11
-207 腕の持久的トレーニング効果の全身作業能に 及ぼす生理的貢献度 一 脚筋群を主体とした持久的競技における乳酸性作業閾値 (LT )からみた腕作業能の評価とトレーナビリティー (共同研究者) 学  同       彦 井 浩 孝  脇 田 裕 久 同       八 木 規 夫  高 木 英 樹 同       冨 樫 健 二  西 端   泉 同 ∇     浜 中 健 二 .波 学  男  生 Physiological Contribution of the Effect of Endurance Arm 十   十Training to Work Capacity ―  Evaluation of Work Capacity in Arm Cranking Based on Lactate Threshold and Arm Trainab Ⅲty for Endurance Leg -trained Man ― by Hideaki Soya Department of Health  and  Physical Education Facul £’ducation, Mie University・ Hirotaka Hikoi Grad 雄漉School , Mi召Univers 丿砂 Hirohisa Wakita , Norio Yagi, Hideki Takagi , Kenji Togashi Department Of Health and Physical Education Facul 可Education Mie びnivers丿印 コzumi Nishibata College o/匸阻7ぷcine and Science, Mk衣!Jniversity Kenji Hamanaka £)ゆαΓtment of Psychuがry, School of Medicine, Mie び戒 脚7 ‘s跿y デサントスポーツ科学Vo 凵3

腕の持久的トレーニング効果の全身作業能に 及ぼす生理的貢 …...LTr 群)とした.また,それに対して,腕筋群の 活動を主体とする競泳選手9

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Page 1: 腕の持久的トレーニング効果の全身作業能に 及ぼす生理的貢 …...LTr 群)とした.また,それに対して,腕筋群の 活動を主体とする競泳選手9

-207 -

腕の持久的トレーニング効果の全身作業能に

及ぼす生理的貢献度

一脚筋群を主体とした持久的競技における乳酸性作業閾値

(LT )からみた腕作業能の評価とトレーナビリティー

(共同研究者)

三 重 大 学  征 矢 英 昭

同       彦 井 浩 孝  脇 田 裕 久

同       八 木 規 夫  高 木 英 樹

同       冨 樫 健 二  西 端   泉

同 ∇     浜 中 健 二

筑 .波 大 学  野 村 武 男  生 田 泰 士

Physiological Contribution of the Effect of Endurance Arm

十   十Training to Work Capacity

― Evaluation of Work Capacity in Arm Cranking Based on Lactate Threshold

and Arm Trainab Ⅲty for Endurance Leg -trained Man  ―

by

Hideaki Soya

Department of  Health and Physical Education ,

Facul 印 可 £’ducation, Mie  University・

Hirotaka Hikoi

Grad 雄漉School , Mi 召Univers 丿砂

Hirohisa Wakita , Norio Yagi, Hideki Takagi , Kenji Togashi

Department Of Health and Physical Education ,

Facul 印 可Education≫ Mie びnivers丿印

コzumi Nishibata

College o/匸阻7ぷcine  and Science, Mk 衣!Jniversity

Kenji Hamanaka

£)ゆαΓtment  of Psychu がry, School  of Medicine , Mie び戒脚7‘s跿y

デサントスポーツ科学Vo 凵3

Page 2: 腕の持久的トレーニング効果の全身作業能に 及ぼす生理的貢 …...LTr 群)とした.また,それに対して,腕筋群の 活動を主体とする競泳選手9

-208 -

Takeo Nomura

Institute ofリミ勉ilth and Sports Science,乃ukuba  University

‥ Yasushi Ikuta    十

Gradual 召School , Tsuん勍α £Jniversity

ABSTRACT

The purpose of this study was to investigate the work capacity in

arm cranking based on lactate threshold (LT )and arm trainability

for endurance leg-trained man . Eleven leg― trained (LTr ), nine arm

一trained  (ATr ) and eight untrained  (UTr ) subjects performed a

progressive arm cranking test to eχhaustion . Maχimal power output

(PO max ) and LT in ATr were significantly higher than those in

LTr and UTr . LTr attained a significantly higher PO max, but their

LT was not significantly higher than that of UTr. Furthermore, the

time to peak blood lactate (TPL ) during recovery in ATr was sig-

nificantly shorter than those in LTr and UTr。

In conclusion , these data suggested that the eχhaustion in LTr

before attainment to of ma χimal central response was due to the

lower local work capacity seen in the LT, threfore, it is demonstrated

that the arm trainability in LTr was higher.

