Upload
others
View
8
Download
0
Embed Size (px)
Citation preview
1. 背景
薄層に支持された杭の先端支持力の評価方法に関しては、H19杭基礎設計便覧 参考資料6に薄層に支持された場所打ち杭の記載があるが、その他杭種に対しての記載はないのが実状である。
そのため、場所打ち杭と同様の評価手法による解析、もしくは既往の鉛直載荷試験結果の分析を実施し、場所打ち杭以外の薄層支持の設計法を提案することとする。
2. �鋼管杭工法の薄層支持に�おける評価方法の検討
H19杭基礎設計便覧参考資料6では阪神高速道路公団の設計要領に基づき、薄層に支持された場所打ち杭の設計法の概要が紹介されている。ここでは、まず同設計要領の作成に際して参考にされた阪神高速道路公団技報
(1990)「薄層支持杭の支持力特性に関する研究」に記載された場所打ち杭の薄層支持地盤における評価法の概要を説明する。次に、中掘り鋼管杭(セメントミルク噴出攪拌方式)および鋼管ソイルセメント杭についても場所打ち杭と同様の考え方が適用可能であることを説明する。
2.1 �場所打ち杭の薄層支持地盤に�おける評価方法
阪神高速道路公団技報(1990)「薄層支持杭の支持力特性に関する研究」の内容を以下に示す。(1)概要
阪神高速湾岸線脇浜工区で行われた
薄層支持地盤における場所打ち杭の鉛直載荷試験をシミュレーション解析により再現し、その支持力機構および支持力特性を明らかにした。
さらに有効層厚比(杭先端以深の支持層厚と杭径の比)の値に応じて先端支持力度qdを低減する補正係数αを導入し、薄層支持杭の支持力設計法についてその評価方法を確立した。(2)解析結果
図-1に示す解析モデルを用いて、有限要素解析を実施した。載荷試験が行われた杭は直径が1.2mであり、杭先端以下の支持層の厚さは杭径と等しい1.2mとなっている。・ 杭頭荷重と沈下量(図-2)、杭先端荷
重と沈下量(図-3)、杭の軸力分布(図-4)は概ね一致し、支持力特性は表現されており、解析手法に関する妥当性を確認した。
・ 載荷荷重の増加に伴う地中応力度σzの増加は杭の底面部だけで周辺地盤には応力が伝播しない、いわゆるパンチングが生じている(図-5)。
(3)薄層の先端支持力度の評価法有効層厚Hと杭径Dの比H/D(図-6)
を有効層厚比とし、H/Dと先端支持力度の評価法について整理を行った。●H/D=1
現場載荷試験のシミュレーション解析の結果からH/D=1の場合は、パンチング破壊が想定でき、その極限支持力は支持層下位の粘性土により設定される。
Rc=3・qu・A’ここに、
薄層に支持された鋼管杭の先端支持力の評価鋼管杭・鋼矢板技術協会 道路・鉄道技術委員会
図-1 解析モデル
埋土(弾性体)
10D
D/2標準貫入試験
D :杭径ℓ :杭長H :有効層厚
標尺N値
30 402010
杭
CL
H
ℓ10
D
礫混じり細砂(弾性体)
砂礫(弾性体)シルト質細砂
(tij-sand model)礫混じり粘土
(松井・阿部モデル)砂礫(tij-sand model)砂礫(tij-sand model)粘土(松井・阿部モデル)砂礫(tij-sand model)シルト質粘土
(松井・阿部モデル)
シルト質粘土(松井・阿部モデル)
砂混じり粘土(松井・阿部モデル)
シルト質粘土(松井・阿部モデル)
礫混じり粘土(松井・阿部モデル)砂礫(tij-sand model)
層厚
(m) (m)
2468
101214161820222426283032343638
3.00
3.75
2.651.30
3.00
6.35
15.151.75
図-2 杭頭荷重と沈下量
沈下量(cm)
0
2
4
6
8
10
12
14
0 450 900杭頭荷重(tf)
1350 1800
:杭頭沈下量(実測値):杭先端沈下量(実測値):杭頭沈下量(解析値):杭先端沈下量(解析値)
図-3 杭先端荷重と沈下量
杭先端沈下量(cm)
0
2
4
6
8
10
12
14
0 150 300 450 600杭先端荷重(tf)
:実測値:解析値
14
Rc :下位粘土層の極限支持力qu :下位粘土層の一軸圧縮強度A’ : 薄層での分散角を考慮しない下位粘
土層天端における仮想支持面積
●薄層の影響を無視できる有効層厚有効層厚比H/Dを変化させて解析
