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2017年度 後学期「エネルギー科学」レポート課題その2  東京農工大学工学部 物理システム工学科ほか 「エネルギー科学」 レポート課題 その2017/11/21 講師:鳥居 寛之 レポート提出締切 以下の課題 #5A~#7Z については、12月19日(火)を締切日とする。 これらはすべて「燃焼・再生可能」分野の課題である。 レポート提出はいずれかの週の講義終了後に講師に直接提出すること。 提出に当たっての注意 選択したレポート課題番号記号と、何点の課題であるか(特に「12点または18点課題」などの場 合は、どちらの満点を選択するかを明記)、そして課題の題目が分かるように、例えば 課題 #5A-12 風車の種類と原理 課題 #6A-II-15 熱力学 課題 #7Z-18 燃焼・再生分野総合 のように冒頭に記すこと。複数のレポートを合わせて綴じる場合には、1ページ目にも、選択し た全ての課題の情報をまとめて記すこと。 学年、学籍番号と氏名も忘れずに記入すること。 課題 #5A. 風車の種類と原理(12点または18点課題) 様々な種類の風車があるなかで、なぜ大型のブレード3枚式プロペラ型風車が風力発電の主流に なっているのか述べよ。18点課題として提出する場合には、さらに他のいくつかの種類の風車に ついてもその特徴について考えて比較し、またできれば数式を用いて流体力学的な考察を加えら れるとなおよい。 課題 #5B. 風力発電の導入(9点課題) 我が国において、固定価格買取制度の導入によって太陽光発電が飛躍的な伸びを示しているのに 比べて、風力発電は期待したほど導入が増えていかない。その要因について分析し、その解決に 何が必要か述べよ。 課題 #5C. 水力発電(9点課題) 以下の課題 (a) または (b) のいずれか一方を選んで解答せよ(両方に解答しても加点しない)。 (a) 水力発電について、総合的に述べよ。貯水方式の違いや、水車の種類とその特徴について論じ ること。また、国内あるいは海外の大型ダムおよび水力発電所について例を挙げ、方式や種類、 発電量などを記せ。大型ダム開発の問題点は何か。 (b) 中小水力発電について、国内での具体的事例をいくつか挙げたうえで、その利点と今後の課題 について述べよ。 / 15

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2017年度 後学期「エネルギー科学」レポート課題その2  東京農工大学工学部 物理システム工学科ほか

「エネルギー科学」 レポート課題 ~その2~ 2017/11/21 講師:鳥居 寛之

レポート提出締切 以下の課題 #5A~#7Z については、12月19日(火)を締切日とする。 これらはすべて「燃焼・再生可能」分野の課題である。 レポート提出はいずれかの週の講義終了後に講師に直接提出すること。

提出に当たっての注意 選択したレポート課題番号記号と、何点の課題であるか(特に「12点または18点課題」などの場合は、どちらの満点を選択するかを明記)、そして課題の題目が分かるように、例えば  課題 #5A-12 風車の種類と原理  課題 #6A-II-15 熱力学  課題 #7Z-18 燃焼・再生分野総合 のように冒頭に記すこと。複数のレポートを合わせて綴じる場合には、1ページ目にも、選択した全ての課題の情報をまとめて記すこと。 学年、学籍番号と氏名も忘れずに記入すること。

課題 #5A. 風車の種類と原理(12点または18点課題) 様々な種類の風車があるなかで、なぜ大型のブレード3枚式プロペラ型風車が風力発電の主流になっているのか述べよ。18点課題として提出する場合には、さらに他のいくつかの種類の風車についてもその特徴について考えて比較し、またできれば数式を用いて流体力学的な考察を加えられるとなおよい。

課題 #5B. 風力発電の導入(9点課題) 我が国において、固定価格買取制度の導入によって太陽光発電が飛躍的な伸びを示しているのに比べて、風力発電は期待したほど導入が増えていかない。その要因について分析し、その解決に何が必要か述べよ。

課題 #5C. 水力発電(9点課題) 以下の課題 (a) または (b) のいずれか一方を選んで解答せよ(両方に解答しても加点しない)。

(a) 水力発電について、総合的に述べよ。貯水方式の違いや、水車の種類とその特徴について論じること。また、国内あるいは海外の大型ダムおよび水力発電所について例を挙げ、方式や種類、発電量などを記せ。大型ダム開発の問題点は何か。

(b) 中小水力発電について、国内での具体的事例をいくつか挙げたうえで、その利点と今後の課題について述べよ。

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2017年度 後学期「エネルギー科学」レポート課題その2  東京農工大学工学部 物理システム工学科ほか

課題 #6A. 熱力学(12点課題)(条件により15点課題) 以下の課題 [I] または [II] のいずれか一方を選んで解答せよ(両方に解答しても加点しない)。どちらを選んだかを明記すること。[II] については小問の (a)~(f) に答え、余力があれば (g), (h) にも答えよ。((g), (h) にも回答した場合に限っては 15点課題とする)

