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ホワイト ペーパー 要約 このホワイト ペーパーでは、新しい VNX ® ストレージ システムにお ける EMC ® Multicore FAST Cache テクノロジーの概要について説 明します。Multicore FAST Cache 機能の実装、および Unisphere ® NaviSecCLI を使用した操作方法について詳しく説明します。また、 使用のガイドラインやお客様の主なメリットについても説明します。 2014 7 EMC VNX Multicore FAST Cache VNX5200VNX5400VNX5600VNX5800VNX7600VNX8000 詳細レビュー

EMC VNX Multicore FAST Cacheƒ›ワイト ペーパー 要約 このホワイト ペーパーでは、新しいVNX®ストレージ システムにお けるEMC ® Multicore FAST

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ホワイト ペーパー 要約 このホワイト ペーパーでは、新しい VNX®ストレージ システムにお ける EMC® Multicore FAST™ Cache テクノロジーの概要について説 明します。Multicore FAST™ Cache 機能の実装、および Unisphere®

や NaviSecCLI を使用した操作方法について詳しく説明します。また、

使用のガイドラインやお客様の主なメリットについても説明します。 2014 年 7 月

EMC VNX Multicore FAST™ Cache VNX5200、VNX5400、VNX5600、VNX5800、VNX7600、VNX8000 詳細レビュー

Copyright © 2014 EMC Corporation. All rights reserved. (不許複製・禁無断転載) このドキュメントに記載されている情報は、ドキュメントの出版

日現時点の情報です。この情報は予告なく変更されることがあ

ります。 この資料に記載される情報は、「現状有姿」の条件で提供され

ています。EMC Corporation は、この資料に記載される情報に 関する、どのような内容についても表明保証条項を設けず、 特に、商品性や特定の目的に対する適応性に対する黙示の

保証はいたしません。 この資料に記載される、いかなる EMC ソフトウェアの使用、 複製、頒布も、当該ソフトウェア ライセンスが必要です。 最新の EMC 製品名については、EMC の Web サイトで EMC Corporation の商標を参照してください。 VMware および VMware View は、VMware, Inc.の登録商標ま

たは商標です。その他のすべての名称ならびに製品について

の商標は、それぞれの所有者の商標または登録商標です。 パーツ番号 H12208.2-J

2 EMC VNX Multicore FAST Cache VNX5200、VNX5400、VNX5600、 VNX5800、VNX7600、VNX8000:詳細レビュー

目次

エグゼクティブ サマリー ..................................................................................... 4

はじめに .......................................................................................................... 4

対象読者 .................................................................................................................. 5

用語 ......................................................................................................................... 5

グローバルな Multicore FAST Cache と TCO ........................................................... 6

Multicore FAST Cache のコンポーネント......................................................................... 7

オペレーション原理..................................................................................................... 7

Multicore FAST Cache プロモーション ........................................................................ 7

ホストの読み取り処理 ............................................................................................. 8

ホストの書き込み処理............................................................................................. 9

マルチコア キャッシュから Multicore FAST Cache へのコピー...................................... 10

Multicore FAST Cache のクリーニング...................................................................... 11

Multicore FAST Cache フラッシュ ............................................................................. 11

管理 ....................................................................................................................... 12

Unisphere ........................................................................................................... 12 NaviSecCLI .......................................................................................................... 16 Unisphere Analyzer .............................................................................................. 16

ベスト プラクティス .................................................................................................... 17

相互運用性に関する検討事項 ................................................................................... 17

障害処理 ................................................................................................................ 18

結論 .............................................................................................................. 19

参考資料 ....................................................................................................... 19

付録 A:Multicore FAST Cache の構成オプション .................................................. 20

付録 B:FAST VP と Multicore FAST Cache ............................................................ 21

付録 C:Multicore FAST Cache とストレージ システム キャッシュの 比較 ................... 23

3 EMC VNX Multicore FAST Cache VNX5200、VNX5400、VNX5600、 VNX5800、VNX7600、VNX8000:詳細レビュー

エグゼクティブ サマリー EMC®がフラッシュ テクノロジーをエンタープライズ アレイのディスク モジュール(一般に SSD と呼ぶ)

に初めて導入して以来、このテクノロジーの使用をすべての EMC® VNX®シリーズに拡大すること

が EMC の目標でした。フラッシュ テクノロジーが持つ高パフォーマンスとギガバイト単位のコスト

の急速な下落が、このキャッシュ階層の概念につながりました。キャッシュ階層とは、ストレージ プロセッサの DRAM ベースのプライマリ キャッシュと HDD(ハード ディスク ドライブ)の間に位置

する、FAST Cache で最適化されたフラッシュ ドライブを使用した大容量のセカンダリ キャッシュ です。新しい EMC VNX ストレージ システムでは、この機能は EMC Multicore FAST™ Cache と呼 ばれます。

Multicore FAST Cache は、ストレージ システムの既存のキャッシュ容量を拡張して、システム全体 のパフォーマンスを向上させます。Multicore FAST Cache ではこれを実現するために、HDD より

高速な、FAST Cache で最適化されたフラッシュ ドライブにアクセス頻度の高いデータをコピーして DRAM キャッシュの機能を拡張し、システム パフォーマンスを向上させます。また、Multicore FAST Cache は、DRAM キャッシュよりもはるかに大容量で拡張性の高いキャッシュを提供します。 Multicore FAST Cache の容量は 100 GB から 4.2 TB までサポートされ、既存のストレージ システ ムで使用できる DRAM キャッシュよりもはるかに大容量です(「付録 A:Multicore FAST Cache の構成

オプション」を参照)。

システム レベルでは、Multicore FAST Cache がフラッシュ ドライブ容量を最も効率的に使用でき ます。これは、Multicore FAST Cache が、フラッシュ ドライブを特定の用途用に割り当てるのでは なく、ストレージ システム内で最も頻繁にアクセスするデータ用に使用するためです。Multicore FAST Cache の構成は、既存のメモリ割り当てインターフェイスを使用し、ホスト(サーバー)サイク ルを使用しない無停止のオンライン プロセスです。Multicore FAST Cache は、RAID で保護された ミラー ペアで作成されます。容量のオプションは、ストレージ システムのモデルや、取り付けられ ているフラッシュ ドライブの数とタイプによって異なります。Multicore FAST Cache を作成し、ストレ ージ ボリューム上で有効化すると、Unisphere®で管理できます。アプリケーションで Multicore FAST Cache によるパフォーマンス メリットを確認できるまでに、ユーザー介入は不要です。