を行い、杭先端荷重と杭先端沈下量の関係を確認した(図-7)。杭径の10%時の沈下量における杭先端荷重は、H/D=3まではH/Dに比例して増加するが、H/D>3ではほとんど増加せず、H/D≧3に対しては薄層の影響が無視できることを確認した。
これらの結果をもとに、地盤から決まる杭の極限支持力を、以下の式に設定した。
Ru=α・qd・A+UΣlif i
ここに、α : 薄層の程度を考慮した支持力度の補
正係数(先端支持力度qdを表-1の先端支持力度に補正係数αを乗じて低減、支持層が砂礫層の場合は図-8、砂層の場合は図-9により求める)
qd : 杭先端で支持する単位面積あたりの極限支持力度
A : 杭先端面積U : 杭の周長li : 周面摩擦力を考慮する層の層厚fi : 周面摩擦力を考慮する層の最大周面
摩擦力度
先端支持力度qdの補正係数αの 設定方法の考え方❶ H/D≦1の場合の薄層支持の破壊
モードはパンチング破壊を想定でき、その極限支持力は支持層下位の粘土層により設定する。
❷ H/D≧3の場合、薄層の影響は無視する。
❸ 1<H/D<3の中間領域に関しては、H/D=1で期待できる支持力とH/D=3で期待できる支持力を線形配分する。
2.2 �中掘り鋼管杭の薄層支持の�適用性検討
(1)概要前述した場所打ち杭の薄層支持と同
様の解析方法で、薄層支持の中掘り鋼管杭の鉛直載荷試験をシミュレーション解析により再現し、その支持力機構と支持力特性を確認した。さらに有効層厚比(杭先端以深の支持層厚と杭径
の比)の値に応じて先端支持力度qdを低減する補正係数αを導入し、薄層支持杭の支持力設計法についてその評価方法を確立した。(2)解析結果
図-10に示す解析モデルを用いて、有限要素解析を実施した。
載荷試験が行われた杭は直径が1.0m(根固め球根径1.15m)であり、杭先端以下の支持層の厚さは0.9mとなっている。・ 杭頭荷重と沈下量(図-11)、杭先端
荷重と沈下量(図-12)、杭の軸力分布(図-13)は概ね一致し、支持力特性は表現されており、解析手法に関する妥当性を確認した。
・ 載荷荷重の増加に伴う地中応力度σzの増加は杭の底面部だけで周辺
表-1 先端支持力度
先端土質 qd(tf/m2)砂礫層*(N値≧30) 500
砂層(N値≧30) 250* 大阪層群砂層を含む
図-5 杭先端付近の地盤の鉛直方向垂直応力σz
6,400
4,800
3,200
1,600
0
-1,6000 0.3 0.6 0.9 1.2 1.5 1.8 2.1 2.4
杭中心からの水平距離(m)
鉛直
応力
σz (
kN/m
2 )
粘土
杭
D=1.2m
砂れき 0.50
1.0
1.50
2.0
3.0m
図-4 杭の軸力分布
地装面からの深さ(m)
0
4
8
12
16
20
24
28
32
36
杭軸力(tf)0 400 800 1200 1600
:実測値:解析値
図-6 有効層厚
杭径D
薄層(N≧30)
下位粘土層
有効層厚
H
根入れΔH
図-7 FEMによる杭先端荷重と沈下量との関係
杭先端荷重(tonf)0 1000 20000
5
10
15
(%)
杭先端沈下量
杭径
1 2
2
3
3
4
4
5
5
6
6
凡例 有効層厚比H/D=0H/D=1H/D=2H/D=3H/D=5H/D=∞
1
図-8 支持層が砂礫の場合の補正係数α有効層厚比 H/D
補正
関係
α
0
qu=50 tf/m2
qu=40 tf/m2
qu=30 tf/m2
qu=20 tf/m2
qu=10 tf/m2
0.5
1.0
1 2 3
図-9 支持層が砂の場合の補正係数α有効層厚比 H/D
補正
関係
α
0
qu=50 tf/m2
qu=40 tf/m2
qu=30 tf/m2
qu=20 tf/m2
qu=10 tf/m2
0.5
1.0
1 2 3
15
地盤には応力が伝播しない、いわゆるパンチングが生じている(図-14)。
(3)薄層の影響を無視してよい有効層厚H/D=1の場合は、解析結果からパン
チング破壊が想定出来るので、場所打ち杭と同様の考え方を行うものとする。
次に、有効層厚比H/Dを変化させて解析を行い、杭先端荷重と杭先端沈下量の関係を確認した(図-15)。その結果、場所打ち杭と同様に、H/D=3まではH/Dに比例して杭径10%沈下量時
の杭先端荷重は増加するが、H/D>3ではほとんど増加せず、H/D≧3に対しては薄層の影響が無視できることを確認した。
