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飛松省三
九州大学医学研究院
脳研臨床神経生理
脳波のピットフォール ②賦活法
1) 安静閉眼時に得られる情報のみでは、てんかん発作波
や局在性徐波などの異常を検出できないことがある。
2) 安静時脳波には異常がなくても、過呼吸、光刺激、睡眠
により潜在的な異常が誘発される。これを脳波の賦活
(activation)という。
3) 賦活法には入らないが、開閉眼や音・痛み刺激などで、
脳波の変化を観察することも大事である。
賦活法の意義
1) 1分間に20回程度の過呼吸を3分程度行う。過呼吸に
伴い動脈中の二酸化炭素分圧が低下し、呼吸性ア
ルカロシースが生じる。
2) 脳血管が収縮し可逆的な脳虚血が生じて、脳波変化
が起こるとされている。
3) 高振幅の徐波が前頭部優位に全般性に出現し、この
徐波化のことをビルドアップ(build-up)という。小児(8
〜12歳)で顕著に認められる。
4) 徐波化しても大体1分以内に元の背景活動に戻る。
それを超したら、何らかの機能的異常が疑われる。
5) 成人では小児ほどビルドアップは目立たない。
過呼吸 (hyperventilation)
過呼吸前 過呼吸30秒 過呼吸2分 過呼吸後50秒
C3-O1
Fp1-C3
Fp2-C4
C4-O2
C3-T3
C4-T4
T3-Fp1
T4-Fp2
O1-T3
O2-T4
C3-F7
C4-F8
1 sec
50 mV
Current practice of clinical electroencephalography. Klass DW,
Daly D (eds), Raven Press, New York, 1979.
Fp1-A1
Fp2-A2
F3-A1
F4-A2
C3-A1
C4-A2
P3-A1
P4-A2
O1-A1
O2-A2
F7-A1
F8-A2
T3-A1
T4-A2
T5-A1
T6-A2
1 秒
50 µV
ウトウト (過呼吸2分30秒後) 覚醒 (過呼吸2分30秒後)
覚醒度に注意
欠神発作
m
5歳6ヶ月、女児、過呼吸後1分半
モヤモヤ病のRe-build up 過呼吸中止後4分30秒
m
1) 閉眼した被験者の眼前20〜30cmの位置から1〜30 Hzの
ストロボスコープを10秒間点滅させる。
2) 通常は後頭部のα波抑制が起こる。
3) 点滅する周波数と一致あるいはそれと調和関係にある周
波数の脳波が賦活されることがある。これを光駆動反応
(photic driving response)という。
4) 光駆動反応は健常人にも観察される生理的反応(視覚誘
発反応)であり、明らかな左右差がなければ正常である。
5) 一側で光駆動が欠如する場合は、その半球の機能異常
が示唆される。
6) 光駆動反応が観察されなくても異常ではないが、その場
合、優位律動が抑制されなければならない。
光刺激(photic stimulation)
Fp1-A1
Fp2-A2
F3-A1
F4-A2
C3-A1
C4-A2
P3-A1
P4-A2
O1-A1
O2-A2
F7-A1
F8-A2
T3-A1
T4-A2
T5-A1
T6-A2
1 sec
50 μV 12 Hz
光駆動反応
光突発反応 40歳、女性
m
Fp1-A1
Fp2-A2
F3-A1
F4-A2
C3-A1
C4-A2
P3-A1
P4-A2
O1-A1
O2-A2
F7-A1
F8-A2
T3-A1
T4-A2
T5-A1
T6-A2
1 秒
50 µV
ウトウト (光刺激 12 Hz) 覚醒 (光刺激 12 Hz)
覚醒度に注意
AD, 74歳
光刺激 12Hz
Fp1-A1
Fp2-A2
F3-A1
F4-A2
C3-A1
C4-A2
P3-A1
P4-A2
O1-A1
O2-A2
F7-A1
F8-A2
T3-A1
T4-A2
T5-A1
Fz-A2
Pz-A2
Cz-A2
T6-A2
1 秒
50 μV
MCI, 84歳
光刺激 12Hz
Fp1-A1
Fp2-A2
F3-A1
F4-A2
C3-A1
C4-A2
P3-A1
P4-A2
O1-A1
O2-A2
F7-A1
F8-A2
T3-A1
T4-A2
T5-A1
Fz-A2
Pz-A2
Cz-A2
T6-A2
1 秒
50 μV
F3-A1
F4-A2
C3-A1
C4-A2
O1-A1
O2-A2
T3-A1
T4-A2
T5-A1
T6—A2
1 sec
50 µV
P3-A1
P4-A2 青/赤
白/黒
F3-A1
F4-A2
C3-A1
C4-A2
O1-A1
O2-A2
T3-A1
T4-A2
T5-A1
T6—A2
P3-A1
P4-A2
3 Hz 6 Hz 8.6 Hz 10 Hz 12 Hz
光感受性は時間周波数に依存する
Tobimatsu S et al. Chromatic sensitive epilepsy - A variant
of photosensitive epilepsy. Ann Neurol 45:790-793, 1999
1) 軽睡眠期には覚醒時にみられない突発波が賦
活されやすくなる。
2) 覚醒脳波で突発波が記録できない時は、睡眠脳
波を必ず取る。
3) 自然睡眠(断眠)と薬物による誘発睡眠とがある。
4) 自然睡眠が望ましいが、実際には薬物を使用す
ることが多く、トリクロリールやペントバルビター
ルが用いられる。
睡眠 (sleep deprivation)
軽睡眠中の突発波
m
1. 賦活法の原理とその臨床的意義を再確
認しよう
2. 認知症では脳の反応性に目を向けよう
3. 身近に潜む脳の危険に注意しよう
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