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1東京都社会福祉審議会 検討分科会(第2回) 会議録 Ⅰ 会議概要 1 開催日時 令和元年6月24日(月)午前10時00分から 2 開催場所 第二本庁舎31階 特別会議室23 3 出 【委員】 小林分科会長、山田(昌)副分科会長、秋山委員、井上委員、琴寄委 員、筒井委員、中村委員、山田(広)委員、和気委員、粟田臨時委員、 駒村臨時委員、髙橋臨時委員、藤原臨時委員、松田臨時委員、室田臨 時委員 (以上15名) 【オブザーバー】 平岡委員長、栃本副委員長 【都側出席者】 福祉保健局幹事・書記 4 会議次第 1 開会 2 審議事項 2025年以降の将来を見据えた東京の福祉施策のあり方について(委員発表) (1)藤原佳典委員 高齢者の社会参加が導く接続可能な地域 (2)粟田主一委員 認知症とともに暮らせる社会をめざして (3)駒村康平委員 金融ジェロントロジーの展望 3 起草委員会について 4 閉会 ○森田企画政策課長 それでは、お時間になりましたので、ただいまから東京都社会審議 会第2回検討分科会を開会いたします。 本日は、お忙しい中、またお足元の悪い中、ご出席いただきましてありがとうございま す。私、書記を務めさせていただきます、福祉保健局総務部企画政策課長の森田と申しま す。よろしくお願いいたします。

東京都社会福祉審議会 検討分科会(第2回) 会議録 · 森田企画政策課長 それでは、お時間になりましたので、ただいまから東京都社会審議

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東京都社会福祉審議会 検討分科会(第2回) 会議録

Ⅰ 会議概要

1 開催日時 令和元年6月24日(月)午前10時00分から

2 開催場所 第二本庁舎31階 特別会議室23

3 出 席 者 【委員】

小林分科会長、山田(昌)副分科会長、秋山委員、井上委員、琴寄委

員、筒井委員、中村委員、山田(広)委員、和気委員、粟田臨時委員、

駒村臨時委員、髙橋臨時委員、藤原臨時委員、松田臨時委員、室田臨

時委員

(以上15名)

【オブザーバー】

平岡委員長、栃本副委員長

【都側出席者】

福祉保健局幹事・書記

4 会議次第

1 開会

2 審議事項

2025年以降の将来を見据えた東京の福祉施策のあり方について(委員発表)

(1)藤原佳典委員 高齢者の社会参加が導く接続可能な地域

(2)粟田主一委員 認知症とともに暮らせる社会をめざして

(3)駒村康平委員 金融ジェロントロジーの展望

3 起草委員会について

4 閉会

○森田企画政策課長 それでは、お時間になりましたので、ただいまから東京都社会審議

会第2回検討分科会を開会いたします。

本日は、お忙しい中、またお足元の悪い中、ご出席いただきましてありがとうございま

す。私、書記を務めさせていただきます、福祉保健局総務部企画政策課長の森田と申しま

す。よろしくお願いいたします。

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議事に入る前に、何点かご連絡をさせていただきます。すみません、座って連絡をさせ

ていただきます。

まず、委員の皆様の出席状況についてでございます。到着が遅れている委員もいらっし

ゃるようでございますけども、本日ご出席の連絡をいただいた委員は、全部で16名のう

ち15名でございます。ご欠席のご連絡をいただいておりますのは、久留臨時委員でござ

います。

委員総数が16名でございますので、委員総数の半数以上という定足数に達しているこ

とをご報告いたします。

続きまして、会議資料の確認でございます。本日、誠に申し訳ございません。ペーパー

レスで実施する予定でございましたけれども、ちょっとシステムの不具合がございまして、

紙による会議とさせていただきます。

資料でございますけれども、クリップ留めしておりますもので、一番上に次第があるも

のがございます。それの1枚目が次第でございます。それから、資料の1が検討分科会の

委員の名簿でございます。それから、裏面に幹事・書記名簿がついてございます。それか

ら、資料の2が意見具申までのスケジュールでございます。ちょっとタブレットに入れよ

うと思っていた関係で、横の表になってございますけども、申し訳ございません。それか

ら、本日ご発表いただく委員の資料がその後についてございます。資料の3でございます

けども、ホチキス留めをしておりますけれども、藤原佳典委員からの資料でございます。

資料の4が粟田主一委員、資料の5が駒村康平委員の発表資料になってございます。その

クリップ留めの一番後ろのところに資料の6といたしまして、起草委員会の名簿をつけて

ございます。

それから、参考資料でございますけども、それとは別に用意してございます。まず、参

考資料の1が平岡委員長から当初ご提案いただきました審議テーマに関するメモでござい

ます。参考資料2といたしまして、今回の発表テーマに関連するものとして、事務局で準

備いたしました成年後見制度と日常生活自立支援事業の概要と利用状況等に関する資料で

ございます。それから、参考資料の3が青色のファイルにつづっております検討分科会の

議論の参考のために事務局で作成いたしました基礎資料集でございます。それから、以下

は冊子の資料でございます。まず、白色の冊子が第20期の意見具申でございます。次の

カラーの表紙の冊子でございますけども、都民の皆様に向けまして、福祉保健局の今年度

の取組をお知らせするために作成いたしました、2019東京の福祉保健、それから、次

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のクリーム色の冊子でございますけども、福祉保健局の重要施策を冊子にまとめました、

東京の福祉保健2019分野別取組でございます。

資料の確認は以上になります。もし、不足しているものがございましたら、事務局のほ

うにお知らせいただければと思います。

それから、次に、会議の公開についてご説明いたします。当分科会は、審議会に準じて

公開となってございます。本日は、事前にご連絡をいただきました傍聴の方がいらっしゃ

いますので、お知らせをいたします。

なお、当分科会の議事録は、東京都のホームページで公開させていただきますことを申

し添えさせていただきます。

次に、本日第2回の検討分科会でございます。第1回のときにご欠席された委員をここ

でご紹介させていただきます。

まず、臨時委員の駒村康平委員でございます。

○駒村委員 駒村でございます。

○森田企画政策課長 それから、オブザーバーとして当分科会にご参加いただいておりま

す栃本一三郎副委員長でございます。

○栃本副委員長 栃本でございます。前回、授業がありまして、申し訳ありませんでした。

○森田企画政策課長 事務局からの連絡は以上でございます。

これから先の議事進行は、小林分科会長にお願いいたします。よろしくお願いいたしま

す。

○小林分科会長 皆さん、おはようございます。どうぞよろしくお願いいたします。

本日は、審議テーマに関連いたしまして、藤原委員、粟田委員、駒村委員の3名の方か

らご発表いただくことになっております。

進め方ですが、お一人につきまして20分以内でご発表いただきまして、その都度質

疑・質問の時間を15分程度設けさせていただきます。

前回のこの分科会ですが、少し時間が足りなくなり、ディスカッションの時間がなくな

ってしまいました。それで、事務局のほうから私のほうに、きょうは厳しく時間を管理す

るように申しつけられておりますので、どうぞご協力をよろしくお願いいたします。

それでは、早速委員の先生方から発表をいただきたいと思います。

初めに、藤原委員からご発表をお願いいたします。

○藤原委員 それでは、ちょっとペーパーレスではないので、ちょっと説明しにくいので

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すが、きょうは私は「社会参加が導く持続可能な地域」ということで、表紙に書いており

ます、これはSDGsでございますが、この高齢者の社会参加によって、17項目のうち

の多く見れば9の項目がカバーできるのではないかなというふうに考えておるところでご

ざいます。

きょうのテーマでございますが、社会参加といいましても、基本的には高齢者の活躍が

地域包括ケアシステムでどう反映できるかといった視点でお話をさせていただきたいと思

います。

私は、いつも下の2枚目のパワポにありますように、地域包括ケアを説明するときに、

特に職員向けには、内堀と外堀の関係というふうに申し上げることが多うございます。内

堀というのは、最後の砦である医療介護連携でありますが、外堀の部分がいわゆる生活支

援、介護予防に当たるのではないかと。ここで特に高齢者の社会参加の必要性があるので

はないかなということでございます。

裏をめくっていただきますと、では特に持続可能性ということを考えた場合に、私ども

の研究室では、原則、多世代のアプローチ、世代間のアプローチを重視しております。こ

れは、世代間、多世代というのは、実は「我が事・丸ごと」共生社会というスローガンに

おいてもかなり重要な位置を占めておりまして、「丸ごと」といいますのは、私どもの施

設の前進である東京都養育院の初代局長の澁澤栄一の理論でもあります、「三方よし」の

精神、売り手よし、買い手よし、世間よし、これがあって初めて「丸ごと」というものが

起こるのではないかなと。

「我が事」と申しますのは、これはライフステージを考えました場合に、仏教の訓示で

もありますけれども、「子供叱るな来た道だもの、年寄り笑うな行く道だもの」という教

えがございます。「我が事」の入り口が必ずしも住民にとって身近でないハンディのある

方とか、マイノリティの方だけの議論ですと、なかなか住民にとって我が事のイメージが

湧きにくいと耳にします。でも、子供から高齢者まで世代を串刺しにしてプロジェクトを

展開していくと、どこかにハンディのある人、あるいはマイノリティの人も登場してくる

わけで、「あ、子どもの同級生のあの子のことか」「元気な頃に防犯パトロールされていた、

あのお年寄りのことね」というように、我が事になりやすいというふうに考えております。

特に、多世代というアプローチに関しまして、高齢者の視点で見たところ、これは心理

学の理論ですけれども、ジェネラティビティという理論がございまして、次世代継承とい

うものを高齢者が欲していると。その次世代継承を実現することによって、高齢者自身が

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みずからもまた超越したり、あるいはご自身のQOLが向上するということがありますの

で、次世代の支援というのは高齢者にとって非常にメリットのあるものであろうと。

一方、この多世代のアプローチといいますのは、職員の視点からしましても、これは5

枚目でございますが、重要な点がございます。これは、以前厚生労働省の研究費で横浜市

行政保健師さんと地域交流コーディネーターという方が全区にいらっしゃるのですが、そ

の全数にご自身がかかわったり、あるいは見聞きしている地域活動の中で、本当に安心し

て協働・応援できるような活動団体は何かという好事例を挙げていただいたのですが、そ

の上位を占めていますのが、やはり多世代型の活動ということでございます。これは、組

織全体の存続ということもありますし、多世代のほうが色々な団体から逆に支援をもらっ

たり、あるいは色んな人々や団体に対して発信力もあるというようなことで、多世代とい

うのは職員にとっても非常にメリットがあると考えています。

具体的な社会参加の形でございますが、6枚目のスライドにお示ししておりますように、

高齢者のそれぞれのライフステージにおける社会参加の姿が変わってくるものだと考えて

おります。一番上の上位にあります就労に関してですが、続きまして1枚めくっていただ

いて7枚目のスライドをお願いいたします。我々は、今まで数々の追跡調査をやってきた

のですが、その中で左上が例えば東京A市、これは昔の小金井市のデータなのですけど、

それと下が秋田県の仙北郡の農村部。いずれにしましても、働いている人、働いていない

人を比べた場合に、やはり基本的なADLの自立度というのは、年々変化が出てまいりま

して、特に男性においては仕事をしている人のほうが、健康度を維持しやすいということ

がわかります。

こういう研究成果は、少しずつは蓄積されているのですけれども、じゃあどういう仕事

の仕方がいいのか、どういう仕事の内容がいいのかということを検討しまして、2014

年から、この8枚目のスライドでございますが、研究所の我々を中心に高齢者就労のあり

方の研究会25回継続しております。ちょっと残念ながら画像のほうが切れてしまってお

るのですけれども、その中で最終的にじゃあ高齢者にとって望ましい働き方というのはど

ういうものかということを昨年結論づけまして、その一つが、やはり高齢者の就労もそれ

が「三方よし」になる必要があるだろうというものです。、9枚目ですが、まずは、高齢

者自身の生きがいであったり、健康に、あるいはお小遣いとっていいという部分があると。

もう一つは、雇い主であるとか、あるいは現職の若い働き手にとっても仕事を食い合うの

ではなくて、サポートしてもらうとか、埋め合ってもらうというメリットがある。それ自

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体が地域社会に対してメリットがあるというこの「三方よし」が必要であろうということ

になりまして、その中でも特に、高齢者自身を色々とインタビューしますと、直接感謝さ

れたり、ありがとうの声をもらえるような働き方というのが重視されているということが

わかりました。

具体的に見ておりますと、例えば、技の伝承ですとか、ワークシェアといったものがあ

るのですが、業種で考えますと、介護とか育児の支援、福祉の領域といったような地域密

着型の仕事というのをできるだけ色々な機会で勧奨していく必要があるのではないかなと

いうことを考えております。

その中で、特に今年度から我々が積極的にちょっと動いておりますのが、介護人材の確

保に関してでございます。この10枚目のスライドになりますが、ご承知のとおり、介護

の職員の有効求人倍率というのは、都内で約 5 倍と。全国が2.6倍ぐらいですので、

非常に深刻であるというような状況にあります。

そういった中で、国のほうも色々と施策を考えているところでございますが、11枚目

のスライドにありますように、介護人材のまず構造転換が必要だろうということで、従来

は何となく与えられた仕事をそれぞれプロフェッショナルであろうが、非常勤であろうが、

アルバイトであろうが、何となく連携してやっていたという、いわゆるおまんじゅう型の

構成であったところなのですが、これからは、やはりキャリアラダーですとか、あるいは

それぞれの役割の分担を明確にして、その法人の中核を担う人とその周辺業務を担う人に

分けていく。いわゆる富士山型の働き方が必要だろうということで、それぞれの職域の構

造転換が求められております。

そこで、最近は介護助手という、高齢者の方中心に地域の介護の現場で作業を切り分け

て働いてもらう施策が進みかけています。私どももこれにかねてより着目しておりまして、

今年度厚労省の委託をいただきまして、その先進地区である三重県さんと一緒に介護助手

の実態調査を予定しております。これまで三重県さんではパイロット調査をなさっている

のですけども、その1例からしますと、12枚目のスライドにありますように、介護助手

を導入してから、若い職員の離職率が改善してきているという報告もあります。

こういったシステムなのですけれども、では都内でどういう可能性がある。色々と高齢

者の介護福祉領域への就労促進の取組をやっているところも散見されているのですが、1

3枚目のスライドでございます。何よりも、やはりまず高齢者の方に学んでいただく、研

修していただく、そしてそれをうまくマッチングするという両方が重要だということで、

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かねてより我々が包括的に協働事業をやっております東京の大田区の事例をご紹介したい

と思います。

13枚目のスライドでございますが、まず、大田区さんは年に1回高齢者の介護と保育

の補助の二つに関して、一般シニア向けに、研修会を開催されております。その研修会と

同時に、受け皿である地元の法人さんと連携しながら実習もやっていくのです。そこで、

高齢者がどういうところで働き口を求めるかというところでございますが、下の楕円形の

図にありますように、様々な窓口がございます。シルバー人材もありますし、ハローワー

クもあるのですが、特に大田区の場合は、東京しごと財団さんの委託事業を受けられまし

て、いきいき仕事ステーションという高齢者に特化したハローワーク的な窓口を持ってお

られたりとか、ジョボタというのは生活困窮者向けの就労支援窓口であったりと多様です。

区は新たに一昨年からシニアステーションという、いわゆるちょっとおしゃれな複合施設

を何カ所かつくられたのですが、その一角にちょっと写真のほうは見えにくいのですが、

福祉就労を紹介するコーナーをつくっています。

こういった施設のそれぞれ窓口が区の担当課に連携して、決して住民さんがたらい回し

になることのないような形で、ワンストップで紹介できるシステムをつくっておられます。

続きまして、就労の次のステージとしまして、14枚目にボランティア、趣味・稽古と

いうステージがございます。こちらに関しましても、私どもは高齢者の社会参加、しかも

多世代アプローチというところで、ずっと15年間にわたってやっているプロジェクトが

ございます。15枚目のスライドでございますが、もともとの源流がアメリカのシニアボ

ランティアによる学校支援活動を私が勉強してきたことがスタートでありまして、当時か

らアメリカも高齢者にとって Use it, or lose it、つまり廃用障害を予防するために、とも

かく社会参加をしましょうという、そういうスローガンで様々なプログラムを展開してお

ります。

この中で、確固たる効果があるというエビデンスも出されておりましたのが、地元の小

学校とか、あるいは保育園、幼稚園でシニアボランティアが支援活動をするというエクス

ペリエンス・コアというプログラムでございます。これに関しまして、地元のジョンズ・

ホプキンズ大学がきっちり評価をしたところ、高齢者の健康度、あるいはQOLが上がっ

たのと同時に、子供の基礎学力ですとか、あるいは校長室に呼び出される児の数が減った

とか、あるいは教師のバーンアウトが改善されたと。いわゆる「三方よし」の効果が報告

されました。

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それを私は、非常に感銘を受けまして、16枚目のスライドでございますが、日本に戻

