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人間看護学研究 13 51-57(2015) 51 研究 ノー ト 子宮頸がん検診の受診行動への影響因子と 受診率向上に向けた取 り組みに 関する文献検討 中村 和 代1),渡 香 織1) 1)滋賀 県 立 大 学 人 間 看 護 学 部 背景 我 が 国 にお け る子 宮 頸 が ん の 罹 患 者 は20~40歳 女 性 で 増 加 して い る。 この 年 代 は生 殖 年 代 で あ る ため、妊孕性 ・妊娠 ・分娩への影響が危惧されている。 しか し、我が国の子宮頸がん検診の受診率は低 く、 特 に20歳 代 女 性 の 受 診 率 の 低 さが 問 題 とな って い る。 した が って 、 リプ ロ ダ ク テ ィ ブ ヘル スの 観 点 から、若い女性の子宮頸がん予防が重要であり、この年代の受診率向上が喫緊の課題となっている。 目的 我が国における20歳代女性の子宮頸がんおよび検診の認知度、検診に対する思い、受診行動への 影響因子、また、受診率向上に向けた取り組みに関する既存研究を概観 し、分析することである。 方法 医 中 誌Web、CiNii Article、 PubMed、 CINAHLを 検 索 して 、 過 去10年 間 の子 宮 頸 が 検診の認知度、検診に対する思い、受診行動への影響因子、受診率向上に向けた取り組みに関する計33 文献を抽出 し、その内容を検討 した。 結果 20歳代女性の子宮頸がんおよび検診の認知度は低 く、検診の受診意欲は高いが受診行動には結び ついていなかった。検診の受診 ・未受診理由や受診行動への影響因子が明らかになってきており、その 結 果 に 基 づ い て 受 診 率 向 上 に向 けた 取 り組 み も行 わ れ 始 め て い る。 しか し、 検 診 の 受 診 と い う行 動 変 容 まで 効 果 が み られ た取 り組 み は、無 料 ク ー ポ ン券 の 配 布 お よ び受 診 勧 奨 プ ロ グ ラ ムの 実施 の み で あ っ た。 結論 20歳代女性の認知度の向上には、若い年代に合った情報提供ツールの検討や、学校における10代 からの子宮頸がんに関する教育が必要である。受診行動への影響因子は明らかになってきているが、効 果的な取り組みは少ない。認知度を向上させ、検診の受診意欲を行動変容へ繋げるために、検診の利点 が差恥心などの検診の障壁を上回ることを周知させる取り組みが必要である。 キー ワー ド 子宮頸がん、子宮頸がん検診、受診率、受診行動、影響因子 1.緒 子宮頸がんは女性特有のがんであり、我が国における 2010年 の 罹 患 数 は 約11,000人 、 死 亡 数 は2,664人 で年々 増 加 傾 向 に あ る1)。39歳 未満の女性では罹患率 ・死亡率 と も に 乳 が ん に 次 い で2番 目に 多 い1)。 罹 患 の ピ ー ク の The factors associated with cervical cancer screening behavior and an approach to improve screening rate : A literature review Kazuyo Nakamura'', Kaori Watanabe" "The University of Shiga Prefecture School of Human Nursing 2014年9月30日 受 付 、2015年1月9日 受理 連 絡 先:中 和代 滋賀県立大学人間看護学部 所:彦 根 市 八 坂 町2500 e-mail : nakamura. ka@nurse. usp. aC..lP 20歳 代 後 半 ~40歳 は 女 性 の 妊 孕 期 間 と合 致 して い る た め 、 女性のリプロダクティブヘルスにおける影響は大きい。 子 宮 頸 が ん は、Human Papilloma Virus(HPV) 感 染 か ら子 宮 頸 部 上 皮 内 腫 瘍(Cervical intraepitheli neoplasia:CIN)を 経 て 浸 潤 癌 へ と進 行 す る が 、 CIN の段階で発見 し治 療 す れ ば、 予 後 も良 く子 宮 温 存 も可 能 で あ る た め 、 早 期 発 見 が 重 要 で あ る2)。 ま た 、 子 宮 頸 が ん は 、 一 次 予 防 のHPVワ クチンと二次予防の子宮頸が ん検診の併用で、ほぼ完全に予防 ・早期発見が可能であ り、 予 防 ・検 診 と も に方 法 が ほ ぼ確 立 で きて い る数 少 な い癌 で あ る3)。 我 が 国 にお い て も、2010年 よ り公 費 助 成 に よ るHPVワ ク チ ン接 種 が 開 始 され て い た が 、 数 件 の 重大な副反応が報告された。副反応とワクチンとの因果 関 係 が解 明 され て いな い た め、2013年6月 に厚生労働省 は子 宮 頸 が ん 予 防 ワ ク チ ンの 積 極 的 勧 奨 中 止 を 勧 告4)し 、 現 在 も継 続 さ れ て い る。 そ の た め 、HPVワ ク チ ン接 種 の積極的勧奨がなされていない現在、子宮頸がん予防に