要   旨

本研究の目的 は,脚筋群主体の持久的トレーニ

ングを行っている競技選手11 名(LTr 群),腕筋

群主体の専門的トレーニングを行うエリート競泳

選手9 名 (ATr 群), トレーニ冫 グを行っていな

い者8 名(UTr 群)を対象に持久的腕作業能の評

価を乳酸性作業閾値(lactate threshold : LT)

を 指標 とし て試 み, LTr 群 にお け る腕筋群 の

trainability*の貢献度を横断的に検討す ること

である.

腕クランキングにおける最大仕事量(maximal

power output : PO max) は, ATr 群で有意に

最も高く, LTr 群においてUTr 群より有意な高

値を示した.LT は, ATr 群で他の群より有意な

高値を示 したが, LTr 群とUTr 群との間に有意

差は認められなかった.さらに,運動後回復期の

血中乳酸(b160d lactate : La)の拡散能を検討し

た 結果,La が最 も高 い 値 を示 す ま で の時 間

(time to peak La : TPL)がATr 群で有意に短

かった.

結論として, LTr 群ではLT を指標とする局所

的持久性が低いため,中枢応答が最大に達する前

に局所 の疲労 によりall ―ou 凵こ致 ったこと が推

デサントスポーツ科学VO 冂3

Page 3: 腕の持久的トレーニング効果の全身作業能に 及ぼす生理的貢 …...LTr 群)とした.また,それに対して,腕筋群の 活動を主体とする競泳選手9

察 され, LTr 群 におけ る腕筋群 のtrainability が

高 いこ とが示 唆 さ れた.

* trainability : ト レーニング効果の可能性

緒   言

一般に,陸上中・長距離走競技や自転車競技な

どのような脚運動を主体とした競技では,主働筋

である脚筋群を中心とした持久的トレーニングが

実施されていることが多い.しかし,陸上競技の

腕振りや自転車競技における上体の支持には腕筋

群をはじめとした上体筋群の関与も少なくないこ

とから,腕筋群の持久的作業能を見積もる必要性

が示唆される.一方,水泳競技 のように腕筋群の

活動を主体とする競技では,腕筋群のトレーニン

グによって腕作業能の水準がより高いことが予想

される.七 たがって,腕筋群トレーニングと比較

して,脚運動を主体とする持久的トレーニングが

腕作業能にどの程度の影響をもたらしているかを

検討することは,陸上中・長距離走競技や自転車

競技などのトレーニング処方を考える際の有用な

情報を提供するものと考えられる.

本研究は,脚筋群主体の持久的トレーニングを

行っている競技選手,腕筋群主体の専門的トレー

ニングを行っているエリート競泳選手およびまっ

たくトレーニングを行っていない者を対象に,腕

クランキングにおける作業能の評価を乳酸性作業

閾値(lactate threshold : LT)を指標として検

討すること. また,LT および腕クランキング後

回復期における血中乳酸(blood lactate : La)動

態を群間で比較す ることにより,全身持久的ト

レーニングが腕作業能に及ぼす影響,さらには脚

筋群主体の競技における腕および上体筋群のtra-

inability の程度を横断的に検討することを目的

とした.

1 .方   法

1.1  被検者

デサントスポーツ科学Vol . 13

-209-

被検者は,健常な男子大学生28 名を対象とし

た.その内訳は,規則的にトレーニングを行って

いる競泳選手9 名,陸上競技中・長距離走選手7

名,トライアスロン選手2 名,自転車競技選手1

名,ラグビー選手1 名および習慣的な身体活動を

行っていない者8 名であった.このうち,主に脚

筋群を主体とした持久的トレーニングを行ってい

る者11 名を脚トレーニング群 (leg―trained :

LTr 群)とした.また,それに対して,腕筋群の

活動を主体とする競泳選手9 名を腕トレーニング

群(arm 一trained : ATr群)とし,トレーニング

を行っていない者8 名を非トレー4 ング群 (un-

trained : UTr群)とした.各被検者には,あらか

じめ実験の目的,手順および実験実施上の危険性

などに関する説明を行い,紙面での承諾を得た.

実験当日は健康状態を確認した上で異常の認めら

れない被検者について実験を行った. また,被検

者のトレ¬ニング状況に関しては,アンケート調

査により行った.各群の身体的特性および競技歴

は,表1 に示した.