りまして、何かやはりシニアの方が地域の学校とか保育園で子供相手の活動ができないか

ということで、世代間交流のボランティアのプロジェクトというのを進めております。こ

れは、実際には高齢者が3カ月間絵本の読み聞かせの手法をマスターしてもらって、その

後、当地区で実際活動するというもので、「りぷりんと」というプロジェクトでございま

す。

これは、2004年から厚労省のモデル研究事業として始めまして、その後2006年

以降、今は自治体の介護予防事業とか、あるいは認知症予防事業として受託しております。

飛躍的に数が増えているという、都内で13の自治体から受託あるいは協働いただいてい

ます。

これは、まずいきなりボランティア募集というのではなくて、入り口としては、絵本を

用いて、ご自身の認知症予防、あるいはご自身の介護予防といった健康づくりをしましょ

うと。その結果、卒業した方が地域でボランティアをしましょうという、そういう二段構

えのプログラムです。

17ページですが、絵本というのは、高齢者にとって自己表現しやすかったりとか、あ

るいはネタが切れることがないとか、近くの図書館でことたりるといった意味で、非常に

身近な教材としていいんだと。18ページですが、絵本の読み聞かせボランティア養成と

言いましても、図書館マターではなくて、あくまでご本人の体づくり、あるいは記憶力の

アップという視点も入れたり、あるいは発声や滑舌訓練といった健康・生涯学習型の認知

機能の維持のためのプログラムであるというところで、12回のシリーズで構成していま

す。

裏面をめくりまして、19枚目でございますが、実際私どもはこういった効果を検証し

てまいりまして、ボランティアを6年間継続している方に脳のMRIの画像を撮影させて

いただいたのですが、一部海馬の萎縮が抑制できるといったような報告もしております。

介護予防活動というのは、3カ月間の講座が終了して、はいこの時に効果が出ましたよ、

終わり、というのが多いのですが、6年間とか、その下7年間といった長期にわたって、

ボランティアの活動を継続する。左上にありますような継続のサイクルをしながら、ずっ

と同じペースで生活の一部として活動できるところで、長期効果が認められたのではない

かなとうに考えております。

その下の20ページ、20枚目でございますが、読み聞かせは文化系の活動のように思

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えるのですけども、実はボランティア活動をするだけで、アクティビティがやはり上がり

ます。実際の身体機能、体力の測定なんかでも7年間活動している方というのは、バラン

ス力を測る体力指標の一つでファンクショナルリーチ明らかに維持されていると。比較対

照に地域の体操のボランティアもまじっているのですが、そういう方よりも長期の効果が

認められていることが明らかになりましたと。

そういう意味で、文化系の活動であっても、最終的に社会参加を活発化することによっ

て、心身の機能が鍛えられ、活動をやっている中で気がついたら元気になっていたよとい

った、理想的なモデルなのではないかなと思っております。

やはり、「三方よし」でございますので、21枚目にありますような多面的な効果とい

うことで、子供への効果、保護者への効果、教職員への効果というものも、それぞれきょ

うはご紹介いたしませんが、論文等で発表してございます。

こういった「三方よし」の効果を国内外でも評価されておりまして、22ページにはW

HOのワールドレポートで、日本の極めて少ない好事例としてご紹介いただいております。

また、高齢者担当側からだけで表彰してもらっているのではなくて、例えば22ページの

左下なんかですと、東京都の教育委員会さんから子供の健全育成のために寄与していただ

いたといったような、いわゆる高齢者の活動してではなくて、子供への貢献というところ

でも評価をもらっているという意味で、「三方よし」が実装できていると思っております。

続きまして、23枚目でございますが、こういったボランティアの活動なのですけども、

されどボランティア、たかがボランティアというところがございまして、いくら元気そう

に見えるボランティアなのですけれども、やはり高齢者としての限界もあり、自分の団体

が独立独歩ではなかなか活動継続できません。それを背景としてバックアップしてくださ

る地元の社協さんですとか、あるいは健康部局、福祉部局、あるいは地域包括、図書館、

シニアボランティアは色んな地域の資源を活用しながら、地域の活動を継続しているので

す。まさしく緑色のサークルになっておりますところが、地域包括ケアの特に地域支援事

業における地域のステークホルダーの団体なのだと思うのですが、こういった方々と連携

しながら、あるいは支援してもらいながら、シニアボランティアが社会参加、社会貢献し

ているのです。

また、24枚目でございますが、高齢者ボランティアの活動は現在10数か所の地域で

活動しているのですけれども、やはりシニアの団体ですので、長期継続していくという意

味では色んな課題がございます。それぞれの地域の課題を出し合ったり、共有し合うとい

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うことで、それぞれの自治体ごとのボランティア団体が緩くネットワークを組んでおりま

して、これが現在NPO法人りぷりんとネットワークを結成しておりまして、400人の

団体として創立しております。今、この NPO の取組も

支援しています。

続きまして、25ページですが、だんだんボランティアとか地域活動といった団体活動

がしんどくなってきますと、今度は、友人・近所づき合い、あるいは見守りといったよう

なレベルに移ってまいります。今度は、一般住民の生活においても、世代間交流というこ

とは非常に健康にいいということもわかってまいりまして、26枚目でございますが、こ

れは東京都の北区と川崎市の住民の方々にアンケートをとったのですが、高年層の方もで

すし、若年の方も同世代の交流のみとか、多世代の交流のみ、どちらもある、どちらもな

い、4群に分けたところ、やはり一番健康度が高いのが世代間交流も世代内交流も両方や

っているほうが個人の心のQOLが高いということがわかりました。高齢のみならず、若

年の方もやはり年配の方とかかわっている方のほうが健康度が高いと言えます。

続きまして、27枚目でございますが、ボランティアという一部の方々だけではなく、

地域の普通の活動の中で、多世代のアプローチは必要性があるのかというところが問われ

るところでございます。これが現在の介護予防・日常生活支援総合事業、特に生活支援で

すね。そちらでも一つのモデルを我々はつくってまいりました。しかも、これも多世代型

でして、フィールドとして東京都北区と川崎市多摩区という二つの地域を中心に展開して

まいりましたが、支え合いといいましても、いきなり困りごとの支え合いというのはなか

なかうまくいかないのが現状でして、ご覧の三層構造で支え合いを少しずつ熟成していく

ものです。

初めは、その地域、地域で声をかけたり、挨拶をしたりといった幅広いキャンペーンを

やっていくところから始めまして、地域の居場所をたくさんつくっていく。それも多世代

で集えるような場をつくっていくと。その中で、何か触れ合っている中で、実は私ちょっ

とこのごろこういうことが困っているのよといった支え合いができるという、そういうモ

デルです。これをコーディネートする住民のボランティア、「まちプロ」という方々とそ

れを支援するのが協議体です。この三つの要素から成り立っているところであります。

28枚目の北区の例でございますが、例えば協議体のところを着目していただきますと、

二層のコーディネーターは地域包括のコーディネーター、一層は社協の職員、そして後方

支援を自治体が担っている構造をもってまして、活動のステークホルダーがそれぞれ高齢

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者関係の団体、あるいは子ども・子育て関係の団体から参画しているところでございまし

て、そういった協議体の中で2年目になりまして、たまたま委員の中で空き家を持ってい

らっしゃる方が「しもぞうハウス」といいまして、そのハウスを提供していただいて、常

設の活動場所として動き出しています。

29ページですが、じゃあそういった拠点でどういうことをするのか、交流なのですけ

れども、最終的に支え合いをゴールと考えた場合に、29ページにありますような、じゃ

あどういう支え合いができるのか、色々実践例を重ねてきたわけなのですが、一言で言い

ますと、余り重い支え合いではなくて、こういうことならできますよという、お裁縫です

とか、何かの修理ですとか、ママさんならパソコンやスマホの使い方をシニアの方に教え

るとか、高齢者なら縫いものを教えてあげるとか、そういった軽いお助けから進めており

ます。

30枚目ですが、こういった社会参加の資源、あるいは地域の居場所などですが、特に

都内の場合はなくて困るというものではなくて、むしろ、あってもなかなか多過ぎてわか

らないという課題があります。資源とニーズをうまくマッチングしていくシステムも重要

だということで、この30枚目にお示ししていますように、以前、私が国の未来投資会議

の検討会で提案したのですが、今までアナログで職員の方が紹介したりしていた地域資源

情報について、ウェブを導入することも必要だろうということで、31枚目をお願いしま

す。

この31枚目でございますが、これは大田区のモデルですが、右の四層のケーキのよう

な図は、これは下の三層、声かけから困りごとの支え合い、これは先ほどの三つの三層の

モデルなのですが、介護保険外、それ以上の介護保険の四層のサービス、あるいは資源を

どう地域包括の職員が住民、あるいは関係団体に情報共有していくかというところなので

すが、そこでウェブのシステム「見える化サイト」というのですが、ウェルモという株式

会社と3者で共同開発いたしまして、一元管理できるようなものを開発しました。その結

果、最後、32枚目でございますが、この半年ちょっとでございますが、介護保険外のサ

ービスの登録数、あるいは通いの場というものが、見える形でたくさん浮かび上がってま

いりまして、これを生活支援コーディネーターがケース・バイ・ケースでうまくコーディ

ネートする。こういったモデルをつくっているというところでございます。以上、ちょっ

と時間超過しましたが、以上でございます。

○小林分科会長 ありがとうございました。大変豊富な内容を詰めてご報告いただきまし

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た。もう少し伺いたいというところもありましたが、ディスカッションに移りたいと思い

ます。

それでは、どなたからでも結構ですので、ただいまの藤原委員のご発表につきまして、

ご質問、ご意見等ございましたらお願いいたします。

○山田(昌)副分科会長 発表ありがとうございました。大変面白い活動が、一つ男女比

を教えていただけたらと思います。というのは、例えば、5ページとか6ページなどを見

ると、典型的な高齢者って男性高齢者で描かれていて、余り女性がイラスト等でも登場し

ないというのがあって、私は東京都の男女平等参画審議会の委員もやっていますので、そ

れも含めまして、男女比、参加者の男女比とか、支援者の男女比とか、そういうデータを

教えていただければと思います。

○藤原委員 ありがとうございます。おっしゃるとおりでございまして、男性の社会参加

が色んなところで取り沙汰されておりまして、そういう意味で男性、我々も含めてなので

すが、男性にエールを送る意味でちょっと男性のイラストをあえて使わせていただいたわ

けなのですが。

○山田(昌)副分科会長 それであと、小金井市の改善でも、男性は改善するけども、女

性は改善しないというようなデータがありまして、その点に関してもちょっとコメントが

あれば、お聞かせいただきたいです。

○藤原委員 基本的に、ボランティア活動、趣味活動、こういった地域の活動はやはり9

割近くは女性でございます。一方、男性は就労に関しては、例えばシルバー人材さんです

とか、こういった就労の相談窓口なんかに来られる方の大体6割ぐらいを占めておりまし

て、やはり男性の社会参加を喚起する入り口としては、就労というのも一つの切り口だと

思っております。一方、やはり地域のいわゆるボランティア活動とか、趣味活動、これも

女性中心の活動でありまして、私どもがやっている学校ボランティアの活動なんかも約8

割以上が女性です。

先ほどの効果の面でございますが、就労の効果というところは、このデータ自体が当時

小金井市のデータというのは、1990年代の女性で70歳前後の方々がばりばりお仕事

をされていて引退というよりも、専業主婦の方が多かったような時代ですので、退職です

とか、仕事の影響というのは女性にとって比較的弱かったのではなかったかなと考えてい

ます。一方、逆に、秋田県の農村部のように、例えばご主人と同じぐらい、農作業などの

仕事をされている方においては、やはり男性と同じだけの効果が出ておりましたので、そ

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ういった地域性、あるいは仕事への取り組む濃淡というものも関係していたのではないか

なと思っております。

先ほどの女性と男性の比率の問題でありますが、これは非常に難しいところでございま

して、男性も少し背中を押して入ってきてくださる方に関しては、どんどん地域に入って

きていただくということもよろしいかと思うのですが、余り無理やりおつき合いで入って

きていただいたりしても、汗を流す際に、周りと協調性のない方も多いです。一方、男性

は、どちらかというと、NPOなんかでも組織のマネージとか運営のほうでご活躍いただ

いている場合が多いと思います。この辺は大きな課題かなと考えております。

○山田(昌)副分科会長 じゃあ、事実上やはり女性が多いという。

○藤原委員 女性が多うございます。

○小林分科会長 ありがとうございました。他はいかがでしょうか。3人手が挙がりまし

た。手短にお願いします。ではまず、室田委員から。

○室田委員 ありがとうございます。可能な社会参加活動を多層的に捉えられていて、そ

れも一つずつ丁寧に分析されているので、とても説得力のあるご報告だと思いました。僕

の質問は、このそれぞれの就労から通所サービスまで、大体どれぐらいの規模の高齢者が

参加することを前提にお考えなのかと思って、それは例えば1小学校区に1万人人口がい

るとして、高齢者は仮に高齢化率が25%で、2,500人としたときに、何となくアク

ティブな高齢者は50人とか、100人ぐらいは地域で活動に参加するというイメージは

あります。しかしそれだけだと不十分だと思うので、その何千人規模の人が参加するとい

うのが、このウェブのシステムによって可能になってくるのか、でも、恐らく色んな意味

でコーディネートで費用がかかってくるような気がするので、どれくらいの規模を前提に

考えられているのかなというのが質問になります。

○藤原委員 これは、活動によっても様々なのですね。例えば、小学校とか、保育園の活

動ですと、一つの子供が300人ぐらいいる小学校ですと、シニアボランティアの方が大

体7、8人、あるいは10人ぐらいで分担してやっていくというのが多うございます。保

育園などですと、やっぱり5、6人なのですけども、保育園の園児の数自体はそれほど多

くないかと思うのですね。多くの人が複数の施設をかけもちもしておりますので、週何回

か色んな活動場所へ行くというような活動をしています。ですので、ニーズからするとそ

れぞれの活動の内容とか、施設の規模によって、このくらいのボランティアさんが欲しい

なというようなことは見えてくるかなと思うのですね。

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先ほど、男性の問題もありましたけれども、そういった地域のどうしても教育とか、福

祉の現場ですと、やっぱり入りやすいのが女性で、余り男性の方ばかりが保育園に入って

くると、ちょっと違和感もあったりで、その辺はマッチングというのは、本当に誰がコー

ディネートするかということは、それぞれの施設内で、団体でやっぱりケース・バイ・ケ

ースだと思うのですね。

マッチングにかかわるそういう活動テーマについて、このウェブシステムは、基本的に、

今まで耳知識とか、あるいは口コミで色々活動の情報を包括さんなり、社協さんなりが集

めておられまして、それを紙ベースでファイルにしまっておられたりしているものたくさ

んあって、それを効率よくウェブで検索して出すものですので、逆にお金がかかるという

ものではなく、このウェルモさんという会社も、これを本業として収益することを想定し

ておりませんでして、ですので、ウェブ自体はそんなにお金がかかるものではなく、むし

ろ省人力のためのシステムになっているのではないかと思っております。

○小林分科会長 ありがとうございました。栃本委員どうぞ。

○栃本副委員長 ありがとうございます。3点あって、7ページ目の就労の生活機能の維

持に及ぼす意義というので、東京と秋田の男性、女性の図があるのですけれど、これは私

は不勉強なので、この下に書いてあります126ページから136ページをちゃんと自分

で読めば済むことなのですけど、これはあれですかね、一人の人を見てこういうふうに流

れていくのか、さもなくば、もう少し数が多いものを経年的に見ているのか、どちらなの

ですか。

○藤原委員 これは、いずれも地域丸ごとの追跡調査の結果でございますので、それぞれ、

例えば、小金井市で働いている男性というのが、10分の1無作為抽出した方を8年間追

跡しましたので、数十人いらっしゃると。仕事をされていない方がその2倍ぐらいいらっ

しゃるということで、その方々を個別に 1~2年置きの調査で同じアンケートで追跡して

いっている結果です。

○栃本副委員長 わかりました。ありがとうございました。そうしますと、あれですよね。

このそれぞれ1年、2年、3年、4年、5年、6年、7年というのについては、それぞれ

平均年齢は違いますよね。

○藤原委員 スタートのときは、それぞれ、同じ集団を追跡しておりますので、例えば集

団の平均年齢が70歳ですと、その2年後の調査には平均年齢は72歳になっているとい

うような、そういう形になります。

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○栃本副委員長 じゃあ、エイジコーホートでずっとずらしていって見るという。