子宮頸がん検診の受診行動への影響因子と 受診率向上に向けた ...usprepo.office.usp.ac.jp/dspace/bitstream/11355/213/1/... · 2019-04-21 · 子宮頸がん検診の受診行動への影響因子と受診率向上に向けた取り組みに関する文献検討

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人間看護学研究 13  51-57(2015) 51

研究 ノー ト

子宮頸がん検診の受診行動への影響因子 と

受診率向上に向けた取 り組みに関する文献検討

中村 和代1),渡 邊 香織1)1)滋賀県立大学人間看護学部

背景 我が国 にお ける子宮頸がんの罹患者 は20~40歳 女性で増加 して いる。 この年代 は生殖年代で ある

ため、妊孕性 ・妊娠 ・分娩への影響が危惧 されて いる。 しか し、我が国の子宮頸がん検診 の受診率 は低

く、特 に20歳 代女性の受診率の低 さが問題 とな って いる。 したが って、 リプロダクティブヘル スの観点

か ら、若 い女性の子宮頸がん予防が重要であ り、 この年代の受診率向上が喫緊の課題 となって いる。

目的 我が国 にお ける20歳 代女性の子宮頸がんお よび検診の認知度、検診 に対す る思 い、受診行動への

影響因子、 また、受診率向上 に向 けた取 り組み に関す る既存研究を概観 し、分析す ることで ある。

方法 医中誌Web、CiNii  Article、 PubMed、  CINAHLを 検索 して、過去10年 間の子 宮頸がんお よび

検診の認知度、検診 に対す る思 い、受診行動への影響因子、受診率向上 に向 けた取 り組み に関す る計33

文献を抽出 し、その内容を検討 した。

結果 20歳 代女性の子宮頸がんお よび検診の認知度 は低 く、検診の受診意欲 は高 いが受診行動 には結 び

つ いていなか った。検診の受診 ・未受診理由や受診行動への影響因子が明 らか にな って きてお り、 その

結果に基づいて受診率向上 に向 けた取 り組み も行われ始めて いる。 しか し、検診の受診 という行動変容

まで効果がみ られた取 り組み は、無料 クーポ ン券の配布および受診勧奨 プログラムの実施 のみであった。

結論 20歳 代女性の認知度の向上 には、若 い年代 に合 った情報提供 ツールの検討や、学校 にお ける10代

か らの子宮頸がん に関す る教育が必要であ る。受診行動への影響因子 は明 らか にな って きて いるが、効

果的な取 り組み は少な い。認知度を向上 させ、検診の受診意欲を行動変容へ繋 げるため に、検診の利点

が差恥心な どの検診の障壁を上回 ることを周知 させ る取 り組みが必要であ る。

キー ワー ド  子宮頸がん、子宮頸がん検診、受診率、受診行動、影響因子

1.緒  言

  子 宮 頸 が ん は女 性 特 有 の が ん で あ り、 我 が 国 にお け る

2010年 の 罹 患 数 は約11,000人 、 死 亡 数 は2,664人 で 年 々

増 加 傾 向 に あ る1)。39歳 未 満 の女 性 で は罹 患 率 ・死 亡 率

と も に乳 が ん に次 い で2番 目に 多 い1)。 罹 患 の ピ ー ク の

The factors associated with cervical cancer screening behavior and

an approach to improve screening rate : A literature review

Kazuyo Nakamura'', Kaori Watanabe"

"The University of Shiga Prefecture School of Human Nursing

2014年9月30日 受付、2015年1月9日 受理

連絡先:中 村 和代

     滋賀県立大学人 間看護学部

住 所:彦 根市八坂 町2500

e-mail : nakamura. ka@nurse. usp. aC..lP

20歳 代 後 半 ~40歳 は女 性 の妊 孕 期 間 と合 致 して い るた め、

女 性 の リプ ロ ダ ク テ ィ ブ ヘ ル ス に お け る影 響 は大 き い。

  子 宮 頸 が ん は、Human  Papilloma  Virus(HPV)

