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1 四肢骨格パターン形成における BMP の機能 和田 直之 1 ,濃野 勉 1 , 野地 澄晴 2 1 川崎医科大学・分子生物学教室 2 徳島大学・工学部・生物工学科 要旨 四肢の骨格パターン形成には,肢芽で領域特異的に発現する分泌性シグナル分子の作用が重要である。 BMP は,肢芽形成の初期から骨格形成に至るすべての場面で多様なパターンで発現している。四肢形成 過程における BMP の機能として,以前より報告されていた軟骨分化や指間アポトーシスの制御に加え, 肢芽の背腹軸形成や AER 維持の調節,指の形態にも関与することがわかってきた。いくつかの場面では, BMP は他のシグナル分子の機能に対し抑制的に働くことで,四肢の正常発生を促している。ここでは, 主に四肢の初期発生過程における BMP シグナルの機能について解説する。

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四肢骨格パターン形成における BMPの機能

和田 直之 1,濃野 勉 1, 野地 澄晴 2

1川崎医科大学・分子生物学教室 2徳島大学・工学部・生物工学科

要旨

四肢の骨格パターン形成には,肢芽で領域特異的に発現する分泌性シグナル分子の作用が重要である。

BMP は,肢芽形成の初期から骨格形成に至るすべての場面で多様なパターンで発現している。四肢形成

過程における BMP の機能として,以前より報告されていた軟骨分化や指間アポトーシスの制御に加え,

肢芽の背腹軸形成やAER維持の調節,指の形態にも関与することがわかってきた。いくつかの場面では,

BMP は他のシグナル分子の機能に対し抑制的に働くことで,四肢の正常発生を促している。ここでは,

主に四肢の初期発生過程における BMP シグナルの機能について解説する。

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Roles of the BMP family in pattern formation of the vertebrate limb

Naoyuki Wada1, Tsutomu Nohno1, Sumihare Noji2

1Department of Molecular Biology, Kawasaki Medical School, 577 Matsushima, Kurashiki,

701-0192, Japan

2Department of Biological Science and Technology, Faculty of Engineering, University of Tokushima, Minami-Jyosanjima, Tokushima, 770-8506, Japan

Summary

In the process of limb development, various signaling molecules are produced in the organizing center of the limb bud. These molecules regulate pattern formation and the morphogenesis of

the limb. Members of the BMP family and their receptors are expressed in the limb bud in spatiotemporal specific patterns. BMP signaling regulates chondrogenesis of limb mesenchyme, and promotes apoptosis of the interdigital soft tissue. Recently, this signaling was found to be

involved in establishment of dorsoventral polarity of the limb bud and in regulation of limb growth via maintenance of the apical ectodermal ridge. BMPs also regulate digit morphology. In these events, BMPs work together with other signaling molecules, but they sometimes act as

negative regulators of these other molecules so that limb morphogenesis can proceed normally.

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1. はじめに

脊椎動物の四肢発生系は,器官の軸性決定過程,および組織パターン形成過程のメカニズムを探る上でのモデル系として研究・解析されてきた。このなかで BMP/BMP 受容体のシグナル経路は,最初は発生後期の軟骨・骨分化や関節形成,指間アポトーシスの調節という点から解析されてきた。しかし先行実験による知見が蓄積し,また解析方法が多様化する中で,より初期段階での機能解析が進むと,BMP は Shh, FGF, Wnt など他のシグナル分子と協調して四肢の軸形成のすべての場面に登場し,軸性形成に関与することがわかってきた。本稿では,BMPの四肢骨格パターン形成過程のうち,初期の軸性形成と肢芽伸長,個々の指の形態形成における役割についてまとめる。なお,個々の軟骨や骨の分化過程での機能については,本特集をはじめとして多くの総説があるので,本稿では省略する。四肢発生に関わる分子機構の詳細については,他の総説も併せてお読みいただきたい 1)-4)。