1.2 実験手順

腕 クランキ ングは, 自転車 エ ル ゴメ ー タ

(Monark )を高さ120 cmの鉄フレーム製ベンチの

上に固定したものを使用して行った.被検者を工

ルゴメータの後部に固定された高さ80 clnの椅子

に座らせ,マットを用いて肩峰がエルゴメータの

クランク軸の高さになるように調節した.自転車

エルゴメータのペダルはクランキングが可能とな

るように改良して軸だけとした.また,運動中,

上体の固定に必要な労力を最小限に抑えるため上

体をシートベルトで固定し,さらに前腕の早期疲

労を防ぐためにウェイトトレーニング用のスト

ラップを用いてペダルと手を固定した.

腕クランキング漸増負荷テストのプロトコール

(図1 )は,椅座位安静を10 分間保たせた後,回

転数50 rpm で4 分ごとに負荷を12 .5 wずつ漸

増させ,疲労困憊もしくは5  rpmの遅れが生じる

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― 210 ―

まで継続させた.最初のステージにおける負荷は

Ow に設定した.ただし, UTr 群の一部に対して

は負荷を101w ずつ漸増した. 負荷テスト中, 被

検者は検者により常に鼓舞された  テスト終了後

の回復期では椅座位安静を20 分間保持させた.

|.3  測定項目

1. 3. 1  LT

採血 は, 右足背静 脈に留 置した翼静針を介 し

て,座位安静10 分後および漸増負荷テスト中各

ステージ終了30 秒前に行った(図1 )ン翼静針は,

1 % ヘパリ ン生理食塩水を満たした延長 チュー

ブおよび三方活栓と連結させ,一度に約500 μ1ず

つ採血した.また,継続的な採血を可能にするた

めテスト中は足部を温熱器(ヤシマ技研工業)で

覆い保温した.採血後は直ちに自動乳酸微量分析

器(YSI 、model 2300) を用いて,全血中の乳酸

(blood lactate : La) 濃度を測定し,La と仕事量

(power output  : PO) との関係から回帰分析プ

ログラムを用いて二本の回帰方程式を求め,その

交 点をLT として客観的に18)評価した. 図2 は,

その代表例を示している.     二

1. 3. 2 time to peak La : TPL     ・

負荷テスト後回復期20 分間において前半の10

分間 は1 分ごとに,後半の10 分間は5 分ごとに

採血を行ったLa が最 も高い値を示すまでに要

した時間をTPL1 )とした.

↓ . 3. 3 血中乳酸除去率(La removal )

負荷テスト終了直後,右肘正中静脈から採血を

行い, 求めたLa 濃度を腕部の最高血中乳酸濃度

〔arm Lai 〕eak)10とし,足背静脈から採血し求め

たLa 濃度の最高値を脚部 の最高血 中乳酸濃度

(smbai

) jnd^no

IS

}y{

j

0 5 0 5 0

0 7 5 

りQ

Rest 4 8 12 16 20E ;?2 4 6 810 15 20

HR             exercise  -     - . -

Blood t  1  1  1   キ 1 1HHH11 り  1  1

Time course  (rain )

図I Experimental design for arm cranking test.

Cranking rate set at 50 rpm

表1 Physical characteristics and athletic activities of subjects

Group

(n)

Age

(yr)

Height

(cm)

Weight

(kg)

Relative fat

(%)

Athletic activities

d/w speciality (n)

Untrained(8)

Mean

SD

25.1

1.9

170.1

8.3

64.2

8.7

15.5

4.8

Leg叉冗ined

≒ 20 .9十十

1.2

171.5

5.8

63.8

7.2

14.4

2.8

5

6

6

5

Local competitive endurance runners (7)

Competititve triathletes (2)

National competitive cyclist (1)

Football player (1)

Arm -trained(9)

Mean

SD

20.0十十

1.2

178 .2**十

3 .4

73 .8**+

7.5

13.7

3.3

6 National competitive swimmers (9 )

Significantly different from 】eg-trained at ゙Pく0 .05,**P<0.01

‥             and untrained at 十P<0 .05,わ1P <0.01

デサントスポーツ科学Vol . 13

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3

Σ

)Q}jg

。{

0

Subj. MY2 。結   果

-2n -

2。1 腕作業能の評価      卜

表2 は,各群の腕クランキングにおけるPO

max , LT およびHR peak を示している. PO

max は, ATr 群は他の2 群に比べそれぞれ有意

な高値を示し,またLTr 群はUTr 群に対し,有

意な高値を示した. HR peak は, LTr 群がUTr

群に比べ有意な高値を示した.LT は,絶対値お

100

0   0   0   0

Qu   rり   4   9

(jtS

)t{0111SS

、{

0

Y =-27 .434十〇. 67786X R = 0.823 P <0 .01

▲Untrained  (n =  8 )

O  Leg -trained (n  =  ll)

●Arm -tlrained (n =8 )

Rest 0     25    50    75

Power  output (watts )

図2 Determination of lactate threshold .