Multicore FAST Cache は、クラシック LUN とプール LUN で使用できます。

はじめに このホワイト ペーパーでは、Multicore FAST Cache 機能の概要について説明します。Multicore FAST Cache の目的は、フラッシュ ドライブのパフォーマンスを活用しドライブを効率的に使用して、

システム内で最も頻繁にアクセスするデータを格納することです。特定のデータ チャンクに頻繁

にアクセスする場合、VNX は、ハード ディスク ドライブからフラッシュ ドライブの Multicore FAST Cache にそのデータ チャンクを自動的にコピーします。同じデータ チャンクへの後続の I/O アクセ

スは、フラッシュ ドライブのレスポンス時に処理されるため、ストレージ システムのパフォーマンス

が向上します。このデータ チャンクのアクセス頻度が減少し、その他のチャンクを Multicore FAST Cache にコピーする必要が生じた場合は、最も使用頻度の少ないデータが最初に置き換えられ

ます。Multicore FAST Cache のアルゴリズムと基本操作の詳細については、このホワイト ペーパ

ーの「オペレーション原理」のセクションで説明します。

4 EMC VNX Multicore FAST Cache VNX5200、VNX5400、VNX5600、 VNX5800、VNX7600、VNX8000:詳細レビュー

対象読者

このホワイト ペーパーは、新しい VNX ストレージ システムで Multicore FAST Cache 機能の使用を

検討されている EMC のお客様、パートナー様、EMC の従業員を対象としています。読者が VNX ス

トレージ システムおよび EMC の管理ソフトウェアの使用方法を熟知していることを前提としています。

用語

• キャッシュ ページ:Multicore FAST Cache 内に割り当てられた最小ユニットで、サイズは 64 KB。

• キャッシュ クリーン ページ:有効な Multicore FAST Cache のページ。ユーザーLUN と同期

されたデータのコピーが含まれる。

• キャッシュ クリーン ページ:有効な Multicore FAST Cache のページ。ユーザーLUN と同期 されたデータの最新のコピーが含まれる。

• キャッシュ警告:新しいページが作成されたあとにそのページを FAST Cache にコピーする プロセス、または、まったく新しいデータ セットの参照を開始するアプリケーションのアクセ ス プロファイルの変更。

• チャンク:特定のアドレス範囲内のデータ部分(64 KB)。

• DRAM メモリ:非常に高速なストレージ メディア(DRAM)にデータを格納するためにマルチ コア キャッシュで使用するストレージ システム コンポーネント。これにより、そのデータに 対する要求を高速処理できます。

• エクステント:隣接する物理ブロックのセット。

• Multicore FAST Cache コピー:Multicore FAST Cache ページからバックエンドのハード ディ スク ベースの LUN にデータをコピーするプロセス。

• Multicore FAST Cache プロモーション:HDD から Multicore FAST Cache ページにデータを

コピーするプロセス。

• Multicore FAST Cache フラッシュ:使用するページを解放するために、Multicore FAST Cache ページからバックエンドのハード ディスク ベースの LUN にデータをコピーするプ ロセス。

• Multicore FAST Cache ヒット:Multicore FAST Cache のコンテンツを使用して I/O を完了で

きる場合のインスタンス。

• Multicore FAST Cache ミス:I/O を完了するために必要なデータ、および HDD で使用する

必要のあるデータが Multicore FAST Cache に含まれない場合のインスタンス。

• フラッシュ ドライブ:ソリッド ステート メディアを使用してデータを格納する、データ ストレ ージ デバイス。フラッシュ ドライブには可動部が含まれないため、回転式の HDD(ハード ディスク ドライブ)に比べて極めて速いレスポンス タイムと高い IOPS を実現できます。

• HDD(ハード ディスク ドライブ):磁気面にデータを格納し、さまざまな速度で回転するデ ータ ストレージ デバイス。

• ホット スポット:LUN 上で負荷の高い部分。

5 EMC VNX Multicore FAST Cache VNX5200、VNX5400、VNX5600、 VNX5800、VNX7600、VNX8000:詳細レビュー

• 参照のローカル性:互いの距離が近い論理ブロックがほぼ同時に繰り返しアクセスされる

という概念。

• 論理ブロック アドレス:ストレージ デバイス上のデータのブロックの位置を示す、アドレス 指定スキーマ。

• メモリ マップ:各ビットが Multicore FAST Cache ページを表すアドレスのアレイ。このマッ プは、どのページが Multicore FAST Cache にあり、Multicore FAST Cache 内のどこにあ るかを示します。メモリ マップのコピーは DRAM キャッシュ内にあります。そのため、ペー

ジへのアクセスはメモリの速度で行われます。

• マルチコア キャッシュ:VNX ストレージ プロセッサの DRAM を使用してホストの書き込みと 読み取りのパフォーマンスを向上させる MCx ソフトウェア コンポーネント。

• マルチコア キャッシュ ヒット:マルチコア キャッシュのコンテンツを使用して I/O を完了でき る場合のインスタンス。

• Multicore Cache ミス:I/O を完了するために必要なデータが Multicore FAST Cache に含ま れない場合のインスタンス。

• プール:プール LUN によって使用されるディスク ドライブのグループ。システム上に 0 個 または 1 個以上のプールを構成できます。ディスクは、1 つのプールのメンバーとしての

み構成できます。プール ディスクを RAID グループで使用することはできません。

• シン LUN:ストレージ システムによって消費される物理的スペースが、ホスト サーバーに よって認識されるユーザー容量を下回ることのあるプールで作成された、ストレージの論理

ユニット。

• シン LUN:ストレージ システムによって消費される物理的スペースが、ホスト サーバー によって認識されるユーザー容量と同じプールで作成された、ストレージの論理ユニット。

グローバルな Multicore FAST Cache と TCO

Multicore FAST Cache を導入すると、フラッシュ ドライブを特定のアプリケーション専用に割り 当てることなく、レスポンス タイムがより高速で IOPS の高いフラッシュ ドライブを活用できます。 このテクノロジーは、使用可能なストレージ システムのキャッシュを増やします(VNX7600 およ び VNX8000 ストレージ システムで最大 4.2 TB の読み取り/書き込み用 Multicore FAST Cache を 追加。「付録 A:Multicore FAST Cache の構成オプション」を参照)。Multicore FAST Cache は、クラ

シック LUN またはストレージ プール LUN 上のアレイ内のホット スポットを処理します。

Multicore FAST Cache を使用する大きなメリットの 1 つは、アプリケーション パフォーマンスの向 上です。特に、I/O アクティビティが頻繁で、かつ予期せず大幅に増加するワークロードでは、この

メリットが顕著に現れます。アプリケーションのワーキング データセットで頻繁にアクセスされる部 分を Multicore FAST Cache にコピーすることで、アプリケーションのパフォーマンスが直ちに向上