2. 四肢の発生と肢芽の構造

脊椎動物の四肢は,体側部に形成される一対の肢芽から形成される。肢芽は最初に側板中胚葉由来の未分化間充織細胞と,それを覆う外胚葉から構成される(図1)。間充織は肢芽先端部にある外胚葉性頂堤(apical ectodermal ridge; AER)の影響下で増殖し,その結果肢芽は遠位に伸長する。増殖により AER から離れた間充織細胞は,骨格パターンを形成しながら軟骨細胞(後に骨に分化)とそれを取り囲む線維芽細胞(後に腱や真皮に分化)とに分化する。筋や神経は,骨格プレパターンを反映して配置される。

間充織の骨格パターンは,肢芽のいくつかの領域から分泌される蛋白質が間充織細胞に作用する時間や濃度により決まる 1)-4)。肢芽先端部の AER は肢芽の伸長や近遠軸形成に必須の構造で,その機能は FGF が担っている。肢芽の後縁部にある極性化活性帯 (zone of polarizing activity; ZPA)は前後軸の極性を決定する領域で,その機能は Sonic hedgehog (Shh) が担っている。さらに,背腹軸は肢芽を覆う外胚葉の極性により決定され,主に背側外胚葉で発現するWnt-7a が関与する。BMP は,これらの機能分子と関連して機能するが,いくつかの系では抑制因子として働いている。

3. 肢芽形成の初期過程~背腹軸決定とAER 形成

肢芽の背側外胚葉ではWnt-7a が発現して背側化を促すのに対し,腹側外胚葉ではEngrailed-1 (En-1)という転写因子が発現し,これが腹側外胚葉でのWnt-7a の発現を抑制して“腹側化”をもたらす 3)-5)。また,AER は背腹外胚葉の境界に形成されると考えられているが,こ

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れは境界付近でのWnt-7a と En-1 の相互作用によると考えられている 3), 5)。BMP の機能解析が進むにつれ,この一連の過程でBMPはWnt-7aを抑制的に調節していることがわかった(図2)。

肢芽が突起状に形成される前後の発生段階で,BMP-2, -4, -7 は予定腹側外胚葉で発現しており,これは En-1 とほぼ同じ領域であり,Wnt-7a とは対称的である 6)。肢芽形成領域にNoggin を過剰発現させると En-1 の発現は低下し,Wnt-7a およびその下流因子である Lmx-1bの発現領域は腹側に広がる 6)。同様の現象は肢芽外胚葉で BMP 受容体 (BMPR-1a)を欠くマウスや,肢芽だけで BMP-4 を欠損させたマウスでも観察される 7), 8), 9)。これらの結果は,BMP シグナルの低下により肢芽全体が背側化することを示している。対照的に,肢芽で活性型BMPR-1b を過剰発現させると En-1 が背側に広がり,Wnt-7a と Lmx-1b の発現は低下する 6)

ので,BMP シグナルの活性化は肢芽の腹側化をもたらすと言える。したがって,初期の肢芽における腹側外胚葉での BMP シグナルは En-1 の発現を促し,これにより腹側でのWnt-7a の発現を抑制して,腹側化を促していると考えられる。

一方,BMP 受容体を肢芽で過剰発現させたり抑制させたりすると,異所性にAER マーカーの FGF-8 の発現が誘導される 6), 7), 9), 10)ことから,BMP シグナルは AER 形成にも関与すると考えられる。AER 形成にはβ-cateninを介したWnt シグナルの関与が知られている 3), 5), 11)が,この経路に BMP シグナルがどのように関与するのかは現在のところ不明である。BMP シグナルはWnt/β-catenin 経路とは独立にMsx の発現を介して FGF-8 の発現誘導・AER 形成に関与する可能性 6)や,En-1 の発現維持を介してWnt-7a との境界形成を促し,AER 形成に関与する可能性などが考えられている。

4. AER 維持における役割~FGF の負の制御因子~

肢芽が伸長する発生段階において,AER を含む先端部外胚葉とその直下の間充織ではBMP-2, -4, -7 が発現している。これらの BMP は AER を維持する上で負の制御因子として機能すると考えられている。実験的に,肢芽で BMP アンタゴニストの Gremlin (Gre)や Nogginを正常よりも長時間発現させると,AER が正常よりも長く維持されるため,長い指骨が形成されたり,指に異所性の突起様構造が形成されるなどの異常が起こる 12), 13)。一方,肢芽に過剰なFGF を投与するとやはり AER が長く維持され,過剰指や合指が生ずる 14)。したがって,AER近傍で発現する BMP は FGF の発現を適度に抑制して,AER からの FGF が過剰に作用することを抑制する,いわば保障機構として機能していると考えられる。ヒトにおいても,FGF 受容体 (FGFR) の変異は合指など四肢骨格の異常を伴う Pfeiffer 症候群,Apert 症候群などcraniosynostosis(頭蓋骨早期癒合症)をもたらすことが知られている 15)。これらの症候群では変異型 FGFR が活性型受容体として機能すると考えられているので,四肢骨格の異常は肢芽で

