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2019年9月
EUのサステナブルファイナンス
の動向
EU アクションプラン
1
左側右端
EUにおけるサステナブルファイナンスの検討
欧州委員会は、2016年12月、サステナブルファイナンスについて検討するハイレベル専門家グループ(HLEG)を設置し、2018年1月、最終報告を公表。
最終報告を基に、2018年3月、欧州委員会は10項目からなるアクションプランを採択。
各アクションプランは、法規制案の策定及び専門家グループ(Technical Expert Group:TEG)での議論等により進められている。
アクションプラン項目 これまでの経過 今後の予定
①サステナブル活動のEU分類システム(タクソノミー)の確立
法規制案の欧州議会通過(2019年3月) 年内に欧州理事会承認後、法制化予定
TEGよりテクニカルレポート及びユーザーガイダンスの公表(2019年6月)
年内に更新したテクニカルレポートを欧州委員会に提出予定
② グリーン金融商品の基準及びラベルの創設TEGよりEUグリーンボンド・スタンダードに関する報告書の公表(2019年6月)
年内は、EUタクソノミーとの関係や検証制度等に関する追加検討を実施予定
③ サステナブルプロジェクトへの投資の促進欧州議会で投資プログラム”InvestEU”の承認(2019年4月)
2021年から2027年に運用予定
④ 投資アドバイスの際のサステナビリティの組み込みMiFIDII 及びIDDの改正内容の確定(2019年1月)
アクションプラン7規定採択後に正式採択
⑤ サステナビリティベンチマークの開発法規制案の欧州議会通過(2019年3月) 年内に欧州理事会承認後、法制化予定
TEGより中間報告の公表(2019年6月) 19年9月末までに最終報告を公表予定
⑥ 格付及び市場調査におけるサステナビリティの統合
⑦ 機関投資家及びアセットマネジャーの義務の明確化 法規制案の欧州議会通過(2019年4月) 年内に欧州理事会承認後、法制化予定
⑧ 健全性要求へのサステナビリティの取り込み
⑨サステナビリティ情報開示の強化及び会計基準の策定
TEGより気候関連情報開示ガイドラインの公表(2019年6月)
欧州企業報告ラボ(European Corporate Reporting Lab)に気候関連レポーティングのタスクフォース設置・委員確定(2019年2月)
気候関連レポーティングの評価を実施予定
⑩サステナブルコーポレートガバナンスの促進及び金融市場における短期主義の抑制
欧州監督当局への調査依頼 2019年12月までに報告書作成予定
凡例:
本資料の対象
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1. サステナブル活動のEU分類システム(タクソノミー)の確立
概要
タクソノミーは、特定の経済活動が環境的にサステナブルかどうかを明確にする分類。セクター毎に、経済活動が気候や環境に良い経済活動かどうかを評価
2019年中にサステナブルファイナンス・プラットフォーム(Platform on Sustainable Finance)を立ち上げ、タクソノミーの更なる開発(2021年以降には社会的なサステナブル・タクソノミーにも着手)を行う。本プラットフォームは、TEGに取って代わる。
タクソノミーは、セクターへのガイダンス、活動、スクリーニング基準及びメトリクスを提供。タクソノミー開発・改訂は科学の進展・テクノロジーの変化に応じて行われる。
3
メリット・ グリーン、サステナビリティの定義の一貫性、ハーモナイゼーションをもたらす・ 応用した使用方法
グリーン金融商品に対する国のラベリングスキームのガイドブックとしての使用市場関係者がグリーン金融商品を開発する際の参照
アクションプランにおけるタクソノミーの役割・貢献分野
グリーンローン等の対象資産の特定
金融商品開発機関等向けの共通の基礎提供
持続可能な発展に向けた資金の流れの把握
ポートフォリオのサステナビリティ関連エクスポージャーの理解
サステナビリティのカテゴリー別、企業収益・活動の分類
TCFDと共に、非財務情報開示の促進
スケジュール2018年5月 タクソノミーの大枠を決める規則案公表
2018年6月 タクソノミーに関するより詳細な内容を議論する専門家グループ(TEG)設立
2018年12月 TEGより、気候変動緩和と適応の一部タクソノミーに関するレポートの公表
2019年3月 タクソノミー修正規則案がEU議会を通過。年内に、修正規則案が欧州理事会でも承認され、法制化される予定。
2019年6月 TEGレポートの公表。フィードバック及び更なる開発の後に年内に欧州委員会に提出される予定。
左側右端
2. グリーン金融商品の基準及びラベルの創設
概要
サステナブルファイナンス商品のスタンダード、ラベルの開発(グリーンボンド含む)。EUエコラベル規制がEU全域のラベルスキーム創出に用いられる。SRIファンドのラベルも検討。
EUグリーンボンド・スタンダード策定に向け、2018年6月にTEGを設置。
2019年3月6日、TEGが最終報告書を公表、パブリックコメントを経て、同年6月に最終報告書公表。
(参考) EUエコラベル
運営主体 EC, European Union Eco-labelling Board (EUEB)
設立 1992年
概要 ライフサイクル(原材料抽出、生産、販売、廃棄)において高い環境基準を満たす商品・サービスに対してラベルの使用を認める。26の製品グループ(クリーニング製品、紙、服、旅行者向け宿泊等、幅広い分野が対象)をカバーしており、2018年9月現在で、72,227の製品・サービスに対して2,167のライセンスを授与。
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グリーンボンド基準に関する最終報告書の内容
• EUグリーンボンド基準は任意の基準
• EUグリーンボンド基準の4要素• 調達資金の使途は、EUサステナビリティ・タクソノミーへの適合を要する。ただし、イノベーションの性質、プロジェクトの複雑性、
地域性によっては直接適用できない場合がある• グリーンボンドフレームワークを公表し、グリーンボンドの資金使途・プロセス・報告の詳細を解説• 資金使途及び環境へのインパクトに関する開示の義務化• 認定された外部評価機関からの検証取得の義務化
左側右端
3. サステナブルプロジェクトへの投資の促進
概要
サステナブルなインフラプロジェクトの開発を含め、EU及びパートナーシップ国において、サステナブル投資に向けて効率性と影響を改善していく。