○藤原委員 そうです。

○栃本副委員長 わかりました。どうもありがとうございます。それと次が、3点短く。

先ほどの三重県の老健協の会長さんが三重県なので、介護助手という形であるのですけど、

この左側のまんじゅう型から富士山型というやつなのですけどね、これって昔からよく使

われているのだけど、これってやはり言ってみれば、存在論と認識論でいうと、これは要

するに物の見方がまんじゅう型から富士山型に見ようという認識論に関することで、現実

の実態としての存在論ということではないと思うのですよね。だから、これは余りもう今

後使われないと思うのですけれど、その上で、今、先生のご指摘の切り札介護助手という

ことで、老健協が非常に積極的に介護助手ということをおっしゃっていまして、これは非

常に初めて、実は富士山型の中の、ちなみにこの富士山型で機能分化とかと言っています

けど、この図は全然機能分化の図じゃないのですね。介護助手というので、初めて機能分

化ということになっていまして、したがって、そういう意味では、ある意味では、今のお

話というのは風穴を開けたというか、要するに認識論から存在論に移行するということだ

と思うのですね。

あと、最後は、ちょっと長くてごめんなさい。マッチングのことなのですけどね、国レ

ベルでかなり大型の2,000万とかそういうのを使ってマッチングをするような仕組み

をやっていたりしているのですけれど、この先ほどの31ページですけれど、例えば行政

と介護事業者、あと介護事業外の生活支援サービスとかを行っている保険外サービスをや

っているところ、あとケアマネであるとか、そういうかなり双方向で、行政が入っていな

ければいけないし、一方提供しますというような介護保険外サービスをやるような、生活

支援サービスをやるようなところ、あと商店主でもいいのだけど、そういうものが組み合

わさったようなマッチングになると、双方向になって、むしろそれを開発していくことに

なるので、マッチング自身も重要なのだけど、マッチングのねたというか、事業の質とい

うか、それが双方上がっていく仕組みになるのですね。片方だけだとどうしても両方とも

こうやって上がっていくということがないので、男女のマッチングのと同じでして、片方

だけだと全然増えていかないということだと思うのですね。

あと、最後に社会参加のことでいうと、なかなか難しいことではあるのだけど、これは

色々と捉え方なのだけど、75歳以上の老夫婦世帯の老々介護なんかだと、75歳以上は

男性が介護しているのですよね。というのがありますよね。介護が社会参加とは違うとい

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うか、介護は社会参加を阻害しているという考えとかもあるかもしれないけど、やっぱり

介護ということをもう少し多様に捉えると、ということも、75歳以上の男性が奥さんの

ことを介護していて、これは拘束されているとか余り思わないでしていますので、これも

立派なそういうインフォーマルサービスというか、そういうのだと思いました。以上、ど

うもありがとうございました。

○小林分科会長 藤原委員、いかがでしょうか。

○藤原委員 介護助手に関しては、先生のおっしゃるとおりでございまして、特にやはり

仕事の切り分けというところが大きなポイントかなと思っております。どうしてもイメー

ジで、まだまだ福祉の施設の現場の方からすると、全人的ケアの視点から、仕事を切り分

けするのはもってのほかみたいなお考えもあるのですけども、具体的な話、何といいます

か、誘導からあるいは後始末まで全部それにかかわる時間をいかに専門職が専門職たる仕

事に集中していただけるかということは非常に大事なところでありまして、これは同じよ

うなケースが保育の現場ですとか、色々な様々な産業構造の中で応用できます。いかに仕

事を切り分けるかというところが大きな問題になっております。それが一つの事例かなと

いうふうに考えております。

二つ目は、先生には見える化サイトのことで、ご助言をいただきましたとおりでござい

まして、この31ページの左の下のほうに図がありますが、このサイトをつくるのと同時

に、下にフィードバックというところで、地域主体による会議とか、住民ボランティア、

実際に情報を集めるのも住民さんの、あるいは地域の協議体の力も重要です。ですからこ

ういった資源があるよというような話が出てきたもの、それを単に紙ベースでメモをする

だけではなくて、どこかに登録していくというようなもの。また、逆に、色々な他のルー

トから、あるいは隣の圏域から入ってきたような情報を今度はネット、ミルモネットとい

う、見える化サイト t を使って、地域の協議体なんかにフィードバックしていくといった

ような、そういう双方向の情報収集を推進しています。

最後、高齢者、特に男性の介護と社会参加をどうつなげるかということなのですが、こ

れは非常に社会参加をやっている中で、介護の問題というのは、いくら元気でボランティ

アをやっていましても、家族とか配偶者の介護をしながら、あるいは看病しながらという

ことは増えてまいります。先ほどの15年間のボランティアの活動なんかを見ておりまし

ても、初めは皆さん前期高齢のいきいきした方なのですが、やっぱり15年たつと、80

歳ぐらいになってくると、色々なリスクを抱えながら活動しておられます。そういう中で、

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今までほどはできなくても、ともかく会員としてつながっておくとか、あるいは介護をや

りながらも、それはそれで小グループといいますか、介護もわかるサブグループなんかで、

ちょっと違う活動をしたりというような汎用があるかと思います。長期活動の中では、本

当に介護とどうバランスをとりながら、社会活動を続けていくか、それを周りがどう支え

ていくかということは、実践とともに研究としても大事なテーマだと思っております。

○小林分科会長 ありがとうございました。山田委員どうぞ。少し手短にお願いいたしま

す。

○山田(広)委員 簡単ですけども、6ページのところで就労から通所のサービスまで、

これはきれいな姿でもって移行しているのですけども、この中のボランティア活動ですね。

これは非常に実数が少ないと思うのです。前回の分科会でもボランティア実数は少ないと

いう発表がありましたし、それから地域の支え合い、共生社会、いくつかの成功事例のご

紹介がありましたけども、まだまだなかなか難しい状況にあると思うのですね。こういっ

た取組をされている中でもって、この高齢者、元気な高齢者の中から、ここに活躍をして

くれるような人たちを導き出すような施策というか、あるいは障害となっている課題みた

いなものがあれば、教えていただきたいのですけど。

○藤原委員 ありがとうございます。やはり、ボランティア、色々な実態調査をしまして

も、ボランティアを地域でやっている方は、やっぱり10%ぐらいのものだと思うのです

ね。それに対して、我々はその次のレベルの、趣味・稽古とか、自己完結の活動をなさっ

ている方は、やはり6割ぐらいいらっしゃるかと思います。

考え方なのですけれども、高齢者の社会参加活動の場合は、多くがいい意味でどこまで

がボランティア活動で、どこまでが自分のための趣味やお楽しみかというのをいい意味で

混在しながら活動されている部分が多いのですね。

例えば、先ほどの読み聞かせのボランティアなんかでも、初めは脳トレが目的で入って

くる方もいらっしゃったり、あるいは単に朗読とか、読書が好きということで入ってこら

れたりという方がいらっしゃいます。それが、ボランティア募集となるとかなり敷居が高

くなるのですね。それを3カ月間なり、あるいは初期の研修の中で全部楽しみましょうと。

自分の健康づくりも生涯学習も、その結果ボランティアもできますよといったような。1

本だけに絞るのではなくて、ニンジンをたくさんぶら下げる結果、だんだん気がついてみ

たらボランティアもしているし、自分の健康にもなっているみたいな方が増えてくるとい

うことがわかってまいりました。

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ですので、地域の支え合いも同じなのです。いきなり支えるボランティアというと、や

っぱり敷居が高いのですけど、とにかくそこのサロンに集まって、みんなで楽しみましょ

うと。何かできることからちょっと持ち回りでやりましょうよ、ぐらいから入ると、割と

流れやすいと思いますので、敷居を広くするには、初めは我が事から入っていただいて、

それを他人事、あるいは地域のためにということに流していくというのが実践的なのでは

ないかなというふうに考えております。

○山田(広)委員 半面、長続きしないという、そういう問題が一つありますよね。

○藤原委員 やっぱり、それはプログラムによるかと思うのですが、先ほどの読み聞かせ

の団体なんかですと、やっぱり10年選手とか、そういう方もいますので、やっぱりいか

に定期的なプログラムになっているかということと、やっぱりやっている中で、それぞれ

がたくさんのニンジンを体得するというところで、一つだけですと、その目的が達せられ

なかったりとか、あるいは例えばボランティアの活動でも、活動自体はいいけども、仲間

同士のつき合いがしんどいとか、あるいは何か練習するのがしんどいとなったときに、ど

れか落ちていってしまうとやめてしまう。ですので、できるだけたくさんとまり木みたい

な魅力をを入れていおくと、10年以上続くのではないかなというふうに考えております。

○小林分科会長 ありがとうございました。やはり予定時間が少し過ぎておりますので、

この辺で次に移らせていただきます。

では、粟田委員、よろしくお願いいたします。

○粟田委員 では、私のほうは、資料4に基づいて、お話しさせていただきたいと思いま

す。

私は、「認知症とともに暮らせる社会をめざして」というテーマで、認知症のことを中

心にしてお話しさせていただきます。今日お話しさせていただきますことは、このスライ

ドにあります三つのことです。

一つは、既存の統計資料から今日どういう状況になっているか。二つ目は、私どもは、

東京都の委託研究で認知機能低下、認知症とともに生きる高齢者がどのように暮らしてい

るかという調査をしましたので、その報告をさせていただきます。三つ目は、認知症とと

もに暮らせる社会とは何かということで、現在私どもが取り組んでいることを紹介させて

いただきます。

次のページですが、今日の状況ということで、スライド4をご覧ください。皆さんご承

知のとおり、我が国の国民の平均寿命は戦後右肩上がりに伸び続けて、現在男性は81.

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09歳、女性は87.26歳、東京都のデータもこちらの青いファイルにございますが、

大体同じ数値でございます。

我が国の平均寿命は現在世界最高水準でありますが、平均寿命が伸びるということは、

長生きをされる方が増えるということでございます。5ページの図は我が国の65歳以上

高齢者の将来推計を年齢階級別に見たものでございますが、棒グラフが人口でございまし

て、折れ線グラフが85歳以上高齢者の人口に占める割合を示しています。高齢者人口は

男性も女性も大体2040年ぐらいにピークに達するのですが、85歳以上高齢者の割合

はその後もずっと右肩上がりに増え続けまして、2065年には男性の10人に1人、女

性は6人に1人が85歳以上高齢者になります。

下のグラフは、東京都について同じグラフを描いたものです。東京都については、20

45年までの推計ですが、国立社会保障・人口問題研究所の都道府県別のデータが204

5年までしかなかったので、ここでとめさせていただきましたが、同じように、大体20

40年代に高齢者人口はピークに達し、85歳以上高齢者の割合は、2040年代の後半

にピークに達するように見えますが、実はその後、いわゆる団塊ジュニアが85歳以上に

なりますので、右肩上がりに上がっていきます。

7ページですが、これは我が国の65歳以上高齢者における性別、年齢階級別の認知症

の有病率でございまして、65から74歳だと大体3から4%。75から84歳だと10

から20%。85歳以上になりますと40から80%ということです。わかりやすく言い

ますと、85から89歳だと40%。90から94だと60%。95歳以上だと80%と

いう有病率です。つまり、これはどういうことを意味しているかというと、85歳以上に

なると認知症になるのは普通のことであると。ちなみに、MCIという認知症の一歩前段

階の状態の有病率はほぼ認知症の有病率と同じであるということが世界的な研究でこれは

わかっておりますので、85歳になれば、MCIか認知症であるのは普通ということでご

ざいます。

この数値を用いて、下の8ページのグラフですが、我が国の認知症高齢者の将来推計値

を年齢階級別に計算したものです。これは、私が計算したものでありますけども、これを

見ますと、右肩上がりに認知症高齢者数は増えるのですけども、増えるのは、黒いところ

の85歳以上高齢者が増えるということに注目していただきたい。例えば、2025年の

段階では、認知症高齢者の55%は85歳以上です。2065年になると、認知症の方の

73%が85歳以上。9ページは、これは東京都で計算し直したものでございまして、こ

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れはまた2045年までですけども、構成比は、日本の構成比と全く同じで、85歳以上

高齢者、認知症のうちの、2045年には65%を85歳以上です。

10ページに、以上のことを大ざっぱにまとめてしまうと、超高齢期を生きる高齢者の

大半は認知症を生きる高齢者でございまして、認知症を生きる高齢者の大半は超高齢期を

生きる高齢者であると。

世界最高水準の長寿国である我が国においては、認知症とともに超高齢期を生きるとい

うことは普通のことであって、多くの国民が経験する可能性が高い事実であるということ

をまずは認識しておく必要があるということでございます。

しかし、超高齢期を認知症とともに生きるということは、決して簡単なことではござい

ません。12ページでございますが、まずは、皆さんご承知のように、単独高齢世帯がど

んどん増えていますが、11ページは特に85歳以上の単独世帯高齢者数の増え方が顕著

であることを示しています。女性では2015年から2045年の25年間に大体2倍、

男性では3倍近く増えます。下は東京都の数値ですが、大体同じでございます。

では、経済状況はどうかというと、これも皆さんご承知のとおりでございますが、13

ページに我が国の65歳以上高齢者の半分以上が年金のみで暮らしているということを示

しています。では年金をいくらもらっているかといいますと、14ページですが、100

万円未満の方が半分以上でございます。国民基礎年金相当ということで。でもこれは、夫

婦で暮らしていたり、あるいは貯金があれば何とかやれる可能性があるのですが、85歳

以上ということになると、先ほど言いましたように、単独世帯が多くなり、それから、最

近マスコミでも取り上げられておりますが、貯金を2,000万円貯めていても、85歳

になるとそろそろ枯渇する時期でございます。

15ページをご覧ください。ということで、生活保護世帯が増えるわけですが、生活保

護世帯全体は減少しつつあるのですけど、高齢世帯は右肩上がりで、特にひとり暮らしの

高齢者の生活保護世帯は、顕著な増加を示しています。

それでは、その生活保護水準で、ひとり暮らしで、認知症で、今の家に住めなくなると、

その経済水準で生活支援のある住まいを確保できるかというと、これも皆さんご承知のと

おりでございまして、生活保護水準で、認知症の方が問題なく住める生活支援つきの住ま

いは特別養護老人ホームぐらいで、それ以外は東京都ではなかなか厳しいという現実がご

ざいます。

17、18ページは、これは髙橋先生はよくご存じでございますが、有料老人ホームの

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入居にかかる費用は様々ですが、一般に介護つき有料老人ホームはやはり高い。というこ

