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都岳連講習会「岩場のセルフレスキュー」
日程 2019年 5月 25-26日
参加者 守谷
毎年都岳連が開催している「岩場のセルフレスキュー」に参加させていただいた。5/15 に代々木国立オリ
ンピック記念青少年総合センターで簡単なレクチャーが行われた後、5/25-26 に丹沢の山岳スポーツセンター
(山スポ)にて実技講習という内容。1 週間前につづら岩で初めてリードを体験したばかりという岩登り初心
者のため、講習内容について行くのが大変だったが、その分得るものも多く充実した 2日間となった。復習の
ために講師の模範演技の動画を取らせていただき、リンクを付けて鈴蘭 MLへ送信した。都岳連からは写真や動
画の共有は所属会や仲間に限定して欲しい旨、連絡があったので報告書へのリンク添付は控えることにする。
実際の動作についてはメールを参照されたい。
5月25日(土); 天候 快晴
(Day1 午前講習内容@人工壁)
ムンターヒッチ(半マスト)を用いた懸垂下降
ミュールノットによる仮固定
それらを使ったザイル連結部通過
懸垂からの登り返し(ガルダーヒッチ使用)
人工壁に3本のルート(固定ザイル取り付け)を設定し、3班に分かれて登攀技術チェック(手足フリーでと
にかく登って懸垂下降)。ルートによって難易度に差があった模様。次にムンターヒッチとミュールノットによ
る半固定の練習。片手でやることを求められるが、ムンターヒッチは普段は両手を使っているし、ミュールノッ
トは初めてやるので、ここで早くも苦労する。他の講習生も普段やっている方法と異なるため、戸惑っている方
も多く見られた。実際に壁に取付く前に他の講習生とロープワークを確認し合って、何とかクリア。
次の連結部通過では、①ムンターヒッチで懸垂下降しミュールノットで仮固定、②マッシャーのセット作成、
③下ザイルにムンター+ミュールノット作成、④上ザイルのミュールノット解除(マッシャーに荷重移動)、⑤マ
ッシャーを下げて下ザイルへ荷重移動、⑥下ザイルのミュールノット解除で懸垂下降開始、という動作になり、
この段階ですべて成功するのはかなり難しかった。特にマッシャーによる固定が効かず苦労する講習生が多かっ
た。鈴蘭では連結部通過を迅速にするために懸垂時にエイト環使用を推奨している理由がよくわかったが、一連
の技術は他のレスキュー技術でも頻繁に使用するので、この連結部通過を完璧にできことは良い訓練になるので
はないかと思った。
季節外れの猛暑のためバテ気味になってくるが、午前最後のメニューとして懸垂下降からの登り返しを行っ
た。ここでは懸垂から仮固定までの動作は省略して、壁の基部で仮固定と足場作成を行って登って行く動作を練
習した。カラビナ2枚を使ったガルダーヒッチでハーネスにストッパーを作成し、足場にはマッシャーを用いて
ずらしながら登って行くもの。模範演技では難しそうに見え、最初は自分でやって登れる自信が無かったが、慣
れるにつれてコツが掴めてくる。2箇所にフリクションノットを作るやり方よりもスムーズに登れる印象を持っ
た講習生が多かったのではないだろうか。
報告:守谷 岳郎
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(Day1 午後講習内容@裏山)
介助懸垂
ディスタンスブレーキ
ディスタンスブレーキ時のザイル連結部通過
背負い搬送(ストック&雨具を使うもの、ヌンチャク&カラビナのみのもの)
ヒューマンチェーン
午後は裏山での講習ということで日陰になり幾分暑さもましになる。最初に行った介助懸垂は一人の懸垂よ
りも荷重がかかるために、ムンターヒッチ懸垂のカラビナからスリング等で少し距離をとってハーネスに連結、
メインのザイルを折り返して持つ。この時にマッシャーで自動ブレーキがかかるシステムを作成して、手を放し
ても止まる形を作った。振り分けシステムはPASまたはディジーチェーンを使い、救助者と事故者との距離は5:2
の比率にすると救助者がコントロールし易い(後日、鈴蘭の沢救助訓練で実施した時にもこの比で良いが、操作
性を考慮すると、それぞれの距離はあまり長くならないようにした方が良かった)。
ディスタンスブレーキはでムンターヒッチで救助者+事故者を降ろす練習を行い、カラビナで折り返して握る
ことでより確実に止めることを確認した。今回は斜度が緩かったが、垂壁での作業では荷重がより大きくなるた
め、必要に応じて1/3や1/5などのシステムを用いる。ザイル連結部通過は一人で行う時は懸垂下降時の連結部通
過と同様に上ザイルと下ザイルに仮固定を含めたシステムを作ってその間をマッシャーで固定し、受け渡すもの。
一人で行うにはこの一連の動作が必要なため講師の方からは実演して頂いた。講習生一人一人がこなすのは時間
的に難しく、チームで実施するパターンとして上ザイルと下ザイルでシステムを作って上ザイルの仮固定を外し
て徐々にしたザイルに荷重を移すものを練習した。
登り返しの練習風景
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夕方になって、背負い搬送に移る。良く知られたストックと雨具を用いた方法をまず実施し、その後ヌンチ