インフラ投資は、サステナブルな社会への移行の前提条件であり、公的資金とともに民間資金の動員が必要。サステナブルな投資に向けた仕組みとして、欧州戦略投資基金(European Fund for Strategic Investments: EFSI)があるが、40%は気候変動関連への投資を目標としている。
2020年以降、EUの投資サポートの効率性向上に向けて、EUの市場ベースの商品を統合させる単一のファンドを設立する考えがある。
<メリット>財務的サポート、関連する技術的なアシスト、予算的な保証による優先順位付け、投資家・受益者・欧州委員会・その他パートナー(欧州開発銀行や銀行、財団、慈善団体など)との交流
InvestEU
2019年4月、欧州議会で投資プログラム”InvestEU”が承認された。InvestEU Fundは官民投資の促進を目的としたもので、2027年までの投資対象として大きく4つを挙げており、その一つがSustainable Infrastructureとなっている。
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これまでEFSI(※)など14スキームで投資を実施していたものを”InvestEU”として一括して投資活動を行っていく計画である。
(※)欧州戦略投資基金(EFSI)は、欧州投資銀行、欧州投資ファンド、欧州委員会により投資ギャップ解消を目的として設立されたイニシアティブ。再エネや資源効率もEFSIの注目分野である。
左側右端
4. 投資アドバイスの際のサステナビリティの組み込み
概要
運用会社と保険会社が顧客にアドバイスを行う際、顧客のESG選好などを考慮することを求めるために、商品指令(MiFID II)、保険販売業務指令(IDD)を修正する。
スケジュール2018年5月に修正案公表。フィードバック期間をふまえ、2019年1月4日に修正版を公表。
サステナブル投資、サステナビリティリスクに関する新しい開示規定(アクションプラン7)の法制化が前提。
6
・ 一部の条項に、ESG選好、ESGに対する考え方という文言を追加。→ 投資会社は、顧客に提供する金融商品を提供する際、必要に応じてESG選好を考慮に入れた場合には、
その内容についても説明する必要がある。→ 投資アドバイスの際に、顧客に報告するレポートに、顧客の投資目的が顧客のESG選好を考慮することによって
達成できるかどうかについても説明する。
MiFID IIの主な変更点
・ 一部の条項に「ESG選好」「ESGに対する考え方」という文言を追加。→ 保険仲介業者や保険会社は、適合性評価の中で、顧客または潜在的顧客のリスク選好、リスクプロファイル、
投資目的、関連する場合には、ESG選好の評価も実施しなければならない。→ 適合性評価に関する報告の中で、顧客のリスク耐性や投資目的がESG選好を考慮することで達成できるか
どうかの情報も含む。
IDDの主な変更点
左側右端
5. サステナビリティベンチマークの開発
概要
ベンチマークのガイダンスや規制はサステナビリティの問題を確実に考慮したものに改定することが不可欠との考えのもと、HLEGは以下の点を提唱している:
- 証券監督者国際機構(IOSCO)は、ベンチマークの原則を、サステナビリティやガバナンス、特に気候変動に対する考え方を踏まえたものに更新すべき
- インデックス・プロバイダーは、広く使用・参照されているベンチマークについて、気候及びサステナビリティのパラメーターに対するエクスポージャーの詳細を開示すべき
- 欧州監督当局及び各国監督当局は、機関投資家がESG目標にあったベンチマークを使用する程度をモニタリングすべき
気候タクソノミーが確立された後、炭素インパクトを計算するための堅固な方法論に基づき、低炭素発行者からなるベンチマークを統一させるイニシアチブを設置予定
法規制案の内容
新たな気候ベンチマーク(EU climate transitionベンチマーク・EU Paris-alignedベンチマーク)の開発
全てのベンチマークに対してESG開示を規定
委任法にて・それぞれのベンチマークの最低基準・ESG開示の項目を制定予定
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スケジュール
2018年5月 ベンチマークに関する規則案の公表
2018年6月 タクソノミーに関するより詳細な内容を議論する専門家グループ(TEG)設立
2019年3月 ベンチマーク修正規則案が欧州議会を通過。年内に、修正規則案が欧州理事会でも承認され、法制化される予定。
2019年6月 TEGより中間報告を公表。フィードバックを経て、2019年9月に最終報告を公表予定。
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6. 格付及び市場調査におけるサステナビリティの統合
概要
格付や市場調査等で、企業のESGやサステナビリティリスクの管理能力を評価する動きが出てきているが、市場で広く受け入れられている企業のサステナビリティを評価する基準がなく、用いられている手法に関する透明性が重要。欧州委員会では、格付・市場調査に対して、サステナビリティを融合させるための取組を講じる。
信用格付機関規制(Credit Rating Agency Regulation)改定のメリットについて検証明示的にサステナビリティ要素を評価に取込むことを格付機関に要求するように変更
スケジュール2018年第2四半期に様々なステークホルダーに接触を開始し、2019年第3四半期までに進捗を報告予定
関連する3つの取組
欧州証券市場監督局(European Securities and Market Authority: ESMA)と協働で以下に取り組む(2019年第2四半期まで)① どれほどESGが考慮されているか現在の格付市場の実態を評価② 格付機関の開示に関するガイドラインにESG情報の盛り込み、必要があれば、追加のガイドラインや手法も考慮
サステナビリティ格付、リサーチの包括的な研究 (2019年第2四半期まで)
研究分野手法、サステナビリティ格付や市場調査サービスに係る市場構造、サステナビリティ調査評価・スコアリングの範囲、調査・スコア提供者の独立性、サステナビリティ格付や市場調査拡大促進に有効な手段 等
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左側右端
7. 機関投資家及びアセットマネジャーの義務の明確化
法規制案 内容
概要