します。Multicore FAST Cache を使用すると、フラッシュ ドライブの速度で過度な読み取り/書き込 みの負荷が吸収され、アプリケーションで一貫したパフォーマンスを提供できるようになります。

もう 1 つの重要なメリットは、システムの TCO(総所有コスト)の削減です。Multicore FAST Cache は、データのホット(アクティブ)サブセットをフラッシュ ドライブにチャンク単位でコピーし

ます。マルチコア キャッシュのあとに残った(ほとんどではないにしても)多くの IOPS をオフロー

6 EMC VNX Multicore FAST Cache VNX5200、VNX5400、VNX5600、 VNX5800、VNX7600、VNX8000:詳細レビュー

ドすることで、ユーザーは低コストで大容量のディスク ドライブを使用して、その他のストレージ

のニーズを満たすことができます。この割合で小容量のフラッシュが大量のディスクとペアを構

成することにより、最小限のコスト(GB あたりのコスト)と最適な電力効率性(IOPS/KWH)で最

高のパフォーマンス(IOPS あたりのコスト)が得られます。

FAST Cache イネーブラをインストールすると、Multicore FAST Cache はすべてのクラシック LUN お

よびストレージ プール上でデフォルトで有効になります。イネーブラをインストールする前に作成

されたクラシック LUN とストレージ プールでは、Multicore FAST Cache が無効になります。これら

のアイテムで Multicore FAST Cache を使用するには、Unisphere または NaviSecCLI を使用して

Multicore FAST Cache を手動で有効にする必要があります。

Multicore FAST Cache のコンポーネント

Multicore FAST Cache の機能を利用するには、FAST Cache イネーブラが必要です。Multicore FAST Cache を作成するには、FAST Cache で最適化されたドライブが少なくとも 2 台システムに必 要です。このドライブは、RAID 1 のミラー ペアで構成されます。イネーブラをインストールすると、 システムでは次の主要コンポーネントを使用して Multicore FAST Cache を処理および実行します。

ポリシー エンジン:Multicore FAST Cache 経由の I/O の流れを管理します。LUN 上で頻繁にアク

セスされるデータ チャンクは、Multicore FAST Cache(FAST Cache で最適化されたドライブ)に一

時的にコピーされます。また、ポリシー エンジンはデータ アクセス パターンの統計情報も管理し

ます。ポリシー エンジンで定義されるポリシーは、システム定義のポリシーであり、ユーザーが変

更することはできません。

メモリ マップ:粒度が 64 KB のチャンクのエクステントの使用および所有を追跡します。メモリ マッ プでは、64 KB チャンクのストレージの状態と、Multicore FAST Cache のコンテンツに関する情報

を管理します。メモリ マップのコピーは DRAM メモリに格納されるので、FAST Cache イネーブラを

インストールすると、Multicore FAST Cache メモリ マップに SP メモリが動的に割り当てられます。

メモリ マップのサイズは、作成される Multicore FAST Cache のサイズに比例して増加します。メモ

リ マップのコピーは、データの整合性と高可用性を維持するために、フラッシュ ディスクにもミラー

されます。

オペレーション原理

Multicore FAST Cache プロモーション

Multicore FAST Cache プロモーションは、スピニング メディアである HDD からデータをコピーして、 Multicore FAST Cache に配置するプロセスです。スピニング メディアからフラッシュ テクノロジー

にデータをコピーすることによりパフォーマンス面でのアップグレードが実現するため、このプロセ

スはプロモーションとして定義されます。

Multicore FAST Cache プロモーションを行う理由

通常の操作時には、Multicore FAST Cache へのプロモーションは、64 KB のデータ ブロックへの

アクセス頻度が高いとポリシー エンジンが判断したあとに開始されます。アクセス頻度が高いと

みなされるのは、64 KB のデータ ブロックへの読み取りアクセスまたは書き込みアクセスが短時

間に何回も行われた場合です。また、フラッシュ ベースのストレージにデータを保存することはで

きません。つまり、現在プールの最大パフォーマンス階層またはフラッシュ ベースのクラシック

RAID グループにあるデータを Multicore FAST Cache にコピーすることはできません。この制限が

7 EMC VNX Multicore FAST Cache VNX5200、VNX5400、VNX5600、 VNX5800、VNX7600、VNX8000:詳細レビュー

存在するのは、データをフラッシュ ドライブ間で移行するメリットがないためです。FAST™ VP と

Multicore FAST Cache の連携方法については、「付録 B:FAST VP と Multicore FAST Cache」を参

照してください。

プロモーション操作

前述のいずれかのシナリオで、64 KB のデータ ブロックを Multicore FAST Cache にプロモートす

る必要があるとポリシー エンジンが判断した場合、64 KB の領域は HDD から Multicore FAST Cache にコピーされます。次に、メモリ マップが更新され、データが現在 Multicore FAST Cache にあることが示されます。アプリケーションからこのデータに再びアクセスした場合にマルチコア キャッシュ ミスが発生すると、I/O は Multicore FAST Cache に送られます。これを「Multicore FAST Cache ヒット」と呼びます。データがフラッシュ ドライブから直接アクセスされるため、アプリケーシ

ョンのレスポンス タイムは非常に短く、IOPS は高くなります。一定時間の間にワーキング セットの

かなりの部分が Multicore FAST Cache にコピーされる場合、バックエンドで性能の低い HDD を使

用している場合でも、アプリケーションの平均パフォーマンスを向上させることができます。

プロモーションが必要ないとみなされるアクセス パターン

マルチコア キャッシュは、Multicore FAST Cache を使用するメリットがない可能性のある特定の I/O パターンを処理することによって Multicore FAST Cache を補完します。たとえば、ブロックが小 さいシーケンシャル I/O はマルチコア キャッシュ レベルで処理されます。つまり、再び使用されな い可能性のある Multicore FAST Cache にデータをコピーするサイクルは使用されません。たとえば、

ブロックが小さいシーケンシャル書き込みは、HDD に対するサイズの大きい I/O に結合され、 ブロックが小さいシーケンシャルな読み取りの場合、プリフェッチが行われます。どちらの場合も、

サイズの大きいバックエンド I/O が作成されます。これにより、アクセスされているデータが

Multicore FAST Cache にプロモートされない可能性があります。また、マルチコア キャッシュでは、

高頻度のアクセス パターン、ゼロで埋めるリクエスト、サイズが 128 KB より大きい I/O を処理し

ます。マルチコア キャッシュは、Multicore FAST Cache 用のフィルタとして機能し、Multicore FAST Cache にデータをコピーするための追加のサイクルを提供します。これにより、Multicore FAST Cache を使用するメリットが得られます。