感 染 か ら子 宮 頸 部 上 皮 内 腫 瘍(Cervical  intraepithelial

neoplasia:CIN)を 経 て 浸 潤 癌 へ と進 行 す る が 、 CIN

の段 階 で発 見 し治 療 す れ ば、 予 後 も良 く子 宮 温 存 も可 能

で あ るた め 、 早 期 発 見 が 重 要 で あ る2)。 ま た、 子 宮 頸 が

ん は 、 一 次 予 防 のHPVワ ク チ ン と二 次 予 防 の 子 宮 頸 が

ん検 診 の併 用 で 、 ほぼ 完 全 に予 防 ・早 期 発 見 が 可 能 で あ

り、 予 防 ・検 診 と も に方 法 が ほ ぼ確 立 で きて い る数 少 な

い癌 で あ る3)。 我 が 国 にお い て も、2010年 よ り公 費 助 成

に よ るHPVワ ク チ ン接 種 が 開 始 され て い た が 、 数 件 の

重 大 な副 反 応 が 報 告 され た。 副 反 応 と ワ クチ ン との 因 果

関 係 が解 明 され て いな い た め、2013年6月 に厚 生 労 働 省

は子 宮 頸 が ん 予 防 ワ ク チ ンの 積 極 的 勧 奨 中 止 を 勧 告4)し 、

現 在 も継 続 さ れ て い る。 そ の た め 、HPVワ ク チ ン接 種

の積 極 的勧 奨 が な され て い な い現 在 、 子 宮 頸 が ん 予 防 に

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おいて検診の果たす意義は大 きい。

  しかし、現在の我が国における子宮頸がん検診の受診

率は、2010年 で24.3%で あり、他の経済開発協力機構加

盟国(Organisation  for Economic  Co-operation  and

Development:OECD)諸 国と比較 して低い1°)。特に、

20歳代女性の検診率は、20~24歳 が10.2%、25~29歳 が

24.2%で 、他の年代よりも非常に低い5)。

  この年代の女性は生殖年代であり、且つ、子宮頸がん

の罹患率が高い1)。そのため、妊婦健康診査の初期検査

で子宮頸がん検診を初めて受けた時に、CINお よび子宮

頸がんと診断されることもあり、子宮頸がんの1~3%

は妊娠中に診断されている6)。また、円錐切除術後の妊

娠は、早産予防のための頸管縫縮術や切迫早産での入院

加療を要 し7)、円錐切除術既往妊婦の早産率22.7%8)は一般の早産率3~5%と 比較 して高いなど、妊娠経過へ

の影響が報告されている。さらに、円錐切除術での頸管

腺 もしくは頸部組織の切除は、妊娠時の感染防御機構の

低下、 あるいは妊娠維持機構の減弱を引き起 こすため

破水しやす く、それが早産を引き起 こすと考え られてい

る9)ことか ら、分娩への影響 もある。また、円錐切除術

は、子宮頸部の構造変化や頸管粘液減少などの機能低下

により、不妊の原因となることも指摘9)されており、妊

孕性への影響も否めない。 このように、子宮頸がんは女

性の リプロダクティブヘルスと大 きく関わっている。

 以上のことか ら、子宮頸がんの予防と子宮頸がん検診

の受診率向上は、女性のリプロダクティブヘルスにおい

て喫緊の課題である。

 先行研究 において、女性の子宮頸がん ・HPVに 関す

る認知度や子宮頸がん検診に対する思い46)、子宮頸がん

検診の受診行動への影響因子11)などに関する報告が散見

されるが、受診率向上に向けた取 り組みを実践 したもの

は少ない。

 本研究の目的は、我が国における20歳代女性の子宮頸

がんおよび検診の認知度、検診に対する思い、受診行動

への影響因子、受診率向上に向けた取 り組みに関する既

存研究を概観 し分析することである。また、本研究の結

果を、20歳 代女性の子宮頸がん検診の受診率向上に向け

た教育プログラムを開発するための基礎資料とする。

II.研 究方 法

1.文 献 検 索 方 法

  「子 宮 頸 が ん 」、 「子 宮 頸 が ん 検 診 」、 「受 診 」、 「教 育 」、

「予 防 」 を 日 本 語 キ ー ワ ー ド に 、 「cervical  cancer」 、 「sc

reening」 、 「education」 、 「prevention」 、 「intervention」

を 英 語 キ ー ワ ー ド と し た 。 国 内 文 献 は 、 医 学 中 央 雑 誌

Web  Ver  5、CiNii  Articleの 検 索 シ ス テ ム を 利 用 し、

海 外 文 献 は 、PubMed、  CINAHLの 検 索 シ ス テ ム を 利

中村 和代

用 して、過去10年 間にっいて検索 した。その結果、医中

誌114件 、CiNii  Article 43件 、 PubMed  86件 、

CINAHL  44件 が検出された。

 原著論文を対象とし、そのタイ トルと要 旨から看護に

関する文献を抽出した。子宮頸がんおよび検診の認知度、

検診に対する思い、受診行動への影響因子 に関する文献

は、対象の年齢を30歳 未満とした。受診率向上 に向けた

取 り組みに関する文献は、文献数が少ないため対象年齢

を規定せずに抽出し、取り組みの内容 と効果を検討 した。

その他に重要 と考える文献にっいても抽出 し、国内文献

31件、海外文献2件 の計33件 を分析対象 とした。

2.分 析方法

  「子宮頸がん ・子宮頸がん検診の認知度」、「子宮頸が

ん検診に対する思い」、「子宮頸がん検診の受診行動への

影響因子」、「子宮頸がん検診の受診率向上 に向けた取 り

組み」の4っ のカテゴリーに文献を分類 し、それぞれ分

析を行 った。

皿.結  果

1.研 究 の動 向

  文 献 検 索 対 象 と した2004年 ~2014年 の10年 間 で 、 子 宮

頸 が ん お よ び 子 宮 頸 が ん 検 診 の認 知 度 、 検 診 に対 す る思

い、 検 診 の受 診 行 動 へ の 影 響 因 子 に 関 す る文 献 は、2010

年1件 、2011年2件 、2012年6件 、2013年13件 、2014年

1件(1~4月)で あ っ た。 受 診 率 向上 に 向 けた 取 り組 み

に関 す る文 献 は、2006年1件 、2010年1件 、2011年1件 、

2012年2件 、2013年4件 、2014年(1~4月)1件 で あ っ

た。

2.研 究デザイン

  「子宮頸がん ・子宮頸がん検診の認知度」 に関する文

献は、15件(量 的記述研究3件 、量的比較記述的研究12

件)で あった。「子宮頸がん検診 に対する思 い」に関す

る文献は、16件(量 的記述研究1件 、量的比較記述的研

究11件、記述相関関係的研究1件 、質的研究3件)で あっ

た。「子宮頸がん検診の受診行動への影響因子」に関す

る文献は、21件(量 的記述研究5件 、量的比較記述的研

究12件、記述相関関係的研究1件 、質的研究3件)で あっ

た(重 複あり)。

  「子宮頸がん検診の受診率向上に向けた取 り組み」に

関する文献 は、10件(量 的記述研究1件 、準実験研究9

件[1群 事後テス トデザイン1件 、2群 事後 テス トデザ

イン1件 、1群 事前事後テス トデザイン4件 、2群 事前

事後テス トデザイ ン3件])で あった。

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子宮頸がん検診の受診行動への影響因子と受診率向上に向けた取り組みに関する文献検討 53