受託者責任に関してEUが制定している法律等は、機関投資家やアセットマネジャーが投資プロセスにおいてサステナビリティ要素とリスクを考慮する点において、十分に明確になっていない、もしくはセクター間で統一されていない。
結果として、開示も不十分で、最終受益者は投資方針決定に関してサステナビリティに関連する問題を考慮するための情報が十分ではない。
欧州委員会は、2018年5月24日、機関投資家及びアセットマネジャーの義務の明確化に関する法規制案を公表。
法規制案は、2019年4月1日の欧州委員会、欧州議会、欧州理事会の三者間合意(トリローグ)を経て、2019年4月18日に欧州議会で決議。欧州理事会での承認後に法制化予定。
対象者:・金融市場参加者(オルタナティブ投資ファンドマネジャー、投資会社、企業年金基金、年金商品提供者、
VCファンドマネジャー、UCITS(※)のマネジメント会社)※UCITS:EUの法律に従って設立・運用されている投資ファンド
・保険仲介業者、サステナビリティリスク組込に関する投資アドバイスを提供する投資会社・炭素排出量削減などのサステナブル投資の目的を持つ金融商品
内容:・投資意思決定プロセスへサステナビリティリスクを組み込むことのポリシーの文章での公表
・各種書面における環境・社会項目の促進及びサステナブル投資に関する透明性(契約前の開示、ウェブサイト、 定期報告書)
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左側右端
8. 健全性要求へのサステナビリティの取り込み
概要
銀行、保険会社、年金などは経済の資金源、貯金・投資のチャネルとして重大な役割を担っており、サステナブルな経済への移行に関して重要であるとともに、サステナブルではない経済開発に関連したリスクにさらされている。
気候を含む環境要素に関連したリスクを、既存のプルデンシャル規制と齟齬が出ないように盛り込む必要がある。
タクソノミーの開発に応じて、サステナブル資産のリスク評価をより適切に自己資本規制に反映させるか検証する。
具体的取組
1. 気候・その他環境要素に関連するリスクを、金融機関のリスクマネジメント方針と、自己資本規制及び指令における資本要件の潜在的調整項目に含めることの実現可能性を検証する。
自己資本規制
気候・その他環境要因に関連するリスク
プルデンシャル・フレームワーク
タクソノミー
2. 保険会社のサステナブル投資に対するプルデンシャル・ルールの影響についての意見を欧州保険・企業年金監督局(EIOPA)に提供(特に、気候変動緩和)
ソルベンシーⅡ指令の下、欧州議会、欧州理事会に2021年1月までに提出するレポートに、当該意見を考慮する
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9. サステナビリティ情報開示の強化及び会計基準の策定
気候関連情報開示ガイドライン
ガイドラインの特徴• 気候関連情報開示ガイドラインは、EUの企業がEUの非財務情報開示指令に準拠すると同時に
TCFDの提言の内容も開示できることを目的としたもの• NFRD対象企業約6,000社に広く活用されることを目的に、推奨する開示内容は、13の開示推奨項目と
10のKPIに限定
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スケジュール
2019年1月 TEGより最終報告の公表
2019年6月 気候関連情報開示ガイドラインの公表
概要
長期的な投資の意思決定には、長期のサステナビリティのリスクと機会に関する適切な開示が必要だが、現在の会計ルールでは、サステナブルな投資の意思決定に対して有効ではないとの懸念がある。
アクションプランでは、以下の取組を予定:- 非財務情報に関するガイドラインの更新- グッドプラクティスを共有し、企業報告の改革を目指す欧州企業報告ラボ(European Corporate
Reporting Lab)の設立- アクションプラン7(機関投資家及びアセットマネジャーの義務の明確化)に関連して、アセットマネジャーや
機関投資家に戦略や投資意思決定プロセスにおけるサステナビリティ要因の考慮についての開示要求- 欧州財務報告諮問グループ(EFRAG)に対し、サステナブル投資に関する新規/更新されたIFRSの評価依頼- フィットネスチェックの中で、国際会計基準規則に関連した事項についての評価
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10. サステナブルコーポレートガバナンス促進・金融市場の短期主義の抑制
概要
企業が戦略的に新しいテクノロジー開発やビジネスモデルの強化などを行うことで、サステナブル経済に貢献することやリスクマネジメントの向上を可能とすることに有効であるが、市場からの短期的な財務リターンの要望を受けて、企業のインセンティブとして環境や社会のサステナビリティに関連する機会やリスクに対する配慮が疎かになりうる。
市場の短期的リターンの要求とそれに対応しようとする企業の行動が、長期的なサステナビリティのリスクへの不必要なエクスポージャーとなっている可能性がある。欧州委員会では、関係するステークホルダーとこの問題について注意深く分析を行う。
具体的取組
欧州監督機構(ESA※)を招聘し、資本市場から企業に対する短期的なプレッシャーに関するエビデンスの収集を行い、報告書を作成することを依頼。2019年9月半ばに中間ドラフトとそれまでの調査結果が欧州委員会で話し合われ、2019年12月に最終報告書を提出予定。
欧州委員会への報告書には、下記の4つが含まれる。• 過度な短期主義の証拠• これまでの文献における過度な短期主義のドライバーに関する評価• 過度な短期主義の緩和に貢献する既存の規制の特定、規則が短期的圧力を助長させている
分野の特定• 政策を策定する必要があるかどうか及び政策策定の必要がある特定分野はどこか、
の2点についての提言
※欧州監督機構(ESA)は、欧州証券市場監督局(ESMA)、 欧州銀行監督機構(EBA)、欧州保険・企業年金監督局(EIOPA)の総称。
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タクソノミー
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●7月1日:「気候変動緩和」「気候変動適応」指令適用開始
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タクソノミー規則案制定・詳細事項決定に関する動き
詳細事項
5月 6月 12月 3月 6月