ャクとカラビナでハーネスに固定する方法を行った。前者はストックと雨でシステムを作るだけでなく、スリン
グでなどで固定する必要があり煩雑なのに対して、後者は背負う側のザックショルダー部分と背負われる側のハ
ーネスレッグループをヌンチャクで交差させて固定し、真ん中をカラビナで連結するもの。簡潔なだけでなく安
定感があり、講習生の間でも有用との声が高かった(鈴蘭の沢救助訓練でも実施)。最後にヒューマンチェーン
を使ってチームで搬送練習して1日目のメニューを終了した。
夕食からその後の懇親会にかけて講習生同志で救助訓練のこと、山行のことなど歓談した。多くは都岳連の
会に所属する方々だったが、中には無所属だがこうした技術を学びたいと考えて参加した方もおられた。会では
リーダーを務めている方がほとんどで自分のような初心者は少なかったが、みなさん気軽に色々と話していただ
いた。
5月26日 (日); 天候 快晴
(Day2 午前講習内容@裏山)
ライジング
セカンドレスキュー
立木にロープを張りこむ技術として、ボウライン、クローブヒッチ等の説明があった後、実際のライジング
システムの模範演技(1/3から1/5まで)。滑車部にプーリーを、フリクションノット部にタイブロックを使って
教えて頂いた。講習生全体の持ち物を見ても一人一つずつぐらいプーリーを所有されており、搬送技術だけでな
くザックの引き上げにも使えることから有用性が高いとの声をよく耳にした。次に実際の場面を想定して、①オ
ートブロック付きATCでメインロープを仮固定、②メインロープにマッシャーを作成して別支点に荷重を移して
からATCをプーリーに付け替え、③プーリーを2つ繋げて引くことで抵抗を減弱、④1/3システムを作成してさら
に軽減、とう模範演技があり実際にこのステップで練習した。引く際にもアッセンダーを使う、それがなくても
マッシャーにカラビナを掛けて引くとラクなことなど色々と実用性ある手法を紹介していただいた。さらに、引
っ張る人数が多く、ある程度の自由が利く場所におけるライジングシステムとしてプーリーを掛けて横方向に人
数をかけて引っ張るやり方を試した。前提条件はあるがシンプルでしかも意外と引き易く、覚えておきたい技術
と思われた。
セカンドレスキューはリードがビレイ中にフォロワーにトラブルが発生した時のレスキュー技術であり、ダ
ブルロープに取り付けたATCで確保状態(ライジングの①の状態)⇒テンションが掛かっている側のロープにマ
ッシャーを掛けてバックアップを取った後に荷重を移行⇒ATCの仮固定を解除⇒テンションが掛かっていない側
のロープに振り分けシステムをセットしてバックアップを支点にして懸垂下降⇒事故者まで降りて介助懸垂と
いう流れ。実際の救助ではテンションがかかっている側のロープをカットする必要がある場面もあり得るが、講
習ではロープを外すだけで実施した。
(Day2 午後講習内容@裏山)
リーダーレスキュー
チームレスキュー
リーダーレスキューは滑落して動けなくなったリードをビレイしていたセカンドが救助する技術で次のステ
ップで実施した。ATCによるビレイ状態から仮固定(鈴蘭でいつも実施しているもの)⇒テンションが掛かった
側のロープにマッシャーを作成し、支点に繋いでバックアップを取る⇒ATCの仮固定を解除してマッシャー側に
荷重移動⇒二つのロープにマッシャーを作成して事故者まで登攀(テンションが張った方をメインに使う)⇒事
故者に付いたテンションがかかっていないロープを回収して最上部の支点まで登攀⇒セルフビレイを取った後、
回収したロープで新たに懸垂用の支点構築⇒振り分けシステムをセットしてバックアップを支点にして懸垂下
降⇒事故者まで降りて介助懸垂⇒ロープカットして介助懸垂継続
多くのステップがあり複雑で、実際に自分が救助者となってやってみると非常に難しかったが、ここまで教
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わった内容のほとんどが含まれており、すべてを正確に行えるようになれば、セルフレスキューに必要な技術が
かなり身に付くと思われた。なお、ロープカットで使用するナイフは挟み込むタイプのものがより安全でお薦め
という事だった。また、実際に講習生がロープカットした際に振り分け用のマッシャーが効かずに下方に落ちて
しまい(怪我は無し)、フリクションノットの効きを事前に確認することの重要性を再認識した。
チームレスキューでは、8名で登山中に1名が動けなくなり約20m上部まで20~30度の斜面を運ぶことを想定し
て実施。傾斜の無い部分はヒューマンチェーンで搬送し、傾斜のある場所では前日習得した事故者のハーネスに
ヌンチャクを掛ける手法で救助者が背負い、救助者にザイルを付けて上部でプーリーにかけて数人が引っ張る方
法で行った。斜度がそれほど無かったから取れた手法ではあるが、迅速に搬送するにはとても有効と思われた。
これまでロープワークの経験が無い中、2日間でかなり詰め込んで教わったが、大変貴重な経験となった。講
習会だけでは覚えきれないので模範演技はできるだけ多く動画を撮り時間を見つけて自宅でも復習しているが、
それによって学習効果も上がっているのではないだろうか。今後も会から継続的に参加者を出して情報を共有す
ることが重要と感じた。