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【資源エネルギー庁長官賞】
タービン向け低漏洩リーフシール・耐高面圧樹脂軸受
低損失スラスト軸受
低損失ジャーナル軸受
低漏洩シール
三菱重工業株式会社
東京都港区
1. 機器の概要
エネルギー資源の節約とCO2排出抑制に代表される環境問題の高まりから、火力
発電設備の効率向上の弛まない努力が続けられている。この中でタービン内の軸
シール部の漏れ低減や軸受の損失低減はタービンの性能向上、省エネの有効な手
段である。本開発では、シールについてはミクロンオーダーで製造管理した精密
板(リーフ)を多数枚周方向に束ねて構成した世界初の低漏洩リーフシールを
発。また、軸受では、耐高面圧性を向上させた樹脂系材料を適用した低損失樹
脂軸受を開発した。これによりタービン効率は、約 0.6~2.4%(相対値)の改善
が実現し、消費する燃料も少なくなりCO2排出量低減に貢献している。
薄
開
写真1 低漏洩シール
写真2 耐高面圧樹脂軸受 図1 発電タービン概略図
耐高面圧樹脂ジャーナル軸受
耐高面圧樹脂スラスト軸受低漏洩シール
— 18 —
2. 機器の技術的特徴および効果
2.1 技術的特徴
— 19 —
(1) 低
薄板を周方向に傾斜させて多数配置した構造であり、ロータが回転すると薄
板先端とロータの間に作用する動圧効果により浮上力が発生し、ロータ回転中
は微小隙間の非接触状態となる。このため、従来 でか
つ、ブラシシール等の接触式シールと異なりタービン運転中 ータ
の摩耗を防ぎ、耐久性が向上するとともに、シール自身が板形状で差圧方向の
ブラシシールより高差圧域までシールできるという特徴を
面
従来、軸受表面には軟
ービンの起動や低い回転数においてロータと軸受が接触
耐えきれず回転方向に塑性流動が発生する。
強く、摺動性の良いポリエーテルエーテルケトン樹脂
開発した。
タルに比べて比摩耗量は、約 に減少
した耐高面圧軸受が実現した。
漏洩リーフシール
シールの約 1/3 の低漏洩
のシールやロ
剛性が大きいので、
持つ。
(2) 耐高 圧樹脂軸受
質金属が使用されてきたが、ロータ重量が大きい場合
は強度が低いため、タ
する時に、せん断力に
そこで、機械的強度が
を表面に用いた軸受を
その結果、従来のホワイトメ 1/2~1/10
サイドプレート
リーフ(薄板)
0
200
400
600
800
1000
1200
0.0 0.1 0.2 0.3
Differential pressure ⊿P [MPa]
Leak
age
G [
kg/h
]
Labyrinth seal (gap 0.5mm-4stage)Leaf seal (Measured)Leaf seal (Calculated)
ハウジング
微小隙間
μm オーダー
-70%
゙ミ漏 Le
図3 従来シールとの漏れ比較 図2 リーフシールの構成
) 省エネルギー性(効率性)
リーフシール(LEAF SEAL)のリーク量は従来ラビリンス
であり、従来エネルギー効率に寄与しなかったタービン内の の漏れ損
失を大きく低減する。個々のタービンの運転状況や補修状況によるが約 0.6~
の性能向上が見込まれ、使用燃料削減の省エネ技術として高い
効果が得られ
2.2 効果
(1
シール比で約 1/3
2次流れ
2.4%(相対値)
る。
図6 リーフシールと従来シールの性能比較
7.4E-13
2.4E-12
4.8E-12
0.0E+00
2.0E-12
4.0E-12
6.0E-12
EK複
合材
(2.9M
P
EK複
合材
(2.9M
Pa
メタル
(.95
MPa
メタル
(.95
MPa
比摩
耗量
[m
m
6 .3E-12
8.0E-12
1.0E-11
PE
a)
PE
)
ホワ
イト
1
)
ホワ
イト
1
)
2/N
]
図4 樹脂軸受の断面構造
図5 樹脂(PEEK)と従来ホワイト
メタルの比摩耗量比較
— 20 —
また、耐高面圧樹脂軸受においても、軸受サイズのコンパクト化が可能とな
り、摺動面積に比例する軸受損失は従来比で約 2/3 となり、タービン全体の効
率としては使用している軸受サイズ・台数にもよるが約 0.4%(相対値)の性
能向上が見込まれる。
3. 途
昨 の発電用大型タービンにおいて、環境問題及び市場競争力強化の観点から、
性能向上ひいては消費燃料の低減は至上命題である。燃費向上の一手段として、
ービン内 効であり、従来多くの回転機械で用いら
ているラビリンスシールは代表的な非接触
の偏心挙動での接触振動回避の観点からク
ジェットエンジン等で幅広く適用されつつあるブラシシールは、低
とで、タービン過渡運転時の偏心挙動に対して
も接
耗
シ
反
より、 ンの性能改善工事を中心に本格適用を開始し、現在は、新
設火力タービンにも効率向上を目的に実用化を展開中である。
一方、性能向上・消費燃料の低減の手段として、軸受損失の低減も有効である。
軸受損失は軸受サイズで決まるため軸受の小型化により大幅な軸受損失の低減が
期待できる。
軸受についても、これまでに軸受材料の開発、実機大軸受での検証を経て、社
内発電設備へ適用し、電力会社へ給電使用している。また次期タービンへの適用
(2機)も決まっている。
用
今
タ 部の漏れを低減することは有
れ シールであるが、タービン過渡運転
リアランスの設定に限界がある。 時
また、近年
剛性の金属性ワイヤを採用するこ
触を許容できる低漏洩シールであるが、接触シールであるため、ワイヤの摩
によってそのシール寿命が制限されるというデメリットがあった。これら従来
ールの特長を兼ね備え、低漏洩とシール寿命向上というシールの特性として相
する特性を 適化して開発された新構造のシールが LEAF SEAL である。2006 年
経年火力タービ
— 21 —