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FGF シグナルが過剰に活性化された結果であると推定され,過剰な FGF シグナルが正常な形態形成にとってマイナスになることがわかる。

その一方で,正常な四肢形成のためには肢芽はある程度まで伸長・成長する必要があり,その段階までは AER を維持するために BMP 活性を抑制しなければならない。そのため,肢芽には初期段階で BMP 活性を抑制して肢芽の伸長を促し,後期になると BMP を活性化して伸長を抑える機構が働いている 13)(図3)。ここには ZPA で発現する Shh が関与している。ZPA から肢芽前方に拡散した Shh は,間充織に Gre を誘導し,次いでこの Gre が AER で FGF, 特にFGF-4 の発現を誘導・維持する。さらに,FGF-4 は Shh の発現維持に機能するため,Shh→Gre→FGF-4→Shh という正のフィードバックループが出来,これにより AER の維持,ひいては肢芽の伸長が維持される。ここでは,Gre が肢芽先端部での BMP 活性を抑制することにより,フィードバックループが維持されると考えられる。しかし,発生が進行するとGre の発現細胞は肢芽前方にシフトするため,Shh は Gre の発現を維持できなくなり,FGF-4 の発現も低下してフィードバックループは維持されなくなる。その結果,BMP が活性化し,AER は退縮して肢芽の伸長は止まると考えられている。

5. 四肢前後軸形成への関与

ZPA で発現する Shh は四肢骨格パターンを「後方化」するために必須の分子で,肢芽前端に Shh を局所投与すると鏡像対称な骨格パターンができる。多くの軸前多指症の変異マウスでは肢芽前端に異所性の Shh が発現しており,これにより第 1指の前方に過剰指ができると考えられる。ショウジョウバエの肢や翅の前後軸形成の解析から,ハエの BMP オーソログであるDpp は hedgehog シグナルの下流因子として機能することが知られている。肢や翅の原基ではhedgehog が原基の後部区画で発現しており,その前方にある数層の細胞に作用してDpp の発現を促す。誘導されたDppはモルフォゲンとして拡散しながら前後軸方向に濃度勾配を形成し,前後軸の形成を担うことがわかっている。

このような事実をもとに,脊椎動物肢芽の場合も同様の分子カスケードが働いている可能性が示唆された。実際に,肢芽では BMP-2 が ZPA を含む肢芽後半部で発現しており,その発現は Shh により促進されることから,当初 Shh は BMP-2 を介して前後軸形成を担うのではないかと考えられ,これを検証する解析が行われた。しかし,BMP を単独で局所投与しても Shh投与時のような過剰指はできない 16)ため,Shh によって誘導される BMP の役割は現段階では明らかではない。Shh 蛋白質を投与して過剰指を形成させる際に,同時にNoggin を作用させると後方化の程度が弱くなるため,BMP は Shh シグナルを安定・補強している可能性が示唆されている 16)。なお,先に引用した BMP シグナル変異マウスでは,いずれも過剰指形成が観察

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されている 7), 8), 10)。これらのマウスでは,異所性の Shh や HoxD などの遺伝子発現は起こらないため, BMP は Shh シグナル経路とは独立に,AER 形成・維持の調節を介して指の数や形態などの前後軸形成に関与している可能性もある。

6. 指間組織における BMP~指の形態形成への関与とアポトーシス

発生の進行に伴い,肢芽内部では軟骨分化が進行し,骨格パターンが明瞭になる。肢芽先端部はうちわ状に広がり,個々の指の領域はそのまま軟骨分化し,指間領域の一部はアポトーシスにより消失する。この発生段階では,BMP は軟骨の周辺部と指間領域で発現している。軟骨前駆細胞や軟骨細胞では BMPR-1b が発現しているため,ここに指間で発現する BMP が作用して軟骨分化を促進させると考えられる。一方で,指間部で発現する BMP にはさらに他の機能が示唆されており,一つは隣接する指の形態形成への関与,もう一つは指間組織のアポトーシスの誘導である。