2018年 2019年
秋
2020年 2021年 2022年
●5月:欧州委員会、タクソノミーの大枠を定める規則案を公表
●3月:修正規則案、欧州議会を通過
●年内:修正規則案、欧州理事会で承認、法制化予定(※)
●6月:TEG設立
●12月:TEG、「気候変動緩和」「気候変動適応」の一部タクソノミーレポートの公表。フィードバックの募集
●6月:TEG、フィードバックを受け、①「テクニカルレポート」 ②「ユーザーガイダンス」公表。フィードバックの募集
●12月:TEG、欧州委員会に最終報告
●12月31日:TEG活動終了
●1月:サステナブルファイナンス・プラットフォーム設立
●12月31日:「気候変動緩和」「気候変動適応」委任法採択
TEG、「気候変動緩和」「気候変動適応」の選定基準開発
サステナブルファイナンス・プラットフォーム、「水資源」「循環経済」「汚染防止」「生物多様性」の選定基準開発
1月 7月 12月
●時期未定:金融市場参加者が監督当局へ提供すべき情報詳細に関する委任法採択
12月 7月 12月 7月 12月
●7月1日:「循環経済」「汚染防止」委任法採択
●7月1日:「水資源」「生物多様性」 委任法採択
●12月31日:「水資源」「生物多様性」適用開始
●12月31日:「循環経済」「汚染防止」適用開始●12月31日:
最低安全策の詳細を定める委任法採択
(※)欧州理事会で承認されない場合は、欧州議会で再度議論が行われ、法制化の時期も遅れる可能性もある。
規則・委任法
左側右端
EUにおけるタクソノミーに関する動き
①規則案
1. 2018年5月、欧州委員会はタクソノミーの大枠を定める規則案を公表。
2. 2019年3月、修正規則案が欧州議会を通過。
⇒ ・ 年内に修正規則案が欧州理事会でも承認され、法制化される予定。・ 欧州理事会で承認されなかった場合には、欧州理事会の修正案を欧州議会⇒欧州理事会の順で
審議し、規則案の成立を目指すことになる。・ それでも合意が得られない場合には、欧州議会と欧州理事会から同数の人数が参加する調停委員会
で妥協案を検討する。
②TEG
1. 2018年6月、タクソノミーに関するより詳細な内容を議論するTEGの設立。
2. 2018年12月、TEGから「気候変動緩和」と「気候変動適応」の一部のタクソノミー関するレポートの公表。フィードバックの募集。
3. 上記フィードバックの内容を反映し、2019年6月、①テクニカルレポートと②ユーザーガイダンス
の公表。(←直近の動き)フィードバックの募集。
⇒ 2019年12月まで追加開発を行い、欧州委員会に最終報告を行う予定。・ 今年度の活動では、「気候変動緩和」の対象となる経済活動はこれ以上増えない。・ 2019年6月のレポートで新たに加わった専門的選定基準のフィードバックのみ受け付けられる。・ 2018年12月公表レポートから2019年6月公表レポートの間でも内容が大きく変更されていることから、
今回新たに加わった専門的選定基準(鉄鋼やセメント等)も今後修正される可能性はある。
タクソノミーについては、①大枠を定める規則案の制定に向けた動きと②詳細な事項を検討するTEGの動きが、並行して進んでいる。
15
左側右端
タクソノミー規則案の内容 当規則案は、経済活動が環境面でサステナブルであるかどうかの基準を確立することを目的とする。
当規則案の適用対象
EU各国により採択された金融市場参加者に対する法規則で、EU圏で販売される環境的にサステナブルな金融商品や社債に関するもの
EU圏で環境面でサステナブルな金融商品または類似商品を提供する金融市場参加者
さらに2019年3月に下記を対象として追加
金融商品を提供する金融市場参加者のうち、以下に該当しない者
⁃ 金融商品が資金提供する経済活動が、サステナビリティに重大な影響を与えないことについて目論見書の中で十分な説明をする場合
⁃ 金融商品がサステナビリティ目的を持たず、サステナブルとみなされない経済活動をサポートするリスクが高いことを目論見書の中で示している場合
経済活動は、以下4項目をすべて満たした場合、環境面でサステナブルである。
① 6つの環境目的の1つ以上に実質的に貢献する
② 6つの環境目的のいずれにも重大な害とならない
(Do No Significant Harm: DNSH)
③ 最低安全策(人権等)に準拠している
④ 専門的選定基準(上記①・②を満たすための最低基準)を満たす16
左側右端
タクソノミー規則案における環境面でサステナブルであるための要件
17
①6つの環境目的の1つ以上に実質的に貢献する②6つの環境目的のいずれにも重大な害とならない
(DNSH)
<1.気候変動の緩和>
再生可能エネルギー生成・貯蔵・使用やエネルギー効率改善等により温室効果ガス排出の回避・減少、除去促進による安定化
大量の二酸化炭素の排出
<2.気候変動の適応>
現在または将来の気候への悪影響の減少、気候変動への悪影響増加の回避
現在及び将来の気候への負の影響の増加
<3.水資源と海洋資源の持続可能な利用と保全>
水資源または海洋資源の良好な状態 EUの水または海洋に相当程度有害
<4.廃棄物抑制や再生資源の利用を増やすような循環経済への移行>
循環経済、廃棄物抑制、リサイクル社会への移行 原材料の非効率な使用
<5.汚染防止・管理>
汚染からの保全を高度化 空気・水・土壌の汚染度合いの大幅な悪化
<6.生物多様性及び健全な生態系の保全及び悪化した生態系の回復>
生物多様性や生態系サービスの保全や改善 生態系の状況を相当程度に悪化
③最低安全策に準拠している(労働における基本的原則及び権利の確保を確認する手続き)
実施主体がOECD多国籍企業行動指針及びビジネスと人権に関する国連指導原則を実行しているか。
④専門的選定基準(上記①・②を満たすための最低基準)を満たす
ライフサイクル全体での環境への影響を考慮、短期的かつ長期的な経済活動の影響の考慮、質的・量的基準どちらでも可、閾値(可能であれば)の設定、科学的根拠。
以下4項目をすべて満たした経済活動が環境面でサステナブルである
左側右端
タクソノミー規則案の詳細を定める委任法の採択スケジュール
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1.金融市場参加者の監督当局へ提供すべき情報
金融市場参加者の監督当局へ提供すべき情報の詳細を定める委任法を採択(採択の時期は明文化されていない)
2.各環境項目の専門的選定基準
環境目的 開発作業の実施主体 委任法採択期限 適用開始日
気候変動の緩和 TEG(~2019年後半)
2019年12月31日 2020年7月1日
