分野：地域作物

新製茶ハイブリッドラインによるてん茶、ＣＴＣ緑茶および

蒸し製玉緑茶生産技術

試験研究計画名：海外輸出に対応できる日本茶生産体系の実証研究

研究代表機関名：農研機構野菜茶業研究所

開発のねらい：

日本茶を海外に輸出するためには、国によって異なる嗜好性や利用形態に対応する

必要があり、多様な香味や用途に対応できる加工技術が必要です。特に海外で求めら

れる高い香気や低コストで高品質なてん茶、あるいは最も需要が多いティーバッグ原

料となるＣＴＣ緑茶の加工技術を確立することが急務です。そこで、新製茶ハイブリ

ッドライン（以下、新製茶ラインと略す、図１）を用いて、省力で低コスト、かつ高

品質なてん茶、ＣＴＣ緑茶および蒸し製玉緑茶の製造技術を確立しました。

開発技術の特性と効果：

新製茶ハイブリッドラインはてん茶とＣＴＣ緑茶を製造可能です。

図１ 新製茶ハイブリッドライン（炒蒸機－冷却機－回転打圧機は省略）

新製茶ラインを用いた加工用てん茶の製

造法は、従来の製造法に比べて生葉処理量

を約４倍に向上でき、その一番茶てん茶を

粉砕した抹茶は従来のてん茶機製の上・中

級抹茶と同等の色を有します（図２）。

新製茶ラインを用いたＣＴＣ緑茶の製造

時間は約１時間で、従来の製法より大幅に

短縮できます（図４）。新製茶ラインに玉

緑茶の製造工程（中揉機、再乾機、締機）

を組み合わせて、玉緑茶にすることも可能

です。

CTC ライン

つる切り機

ティーバッグ

てん茶 抹茶

ネット型乾燥機

てん茶ライン

ローターバン ＣＴＣ

0

5

10

15

20

かなや

みどり

おくみ

どり

上級

中級

新製茶ライン製 市販抹茶

色沢

評点

図２ 新製茶ライン製と市販抹茶の品質比較

市販抹茶のランクは価格（20g当たり）で以下の

とおり分類した。

上級：1,500円以上、中級：700～1,500円

開発技術の経済性：

新製茶ラインにおけるてん茶1kg当たりの重

油消費量は約 2L で、従来のてん茶製造の

3.5L に比べて約 40％削減可能です（図３）。

新製茶ラインを用いた緑茶は従来製法の

蒸し製玉緑茶製造と比較して、秋冬番茶の

場合、時間、燃料等製造にかかる経費とも

に 5割ほど削減できます(図４、図５)。

図４ 秋冬番茶における蒸し製玉緑茶の 図５ 秋冬番茶における蒸し製玉緑茶の

製造時間 製茶コスト（重油、ガス、電気）

こんな経営におすすめ：

輸出向けとして需要拡大が期待される加工用てん茶やティーバッグ等新規茶種の生

産を志向する工場や、複数の製茶ラインを有する製茶工場で一部ラインを再編し、多

様な茶種の生産を計画している大規模経営体等への導入に適しています。

技術導入にあたっての留意点：

新製茶ラインによるてん茶・ＣＴＣ緑茶製造に適する品種や摘採時期があるので、

所有する品種で検討を行う必要があります。また、ＣＴＣ緑茶については、一番茶～

秋冬番茶までの荒茶のブレンドによる品質の検討も行う必要があります。

研究担当機関名：農研機構野菜茶業研究所、食品総合研究所、静岡県公立大学法人静

岡県立大学、公立大学法人岩手県立大学、鹿児島県農業開発総合センター、宮崎県総

合農業試験場茶業支場、長崎県農林技術開発センター、カワサキ機工株式会社、松元

機工株式会社、ＪＡかごしま茶業株式会社、鹿児島県南薩地域振興局、宮崎県西臼杵

支庁、長崎県農産園芸課技術普及班、県央振興局大村・東彼地域普及課

お問い合わせは：

鹿児島県農業開発総合センター茶業部 長崎県農林技術開発センター 茶業研究室

電話 ０９９３－８３－２８１１ 電話０９５７－４６－００３３

E-mail chashi@pref.kagoshima.lg.jp E-mail h-ota@pref.nagasaki.lg.jp

執筆分担（鹿児島農開セ 内村浩二、長崎県農技セ 太田久、カワサキ機工 岡田猛）

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

新製茶ライン 従来製法

重油

消費

量(L

/kg)

図３ 新製茶ライン(てん茶)の重油消費量

91

172

0

50

100

150

200

新製茶ライン 従来製法

製茶コスト

（円／荒茶1kg）

53

119

0

50

100

150

新製茶ライン 従来製法

時間

（分

）