3.子 宮 頸 が ん ・子 宮 頸 が ん検 診 の認 知 度

1)対 象 者

  対 象 者 は、 大 学生12件(医 療 系 学生 を含 む文 献11件 、

含 ま な い文 献1件)、 一 般 女 性3件 で あ った。

2)標 本 サ イ ズ ・標 本 抽 出法

  標 本 サ イ ズ は、100人 未 満2件 、100~500人 未 満9

件 、500~1000人 未 満3件 、1000人 以 上1件 で あ った。

標 本 抽 出 法 は、 全 て 非 確 率 標 本 抽 出 法 で あ っ た。

3)測 定 方 法

  全 て が 質 問 紙 法 で あ り、 質 問紙 は研 究 者 が 先 行 研 究

を参 考 に独 自 に作 成 して い た。 子 宮 頸 が ん に関 す る質

問項 目 は、 子 宮 が ん の種 類 、 疾 患 名 の 認 知 度 、 子 宮 頸

が ん の原 因 、HPVの 感 染 経 路 、 罹 患 が 増 加 して い る

年 代 、 早 期 発 見 ・早 期 治 療 の有 効 性 、HPVワ クチ ン

接 種 後 の 検 診 の 必 要 性 、 子 宮 頸 が ん の 初 期 症 状 、 子 宮

頸 が ん の 情 報 源 な ど で あ った。

  子 宮 頸 が ん 検 診 に関 す る質 問項 目 は、 子 宮 頸 が ん 検

診 の 存 在 、 子 宮 頸 が ん 検 診 の推 奨 受 診 開 始 年 齢 、 推 奨

受 診 間 隔 、 検 査 方 法 や 内容 、 検 診 実 施 施 設 や 場 所 、 無

料 クー ポ ン券 制 度 の認 知 度 な ど で あ った 。

4)分 析 結 果

(1)子 宮 頸 が ん の認 知 度

  子 宮 頸 が ん の 認 知 度 は、 医療 系大 学 生 の み の 対 象 で

は 、18.9%13)~97.7%25)、 医 療 系 を一 部 含 む 大 学 生 で

は 、3.2%24)~81.6%24)、 一 般 女 性 で は、12.8%16)~

76.4%15)で あ った。 一 般 女 性 に お け る認 知 度 が50%以

下 の 項 目 は、 子 宮 が ん の 種 類 、 子 宮 頸 が ん の原 因 、H

PVの 感 染 経 路 、 早 期 発 見 ・早 期 治 療 の 有 効 性 で あ

  っ た。 一 方 、 罹 患 が 増 加 して い る 年 代 の 認 知 度 は 、

52%17)~59.5%2°)で あ った 。

  子 宮 頸 が ん の 認 知 度 が 有 意 に高 い 人 の 特 性 は、 性 交

経 験 あ り12)14)24)、年 齢 が 高 い2)13)14)24)、子 宮 頸 が ん 検 診

の 受 診 経 験 者21)、看 護 系 大 学 生14)'7)23)であ っ た 。 一 方

で、性 交 経 験 の有 無 に よ る有意 差 はな い との報 告 もあ っ

 た17)。

  子 宮 頸 が ん や 検 診 の情 報 源 は、 テ レ ビや ラ ジオ な ど

の マ ス メ デ ィ ア16)2°)24)3°)、家 族 や友 人16)2°)24)3°)、無 料 ク ー

ポ ン券 に 記 載 さ れ た 情 報16)22)3°)、医 療 施 設 の ポ ス タ ー

 や リー フ レ ッ ト16)2°)3°)など で あ った 。

(2)子 宮 頸 が ん 検 診 の認 知 度

  子 宮 頸 が ん 検 診 の認 知 度 は、 医 療 系 大 学 生 の み の対

象 で は12.3%2)~100%3°)で あ った が 、 検 査 方 法 や 内 容

の 認 知 度 は最 も高 くて55.4%25)と 、 他 の 項 目 と 比 較

  して 低 か った 。 ま た 、 医療 系 を 含 む 大 学 生 で は、2.7

%24)~65.0%17)、 一 般 女 性 で は、7.2%27)~28.8%27)で