とで、生活保護の認知症の方は実際に住宅型有料老人ホームに入居される方が多くなりま

す。特に、急性期病院から退院した後、住宅型有料老人ホームに入居される割合が非常に

高いのですが、低額なところもあるのですけれど、しかしながら、住宅型でございますの

で、認知症の方は介護が必要になるということになると、外づけで介護をつけなければな

りません。そうなると、やはりなかなか厳しいという問題が出てきます。

しかも、19ページ上ですが、虐待の件数が右肩上がりに上がっております。それから、

20ページでございますが、これは特殊詐欺の実態でございますが、特殊詐欺の認知件数

と被害額は横ばいに見えますが、実は、これは私は現場でもよく遭遇するので知っている

のですが、統計に上がらないような巧妙な詐欺が増えております。これは、説明すると長

いので省略しますが、色々な手を使うものだなということでございます。

ということで、21ページにまとめましたが、今日の状況は、単身・夫婦のみ・未婚の

子と親世帯、特に単身世帯が増加しておりまして、単身世帯高齢者の割合は年齢階級とと

もに増加しまして、家族による生活支援は限界でございまして、そうなると情報やサービ

スのアクセスが非常に悪くなる。さらに、生活保護水準以下の年金生活を送る単身高齢者

も増えていると。そうなると、経済的な理由などから生活支援のある住まいの確保も難し

くなるし、さらに虐待や経済被害の問題があるということで、基本的人権が侵害されるリ

スクは構造的と書きましたが、特に認知症とともに生きる超高齢者の基本的人権が侵害さ

れるリスクが構造的に高まっている状況だということを私は実感としても感じているとこ

ろでございます。

こういった問題に対して、古くから取り組んでいるNPOの活動を少しだけ紹介させて

いただきます。ふるさとの会といって、1990年代から単身の認知症あるいは障害者、

低所得の方に対して、既存の住宅ストックを使って、無料低額宿泊所、自立援助ホームで

の居住支援、それから質の高い日常生活支援などを提供している団体がありますが、近年

は高齢者が大部分を占めてきまして、70歳以上が45%、60歳以上が6割を占めてい

ます。近年は、認知症、低所得、単身でアパート・貸し家を退去される高齢者の入所を行

政から依頼されるケースが増えているという現実がございます。

ということで、こういう問題は、23ページですが、近年は国のレベルでもこれは非常

に重要な資源であると認識されるようになり、貧困ビジネス対策と同時に、質の高い日常

生活支援つきの居住支援を確保しようということで、社会福祉法と生活保護法を改正して、

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いわゆる無料低額宿泊所の条件をつくるとともに、日常生活上の支援を委託できる無料低

額宿泊所の基準、日常生活支援付き住居施設を生活保護でつくっていこうという動きがご

ざいます。これは大変意味のあることだと私は思いますが、しかしながら、一方で、この

基準ができてしまったために、居室面積の基準というのがございまして、現実にぎりぎり

で質の高い日常生活支援を提供していたNPO法人が動けなくなってしまうという、そう

いうふうなことが起こっているということがございます。細かい話は省略させていただき

ますが、24ページの下のほうに少し書かせていただきました。

ふるさとの会のケアつき宿泊所16施設のうち、平成17年開設の2施設と平成21年

開設の1施設がぎりぎりで4.95平米に満たない部屋が44部屋あるということ、うち

10室は届出済みと書いてありますが、すみません、10室とも届出済みではなくて、4

4室全てが届出済みではないのですが、これは細かい話になりますが、実はこの間、4.

95平米という基準が厳格に規定される前は、東京都との話し合いの中で、一応届出をし

ないでやっていこうということで、話し合いで届出せずに運営してきたということです。

4.95平米の基準が定められた途端に運営できなくなってしまうというようなことが起

これば、ここに今暮らしている人の日常生活支援が困難になるという問題が生じます。

では、実際は地域で暮らしている認知症の方はどうなっているのかということで、25

ページから我々の調査を報告させていただきます。この調査は東京都の高島平というとこ

ろでやらせていただきました。観察研究と開発研究というもので構成されています。27

ページですが、70歳以上高齢者7,614人に対して3段階調査をさせていただきまし

た。第1段階は郵送調査です。第2段階は会場または訪問して、認知機能診査と健康診査

をやっています。3段階目は、認知機能が低下している人に対して、医師を含む専門職チ

ームで医学的な診断等々を行っています。

この二次調査の結果を紹介します。28ページの下ですけども、認知機能の低下があろ

うがなかろうが、4割の人がひとり暮らしでございます。30ページ以降をご覧ください。

認知機能が低下している人と低下していない人の比較ですが、当然ですが、認知機能が低

下している人は手段的日常生活動作が障害されていて、身体的日常生活動作が障害される

人が多くて、主観的健康感が悪い人が多くて、運動機能が悪い人が多くて、体の病気を持

っている人が多くて、血液検査をすれば貧血の人が、これは低栄養であることがわかって

いるのですが、それが多くて、鬱病や抑鬱症状の方が多くて、社会活動には全く参加して

いないという方が倍に増えまして、そして経済問題では、年収100万円未満の方が倍に

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増えるというようなことが明らかになっています。

次に、三次調査の結果です。では実際に認知機能の低下している人のうち、認知症の人

はどのぐらいいたかということで、39ページですが、これは我々が訪問して、間違いな

く認知症だという方は4割でございまして、ではこの4割の78名の方はどうやって暮ら

しているかということですが、認知症であっても4割はひとり暮らしでございまして、4

1ページに行きますが、ではこの方たちは認知症だと診断されているかといいますと、医

療機関で認知症といわれている方は4割でございまして、42ページは認知症というだけ

では診断にならないのですが、実際にアルツハイマー型認知症とか、血管性認知症とか、

ちゃんと医学的診断をされている方は、このうちの28%でございます。

さらに、43ページですが、介護保険にアクセスできている人は4割ということで、4

4ページにどういう支援が必要かということを我々が一人一人調べておりますが、これは

カラーじゃないのでわかりにくいのですけれども、要するに複合的な社会支援ニーズがあ

る方がたくさんいらっしゃる。これは濃い色と薄い赤に分けているのですが、複合的社会

支援ニーズがあるけれども、支援にたどり着いていない人が大勢いるというグラフでござ

います。

45ページは、実際に訪問した調査員がどういう状況で暮らしているかということをメ

モしてもらったものですが、なかなか厳しい状況で暮らしているという、特にひとり暮ら

しの人がたくさんいらっしゃるということがわかります。

47ページでございますが、要するに、認知機能の低下が生活機能の低下とともに、身

体的・精神的健康状態の悪化、社会的孤立、経済的困窮と密接に関連していること。その

ような身体的・精神的・社会的リスクの複合化が認知症の初期で認められる。なぜ初期か

というと、実は調査に協力してくれた方はほとんど全員が軽度認知症ということでありま

す。そして、複合的支援ニーズが存在するにもかかわらず、必要な支援にアクセスできな

い高齢者が実に多いということで、大都市には家族による生活支援が得られにくい高齢者

が数多く暮らしているけれども、認知機能の低下が社会的交流の減少や経済的困窮とも関

連して、情報や社会支援サービスへのアクセスをさらに困難にさせている可能性が高いと

いうことがわかります。

認知症というのは、脳の病的変化、認知機能障害、生活障害だけではなくて、精神的・

身体的・社会的な様々な問題が複合的にあらわれやすい状態なのだということを理解する

必要があります。

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それでは、どうすれば認知症とともに暮らせる社会をつくれるのかということです。5

0ページ、これは我が国の認知症支援のためのローカルシステムでございまして、医療サ

ービスと介護サービスと地域包括支援センターでこのようなネットワークがつくられるこ

とになっております。

このようなネットワークがあるのですが、このネットワークがあまり機能していないと

いうこともございまして、国の認知症施策では、認知症初期集中支援チームという多職種

協働チームを全ての基礎的自治体の責任で配置することが定められています。

この事業とも深く関連しているのですが、私どもはこの「認知症とともに暮らせる社

会」を創出するための地域ケアモデルということで、コーディネーションとネットワーキ

ングという二つの考え方を基礎にして、地域社会をつくる試みをいたしました。

コーディネーションというのは、本人の視点に立って、生活の継続に必要な社会支援を

統合的に調整すること。ネットワーキングというのは、必要な社会支援の利用・提供を可

能とする地域社会の構造をつくることを意味します。53ページですが、コーディネーシ

ョンというのは大変なスキルが必要でございまして、信頼関係の形成、総合的アセスメン

ト、情報共有、課題解決に向けた多職種協働、本人の意思を尊重しながら社会支援の調整

という、この5つのプロセスの重層的、反復的実践が必要です。

このプロセスは意思決定支援のプロセスでもあります。これによって、54ページ、必

要な医療、介護、居住支援、生活支援、家族支援、経済支援、福祉・権利擁護支援のソー

シャルネットワークを構築しているわけですが、ところが先ほど言いましたように、地域

には居住支援、生活支援が非常に不足していて、特に生活支援の不足は顕著なものでござ

います。55ページ、生活支援というのは、広くは尊厳ある自立生活を営むための社会支

援を意味しており、通常は家族によって提供されているもので、「家族的支援」とも呼ば

れるもので、公的な給付サービスではカバーされにくいものです。56ページにあります

ように、その範囲は非常に広範でございまして、57ページ、したがって家族にかわる

「生活支援の源泉」を地域に求めなければいけないという現実があるのですが、これは本

当にできるのかという、非常にチャレンジングな問題でございます。しかしこれをやらざ

るを得ないだろうということで、私どものほうで一つの仮説を立てまして、以下の五つの

機能を持った地域の拠点をつくることが、生活支援のイノベーションとネットワーキング

を促進するのではないかということをスタートさせました。

この5つがなぜ必要なのか。それは長い歴史の中で考えられてきたものなのですが、そ

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れは省略いたしますけれども、まず1の居場所としての機能というのは、58ページにあ

りますが、これは認知症とともに暮らせる社会の創出という開設理念のもと、認知症の有

無にかかわらず、障害の有無にかかわらず、誰でもが居心地よく自由に過ごせる合理的配

慮のある空間をつくるということでございます。

2番が、59ページですが、ここは相談に応需できる機能をつくろうということで、認

知症を含む多様な生活課題をもって暮らす人が気軽に相談に来られ、必要に応じて適切な

社会資源につなぐことができるということ。実は、ここに定年退職した経験のある保健師

でありますとか、精神保健福祉士でありますとか、そういう人たちに来てもらって、それ

から認知症初期集中支援チームの医師にもときどき来てもらって、これをやると、不思議

なことに、次々にこれをやるという方たちが集まってくるということがわかりました。

60ページですが、ここで差別・偏見の解消、社会参加の促進ということで、ともに学

び、ともに活動し、ともに楽しむ機会をつくること。これは、認知症の人もそうではない

人も一緒に、認知症の勉強をしたりとか、色んな楽しみの機会をつくったりしています。

61ページで、ここで人材を育成する機能も果たそうということで、認知症と人権にフ

ォーカスを当てて、研修会を定例的に開催しております。さらに、連携を推進する機能と

いうことで、こういうコンセプトで居場所づくりの活動をしているのは地域にはたくさん

ございまして、こういったことで横のネットワークをつくりながら、お互いの生活支援の

幅を広げていこうと。さらに、これはUR都市機構の方に協力していただいているのです

が、URの方もこの活動に非常に関心を持っていただいて、写真がちょっとありますけど、

これは認知症のご本人とUR都市機構と一緒に認知症と暮らせるまちをつくろうという会

議をやっているところです。

実際、こういうことをやると、63ページ。色々な方たちが集まってくるものだという

ことがわかったということです。

64ページは、中間的アウトカムですけども、この地域の拠点を核とするコーディネー

ションとネットワーキングというのは、社会支援の統合的利用を促進すること。人々の認

知症についての意識を高め、認知症とともに生きる人々の人権についての意識を高めるこ

と。認知症とともに暮らせる社会の創出に向けた活動と多様な生活支援のイノベーション

を促進するということがわかってきました。これはまだ論文になっていないのですが、学

会レベルで発表させてもらっています。

65ページ以降は、追加の話です。実は2014年に認知症の当事者が日本で初めて、

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認知症ワーキンググループという当事者の組織をつくりまして、66ページ、今我々と一

緒に研究をしております。そして、認知症の方が地域づくりに参画する一つの方法として、

本人ミーティングという方法を編み出しまして、次お願いします。67ページですね。こ

れは認知症のご本人が、認知症の人たちのために、認知症とともに生きるためのガイドブ

ックをつくったりしております。

認知症になると、何もできなくなるというわけではなくて、今認知症は早期に診断され

る時代でございまして、認知症とともにそれなりに自立して、いきいきと生きていくこと

を支援する社会資源もございます。おそらくそうしたことが認知症の進行を抑制する効果

もあるのだろうと思われます。実際、この高島平においても、68ページ、本人ミーティ

ングを行っておりまして、本人とともに地域づくりの活動を始めております。

69ページ、ただいまのお話しさせていただきました活動は手引きとしてまとめてあり、

東京都福祉保健局のホームページ上から入手できるようになっています。以上でございま

す。

○小林分科会長 ありがとうございました。大変興味深い取組みとデータをご紹介いただ

きました。

では、また15分くらいディスカッションにしたいと思います。ご質問、ご意見等ござ

いましたらお願いします。

○和気委員 貴重なご報告をありがとうございました。和気です。1点お伺いしたいので

すけれども、先生がご提案なさっている生活支援の源泉を地域に求めるということで、以

下、五つの機能を持った地域の拠点をつくるということでご提案をいただいているのです

けれども、これは例えば、地域包括支援センターなどが、様々なここに書かれているよう

な活動を既にやっていて、全て全部やっているかは別としても、同じような機能を果たす

べく、様々な他の業務と合わせてですけども、日々取り組まれているという実態がある中

で、先生のご提案はそれとは違う新たな機能を持った認知症カフェというのがありますけ

れども、何かそういう新しい機関が必要ということでご提案なのか、あるいは、今ある組

織の中にこういう活動がもっと十分にできるような取組が必要だという点でのご提案なの

か、その点ちょっと1点お伺いしたいというのと、もう1点は、これは感想なのですけれ

ども、最近私の大学の近くの町田市とか、八王子市で、認知症の方の一応デイサービスと

いう形をとっているのですけれども、ご本人たちが就労するということを目標に、社会参

加、ケアされる存在ではなく、ほんのちょっとサポートしてあげればまだ色々なことがで

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きるという、特に男性の方などたくさんいらっしゃって、そういう方に授業なんてものに

も来てもらって、色んな学生に講義してもらったりというような取組が増えてきたなとい

うことで、ここに書いている当事者本人ミーティングですとか、そういう考え方と近いと

思うのですけれども、認知症だからといって、ただデイサービスで訓練するのではなくて、

生活者として、ちょっとしたサポートがあれば、まだまだ色々なことができるということ

も、特に専門職にそういう考え方がやや欠如して、どうしてもケアする存在というふうに

なりがちなので、そういうところの意識改革とか、環境整備というのも先生のお話と重な

ると思うのですけども、ちょっとそれは感想です。すみません。

○粟田委員 和気先生、本当に重要な質問をありがとうございます。私も地域包括支援セ

ンターの本来の仕事はこういう仕事だと思っているのですね。ところが、地域包括支援セ

ンターはこれができません。実際、我々の事業は、地域包括支援センターの隣につくって、

地域包括支援センターを補完するようにして機能しているのですね。

なぜ地域包括支援センターがこういうことをできないかということを説明すると長くな

りますけども、まず地域包括支援センターは居場所ではないのですね。窓口でございまし

て、窓口にはひとり暮らしの認知症の人は来られないのですね。窓口は用がないと来れな

い。用がなくても不安だから来るのが居場所であります。ひとり暮らしで不安で仕方がな

いから。

それから、地域包括支援センターは残念ながら、家族にかわる日常生活支援はまずそこ

では提供できません。では地域の中の日常生活支援のネットワークをつくり出せるかとい

うと、努力はしています。努力はしているし、それが業務だというふうに認識しています。

でもできないのが現実です。そんな余裕はセンターにはありません。したがって、板橋区

では、地域包括支援センターの横でこういうことがやれるような居場所をつくらなければ

いけないのではないかという認識も生まれつつあります。しかし、そう簡単にはできませ

ん。

したがって、地域包括支援センターが本来やるべきことだったのに、できないという現

象が非常に重大な問題なのだというふうに私は認識しております。ちなみに、認知症初期

集中支援チームもそうであって、これも地域包括支援センターの本来業務なのです。しか

し、できないから、認知症初期集中支援チームなるものができたという背景があり、これ

は極めて重大で、つまり地域包括支援センターができた2006年以前から、私はこの問

題にずっと取り組んでいるのでよくわかるのですが。それからもう一つ、町田のBLGと

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か、認知症の方が就労できるということを示したのは、町田とか、あとは富士吉田とか、

