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2012年4月 木材産業課・木材利用課 京都議定書第二約束期間に導入された 木材製品(HWP)に蓄積されている炭素 の変化量を評価するルールについて -ダーバン会合の結果から-

京都議定書第約束期間に導入された 木材製品(HWP)に蓄積 ...CMP8(2012年末)で終了予定 京都議定書の下での先進国の 義務について、2013年以降のあ

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2012年4月

木材産業課・木材利用課

京都議定書第二約束期間に導入された

木材製品(HWP)に蓄積されている炭素の変化量を評価するルールについて

-ダーバン会合の結果から-

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ダーバン会合の概要 (気候変動枠組条約/COP17, 京都議定書/CMP7)

• 2011年11月28日(月)~12月11日(日(朝まで))

• 締約国政府、関係国際機関、NGO等の約1万2千人が参加。

• 我が国政府から、細野環境大臣、仲野農林水産大臣政務官、中野外務大臣政務官、北神経済産業大臣政務官をはじめ、関係各省、政府機関が出席。林野庁からは、沼田林野庁次長以下6名が出席。

• COP13(2007年12月)で合意したバリ行動計画、COP16(2010年12月)で合意したカンクン合意等に基づき、2013年以降の枠組についての合意に向け交渉。

• 12月11日(日)朝に、ダーバン合意に採択。

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次期枠組み交渉の枠組み(ダーバン会合後)

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気候変動枠組条約

京都議定書

条約・議定書の実施(SBI) 科学的・技術的助言(SBSTA)

締約国会議(COP) 京都議定書

締約国会合(CMP)

CMP8(2012年末)で終了予定

京都議定書の下での先進国の義務について、2013年以降のあり方を検討。

AWG-KP 京都議定書の下での特別作業部会

補助機関(SB)

COP18(2012年末で終了予定)

COP13で立ち上げ。2013年以降も含めた取組みに関し、共有のビジョン、緩和、技術、適応、資金の観点から議論

AWG-LCA 気候変動枠組条約の下での特別作業部会

COP17で立ち上げ決定。

全ての国が参加する将来の枠組みについて、議定書等の法的文書を作成するためのプロセス。2020年の発効・実施を目指し、遅くとも2015年までに作業を終了。

AWG-Durban Platform

for Enhanced Action 強化された行動のためのダーバン・プラットフォーム特別作業部会

LULUCFの検討 (CMP7で合意)

REDD+、農業分野の検討

技術的な課題の検討

(CMP及びCOP決定に基づく)

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ダーバン合意の概要

• 将来の枠組みに関し、法的文書を作成する新しいプロセスである「ダーバン・プラットフォーム作業部会」を立ち上げ、可能な限り早く、遅くとも2015年中に作業を終えて2020年から発効させ実施に移すことに合意

• COP16での合意(カンクン合意)の実施について、途上国支援のための資金を取り扱う緑の気候基金(GCF)の基本設計や各国の排出削減対策の測定・報告・検証(MRV)に関するガイドラインの策定などに合意(REDD+関連)

• 京都議定書の第二約束期間の設定に向けた合意が採択され、第二約束期間に参加しないとの我が国の立場が合意文書に反映

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CMP7決定の概要 (LULUCF部分)

• 森林経営の算定ルール

– 参照レベル方式を採用

– 参照レベルは、各国サブミッションに基づき、付表に国別に表示(我が国は0)

– 算入上限値(キャップ)については、基準年排出量の3.5%

• 伐採木材製品(HWP)

– 輸出されたものも含めて国内の森林から生産された伐採木材製品の炭素について、廃棄された時点で排出量を計上できる

• 自然攪乱による排出の取扱い

– 一定の要件を満たした場合、大規模な火災・台風・病虫害等の自然攪乱による排出量は計上から除外できる

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・条約に基づく報告、

・我が国の自主的な排出削減目標達成のための算定、

・2020年以降の新たな国際枠組のルール に影響

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国内の森林 木材製品(HWP)

焼却埋立_処分

木材を搬出

排出

樹木の成長

吸収 分解等

排出

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京都議定書 第1約束期間(2008年~2012年) ○ 我が国は1990年と比較して、温室効果ガスの排出量を6%削減することを約束 ○ 我が国は、森林による吸収量を1300万炭素トン(3.8%相当)まで排出削減目標の達成に使用可能。