あ った 。 これ ら対 象 に お い て、 認 知 度 が50%以 下 の項

  目 は、 推 奨 受 診 開 始 年 齢 、 推 奨 受 診 間 隔 、 検 査 方 法 や

内容 、 検 診 実 施 施 設 と場 所 で あ った。 特 に、 検 査 方 法

や 内 容 の 認 知 度 は、7.2%27)~21.3%1)と 他 の項 目 と比

較 して低 か った 。

  子 宮 頸 が ん検 診 の認 知 度 が 有 意 に高 い人 の特 性 は、

性 交 経 験 あ り24)、年 齢 が 高 い2)13)14)24)、看 護 系 大 学 生14)

で あ った。 一 方 で 、 性 交 経 験 の有 無 に よ る有 意 差 は な

い との報 告 もあ った3°)。

4.子 宮頸がん検診に対する思い

1)対 象者

  対象者は、大学生13件(医 療系学生を含む文献12件、

含まない文献1件)、 一般女性3件 であった。

2)標 本サイズ ・標本抽出法

  標本サイズは、量的研究では100~500人 未満10件 、

500~1000人 未満2件 、1000人 以上1件 であり、質的

研究では6~19人 であった。標本抽出法 は、全て非確

率標本抽出法であった。

3)測 定方法

  量的研究 は、全て質問紙法であり、研究者が理論や

先行研究を参考に独自に作成 していた。質的研究では、

全て面接法を用いていた。

4)分 析結果

  子宮頸がん検診の今後の受診意欲を報告 した文献は

  9件 であり、対象者の60.8%28)~97.5%25)に 受診意欲

 がみられた。

  子宮頸がん検診の受診に対す る意識が高い人の特性

 は、子宮頸がん検診の受診経験者2)、性交経験あり17)、

子宮頸がんや検診 の認知度が高い2°)23)、看護系大学

生23)であった。一方で、性交経験の有無による有意差

 はないとの報告 もみられた'2)。また、性交経験あり、

子宮頸がんおよび検診の認知度が高い人 は、検診の必

要性や子宮頸がんに対する危機感を理解 していた17)。

  検診未受診者で今後の受診意思を持っ人は、セクシュ

 ア リティに対する考え方が反映される性イメージを明

 るい ・恥ずか しくないと考えていた22)。また、受診経

験者で今後 も継続 した受診意思がある人 は、 自分を健

康と捉える主観的健康観が高く、検診煩わしさが低かっ

 た22)。

5.子 宮頸がん検診の受診行動への影響因子

1)対 象者

  対象者は、大学生15件(医 療系学生を含む文献14件、

含まない文献1件)、 一般女性5件 、子宮頸がん検診

受診者1件 であった。

2)標 本サイズ ・標本抽出法

  標本サイズは、量的研究では100人 未満2件 、100~

500人 未満11件 、500~1000人 未満3件 、1000人 以上2

件であり、質的研究では6~19人 であった。標本抽出

法は全て非確率標本抽出法であった。

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3)測 定 方 法

  量 的 研 究 は 、 全 て 質 問 紙 法 で あ っ た 。 そ の う ち2件

は 、 が ん 検 診 信 念 尺 度 日 本 語 版24)とHealth  Locus  of

Control(HLC)尺 度32)の 既 存 尺 度 が 使 用 さ れ て い た 。

  そ の 他 は 、 研 究 者 が 先 行 研 究 を 参 考 に 独 自 に 作 成 して

  い た 。 質 的 研 究 で は 、 全 て 面 接 法 を 用 い て い た 。

4)分 析 結 果

  対 象 者 の 子 宮 頸 が ん 検 診 の 受 診 率 は 、18~19歳 女 性

は0%'5)~3.3%'2)、20~29歳 女 性 は0%26)~36.4%15)