気候変動の適応 2019年12月31日 2020年7月1日
水資源と海洋資源の持続可能な利用と保全
サステナブルファイナンス・プラットフォーム(※)
(2020年~)
2022年7月1日 2022年12月31日
廃棄物抑制や再生資源の利用を増やすような循環経済への移行
2021年7月1日 2021年12月31日
汚染防止・管理 2021年7月1日 2021年12月31日
生物多様性及び健全な生態系の保全及び悪化した生態系の回復
2022年7月1日 2022年12月31日
3.最低安全策
2020年12月31日までに最低安全策の詳細を定める委任法を採択。
規則案の詳細については、今後、委任法が採択される。
(※)タクソノミー規則案第15条で、サステナブルファイナンス・プラットフォームの設立が定められている。TEGは2019年中に終了するため、本プラットフォームが2020年以降はTEGの役割を担っていくことになる。役割としては下記の2点。1.TEGで提案された最低安全策の定期的な見直し及び更なる開発。2.企業、投資家、その他のステークホルダーがタクソノミーに含むべき追加の経済活動をプラットフォームに提案。
左側右端
TEGから公表されたテクニカルレポートの内容
タクソノミー開発に対するTEGのスタンス
タクソノミーの基準は、将来的には徐々に厳格化されるべきものである。厳格化されることを事前に市場に知らせておくことで、予測可能性(predictability)を確保。
現状ではまだ低炭素でないものも含む。ブラウンからグリーンへのトランジションをサポートする。
ライフサイクル全体を考慮する。
19
2019年6月に公表されたTEGのテクニカルレポートでは、6つの環境目的のうち、
「1.気候変動緩和」及び「2.気候変動適応」について詳述する。
左側右端
気候変動緩和に貢献する活動の考え方
気候変動緩和に貢献する活動の定義
1. ‘Greening of’ activities: ある活動が、その活動自身の環境パフォーマンスを改善させる。
2. ‘Greening by’ activities: ある活動が、その他のセクターの環境パフォーマンスを改善させる。
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活動の分類 専門的選定基準 例
1. すでに低炭素な活動 長期的に一定
• 排出量ゼロの輸送
• ネットゼロカーボン発電
• 植林
2. 2050年のネットゼロエミッション経済への移行に貢献するが、現在はネットゼロカーボンエミッションレベルに近くはない活動。
定期的に更新
• 建物の改修
• 発電<100g CO2/kWh
• 自動車<50g CO2/km
3. 低炭素パフォーマンスまたは実質的な炭素削減を可能にさせる活動
長期的に一定 or
定期的に更新
• 風力タービンの製造
• 建物への効率的なボイラーの設置
上記の定義をふまえて、経済活動を下記の3つに分類
次ページ以降、経済活動の専門的選定基準の一部を紹介する。
左側右端
気候変動適応に貢献する活動の考え方
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気候変動適応に貢献する活動の定義
1. ‘Adaptation of’ activities: ある活動が、その活動自身のレジリエンスの程度を改善する。
2. ‘Adaptation by’ activities: ある活動が、その他のセクターの適応に貢献する。
気候変動適応に貢献する経済活動を識別する3原則
1. 全ての重要な物理的気候リスクを可能な範囲またはベストエフォートベースで減少させる。
2. その他の適応に向けた活動に負の影響を与えない。
3. 適応関連の結果は定義され、適切な指標により測定できる。
気候変動適応では、ロケーションやシステム全体の中での位置づけが重要であるため、選定基準は、下記3原則に基き、全経済活動に共通する定性的な形式となる。
選定基準 説明
A1:気候に関する重要な物理的リスクの軽減
その経済活動は可能な限りにおいて、気候に関する重要な物理的リスクを軽減させるものでなければならない。
A1.1 その活動は、リスク評価を通じて特定された、すべての重要なリスクを軽減させるための物理・非物理的な方法を統合する。
A1.2 上項のリスク評価は次のような特徴を持つ:・現在の気候変化と将来的な気候変動(不確定要素を含む)の両方を考慮している。・既存の気候データと、複数の想定シナリオを用いた予測による分析に基づいている。・活動に見込まれる存続期間(耐用期間)と一致する。
A2: 全体の適応の支援 その経済活動は他の活動の適応に対して悪影響を与えるものであってはならない。
A2.1 その活動は他の活動の気候関連リスクを増大させない、または、他の活動の適応を妨げない。(河川上流の洪水対策が下流での洪水リスクを高めてしまう例など。)
A2.2 その活動はセクター、地域、国レベルでの適応の活動と一貫性がある。
A3: 適応結果のモニタリング 物理的リスクの軽減が測定可能なものである。
A3.1 適応の結果がモニタリングや指標に照らし合わせた測定が可能である。なお、リスクは常に変化するものであるため、可能な場合は、物理的リスクの再評価を適宜行うべきである。
‘Adaptation of’の選定基準
左側右端
気候変動適応に貢献する活動の考え方
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気候関連の災害を「慢性」と「急性」で分類表。
各経済活動ごとに、下表のどの災害に敏感であるかを選別し、気候感度マトリックスが作成される。
気温 風 水 土壌
慢性
・大気、淡水、海水温度の変化・熱ストレス・気温パターンの変化・永久凍土の融解
・気流パターンの変化 ・降水パターンとタイプ(雨・雹、雪など)の変化・降水量の変化・海洋酸性化・塩水侵入・海面上昇・水ストレス
・海岸浸食・土壌荒廃・土壌浸食・土壌流
急性
・熱波・寒波・山火事
・サイクロン、ハリケーン、台風・暴風(吹雪、砂塵嵐を含む)・竜巻
・干ばつ・集中的降水(雨、雹、雪など)・洪水(沿岸、河川、豪雨、地下水)・氷河湖決壊
・雪崩・地滑り・地盤沈下
出所:CSRデザイン環境投資顧問(株)作成
左側右端
気候変動適応に貢献する活動の考え方
23
テクニカルレポートでは、以下の経済活動について、より具体的な環境への影響評価を実施
(例)「下水」活動の気候感度マトリックス
NACE分類 経済活動
農業・林業・漁業 非多年生作物の栽培、造林及びその他の林業活動
電気・ガス・蒸気・空調 水力発電、送電線
上下水・排水処理 下水
