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DEIM Forum 2015 D7-1 による学 †† 大学 305-8550 つく 1-2 †† 大学 メディア 305-8550 つく 1-2 E-mail: †{seino,satoh}@ce.slis.tsukuba.ac.jp あらまし e-learning がりによって,コンピュータを った 隔学 が一 り,そ インタラク ティブ われている.そこ 態を するこ っている. した 態を するこ に,学 態を センサ センサ, センサを いて した. に対して スペクトル について した する. キーワード , センサ,STFT,e-learning, , 1. はじめに ,そ させるこ して, みが されている.2008 に大学 れ,「大学 該大学 るため けれ い」 25 まれた [1].これによりファカル ティ・ディベロップメント(以 FD,それま 「大学 み」 いう扱いから「 」に変わり, 育に FD った.そ ため,多く 大学に FD 括する委員 され, に対して アンケートを し,そ にフィードバック する するこ みが 為されている. 大学において われている して っている アンケート ある [2] [3] [4]して 1 いし 2 いう が多く, されて にフィードバックされるが、 する ガイドライン い。こ ため、 多く 大学 データ マイニング について、 みを している ある。 態をリアルタイムに にフィー ドバックし、 々変 する 態を 握する 案する。 って いセンサーを して、 している 」、あるい 、演 題に いる「 態を 握する。これによって、一 態を かつ 握し、 フィードバックを する。 2 センサを いて った げ,それら について 3 について するセンサ う.4 ,それらに する 5 ある. 2. 関連研究 態を から するため これま 多く われており, いを して がある. かせ を対 に,ステレオカメラ センサを いて っている [5].これ 1 つ, 2 カメラを し,また りに センサを しそれぞれ センサデータから みた ある. カメラから各 カメラから して するこ き, による みた ある. ドライバ して, モーションキャプチャによる 案してい [6].こ ドライバにマーカーをつけ,それを 11 カメラ 影するこ によりマーカー アイマークレコーダ( ) データ に,ドライ ングシュミレータ するイベント してい る. して センサに じタイミング れる らかにしたが,運 いう を対 した あるため, を学 して ずし られ えられる. e-learning ため, 9 にマーカーをつけ,ステレオカ メラを いて った. 態・ あった り, けぞった いった めて大まか あった. リアルタイム において いこ による した, 態フィードバックを みている [7].こ いる にカメラを し, いて 態を する ある. を対 し, した あるが, フィードバックが ある している.

重心動揺と姿勢計測による学習状態の推定 - IPSJ DBSDEIM Forum 2015 D7-1 重心動揺と姿勢計測による学習状態の推定 清野 悠希y 佐藤 哲司yy y

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Page 1: 重心動揺と姿勢計測による学習状態の推定 - IPSJ DBSDEIM Forum 2015 D7-1 重心動揺と姿勢計測による学習状態の推定 清野 悠希y 佐藤 哲司yy y

DEIM Forum 2015 D7-1

重心動揺と姿勢計測による学習状態の推定

清野 悠希† 佐藤 哲司††

† 筑波大学情報学群知識情報・図書館学類 〒 305-8550 つくば市春日 1-2

†† 筑波大学 図書館情報メディア系 〒 305-8550 つくば市春日 1-2

E-mail: †{seino,satoh}@ce.slis.tsukuba.ac.jp

あらまし e-learningの広がりによって,コンピュータを使った非同期の遠隔学習が一般的になり,そのインタラク

ティブ化の研究も行われている.そこでは学習者の状態を客観的に測定することが重要になっている.本研究では,

設定した複数の学習状態を推定することを目的に,学習者の状態を重心センサと距離センサ,荷重センサを用いて計

測した.複数名の学習者に対して周波数スペクトルの時間変化について分析したので,結果を報告する.