2.3 �鋼管ソイルセメント杭の�薄層支持の適用性検討
(1)概要鋼管ソイルセメント杭についても前
記場所打ち杭の薄層支持と同様の解析方法で、薄層(有効支持層厚:1.66m)支持の鋼管ソイルセメント杭(鋼管径/ソイルセメント径=φ1000/φ1200)の鉛直載荷試験をシミュレーション解析により再現し、その支持力機構と支持力特性を確認した。(2)解析結果
図-16に示す解析モデルを用いて、有限要素解析を実施した。
・ 杭頭荷重と沈下量(図-17)、杭先端荷重と沈下量(図-18)、杭の軸力分部(図-19)は概ね一致し、支持力特性は表現されており、解析手法に関する妥当性を確認した。
・ 載荷荷重の増加に伴う地中応力度σzの増加は杭の底面部だけで周辺地盤には応力が伝播しない、いわゆるパンチングが生じている(図-20)。
(3)薄層の影響を無視してよい有効層厚H/D=1の場合は、解析結果からパ
ンチング破壊が想定出来るので、場所
図-10 解析モデル
10m0.5mシルト質細砂(S1)シルト質細砂(S2)
砂礫(S3)
シルト混じり細砂(S4)
シルト質粘土(C1)シルト質粘土(C2)
中砂(S5)砂礫(S6)粘土(C3)礫混じり砂(S7)
粘土(C4)礫混じり粗砂(S8)細砂(S9)中砂(S10)
粘土(C5)
シルト混じり細砂(S11)粘土(C6)粘土(C7)
シルト質細砂(S12)砂質粘土(C8)中砂(S13)粘土(C9)砂(S14)
粘土(C10)
CL
27.9m
鋼管杭
根固めコンクリート
1.0m
0.9m
9.1m
図-11 杭頭荷重と沈下量
杭頭沈下量(mm)
実線:解析値●:実測値
杭頭荷重(MN)0 2 4 60
30
60
90
120
図-12 杭先端荷重と沈下量
杭先端沈下量(mm)
実線:解析値●:実測値
杭先端荷重(MN)0 1 20.5 1.5 2.50
25
50
75
100
図-13 杭の軸力分布
地表面からの深度(m)
実線:解析値プロット:実測値
軸力(MN)0 2 4 60
10
20
30
図-14 杭先端付近の地盤の鉛直方向垂直応力σz
Δσz (MPa)
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
4.0
3.0
2.0
1.0
0.0
-1.0
杭中心軸からの距離(m)
杭の半径
f)先端抵抗力=2.00MN
根固めコンクリート
シルト質粘土層
細砂層 0.45D1D
2D
図-15 杭先端荷重と杭先端沈下量
0 3 6 9杭先端荷重(MN)
杭先
端沈
下量(
mm
)
0
30
60
90
120
0 1D
h=0Dh=0.9D
h=1.5Dh=2D
h=2.5D
h=3Dh=4D
h=5D,∞
図-16 解析モデル
12m0.6m
0.5m
シルト質粘土
砂混りシルト
シルト混り粘土
シルト混り粘土
シルト混り粘土
砂礫
砂礫
シルト質粘土シルト混り砂
盛土(粘土混り砂礫)
シルト質砂
盛土(砂礫層)盛土(シルト混り砂)
ソイ
ル長
341
0010
D鋼
管長
335
00
図-17 杭頭荷重と沈下量
0 4 8 12 160
20
40
60
80
100
120
140
実線:解析値●:実測値
杭頭沈下量(mm)
杭頭荷重(MN)
図-18 杭先端荷重と沈下量
杭先端荷重(MN)0 1 2 3 4 5 6
杭先端沈下量(mm)
0
20
40
60
80
100
120
実線:解析値●:実測値
16
打ち杭と同様の考え方とする。次に、有効層厚比H/Dを変化させて
解析を行い、杭先端荷重と杭先端沈下量の関係を確認した(図-21)。その結果、場所打ち杭と同様に、H/D=3まではH/Dに比例して杭径10%沈下量時の杭先端荷重は増加するが、H/D>3ではほとんど増加せず、H/D≧3に対しては薄層の影響が無視できることを確認した。2.4 まとめ
場所打ちRC杭、中掘り鋼管杭及び鋼管ソイルセメント杭の薄層支持地盤における鉛直載荷試験を数値解析により再現し、各杭の薄層支持力特性および層厚を変えた場合の杭先端荷重〜杭先端沈下量関係を確認した。その結果、各杭ともに、以下の事項が確認された。・ H/D=1付近では、パンチング破壊
が発生していると想定される。・ 有効支持層厚比を変化させた場合の