※ 国により森林吸収量として算入できる上限値は異なります。ドイツ124万炭素トン/年、イギリス37万炭素トン/年

森林と伐採木材製品※の算定ルール

1990年(基準年)

1,300

1,200

0

(百万㌧CO2)

12億6100万t-CO2

2008~2012年の平均(第1約束期間)

京都メカニズム

△1.6%

削減約束1990年比△6.0%

森林吸収源△3.8%(注)(4767万t-CO2

=1300万t-C)

国内実排出量の削減(真水)0.6%

温室効果ガス排出量

※伐採木材製品:気候変動枠組条約では、森林から搬出された木材等の全ての木質資源を伐採木材製品(Harvested Wood Products(HWP))と定義

京都議定書の算入対象となる森林

1990年時点で森林でなかった土地に植林(3条3項)

持続可能な方法で森林の多様な機能を十分発揮するための一連の作業(3条4項)

既にある森林のうち、間伐等が行われた森林が対象

対象地域はごくわずか

1990年 2012年

2012年1990年

新規植林・再植林

森林経営

3.8%に相当する1,300万炭素トン程度を

森林吸収量により確保するため、間伐等の森林吸収源対策を推進

伐採木材製品(HWP)の取扱い(経緯)①

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伐採木材製品(HWP)の取扱い(経緯)②

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京都議定書 第1約束期間では、

森林から搬出した時点で木材中の炭素は大気中に排出されたと見なすルール

京都議定書の第1約束期間のルールを検討する際(2001年頃まで)の議論・・・

HWPの利用状況は製品の種類や国毎に異なり複雑であることから、算定方法についての議論が不十分であるので、次期枠組について議論する際の宿題に。

第1約束期間で採用した考え方:

一般に新たなHWPの利用は古いものの廃棄と同時に行われると仮定し、

国単位ではHWP及びそれに含まれる炭素の総量は変化しないと見なす

「森林から搬出された木材中の炭素はその年に伐採された国において排出された」

(影響は‘ゼロ’/即時排出された)ものとして計上に含まない。 国内の森林

森林から搬出

HWP

第一約束期間のルール

この時点で排出を計上

実際の炭素の動態とは異なる

焼却

埋立 処分

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伐採木材製品(HWP)の取扱い(経緯) ③

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第2約束期間での新たなルールの導入に向けて、IPCC、SABSTA、AWG-KPにおいて検討が行われ、昨年12月までに20回以上の会合を重ねて議論 2003年IPCC-GPG、2006年IPCCガイドラインの策定(蓄積変化法、生産法、大気フロー法などの算定方法を掲載)

先進国間では、HWPを森林の炭素プールのひとつとして、木材生産国に計上する方法を中心に議論を進めてきたが、新ルールの導入や算定方法に懐疑的な途上国もあった。

ダーバン会合までに概ね議論は収斂し、一部の途上国の意見を採り入れる形で最終的に、国内の森林から生産された伐採木材製品の炭素について、廃棄された時点で、排出量を計上できるルールに合意

焼却

埋立 処分

国内の森林

森林から搬出

HWP

第二約束期間のルール

この時点で排出を計上

第一約束期間のルール

この時点で排出を計上

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HWPルールの決定事項(CMP7/LULUCF)①

(解説) 森林吸収源の5つの炭素プールに加え、HWPが6つめの炭素プールとして追加

締約国が行う議定書への報告は、それぞれの炭素プールの変化量を報告 伐採、搬出された木材中の炭素は、地上部バイオマス等の炭素プールから出て、 このうち、利用 さ れ るHWPはHWPの炭素プールに移動 こ のうち、利用されないHWPは排出

即時排出:HWPプールに滞留しない(第一約束期間と同じ結果) 第28段落「計上は即時排出に基づかなければならない。

(第26段落)

附属書Ⅰに含まれる締約国は次の炭素プールの変化量を計上しなければならない。 地上部バイオマス、地下部バイオマス、リター(落ち葉など)、枯死木、土壌、HWP※

※HWPの計上方法には「即時排出」も含まれる(第28段落)

HWP炭素プール ・紙 ・木質パネル ・製材など

林内の炭素プール(プール間を移動)

利用するもの

移 動

廃棄等 排出

地上部 バイオマス

地下部 バイオマス

リター 枯死木 土壌

樹木の 成長

吸収 ※この他に有機物の分解などによる排出もある

伐採搬出

排出

利用しな

いもの

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HWPルールの決定事項(CMP7/LULUCF)②

(解説)