トリ胚を用いて細胞死を起こす前の指間領域を外科的に除去すると,その指間部に隣接する指の形態が変化する 17)(図4)。例えば,第2指と第3指の間の領域を除去すると,第2指では関節数が本来より減り,外観上第1指に似た形態となる(以下,「前方化」とよぶ)(図4B)。この結果は一見,指間領域の除去により周辺組織が低形成になったと考えることもできるが,除去組織の後方にある第3指の形態は変化しない。そのため,指間部はその直前にある指の原基にだけ作用して,その指の形態を調節していると考えられる。以下の実験結果から,指間のBMP シグナルが指の形態を調節している可能性が指摘されている。①指間にNoggin 蛋白質を投与すると形態はやはり前方化すること(図4C),②逆に Shh を指間に投与するとその周囲での BMP-7 や BMPR-1b の発現が上昇し,関節数が増えて後方化したようになること(図4D),③Nogginと Shhを同時に投与すると変化は起こらないので,両者の作用は拮抗していること,などである。マウス胚肢芽でも,活性型 BMPR-1b を過剰発現させると一部の指の形態が後方化したようになる 10)。したがって,指間部における BMPR-1b を介したシグナルの亢進は指の形態を後方化させ,抑制は形態の前方化を促すといえる。

肢芽,特に指間でのアポトーシスは TGF-βおよび BMP により調節されている 18), 19)。指間組織に TGF-βを作用させるとアポトーシスが抑制され,指状の軟骨塊ができたり合指となったりする。反対に,BMP は指間組織のアポトーシスを誘導する方向に作用する。一方,BMPは指の軟骨分化を促進すると考えられ,隣接した組織の一方では軟骨分化促進,もう一方ではアポトーシスという一見相反する作用を示す。これについての説明として,BMP の作用が組織の分化状態によって異なること,また BMP の濃度による細胞の応答の違いなどが挙げられる。例えば,指原基やその周囲ではNoggin や Gremlin も発現しているが,この発現は指間組織で

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は見られない。そのため,ある閾値以下の BMP シグナルは軟骨分化を促進するが,閾値を超えると細胞死に向かうと考えることができる。実際,指間にGremlin を局所投与するとアポトーシスが抑制されて合指となる 20)。面白いことに,指間に水かきを持つアヒル胚肢芽では,指間での Gre の発現がニワトリ胚に比べ亢進している 19)。そのため,自然の状態でアポトーシスが抑制されて水かきが形成されると考えられる。

7. おわりに

四肢研究の解析手法は,従来は主にニワトリ胚を用いての胚操作あるいはウィルスベクター(RCAS) による遺伝子強制発現系を基にしたものが主流であった。最近はこれに加えて, Cre-LoxP システムを用いた,マウス胚肢芽での遺伝子操作による解析もかなり増えており,従来は難しかった遺伝子機能欠損によるデータも蓄積してきた。BMP に限らないが,今後は目的遺伝子の過剰発現系と機能欠損の両面の知見をあわせることで,分子機能をより詳細に解析・理解することが可能になると考えられる。本文中にまとめたように,BMP は肢芽の発生過程を通じてさまざまな場所で発現しているが,その作用は発生ステージにより多様であること,また指と指間部に見られるように,近接した領域でもその作用が大きく異なっている。そのため,今後はステージや作用領域をより限定して機能解析を進めていく必要があると考えられる。

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引用文献

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3. Niswander L: Pattern formation: old models out on a limb. Nature Rev Genet 4, 133-142 (2003).

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5. Tickle C, Munsterberg A: Vertebrate limb development- the early stages in chick and mouse. Curr Opin Genet & Dev 11, 476-481 (2001).

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9. Soshnikova N, Zechner D, Huelsken J, et al.: Genetic interaction between Wnt/b-catenin and BMP receptor signaling during formation of the AER and the dorsal-ventral axis in the limb. Genes & Dev 17, 1963-1968 (2003).