ホストの読み取り処理

ホスト アプリケーションから受信する読み取り I/O がマルチコア キャッシュのコンテンツと最初に 照合されます。マルチコア キャッシュから I/O を提供できる場合は、I/O が完了します。このやり

取りの際に Multicore FAST Cache メモリ マップへのアクセスは行われません。

マルチコア キャッシュで読み取りミスが発生すると、Multicore FAST Cache メモリ マップをチェック して、Multicore FAST Cache にすでに存在するチャンク用の I/O かどうかを判断します。データが Multicore FAST Cache に存在する場合は、ポリシー エンジンによって I/O 要求が Multicore FAST Cache にリダイレクトされます。次に、データが Multicore FAST Cache からマルチコア キャッシュ

にコピーされます。マルチコア キャッシュが読み取りに対応します。

データが Multicore FAST Cache にない場合、I/O 要求は、ストレージ システムに Multicore FAST Cache が設定されていない場合と同じパスに送出されます。データは、HDD からマルチコア キャ

ッシュにコピーされます。この時点で、マルチコア キャッシュは読み取り要求に対応します。使用

頻度の高いデータの場合は、ポリシー エンジンがデータを Multicore FAST Cache にプロモートし ます。図 1 は、読み取り処理を示しています。

8 EMC VNX Multicore FAST Cache VNX5200、VNX5400、VNX5600、 VNX5800、VNX7600、VNX8000:詳細レビュー

図 1: Multicore FAST Cache の読み取り処理

ホストの書き込み処理

ホスト I/O 要求が書き込み処理であり、システムおよび LUN 上でライト キャッシュが有効になって

いる場合は、マルチコア キャッシュが I/O を処理して、ACK をホストに送信します。このやり取りは、 更新されるデータが Multicore FAST Cache にあるかどうかにかかわらず行われます。このやり取 りの際にメモリ マップへのアクセスは行われません。

システムまたは LUN 上でライト キャッシュが無効になっており、Multicore Cache が有効になって

いるインスタンスでは、マルチコア キャッシュが一時的に I/O を保持し、メモリ マップをチェックして、 Multicore FAST Cache にデータが存在するかどうかを判断します。これは、マルチコア キャッシュ のライト スルー操作です。更新されるデータが Multicore FAST Cache にある場合、マルチコア キャッシュでは、Multicore FAST Cache とメモリ マップのデータを更新し、ACK をホストに送信して I/Oを完了します。Multicore FAST Cache にデータが含まれていない場合、マルチコア キャッシュでは、

LUN の基盤となるストレージ上のデータを更新します。使用頻度の高いデータの場合は、ポリシー エンジンがデータをクリーン キャッシュ ページとして Multicore FAST Cache にコピーします。 図 2 は、このシナリオを詳しく示しています。

9 EMC VNX Multicore FAST Cache VNX5200、VNX5400、VNX5600、 VNX5800、VNX7600、VNX8000:詳細レビュー

図 2: マルチコア キャッシュのライト スルー操作(ライト キャッシュが無効な場合)

マルチコア キャッシュから Multicore FAST Cache へのコピー マルチコア キャッシュから直接 Multicore FAST Cache にデータをコピーすることもできます (図 3)。マルチコア キャッシュが DRAM のダーティー キャッシュ ページをクリーニングす る場合は、ポリシー エンジンをチェックして、クリーニングされるブロックが Multicore FAST Cache に存在するかどうかを判断します。存在する場合は、マルチコア キャッシュがデータを DRAM か

ら Multicore FAST Cache に直接コピーし、DRAM のページにクリーンというマークを付けます。 次に、Multicore FAST Cache ページにダーティーというマークが付けられます。Multicore FAST Cache にデータが存在しない場合は、クリーニングされたデータを使用して適切な HDD が更新

されます。ここで、更新されるブロックへのアクセス頻度が高く、プロモーションを利用できるかど

うかをポリシー エンジンが判断します。該当する場合は、データが DRAM から Multicore FAST Cache にもコピーされます。Multicore FAST Cache と HDD にはデータの正確なコピーがあるため、

Multicore FAST Cache ページはクリーンとみなされます。つまり、Multicore FAST Cache へのこの

タイプのコピーは、Multicore FAST Cache 用のダーティー ページ数にカウントされません。

注:FAST Cache のダーティー ページ(%)の統計は、HDD にまだコピーして戻されていない Multicore FAST Cache 内のデータの割合のみを表します。この統計は、現在 Multicore FAST Cache 内に含まれているデータの量を表すものではありません。

10 EMC VNX Multicore FAST Cache VNX5200、VNX5400、VNX5600、 VNX5800、VNX7600、VNX8000:詳細レビュー

図 3: マルチコア キャッシュのコピー操作

Multicore FAST Cache のクリーニング

Multicore FAST Cache には、最小限のバックエンド アクティビティの間に、ダーティー ページを基 盤となる物理デバイスにプロアクティブにコピーするクリーニング プロセスが含まれます。このクリ ーニング プロセスでは、ページへのアクセスが再び行われた場合に、後続のホスト リクエストが 引き続き Multicore FAST Cache で処理されるようにするために、Multicore FAST Cache にデータ

が保持されます。ダーティー ページがドライブと同期されると、ページはクリーン キャッシュ ペー

ジになります。後続の Multicore FAST Cache プロモーションでは最初に空きページを使用してから、

LRU(Least Recently Used)方式でクリーニングされたページを使用します。そのあとで、スケジュ

ール設定されたプロモーション用に Multicore FAST Cache のダーティー ページがフラッシュされ、

解放されます。クリーンな空きページを使用できるため、スケジュール設定されたプロモーション

用にダーティー ページをフラッシュする処理と比較した場合に、Multicore FAST Cache へのコピ ーが高速になります。これで、システムのパフォーマンスが向上します。

Multicore FAST Cache フラッシュ

Multicore FAST Cache フラッシュは、Multicore FAST Cache ページを HDD にコピーして、使用する

ページを解放するプロセスです。スケジュール設定されたプロモーション用の空きページやクリー

ン ページが存在しない場合は、この操作に対応するように Multicore FAST Cache フラッシュが行

われます。LRU(Least Recently Used)アルゴリズムでは、新しいプロモーション用の容量を確保す

るためにフラッシュするデータ ブロックを決定します。これらのページは、Multicore FAST Cacheからバックエンド HDD にフラッシュされます。ページが解放されると、スケジュール設定されたプロ

モーションを実行できます。

11 EMC VNX Multicore FAST Cache VNX5200、VNX5400、VNX5600、 VNX5800、VNX7600、VNX8000:詳細レビュー

管理

Multicore FAST Cache の作成、管理、監視には、Unisphere または NaviSecCLI を使用できます。 Unisphere の詳細については、EMC オンライン サポートにある VNX シリーズの新しいホワイト ペーパー「EMC Unisphere: Unified Storage Management Solution」を参照してください。これ以降