  で あ っ た 。

  子 宮 頸 が ん 検 診 受 診 者 の 受 診 の き っ か け は 、 無 料 ク ー

ポ ン 券 が 届 い た2)15)16)2°)24)27)3°)~32)、親 や 友 人 の 勧 め

2)'5)16)23)24)27)31)32)、 が ん の 早 期 発 見 や 自分 の 健 康 管 理 の た

め2)16)23)24)32)、医 療 関 係 者 か ら の 勧 め15)27)3°)~32)、自 治 体

な ど の 広 報15)23)3°)~32)、不 正 出 血 な ど の 症 状 が あ っ た

'5)16)2°)23)、 婦 人 科 受 診 の っ い で'6)2°)24)、な ど で あ っ た 。

  検 診 環 境 に 求 め る 要 件 は 、 女 性 医 師 や 女 性 ス タ ッ フ

  に よ る 検 診'6)2°)3°)36)、検 診 費 用 が 安 い ・無 料 で あ る

15)16)2°)3°)36)、 検 診 時 間 や 期 間 が 自 由16)2°)36)、自 宅 ・職 場 ・

学 校 の 近 く で 受 診 可 能'6)36)、 検 査 前 の 詳 し い 説 明3°)36)、

プ ラ イ バ シ ー が 守 ら れ て い る3°)36)、な ど で あ っ た 。

   検 診 の 未 受 診 理 由 は 、 検 診 へ の 抵 抗 感 ・ 差 恥

心2)13)~16)23)24)27)3°)36)37)、費 用 が か か る13)~16)2°)23)24)27)3°)~32)36)37)、

  自 分 に は 必 要 な い と 思 う'3)~16)23)~25)27)3°)37)、時 間 が な

い2)15)16)23)24)26)3°)~32)36)、面 倒15)16)2°)27)3°)31)32)37)、き っ か け が

な い2)15)26)27)3°)、何 も 症 状 が な い た め16)2°)23)24)27)31)32)、結 果

が 怖 い15)'6)23)25)3°)~32)、検 査 が 怖 い15)22)25)3°)36)、検 査 内 容 が

わ か ら ず 不 安13)15)26)27)3°)、受 診 方 法 や 受 診 場 所 が わ か ら

な い'5)16)22)27)3')32)36)、検 診 の 案 内 が な い た め2)'5)2A)27)3°)、周

囲 に 検 診 を 受 け た 人 が い な い15)16)26)3°)など で あ っ た 。

  検 診 の 未 受 診 者 の 特 徴 は 、 未 婚 者'9)2°)、年 齢 が 若

  い19)、 婦 人 科 受 診 の 経 験 が な い2°)、で あ っ た 。 一 方 、

受 診 者 の 特 徴 は 、 既 婚 者16)32)、 年 齢 が 高 い32)、 婦 人 科

既 往 歴 ・受 診 歴 あ り2)16)、 子 宮 頸 が ん 検 診 の 受 診 経 験

者32)、 就 業 者32)、 子 ど も が い る2°)32)、日 常 か ら子 宮 頸

が ん を 話 題 に す る2)、 で あ っ た 。

  受 診 率 へ 影 響 す る 特 性 は 、 性 交 経 験 あ り24)、 年 齢 が

上 が る に っ れ て'3)'6)24)、看 護 系 大 学 生23)、 子 宮 頸 が ん

お よ び 検 診 の 認 知 度 が 高 い15)こ と で あ り、 こ れ らの 特

性 を 有 す る 対 象 の 受 診 率 が 有 意 に 高 か っ た 。 ま た 、 検

診 未 受 診 者 は が ん 検 診 信 念 尺 度 の 危 険 得 点 が 有 意 に 低

  か っ た24)。

  受 診 行 動 へ の 影 響 因 子 は 、 子 宮 頸 が ん 検 診 に 対 す る

関 心28)、 産 婦 人 科 受 診 経 験 の 有 無28)、 子 宮 頸 が ん 検 査

方 法 の 認 知28)、 子 宮 頸 が ん 検 診 の 必 要 性 や 有 効 性28)、

検 査 や 結 果 に 対 す る 受 け 止 め 方21)、 リ プ ロ ダ ク テ ィ ブ

ヘ ル ス 意 識 が 高 い22)、 検 診 煩 わ し さ が 低 い22)、 頸 が ん