ICT 天気のモニタリングと予報の通信アプリケーションの提供
金融・保険 損害保険
専門・科学・技術的活動研究開発(自然科学・エンジニアリング)、エンジニアリング活動及び関連する技術コンサルタント
( :敏感 :敏感ではない)
気温 風 水 土壌
慢性
・大気、淡水、海水温度の変化・熱ストレス・気温パターンの変化・永久凍土の融解
・気流パターンの変化 ・降水パターンとタイプの変化・海面上昇
・海岸浸食・土壌浸食・土壌流
急性
・熱波・寒波・山火事
・サイクロン、ハリケーン、台風・暴風・竜巻
・干ばつ・集中的降水・洪水・氷河湖決壊
・雪崩・地滑り・地盤沈下
2. その他のユーザーの例• 銀行:グリーンローン、プロジェクトファイナンス、民間融資を行うため• 海外投資家:EU以外の市場でも、EUタクソノミーをベンチマークとして、投資意思決定を
適切に開示するため• 企業及び各地規制当局:サステナブル投資の機会を市場に提供するため、または自身の
投資意思決定のため
左側右端
タクソノミーのユーザーガイド①
タクソノミーのユーザー
24
1. タクソノミー規則案がタクソノミーに基づく開示を求めている対象
• 環境面でサステナブルな金融商品を提供する金融市場参加者• TEGのレポートでは、対象となる金融商品の主な例を下記の通り列挙している。
タクソノミー規則案で開示義務のある金融商品
アセットマネジメント
UCITS(※)ファンド
• エクイティファンド
• 上場投資信託(ETF)
• 債券ファンド
オルタナティブ投資ファンド
• ファンドオブファンズ
• 不動産ファンド
• プライベートエクイティまたは中小企業向け融資ファンド
• ベンチャーキャピタルファンド
• インフラファンド
保険 保険ベースの金融商品(IBIP)
(※)EUの法律に基づいて設立・運用される投資ファンド
左側右端
タクソノミーのユーザーガイド②
投資家のタクソノミー利用の5ステップ
25
1 投資対象会社の活動の識別
2 各活動の評価(発電が100g CO2/kWhの閾値を満たしているか、等)
3 DNSHの評価
4 社会的基準(人権等)に関するデューデリジェンス
5 タクソノミーに該当する投資の比率の計算
ポートフォリオでの利用方法
• ポートフォリオのタクソノミー適格割合を算定する際には、ポートフォリオを構成する各社の割合を算定し、加重平均する。
A社 B社 C社
各社の売上のうち、タクソノミー適格の活動が占める割合A社 B社 C社
グリーンファンドのタクソノミー適格資産の割合は54%
活動内容の説明 活動内容の説明 活動内容の説明
出所)タクソノミーユーザーガイダンスを基にCSRデザイン環境投資顧問(株)作成
ステップ5
ステップ2~
ステップ4
ステップ1
左側右端
タクソノミーのユーザーガイド③
投資家がタクソノミーを利用するために、企業に求められる開示内容
26
また、企業は、気候関連情報開示ガイドライン(後述)においても、
タクソノミーに紐づく売上やCAPEX・OPEX(※)の開示等が推奨されている。
開示内容「投資家のタクソノミー利用の5ステップ」
との関連(前ページ参照)
専門的選定基準(DNSHの基準を含む)に対する
パフォーマンス、または、環境マネジメントに関するデータステップ2,3
社会的基準(人権に関するポリシー等)に関する
マネジメントデータステップ4
タクソノミーの対象となる活動の売上、または、
タクソノミーの対象となる活動に割り当てられた費用ステップ5
(※)CAPEX(Capital Expenditure):資本的支出
OPEX(Operating Expenditure):運営上の支出
ベンチマーク
27
左側右端
EUにおけるベンチマークに関する動き
①規則案
1. 2018年5月、ベンチマークに関する規則案の公表。
2. 2019年3月、修正規則案がEU議会を通過。
⇒ 年内に、修正規則案がEU理事会でも承認され、法制化される予定。
28
②TEG(Technical Expert Group, 技術専門グループ)
1. 2018年6月、ベンチマークに関するより詳細な内容を議論するTEGの設立。
2. 2019年6月、中間報告の公表。(←直近の動き)フィードバックの募集。
⇒ 2019年9月末までに最終報告公表予定。欧州委員会は、この内容を基に委任法を策定する予定。
ベンチマークについては、①規則案の制定に向けた動きと②詳細な事項を検討するTEGの動きが、並行して進んでいる。
ベンチマークの規則案及びTEG中間報告は、2つの事項について述べている。
① 新規2種類の気候ベンチマーク
② ベンチマークに関するESG開示
左側右端
新規2種類の気候ベンチマークの定義
29
ベンチマーク規則案の中で2つの気候ベンチマークを新たに定義した。
1. EU climate transitionベンチマーク(EU CTB)
• ベンチマークポートフォリオが脱炭素化を目指した道筋(a decarbonisation trajectory)となるように原資産を選択、重みづけ、除外し、委任法に基づく最低基準に従って構築されているベンチマーク
• ベンチマークのプロバイダーは、以下の(ⅰ)~(ⅳ)の要件に従って2022年12月31日までに原資産を選択、重みづけ、除外する。
(i) 測定可能な時系列の炭素排出削減目標を開示している企業。
(ii) 子会社レベルごとの炭素排出削減量を開示している企業。
(iii) 目標に対する進捗に関する年次の情報を開示する会社。
(iv) 原資産の活動がその他のESG目的に重大な害を与えない。
2. EU Paris-alignedベンチマーク(EU PAB)
ベンチマークポートフォリオの炭素排出量がパリ協定の長期目標と整合しており、委任法に基づく最低基準に従って構築されているベンチマーク
原資産の活動がその他のESG目的に重大な害を与えない。
左側右端
新規2種類の気候ベンチマークの定義
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TEG中間報告では気候ベンチマークの最低基準を定める。(最終報告で更新の可能性あり)
最低基準 EU CTB EU PAB
投資ユニバースと比較した排出原単位削減率(※)
30% 50%
DNSH原則 あり
投資ユニバースと比較したグリーン対ブラウンの割合
同じかそれ以上 極めて大きい(4倍)
エクスポージャー気候変動に大きくさらされているセクターへのエクスポージャーが
マーケットベンチマークと同じかそれ以上である
対前年度比の脱炭素比率排出量原単位が毎年対前年度比最低7%減少
(1.5℃シナリオの軌道と整合)
連続する2年間、基準を満たさなかった場合