(leg La peak戸 とした.また,La の除去率の指

標として, arm La peak とleg La peak の差を

arm La peak で除した値をLa  removal  (La 除

去率) とした.

1. 3. 4 最高心拍数(peak heart rate :

HR peak )

運動時のHR peak を胸部双極誘導による携帯

用心拍計 (Vine , Memory Mac , Heart rate

memory system )を用いて測定した.

40  60  ・80  100  120  140 160

PoweT output maχ(watts )

図3 Relationship between power output max

and lactate threshold

表2 Physiological characteristics of subjects

Group

(n)

PO max

(w )

LT

(W )

LT

(%PO max )

HR peak

(beats/min)

Untrained(8)

Mean

SD

64.9

10.8

17.1

10.7

26.0

15.9

182.6

8.3

Legj窃ined

≒ 85、1士十

14.5

25.2

1L9

28.6

10.0

166.5十

15.5

Arm -trained(9)

Mean

SD

128 .3**士卜

18 .8

62 .9**十十

13 .9

51 .2゙*十十

12 .5

178.0

10.2

Significantly different from leg -trained at ’P<0 .05, ゛゙ P <0 .01

and untrained at  +P <0 .05, 十十P<0 .01

デ サ ント スポ ー ツ科 学Vo 凵3

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-212  ―

よびPO max に対する相対値(%PO max )とも

にATr 群 が他の2 群に比べ有意な高値を示 した

が, LTr 群とUTr 群との間に有意差は認められ

なかった.また, PO max とLT との間には,卜有

意な正の相関関係が認められた(図3 ).

2.2  腕クランキング中におけるLa 動態

図4A は, 各群の運動中のLa の変動を示して

いる. 各群ともにLa はPO の増加にともない指

数関数的に増加する傾向が認められた.La の変

動 はUTr 群, LTr 群, ATr 群の順に大 きい傾向

にあり,PO が37 .5,50 ,62 .5,75 ,87 .5w では

4

3

(喘jSjQj

1

0

5

4

(2S

)SjQS

。}

I

0

A -A - Untrained  (n =  8 )Absolute ―o …Leg -trajned (n =n )

- ● -Arm -trained (n =8 )

メ・ヽ 4 p

ダメ

/  μ

斈 十十 和

ATr 群とLTr 群との間に,また,25,37.5,50,

62.5 wで はATr 群 とUTr 群と の間 にそ れぞれ

有意差が認められた. さらに,50w ではLTr 群

とUTr 群との間にも有意差が認められた.

図4B は,運動中のLa の変動を%PO  max を

用いて示している. LTr 群とUTr 群との間に有

意差は認 められな かったものの, ATr 群では%

PO max が40 ~90 % 間でLTr 群 との間に, ま

た,40 ~100 % 問でUTr 群との間 にそれぞれ有

意な高値を示 した.

8

7

冖0  5  4

咤E

)Q‘jS

.1

3

2

100

0   0   0

Qぴ   8   7

(?

)i

心。{

?J

60

50

A Absolute

- ▲ ―  Untrained (n ― 8 )

一 一○ ---Leg -trained (n =9 )

犬 ― ・ ― Arm trained(n ― 6 )

ぐ `へ

ダん ぞ 飄

が  +   +

BRe 】ative

十十十

End of

exercise

5

\A 、

`5        ` ヽ、。黝

、ヽ。、

廴 い4 ゛゛ ゛○、、二

十十

- ▲ -Untrained (n =8 )

―o 一一- Leg-trained (n =9 )

- ●-Arm -trained (1 =5 )

