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多施設間ポートフォリオ発表会の学習効果 ~ そこから見える家庭医療後期研修医及び後期研修プログラムの評価について ~ 発表者 中村 琢弥 (京都家庭医療学センター 京都民医連中央病院) 共同研究者 高木 幸夫1)2) 玉木 千里1)3) 寺本 敬一1)4) 1)京都家庭医療学センター 2)京都民医連中央病院 3)京都協立病院 4)たんご協立診療所2009年 プライマリ・ケア関連学会連合学術集会 2009年8月21日~23日 国立京都国際会館にて 的】 多施設ポートフォリオ発表会の報告とその学習効果を明らかにする。 象・方法】 2009年3月17日に開催した「第一回近畿家庭医療学後期 研修医ポートフォリオ発表会」における計8名(7施設)の発表と同会終了後 アンケートの内容をそれぞれ分析・考察した。 果】 当日は8名の発表者をはじめ、医師・他職種・学生を含む44名の 参加を得た。発表は「患者中心・家族志向の医療」領域からの内容に集中 した。また、終末期医療を題材とした発表が5/8名と過半数を超えた。 家族図は4症例で提示された。行動変容を扱った内容も3症例で見られた。 アンケートからは発表形式の統一感の欠落の指摘はあったが、家庭医療学 的アプローチを知る機会となったこと、各後期研修医・プログラムの比較、 経験共有の場となったことを中心に好評を得た。 論】多施設ポートフォリオ発表会は各後期研修医の研修状況や臨床能力の 一端を示し、比較する一助となる。家庭医療学の適応例を知る機会となり、 共有・議論する良好な場となる。一方、発表形式に統一感がないなど、 比較・標準化の是非についての面で課題を残す。 ポートフォリオとは? What’s “portfolio” ? そもそもは建築家やジャーナリスト などの「作品歴」「活動歴」など の「情報が一元化されたもの」 を指す言葉。それらを俯瞰す ることで数値化しにくい個性や 能力、可能性を提示しうるとさ れ、教育ツールとして、教育界・ 医療界で注目を集めている。 背景 Background 研究の目的 Purposes ・日常診療の様々を記録として 残し、振り返ることで学びを得る 「ポートフォリオ」学習が臨床の学習 法として重用視されてきている。 ・先に第一回目を迎えた「日本 家庭医療学会認定家庭医療 専門医」の認定審査では ポートフォリオの提出が義務づけられ、 評価の対象となっている。 ・各認定プログラムにてポートフォリオ 学習は導入されているが、作成 されたポートフォリオへ比較・検討に ついてはほとんど機会がないの が現状である。 ・多施設ポートフォリオ発表会開催の 報告。 ・同会を振り返ることで、 日本家庭医療学会の規定する プログラム下での研修医の学習の 傾向を明らかにする ・同会の学習効果を考察し、 今後のよりよいあり方を創造する 一助とする。 第1回近畿家庭医療学 後期研修医ポートフォリオ発表会 2009年3月7日 15:00~17:00 場所:ハートンホテル京都 ・発表者8名(計7施設)、 参加者は計44名(他職種・学生含む) ・家庭医療後期研修医のアウトカムを ポートフォリオとして提示し、研修状況 の評価の場とする。 ・各施設同士の研修医の交流の 場とする。 ・研修プログラムとその指導医への フィードバックの場とする。 発表会の様式 Field 発表テーマ Select of “theme” 患者中心・家族志向の医療 を提供する能力 包括的で継続的 かつ効率的な医療 を提供する能力 地域・コミュニティーをケア する能力 ※ 2009年3月時点にて日本家庭療学会が提示するプログラム (Ver.1.0)における「家庭医を特徴付ける能力」に準拠 考察の対象 A subject of study 発表者のテーマ選択 発表内容の学習領域・技法 終了後アンケート内容 結果 Results 8人 患者中心 継続性 地域コミュ 3人 5人 終末期関連 それ以外 4人 4人 家族図あり 家族図なし 5人 3人 行動変容関連 それ以外 ・様々な視点のポートフォリオ を共有(経験を客観化することの 大切さ) ・後期研修医のニーズ、 各プログラムの特色を知り、 交流するよい機会。 ・家庭医療学的手法の例示 アンケートより From questionnaires ・発表テーマに偏りあり ・形式の統一感のなさ (共有・比較しやすさも大切) ・ディスカッション形式の検討。 考察 Examination ・多施設型ポートフォリオ発表会は 以下の事項を示すのに有用。 1)後期研修医の研修状況 (総合的な到達度評価の場) 2)各研修プログラムの特徴 (比較検討の機会) 3)家庭医療学的手法の共有 結語 Conclusion ・多施設型ポートフォリオ発表会では 研修状況や家庭医療学的手法 の共有が出来たが、発表形式 など検討すべき課題があること が明らかとなった。 ・このような発表の場は家庭医 としてのマインドや能力を深める 重要な機会であり、今後も続け、 発展を目指したい。 標準化する 自由な形式 比較検討が容易に。 もともと定量化 しにくい要素・概念 を扱っており、 一定の工夫は必要。 新たな発想からの 発表が期待でき、 個性や特色を 尊重できる。 公式評価に使用 時の比較が困難 Kyoto Center for Family Medicine 本研究の概要 Abstract 研究の方法 Methods 選択されたテーマ・技法 Select of “theme” n=8()