即時にベンチマークの資格を失う
(※)スコープ3を含める時期はセクターによって異なる。
左側右端
新規気候ベンチマークに関してアドミニストレーターが実施すべき事項
31
ベンチマーク規則案では、2つの気候ベンチマークについて、アドミニストレーターが実施すべき事項を規定しており、2020年4月30日までに以下の事項に対応することとしている。
1. メソドロジーの開示
• EU climate transitionベンチマーク(EU CTB)
• ベンチマークの主要な構成要素のリスト
• 原資産の選択や指標等の全ての基準及び方法
• 資産または会社を除外する際の基準
• 脱炭素化への道筋の決定に関する基準
• 脱炭素化への道筋の決定に使用したデータのタイプ及び情報源
• インデックスポートフォリオの炭素排出の総量
• EU Paris-alignedベンチマーク(EU PAB)
• ベンチマークの主要な構成要素のリスト
• 原資産の選択や指標等の全ての基準及び方法
• 資産または会社を除外する際の基準
• 排出量がパリ協定の長期目標と整合しているかどうかの決定に使用した公式または計算
2. メソドロジーの変更
メソドロジーを変更した場合は、その内容と理由を開示
定期的に(少なくとも年次で)メソドロジーの適切性を確認
左側右端
全ベンチマークに関するESG開示に関する規則案の内容
32
ベンチマーク規則案では、ベンチマークのアドミニストレーターは、
全てのベンチマーク(通貨や利子率のベンチマークを除く)に関して、
下記の2項目の対応を求めている。
• メソドロジーの主要な要素がESG要素をどのように反映しているかの説明
• ベンチマーク・ステートメントの中で、ESG要素がベンチマークにどのように
反映されているかの説明
ベンチマークがESG目的を持たない場合には、
そのベンチマークのアドミニストレーターは、ベンチマーク・ステートメントの中で、
その旨を記載さえすれば、ESG情報を開示しなくてよい。
上記開示は、2021年12月31日までに行う。
開示すべき項目及び開示フォーマットは委任法にて定める。
左側右端
全ベンチマークに関するESG開示に関するTEG中間報告の内容
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TEG中間報告では開示に関するテクニカルな内容を記載している。
1. メソドロジー
① メソドロジーの主要な要素がESG要素をどのように反映しているかの説明に含むべき最低限の内容
② メソドロジーに含まれるESG開示に関するテンプレート
2. ベンチマークステートメント
③ ベンチマークがESG要素をどのように反映しているかの詳細説明
④ メソドロジーが、どのように温室効果ガス排出削減の目標と整合しているか、または、パリ協定の長期目標を達成するかの詳細説明
⑤ 温室効果ガス排出削減の目標と整合しているか、またはパリ協定の長期目標を達成するか、整合または達成する場合にはその程度についての詳細説明
⑥ 上記③と⑤の開示に関するテンプレート
左側右端
TEG中間報告におけるベンチマークに関するESG開示
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TEG中間報告では、各アセットクラス(上場株式、社債、ソブリン債、ヘッジファンド、コモディティ、プライベート・エクイティ/ボンド、インフラ)について、どのような開示が必要かをYes/Noで表示。
出所:TEG中間報告19ページに掲載の図をCSRデザイン環境投資顧問(株)和訳
ESG全般
環境
社会
ガバナンス
開示項目 株式 社債 ソブリン債 ヘッジファンドプライベート・エクイティ・ボンド/インフラ
コモディティ
左側右端
全ベンチマークに関するESG開示
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前ページの図に加えて、各アセットクラスごとにより具体的な開示項目を提案。
下図は、上場株式に関する表である。
出所:TEG中間報告20ページに掲載の図をCSRデザイン環境投資顧問(株)和訳
開示項目
ESG全般-ESG格付の平均-上位10の構成銘柄のESG格付-国連グローバル・コンパクトを満たしていない構成銘柄の割合
環境
-ESG格付の「E」の部分の評価の平均-高排出セクターの割合-炭素排出原単位-排出量の予実比較-グリーンエコノミーへのエクスポージャー(グリーン売上の割合)-気候関連物理的リスクへのエクスポージャー
社会-ESG格付の「S」の部分の評価の平均-武器やタバコ関連銘柄の割合-社会規範の違反に関連する銘柄数
ガバナンス-ESG格付の「G」の部分の評価の平均-取締役会の独立性の程度の平均-取締役会の多様性の程度の平均
左側右端
パリ協定の目標との整合に関する開示
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EU climate transitionベンチマーク及びEU Paris-alignedベンチマークに対しては、追加開示として下記の項目を提案。
開示項目
1 ベンチマークポートフォリオが整合しているシナリオの特定
2 シナリオとの整合の測定に使用したメソドロジーの説明
3 使用したシナリオに関する説明(名称やプロバイダー)
4 使用したシナリオのリンク先
EU climate transitionベンチマーク及びEU Paris-alignedベンチマークの基準を満たさないベンチマークが、上記の開示を行ってもよい。
左側右端
ベンチマークに関する開示テンプレート
出所:TEG中間報告65ページに掲載の図をCSRデザイン環境投資顧問(株)和訳
TEG中間報告では、3種類の開示テンプレートを提案している。
1. メソドロジーにおけるESG要素の説明2. ベンチマークステートメントにおける
ESG要素の説明3. パリ協定の目標と整合する程度の説明
右のテンプレートは「ベンチマークステートメントにおけるESG要素の説明」のテンプレート
ESG目的を持たないベンチマークは、「ESG情報を開示しない」という項目にチェックを入れれば済む形になっている。(右下の赤枠)
ESGに関する開示事項
(アセットクラスごとに記載項目は異なる)
新規2種類の気候ベンチマークに関する開示
開示免除のオプション
ベンチマークのアセットクラス
ベンチマークの名称
37
左側右端
今後対応が必要な課題
38
ベンチマークの開示と金融サービスセクターにおけるサステナビリティ関連開示規制の整合性