10・ 15 20

Minutes of recovery

図5 Time course of blood lactate concentra -

tions following the end of arm cranking

Significantly different from leg―trained at

*P< 0.05, **P< 0.01 and untrained at .J<

0.05,。。Pく0 .()1

ご           デサントスポーツ科学Vol . 13

Rest0 25

50  75  100 125 150

Power output (watts )

B Relative

-A - Untrained (n=8 )

… ○…Leg -trained (n = l!)~ # ― Arm-trained(n ― 8 )

十 十

Rest 0   20   40  1 60   80   100

%PoIveroutput (%)

図4 Blood lactate concentrations at rest and

during arm cranking . Significantly different

from leg一 trained at *P< 0.05, **P< 0.01 and

untrained at l P <0 .05,十+ P< 0.01

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10

(Σ

白)溜

乱S

。}?

、。{

2

表3 Lactate kinetics during recovery

Group

(n)

TPL

(min )

Arm La peak

(mM )

Leg La peak

(mM )

La removal

(%)

Untrained(8)

Mean

SD

6.6

1.0

9.6

1.5

7.5

2.0

22.0

9.3

Legyχ?;ined

≒ 3.7-,卜

1.4

7.7十

1.9

5 .8十十

1 .0

27.0

15.9

Arm -trained(9)

Mean

SD

2.0%十

1.1

6 .4十十

2 .5

3 .8**+h卜

0.7

26j

3.8

Significantly different from leg-trained at *P<0 .05, **P<0 .01

and untrained at 4P<0 .05,HP <0 .01

-213 -

の聞に,運動終了 直後および終了後3 ~20 分で

はATr 群とUTr 群との間 にそれぞれ有意差が認

められたレ また, 終了後3 ~20 分で はLTr 群が

UTr 群に対し有意な高値を示した.

図5B は,運動終了直後から20 分 までのLa の

変動をLeg La peak に対する相対値(%1eg La

peak )を用いて示している.La の変 動はt ATr

群, LTr 群, UTr 群の順に右傾する傾向にあっ

た.とくに, ATr 群で はLa の減少が迅速な傾向

にあった. しかし, これにはLa の絶対量の影響

が関与していると考えられるため, そ の影響を取

り除く必要から共分散分析を行った結果,有意差

は認められなかった.        \

表3 は,各群の回復期におけるTPL , arm La

peak , leg La peakおよびLa  removal を示して

いる. TPL は, ATr 群が他の2 群に比べ有意な

低値を示し, またLTr 群はUTr 群に対し有意な

低値を示した. arm La peak は, ATr 群, LTr

群ともにUTr 群に比ぺそれぞれ有意 な低値を示

した. leg La peak は, ATr 群が他の群に比 べ有

意な低値を示し, まだLTr 群はUTr 群に対 し有

意な低値を示した. また, arm La peak とleg

2   4   6   8   10   12

Arm La peak(mM )

図6 Relationship between arm La peak

and leg La peak

14

2.3  腕クランキング後回復期における

La 動態

図5A は, 各群の運動終了直後から20 分まで

のLa の変動を示 している. 各群ともに運動後も

La は上昇 し続け, ピークに到達した後下降して

いく傾向にあった.運動終了 直後および終了後の

La 濃度は, ATr 群が他の2 群に比べ高値を示し,

とくに1 ,5 ,8 ~20 分ではATr 群, LTr 群と

デサントスポーツ科学Vol . 13

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― 214 ―

La peak との間には,有意な正め相関関係が認め

られた(図6 ). La removalは, 各群間に有意差

は認められなかった. ∧    トト ニ   =.

3 . 考   察

本 研 究 で は , 持 久 的 ト レ ー ニ ン グ の 部 位 特 異 性

に よ り 分 類 し た 健 常 な 男 子 大 学 生 を 対 象 に , 腕 ク

ラ ン キ ン グ に お け る 持 久 的 腕 作 業 能 の 評 価 をLT

を 指 標 に 用 い て 検 討 し た . 腕 ク ラ ン キ ン グ に は ,

先 行 研 究2 ,≪, 7,13,15,16, IT, 1120)と 同 様 に 自 転 車 エ ル ゴ メ ー

タ を 改 良 し た 装 置 を 用 い た .

