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超音波検査法フォーラム 腹部エコー実技スクール
予習用資料
■ 実技スクールを受ける前に
腹部エコー検査で精度がよく効率的な検査をするには、体位変換を積極的に取り入れた検査の流れ(検査
フロー)が不可欠です。当会は、精度が良く効率的な検査フローを 「基本走査法」と呼んで推奨してきま
した。実技スクールでは、基本走査法を実際の検査に近い形で実習します。あなたの施設での検査フロー
と相違があるかもしれませんが、合理的な「基本走査法」を、ご自身で体験し比較してください。
実習では体位ごとに、この臓器のこの部分を見るというように走査を整理してお教えします。実技スク
ールに先立ち、この予習用資料で走査の流れと基本断面を予め理解しておくと、受講の際に走査に集中し
て実習することができます。
■ 基本走査法の考え方
スクリーニング検査とは、被検者に病変が有るか無いかを判断するための、ふるい分けの検査です。「臓
器のかたちの観察」すなわち臓器の腫大や萎縮、拡張などの異変がないかのチェックと、腫瘍や結石など
の「病変の発見」の 2 つの要素から成り立っています。「基本断面」で臓器の形態や構造をチェックし、そ
こを起点に臓器の端までくまなく見て行く動作を繰り返すことで病変を探します。実際の検査はこの 2 つの
要素の繰り返しですが、漫然と動作を繰り返しても精度が高い検査にはなりません。
では検査の精度を上げるためのポイントはなんでしょうか?
1. よい超音波像で検査する
よい超音波像とは、臓器の形態や構造がわかりやすいことに加えて、精度よく映っている画像
のことです。そのためには「よく映るアプローチ」を理解する必要があります。
2.よく映るアプローチ
アプローチとは、検査対象を映すための体位とプローブを当てる位置の組み合わせです。検査
対象がもっともよく映るアプローチを使うことで精度のよい検査ができるようになります。仰臥
位だけでは、よい組み合わせのアプローチは得られません。私たちはよく映すためのアプローチ
のことを「ベストアプローチ」と呼んでいます。
3. 基本走査法
体位ごとにベストアプローチの組み合わせを整理することで、"精度の高さ"と"効率のよさ"を両立させ検査フローが決まります。次ページは超音波検査法フォーラムが推奨する「基本走査
法」です。臓器ごとに検査していても “精度の高さ”はある程度得られるかもしれませんが、“効
率のよさ”は絶対に得られません。
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4. ベストアプローチを組み合わせる
検査フローが確立されるわけですが、実はもう一点考慮しなければならないことがあります。
それは、胃のガスです。胃のガスの存在は膵臓の描出に悪影響を及ぼすので、それを避けるよう
な対応が必要になります。下の図を見ていただくと、体位によって胃のガスが動くことがわかり
ます。
よって、体位を変え胃のガスを動かすことにより、膵臓の描出能がよりよくなるわけです。こ
のようなことを踏まえ、超音波検査法フォーラムの検査フローは、決められています。
体位変換と胃のガスの位置
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基本走査法のベストアプローチ(スコア表)
• 「A」がベストアプローチ、「B」がそれに準ずるアプローチを示しています。 検査のアプローチの組み合わせから、詳
細を削りスコア化しています。
• したがって実際の検査では、この描出のみ行うという意味ではありません。
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基本走査法の検査フロー
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■プローブの動かし方
基本走査法の検査フローを覚えるだけで、十分な検査が行えるわけではありません。 プローブを正しく
持たず十分に動かすことができないと、フロー通りに検査を進めても見落としにつながります。プローブ
の動かし方は、基本的には以下にあげる 3 つの動きで構成されており、これらを組み合わせた走査(複合走
査)で検査が進められます。
(1)正しいプローブの持ち方
力を入れて握ってしまうと、プローブをスムーズに動かすことができません。強く握り締
めずプローブ走査を容易にするために、親指と人差し指の股の部分をプローブに付けずに持
つのがコツです。 (右図)手の関節も柔らかく動かせるようにしておくことも大切で す。また
走査時は、皮膚とプローブを密着させなければいけない ので、ある程度の圧迫が必要となり
ます。
・横方向にプローブを持つ場合は、親指と人差し指・中指の三本を使ってプローブを持ち、薬
指と小指を添えるようにします。
・縦方向にプローブを持つ場合は、親指と他の四本の指で挟むようにします。プローブの体表
側を持つようにすると、安定し固定もしやすくなります。
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(2)スライド走査
プローブを縦・横方向に持ち、角度を変えずに直行する方向に滑らせて平行移動させる走
査法。広く音響窓が得られるときに有効で、肝臓などの臓器全体を観察するときや、連続断
層を描出するので長い管腔臓器の走行を追うときに良く使う方法です。
(3)傾け走査
接触面を中心として傾ける走査法で近位は狭い範囲しか観察できないが、遠位は広く観察
できます。肋間など音響窓に制約の あるときに有効で次の 3 つの方法があります。
・扇状走査 プローブの位置はそのままで手首を使って扇状にプローブを振る走査法。胆嚢や
腫瘤などの比較的小さな臓器や病変の描出に適しています。
・振り子走査 コンベックスの半円形の局面を利用してプローブを左右に振る走査法。目的の
臓器を画面中央に持ってくるときや消化管ガスを退かす作業に適しています。
(4)回転走査
プローブの中心を軸にして、描出位置をずらさないように回転させる走査法。同一部位を縦
と横の両方向から観察する場合の走査法で、病変の形や臓器を短軸と長軸で観察するときなど
立体把握には 欠かせない走査法です。
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基本断面の確認
代表的な基本断面を提示します。空欄にスケッチをして、何が映っているのかを記載して下さい。基本断
面の理解度が上がります。※わからないところはどこがわからないかをチェックして来て下さい。
【見本】
胃
肝左葉外側区域 膵頭部
脾静脈
腹腔動脈
上腸間膜動脈
腹部大動脈
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予習資料は以上です。実技スクールを受講するための準備に活用してください。