のセクションでは、Unisphere と NaviSecCLI の Multicore FAST Cache に関係する部分について説

明します。Multicore FAST Cache の構成オプションの詳細については、「付録 A:Multicore FAST Cache の構成オプション」を参照してください。

Unisphere

Unisphere の[システム]タブの右側のタスク パネルには、[システムのプロパティ]および[キャッ シュの管理]という 2 つのリンクがあります。この 2 つのリンクのどちらをクリックしても、[ストレー

ジ システムのプロパティ]ウィンドウが開きます(図 4)。

Multicore FAST Cache を有効にするには、[ストレージ システムのプロパティ]ウィンドウの

[FAST Cache]タブをクリックして Multicore FAST Cache 情報を表示します。ストレージ システム で Multicore FAST Cache が作成されていない場合、ダイアログ ボックスの最下部にある[作成] ボタンが有効になります。[破棄]ボタンは、Multicore FAST Cache が作成済みの場合に有効 になります。

図 4: [ストレージ システムのプロパティ]ダイアログ ボックス

Multicore FAST Cache が作成済みの場合、構成の詳細を反映して、[状態]、[サイズ]、[RAID タ

イプ]の各フィールドが更新されます。Multicore FAST Cache が作成済みの場合、[RAID タイプ]フ

ィールドには RAID 1 が表示されます。[作成]をクリックすると、[FAST Cache の作成]ダイアログ ボックスが表示されます(図 5)。

12 EMC VNX Multicore FAST Cache VNX5200、VNX5400、VNX5600、 VNX5800、VNX7600、VNX8000:詳細レビュー

図 5: [FAST Cache の作成]ダイアログ ボックス

Multicore FAST Cache を有効にするための十分な数のフラッシュ ドライブが使用できない 場合は、Unisphere によってエラー メッセージが表示され、Multicore FAST Cache を作成で きません。スクリーンの下の部分に、Multicore FAST Cache を作成するために使用するフラ ッシュ ドライブが表示されます。[手動]オプションを選択すると、ドライブを手動で選択でき ます。Multicore FAST Cache を構成したあとにそのサイズを変更するには、Multicore FAST Cache を破棄して再作成する必要があります。この場合、Multicore FAST Cache に現在格 納されているすべてのダーティー ページをフラッシュする必要があります。Multicore FAST Cache を再作成する場合は、データを再度取り込んでください(ウォームアップ時間)。

図 6 は、[LUN の作成]ダイアログ ボックスの[詳細]タブで、クラシック LUN に対して Multicore FAST Cache を有効にする方法を示しています。クラシック LUN がすでに作成さ

れている場合は、[LUN のプロパティ]ダイアログ ボックスの[キャッシュ]タブをクリックして、 FAST Cache を構成します(図 7)。

13 EMC VNX Multicore FAST Cache VNX5200、VNX5400、VNX5600、 VNX5800、VNX7600、VNX8000:詳細レビュー

図 6: [LUN の作成]ダイアログ ボックスの[詳細]タブ(クラシック LUN)

図 7: [LUN のプロパティ]ダイアログ ボックスの[キャッシュ]タブ

ストレージ プールでは、Multicore FAST Cache がプール単位で有効になります。ストレージ プールに作成されたすべての LUN では、Multicore FAST Cache がまとめて有効または無

効になります。プール上の Multicore FAST Cache は、図 8に示す[ストレージ プールの作成]

ダイアログ ボックスの[詳細]タブで構成できます。

図 8: [ストレージ プールの作成]ダイアログ ボックスの[詳細]タブ

ストレージ プールがすでに作成されている場合は、[ストレージ プールのプロパティ]ダイアログ ボックスの[詳細]タブを使用して、Multicore FAST Cache を有効にします(図 9)。

14 EMC VNX Multicore FAST Cache VNX5200、VNX5400、VNX5600、 VNX5800、VNX7600、VNX8000:詳細レビュー

図 9: [ストレージ プールのプロパティ]ダイアログ ボックスの[詳細]タブ

Unisphere の任意のテーブル([LUN]テーブルなど)に Multicore FAST Cache のプロパティ

を表示するには、テーブル ヘッダーを右クリックし、[列の選択]を選択します。または、 テーブルの右上隅にある[ツール]アイコンをクリックして、[列の選択]を選択します。この

操作で表示されるダイアログ ボックス(図 10)で、[FAST Cache]を選択できます。FAST Cache のプロパティは、テーブルのエントリーごとに表示されます。

図 10: Unisphere の LUN スクリーンに表示される Multicore FAST Cache の列

15 EMC VNX Multicore FAST Cache VNX5200、VNX5400、VNX5600、 VNX5800、VNX7600、VNX8000:詳細レビュー

NaviSecCLI

前のセクションで説明した管理機能は、NaviSecCLI を使用して実行することもできます。

表 1 は、Multicore FAST Cache の CLI コマンドを示しています。

表 1: Multicore FAST Cache の CLI コマンド

タスク NaviSecCli コマンド Multicore FAST Cache の作成 cache –fast -create

Multicore FAST Cache の破棄 cache –fast -destroy

Multicore FAST Cache 情報の取得 cache –fast -info

クラシック LUN 作成時の Multicore FAST Cache の構成 bind … -fastcache 0|1

クラシック LUN での Multicore FAST Cache の有効化または

無効化 chglun - <LUN#> -fastcache 0|1

クラシック LUN での Multicore FAST Cache 構成情報の取得 getlun <LUN#> -fastcache

ストレージ プール作成時の Multicore FAST Cache の構成 storagepool –create … -fastcache on|off

既存のストレージ プールの Multicore FAST Cache の構成 storagepool –modify –id <#> -fastcache on|off

ストレージ プールの Multicore FAST Cache の状態の取得 storagepool –list –id <#> -fastcache

「…」は、追加の cli オプションが必要であることを示しています。

Unisphere Analyzer

Unisphere Analyzer では、Multicore FAST Cache の統計を収集してパフォーマンスを監視します。

これらの統計を表示するには、次の手順に従って Analyzer の詳細モードを有効にします。

1. Unisphere で、[システム]をクリックします。 2. [モニタリングとアラート]をクリックします。 3. [ブロックの統計情報]をクリックします。 4. [グラフのカスタマイズ]をクリックします。 5. [全般]タブをクリックします。 6. [詳細設定]チェックボックスをオンにします。 7. [OK]をクリックして、設定を適用します。