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12. Pizette S, Niswander L: BMPs negatively regulate structure and function of the limb apical ectodermal ridge. Development 126, 883-894 (1999).

13. Scherz PJ, Harfe BD, McMahon AP, Tabin CJ: The limb bud Shh-Fgf feedback loop is terminated by expansion of former ZPA cells. Science 305, 396-399 (2004).

14. Sanz-Ezquerro JJ, Tickle C: Fgf signaling controls the number of Phalanges and tip formation in developing digits. Curr Biol 13, 1830-1836 (2003).

15. Wilkie AOM, Oldridge M, Tang Z, Maxson Jr RE: Craniosynostosis and related limb anomalies. In Novartis Foundation Symposium 232, The molecular basis of

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19. Ganan Y, Macias D, Basco RD, et al.: Morphological diversity of the avian foot is related with the pattern of msx gene expression in the developing autopod. Dev Biol 196, 33-41 (1998).

20. Merino R, Rodriguez-Leon J, Macias D, et al.: The BMP antagonist Gremlin regulates outgrowth, chondrogenesis and programmed cell death in the developing limb. Development 126, 5515-5522 (1999).

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図の説明

図1 四肢骨格の軸性と肢芽の構造

A; ニワトリ胚後肢の骨格パターン。骨格の軸性を右側に示す。B; 右肢芽の背側観。この段階では間充織はまだ未分化で,軟骨分化していない。肢芽先端部の外胚葉性構造であるAER(黒)では FGF が発現し,肢芽後端の間充織構造である ZPA(斜線)では Shh が発現している。C; Bの肢芽の断面(Bの点線)。背側外胚葉(灰色)ではWnt-7a が発現している。

図 2 肢芽背腹軸形成およびAER 形成における BMPの機能

A; 肢芽形成のごく初期段階では,予定背側外胚葉でWnt-7a が,腹側外胚葉で複数の BMP とEngrailed-1 が発現している。B, C; 背側外胚葉ではWnt-7a が発現し,直下の間充織に作用して背側化を促す。これに対し,腹側外胚葉では BMP 受容体を介したシグナルが En-1 の発現を維持する。これによりWnt-7a の発現が抑制され,直下の間充織は腹側化する。一方,背腹外胚葉の境界付近では,BMP シグナルがMsx の発現を誘導し,次いで FGF-8 の発現を誘導してAER 形成に至る。

図 3 AER-ZPA 相互作用と BMP

A; 伸長段階にある肢芽では,ZPA から分泌される Shh(斜線)がその前方の間充織に作用して Gremlin(Gre)の発現を誘導する(薄灰色)。Gre は BMP の作用を抑制して AER での FGF-4の発現を維持する(濃灰色)。FGF-4 は ZPA での Shh の発現を維持するので,Shh と Gre, FGF-4間でのポジティブフィードバックループが成立する。B; 肢芽がある程度伸長・成長すると,Gre の発現領域が肢芽の前方にシフトするため,Shh による発現維持が困難になる(発生後期には Shh の近傍での Gre の発現は起こらない)。そのため,Gre の発現は低下して BMP が活性化するため,FGF-4 の発現は抑制され,ひいては AER を退縮させるように働く。

図 4 指間組織が指の形態に及ぼす影響と BMP

A; ニワトリ胚の後期肢芽では,指を形成する軟骨塊と指間部の軟組織(灰色)が明瞭となる(上段)。ニワトリ胚の後肢では指ごとに関節の数が違うため,指アイデンティティーの同定が容易である(下段)。B; 第2指と第3指の指間部を除去すると(濃灰色),第2指が第1指に似た形状となる(1*)。第3指の形状に変化はない。C; 第3指と第4指の間に Noggin をしみ込ませ

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たビーズ(黒丸)を投与すると,第3指が第2指に似た形状となる(2*)。D; 第3指と第4指の間に Shh をしみ込ませたビーズ(白丸)を投与すると,第3指の関節数が増え,第4指と同じ数になる(4*)。Shh 投与により,周辺組織では BMP-7 と BMPR-1b の発現が上昇する。

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図1

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図2

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図3

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図4