キーワード 教育,センサ,STFT,e-learning,姿勢計測,重心測定

1. は じ め に

教育の現場では,その質を向上させることを目的として,様々

な取り組みがなされている.2008 年に大学設置基準が改定さ

れ,「大学は,当該大学の授業の内容及び方法の改善を図るため

の組織的な研修及び研究の実施に努めなければならない」とい

う文言が 25条第二項に盛り込まれた [1].これによりファカル

ティ・ディベロップメント(以下 FD)は,それまでの「大学

の自発的な取り組み」という扱いから「義務」に変わり,高等

教育に FDは必須のものとなった.そのため,多くの大学には

FDを統括する委員会が設置され,受講者に対して定期的に授

業評価アンケートを実施し,その結果を授業にフィードバック

するなど、授業の質を向上することを目的に様々な取り組みが

為されている.

大学において行われている授業改善の取り組みとして主流と

なっているのはアンケート調査である [2] [3] [4].頻度としては

授業の実施期間内に 1回ないしは 2回というものが多く,結果

は集計されて講師や学生にフィードバックされるが、調査結果

の利用に関する明確なガイドラインは存在しない。このため、

多くの大学では、調査結果の利用方法やデータのマイニング方

法について、様々な取り組みを模索しているのが現状である。

本研究では、受講者の学習状態をリアルタイムに講師にフィー

ドバックし、時々刻々変化する受講者個人個人の状態を講師が

把握する方法を提案する。提案法では、受講者にとって負担の

少ないセンサーを複数使用して、受講者が講義に集中している

「傾聴」、あるいは、演習問題などの課題に取り組んでいる「作

業」などの学習状態を把握する。これによって、一人一人異な

る受講者の学習状態を客観的かつ即時的に把握し、講師への

フィードバックを実現する。

本論文では,2章でセンサを用いて集中度の測定を行った先

行研究を挙げ,それらの手法や目的について述べた後,3章で

本研究の提案手法について集中状態の定義と使用するセンサ類

の説明を行う.4章では提案手法の評価実験の方法とその結果

の分析,それらに関する考察を行う 5章は全体のまとめである.

2. 関 連 研 究

受講者の集中状態を外部から観測するための研究はこれまで

にも多く行われており,本研究と同様の狙いをもつ事例として

以下がある.

金田らは読み聞かせ中の児童を対象に,ステレオカメラと加

速度センサを用いて集中度の検出を行っている [5].これは,部

屋の前方に 1つ,後方に 2つのカメラを設置し,また児童の一

人ひとりに加速度センサを装着しそれぞれのセンサデータから

集中度の検出を試みたものである.後方のカメラから各児童の

位置,前方のカメラからは表情を取得して笑顔度を算出するこ

とができ,笑いと動作による集中度の検出を試みた例である.

尾林らは運転中のドライバの集中力の評価を目的として,視

線計測装置とモーションキャプチャによる手法を提案してい

る [6]. この研究ではドライバにマーカーをつけ,それを 11台

のカメラで撮影することによりマーカーの三次元座標を計測,

アイマークレコーダ(視線計測装置)のデータと共に,ドライ

ビングシュミレータで発生するイベントとの相関を調査してい

る.結果として複数のセンサに同じタイミングで現れる波形の

変化を明らかにしたが,運転中という状況を対象とした研究で

あるため,同じ手法を学習状態の計測に適用しても必ずしも良

い結果は得られないと考えられる.

五味らは e-learning 受講時の学習者の集中状態検出のため,

学習者の頭部,肩,腰など 9点にマーカーをつけ,ステレオカ

メラを用いて座標の取得を行った.集中状態・非集中状態の判

別は可能であったものの,集中状態では学習者は前傾姿勢をと

り,非集中状態はのけぞった姿勢をとるといった極めて大まか

な結果であった.

濟田らはリアルタイムの配信型授業において授業参加者の顔

が見えないことによる講師の不安解消を目的とした,参加者の

集中状態フィードバックを試みている [7].この研究では参加

者のいる部屋にカメラを設置し,顔検出等を用いて参加者の集

中状態を判別するものである.非対面型の授業を対象とし,講

師の不安解消を目的とした研究であるが,受講者の集中状態

フィードバックが有効であるとしている.

