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東京湾奥部の底泥と底層に 蓄積する硫化水素

国立環境研究所・地域環境研究センター 牧 秀明，東 博紀，古市尚基，金谷 弦，中村泰男

環境リスク研究センター 堀口敏宏

島根大学大学院総合理工学研究科

管原床吾，清家 泰 国立環境研究所

赤潮

（植物プランクトン）

調査研究対象と背景

窒素・リン

底泥への有機物（CH2O）供給

貧酸素層水塊の発達

貧酸素・嫌気条件下の底泥中では‥

硫化水素形成（硫酸還元菌の作用）

SO42- + 2CH2O → S2-（猛毒！）+ 2CO2 + 2H2O

底生生物の死滅

遊離HS

現状では分別

すること無く

“AVS”として

十把一絡げに測定

鉄存在量

鉄結合

S

発生HS

量

高い反応性・強毒性！

分析が面倒なので未評価！

不活性・低毒性

底泥中の硫化物の形態

AVS：酸揮発性硫化物 Acid Volatile Sulfide

〈なぜ硫化物か?〉 現状の行政調査等ではAVSが測定されており，

遊離のH2Sは分別して評価されていない。

全硫化物ＡＶＳ

水塊

H2S

直上水（水塊中）に

時折溶出

底泥中に蓄積

底泥

多摩川

H24東京湾水質一斉調査（2012.7.30 実施・国立環境研究所）

調査点（ほぼ月一回の微細乱流計[TurboMAP]による定点観測）

川崎

羽田空港

荒川

TDL

船橋

千葉 お台場

海ほたる

隅田川

大井埠頭

国立環境研究所

多摩川

H24東京湾水質一斉調査（2012.7.30 実施・国立環境研究所）

透明度

透明度（ｍ）

0

1

2

3

4

透明度は1.75～3 m

“東高西低”の傾向

川崎

羽田空港

荒川

TDL

船橋

千葉 お台場

海ほたる

国立環境研究所

多摩川

H24東京湾水質一斉調査（2012.7.30 実施・国立環境研究所）

底層（底泥直上）溶存酸素（DO）

底層（直上）ＤＯ

0

1

2

3

4

底層（底泥直上）DOは

0～3.3 mg/L

“西高東低”の傾向

川崎

羽田空港

荒川

TDL

船橋

千葉 お台場

海ほたる

(mg/L) 0

3

6

9

24 26 28 30

塩分，水温（℃）

水深（

ｍ）

0 2 4 6 8 DO (mg/L)

塩分

水温

DO

なぜ“底泥直上” DO

か？ 底層で急激にDOが低下する

極端な躍層が存在する場合が有る。

DO＜1 mg/L

国立環境研究所

多摩川

底泥直上中硫化水素（遊離H2S）濃度分布・変化

（2012年5月, 7月[一斉調査日該当], 9月, 10月）

遊離硫化水素

St. 1～7では検出されず。5, 9, 10月は何れの地点でも検出されなかった。

川崎

羽田空港

荒川

TDL

船橋

お台場

海ほたる

(mgS/L)

国立環境研究所

千葉

0

1

2

多項目水質計にくくり

付けた安藤式多層採水器（単段）による底泥直上水の絶縁採水

多摩川

底泥間隙水中硫化水素（遊離H2S）濃度分布・変化

（2012年5月, 9月, 10月[一斉調査日相当の7/30は欠測！痛恨の極み！！]）

遊離硫化水素

5月は濃度は低かったのが9～10月に一気に増加。

湾奥部の方が高い傾向

川崎

羽田空港

荒川

TDL

船橋

お台場

海ほたる

(mgS/L) 0

30

60

90

120

150

5月

9月

10月

国立環境研究所

千葉

2010年5月～2011年10月の東京湾奥部三定点における 底生生物現存量の変化

■ 千葉灯標 12～13 m

●三枚洲 6～7 m

◆ 旧・東京灯標 15～16 m

調査地点名と

水深

底生動物(ベントス)個体数の季節変化

1

10

100

1000

東京灯標 千葉灯標 三枚洲

個体数・

675 c

m-2

2010/5/11

2010/6/15

2010/7/16

2010/8/10

2010/9/1

2010/10/26

2011/2/1

2011/4/26

2011/6/23

2011/8/23

2011/10/12無生物状態

無生物状態

大型

国立環境研究所

東京湾奥部三定点における底生生物現存量と諸因子

（底泥直上DO，底泥中の硫化水素[遊離H2S]，AVS）との関係

0.1

1

10

100

1000

0 3 6 9 12

直上水DO

大型底生動物現存数

0.1

1

10

100

1000

0 1 2

AVS

大型底生動物現存数

東京灯標

千葉灯標

三枚洲

0.1

1

10

100

1000

0 200 400 600

底泥中H2S

大型底生動物現存数

国立環境研究所

H2Sの増大が底生生物現存量減耗の一大要因

である

◇要約

1. 東京湾奥部では底泥中の硫化水素（遊離）は夏季から秋季に

かけて顕著に蓄積し，夏季には直上水中でも検出される場合

もある。

2. 硫化水素の蓄積に伴い底生生物は減少する。

3. （採泥と分析の大変さ・煩雑さは軽視できませんが）底質に

ついては，底生生物と共にもっとデータ収集・検討されるべ

きである。

4. 東京湾流入河川下流域で発生する（底生）魚類の斃死の要因

として，河口域底層への硫化水素を含んだ海水（もちろん貧

酸素水塊）の遡上・浸入が考えられる？

協力

株式会社日本海洋生物研究所

新日本環境調査株式会社 国立環境研究所