護士業務の内容を中小企業経営者や一般市民に十分に認知してもらうことは,

弁護士事務所の新規採用事務職員の教育・指導のツールである上記初級レベルのチ

ェックシートの目的と共通している。そこで,各弁護士が,中小企業や一般市民に

アプローチするためのツールとして,営業用にこのチェックリストを活用すること

を提案したい。既に紹介したチェックリストの問題から,弁護士業務特有の「書類

の見方・取り寄せ方」や「事務職員倫理」に関する問題を除いた,初歩的な法律知

識に関する問題や弁護士の役割に関する問題を,一般企業や市民に対する講演会な

どで,最初の 5 分でチェックリスト問題を解いてもらい,その解説を行う形式で対

応する,あるいは,自らのホームページ内で紹介して弁護士の有用性を認識しても

らう,などの利用方法も考えられる。

- 214 -

Page 31: f °C Ç ·ü Ï...2 ºí 2 *Ë_6õM 1* $ ( q · Ì 1¤ »*Ë D Ø_X8Zb'Å #æ º_0¿*(I S S0 $ ( c>* 1¤ b 2 »" (@ - âI 'g 2 \KZ>* 2 » db »+ 9×u ²0[@6~>* 1¤ /õ *Ë D Øb%Ê'2í

29

なお,試験的に複数の中小企業経営者が集まった際に以下の問題を数分で解いて

もらい,解説をした。

【法律基礎知識チェックリスト】

※使用した全 15 問の中から紙面の都合上 10 問を抜粋

以下の各設問が正しいか間違っているか,〇か×で答えてください。

1 会社の従業員が金銭を横領した事件で,会社と従業員との間で示談ができなかっ

た場合会社としては弁護士に頼んで告訴手続きをしたうえで,検察官が損害賠償請

求を加害者に対して行う。

2 地方裁判所の訴訟で,誤った事実認定をされ敗訴したため,高等裁判所に控訴し

たが,高等裁判所でもまったく同じ事実認定で敗訴した。その場合には,誤りを訂

正してもらうために最高裁判所に上告することができる。

3 裁判所から「訴状」という書類が届いたが,その記載している内容が明らかにで

たらめだった。その場合,特別な対応をせずに無視しておいても法律的には特別な

問題が起こることはない。

4 配偶者と離婚をするために協議をしているが,相手がなかなか話し合いに応じよ

うとしない。その場合,一般的には,家庭裁判所で離婚訴訟を提起する前に,まず

は,離婚調停を申し立てて調停手続きをするものである。

5 婚姻したが,しばらくして夫が妻を見捨てて家出をしてどこに住んでいるかわか

らないような場合,妻は相手と協議することもできないし調停することもできない

から戸籍上は離婚することができない。

6 簡易裁判所での調停は,あくまでも話合いであって,申立人の言い分が法律的に

正しくても相手方が聞く耳を持たなければ成立しない。しかし,調停委員は双方を

説得する方法に長けていることが多いので,それなりに利用価値がある。

7 会社法の手続きは会社の組織に関することがほとんどであり,会社法に違反した

場合に民事事件として法律上強制されることがあるが,刑事事件として処罰される

ことはない。

8 行政からの営業許可を受けて営業している会社が,許可を取り消される場合には,

聴聞といって言い分を述べる機会が与えられるが,このような行政処分に関係する

場でも弁護士に委任して,代理人として対応してもらうことができる。

9 債権者から買掛金を請求されているが,会社の資金がないため支払いを待っても

らうようお願いしたところ,「社長が連帯保証してくれたら待ってあげる」と言われ

たため,社長が,「連帯保証する」と口頭で言ったところ,それがしっかり録音され

て証拠となった場合には支払い義務がある。

10 会社の広告をインターネット上で出すよう広告会社から勧誘された。「1カ月以

内に所定の用紙で解約してくれれば1カ月は無料だ」と約款に書いてあったので無

料期間だけのつもりで締結したが,所定の用紙が送られたのは1カ月が経過する3

日前であり,解約通知の提出が1日遅れた。この場合には,無料解約を諦めること

になる。

- 215 -

Page 32: f °C Ç ·ü Ï...2 ºí 2 *Ë_6õM 1* $ ( q · Ì 1¤ »*Ë D Ø_X8Zb'Å #æ º_0¿*(I S S0 $ ( c>* 1¤ b 2 »" (@ - âI 'g 2 \KZ>* 2 » db »+ 9×u ²0[@6~>* 1¤ /õ *Ë D Øb%Ê'2í

30

正答 1×,2×,3×,4〇,5×,6〇,7×,8〇,9×,10×

これらは,法律事務所に就職して1年程度あるいはそれ以内の事務職員に理解して

おいてもらいたい法律知識の内容であり,法律の基礎的知識と言えるような事項であ

る。同時に,これらの問題は,中小企業経営者に対して弁護士や司法の活用を積極的

に推進させるよう誘導されるように工夫した設問となっている。解答してもらった結

果,中小企業経営者にとって,最高裁判所が法律審の裁判所であることを問う2番や,

民事上の保証の要件を問う9番については著しく正答率が低く,その他の問題でも各

設問について解説をすることで,中小企業経営者の司法や弁護士業務への関心を強く

引き付けることができたのが実感であった。

このように,初級レベルチェックシートの活用は,事務職員の養成だけではなく,

弁護士業務の広報のためのツールとしての活用も期待でき,幅広い利用可能性がある

と考えられる。

- 216 -