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西村らは受講者のペンに無線センサを装着し,照度,振動,

温度をそれぞれ取得・分析するという手法を提案した [8].しか

し,これはあくまで新手法の提案に過ぎず,また,振動から受

講者が文字を書いているか否か判別することはできたものの,

照度と温度については集中状態の検出に使用していないなどの

課題が残っている.

河野らは高校生 104人を対象として気功の鍛錬と脳波の変化

の関係について研究を行っている [9].著者によると厳密には気

功の鍛錬とはリラックス状態に入ることではなく,熟練の気功

師では気功中のα波は小さくなることが多いとしているが,初

習者である高校生の段階では気功を行うことと集中状態になる

ことはほぼ同じとみなしている.この研究は 104名について 4

年間の継続的な測定を行っており,脳波からの集中度の算出な

どは行っていないものの,ヒアリングの結果から,集中度の測

定に有効であるとしている.

このように,これまでも集中状態の検出を目的としてセンサ

からの信号を解析する研究は多数行われているが,授業改善の

ための講師へのフィードバックを目的として挙げた研究は知ら

れていない.

筆者らは重心センサと距離センサを用いた受講者の状態計測

の研究を行っており,1つの重心センサと 1つの距離センサを

用いた研究を行っている [10].本稿では実験参加者を増やすと

ともに,計測環境を改善し,学習上体の推定精度を向上するこ

とを試みている.

3. 受講者の状態をセンサデータから判別する手法の提案

3. 1 講義型授業における学習状態モデル

講義型授業では,講師が板書等を伴いながら知識を受講者に

伝授すること,伝授した知識が受講者に定着したことを確認す

るための演習問題への取り組み,受講者の質問や学習状態に応

じて,補足の説明や発展問題への手がかりを教授するなど,多

様な形態が存在する.講師は,受講者の反応を見ながら,これ

らの様々な形態を適宜選択して,最大限の授業効果が得られる

ように授業をデザインしているといえる.しかしながら,授業

全体にわたってふくす受講者の反応を瞬時に短時間で把握する

ことは,授業経験が豊富なベテラン講師にとっても難しい課題

といえある.本研究では,受講者の反応を講師が観察する一助

とすることを目的に,受講者の学習状態を推定する手法を検討

する.そのための学習状態として,受講者には以下の 4種類の

状態があると仮定する.

• 傾聴:講師の話に耳を傾け,内容を追っている状態

• 黙考:話を聞くことをやめ,考えにふけっている状態

• 上の空:講義の内容とは異なることを考えている,ある

いは何も考えずにぼうっとしている状態

• 睡眠:受講者が意識を失い,寝ている状態

そこで,講師が必要とする状態の変化について考える.

講師が受講者に対して起こすアクションは,内容の補足・再

確認,指名,課題の提示,などが挙げられる.

このとき,講師が授業に役立てることのできる状況は,受講

者が話の内容なから離れてしまう状態を察知し,的確な補足を

入れる状況,または,離れていた受講者が再び講義に引き寄せ

られたタイミングを知ることで,受講者の興味を引くことので

きる話題を知るといったものと思われる.

これを踏まえると,講師が授業を行う際に必要としているの

は,各アクションをするためにきっかけとなるような情報であ

る.即ち,受講者が講師の話に興味をもって聞いているか否か

を判別することにより,講師は話題の組み立てを臨機応変に変

更し,より受講者の印象に残る講義づくりを行うことができる

と考えられる.

以上のことから,本研究では「傾聴」と「黙考」の 2つの状

態について状態判別を試みる.

3. 2 セ ン サ

本研究では利用者への精神的,身体的な負担が軽いこと,及

び入手が容易であることを要件としてセンサの選定を行った.