最 大 腕 ク ラ ン キ ン グ に お け るPO max はATr

群 で 最 も 高 い 値 を 示 し , LTr 群 で はUTr 群 よ り

高 値 を 示 し た が , こ れ ら の 結 果 は , い ず れ も こ れ

ま で の 報 告lojol )と 比 較 し て 低 い も の で あ っ た . 本

研 究 で は ,LT を 求 め る 必 要 か ら , 負 荷 の 漸 増 時

間 をLa の 定 常 状 態 が 得 ら れ る と 考 え ら れ る4 分

と し た . し か し , こ れ は 先 行 研 究 に お け る 最 大 腕

作 業 テ ス ト で 漸 増 時 間 が ,2 分 鷦 3 分1c,16)で あ る

こ と か ら み る と 長 く , 総 作 業 時 開 か 長 引 く こ と に

よ る 早 期 の 疲 労 や エ ネ ル ギ ー 枯 渇 が 生 じ , 結 果 的

にPO ma 戈 が 低 い 値 を 示 し た 可 能 性 も 否 定 で き

な い , 卜    づ          卜

ま た , 腕 ク ラ ン キ ン グ に お け る 作 業 能 をLT を

0 0 0 0 0 0 0

4 2  0 8 6 4 4

/`

1 1  1

(j

なS

)ぢa

ちolSoy

0

Free style swimmer

SI RI T JN ,

S2 R2 C N2

Po ma χ

s , RI T JN ,

S2 R2 C N2

LT

0  0

a‥y  5

0  0  0  0

4  3  9

乙  1

0

(次

ご乱

ぢOtS£

図 了 Comparisons of PO ma χ and LT among

representative athletes and control subjects

★:did not belong any group in the present

study     一 一            ‥・   ・.

指標 にして評価し, ATr 群で有意な高値を示すこ

とを明らかにした. 二方, LTr 群ではUTr 群よ

り高値を示したものの,有意差は認 められなかっ

たことから, 腕クランキングにおけ るLT は系統

的かつ継続的な腕筋群トレーニングによってのみ

向上することが示唆される.図 了には,各群の代

表例を示した.   匸

PO max およびLT はi 長距離走選手(Rl , R

2 ), トライアスロン選手(T ), 自転車競技選手

(C )では非トレニニング者(N  1, N 2 )よりは高

値を示す傾向にあるものの,競泳選手(S ↓, S 2 )

と比較して低値を示している. さらに, やり投げ

選手(J)の一例もあわせて示したが,上体筋群の

トレーニングによる筋力,パワーの増大が推察さ

れるにもかかわらずsi , S 2と比較すると低値

を示 した. このことは,筋力 やパワ ーなどのト

レーニ ングは持久的腕作業 におけるPO max や

LT の改善には貢献しないことを示唆している.

Pendergast ら11)の報告によると, 腕筋群のよ

くトレーニングされたカヤック選手の腕クランキ

ング時のVo2 - は・ 非トレーニ ング群 と比較し

て高く, この要因として筋量よりもむしろ筋内の

ミトコンドリア密度や酸化酵素活性,毛細血管密

度など の局所性因子 の適応的増大を指摘してい

る.しかし, LTr 群のPO max が,とくに腕筋群

が持久的にトレーニングされていないにもかかわ

らずUTr 群より高い値を示 したことは,多くの

研究者 ・゙s.!4)が腕作業 におけるトレ ーニング効果

は腕トレーニングでは顕著に生じるものの,脚ト

レーニングではほとんど生じなかったという報告

からも支持される.おそらく,腕筋群という局所

の持久性よりもむしろ脚筋群を主体とした持久的

トレーニングによる中枢の持久性の増大によると

ころが大きいと考えられる.

ところで, HR peak は, LTr 群で最も低い値

を示した.さらに,被検者の年齢を もとに推定し

た最大心拍数(HR max , 220 beats/min一 age)

デサントスポーツ科学Vol . 13

Page 9: 腕の持久的トレーニング効果の全身作業能に 及ぼす生理的貢 …...LTr 群)とした.また,それに対して,腕筋群の 活動を主体とする競泳選手9

からみると, LTr 群で70 ~90 %HR max であ

るのに対して, UTr 群では90 ~100 %HR max

の範囲にあった. また, arm La peak からみる

と, UTr 群ではその値が9 .6 mM ときわめて高い

値を示していることから,本研究での負荷法に問

題があるとは必ずし も言えない.また, ATr 群に

おいてはHR peak が最大近く (80 ~95 %HR

max ) まで到達していることから, 運動 にとも

なって中枢と局所の応答性が並行して亢進したこ

とが予想される.したがって, LTr 群では脚筋群

主体の持久的トレーニングによる中枢の持久性の

増大によりPO max がUTr 群と比較して高値を

示したが,局所的持久性(LT )が低いため中枢応

答が最大に達する前に局所の疲労が生じ運動継続

が困難 にな った可能性も考え られる. したがっ

て, LTr 群 は腕筋群のさらなる持久性の獲得が必

要であり, LTr 群における腕筋群のtrainability

が高いことが示唆される.