多施設間ポートフォリオ発表会の学習効果 · 継続性 地域コミュ 3人 5人 終末期関連 それ以外 4人 4人 家族図あり 家族図なし 5人 3人

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Page 1: 多施設間ポートフォリオ発表会の学習効果 · 継続性 地域コミュ 3人 5人 終末期関連 それ以外 4人 4人 家族図あり 家族図なし 5人 3人

多施設間ポートフォリオ発表会の学習効果~ そこから見える家庭医療後期研修医及び後期研修プログラムの評価について ~

発表者 中村 琢弥 (京都家庭医療学センター 京都民医連中央病院)

共同研究者 高木 幸夫1)2) 玉木 千里1)3) 寺本 敬一1)4)

(1)京都家庭医療学センター 2)京都民医連中央病院 3)京都協立病院 4)たんご協立診療所)2009年 プライマリ・ケア関連学会連合学術集会

2009年8月21日~23日 国立京都国際会館にて

【目的】 多施設ポートフォリオ発表会の報告とその学習効果を明らかにする。

【対象・方法】 2009年3月17日に開催した「第一回近畿家庭医療学後期研修医ポートフォリオ発表会」における計8名(7施設)の発表と同会終了後アンケートの内容をそれぞれ分析・考察した。

【結果】 当日は8名の発表者をはじめ、医師・他職種・学生を含む44名の参加を得た。発表は「患者中心・家族志向の医療」領域からの内容に集中した。また、終末期医療を題材とした発表が5/8名と過半数を超えた。家族図は4症例で提示された。行動変容を扱った内容も3症例で見られた。アンケートからは発表形式の統一感の欠落の指摘はあったが、家庭医療学的アプローチを知る機会となったこと、各後期研修医・プログラムの比較、経験共有の場となったことを中心に好評を得た。

【結論】多施設ポートフォリオ発表会は各後期研修医の研修状況や臨床能力の一端を示し、比較する一助となる。家庭医療学の適応例を知る機会となり、共有・議論する良好な場となる。一方、発表形式に統一感がないなど、比較・標準化の是非についての面で課題を残す。

ポートフォリオとは? What’s “portfolio” ?

そもそもは建築家やジャーナリスト

などの「作品歴」「活動歴」など

の「情報が一元化されたもの」

を指す言葉。それらを俯瞰す

ることで数値化しにくい個性や

能力、可能性を提示しうるとさ

れ、教育ツールとして、教育界・

医療界で注目を集めている。

背景 Background 研究の目的 Purposes

・日常診療の様々を記録として

残し、振り返ることで学びを得る

「ポートフォリオ」学習が臨床の学習

法として重用視されてきている。

・先に第一回目を迎えた「日本

家庭医療学会認定家庭医療

専門医」の認定審査では

ポートフォリオの提出が義務づけられ、

評価の対象となっている。

・各認定プログラムにてポートフォリオ

学習は導入されているが、作成

されたポートフォリオへ比較・検討に

ついてはほとんど機会がないの

が現状である。

・多施設ポートフォリオ発表会開催の報告。

・同会を振り返ることで、日本家庭医療学会の規定するプログラム下での研修医の学習の傾向を明らかにする

・同会の学習効果を考察し、今後のよりよいあり方を創造する一助とする。

第1回近畿家庭医療学後期研修医ポートフォリオ発表会

・2009年3月7日 15:00~17:00

・場所:ハートンホテル京都

・発表者8名(計7施設)、参加者は計44名(他職種・学生含む)

・家庭医療後期研修医のアウトカムをポートフォリオとして提示し、研修状況の評価の場とする。

・各施設同士の研修医の交流の場とする。

・研修プログラムとその指導医へのフィードバックの場とする。

発表会の様式 Field

発表テーマ Select of “theme”

患者中心・家族志向の医療を提供する能力

包括的で継続的かつ効率的な医療を提供する能力

地域・コミュニティーをケアする能力

※ 2009年3月時点にて日本家庭療学会が提示するプログラム(Ver.1.0)における「家庭医を特徴付ける能力」に準拠

考察の対象 A subject of study

・ 発表者のテーマ選択

・ 発表内容の学習領域・技法

・ 終了後アンケート内容

結果 Results

8人

患者中心

継続性

地域コミュ

3人5人

終末期関連それ以外

4人 4人

家族図あり家族図なし

5人3人

行動変容関連それ以外

・様々な視点のポートフォリオを共有(経験を客観化することの大切さ)

・後期研修医のニーズ、各プログラムの特色を知り、交流するよい機会。

・家庭医療学的手法の例示

アンケートよりFrom questionnaires

・発表テーマに偏りあり・形式の統一感のなさ(共有・比較しやすさも大切)・ディスカッション形式の検討。

考察 Examination

・多施設型ポートフォリオ発表会は

以下の事項を示すのに有用。

1)後期研修医の研修状況

(総合的な到達度評価の場)

2)各研修プログラムの特徴

(比較検討の機会)

3)家庭医療学的手法の共有

結語 Conclusion

・多施設型ポートフォリオ発表会では研修状況や家庭医療学的手法の共有が出来たが、発表形式など検討すべき課題があることが明らかとなった。

・このような発表の場は家庭医としてのマインドや能力を深める重要な機会であり、今後も続け、発展を目指したい。

標準化する

自由な形式比較検討が容易に。

もともと定量化しにくい要素・概念を扱っており、一定の工夫は必要。

新たな発想からの発表が期待でき、個性や特色を尊重できる。

公式評価に使用時の比較が困難

KyotoCenter forFamilyMedicine

本研究の概要 Abstract

研究の方法 Methods

選択されたテーマ・技法Select of “theme”

n=8(人)