以下の 2種のセンサについて実際にデータを計測し有効性を検

討する.

3. 2. 1 重心センサ

重心動揺のセンサとしては任天堂製バランスWii ボードを

使用する.バランスWii ボードは Bluetooth で PC に接続す

ることができるため,値を取得するためのライブラリが多数リ

リースされている.本研究ではWiiFlash Serverを PCで実行

し,バランスボードの値を取得する [11].バランスボードは椅

子の上および床面に設置し,受講者の重心移動と足の荷重を測

定する.

図 1 バランスボード

3. 2. 2 姿勢の計測

受講者と机の距離を検出するため,SHARP製赤外線測距モ

ジュール GP2Y0A21 と Arduino を用いる.距離に応じてモ

ジュールから出力される電圧を Arduinoの A/D変換器で読み

取り,シリアル通信で PC側に送信する.モジュールは机のへ

りに仰角をつけて設置し,受講者の上体と机の距離を測定する.

3. 2. 3 距離の算出

距離センサは対象物との距離に応じた電圧を出力するが,そ

の値は線形ではない [12].使用した GP2Y0A21の距離-出力電

圧曲線を以下のグラフに示す.

出力曲線の特性上,目標物との距離が 5cm以下となった場合

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図 2 距離センサ

図 3 距離-出力電圧曲線

は計測不可能となるため,受講者の体とセンサが接近しすぎな

いようセンサを設置した.出力電圧 Vから距離 R(cm)への変

換式はデータシートに記載されている次式を使用する [13].な

お,この式における Vは A/D変換器によって得られた 0から

1023(10ビット)の値である.

R =6787

V − 3− 4 (1)

また,距離センサはノイズの影響が大きく,計測値に極端な

ぶれが生じる場合がある.このため,ノイズの影響を抑えるた

めに前後 4点を含む合計 9点の平均を常時とり続け,波形の平

滑化を行った.

4. 実装と評価

4. 1 実験における学習状態の実現

前章で述べたとおり,この研究では「傾聴」と「作業」の2

つの状態判別を試みる.実験参加者はそれぞれ以下の 2課題に

取り組むことで,2つの状態を実現することとした.

「傾聴」の状態は講師の話を聞きながら話の内容を整理し,

ノートをとるなどしている状態である. そこで実験では早稲

田大学が iTunes Uで公開しているオープンコースウェアから

取得した「脳の構造と機能」[14]の講義映像,および筑波大学

で行われた講演の録画を用意し,実験参加者にはそのビデオを

見てノートを作成させた.「作業」の状態は,受講者が外部か

らの入力をとらず,課題の解決に集中している状態である.実

験では完全に静的な作業としてタブレットコンピュータ上での

パズルゲームへの取り組み,及び,多少動きのある作業として

NDL-OPACを使用した調査を課題として課した.

• 実験1 早稲田大学 OCW (PCのディスプレイ)

• 実験 2 筑波大学の講演映像 (スクリーンへの投影)

• 実験 3 パズルゲーム

• 実験 4 調査課題

なお,実験参加者は 11名,それぞれの測定時間は各 12分間

である.

4. 2 実 験 環 境

PC�1

PC�2

座⾯バランスボード

床⾯バランスボード

Arduino 距離センサ

Bluetooth

Bluetooth

USB シリアル通信

図 4 センサの構成

実験システムは開発言語として Javaを使用し,統合開発環

境 eclipse上で実装を行った.バランスボードからの値の取得に

はWiiFlash Serverから出力される数値をソケット通信によっ

て読み取った.距離センサから出力される電圧は Arduino uno

の A/D 変換器を通して 10 ビットの数値としてシリアル通信

で PC側に送られ,Javaからはシリアル通信を用いて読み取っ

た.これらのセンサの値は 20msごとに記録される.なお,標

準 Javaにはシリアル通信を行うためのクラスは搭載されていな

いため,Java Communications APIの外部実装である RXTX

ライブラリを使用した.測定値は csv形式で日付,座面バラン

スボード右上センサ値,座面バランスボード左上センサ値,座

面バランスボード右下センサ値,座面バランスボード左下セン

サ値,距離が 1つのファイルとして,床面のバランスボードの

値が独立したファイルとして保存される.