HWP計上対象となる木材製品は、締約国が吸収・排出量を議定書に基づき計上、

報告している自国内の森林で伐採、搬出された木材から生産されたHWPのみとする

こと

HWPが貿易された時は、輸入国が計上することはできず、輸出国が計上すること

→輸出されるものも含め、国産材のみが計上の対象

☆ 途上国の森林劣化、減少に由来して生産されるHWPの利用が促進されるべきではないとの意

見にも配慮

(第27段落)

締約国が第三条3項及び4項に基づき計上している森林から搬出されたHWPからの排

出はその締約国のみにより計上されなければならない。輸入されたHWPはその由来

に関係なく輸入した締約国は計上してはいけない。

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HWPルールの決定事項(CMP7/LULUCF)③

(解説)

HWP炭素プールの変化量の基本となる推計方法を規定

実際問題として、 • 各締約国が、個々のHWPについて廃棄された時点を追跡、確認すること • 毎年廃棄される木質廃棄物のうちHWPの量を特定し排出を計上すること

は共に困難

→現実的で透明性が高い計上方法(注)として、 (注)FAOに各国が提出している公表データとの整合性など

HWPが利用された時点から、一定の半減期を設定した一次減衰関数に基づいて廃棄・排出されていくと仮定し、排出量を推計

※一次減衰関数の計算式は後述

(第29段落)

第28段落にかかわらず、以下の製品に分類されるHWPについての透明で検証可能な活動量データがある場合それぞれ次の半減期をデフォルトとして用いた一次減衰関数により推計し、第二約束期間以降のHWP炭素プールの変化量を計上しなければならない。【 デフォルト半減期: 紙 2年、木質パネル 25年、製材 35年 】

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HWPルールの決定事項(CMP7/LULUCF)④

(解説)

HWPの種類毎に、第29段落のデフォルト値とは異なる国独自の半減期※を採用す

ることが可能

※輸出したものについては、輸出先国のデータに基づく半減期

独自の推計方法を採用することも可能

ただし、検証可能で透明なデータに基づき、2006年IPCCガイドラインに規定された計算式と同等の正確性が必要

→住宅資材、家具などの用途毎に半減期を設定したり、異なる減衰関数を採用す

ることが可能に

(第30段落)

締約国は、第29段落のデフォルトとなる半減期を国固有のデータに置き換えること

ができる。また、検証可能で透明な活動量データがあり、推計方法が少なくとも上述

のものに劣らず詳細で正確な場合には、最新のIPCCガイドラインやその後のCOP

合意における定義及び推計方法に従い(HWP)製品を計上してもよい。

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HWPルールの決定事項(CMP7/LULUCF)⑤

(解説)

森林減少を伴う(議定書第3条3項の森林減少活動※に該当する森林から生産された)

HWPは即時排出とする。

「HWPルールが森林減少を助長するものであってはいけない」との主張があった

実際の計上(除外の計算方法)は技術的に複雑なものとなった。

我が国においてはあまり多くの事例は想定されていない

※森林減少:森林地から非森林地への直接的人為的な転換

(第31段落)

森林減少を伴い生産されたHWPは即時排出として計上しなければならない。

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HWPルールの決定事項(CMP7/LULUCF)⑥

(解説)

廃棄物埋立処分場へ廃棄されたものは即時排出。

処分場の気候条件により、腐朽速度に大きな違い

国によってはかなり大きな吸収量を計上できることが想定される

我が国の「HWPの廃棄を促進するルールとしてはいけない」との主張が反映

木質バイオマスによる発熱・発電などのエネルギー利用は即時排出

基本的に燃焼(排出)することが目的

(第32段落)

廃棄物埋立処分場のHWPからの二酸化炭素の排出は分けて計上する場合、即時排出に基づくこととする。エネルギー利用のため伐採された木材からの二酸化炭素の排出は、即時排出に基づき計上しなければならない。

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HWPルールの決定事項(CMP7/LULUCF)⑦

(解説)

新たに計上することとなったHWP炭素プールは空の状態ではない

現在利用されているすべてのHWP(既存HWP)が既に含まれており、ここから第二約束期間中に生じる排出を計上しなければならない

既存HWPのうち、第一約束期間に森林から搬出されたHWPについては、既に排出を計上しているため、第二約束期間に起こる排出から除外する

HWPの計上はより複雑になる

HWP炭素プールを計上する際の前提として大変重要

(第16段落)