や 検 診 の 認 知 度 が 高 い21)22)28)、な ど で あ っ た 。

中村 和代

6.子 宮頸 が ん 検 診 の 受 診 率 向上 に 向 け た取 り組 み

1)対 象 者

  対 象 者 は、 大 学 生3件(全 て 医 療 系 学 生 を含 む)、

高 校 生1件 、 一 般 女 性6件 で あ った。

2)標 本 サ イ ズ ・標 本 抽 出法

  標 本 サ イ ズ は、 量 的 研 究 は100人 未 満4件 、100~

500人 未 満4件 、1000人 以 上2件 で あ っ た。 標 本 抽 出

法 は、 全 て 非 確 率 標 本 抽 出法 で あ った。

3)測 定 方法

  質 問紙 法 、 携 帯 メ ール を用 い た ア ンケ ー ト、 自治 体

の受 診 者 数 お よ び 受 診 率 の統 計 が使 用 され て い た。 質

問 紙 法 の う ち2件 は、 日 本 語 版Health  Promoting

Lifestyle  Profile ll(HPLP  I1)33)、 自 己 効 力 感 尺 度4°)、

健 康 信 念 モ デ ル尺 度4°)の既 存 尺 度 を 使 用 して い た。 そ

 の他 は、 研 究 者 が 先 行 研 究 を参 考 に独 自 に作 成 して い

 たQ

4)分 析 結 果

  受 診 率 向上 に向 け た取 り組 み と して、 自治 体 の 無 料

 ク ー ポ ン券 制 度41)、検 診 対 象 者 へ の 受 診 勧 奨36)39)42)、

健 康 教 育3A)35)37)、ピア エ デ ュケ ー シ ョ ン38)A°)、な どが 実

施 さ れ て い た 。

   自治 体 の 子 宮 頸 が ん 検 診 無 料 ク ー ポ ン券 制 度 は、 受

診 率 の増 加 を 目的 と して2009年 か ら開始 され 、 対 象 年

齢 者 へ の無 料 ク ー ポ ン券 が 配 布 さ れ て い る。 検 診 対 象

者 へ の受 診 勧 奨 で あ る コ ー ル ・リコー ル プ ロ グ ラ ム は、

郵 便 ・電 話 ・携 帯 メ ール マ ガ ジ ンな どを 用 いて 検 診 の

受 診 を促 す取 り組 み を 実 施 して い た。 健 康 教 育 は、 対

象 者 へ の子 宮 頸 が ん に関 す る健 康 教 育 講 座 の 提 供 に よ

 る教 育 プ ロ グ ラム を実施 して い た。 ピア エデ ュ ケー シ ョ

  ンは、 仲 間 同 士 で 子 宮 頸 が ん にっ い て の正 しい知 識 ・

ス キ ル ・行動 を 共 有 し合 って 、 対 象 者 の主 体 的 な行 動

変 容 を 目的 に 実 施 され て い た。

  子 宮 頸 が ん お よ び検 診 の認 知 度 へ の効 果 は、 健 康 教

育1件 と ピアエ デ ュケ ー シ ョ ン1件 で評 価 され て お り、

  と も に取 り組 み に よ る認 知 度 の 上 昇 が み られ た35)38)。

検 診 に対 す る思 い へ の 効 果 は、 健 康 教 育4件 で の 評 価

 に お い て、 全 て で 検 診 に対 す る受 診 意 欲 が 向 上 す る効

果 が み られ たn)31)36)37)。検 診 の受 診 行 動 へ の 効 果 は、 無

料 ク ー ポ ン券 配 布1件 、 受 診 勧 奨3件 、 健 康 教 育1件 、

  ピア エ デ ュケ ー シ ョ ン1件 で 評 価 さ れ て お り、 受 診 行

動 を と る行 動 変 容 に効 果 が み られ た の は、 無 料 ク ー ポ

  ン券 配 布 と郵 便 ・電 話 に よ る受 診 勧 奨ai)a2)であ った。

IV.考  察

1.看 護における子宮頸がんに関する研究の動向

 看護における子宮頸がんに関す る文献 は、過去10年 間

で年々増加 しており、特に2012年 から増加傾向であった。

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子宮頸がん検診の受診行動への影響因子と受診率向上に向けた取り組みに関する文献検討 55