ストレージ プロセッサ レベルでは、次の Multicore FAST Cache の統計が表示されます。

• FAST Cache のダーティー ページ(%)

• FAST Cache フラッシュ容量(MB/秒)

クラシック LUN およびストレージ プールについては、次の Multicore FAST Cache の統計が

表示されます。

• FAST Cache 読み取りヒット回数/秒

• FAST Cache 読み取りミス回数/秒

• FAST Cache 読み取りヒット率

• FAST Cache 書き込みヒット回数/秒

• FAST Cache 書き込みミス回数/秒

• FAST Cache 書き込みヒット率

16 EMC VNX Multicore FAST Cache VNX5200、VNX5400、VNX5600、 VNX5800、VNX7600、VNX8000:詳細レビュー

EMC オンライン サポートには、これらの統計を表示する場合に役立つビデオが用意されて います。EMC オンライン サポートにログインして、Multicore FAST Cache のビデオの

「Analyzerシリーズ」を検索してください。

ベスト プラクティス • Multicore FAST Cache に適したアプリケーション ワークロードは次のとおりです。

o ローカル性の高い小ブロック ランダム I/O アプリケーション

o データの再ヒット:同じデータへの高頻度アクセス

o 現在のパフォーマンスが SP の機能ではなく HDD の機能によって制限され

るシステム

• FAST VP または Multicore FAST Cache で使用するフラッシュ ドライブやオプションの 数に制限がある場合は、FAST Cache で最適化されたドライブを使用して Multicore FAST Cache を作成することをお勧めします。次に、FAST VP が有効化されたストレー ジ プールで、残ったフラッシュ ドライブを使用します。Multicore FAST Cache にはグ ローバルな性質があり、ストレージ システム内のすべての LUN とプールにメリット

があります。FAST VP のメリットを受けられるのは、フラッシュ ドライブがあるストレー

ジ プールだけです。Multicore FAST Cache と FAST VP の詳細については、「付録 B:FAST VP と Multicore FAST Cache」を参照してください。

• Unisphere では、FAST Cache で最適化されたドライブを選択して、Multicore FAST Cache の作成に使用できます。また、これらのドライブを手動で選択して、必要に応

じてバックエンド バス間にフラッシュ ドライブを分散させることができます。

• Multicore FAST Cache では、現在のボトルネックがドライブ関連である場合に全体的な

システム パフォーマンスを向上できますが、IOPS を上げると SP 上の CPU の利用率が

増加します。システムをサイズ変更して、維持される最大使用率が 70%になるようにし

ます。既存のシステムでは、SP CPU の使用率を確認してください。使用率が 80%を超

えた場合は、EMC のストレージのスペシャリストに問い合わせてシステムの稼働状態

を確認し、次の手順を決定してから Multicore FAST Cache を有効にしてください。

注: ストレージ プールの場合、Multicore FAST Cache はプール全体の機能になるため、 プール レベルで(プール内のすべての LUN を対象にして)有効化/無効化します。

詳細なベスト プラクティスについては、EMC オンライン サポートにあるホワイト ペーパー 「VNX Unified Best Practices for Performance」を参照してください。特定アプリケーションで Multicore FAST Cache を使用する際のガイドラインについては、各アプリケーションに関す るホワイト ペーパーを参照してください。

相互運用性に関する検討事項 • MirrorView™や SnapView™などの一部のオプションのアプリケーションには、プライベー

ト LUN が必要です。これらの LUN は、キャッシュ内で特殊な LUN として扱われなくなり

ました。これは、VNX OE 5.31 で使用されていたプライベート LUN が新しい MCx アーキ

テクチャでも正常に機能するためです。したがって、Multicore FAST Cache への不要な

プロモーションを回避するために、MirrorView のライト インテント ログと SnapView のク

ローン プライベート LUN では Multicore FAST Cache を無効化することをお勧めします。

17 EMC VNX Multicore FAST Cache VNX5200、VNX5400、VNX5600、 VNX5800、VNX7600、VNX8000:詳細レビュー

• SnapView スナップショットおよび MirrorView/A や SAN Copy™(差分セッション)など

の関連するレプリケーション ソフトウェアでは、予約済み LUN が必要です。

Multicore FAST Cache は、予約済み LUN のパフォーマンス向上には寄与しませんが、

ライト インテント ログおよびクローン プライベート LUN とともに使用されるため、 パフォーマンスは損ないません。予約済み LUN で Multicore FAST Cache を無効に

すると、Multicore FAST Cache 全体のワークロードを最小化するのに役立ちます。

Multicore FAST Cache は、予約済み LUN が RAID グループ内に作成されている 場合、LUN レベルで無効にできます。予約済み LUN がプール内に作成され、プー

ル内のその他の LUN で Multicore FAST Cache が必要な場合は、予約済み LUN で Multicore FAST Cache を有効なままにできます。

• Multicore FAST Cache では、以前はマルチコア キャッシュに使用できた、ストレージ システムのメモリの一部を使用します。メモリ使用量は、ストレージ システムのモデ ルと Multicore FAST Cache のサイズによって異なります。

• ヴォールト ドライブ内に取り付けられたフラッシュ ドライブは、Multicore FAST Cache の作成には使用できません。VNX OE ではこの使用方法が制限されます。

• システムで D@RE(保存データ暗号化)を有効にする前に、Multicore FAST Cache を完全に無効にする必要があります。Multicore FAST Cache を無効にすると、 Multicore FAST Cache の内容全体がディスクにフラッシュされます。D@RE を有効 にしたあと、Multicore FAST Cache を再度有効にできます。これにより、データの 再ウォームアップが必要になります。

障害処理

Multicore FAST Cache として構成されたフラッシュ ドライブでは、VNX のグローバル ホット スペア アルゴリズムが使用されます。グローバル ホット スペア アルゴリズムは、グループ

内のいずれかのドライブで障害が発生した場合に、冗長構成の RAID グループを自動的に

オンラインで再構成します。EMC は、プロアクティブ ホット スペア アルゴリズムを採用して、

この機能性をさらに拡張しました。プロアクティブ ホット スペアでは、ドライブで障害が発生

しそうになると、これを認識して、障害が起こる前にドライブのコンテンツを先制的にコピー

します。これらの機能を組み合わせることで、各 RAID グループでドライブのさらなる障害へ

の脆弱性を最小限に抑え、データの喪失を防止します。パフォーマンス上の理由から、

Multicore FAST Cache の障害が発生したフラッシュ ドライブを置き換えるために使用され るのは、FAST Cache で最適化されたドライブだけです。