4. 3 計 測

4. 3. 1 センサ類の配置

実験におけるセンサの配置を図 5に示す.

距離センサ

重⼼センサ

荷重センサ

X

Y

図 5 センサの配置

椅子の上にバランスボードを設置し,実験参加者はその上に

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座る形で計測を行う.距離センサは机のへりに固定され,実験

参加者の上体との距離を出力する.

4. 3. 2 実験の手順

ここでは実際に実験を行った際の手順について説明する.

まず,各センサの測定と映像の記録を開始し,その後実験参

加者に着座してもらう.その後,4種の実験を参加者ごとラン

ダムな順序で実行する.

傾聴の実験 2種ではノート用紙を配布し,手元のディスプレ

イとスクリーンのそれぞれで講義映像を視聴しながらノートを

作成する.

パズルゲームの課題でははじめに操作方法の確認を行い,は

じめの合図で開始した.

調査課題では問題を用紙に印刷して配布し,調査に使用する

web サイト(NDL OPAC)(注1)の説明をした後,はじめの合

図で開始した.

これらの課題を各 12分実行した.

センサデータは CSVファイルとして保存される.実験終了

後,重心を求め,ファイルに追記する.後の処理ではセンサの

生データではなくこの重心の座標を使用する.

4. 4 データの分析

実験で得られたデータの例を図に示す.

4. 4. 1 ホームポジションの算出と変位の変換

測定データには個人差があり,中でも挙動の大きさが人に

よって違うため,その正規化のためにホームポジションという

考え方を導入する.

ホームポジションとは,受講者が測定の全期間を通して最も

多く位置していた点を差す.全ての挙動をこのホームポジショ

ンと最大変位の間の割合で表すことで,受講者ごとの挙動の大

きさを比較可能とする.

ここでは全期間の平均値をホームポジションはとして採用し,

最大値,最小値のうちホームポジションから遠いものを最大変

位の値として採用する.

実験参加者のうち 3名(それぞれ A,B,C)の重心データをそ

のままプロットしたものを図 6に,ホームポジションからの変

位に変換したものを図 7に示す.

time(msec)0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 16000 18000

dist

ance

(cm

)

0

2

4

6

8

10

12

14

16

18

20

ABC

図 6 距離データ 無加工

(注1):http://ndlopac.ndl.go.jp/

time(msec)0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 16000 18000

dist

anse

(rat

e)

-1

-0.8

-0.6

-0.4

-0.2

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

ABC

図 7 距離データ 正規化済

図 6を見ると,Aが 6cm付近,Bが 9cm付近,Cが 15cm

付近でそれぞれ前後していることがわかる.データ Aの後半を

除き,各データの振れ幅は 4cm前後である.この違いは,体格

や個人のクセの違いから現れるものであると思われる.

正規化を行った図 6のグラフでは,A,B,Cそれぞれが同じ範

囲に収まっている.

本研究ではこの処理を,すべてのデータに対して適用した.

次に,実験ごとのデータの特徴をつかむため,平均値と分散

を計算した.横軸に平均値,縦軸に分散をとった散布図を図 8

に示す.

図 8 平均-分散の分布 すべての値

図 8を見ると,特に実験 2と実験 4で偏りが顕著である.実

験 2では平均の値はバラバラであるものの,分散が小さく,状

態推定のキーとなることが見込まれる.

次に,これを測定データの種類ごとに表示したものを図 9か

ら図 11に示す.

重心移動 X軸では,全体として分散が小さい傾向にある.し

かし,実験 4の値のみ,平均値のとる値が広く,また分散も大

きい.