それから大牟田とかいくつかありますけども、そういうことができるような支援をちゃん

としていかなくてはいけないということで、その起点が、私はこの本人ミーティングだな

と。とにかく認知症の当事者同士が主体として集まれる場所というのをつくることが大事

だと。BLGは、まさに本人ミーティングの拠点でございますので。

それから、ちなみに、認知症と認知症でない境界は実はないんですね。連続線上でござ

いますが、これから認知症になる人たちもやってきますが、そういう人たちはこれから認

知症になるという認識をもって活動してくれるんで。実際2年間やっていると認知症にな

る方が確かにおります。なるけれども、最近ニューディメンシアという言葉がありますけ

ども、昔のディメンシア、認知症とは違って、それなりに自覚をもって自立して活動でき

る認知症の人が、そこから出てきているというようなことがございます。

ありがとうございました。

○小林分科会長 ありがとうございました。他はいかがでしょうか。3人から手が挙がっ

ています。では、山田委員どうぞ。

○山田(昌)副分科会長 大変興味深いというか参考になる発表をありがとうございまし

た。私も家族がいない、いわゆる高齢者認知症がこれから増えてくるということは予想し

ているんですけども、今はまだ家族がいる高齢者が多いと思いますので、つまり高齢者が

増える以上に家族がいない高齢者が今以上の規模で増えてくると思うんですが、その際に

十分間に合うんでしょうか。というのが、どの程度の見通しをもっているのかなというの

が第1点です。

あと第2点が、ちょっと前半部分の付加的なものなんですけれども、85歳で2,00

0万円使い果たした後、どうなるんでしょうかというのが、多分多くの人の不安というの

はそこにあると思うのです。つまり今まで中流生活できていたのに、お金が枯渇してしま

ったり、何か費用がたくさんかかってしまったのでお金がなくなっちゃった高齢者、つま

り日本社会は最低限の生活は保障されますけども、今まで普通に暮らしていた人が最低限

に落ちちゃったときに、どうなってしまうのかというのは多分不安の源泉だと思うんです

けれども、実際にそういうケースとか、先生のご専門じゃないかもしれませんが、もしあ

れば簡単にお願いできますか。

○小林分科会長 2番目のご質問は、多分駒村委員のご発表の後で議論をした方がいいか

と思います。活発な議論になると思います。

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○山田(昌)副分科会長 ちょっと12時ちょっとでいなくなるんですけど、いいです、

前半で結構です。

○粟田委員 そうですね、前半の質問、先生おっしゃるとおりですね。今、ひとり暮らし

の認知症の方は、ほとんど別居家族がおります。別居家族は、本当にキーです。キーなん

ですけど、別居家族がもうぎりぎり難しくなっているという状況で、我々は、その現実に

は、その別居家族とともに、認知症の方がそれなりに暮らせる形をつくっているというこ

とになります。しかし、先生実はほとんどの場合はぎりぎりになってやっぱり救急事例化

することが非常に多い。ただ、救急事例化するのですけれども、我々はそういうリスクを

考えながら支援しているので、いわゆる何もわからない状況で救急事例化するのではなく

て、秋山さんの活動もそうですが、暮らしの保健室的に、ここにぎりぎりになってくると

自分から来る人もいます。そして、それをきっかけに救急受診する方とかもおります。た

だ、そこから、もう一回自宅に戻れるかというと、これも結構厳しい壁になっております。

それにしても、この活動があるので、そう簡単には施設入所にならないと。何とかかんと

か、ぎりぎりまでやっていく。ただ、いつまでも永遠に生きるわけじゃないので、やっぱ

り88歳、90歳という年齢に達すると、それなりになかなか厳しい状況があって、果た

して在宅で最後までみとれるかどうかというのは、これからの我々も縦断的に見ていかな

ければならない。それは秋山さんのところでかなり経験があるのではないかと思いますが。

そういうことでこれからも継続的に検討しなければいけない状況です。

後半の問題、非常に重要なのですが、これは後ほどということで。

○小林分科会長 では高橋委員、どうぞ。

○髙橋委員 これからの議論でちょっと若干藤原先生と粟田先生のお話で検討していただ

きたいことがあるんですが、先ほどの和気さんの地域包括支援センターでもそうですが、

地域包括支援センターへの期待がややもすればないものねだりになりがちのところがある

ような気がします。地域包括支援センターって、現実の運用は社会福祉法人に委託してい

ることが多いようですが、もっとヘルスにかかる相談体制も充実させる必要があると思っ

ています。保健師の確保が難しいので経験ある看護師が配置されているのですが、必ずし

も地域からの相談に対応しきれないことが多いと聞いております。地域包括支援センター

は保健医療福祉介護にまたがる包括的支援を推進しようとしたのに、委託しっぱなしのと

ころが多いようです。いわゆる今までのヘルスケアの政策と、それから介護の政策と、そ

れからパーティシペーション、社会参加の政策をインテグレートしなければいけないと、

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それを舞台装置として切り回す行政に、実はその能力が十分ではない。これは人事の問題

もあり、包括的支援を政策として運用する専門性が不足しているのです。

それから、東京都も責任があると思っています。いくつかの区から同じような話を聞い

ているのですが、衛生行政を担う医療職が東京都から派遣され、部長級のポストに就くこ

とが多いようですが、この方々が従来型の衛生行政の枠を一歩も出ないため、保健師を地

域に出て活躍してもらうことにも抵抗し、また、保健と福祉の相互乗り入れにも抵抗する

ことが少なくないようです。そのため、地域のニードに応えるための施策の推進が難しく

なっているのではないかと考えます。実はそういうことを含めて、こういうこれから従来

型ではない新しいコーディネーション型のシステムをつくる上で、行政がどういう役割を

果たすべきかということについてのビジョンを今、市区町村はごく限られた問題意識のあ

る人たちがもっているんですが、それを色んな意味で阻害をしていることがたくさんある

ようです。一方で、医師会や社会福祉協議会が連携しているところは非常にやりやすいよ

うです。

それから、もう一つ、秋山さんから後で発言いただきたいんですが、秋山さんが展開し

ておる暮らしの保健室というのは、まさに今日出てきた議論で非常に戦略的な場ではない

かと思います。行政機関よりはるかに地域の人々の課題に対応できている。また、地域包

括支援センターに機能を補完できる可能性が大きいのです。それが既存の地域資源とどう

いうリンケージを張っていくかという、そこら辺のことは多分、秋山さんのほうからお話

をいただけると思うので、そういうことを含めた議論を、ぜひ起草のレベルで検討してい

ただきたいし、提案をしないとちょっと今、とりわけヘルス行政の、要するに旧来型公衆

衛生では、もはやなくなりつつあるにもかかわらず、古めかしい公衆衛生じゃないかと揶

揄したくなるような発想で、実は意識が進歩していないという、現実にあっていない。こ

れは色んなところでそうだと思います。先ほどの低所得者のひとり暮らしの話もそうです

が、ある意味では行政が長い間、不作為だったんです。

それから、国の責任は大きいです。やっぱり社会手当をきちんとつくる、生活保護を補

足給付型にしなかった。これが最大の問題だと思って、これはだけどここで議論する場で

はないので、非常に憂鬱な議論ですが、そういうことを含めて、それを80歳の先ほど言

ったひとり暮らしの国民年金もおぼつかないような人たちのところに集中的に問題があら

われてきて、逆にそれを支援する組織を貧困ビジネスと呼んで、動きが取れなくなる人が

いるという、そういう構造があって、そこら辺のことをぜひ今後ご検討いただきたいとい

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う、いやいやしゃべり過ぎてごめんなさい。

○小林分科会長 この課題は、時間がありましたら駒村委員のご報告の後のディスカッシ

ョンで深めたいと思います。

では栃本委員、簡潔にお願いします。

○栃本副委員長 短く3点あるんですけど、一つはそれほど大きな問題じゃなくて、後の

二つというのはすごく大きくて、簡単なほうは改正後の生活保護法における日常生活支援

住居施設に関することなんですけれど、これは基本的にソーシャルワーク機能を、要する

に行政が無低のほうに委託して、サービスもやってもらうという組み立てになっているか

ら、こういう形にせざるを得ないという形になっているわけですよね。従って、ある意味

ではそういう形じゃない形での無低のあり方ってあると思うんですね。現実問題として、

横浜でもそうだけれど、無低に入ってこられてる、もともとサラリーマンで、この間のデ

ータ、これから非正規労働の人が高齢化すると生活保護が、あれひどいデータだけど、3

0兆とか40兆の、とんでもないと。それは別として、要するに経済変動の中で無低のほ

うに行っちゃってる人がいて、その人たちに対する無低の中での支援というのは、やはり

生活保護法の中でサービス付きという形でこういう形になっているんだけど、それ以外で

も必要なんですよね。実際やっているわけですよ。だから、その部分を貧困ビジネスと言

われない形で、そういう形じゃない形で、実際に入居料をとってやりますから、その部分

のテクニカルなやり方というのは、まだ可能性があるんじゃないかと思うんですよね。

あと2点は、もっと後ろのほうの、先ほどのお話もありましたけれど、五つの機能とい

うのがあったと思うんですけどね、57ね。これはもう本当極めて重要な提案で、これは

もう切り札になると思うんですね。それで、地域丸ごとの関係で地域包括支援センターが、

みたいな話があるけど、全く国の審議会の中でもそんなことをおっしゃっている場合があ

るんだけど、全くあり得ない世界で。むしろ従来の、色々細々とした地域の総合支援事業

とかありますよね、ああいうものね。ああいうものを整理すべきなのね。その上で、この

五つの機能をもったものをつくっていくということが極めて重要だと思います。だから、

これはもう本当東京都の審議会、これの提案の中でもすごく重要な柱になるし、これは相

当すごいポテンシャルを持っているものだと理解しました。

最後に、私先生の最後のところ、本人何とかというのがあったと思うんだ、もっと後の、

60ページのね。認知症の本人ミーティングに関する研究というので、私その数ページ後

に出てきます、老健事業、27、28にされていますよね。私、あれ全部報告書読んでい

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るんですよ。現在、認知症対策室で行っている様々な認知症施策とか、あと大綱とか色々

出ましたよね。数値目標を定めないと何とかという、ああいうナンセンスな悩みのことが

ありまして、この関係というのはむしろ、極めて重要な研究だと私思っているんですよ。

だから、27、28でもっとその後、今先生31ぐらいかな、引き続き、この領域を開拓

的にしていただくことが極めて重要ですし、これ自身も東京都の施策のあり方という形で、

現在の認知症対策室が行っているような、ちょっとかなり、相当課題があることは確かな

ので、もっときちっとした、地に足をついて、なおかつこういうエビデンスがあってとい

うものをどんどん提案していく、真っ当な話といったらあれだけど、提起していくことが

必要だと思いますよ。

○粟田委員 この二つについて、一つは先生おっしゃるとおり、私も地域包括支援センタ

ーはスクラップ・アンド・ビルドしなきゃいけないということをずっと言い続けており、

特に総合事業と認知症施策事業は全く違う筋で行われているんですね。東京都の中でも違

うんですけど、末端でも違うというようなことがあって、しかし対象が同じだという。両

方とも軽度認知症の人を対象にしています。全く違う事業で。従って、居場所づくりが二

つの軸で行われるので変なことが起こってしまう。

それから、先生、後半の話ですけど、28年、29年で我々この研究事業をやりました

けど、30年、31年、今年もですけど、日本認知症本人ワーキンググループに受託して

もらって研究するようになっています。今や認知症の人たちの組織が老健事業を受託でき

るようになり、継続的にやっているんですね。その報告書も見ていただければと。ありが

とうございます。

○栃本副委員長 あれは重要ですね。見させていただいているところです。

○粟田委員 ありがとうございます。

○小林分科会長 ありがとうございました。かなり重要な今後の組み立てに関する論点が

出てきたと思いますが、後のディスカッションで深めたいと思います。

それでは、駒村委員の報告をお願いいたします。

○駒村委員 慶應義塾の駒村でございます。きょうは金融ジェロントロジーというキーワ

ードでお話をさせていただきたいと思います。

最初に、私は経済学が専門で、こういう福祉の計画に参加させていただくわけですが、

最初にお願いしたことは、経済とか金融という言葉にどうかアレルギーをもたないでいた

だきたいと存じます。今日の話は、どちらかというと金融機関のほうで話すことが多いん

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ですが、認知機能が落ちてくる高齢者が急増するという状態の中で、どういう問題が起き

てくるのかということに、実際の中ではいち早く気がついて、私にこういう機会をいただ

きまして、東京都に感謝したい思います。

生活の豊かさとお金の豊かさというのは、二つとも維持しなければいけない。小田原に

行くと、北条家の色々な物が残っていておもしろいシンボルもあるんですけども、禄寿応

穏というのは当時の、500年前の北条家の旗頭でした。「ろく」というのは家禄、「じ

ゅ」というのは寿。つまり、政府としては500年前から健康の健やかさを目指すのと同

時に、やはり経済的な豊かさも目指さなければいけないと、これが政府の役割であるとい

うことでした。あるいは二宮尊徳神社に行くと、道徳のない経済は害悪であり、経済のな

い道徳というのは夢物語だということも書いてあります。この道徳部分を福祉に置きかえ

ても、同じようなことが言えるんではないかと思います。その道徳のない経済を追求しな

いように、金融機関にはふだんから、この高齢期における資産管理に臨むに当たって、あ

なたたちはどういう姿勢でいなければいけないのか、あなたたちはふだんどう見られてい

るのかというのをちゃんと意識してくれということを強調したいと思います。従来型の高

齢者、若年者関係なく、判断力が落ちた、あるいは十分リテラシーのない人に対して、金

融商品を手数料目当てに売っていく、それとか回転売買を進めていくということを進めて

いけば、日本の資産形成はますます遅れていきますよ。特に高齢期における資産管理にお

いては判断力が落ちた人とおつき合いする以上、高い倫理性と、それから高齢者の資産が

増えること、あるいはそれをうまく使えるということに対しての報酬をもらうというほう

にビジネスモデルを変えなければいけません。そういうことが金融庁のレポートの中には

書いてあります。

それから、自助・公助がよく、これは経済の外で福祉の人は対立概念として見る方も多

いですけれども、自助と公助はともに必要なものです。例えば、先ほど生活保護の話が出

ましたけども、私は、生活保護基準の部会長を厚生省のほうで努めていますけれども、こ

の基準の見直しは基本的には一般世帯の消費動向に連動することになっています。従って、

経済力が落ちて、働く能力が落ちて、そして貯蓄して投資することはできないという社会

になれば、当然ながら消費動向は下がりますので、自助のほうが落ちてくる。自助と公助

は連動しているので、公助も下がってしまう。自助と公助を分離して話して、自助だ公助

だと話をしても意味がないと思います。

それから、きょうのお話も金融という言葉がついてきますが、先ほど髙橋先生からお話

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があったように、各部局をばらばらに、金融についてはうちの部局の話じゃないよと、ば