また本研究では, PO max とLT との間に有意

な相関関係が認められ,LT がPO max の高低に

依存することが推察された.しかし,LT を%PO

max であらわすと, ATr 群および他の群との間

に同様に有意差が認められた.また,運動中のLa

の変動 を%PO max で示 し た場合, LTr 群 と

UTr 群との間 に有意差 は認められなくな った も

のの, ATr 群と他の群との間にそれぞれ同様に有

意差が認め られ たことから, ATr 群のLT には

PO max 以外の因子が影響している可能性 が示

唆される.

その一因として,高度な腕筋群トレーニングは

La の酸 化代謝 能の増大を もたらすとさ れてい

る1j)ことから,La の拡散や除去能の影響が考えら

れる.本研究では,それらの指標としてTPLD お

よびLa removal を検討し,各群のTPL はATr

群で最も短かいことが明らかとなった.これに関

して, Bassett ら1)は脚ペダリング後回復期におけ

るTPL はトレーニ ング群で有意に短い傾向があ

デサントスポーツ科学Vo 口3

-215 -

り,その要因として筋の毛細血管密度 および血流

量(muscle blood flow : MBF)の増 大をあげて

いる.

一方, 運動中, 筋で産生されたLa は採血部位

に到るまでに活動筋あるいは休止筋や内臓,その

他の組織に拡散され除去されると報 告さ れてい

る3). 本研 究で はLa 除去 能 の指 標 と してLa

removal を検討したが,各群間に有意差は認めら

れなかった. また, 各群の回復期におけるLa の

変動を検討したところ,とくにATr 群で はLa の

除去に迅速な傾向が認められた.しか し, leg La

peak の絶対値の高低の影響を共分散 分析によっ

て除去し検討した結果,有意差は認め られず,ま

たarm La peak とleg La peak との間に有意な

正の相関関係が認められたことから,La 除去能

に はトレーニ ング効果が影響しない と考え られ

た.これらの結果から腕筋群のトレーニングは腕

クランキング後回復期のLa の拡散能 の増大には

貢献するものの,除去能には影響しな いと考えら

れ, Bassett ら1)の報告とも一致した.しかし,筋

におけるLa は筋活動 によって除去あ るいは消費

されるとされている3.10)ことから,本研究のような

安静状態ではLa 除去能に差が認められなかった

としても妥当であると考えられる.

したがって,運動中および筋活動をともなった

回復時の場合では, トレーニング効果がLa 除去

能を高めることに貢献する可能性 もある. しか

し, 運動中のLa 拡散能がトレーニング効果の影

響を受 けるか否かは明らかでない. また,本研究

で得られた傾向が逆に脚ペダリングもしくは脚筋

群トレーニングによってももたらされるものか,

あるいは腕クランキングもしくは腕筋 群トレーニ

ングによってのみ特異的にもたらされるものかに

ついても明らかでなく,現在検討中である.

結  論

脚筋群を主体とした持久的トレーニングを行っ

Page 10: 腕の持久的トレーニング効果の全身作業能に 及ぼす生理的貢 …...LTr 群)とした.また,それに対して,腕筋群の 活動を主体とする競泳選手9

216 -

ている競技選手,腕筋群主体の専門的トレーニン

グを行うているエリャト競泳選手およびトレーニ

ングを行っていない者を対象に,腕クランキング

における持久的腕作業能の評価をLT を指標に用

いて検討した結果,以下の知見を得た.  卜

1)腕クランキングにおけるLT は,系統的か

つ継続的な腕筋群トレーニングによってのみ向上

することが示唆された卜    l

2) LTr群では,全身持久性に相応するより高

度な腕筋群の持久性の獲得が必要とされ,腕筋群

のtrainabilityが高いことが示唆された.卜

3) ATr 群では,腕クランキングにおけるLT

が高く,高度な腕筋群トレーニングは回復期の

La の拡散能を向上させ,それがLT 増大の一要

因となる可能性が示唆されたレ

‥   文   献         /

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