杭先端荷重〜沈下量関係を確認した結果、H/D≧3に対しては薄層の影響が無視できることを確認した。この結果より、中掘り鋼管杭及び鋼
管ソイルセメント杭ともに、場所打ち杭と同様の評価方法が可能であると考えられる。
3. �鋼管杭工法における�薄層支持力評価方法(案)
前述の検討の結果、中掘り杭工法(セメントミルク噴出攪拌方式)および鋼管ソイルセメント杭工法については、以下の方法で評価する。(1)有効層厚比(H/D)の考え方
有効層厚比(H/D)の定義は、以下の通りである。
H: 根固め球根下端から支持層下面までの距離
D: 根固め球根径ここで、根固め球根の形状は工法
毎に異なっている。しかし、適用に当たっては、安全側となるように各工法の最大値で設定する(表-2参照)。
D=Dp+200(mm)H1=1.75×Dpかつ1.0m以上なお、鋼管ソイルセメント杭工法
は、形状は統一されているので「D:ソイルセメント柱径」としてよい。
(2)補正係数αの考え方薄層支持杭の先端支持力度qd’は薄
層の程度を考慮して、以下の式により算定する。
1≦H/D≦3 qd’=α・qd ❶ここに、qd’ : 先端支持力度(kN/m2)qd : 支持層の極限支持力度(kN/m2)α : 薄層の程度を考慮した支持力度
の補正係数で式❷による。α= 1/2(H/D-1)
-3qu/2qd(H/D-3) ❷H : 根固め球根下端から支持層下面
までの距離D : 根固め球根径もしくはソイルセ
メント柱径qu : 下位粘土の一軸圧縮強度(kN/m2)ここで、中掘り杭工法及び鋼管ソイ
ルセメント杭工法の場合、支持層のN値によりqdが異なるため、補正係数の値は、場所打ち杭と異なり随時検討する必要がある。
載荷試験でのqd値(設計評価値)を採り、下位粘性土層のqu値をパラメータとした場合の補正係数αと有効層厚比H/Dの関係を図-22および図-23に示す。
各1例と少ないが試験結果も併せてプロットしており、実線は試験でのqu
値を用いた評価線である。これからも提案評価法の適用性がうかがえる。
図-19 杭の軸力分布
杭の軸力(MN)
深度(m)
0 5 10 150
5
10
15
20
25
30
35
実線:解析値プロット:実測値
図-20 杭先端付近の地盤の鉛直方向垂直応力σz
-2.0
0.0
2.0
4.0
6.0
8.0
10.0
12.0
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6
杭の半径
Δσ
z(M
Pa)
□ :ソイルセメント先端(杭側)■ :ソイルセメント先端(支持層側)◯ :支持層中間深度× :支持層底面▲ :粘土層上面▽ :ソイルセメント先端から2.4m下方
杭先端荷重=4.63MN
杭中心軸からの距離 (m)
図-21 杭先端荷重と杭先端沈下量
0
20
40
60
80
100
120
140
160
0 2 4 6 8 10 12 14杭先端荷重(MN)
杭先端沈下量(mm)
現場載荷試験
2D3D
無限大
図-22 中掘り杭(セメントミルク噴出攪拌方式)の結果
(砂地盤N値=50(qd=7,500kN/m2)、qu=240kN/m2)
有効層厚比 H/D※ 載荷試験の有効層厚比H/Dが1未満(0.78)のため、
H/D=1として評価・プロット
補正
係数
α
0
0.5
1
0 0.5 1 1.5 2 2.5 3
qu=500kN/m2
400300200100
載荷試験結果※試験結果での補正係数補正係数
図-23 鋼管ソイルセメント杭工法の結果(砂礫地盤N値=50(qd=10,000kN/m2)、qu=428kN/m2)
有効層厚比 H/D
補正
係数
α
0
0.5
1
0 0.5 1 1.5 2 2.5 3
qu=500kN/m2
400200100300
載荷試験結果試験結果での補正係数補正係数
表-2 中掘り杭工法(セメントミルク噴出攪拌方式(鋼管杭))の根固め球根の形状
工法 TAIP工法 TN工法 TBS工法 (RP、RBタイプ) FB9工法 KING工法 最大値
根固め球根径(mm) D=Dp+18 D=Dp+150 D=Dp+200 Dc=Dp+200 D=Dp+(100〜200) D=Dp+200
根固め球根長(mm) H1=1.0×Dp H1=1.5×Dp H1=1.0m H1=1.5×Dp H1=1.75×Dp H1=1.75×Dp
かつ1.0m以上
17