[I] 熱力学に登場する以下(次頁)の物理量について、その定義および意義(それぞれの物理量が何の役に立つのか)について解説せよ。それらの物理変数の間の関係についても、熱力学の教科書を要約するつもりで、数式を使って説明すること。 内部エネルギー U、エンタルピー H、エントロピー S、ギブスの自由エネルギー G、エクセルギー

[II] カルノーサイクルに関する以下の小問の (a)~(f) に答え、余力があれば (g), (h) にも答えよ。

カルノーサイクルは、高温 TH において高圧の状態Aから低圧の状態Bまで等温膨張、そこから状態Cまで断熱膨張、さらに状態Cから状態Dまで低温 TL にて等温圧縮、そして最後に断熱圧縮をして元の状態Aに戻る熱力学サイクルである。状態 A, B, C, D の体積および圧力を VA, VB, VC, VD および pA, pB, pC, pD とする。温度については TH (= TA = TB), TL (= TC = TD) を使う。気体のモル数を n、気体定数を R とする。以下の設問で、気体は理想気体として扱う。定積および定圧のモル比熱をそれぞれ cV, cp とする。例えば単原子分子気体の場合は cV = 3 R / 2 である。

(a) 等温変化は pV = const. (一定) の条件になる。断熱変化については pV γ = const. と書ける。γ を求めよ。

(b) それぞれの過程でのエンタルピーの変化量 ΔHAB, ΔHBC, ΔHCD, ΔHDA およびサイクル一周でのそれらの合計 ΔH を求めよ。ただし、例えば ΔHAB は状態AからBへのエンタルピーの変化分を表し、ΔHAB = HB – HA である。

(c) 高温 TH において状態Aから状態Bまでの間に気体が受け取る熱量 QH を求めよ。同様に、低温 TL において状態Cから状態Dまでの間に気体が受け取る熱量 QL を求めよ。ただし、気体が熱を放出する場合は Q < 0 とする。

(d) それぞれの過程でのエントロピーの変化量 ΔSAB, ΔSBC, ΔSCD, ΔSDA およびサイクル一周でのそれらの合計 ΔS を求めよ。ただし、例えば ΔSAB は状態AからBへのエントロピーの変化分を表す。

(e) ΔSAC = ΔSAB + ΔSBC を状態AとCの状態変数のみを用いて表せ。これはすなわち、任意の状態 (pA, VA, TA) と (pC, VC, TC) の間のエントロピー差を与える式となる。

(f) T-S 図においてカルノーサイクルは長方形で表される。この長方形の面積が、1サイクルで気体が外部に与えた仕事 |W| に等しいことを示せ。

(g) (余力があれば)サイクル一周におけるギブスの自由エネルギーの変化量 ΔG を求めよ。

(h) (余力があれば)T-S 図において定圧曲線 (p = const.) および定積曲線 (V = const.) がどのような曲線で表されるか、図を描け。

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2017年度 後学期「エネルギー科学」レポート課題その2  東京農工大学工学部 物理システム工学科ほか

課題 #6B. エクセルギー(12点課題) 以下の課題 [I] または [II] のいずれか一方を選んで解答せよ(両方に解答しても加点しない)。どちらを選んだかを明記すること。[II] については小問 (a)~(f) の全てに答えよ。

[I] 講義で解説したことを参考に、エクセルギーの考え方が役に立つ例題を自分で作って解いてみよ。エクセルギーについて解説した教科書は多くはないが、探して参照することを薦める。

エクセルギーについての記述がある参考書の例:  基礎エネルギー工学[新訂版],桂井誠,数理工学社 (2013).  エネルギー工学,牛山泉・山地憲治,オーム社 (2010).  新訂 エネルギーと社会,迫田章義・堤敦司,放送大学教材 (2015).(旧版は全く内容が別)   化学反応系やコプロダクションの説明も含め、エクセルギーの解説が詳しい。   他にも、エネルギー問題一般や、燃料電池の説明などもある。  JSME テキストシリーズ 熱力学,日本機械学会,丸善 (2002).  エネルギーの新しいものさしエクセルギー,アベイラブルエナジー研究会,電気新聞ブックス   (2010). (エクセルギーについて概観するに適した読み物。ただし教科書ではない。)  エクセルギーの基礎,唐木田健一,オーム社 (2005).(熱力学の教科書。エクセルギーは終章)  エクセルギーと環境の理論 ― 流れ・循環のデザインとは何か[改訂版],宿谷昌則,井上書院   (2010).(熱力学的考察にとどまらず、広くエクセルギーについて書かれた書籍。ただし、   著者の独自研究に基づく叙述や、説明が回りくどく却って分かりにくい箇所がある。)  物理学[三訂版],小出昭一郎,裳華房 (1997).

