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多孔質ポリイミドフィルムの迅速作製 プロセスの開発 理工研究域自然システム学系 准教授・瀧 健太郎

多孔質ポリイミドフィルムの迅速作製 プロセスの開発 · 2015-09-01 · 多孔質ポリイミドフィルムの迅速作製 プロセスの開発 理工研究域自然システム学系

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多孔質ポリイミドフィルムの迅速作製プロセスの開発

理工研究域自然システム学系 准教授・瀧 健太郎

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携帯電話のデータ通信速度

1991 1994 1997 2000 2003 2006 2009 2012100

1k

10k

100k

1M

10M

100M

1G

10G

PDCPDC PDC paket

PHSPHS

W-CDMA

HSDPA

Super 3G

4G

Da

ta sp

eed

[bps

]

2400 bps

Year

Dat

a sp

eed

[bps

]

18年間でデータ通信速度は100万倍

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高周波信号の減衰理論

( )( )f s1 1 1ε = + ε − − φ

εs: 固体フィルムの比誘電率, tan δs: 固体フィルムの誘電正接,

f: 周波数, φ:空隙率

比誘電率

rD

9ta1 10n9A f −= × × × ×δ ε

信号の減衰

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Skin layer

Skin layer

Porous layer

スキン層 大口径の孔

連通孔

表面の孔

Porous polyimide Layer: 20 ~ 30 µm

多孔フレキシブルプリントケーブルの技術課題

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多孔ポリイミドに関するこれまでの研究

Phase separation

Microphase separation of

BC

Hedrick et al (1999) Poor porosity

Poor solvent induced

Ren et al (2008)

long process time: 48 h

Thermally induced

Krause et al (2002)

Hard to obtain thin film ~ 20

um

Zwitterion induced

Taki et al (2013)

Fast and high porosity

Porogen

Extraction of PEG by CO2

Mochizuki et al (2002)

Extraction efficiency

Hollow silica particle Lin et al (2007) Poor porosity

Mesoporous silica Dang (2009) Poor porosity

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試料 ポリアミック酸(PAA)の合成 ① ビス(4-アミノフェニル)エーテル0.505 gを加え、5.5 gのN,N-ジメチルアセトア

ミド(脱水溶媒)に溶解

② 無水ピロメリット酸0.550 gを添加し、更に攪拌

感光性の付与

光硬化樹脂:メタクリル酸2-(ジエチル)アミノエチル 2.4 g

重合開始剤:ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド0.4 g

ON

O

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孔形成メカニズム 溶媒 モノマー CO2

前駆体の塗布

ポリイミド前駆体(P

AA) CO2の含浸 30s UV照射による重合 30s

炭酸ガスの除去 溶媒の蒸発

液滴は固体の両性イオン (モノマーとCO2の複合体) により拡大が抑制

熱処理で孔が完成

O

ON C

O

O

C–

O

O

N+

O

O

+

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多孔ポリイミド膜の 比誘電率・誘電正接と空隙率

比誘電率はほぼ線形に減少

0 20 40 60 80 1001

2

3

4

Rela

tive

diel

ectr

ic c

onst

ant [

-]

Void fraction [%]0 20 40 60 80 100

0.001

0.01

0.1

Loss

tang

ent,

tan

δ [-]

Void fraction [%]

Meas. at 20 GHz by KEAD.

誘電正接はデータにバラツキ (熱処理に課題)

多孔化により劇的な低誘電率化に成功

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スケールアップ!

• 高周波回路を多孔フレキシブル基板上に描画し、高周波信号(RF)の減衰を測定するためには、…

• 大面積 (150 mm x 70 mm) の多孔ポリイミドフィルムが不可欠

• 面積ベースで10倍のスケールアップが必要

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Hydraulic press

新規開発の大面積多孔ポリイミド製造装置

UV lump

CO2 pump

Cooling chamber

窓付きフランジ

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大面積化装置

φ165

250

W.P. 6.5 MPaTemp 100oC

2. フレキシブル超低誘電率膜製造装置の開発

原理確認実験の成功 ↓

プロセスを自らスケールアップ (30x30 mm2⇒150x70 mm2)

↓ 面積ベースで10倍の

低誘電率膜を製造可能に! Hydraulic press

UV lump

市販最強UVランプ

50 tの油圧プレス

95 mm厚の石英窓

自動シーケンス タッチパネル

高さ2.5 m 重量 1.5 t CO2圧力 6.5 MPa

NEDO若手グラント成果 11

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フレキシブル多孔ポリイミドフィルム

150 mm

70 m

m

Thickness 20 um

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多孔ポリイミドフィルム

空隙率80%、孔径1マイクロメートル

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開発した多孔ポリイミドに回路を描く

1. 銅めっきを裏面に行う。

2. フォトマスクを準備し、回路パターンをドライフィルムレジストに露光

3. 回路以外をエッチングにより除去

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形成された電気回路 SEI ×200 SEI ×500

SEI ×200 SEI ×1000

Line width 125 µm Line Height 20 µm

回路形成は(株)マルチ

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形成された電気回路 回路形成は (株)マルチ

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形成された電気回路 回路形成は (株)マルチ

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20 u

m

75 u

m

125 um

142 um

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超低誘電損失膜上に形成された電気回路

-1.4

-1.2

-1.0

-0.8

-0.6

-0.4

-0.2

0.0

0.2

0 5 10 15 20

減衰

量 [d

B/20

mm

]

周波数 [GHz]

ポリイミド(実験) 多孔ポリイミド(実験)

19

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回路を多孔ポリイミドでコート

多孔ポリイミドを銅箔上に形成後、回路を作製し、さらに多孔ポリイミド膜をコート

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回路を多孔ポリイミドでコート

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ところでLCPに勝てるの?