実験 1から 4の値を比較すると,実験 2はいずれの場合にお

いても,分散の値が他の 3つに比べて小さいことがわかる.

実験 2は,タブレット端末でパズルゲームをするというタス

クであった.これは学習状態の「作業」に相当するタスクとし

て設定したものであり,もう一つの作業タスクは PCを用いた

調査課題である.調査課題は PC の操作,課題用紙への筆記,

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図 9 平均-分散の分布 重心移動 x 軸

図 10 平均-分散の分布 重心移動 y 軸

図 11 平均-分散の分布 距離センサ

など比較的動きのある「作業」を,パズルゲームの課題は黙々

と打ち込む比較的単純な「作業」を再現するためのタスクで

あった.

今回の測定の結果により,「作業」状態の一部を測定データ

の処理によって判別するための,前向きな結果が得られたと言

える.

5. 結 論

測定データに正規化処理を行って平均と分散を求めた結果,

単純作業の状態で分散がとくに小さくなることがわかった.こ

れは計測データからの学習状態の判別のために有用な知見であ

り,他の手法と組み合わせることで学習状態の判別が可能とな

ることが示唆された.

6. 謝 辞

本研究の一部は,JSPS 科研費 25280110, 25540159 の助成

を受けたものです.

文 献[1] 文部科学省. 大学教員のファカルティディベロップメントに

ついて. http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/

chukyo4/003/gijiroku/06102415/004.htm.

[2] 福島大学. Fd 報告書. http://www.fukushima-u.ac.jp/for_

student/fd/fd.html.

[3] 筑波大学. ファカルティ・ディベロップメント. http://www.

tsukuba.ac.jp/education/fd.html.

[4] 明治大学教育開発・支援センター. 「授業改善のためのアンケート」実施の趣旨及び「授業改善のためのアンケート」実施の趣旨及び要領. http://www.meiji.ac.jp/edu/fd/enqute/

6t5h7p000000btkd-att/shushi.pdf.

[5] 金田重郎, 上坂和也, 今城和宏, 三本貴裕, 新谷公朗, 糠野亜紀.

ステレオカメラと加速度センサを用いた読み聞かせに対する子どもの集中度分析手法. 情報処理学会研究報告. コンピュータと教育研究会報告, Vol. 2010, No. 2, pp. 1–8, May 2010.

[6] 尾林史章, 小澤愼治, 小塚一宏. ドライバの挙動の計測と運転に対する集中力の評価指標の提案 (itsポジショニング,一般). 電子情報通信学会技術研究報告. ITS, Vol. 110, No. 150, pp. 37–42,

Jul 2010.

[7] 濟田武志, 矢内浩文. 授業参加者の集中状態を判別する動画像処理. 電子情報通信学会技術研究報告. HCS, ヒューマンコミュニケーション基礎, Vol. 103, No. 742, pp. 83–87, Mar 2004.

[8] 簡易無線センサによる授業集中度測定の提案. 電子情報通信学会, 2011.

[9] 河野貴美子, 外山美恵子. 高校生における気功の鍛錬とその効果-

第 2 報 (研究発表, 第 21 回生命情報科学シンポジウム). Jour-

nal of International Society of Life Information Science,

Vol. 24, No. 1, pp. 204–209, Mar 2006.

[10] 清野悠希, 佐藤哲司. 講義型授業における受講状態の推定法の提案, Mar 2014.

[11] Thibault Imbert. Wiiflash server :wiimote and flash. http:

//wiiflash.bytearray.org/.

[12] SHARP. Gp2y0a21yk optoelectronic device. http://www.

sharpsma.com/webfm_send/1208.

[13] テックハンド. 赤外線距離計を作ってみる. http://www.

techand.jp/Digital/Arduino/DistanceLCD.html.

[14] 早稲田大学.早稲田大学 opencourseware. http://www.waseda.

jp/ocw/.