Multicore FAST Cache グループ内の 1 台のディスクに障害が発生した場合は、そのディス

クが属する、基盤となるミラー ペア(RAID 1)のドライブが縮退モードになります。キャッシュ ページ クリーニングのアルゴリズムは、Multicore FAST Cache ページが Multicore FAST Cache のドライブから縮退グループ用の HDD にコピーされ、グループ内のすべてのダーテ

ィー キャッシュ ページがバックエンド ドライブにコピーされる割合を増加します。この場合、 Multicore FAST Cache グループからの読み取り処理のみが許可されます。そのため、冗長

構成でない RAID グループでドライブの障害が発生した場合に、ドライブのデータが喪失す

る潜在的リスクが低減します。

18 EMC VNX Multicore FAST Cache VNX5200、VNX5400、VNX5600、 VNX5800、VNX7600、VNX8000:詳細レビュー

この状態では、縮退グループが対応していた書き込み処理が、残りのグループによって処

理されます。永続ホット スペアまたはドライブの交換によって縮退グループが修復されると、

縮退グループは縮退モードを終了してデータの再ウォームをシームレスに開始します。

注: FAST VP で最適化されたドライブを、FAST Cache で最適化されたドライブのスペアとし

て使用することはできません。

結論

Multicore FAST Cache を使用すると、高い参照のローカル性を持つデータに対して、ストレ ージ システムがフラッシュ ドライブ クラスのパフォーマンスを発揮できるようになります。 このワーキング データセットによって、フラッシュ ドライブ上にすべてのデータを配置しなく ても IOPS が向上します。Multicore FAST Cache ではアプリケーションからの I/O バーストを 吸収するため、HDD の負荷が削減され、ストレージ ソリューションの TCO の改善に役立ちます。

Multicore FAST Cache は、Unisphere を通じて分かりやすく直感的な方法で管理できます。

Multicore FAST Cache は、FAST VP テクノロジーの補完的機能として使用することができ ます。この 2 つのテクノロジーを使用すると、使用パターンに応じて最適なストレージ階層

にデータを配置できます。

参考資料

以下に挙げるホワイト ペーパーは、EMC オンライン サポートで閲覧可能です。

• EMC Unified Storage System Fundamentals for Performance and Availability

• EMC VNX FAST VP

• EMC Unisphere: Unified Storage Management Solution

• EMC VNX Virtual Provisioning

• Leveraging EMC FAST Cache with Oracle OLTP Database Applications

• EMC® Infrastructure for VMware® View™ 5.0

• Applied Best Practices Guide: EMC VNX Unified Best Practices for Performance

• EMC VNX2: Data-At-Rest Encryption

19 EMC VNX Multicore FAST Cache VNX5200、VNX5400、VNX5600、 VNX5800、VNX7600、VNX8000:詳細レビュー

付録 A:Multicore FAST Cache の構成オプション 表 2: Multicore FAST Cache の構成オプションの最大値

ストレージ システム フラッシュ(SSD)ディスク容量 Multicore FAST Cache の最大

容量

VNX5200 100 GB~200 GB 300 GB/600 GB VNX5400 100 GB~200 GB 500 GB/1 TB VNX5600 100 GB~200 GB 1 TB~2 TB VNX5800 100 GB~200 GB 1.5 TB~3 TB VNX7600 100 GB~200 GB 2.1 TB~4.2 TB VNX8000 100 GB~200 GB 2.1 TB~4.2 TB

表 3. ドライブ数に基づく Multicore FAST Cache の特定の構成オプション

ドライブ

数 VNX5200 VNX5400 VNX5600 VNX5800 VNX7600/VNX8000

容量 (GB)

100 GB SSD

容量 (GB)

200 GB SSD

容量 (GB)

100 GB SSD

容量 (GB)

200 GB SSD

容量 (GB)

100 GB SSD

容量 (GB)

200 GB SSD

容量 (GB)

100 GB SSD

容量 (GB)

200 GB SSD

容量 (GB)

100 GB SSD

容量 (GB)

200 GB SSD

2 100 200 100 200 100 200 100 200 100 200 4 200 400 200 400 200 400 200 400 200 400 6 300 600 300 600 300 600 300 600 300 600 8 400 800 400 800 400 800 400 800

10 500 1,000 500 1,000 500 1,000 500 1,000 12 600 1,200 600 1,200 600 1,200 14 700 1,400 700 1,400 700 1,400 16 800 1,600 800 1,600 800 1,600 18 900 1,800 900 1,800 900 1,800 20 1,000 2,000 1,000 2,000 1,000 2,000 22 1100 2,200 1100 2,200 24 1,200 2,400 1,200 2,400 26 1300 2,600 1300 2,600 28 1,400 2,800 1,400 2,800 30 1,500 3000 1,500 3000 32 1,600 3,200 34 1,700 3,400 36 1,800 3600 38 1900 3,800 40 2,000 4000 42 2,100 4200

20 EMC VNX Multicore FAST Cache VNX5200、VNX5400、VNX5600、 VNX5800、VNX7600、VNX8000:詳細レビュー

付録 B:FAST VP と Multicore FAST Cache

FAST VP(Fully Automated Storage Tiering for Virtual Pools)は、複数のドライブのタイプ

を含むプールにおける 256 MB のデータ スライスに対してサブ LUN レベルでストレー

ジ階層化を実行する機能です。FAST VP は、より多くのアクティブ スライス(より頻繁に

アクセスされるデータ)を、最適なパフォーマンスのストレージ階層に自動的に移行し、

あまりアクティブでないスライスをパフォーマンスの劣る(より低コストの)階層に移行す

ることにより、TCO(総所有コスト)を削減します。この機能の詳細については、EMC オン

ライン サポートにあるホワイト ペーパー「EMC VNX FAST VP」を参照してください。

表 4. FAST VP と Multicore FAST Cache の機能の比較

Multicore FAST™ Cache FAST™ VP

FAST Cache で最適化されたフラッシュ ドライブを

使用して、ストレージ システムの既存のキャッシ

ュ容量を拡張できる。

ストレージ プールを使用することにより、単一

の LUN で複数のタイプのドライブのメリットを

活用できる。

粒度は 64 KB。 粒度は 256 MB。

頻繁にアクセスされるデータを、HDD から FAST Cache で最適化されたフラッシュ ドライブにコピ

ーする。

一定期間に収集されたアクセスの重み付け平

均の統計に基づいて、異なるストレージ階層

間でデータを移行する。

ワークロードの変化が予測不能かつ非常に動 的で、迅速なレスポンス タイムを必要とする場

合に使用する。

ワークロード パターンの変化が予測可能で比

較的少ない場合に使用する。

アクセス頻度の高い HDD のデータを継続的に

Multicore FAST Cache にプロモートする。再配置

サイクルはなし。

データの移行は、スケジュールに従って実行

されるか、再配置ウィンドウを手動で呼び 出す。

リアルタイムのモニタリングによって、Multicore FAST Cache にプロモートする必要のあるデータ

を判断する。

1 時間ごとに解析を実行して、移行する必要

のあるデータの部分を判断する。

Multicore FAST Cache と FAST VP を一緒に使用すると、高パフォーマンスで TCO の低い

ストレージ システムを実現できます。たとえば、FAST Cache で最適化されたフラッシュ ドライブを使用して Multicore FAST Cache を作成し、SAS および NL-SAS ディスク ドライ