©フジクラ

©フジクラ

@1GHz PI LCP

比誘電率 3.3~3.6 3.0

誘電正接 0.005~0.01 0.002

吸水率[%] 1.0~1.5 0.04

©フジクラ

材料物性値

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LCP(液晶ポリマー)とPIの物性

PI PIB PIC FPI LCP カプトン 剛直構造 剛直構造 低ε構造 液晶高分子

CTE ppm/℃

39 30 6.4 65 -

誘電率 @1 GHz

3.6 3.5 3.9 2.8 3.5

誘電正接 @1 GHz

0.015 0.004 0.017 0.008 0.003

備考 CTEが大きい

ためキャストで無孔PIの回路形成ができない

PIよりはCTEは大きいがtan δは低い

CTEは低いがtan δが高い

銅箔の密着性に難あり。多孔化困難

現行の高周波用FPC基材

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まずは伝送損失の理論計算 1div grad IA j A jw AdS

a a σ

− ωσ + = − µ ∫∫

S e SI I I J dS j AdS= + = − ωσ∫∫ ∫∫種々の線路デザインにおける伝送損失は、Konradの積分微分(Integrodifferential)方程式による計算方法が提案されている。[3] 本研究では、この方程式をGalarkin法とSilvestorの高次内挿多項式法を組み合

わせた有限要素法により磁気ポテンシャルベクトルを計算可能な商用ソフトGreenExpress Professional(ウィンドワード製)を使用した。

Konrad, A., IEEE Trans. Magnetics, MAG18(1), 284-292(1982).

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線路断面図

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特性インピーダンスと回路幅

010203040506070

0 100 200 300

特性

インピーダンス

[Ω]

線路幅 [μm]

多孔PI, ε 2.0, tan δ 0.015

回路幅を変えて特性インピーダンスが50 Ωになる回路幅を試行錯誤的に決定し、 その回路幅における伝送損失を計算

20 GHz

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-90-80-70-60-50-40-30-20-10

0

0 0.5 1

伝送

損失

[dB/

m]

空隙率 [-]

伝送損失 LCP

カプトンタイプ多孔PIとLCPの伝送損失

カプトンタイプPIでは LCPに勝てない

特性インピーダンス 50Ω

20 GHz

@1 GHz ε’ tan δ

LCP 3.5 0.003

PI 3.6 0.015

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多孔PIBの伝送特性

-90

-80

-70

-60

-50

-40

-30

-20

-10

0

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

伝送

損失

[dB/

m]

空隙率 [-]

伝送損失 LCPPIB-15D

20 GHz @1 GHz ε’ tan δ

LCP 3.5 0.003

PI 3.6 0.015

PIB 3.5 0.004

空隙率20%程度で、LCPより 低い伝送損失を示す。

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LCPと空隙率20%のPIBとの比較

-45-40-35-30-25-20-15-10

-50

LCP PIB-15D

伝送

損失

[dB/

m]

抵抗損失 誘電損失

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周波数依存性(Rt 50Ω)

-45-40-35-30-25-20-15-10

-50

0 5 10 15 20 25

伝送

損失

[dB/

m]

周波数 [GHz]

PIB-15DLCP

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まとめ

• 高圧ガスUV露光装置(HiPGUVE)を開発し、大面積な多孔ポリイミド膜を作製した。

• 多孔ポリイミド膜上に電気回路を形成し伝送特性を測定し、多孔化により伝送特性が改善されることを示した。

• 理論計算により、カプトンタイプはLCPと比較して著しく伝送特性が劣ること、新開発のPIBは低い空隙率でLCPを量ができる可能性があることが示された。

• 今後、PIBについて回路形成と伝送特性測定をおこなう予定である。

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引張弾性率と引張強度

0 20 40 60 80 1000

500

1000

1500

2000

2500

3000

3500

4000

Tensi

le m

odu

lus

[MP

a]

Porosity [%]

(a)

0 20 40 60 80 1000

10

20

30

40

50

Tensi

tle s

trengt

h [

MP

a]Porosity [%]

(b)

多孔ポリイミドの引張弾性率 多孔ポリイミドの引張強度

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携帯端末の通信速度需要の増加

通信速度を増加させるためには信号の周波数を増加させる必要がある。⇒周波数の増加は信号の減衰をもたらす

ポリイミド (PI)

信号の減衰を抑えるためには、フィルムに孔を導入し、フィルムのみかけの比誘電率を低下させる

これまでフレキシブルプリントケーブルとして使われてきた。優れた

耐熱性や寸法安定性

Low-kフィルムの需要

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紫外線照射用の窓付きフランジ

φ165

250

W.P. 6.5 MPa Temp 100oC

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本技術に関する知的財産権

• 発明の名称 :多孔質ポリイミド膜の製造方 法,多孔質ポリスチレン膜の 製造方法,多孔質電極の製 造方法及び多孔質電極

• 出願番号 :特願2011-119058号 • 出願人 :金沢大学 • 発明者 :瀧 健太郎,細川 和則

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お問い合わせ先

有限会社金沢大学ティ・エル・オー 取締役副社長 木下 邦則 TEL:076-264-6115 FAX:076-234-4018 e-mail :info@kutlo.co.jp