第二約束期間の開始より前(2012年以前)に搬出されたHWPから第二約束期間中

に起こる排出についても計上しなければならない。ただし、第一約束期間中に即時

排出に基づき既に計上しているHWPからの排出については、除外しなければならな

い。

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HWP炭素プール

廃棄等

排出

・紙

・木質パネル

・製材など

吸収

(既存HWPを含む)

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第二約束期間のルール

森林で吸収した炭素は、森林が伐採された後も木材製品(HWP)として利用されている

間は炭素を固定しているため、 HWP 中の炭素については廃棄されるまでは排出を計上しなくてよい(=廃棄する時点で排出を計上する)こととし、HWP中の炭素蓄積量の増減を評価。

※ 「廃棄された時点」は、木材製品毎に半減期を設定し、利用された時点から機械的に排出されるものと想定して計算

(詳細)

輸出したものを含む国内の森林から生産された伐採木材製品が計上対象となる

(輸入材は計上対象とならない)

伐採時に森林減少を引き起こしたものは即時排出として計上する

エネルギー用途のものは即時排出として計上する

第二約束期間開始より前に伐採されたもの(既存HWP)も計上する

(第一約束期間に計上しているもの等は除く)

HWPルールの決定事項(CMP7/LULUCF)まとめ

「木材利用の気候変動を緩和する役割」が認められた

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HWPルールの計上方法とその影響① (2006年IPCCガイドライン)

2006年IPCCガイドラインの式12.1 (一次減衰関数:FOD、仮定条件を含む)は以下の指数関数

(A)C(i+1)=e-k・C(i)+K・I(i) C(1900)=0.0

(B)△C(i)=C(i+1)-C(i)

I : 年 C(i) : I 年初めにHWPプールにストックされた量 Inflow(i) : I 年の間にHWPプールに投入された量 C(1900) : 1900年のストック0とみなす △C(i) : I 年の間のHWPストックの変化量

k=ln(2)/半減期(年) K={(1- e-k )/k } I(i)=Inflow(i)

kに一定の半減期(2, 25, 35年)を入力した一次減衰関数の描く曲線は上の図のものとなる

HWP利用直後から急激にその減衰(廃棄・排出)が進む、下に凸の曲線、ただし、

半減期が長い場合には直線(毎年の廃棄量は一定)に近づいていく) 17

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 120 130 140 150

残存率

(%)

生産されてからの経過年数(年)

35年

25年

2年

半減期

図 半減期(2、25、35年)の違いによる一次減衰関数の曲線

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(一次減衰関数の特徴)

ある年のHWP利用量(入力)は、数年後、半減期を中心に複数年にわたり排出として計上されるという緩やかな反応(応答)として現れる。

利用(入力)と廃棄(応答)の関係を単純化して考えると、 過年度に利用したHWPはその平均寿命 の前後にほぼ全量が排出として現れてく ることになる。

→利用量が一定であれば、

吸収量は排出量と相殺される

☆ 第一約束期間の仮定と同じ

HWPルールの計上方法とその影響② (2006年IPCCガイドライン)

図 利用されたHWPの排出のタイミングのずれの概念図

(半減期35年の場合) 18

利用量

廃棄量

(半減期後)

n+35

n 年数

振幅

応答 ※総量は同じとなります

入力

利用量 (入力)

廃棄量 (応答)

HWP 炭素プール

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HWPルールの計上方法とその影響③ (2006年IPCCガイドライン)

我が国のHWP炭素プールの変化は現在試算方法を検討中

木材の主な需要先である住宅建設の状況からHWP炭素プールへの影響を紹介すると、

① 一世代前(約40年以前)の住宅の国産材の使用 割合は、現在と比較して高い

→単純な住宅の建て替えは、吸収(利用) よりも排出(廃棄)の方が大きい

② 1987年から1996年までは140~160万戸 を超える水準で新設住宅が着工。近年は

80万戸を下回る →今後の住宅着工が近年同様の低水準

の場合、排出が吸収(利用量)を大きく 上回る

いずれにしても、成長量に比べ伐採、搬出量が小さい我が国の森林吸収量と比較す

れば、HWPプールの炭素変化量は決して大きな値にはならない。

図 我が国の新設住宅着工戸数と木造率の推移

19

S30 S40 S50 S60 H7 H17 (年)

200

100112万戸

昭和48年191万戸 昭和63年

41.4%

平成21年54.5%

木造率

木造

総数

79万戸

43万戸

100

50

00

後の排出へ

住宅着工戸数

(万戸)