ブで構成されたストレージ プールで FAST VP を使用できます。パフォーマンスの観点 では、Multicore FAST Cache にはバースト データにとっての直接のメリットがあり、 FAST VP は、よりアクティブなデータを SAS ドライブに、あまりアクティブでないデータを

NL-SAS ドライブに移行するという方式をとっています。TCO に関しては、Multicore FAST Cache は、より少ないフラッシュ ドライブでアクティブ データに対処でき、FAST VP は SASおよび NL-SAS ドライブを使用してディスク使用率と効率性を最適化します。

21 EMC VNX Multicore FAST Cache VNX5200、VNX5400、VNX5600、 VNX5800、VNX7600、VNX8000:詳細レビュー

参照のローカル性が高く、バーストが生じやすいデータに対応するためにストレージ システムのパフォーマンスを直ちに改善する必要がある場合、一般的には Multicore FAST Cache を使用します。一方、FAST VP を使用して TCO を最適化する場合は、保持

しているデータの一定期間のアクセス数および需要に応じて、適切なストレージ階層に

データを移行します。Multicore FAST Cache はパフォーマンス向上を重視し、FAST VPは TCO の改善を重視した機能です。これらの機能は相互に補完し合うため、両方を使

用することで、パフォーマンスを向上させて TCO を削減できます。

Multicore FAST Cache を FAST VP と連携させると、不必要なタスクのためにリソースが

無駄に使用されることがなくなります。次に例を挙げます。

• FAST VP がデータ スライスをフラッシュ ドライブに移行する場合、Multicore FAST Cache では、たとえプロモーション条件に一致しても、そのスライスから 64KB のデータ チャン

クを Multicore FAST Cache にプロモートしません。これにより、あるフラッシュ ドライブか

ら別のフラッシュ ドライブにデータがコピーされる場合のリソースの無駄がなくなります。

• バーストが生じやすいワークロードで Multicore FAST Cache が有効な LUN のスライス

にある特定の 64KB チャンクへのアクセスが開始されても、FAST VP はそのスライスを

異なるストレージ階層にすぐには移行しません。その代わりに、Multicore FAST Cacheは 64KB チャンクをキャッシュにプロモートします。64KB チャンクがプロモートされたあと、

I/O 動作の大部分は Multicore FAST Cache から実行されます。その結果、バックエンド

LUN でのアクティビティが減少し、FAST VP では、より高いストレージ階層へのスライス

の移行が不要になることがあります。この場合、アプリケーションのワークロードで一時

的なバーストが発生すると、FAST VP によるデータ移行の開始が回避されます。

• 前述のシナリオに対し、アプリケーション ワークロードが持続的に増加している場合、 Multicore FAST Cache は、HDD LUN にデータを書き戻して、新たなプロモーション用の 領域を作成する必要があります。この処理は、バックエンドのアクティビティとして登録

されます。最終的に、FAST VP は、より高いストレージ階層(フラッシュ ドライブを選択で きる)へのデータ スライスの移行をスケジュールします。この移行が完了した際に、

Multicore FAST Cache は、フラッシュ ドライブのストレージ階層の既存データをプロモー トしません。

• 結果的に、FAST Cache で最適化されたフラッシュ ドライブを Multicore FAST Cache に

使用するほうが、I/O 使用パターンが変化したときのパフォーマンスのメリットが大きく、

レスポンス タイムも速くなります。ただし、DRAM キャッシュのパフォーマンス向上により RAID 1 アーキテクチャがオフセットされるため、Multicore FAST Cache では、パリティの オーバーヘッドが高くなる欠点もあります。パフォーマンスのメリットは、HDD への書き

戻しではなく、Multicore FAST Cache 内の I/O の DRAM からフラッシュ ドライブへのフラ

ッシュによるものです。

22 EMC VNX Multicore FAST Cache VNX5200、VNX5400、VNX5600、 VNX5800、VNX7600、VNX8000:詳細レビュー

付録 C:Multicore FAST Cache とストレージ システム キャッシュの 比較 Multicore FAST Cache は、半導体ベースのストレージ テクノロジーです。この機能は、 ストレージ システムの高速で容量が限られた DRAM キャッシュと、より低速で容量の大 きい HDD の間に、フラッシュ メモリ ベースで大容量のセカンダリ キャッシュ層を提供し ます。

表 5. DRAM メモリと Multicore FAST Cache の比較

特性 DRAM キャッシュ Multicore FAST Cache

位置 CPU の最も近くに位置し、レーテ

ンシーが最も低い。 CPU から一段離れたところにあり、

DRAM キャッシュより速度が遅い。 レスポンス タイム レスポンス タイムは数ナノ秒から

数マイクロ秒程度。 レスポンス タイムは数マイクロ秒

から数ミリ秒程度。 アップグレード性 アップグレードできない。 ストレージ システムのモデルとフラ

ッシュ ドライブのサイズに応じて、

サポート対象のすべてのモデルお

よびオプション単位でアップグレー

ド可能。 Operation 読み取り処理と書き込み処理を

単一の領域で行う。 ストレージ システムのモデルとフラ

ッシュ ドライブのサイズに応じて、

サポート対象のすべてのモデルお

よびオプション単位でアップグレー

ド可能。 Capacity Multicore FAST Cache に比べて

サイズが制限される。 DRAM キャッシュよりはるかに大

容量に拡張できる。 粒度 粒度が非常に高く、実質的に I/O

サイズで処理される。キャッシュ ページのサイズは固定されている

(8 KB)。

64 KB の粒度のエクステントで動

作する。

可用性 障害発生時に、資格のある担当

者がサービスを交換する必要が

ある。

障害発生時に、別のフラッシュ ドライブのホット スペアにより故障

したドライブが自動的に交換され、

故障したコンポーネントはユーザ

ーが交換できる。 電源障害 コンテンツは揮発性であるため、

停電時には失われる。 コンテンツは不揮発性で、停電時

にも維持される。

23 EMC VNX Multicore FAST Cache VNX5200、VNX5400、VNX5600、 VNX5800、VNX7600、VNX8000:詳細レビュー