投資家サイドのサステナビリティ関連開示規制も法制化手続きが進められており、ベンチマークの開示規則と投資家の開示規則を整合させる必要がある。
EUタクソノミーとの整合性
EUタクソノミーを参照している箇所も多く、特に「セクターごとの開示」や「グリーン売上/割合」については、EUタクソノミー規則案の最終版を参照することでより正確な開示を行うことができる。
MiFIDⅡ及びIDDにおける投資アドバイスの際のサステナビリティの組み込み
MiFIDⅡ及びIDDの改正に基づき、サステナビリティの観点も含む適合性テストを実施することにより得られた教訓をベンチマークの開示にも生かし、投資家に実際のパフォーマンスを明確に示せるようにする。
受託者責任に関するESMAから欧州委員会へのテクニカルアドバイス
2019年5月に公表されたESMAのESG要素の組み込みに関するテクニカルアドバイスは、新規2種類の気候ベンチマークと大いに関連するため、当アドバイスの内容も考慮して規則案をレビューする必要がある。
気候関連情報開示
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左側右端
EUにおける気候関連情報開示に関する動き
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TEGによる活動内容
1. 2018年6月、気候関連情報開示に関する内容を議論するTEGの設立。
2. 2019年1月、TEGから最終報告書の公表。フィードバックの募集。
3. 2019年2月、上記レポート及びフィードバックを加味して気候関連情報開示ガイドラインのコンサルテーションペーパーを公表。フィードバックの募集。
4. 2019年6月、最終化された気候関連情報開示ガイドラインの公表。(←直近の動き)
気候関連情報開示については、TEGにより活動が進められている。
EUでは、2014年に非財務情報開示指令(NFRD)、2017年に非財務情報ガイドラインが公表されている。
今回の気候関連情報開示ガイドラインは、非財務情報ガイドラインの補足(supplement)という位置づけである。
以下、最新の気候関連情報開示ガイドラインの内容を説明する。
左側右端
気候関連情報開示ガイドライン
41
気候関連情報開示ガイドラインは、EUの企業がNFRDに準拠すると同時にTCFDの提言の内容も開示できることを目的としたものである。
従って、TCFDの内容と近似しているが、一部、NFRDの枠組みの中にあることによりTCFDと異なる点もある。
① TCFDでは、「気候変動が企業に与えるインパクト」のみを考慮しているが、当ガイドラインでは、 「気候変動が企業に与えるインパクト」に加えて、「企業が気候変動に与えるインパクト」という視点も含む。
TCFDの提案でのスコープ
NFRDのスコープ
財務的重要性
環境的・社会的重要性
気候変動が企業に
与えるインパクト
企業が気候変動に
与えるインパクト
主な報告対象投資家
主な報告対象消費者、市民、従業員、投資家
企業の気候変動へのインパクトは、財務的にも重要になりえる
出所:気候関連情報開示ガイドライン、7ページの図をCSRデザイン環境投資顧問(株)和訳
左側右端
気候関連情報開示ガイドライン
42
(TCFDとNFRDの相違点の続き)
② TCFDでは、「ガバナンス」「戦略」「リスクマネジメント」「指標と目標」の4要素で構成されているが、NFRDでは「ビジネスモデル」「ポリシーとデューデリジェンスプロセス」「結果」「主要リスクとそのマネジメント」「KPI」の5要素で構成される。
出所:気候関連情報開示ガイドライン、36ページの図をCSRデザイン環境投資顧問(株)和訳
KPIビジネスモデル
ポリシーとデューデリジェンス
結果リスクと
マネジメント
ガバナンス
戦略
リスク
マネジメント
指標と目標
NFRDの要素
TCFD提言
左側右端
気候関連情報開示ガイドライン
43
ガイドラインでは、NFRD対象企業約6000社に広く活用されることを目的に、推奨する開示内容は、13の開示推奨項目と10のKPIに限定している。
ガイドラインは強制力を持たないため、各社は推奨項目のうち、自社に関連があり、有益なもののみを開示すればよい。
ガイドラインでは、開示推奨項目とKPIについて、「Further guidance」として次の段階で開示を検討する項目を記載している。
左側右端
気候関連情報開示ガイドライン
44
13の開示推奨項目
ビジネスモデル(※)
企業のビジネスモデル等に対する気候関連のリスクと機会のインパクト
企業のビジネスモデルが気候に与えるポジティブ及びネガティブなインパクト
いくつかのシナリオを考慮した企業のビジネスモデル及び戦略のレジリエンス
ポリシーとデューデリジェンス
気候関連のポリシー
ポリシーの一部である気候関連の目標及びその指標と国/国際的な目標やパリ協定との関連
気候関連のリスクと機会に関する取締役会による監督
気候関連のリスクと機会の評価・管理に関するマネジメント層の役割
結果気候変動に関する企業のポリシーの結果
目標に対するGHG排出量及び関連するリスクの変化
リスクとマネジメント
短・中・長期の気候関連リスクの特定・評価のプロセス及び短・中・長期の定義
バリューチェーン全体における短・中・長期の気候関連リスク(気候変動により脅かされる自然資本への依拠による重要なリスクを含む)
気候関連リスクをマネジメントするプロセス及び企業がどのように特定の気候関連リスクをマネジメントするか
気候関連リスクを特定・評価・マネジメントするプロセスは、どのように組織全体のリスクマネジメントに組み込まれているか
(※)ビジネスモデルの「Further guideline」では、気候関連リスクと機会によるビジネスモデルと戦略の変化、自然資本への依拠の状況、シナリオの選択方法なども紹介している。
左側右端
気候関連情報開示ガイドライン
45
10のKPI
温室効果ガスの排出
温室効果ガスのスコープ1
温室効果ガスのスコープ2
温室効果ガスのスコープ3
温室効果ガス排出量の基準年からの削減率
エネルギー
再エネ/非再エネの消費量/生産量
省エネ目標
再エネ消費量/生産量の目標
物理的リスク 物理的リスクにさらされる可能性のある地域の資産
製品/サービス
EUタクソノミーで定義された活動に関連する製品/サービスの報告年における売上の割合EUタクソノミーで定義された活動に関連する資産/プロセスのCAPEX/OPEXの割合
グリーンファイナンス
5年間の平均ボンド/負債残高に対する年度末のグリーンボンド/負債残高)
ガイドラインで推奨される10のKPIについては、各社での利用をサポートするために各項目ごとに解説が付いている。