木造率

(%)

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HWPルールの計上方法とその影響④ (2006年IPCCガイドライン)

推計方法 ① 既定のHWPの種類(紙、木質パネル、製材)毎に国毎の固有の半減期を採用

我が国の住宅の平均寿命が欧米諸国に比べ短い(右図) ことから、木質パネル、製材のデフォルトの半減期(それぞれ 25年、35年)は我が国の実際の寿命よりも長い可能性。

→半減期が短いということは、ある年に利用されたHWPの炭素量が 排出として計上されるまでの応答がより鋭くなる、一方、HWP炭素 プールの変化量の振幅には変化はない。

推計方法 ② 住宅資材、家具など木材の用途毎に半減期を設定

これまでの検討では、用途毎に木材使用量を計算しHWPとして利用された量を合計してみると、基本となる統計データの欠落、精度の低さからすべてを拾い上げていくことはおよそが不可能。 木質パネル、製材などの生産量と比較するとかなり少なくなる。

→計上できる量が少なくなるということは、新規の利用量と後年度に訪れる廃棄量の両者に影響 し、HWP炭素プールの変化量の振幅が小さくなる。

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HWPルールの計上方法とその影響⑤ (2006年IPCCガイドライン)

気候変動枠組条約に基づき、HWP炭素プールの変化量を報告する義務

一方、京都議定書については、我が国は第二約束期間に参加しないため、今後は自

主的な排出量削減目標を設定し国内外に公表しつつ、その達成に向けて取り組んで

いくことになると想定

→具体的な推計方法については、我が国の目標達成に向けた取り組みの透

明性をいかに確保するかという観点から基本的な推計方法も含めて、今

後政府内部で検討していくことになる。

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まとめ ① 木造住宅:「都市の中の森林」と呼ばれることも=木材が炭素を蓄積・固定していることのみを評価

京都議定書のHWPルールにおいて評価されるのは、HWPの炭素プールに蓄積される炭素の量では

なく、その変化量。(増加→吸収、減少→排出)

「森林は炭素を吸収」=我が国の森林の成長量は伐採、搬出される利用量よりも大きいため

「HWPが炭素を吸収」するためには・・・

国全体で新規に利用するHWPが廃棄される量よりも大きな量でなければならない

HWPを炭素の吸収源としていくためには、以下の2点が重要

(1)現在の国産材の使用量を、増加させ続けること

→HWPプールへの算入量が増加する(短期的に効果が現れる)

増加量が止まり一定になると、やがて廃棄量が利用量に追いつき、吸収と排出が同じ平衡状態に至る

(2)新たに利用するHWPは、廃棄するHWPよりも長期間利用していくこと

→ HWPプールに新たに算入した木材からの排出を遅らせる(中長期的に効果が現れる)

例えば、

長期優良住宅など木造住宅の長寿命化の対策の一つにある木材寸法の高規格化

(三寸五分角より四寸、四寸五分角の柱を使用すると耐久性が増すとの考え方)といった

(1)木材の利用量の増加 と(2)長期利用を同時に進めていく方策は最も効果的。

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まとめ ②

ダーバン会合で合意されたHWPルールの活用を含め、

木材利用を通じた気候変動を緩和する効果を最大化させるために

関係の皆様の今後一層の取り組み、御協力をお願い致します

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木質バイオマスのエネルギー利用の促進

・化石燃料の消費を抑制 ・再生可能エネルギーの 利用促進 ・固定価格買取制度 (2012年7月~)

木材の環境貢献度の見える化

木材は鉄鋼、コンクリートなど代替材料よりも製造時の炭素排出量が少ない

・カーボンフットプリントへの取組促進

・持続可能な建築物評価(CASBEE)

などへの採用

長寿命な木造住宅の支援

・長期優良住宅への税

制優遇、補助

・地域材住宅への地公

体の支援

などの促進

木材利用の持つ気候変動を緩和する役割は、HWP炭素プールの増加を図ることだけではありません。

総合的な木材利用の推進により、地球温暖化防止への貢献を図ります。

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ご静聴ありがとうございました

【参考】 カーボンフットプリント(CFP)制度での取扱い

木材製品の商品種別算定基準(PCR)の中で、木材の特長を活かして

①燃焼時に木材から排出される二酸化炭素はCFPに含めない

②木材中に固定されている炭素量をCFPとは別に表記する

こととされています。