らばらに話をすると政策として一体性がなくなる。金融庁のレポートの中に、非正規や中

小零細企業の老後の資産形成についての思いが足りなかったと、それは金融庁の責任では

ないと思っているかもしれませんけど、その記述がなかったところが一つ課題だと思いま

す。逆にこちらから、福祉のほうから見て、お金の管理の話はうちの仕事じゃないよとい

うことであれば、きょうのお話は余り価値がなくなってしまうだろうと思います。

では、内容について、まず金融ジェロントロジー、ファイナンシャル・ジェロントロジ

ー、この言葉自体は初めて聞く方もいらっしゃるかもしれません。慶應義塾はWHOと世

界経済フォーラムと、4年前にシンポジウムを行いまして、高齢化の問題を議論しました。

通常、高齢化の問題、きょうのように認知症介護のコストの問題、間接費用を入れると十

数兆から二十兆ぐらいまで増えていくだろう。直接コストじゃなくて間接費用も入れれば、

そのくらい増えていくことになります。認知症は様々な病気の中でも見守るというコスト

を考えれば、最も高コストの病気になり得るというようなことも議論しました。ただ、も

う一方で高齢者に資産に偏っている状態で、その資産を持っている方が認知機能が落ちて

いくということは経済、社会、本人に対してどういう意味が出てくるのかということを、

初めて国内で議論したのが、この慶應におけるWHOと世界経済フォーラムの研究会であ

ったわけです。このファイナンシャル・ジェロントロジーの言葉自体、アメリカから出て

きた言葉であります。アメリカの、豊かな層の個人的な資産アドバイザーの一つの分野と

して、ファイナンシャル・ジェロントロジー、金融ジェロントロジーという言葉があった

わけでありますけれども、これを日本に持ち込んだ場合に、より高所得者、高齢者に資産

が偏っていると、そして急速な高齢化が進んでいく。さらに、これを学問的にどういうデ

ィスプリンから整理していくのかということを考えると、やはり医療、医学、老年学、脳

神経科学の研究蓄積をきちんと社会経済システムのほうに反映させるということが必要に

なってくるだろうと思います。そういう意味で従来経済学が想定していた、本人は合理的

な判断ができる人を想定して、市場メカニズムや政府のルールをつくってきたわけですけ

れども、そうではないんだと。本人の判断力は年齢とともに変化していくんだ。それを想

定して、政府は市場のルールなり、社会の仕組みを考えていかなければいけないよね。そ

ういった中で金融機関は、ただ字を大きくして、丁寧にわかりやすい説明だけをして、後

は説明終わりましたから、この金融商品を買ったのは本人の責任でございますという、そ

の形式的な対応で許されるのかということになります。高齢者の心身の、特に心理的な変

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化部分をよく見定めて、理解した上で、その金融資産の管理、サポートをやっていかなけ

ればいけない。そういう意味では、まさに金融と福祉の連携と、金・福連携といったもの

が、これから必要になってくる。そして、地域社会でお金がなくて暮らしていける人はい

ないわけでありますので、特にこれから在宅が増えてくると、在宅で過ごしていく高齢者

が増えてくるということになれば、医療と介護だけでは生活できないわけでありますので、

お金の管理、つまりお金の介護、お金のケア、こういったものを誰がやるのか、どういう

ふうにやっていくのか、ひとり暮らしの方はどうするのか。しかもお金の問題というのは

家族内で非常にセンシティブな問題でありますので、これをどうしていくのかとか、かな

り議論としては遅れている状況だと思います。

では次のページ、3ページ目に行きたいと思いますけども、既に学問的には行動経済学

という学問があって、人間の心理的な変化が経済行動にどういう影響を与えていくのかと

いう研究分野は、もう既にあるわけですけれども、私はさらにこれに一歩進めて、加齢要

素、つまり行動経済学の研究というのは、実は頭がぴかぴかな大学生を実験台にしてどう

いう行動をやるかとやっているんですけれども、それに対して加齢要素を加えたらどうな

るか。特に認知機能の変化が直接、様々な技術的に測定できるようになったと、こういう

経済行動やこういう意識決定をやっているときは、脳のどの部分を使っているか、脳のど

の機能が低下すると、どういう行動バイアスが出てくるのかと、これを神経経済学という

言葉になってきています。これは日本でそれほど余り多くはありませんけども、神経経済

学と。私は行動経済学と神経経済学一緒に、隣接分野でありますので、これについて加齢

要素を考慮した行動経済学と、それをディシプリンと、学問上の方法論として金融ジェロ

ントロジーの中に応用していこうというふうに今、主張しているところであります。この

辺はかなりオリジナルの部分でありまして、他の国の研究云々、ただ素早くこの研究をレ

ビューすると、神経経済学という分野に深入りします。それから、この分野は当然ながら

慶應義塾の老年学やっている先生方と信濃町の三村先生という脳神経科学の先生方との連

携研究ということになっております。

4ページ目と。認知機能というのはどういうものなのかということは、ここで説明して

おりますけれども、金融庁の市場ワーキングのところで一緒に報告書作成にもおつき合い

いただいた、京都府立の成本先生からのスピーチがありまして、認知能力が落ちてきてい

る、あるいは認知症に向かってきているというのは、彼の研究レビューによると、2.6

年ぐらい前から自分の認知機能の低下自体を把握できなくなってくるということです。う

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ちの親も80超えたんで、どうしようかと、老後の問題とか相談するんですけども、「ま

あいいからと、認知症になってから考える」と言われて、ちょっと待て、認知症になって

から考えても困るし、多分、認知症になっている方、認知症に向かっているかどうか、す

ぐにご自身で判断できない。子供でも、家の中で1年や半年に一遍ぐらい会ったって、ど

のぐらい落ちているかってなかなかわからない。そういった社会の中で、高齢社会という

のは判断能力の落ちた方が非常に増えてくる。これは自動車の運転の問題だけではなくて、

金融市場においてもこの人たちの行動、例えば、何度も何度も銀行へ来て、パスワードを

忘れた、通帳を忘れた、お金取っただろうというような形でクレームに来る方も増えてい

ると言われています。現代社会は本人が十全な認知機能があるということを想定したルー

ルになっておりますので、そういう認知能力の落ちた方が増えていると想定していない社

会になってきています。そういう人があらわれたら、成年後見の中で対応すればいいだろ

うと思っているのかもしれませんけれども、その中間の、先ほども曖昧なグレーゾーン部

分がこの方にどう対応するかというのが現在全く遅れているという状態であります。

では、5ページのほうに行きたいと思います。これは、もうきょう今までお話があった、

75歳以上人口が二こぶで増えていくということで、一回山があって、もう一回下がって

また山があるという構造になっていると。これから増えるのは75歳以上人口です。

それから、資料6の下のほうは、これは政府の統計は、実は70歳以上とか65歳以上

で様々な統計を一くくりにしていますけれども、人口の3割、4割になる人間を一くくり

にどうするんだと思います。そこで75歳以上、特に認知症の発症率が上がってくる75

歳以上にフォーカスして、この人たちの金融資産がどうなっているんだろうかというのを

見たのは、それからリスク性資産の保有状況を見たのはどうなっているんだろうと。75

歳以上を抽出する形で再分析をした、全国消費実態調査の個票にさかのぼって再分析をし

たという結果がこれであります。だから、一般に発表されていないやつです。

さらに、この数字を手がかりに6ページを見ると、65歳から74歳で金融資産が2,

000万円ぐらいでピーク、平均値です、これは。平均値と中央値を区別して議論しなき

ゃいけないんですけど、これは次の作業に入るために平均値だけ見せていますけれども、

金融資産は高どまりしていると、それほど取り崩していない。それから、危険性、リスク

性資産の保有率も高齢者のほうが高いと。これはもう当たり前の話で、資産がないと分散

投資はできませんので、若い人よりも多いと。これは経済学的には必ずしも正しい選択で

ない部分もあるんですけれども、そういう状態になっている。

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7ページのほうを見ますと、これから推計すると、75歳以上の方が保有する金融資産

はどのぐらいあるかというと22%、今、全金融資産の22%ぐらいだろう。人口構成で、

この変化を見ると、恐らく3割ぐらい、将来的には金融資産を高齢者が、75歳以上が保

有するだろうと。そうすると、現在大体1,800から1900兆円の家計金融資産です。

その22%。つまり、22%のうちの、仮に20%から25%の方が仮に認知症であると

考えると、1,900兆円のうちの5%相当ですから、100兆弱という金額になってく

るわけですね。さらに、2030年から40年ぐらいになると、このままの金融資産残高

のままであったとしても、日本が全く経済成長もしないで金融資産が増えないという想定

であったとしても、この辺で高齢者の金融資産のシェアは30%、このくらいになると恐

らく75歳以上の方の認知症は3割から3割5分弱ぐらいまで来るとすると、金融資産の

10%ですから、200兆弱というのが認知症の方によって保有される可能性が出てくる

と。ただ、これは非常に粗い数字なんで、私は口頭で説明することが多いです。まだまだ

この金融資産の定義を色々調整しなきゃいけない部分があるので、大ざっぱな数字です。

ただ、先ほど粟田先生の認知症の保有されている高齢者の方、東京どのくらいになるのか

というので、ピーク時で70万人ぐらいだったと思いますけれども、仮に70万で一人平

均2,000万持っていたら、これは掛け算を間違えてなければ14兆円ぐらいかなとい

うぐらいになるので、高齢化の率は低いというものの、東京は高齢者数急増する地域であ

りますので、それなりの深刻な問題が出てくるだろうと。

ちなみに、都道府県別の金融資産残高を見たのが8ページです。これを見ていただくと、

地域によって金融資産残高がかなり違うということになります。5万サンプルでやってい

ますので、推計誤差は当然ありますけれども、一番低い沖縄と、一番多い三重は、大体3、

4倍の差があると。それから、全国で見ると、平均値は2,000万ですけれども、中央

値は大体1,000万ぐらいということになります。ちょうど並べていって真ん中に来る

ひとは1,000万と。だから2,000万という平均で議論すると、みんな平均はその

ぐらい持っているのかという話になりますけども、中央値で見ると1,000万ぐらいと

いうことになっていると。それで、これは地域によっても違うということになり、全体的

にいうと、人口減少が多い地域は余り持っていない。そして、人口減少が緩やか、これか

ら高齢化が進むような地域は割と多目に持っていると。これは当然、サラリーマンだった

人が高齢化を迎えるわけですから、それなりのお金を持っていると。東京都は今、多分ち

ょうど真ん中ぐらいに位置していますけれども、それでも2,000万弱ぐらいは平均的

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には持っているだろうということになります。

それから、11ページ、12ページですけれども、加齢に伴ってどういう能力が落ちて

いくのかと。例えば、11ページのほうは日本では余りいい研究が今のところ見つかって

いなくて、粟田先生と藤原先生に、もしあれば教えてもらいたいんですけれども、加齢と

ともに計算能力が急激に落ちていくんではないか。アメリカは、ちょっともともとやや計

算能力苦手な部分もあるようなんですけれども、日本人のほうが計算能力が高いので同じ

状態じゃないと思いますけども、非常に簡単な割り算、あるいは掛け算の説明文から計算

が、80ぐらいになってくると急激に正解率が落ちていくということが確認されている。

それから、12ページの下段になると、これは認知症の研究から引用させていただいて

いるわけですけれども、認知機能が落ちると最初にできなくなってくるところは一体何な

のかというのを見ているわけでして、これはお金の勘定の準備、お金を支払う準備が苦手

になってくる。これが最初に認知症になる前の、軽度認知症くらいから、ここの部分から

まず落ちてくると。だから、よくおつりの計算ができない。すぐお札で払っちゃうという、

よく言われていますけれども、そのとおりだということになるわけです。

13ページのほうを見ていただくと、これの日本では認知機能の低下によって金銭管理

がどう変化していくのかという研究が十分ないようでありまして、これもちょっとアメリ

カの研究のレビューでありますけれども、通常加齢からMCIになり、そして軽度のアル

ツハイマーになると。これをどういうふうにお金の管理能力が落ちていくのかという研究

であります。最初は緩やかに、途中から急激に落ちていくということになり、最後はお金

の管理ができなくなるということになります。

14ページに今の議論をご紹介しますと、まず個人金融資産の1,800兆円の7割近

くを65歳以上が保有して、さらに2割から3割を75歳以上が保有していると。高齢化

のスピードよりも資産の高齢化のほうがはるかに速い。従って、よく2025年問題と言

われていますけれども、金融においても2025年問題が発生すると、その問題をずっと

見てこなかったということですね。それから、マクロ的にいうと、これだけの人が、高齢

者ほど実は金融資産、特に株式投資をやっていますので、これを運用できなくなります。

諸外国の研究でも認知機能が落ちると運用不可能になりますので、そうすると何が起きる

かというと株式市場からお金が抜けていきますので、株式市場からお金が抜けていくとど

ういうことが起きるかというと、日本経済は長期停滞に陥ってくるというマクロ的なイン

パクトもあるということであります。

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次に、15ページを見ていきたいと思います。仮に、認知症までいかなくても年齢によ

ってお金の管理能力は変化をしていきます。15ページは、お金の管理能力が一番高い時

期と一番低い時期はどこなのか。実は若いほうも金融に対する経験がない、知識がないん

で非常にお金の管理能力が低いです。そして、実は経験と認知機能のバランスが一番いい

時期が50代とされています。これは、日本の研究は余りはっきりない。僕らも研究も大

体50代後半ぐらいだろうなと言われていますけれども、海外の研究だと、より実証研究

があって、このボトムになるのが能力が一番高い時期と読むんですけれども、やっぱり5

0代ぐらいだろうと。そして、今度は認知能力の低下によって、今度はまたお金の管理能

力、資産運用能力が下がっていくという構造になっています。

これらのことを考えて、16ページには、まだ仮説ですけれども、加齢に伴ってお金の

管理能力にどういう課題が出てくるか、これお金の管理能力だけじゃなくて、消費行動に

も同じ問題が出てきます。騙されやすくなるという問題です。

1番目、加齢に伴って認知機能の資源が不足しますので、楽な判断をしたいと、過去の

経験とか直感的な判断により偏るようになる。これは若者よりも、より偏るようになる。

となると、いわゆるオレオレ詐欺みたいなものに簡単にひっかかりやすくなるということ

ですね。相手の説明によっていくらでも左右されちゃうということになってきます。

2番目、加齢とともに選択能力が低下しますので、老親に10個ぐらい選択肢があるよ、

どれがいいですかといっても、選択肢が多いこと自体選べませんということになるので、

若い人よりも半分ぐらいの選択肢まで絞り込んで提案しないと、そもそも選択不能になる

ということ。それから、1回保有したものを保有したがり続けると。つまり持っているも

のを過大評価するという傾向、これは若者より強いんではないかと。あるいは、ポジティ

ブな情報とネガティブな情報両方一遍に提供して説明しても、実はネガティブな情報のほ

うを忘れやすくて、ポジティブな自分に都合のいい情報だけ頭に残っているという傾向が

強まるんではないかと。

それから、自信過剰バイアスとあります。加齢とともに自分の能力を過大に評価するよ

うになるという問題です。これは車の運転を見ていれば、70代、80代の人が若い人よ

りも、俺は車の運転に自信があると答えるわけですね。要するに、自分を客観的に見れな

くなってくる。こういうケースは、まさに先ほどの詐欺の、こういう人ほど詐欺に遭うと

言われているわけです。他にも意思決定の問題、将来を展望して行動ができなくなってく

るということになる。この辺は18ページのほうにポイントを整理させていただきました。

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こういったことを踏まえた上で何を考えていかなければいけないのかというのが19ペ

ージということで。縦軸に金融の商品とか、取り扱いの難しさ、つまり難しいとは、運用

しなければいけないという問題ですね。下の軸は、低いというのは、日々のお金の、口座

に行ってお金をおろすという行動になるわけですけど、この縦で。横軸は、認知機能が維

持されている、されていない、それが維持されていると、仮に簡単に四つのマトリクスを

持ったときに、もちろん成年後見にいかなければいけない方はちゃんとそれを使うべきだ

と。ただ、もう成年後見に30万人と言われていますけれども、本当にこの成年後見のサ

ービスをみんなが使うようになったら提供できるのかと、家庭裁判所は処理できるのかと、

専門家がいるのかということもあります。供給サイドはどうなんだと、みんな使ってくれ

といっても、じゃあ100万人が国内で使ったら本当にできますかという問題もあります。

さらに、成年後見まで至らなくても、日常の金融サービス、少なくともこれについては

窓口、資産の管理、こういったものを最小限、運用しなくてもいいけども、お金の管理自

体、どこに自分の通帳があるのかということを認知症になる前から早目のうちに自分で資

産の状況を保有して、管理して、整理して、一番親しい、あるいは信頼できる家族に、そ

の情報を共有するということでやってくださいねということが金融ワーキンググループの

報告書の中に書いてある内容であります。国民にそういうことを知ってもらいたかったと

いうことだったんですけれども、幸いたくさん多くの方が見てくれているようであります

けども、最後まで読んでいただきたいと思っております。

その上で、じゃあ金融機関、今どうやっているのかというと、城南信用金庫みたいに一

部頑張っている金融機関もありますけども、まだまだだと思います。誰がやるのかと。そ

の金融機関もみんな真面目というわけではないので、どういうトレーニングをしなきゃい

けないのか、金融機関のスタッフが、その高齢者の認知機能の変化をどう読み解いていく

のかというのが、実は余りないと。そこのトレーニングを日本金融ジェロントロジー協会

というものをつくって、今その教育プログラムを私どものほうで開発しているという状態

です。そうして諸外国のシステムとしては、既にイギリスではディメンシア・フレンドリ

ー・バンクという動きがあって、パスワードで口座を管理せず、声で個人をアイデンティ

ファイするというようなことや、変なお金の使い方をしたら即座に家族に確認メールがい

ってとめることができるというようなこととか、特別なサポート窓口をつくるとか、高齢

者への対応を銀行として対応していくと。もちろん福祉機関や他の産業とも連携して、高

齢者を支援していくと。日本でいうと包括支援との連携をしていくとか、そういうことに

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なるわけですけれども、そういう動きがイギリスの一部の地域で既に始まっている。日本