[II] 以下の小問 (a)~(f) のすべてに答えよ。【見かけより易しい課題である。】

利用温度 T の熱源と環境温度 T0 の熱源の間で作動する逆カルノーサイクル(ヒートポンプ)について考える。利用温度 T で熱源から作動気体が受け取る熱量を Q、環境温度 T0 で作動気体が受け取る熱量(放出する熱量に負号をつけたもの)を Q0 とする。

(a) 利用温度 T に変化がない条件のもとで、 T > T0 の場合、エクセルギー(利用可能な最大仕事)が W = Q ( 1 – T0 / T ) で与えられることを示せ。

(b) 1サイクル回った後でエントロピーが保存していることを考慮し、Q と Q0 との間の関係式を求めよ。

(c) T < T0 では、高温 T0 で受け取った熱 Q0 のうち仕事に使えるエネルギー、すなわちエクセルギーは W = Q0 ( 1 – T / T0 ) となる。これは (a) で考えた T > T0 の場合の式において T と T0、Q と Q0 を入れ替えたものになっている。この式に、(b) で求めた関係式を代入して、結局 W = Q ( 1 – T0 / T ) に帰着することを示せ。つまり、T と T0 の大小に関わらず、高温の熱の場合でも冷熱の場合でも、エクセルギーは同じ表式で表すことができる。

(d) T > T0, T < T0 のいずれの場合にも、W > 0 となることを確認せよ。

(e) 次に、熱源の熱容量が有限の場合を考える。初期温度 T1 (T1 > T0) の熱源となる物質から熱を取り出すにつれて、温度 T が徐々に下がり、利用温度が変化する様子を考えることになる。定圧過程では、講義スライドに載せたように、エクセルギーは W = ΔH – T0 ΔS で与えられ、熱容量 Cp が温度 T によらず一定であるとすれば、温度変化に伴う積分を実行して

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W = Cp (T1 – T0) – Cp T0 loge (T1 / T0) と計算できる。実際にこのエクセルギーの値を、T1 を絶対0度から数千度まで変化させて計算し、グラフにプロットしてみよ。手描きでも、パソコン等を利用しても構わない。環境温度は T0 = 298 K とする。なお、Cp の値に依存しないグラフとするため、環境温度 T0 におけるエンタルピー H0 = Cp T0(一定値)との比率として、 W / H0 の値を縦軸にプロットするとよい。

(f) エクセルギー W は T1 = T0 で 0、それ以外で常に正の値を取る。温熱であっても冷熱であっても、環境温度からの温度差が大きいほど、利用できるエネルギーが大きくなることが分かる。このことは上で描いたグラフから明らかであるが、数学的に、関数 W/H0 が常に正の値を取り、ただし T1 = T0 でだけ極小かつ最小値 0 を取ることを示せ。

課題 #7A. 燃料電池(12点課題) 様々な種類の燃料電池について、それぞれの特徴を述べよ。両極での電気化学反応式や動作温度、発電効率などについても言及すること。

課題 #7B. 次世代自動車(9点課題) 従来のガソリン自動車と比較しつつ、次世代の様々な種類の自動車について、それぞれの特徴と、技術的ならびに普及へ向けての社会的な課題について比較してまとめよ。

課題 #7C. 水素社会(12点課題) 水素の多種多様な製造方法について解説せよ。工業との関連も述べよ。

課題 #7D. 熱力学の工学応用(15点課題) コジェネレーション、コプロダクション、熱のカスケード利用、自己熱再生、水素エネルギー利用。燃料電池などからいくつかを選んで、熱力学的観点から解析し、そのメリットについて述べよ。エントロピーあるいはエクセルギーについての考察を加えること。

課題 #7E. 電力貯蔵(12点課題) 各種の蓄電池を含む様々な種類の電力貯蔵方法について、それぞれの原理および用途、特徴と課題について述べよ。また、一般に電力は貯めることができないと言われているが、自然エネルギーを大量導入する際に必要な電力供給の平滑化を、蓄電池を使って達成する可能性と克服すべき課題についても記すこと。

課題 #7Y. 世界各国のエネルギー事情(12点課題) 以下の課題 [I] または [II] のいずれか一方を選んで解答せよ(両方に解答しても加点しない)。どちらを選んだかを明記すること。

[I] 世界の様々な国においては、エネルギー資源の状況もエネルギー政策も多種多様である。状況の異なる3カ国を選んで、それぞれの国におけるエネルギーポートフォリオ(エネルギー源をどういう比率で組み合わせて供給しているか)を解説し、また各国の再生可能エネルギーに対する取り組みについても述べよ。

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2017年度 後学期「エネルギー科学」レポート課題その2  東京農工大学工学部 物理システム工学科ほか

[II] 世界各国でここ数年、再生可能エネルギーの導入が飛躍的なスピードで増えている。太陽光や風力発電において、トップの国の入れ替わりも激しい。再生可能エネルギーに関する世界全体の最近の情勢について解説した後、特に導入に力を入れている国の状況について述べよ。

課題 #7Z. 燃焼・再生分野総合(18点課題) 火力エネルギーおよび様々な再生可能エネルギーについて、それぞれの長所および短所、また課題について整理してまとめた上で、これらを総合的にどうミックスしてエネルギー政策に反映させていくのがよいと思うか、科学的思考に基づいて自分なりの考えを述べよ。日本においてこれからどうすべきかという意見でよいが、あるいは世界的視野に立って考察してもよい。なお、講義前半ではまだ扱っていない原子力や核融合については、別途考えるとして、ここでは触れない。

以降の回に関係する「放射線・原子核」分野の課題は、また後日発表する。

以上。

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