これは、子宮頸がんが予防可能ながんとして注目を得た

ことが影響 していると考えられた。また、2004年 に厚生

労働省により子宮頸がん検診開始年齢が20歳 へと引き下

げられ、20歳 代女性の子宮頸がんの認知度や検診の受診

行動の実態調査が増加 し、同年代女性の受診率の低さが

明らかになった。これ らのことから、受診率向上に向け

た取 り組みの必要性が高まり、受診率向上に効果的な取

り組みを構築 し評価するために、文献数が増加 したと考

えられた。

2.現 状と今後の課題

  20歳代女性の子宮頸がんおよび検診の認知度は、医療

系学生では全体的に高いが、項 目による差を認めた。医

療系学生の認知度が全体的に高い理由は、大学で関連講

義を受 ける機会があることや、医療分野への関心が高い

ことなどが考え られた。医療系以外の対象は、認知度が

50%以 下の項目が多 く、一般女性の認知度が低い現状が

明らかになった。認知度の結果に幅がみられるのは、質

問紙 は研究者が独自に作成 したものであり、質問項目の

表現に統一性がないことが回答に影響 しているためと推

察された。また、子宮頸がんという疾患名の認知度は高

いが、子宮頸がんの原因についての認知度は低いといっ

た質問項目間の認知度の差 も影響 していると考えられた。

 厚生労働省の子宮頸がんに関する対策が開始されたこ

とで、子宮頸がんおよび検診の情報が自治体やマスメディ

アから発信される機会が増加 し、女性が知識や情報を得

る機会が増えたと考えられる。 しか し、20歳 代女性の認

知度 は低かった。その理由は、20歳 代女性の情報源がテ

レビ ・ラジオ、家族 ・友人、無料 クーポ ン、医療施設の

ポスターなどの受動的な情報収集が主であることが関係

していると考え られた。受動的な情報収集では、子宮頸

がんが自分に関係すると認識されに くく、その後の能動

的な情報収集行動や正 しい知識の獲得が困難となる。ま

た、友人に検診の受診経験者が少な く正 しい情報を得 ら

れない、無料クーポン券が確実に対象者へ届いていない、

医療施設の受診機会が少ない年代のため効果的に情報を

入手できていないことが推察された。 したがって、20歳

代女性が容易で確実に情報を得 られるような、効果的な

情報発信方法を検討する必要がある。また、情報源が学

校教育と答えた人は少なかった。 この背景には、文部科

学省の学習指導要領の性教育には、子宮頸がんに関する

内容は含まれていないA3)ことも少なか らず影響 している

と推察された。 したが って、学校教育課程における、子

宮頸がんに関する知識普及が重要 と考えられた。

 検診に対する思いについては、20歳 代女性の今後の受

診意欲は高いにもかかわらず、実際の受診行動に結びっ

いていないことが明 らかになった。受診意欲には、子宮

頸がんや検診に対する認知度や、検診の必要性に対する

理解度が影響 している。一般女性 と比較 して認知度の高

い医療系学生であって も、受診行動には結びついていな

いことが受診率か ら推測された。 このことから、認知度

は受診行動の影響因子であるが、認知度の向上だけでは

受診行動にまでは至 らないことが明らかとなった。また、

検診の非定期受診者は定期受診者 と比較 して、検診への

障害を強く認知 し、自己効力感が低 く、子宮頸がんの罹

患性の認識が低 く44)、これ らが検診の受診を妨げる大き

な障害 となることが示唆された。 したがって、受診行動

という行動変容に至るには、検診による利益が障害を上

回るといった検診の必要性が理解できるような教育や支

援が必要 と考えられた。さらに、受診環境を整備 し、未

受診理由の解消に向けた教育や支援体制の構築と実践で、

その効果を評価していく取り組みの重要性が示唆された。

 我が国における受診率向上に向けた取 り組みは少な く、

標本サイズは小さく、取 り組み内容 も標準化 されたもの

はなかった。健康教育や ピアエデュケーションは、認知

度や検診に対する受診意欲の向上に効果がみられたが、

行動変容には至らなかった。 したがって、認知度の上昇

や検診に対する意識変容だけでは行動変容 にまで至 らな

いことが明らかになった。一方、効果がみられたコール ・

リコールプログラムは、英国では国家単位で実践され、

効果が証明されている支援プログラムである45)。このよ

うに、海外で効果が証明されているプログラムを、我が

国で展開してい くことも検討 していくべきであろう。受

診率向上に向けた取り組みに関する文献が少な く、無料

クーポン券の配布や、郵便 ・電話による受診勧奨以外に

は、行動変容に効果的な取 り組みを特定することはでき

なかった。効果的な取 り組みをさらに検討するためには、

介入群 とコントロール群を設定 した縦断的研究の実践を

積み重ね、効果を評価 していくことが必要と考え られた。

V.結  語

1.20歳 代女性の子宮頸がんおよび検診の認知度は、他

の子宮頸がん検診対象年齢層 と比較 して低かった。

2.20歳 代女性の子宮頸がん検診の受診意欲 は高いが、

受診率へは反映されてお らず、受診意欲があっても受

診行動には至っていなか った。

3.子 宮頸がん検診の受診のきっかけ、検診環境へ求め

る要件、未受診理由が明 らかになった。

  受診行動への影響因子は、子宮頸がんおよび検診の

認知度、検診の必要性の理解度、自分の健康への関心、

検診への抵抗感が小さいことであった。

4.受 診行動をとる行動変容に効果がみられた取り組み

は、無料 クーポン券配布および郵便 ・電話 による受診

勧奨であった。

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56

文   献

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   子 宮 頸 が ん 検 診 受 診 の 行 動 変 容 ス テ ー ジ と関 連 要 因

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25)助 川 明子,大 重 賢 治,坂 梨 薫,他:ヒ トパ ピ ロ ー マ

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子宮頸がん検診の受診行動への影響因子と受診率向上に向けた取り組みに関する文献検討 57

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43)文 部 科 学 省:学 校 教 育 全 体 で取 り組 む べ き課 題 と学

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    yo 3/022/siryo/06092114/001/004/003,  htm

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