はこれだけ金融資産が高齢者に偏り、なおかつ高齢化が進んでいる中、この対応が遅れて

いる。誰がやるのかと。厚生労働省は成年後見の身上監護は担当するけども、お金の管理

は知らないよと。金融庁は手足がないと、どうすればいいんだと、金融機関がやってもら

いたい。しかし、金融機関は従来型ビジネスから転換できるのかというのはこれからの課

題になると。そういった中で、自治体、中核センター、あるいは包括、これはどういうふ

うに問題に向き合っていくのかというのを、きょうはお話ししたかったわけであります。

以上です。

○小林分科会長 ありがとうございました。

○山田(昌)副分科会長 私、早めに帰るので、もしよければ、一番最初に質問をさせて

いただければと。

○小林分科会長 ただいまのご発表に対する質問ですね。どうぞ。

○山田(昌)副分科会長 すみません、私ちょっとクリニックに行かなくてはいけないと

いうのがありまして、私も年になってきたので。

いくつか質問させていただきたいんですけども、まずちょっと認知症から離れるんです

が、日本人は割と最悪の場合を想定する人が多いというふうに思っておりまして、私結婚

の専門家なんですけれども、十分な収入があるまで結婚しないとか、そういう形で未婚化

が起こっているというのがあるというふうに思っているんですが、どうでしょう、先ほど

言ったように金融資産があっても、いわゆる90まで想定したとしても、なくなって10

0まで生きるというケースもありますよね。だから、日本人の行動様式として、いわゆる

そういう情報があると、ますます消費できなくなるというようなことがあるのかというの

が、まず一つです。

2番目は、実際にそういう90で亡くなる予定で長生きしてしまった場合はどうなるか

というのも、もしあればお聞きしたいというのが一つと、あとはまたジェンダーの問題で、

やっぱり夫婦でいる場合とひとり暮らし、男性が残った場合と女性が残った場合というの

では、やはり行動様式が違うのかなと思うんですけども、もしそれに知見があるのかどう

か。私も高齢者等を調査しますと、夫は使いたいんだけれども、妻が私が死んだ後どうす

るのといって自由に使わせないみたいなことがあるらしいので、もしそれに関して何か知

見がありましたら、お教えいただけたらと思います。

○駒村委員 実は、全て研究があって、まずその一つ目のリスク選好の問題と言われてい

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ますけれども、これは実は年齢によって変化します。つまり日本人は標準的にリスク回避

型だというふうに信じられていますけども、これは年齢とともに変化をしてきます。相対

的には女性のほうがリスク回避型です。ただし、加齢とともにリスクに対する対応度はど

んどん変化してくると思ってください。いくつかの研究があります。高齢者の場合、リス

クを認知しにくくなるという課題が出てくるということで、リスクの感応度が下がるとい

う研究が割と、これはもちろん個人差あります。高齢者の場合、個人差が非常に大きいの

で、一律にそうは言えませんけども、リスクの感応度が落ちてくる傾向がある。女性のほ

うがリスク回避的であると、押さえています。

それから、金融長寿リスクに関しては、もう実は報告書の中に色々書いてあります。当

然、トンチン型年金というものがあると。それから繰り下げ受給を使えば、いくらまで生

きても関係ない。たっぷり年金がいつまでももらえますよと。そのかわり、70歳までお

くらせることによって、それまでに亡くなった場合のリスクはありますけども、一方1.

4倍になれば、十分老後の収入は、資産がなくても生きていけますので、90歳でも10

0歳でもどうぞということになる。ただ、そのリスク感ですよね。難しい意思決定かもし

れない。繰り下げ受給を選ばずに、繰り上げ受給選んでいる人のほうが、むしろ多いわけ

ですけれども、繰り上げ受給選んでいる方は統計的には死亡率が高い。それから、自分の

健康に自信がないと。合理的ですね、そこはね。そういうことです。

それから、男女の問題でありますけども、これは海外の問題だと、いわゆる夫のほうが

やはり、すなわち現役時代に主たる収入を稼いでいたほうが、やっぱり主導権を握ってい

ると言われています。男性のほうが研究によっては金融リテラシーが高いので、どうして

も運用、運用という部分では支出の管理は、日本の夫婦の実権はどうなのかというのは別

ですが、運用という部分では、アメリカの研究などでは男のほうがコントロールする。そ

の後、先に男性が死ぬと、女性のほうはなかなか資産管理が苦手で、よく騙されるパター

ンとしては、アメリカの場合は寄附金詐欺に女性が騙されちゃう。それで日本の場合は、

このやっぱり男の人と女の人で男の人のほうが、資産の運用について主導権を握っている。

ただ、実際の支出のコントロールは別かもしれないですが。あくまでも資産の運用につい

ての話です。ただ、夫が先に亡くなっちゃうと、今度残された妻、お金について相談する

相手がいないということになって、専ら子供に相談する。問題は、子供と親の利害関係が

果たして一緒かどうか、お金の場合はわからないというわけで、子供同士のけんかとか、

大変なことが起きてくるということだと思います。

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以上です。

○小林分科会長 他にご質問、ご意見はございますか。

○筒井委員 2点、質問をさせていただきます。最初の質問は、先生のお話から、加齢と

資産管理・運用の関係については、関連性があるということがよくわかりましたが、例え

ば、イギリスのフレンドリーバンクの場合、リスクがある顧客を金融関係者がスクリーニ

ングする手法というのは、金融機関別にノウハウとして蓄積されているんでしょうか。そ

れとも、何か標準化されたスクリーニング手法を金融関係者は用いているのでしょうか。

第二の質問ですが、先生がおっしゃっておられたように、加齢による能力の低下という

のは一律ではありません。そうしますと、先生のお考えは、75歳以上になったら一律に、

金融機関が支援をする、丁寧を越えた商品設計の工夫をするということでしょうか? そ

れとも、個人差を反映するために、何かしら日本独自のそういったスクリーニングシステ

ムを開発すべきというご提案なのでしょうか? この2点について、伺いたいと思います。

○駒村委員 ありがとうございます。後半のほうから。まず75歳を超えたら一律に制限

するというのは、実は今、投資のほうでそういう制限が入って、かなり慎重にやれと言う

ことになっているので、担当者目線では、面倒くさいから実は売りたくないというふうに

金融機関の現場は思うわけですね。

このとおりやっていくと、一律、年齢差別になっていくわけであります。個人差が物す

ごく大きい社会でありますので、本来は金融機関の人が、これは実は苦手だと言われてい

ますけれども、きちんと会話の中から認知機能の変化を読み解くというトレーニングをし

なければいけない。

慶應義塾の医学部のほうでは、遠距離診断の手法、ビデオカメラ、言葉の音声を使って

解析してスコア化するということは、技術的にはできる状態に入ってきていると言われて

います。

ただ、これは治療の方法ですから、これをいきなりスクリーニングをあなたやりますと

いって銀行の窓口で始めたら、これはえらいことになります。誰も私の認知機能をこの場

ではかってくれとお願いしていない。

しかも、非常にセンシティブな情報ですから、この技術の使い方はこれから考えていか

なければいけないと、会話の中でどこを手がかりにしていくのかということを当面はやっ

ていくしかないだろうと思います。

それから、イギリスがどうなっているかと、このスクリーニングをどうかけているかと

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いうのは、申し訳ない、今、イギリスの各金融機関のスクリーニングの内容までしか、私

も把握していませんので、個別のセレクションがどうなっているかという技術の部分まで

は私のほうでは把握できていない。

ただ、日本とイギリスの違いというのは、日本の場合、私、認知症になりましたといっ

た瞬間に、はいじゃあ口座を凍結してあなたを不便な生活に追い込みますよというふうに

なっちゃうわけですけれども、イギリスの場合は、仮に認知症になったとしても、その状

態に合わせてサポートをしていくというふうになっていますので、割と認知症を告白しや

すいということも一つ違いだろうなと思います。

告白でやっているのか、それとも客観的にスクリーニングをかけているかというのは、

まだ調査中ということになります。ありがとうございます。

○筒井委員 すみません、それでは、以下のご回答に関して、もう1点だけお教えくださ

い。

金融スタッフの方用のトレーニングシステムというのが、フレンドリーバンクにはある

と思うんですけれども、それについてのカリキュラムの情報というのは、どこまで開示さ

れているのでしょうか。

○駒村委員 フレンドリーバンクの利用のためには、日本みたいに現場で判断するんじゃ

なくて、組織立ってマニュアル化をして、しかも認知症チャンピオンという形の責任者を

ちゃんと会社の中に置くということになっているというふうに聞いております。

○筒井委員 それでは、こういったカリキュラムというのを応用して、日本でつくるとい

うことを考えた場合に、適切なカリキュラムを提供する機関は、どこが適切とお考えでし

ょうか? 先ほど、最初に申し上げたのですが、こういったカリキュラムは、海外の場合

多くは、金融機関独自のノウハウになっているように思いますが、いかがでしょうか。そ

れとも、いずれかの国で普遍的なカリキュラムが存在しているのでしょうか? このカリ

キュラムの内容は、今後、かなり重要になってくると思うのですが、それについてはいか

がなんでしょう。

○駒村委員 これは、イギリスの認知機能が落ちた場合の支えるための社会システムと、

つまり弁護士の役割が想定されている社会システムになっていますので、そこにおける社

会システムでは、そういう職種がない日本における社会システムの中で、またかなり違う

と思うんですね。

現時点の調査チームの部分はそこまでカリキュラムの開発のところのかなりがどうなっ

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ているかと。アメリカは、実は調査したんですけれども、かなり隠されているという状態

なので、どうしても確認できないです。イギリスの金融機関はどうなっているか、まだこ

れからということになります。

日本において、それを標準化するかどうかは、恐らくこれから関連機関で考えていくだ

ろうと思います。

金融機関の中でも、証券と金融と銀行と生命保険と様々、売っているものは違いますの

で、その一本化できるか、ミニマムなラインをつくるかどうかというものこれから考えて

いかなきゃいけない。要するにやっと問題に気がついたという状態でありますので、まだ

関係者の中で、そこまでの機運、大事な問題だよねと、そして、金融庁の報告書にもそれ

を意識しましょうねというところまで書いてあるというところですね。ありがとうござい

ます。

○小林分科会長 髙橋委員どうぞ。

○髙橋委員 ファイナンシャル・ジェロントロジーの話は、大変、インスパイアされて面

白かったんですが、もう一つ、こことの関係とリアルエステートのジェロントロジー問題

が、要するに空き家とか、あれの増大は高齢者がマネジメントできなくなって空き家にな

っているという側面があって、そしてそれが実は地域の空洞化などがこれから起こって、

金融資産に簡単に換金できなくなるという事態が起こってフリーズする。

それが、相続税問題、だからリーガル・ジェロントロジーというのは本当に必要で、成

年後見制度の議論だけではないというのはよくわかるんですが、そういうことも含めた議

論は、実は行政の面から見ると固定資産税問題なんですよ。

これから、不動産の価値がどんどん低落して、とりわけ高齢者のときに固定資産税の支

払能力がどんどん落ちていく可能性があるということは、財政を直撃しますから。

それから、もう一つは、私的資産の社会的活用という概念をかねがね考えているんです。

要するに、今までは公私分離だったから、私的財産はアンタッチャブルだというのが公の

考え方で、空き家問題というのは、まさに今日のたまり場問題とか、そういう社会的に活

用する手法を開発しながらという、そういう議論も多分あるはずで、だからリアルエステ

ートのジェロントロジーというのはとりわけ自営業の老後資産でしょう。

基本的に国民年金層は、不動産で家を建てて、貸して、老後、だから金融庁が2,00

0万円というのは、ばかみたいな話で、きちんと階層化して議論していないから、ああい

うばかな議論になるので、実はそういう議論と自営業層の高齢化が実にリンクして、そし

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て地域にやっぱりある種の波風を立てている可能性が物すごくあるということを、変数が

増えるので、ハンドリングが物すごく難しいんだけど、どこかで意識はしておいたほうが

いいのではないか。

そして、それが先ほどの藤原先生とか、粟田先生の議論とどこかで通底する議論になっ

ていくはずで、そこはある種のプロポーザルにしていくと、とても実務の方にとっては新

しい視点を提供することになるのではないかと思う。

○小林分科会長 いまのご発言は、ご意見でいいでしょうか。

○駒村委員 一言だけ、なかなか抵抗するのが法律家のほうなんですよね。法律家も合理

的な人間像を実は想定しているようなんですよね。

○髙橋委員 法務省というのは、高齢化社会が終わってから法改正をするという、そう揶

揄したくなるほど立ち上がりが遅い役所です。成年後見の導入のときに、僕、さんざんそ

のことを目撃しましたので、法律は逆にいうと、超保守的じゃないと、制度が安定してか

ら制度を変えるという体質が明治このかた、今の内閣はどうも変えたくてしようがない人

たちばかりですが、大事だと、ファンダメンタルは実はそういう思考なので、成年後見制

度のように実にうまくいっていないというのは、それが原因だと思います。

○栃本副委員長 いや、大変興味深くお話を伺いました。イギリスのことなんですけどね、

やっぱり先ほどの銀行の話がありましたけれど、その際、駒村先生から外枠の仕組みとい

うのはしっかりしているというか、やっぱり自己決定支援法とかね、ああいうような組み

立てがあって、その中での双方的な関係の中で行われているので、日本はそれは書いてい

るからね、ということだと思います。

いずれにしろ、この領域というのは、金融資産であれ、不動産資産であれ、消費者委員

会の建議というのに、どうせ必ずなると思うんですね。

私、前の建議の際に、身元保証人制度と生活支援サービスについての、私、責任者で調

査したんだけどね。それと同じようなことが起きるというか、起きるんじゃなくて、そう

いう検討しなきゃいけなくなると思うんですよ。

それで、ワーキングの成年後見制度というのは、既に指摘されているように、多くの問

題があるし、最終的にこうなっちゃうというところを前提とした形での組み立てになって

いるから、保佐人であるとかというのがうまく動かないという形になっているんですね。

だから、全体像の中で見ていかなきゃいけないし、その上で、やっぱり東京都が色んな

課題があるとか、こういうものはこうすべきなんじゃないかというのを積極的に提案して

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いただきたいと思います。

あとは、もう一つが、欠格事項ね、あれって結構、重要なわけですよ。被保佐人になっ

たら、欠格になるとか、被後見人になったら欠格だよね。ということになっていますよね。

欠格については、障害者の関係ではね、色々欠格についてもう少し改めるべきだと議論

はあるんだけど、この部分も国の仕組みではあるんだけど、やっぱりもう少し地域に根差

した審議会というか、東京都の審議会だからね、そういうことについても少し頭の片隅に

入れておくというのが、今日の先生のお話を踏まえて、なおかつ興味深くお話しした上で

のお願いですね。

○小林分科会長 粟田委員、どうぞ。

○粟田委員 先ほどの筒井先生の話と、それから栃本先生の話も関係あると思うんですけ

ど、ディメンシア・フレンドリー・コミュニティという話が出ていたんで、ちょっとだけ

お話ししますけど、ディメンシア・フレンドリー・コミュニティ、そもそも2000年に

スコットランドで出てきた概念ですけど、これ、基本的に日本では認知症に優しい社会と

訳していますけど、本質的にはそうではなくて、認知症の人が権利を行使できるような社

会というような、そういう意味合いでできたもんで、今、英国でディメンシア・フレンド

リーの認証制度ができて、ディメンシア・フレンドリーバンクだとか、ディメンシア・フ

レンドリー・ショップとか、あるいはディメンシア・フレンドリー・シティとか、色々な

取組があります。

そういう認証制度ができていますけど、これはちゃんと権利が行使できるような社会環

境をつくるということでできているものであって、実は教育制度もそれにちゃんと基づい

てつくられています。最初につくられているのが、スコットランドの2012年でしたか

ね、つくられていたプロモーション・エクセレンスという教育システムがあるんですけど、

これは何かというと、一般の人からプロフェッショナルな人まで段階があるんですけど、

全て、認知症と人権について学ぶというカリキュラムができていて、そういうカリキュラ

ムを学んだ人がディメンシア・フレンドリー・コミュニティに関わる社会資源に関係し、

認証を与えられるということになっている。

日本には、認知症サポーター養成講座ってありますけど、あんまり批判的なことを言っ

ちゃいかんですけども、そういうもんじゃないんですよね。認知症について正しい知識を

身につけましょうということで、正しい知識を身につければ身につけるほど、人権侵害的

になるという変なことが起こってしまうこともあるので、そうじゃなくて、認知症という

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のは突然認知症になるわけじゃなくて、だんだんに認知機能が落ちていくというプロセス

でありますので、それとともにちゃんと人権が行使できるようにサポートしたり、合理的

配慮ができるようにしていこうというのが本来のディメンシア・フレンドリー・コミュニ

ティの考え方であるということで。

今の問題について、東京都はそういう観点で人権を守るという観点からディメンシア・

フレンドリーのバンクやらディメンシア・フレンドリーのサービスを考えていくというこ

とをこれからやらなくてはいけないんじゃないかと思います。

先生、一つ質問なんですけど、ということで、認知症の方とお金の問題は色々あるんで

すけども、いくつかあるんですけども、一つは、やっぱりうまく使えないという、お金を

うまく使えないという問題があります。それこそ先生がおっしゃったように、軽度の段階

からあらわれているのはこれであって、一番身近なところでは普通のショッピングもうま

くいかなくなります。最近、自動のレジなんかできちゃったもんで、おっかなくて行けな

いとおっしゃる認知症の方も増えてきています。ちゃんとお金を使えるように社会環境を

つくっていかなきゃいけないということで、ファイナンシャルテクニックの一つとして、

最近の顔の認証システムなどもできるようになりましたが、例えばお店なんかでも、認知

症の方が登録しておけば、顔を認証しておけば買い物できるようにしておくとか、あるい

は同じ物を買っちゃったらちゃんと情報提供してあげるとか、そういうような環境づくり

というのが必要かと思うんですけど、こういう試みって何かあるんでしょうか、我が国で

は。

○駒村委員 さっきの髙橋先生の話も今の話も、ほとんど私の問題意識としては、今、強

くあるんです。

ただ、私のやっている金融ジェロントロジーも金融業界等の問題意識からの発達したも

のです。まず、インパクトとしては100兆円、200兆円のレベルの話ですから、それ

は物すごいインパクトがあるし、非常に難しいわけで、一般的にも日々のお金の使い方を

どうするかという問題と、お金をどう、いわゆる資産寿命を延ばしていくという意味で、

お金を死ぬ前までに持っておかなきゃいけないと、お金をためるだけじゃなくて、実は判

断能力も維持できなければいけない。

そうすると、きょうのお二人の先生の、いかに認知機能を落とさないようにするかと、

これも実は資産寿命を延ばすために意味があると思うんですけど、そこはちょっと今、集

中的に議論しているんですけども。

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他にも、法律や関連施策、あるいは政府の様々な申請書、システム、あるいはまちの案

内図から始まって、社会の仕組み全部をやっぱり高齢化、認知機能が落ちた方を意識した

システムに変えていかなきゃいけないと思っていますのでね。

ただ、ここまで戦線を広げちゃうと、研究しなきゃいけないことや、かからなきゃいけ

ないことが山ほどになっちゃうので、まずは金融から始まっていますけども、問題意識と

しては粟田先生おっしゃるとおりなんですけども、まだ、そういうムーブメントにはなっ

ていないんじゃないかな。

ただ、色々な分野から問題意識を共有している人が入ってきているんじゃないのかなと

は思います。ありがとうございます。

○小林分科会長 ありがとうございました。

あと10分ほどになりますので、少しきょうの議論のフレームを考えてみたいと思いま

す。

先ほど、髙橋委員からもご指摘がありましたが、藤原委員のご発表のテーマは参加です

ね。ここでもっと新しい仕組み、例えば研修等の仕組みを使って、短期のイベントではな

く、それをどのように継続させるかということが大きな課題になっていると思います。

生活のところでの認知症の問題ですけども、どのように生活のメリハリをつけていただ

くか、そのための拠点をどのようにつくっていくか、専門家によるネットワークと、住民

によるネットワークをどのようにつくるかというようなことがあったと思います。

金融ジェロントロジーについては、最近の金融庁の報告等も含めて、最新の課題か思い

ますが、これもやはり色々な分野の連携のもとに進めていかなければならないというよう

なことになってきていると思います。

大きく分けて個人要因から出てくる問題と、それをどういうふうに受けとめるかという

政策課題、また、専門機関とともに、それよりももう少し住民寄りの中間のところ、地域

という言葉を使うと少し意味がはっきりしなくなってしまいますが、その地域で何らかの

専門的な支援の仕組みをつくっていく必要がある。例えば金融機関でも、住民がもっと的

確な判断ができるように支援する仕組みをつくっていく必要があるということを含めて、

社会福祉審議会でどのような提案をしたらいいかと枠組みになるかと思いますが、今日は、

いろいろチャレンジングなお話が伺えたと思います。

先ほど、ご指名がありましたが、これらの点も含めて、秋山委員に専門職と住民とがこ

こでどのようなネットワークや拠点をつくっていく必要があるかということでお話しいた

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だければと思います。

○秋山委員 粟田先生の57番目の先ほどの生活支援の源泉を地域に求めるの仮説の五つ

の要素と、それから藤原先生の27番目のこのプロジェクト全体のイメージのところで、

藤原先生の中でも交流と居場所づくり、社会参加、これが真ん中にあって手段的な困り事

への支え合い、下が心の支えになっていて、この居場所をどんなふうにつくっていくかと

いうのは、やっぱり藤原先生のところでもかなり実を言うと、大きな課題であり成功事例

は、居場所を上手につくっていったという事例が紹介されていたと思うんですけれども。

私が今、取り組んでいます、暮らしの保健室は、高齢化が非常に進んだ戸山ハイツとい

う団地の中の商店街、ああいった商店街を安く貸してくれるという条件のもとで、そこを

開いた。

その最初は、実を言うと医療政策側の医療介護連携を推進する在宅医療連携拠点事業の

事業費をいただきました。なので、医療政策側からのお金が動いて、それをしましたので、

暮らしの保健室自体の最終的に進化した形の機能が六つあると私たちはまとめていまして、

医療連携のための相談の窓口が一つ目。それから、健康教育等の学びの場である。三つ目

が、連携の場である。そして、地域ボランティアの育成の場であり、世代を超えた交流の

場である。世代を超えた交流の場は、東京家政大学社会福祉学科の女子学生たちというか、

松岡洋子ゼミの方々とのずっと交流が続いています。それを外からの意味でも、世代間の

交流というのも交流の場である。そして、居場所だったんですね、居場所づくり。

この居場所の中で、2011年から2019年、今に至るまで8年間ずっと、そこに通

ってくる、特にひとり暮らしの方を見ていますと、それこそお金の管理ができなくなると

いった経過が、緩やかな見守り体制の中でそれが顕著になってきて、そこで必要な社会福

祉協議会の金銭管理のところの権利擁護の事業につなげていく。

だけど、つなげるにも、親しみがある顔見知りの人がきちんとサポートに入らないと、

書類の申請ができない、そういうところをクリアしていきますと、きちんと金銭管理も少

し整い、公的なサービスにも乗っていくという、そういう事実があるので、やはり気軽に

行ける居場所は、やっぱりとても必要で、そこに見守り機能ができる相談に耐え得る人が

いないといけない。

それは誰かとか、どこかというあたりは、検討していかなければいけないけれども、8

5歳以上の方は、ほぼ認知機能が落ちるということを前提に考えていけば、認知症カフェ

とか、そういうわけ隔てをするのではなくて、地域の方が敷居低く行ける場所があり、そ

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こに相談機能も持ち合わせ、交流の場につなげていくという、そういう試みが必要なので

はないかというふうにちょっと思います。

それと、そこで認知機能が少し低下してきたというふうに観察というか、見守り機能が

働いてきますと、年金を多く口座で持っているのは、ゆうちょ銀行なんですね。

郵便局の方々がやっぱり協力してくださったり、逆に郵便局で認知症に対する理解をも

うちょっと深めようとか、この人たちをどうしていこうかというのを、もちろん地域包括

ともつながりますけど、時にはこちら側から暮らしの保健室の利用者が、そういう状態で

とても郵便局の窓口でトラブっているというようなときに、ちょっとボランティアさんが

ついていったりして、少しそことの交流ができたりもしていますので、やっぱりお金絡み

の様々なトラブル、それは目の当たりに、こちらは政策どうこうじゃなくて、個別の場面

で大変感じていて、重大なことだなというふうに思っているところです。

居場所をどうつくるかも、大きな課題ではないでしょうか。

○小林分科会長 ありがとうございます。

今、お話を伺って、私も最近聞いた事例を思い出しました。ある住民が郵便局にお金を

おろしに来たのですが、通帳がなくてだめだということになり、郵便局長が対応したそう

ですが、どうしようかというときに、局長が行政関係者や社会福祉協議会の職員と一緒に

なって自宅を訪問して、通帳を探すことで緊急事態を何とか脱する事ができたそうです。

お金の管理については、郵便局は地域に密着していますので、お金の管理ではそのもの

ではないですが、出し入れを何とか支援できるような仕組みがあると、問題解決できる部

分もあることがわかりました。多分、金融ジェロントロジーの問題だけではなくて、お金

の管理のところをもう少し色々な観点から捉えて、例えば住民もかかわりながらできる形

になるといいのではないかという気がしました。

駒村委員、どうぞ。

○駒村委員 地域金融機関の活用というのがすごい重要で、ただ、郵便局、昨今、報道さ

れているような問題がありますので、ちょっとばらつきが大きいので、どういう形で郵便

局のほうを参加していただくのかというのは大事かなと思います。

それから、ちょっと前回欠席で参加できなかったので、教えてもらいたいというか共有

されている問題かどうかなんですが。

一つ目は、介護労働需給の見通しなんですけれども、賃金なんかは調整される部分もあ

ると思うんですけれども、賃金が上がっていきますよということがよく言われているんで

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す。厚生省のほうもそうなんですけども、恐らく労働供給の需給が逼迫すると、相対賃金

を見なければ、他の労働に比べてどのくらい改善するかと考えないと集まってこないので、

その辺、どう考えていらっしゃるのかな。東京の場合、特にその問題が大きいんじゃない

かなと思う。

それから、もう一つは、現在、120万人の方が亡くなっていて、そのうち在宅で亡く

なる方が20万人ぐらいだろうとされていますけども、2040年ぐらいになると、全国

で170万人ぐらいの方が亡くなっていくわけで、在宅誘導をどんどんやっていますので、

東京都としては在宅で亡くなる、最期を看取ることが必要になってくる形は、そのくらい

の人数になってくると、見通せるのか。これ、もしかしたら、もう既にこの資料の中に入

っているのかもしれないと思います。

それから、三つ目は、東京都の独自の問題として、やっぱり集合住宅の、いわゆるマン

ションですね。高齢者が多くなってくるという問題をどう見られているのかなという、こ

の3点ぐらい、もし議論があったのか、あるいは資料も用意されているのか、前回、切り

口の話があったと思いますので、ちょっと確認したいなと思います。以上です。

○小林分科会長 今の3点は、前回の議論では余り出ていなかったと思います。

相対賃金の話もたしか出ていなかったと思いますが、この問題に関する知識や情報はあ

りますか。例えば、介護労働賃金とその他の労働賃金との相対的な関係でしょうか。

○筒井委員 これは、国で一応、色々なデータがありまして、介護人材の賃金については、

上昇基調でずっと上がっているんですけれども、先生がおっしゃられたような、相対賃金

については、サービス産業ですね。いわゆる接客業、それとの出し入れというか、流出入

の動向が調べられていまして、景気がよくなると、そちらに移行するといったようなこと

が言われております。

ですから、今、若干上向きで、戻っているというようなことがなされているので、相対

賃金というよりも、サービス業の中での移動・移入ですかね。そこがきっと課題になるん

じゃないかと思います。

○駒村委員 そこはまた、経済学的にいって相対賃金ということになります。

○筒井委員 そういうことです。そういうことなんですけど、どこに行くかということま

では調べていないということです。

○小林分科会長 これについては、この後で議論を深めていただきたいと思います。

時間が参りましたので、今日は一応、閉じさせていただきます。

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次の起草委員会の設置のスケジュールですが、事務局のほうで説明していただけますか。

○森田企画政策課長 それでは、資料の2のほうをご覧ください。

起草委員会でございますけれども、資料6のほうで起草委員会の名簿をつけてございま

すけども、資料の2のほうがスケジュールでございます。

今後のスケジュールでございますけれども、こちらにございますとおり、今、第2回の

検討分科会まで議論を進めていただいたところでございます。この後、起草委員会の中で、

より、この2回で色んな委員の方からの発表もございましたし、それに伴う議論もござい

ました。こちらを論点整理いたしまして、意見具申の骨子のほうを作成していきたいと思

ってございます。

検討分科会でございますけども、次は10月ごろで今のところ考えてございます。こち

らの検討分科会に意見具申の骨子を検討していただくための色んな議論を起草委員会の中

でさせていただきたいというふうに考えてございます。

スケジュールについては、以上でございます。

○小林分科会長 それから、起草委員会のメンバーですが、資料6をご覧ください。こち

らの記載の皆様方にお願いして、ご了解をいただいております。平岡委員長と、栃本副委

員長は時間の許す限りご協力をお願いしたいと思います。

大変忙しいスケジュールですけれども、よろしくお願いいたします。

それでは、この後の進行は、事務局にお返しします。

○森田企画政策課長 本日は、熱心なご議論、誠にありがとうございました。

今後の予定でございますけども、今、ご説明しましたとおり、第1回の起草委員会でご

ざいますけれども、7月25日、午前9時45分から開催を予定してございます。

詳細につきましては、また後日、開催通知をお送りいたしますので、そちらでご確認い

ただければと思います。

検討分科会については、10月ごろを予定してございます。日程については、改めて調

整させていただきますので、よろしくお願いいたします。

本日の資料でございますけれども、青色のファイルにつづってございます基礎資料集、

それから冊子類につきましては、次回以降も使わせていただきますので、回収させていた

だきます。机上のほうに置いていただければと思います。

また、委員の皆様、お持ちの青色の一時通行証でございますけども、1階のエレベータ

ーをおりた後、カードゲートに併設された回収機にご返却いただきまして、ゲートを通過

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していただければと思います。

お車でお越しいただいた方は、駐車券をお渡しいたしますので、受付までお声がけをく

ださい。

また、本日は雨も降ってございます、傘などのお忘れ物がございませんよう、お気をつ

けてお帰りください。

事務局からは以上でございます。

○小林分科会長 きょうは刺激的な議論をたくさんいただきまして、ありがとうございま

した。

では、本日はこれで閉会にしたいと思います。

○井上委員 ちょっと時間がなかったので、お伝えをしなかったんですけども、活動拠点

というか、今回やろうと思っている拠点というのが大事だということだったんですけども、

それのつくり方についてというので、少しお伝えしたいと思ったのは、それは起草委員会

宛てにメモか何かでお渡しするということでよろしいですか。

○小林分科会長 そうですね。事務局、それでよろしいですか。

○森田企画政策課長 はい、構いません。

○井上委員 わかりました。

○小林分科会長 どうぞよろしくお願いいたします。

ではこれで閉会といたします。ありがとうございました。

(午後12時29分 閉会)