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自動車ガソリンおよび石油業界におけるVOC対策について
神奈川県 「ガソリンベーパー」を考えるシンポジウム
2014年1月29日JX日鉱日石エネルギー株式会社 研究開発企画部長
(石油連盟 自動車用燃料専門委員会 委員長)
斎藤 健一郎
本日の概要1. 自動車ガソリン
1-1 概要1-2 製造方法1-3 要求品質1-4 なぜ蒸気圧は求められるのか?1-5 蒸気圧の低減方法1-6 蒸気圧に関するトピック
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1-6 蒸気圧に関するトピック
2. 石油業界におけるVOC対策2-1 VOC(揮発性有機化合物)排出規制について2-2 VOC発生源とその対策2-3 VOC排出量の推移2-4 大気汚染状況と今後の対策について
1-1概要
自動車ガソリンは、
○ガソリンエンジン(火花点火式内燃機関)を搭載する自動車の燃料。
○炭素数範囲C4~C10程度の炭化水素を主成分とする混合物。○常温常圧下で液体。蒸発しやすく、高い引火性を有する。
○日本では、オクタン価(注)の違いによって、レギュラーガソリンとプレミアム(ハイオク)ガソリンに分類される。とプレミアム(ハイオク)ガソリンに分類される。
注:自動車ガソリンのアンチノック性を表す重要な指標。オクタン価が高いほど、自動車のエンジン内においてノッキング(異常燃焼)が起きにくく、より効率的な燃焼を実現することができる。
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1-2製造方法
○ 原油を加熱して常圧蒸留装置に送り込み、原油に含まれる各留分の沸点の違いを利用して、ガス・LPG、ナフサ、灯油、軽油および残油留分に分離する。(一次処理)
○ 蒸留によって得られた各留分を脱硫、改質、分解等の処理を行い、最終的に目標とする製品に加工する。(二次処理)
⇒自動車ガソリンは、要求品質に合わせて、二次処理で得られた各種ガソリン基材を調合し、製品化する。
○ 石油精製は各製品が同時に生産される仕組みであるため、石油製品は「連産品」と呼ばれている。「連産品」と呼ばれている。
原油採掘(産油国)
原油精製(国内製油所)
原油輸送
原油から石油製品ができるまで
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1-3 要求品質
○ 自動車ガソリンは、「揮発油等の品質の確保等に関する法律」(以下、品確法)によって、品質が保たれている。
○ 品確法では、環境・安全・健康に係る項目を特に重要であるとし、必ず順守しなければならない「強制規格」として定めている。さらに、強制規格の項目に性能に係る項目を加えた標準的な品質基準として「標準規格」を定めている。
強制規格と標準規格
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蒸気圧はガソリンの揮発性を示す指標の一つ。(値が大きいほど蒸発しやすい。)
運転性と燃料蒸発ガスの2つの観点で要求されている。
強制規格 標準規格(JIS)鉛 検出されない ←硫黄分 0.001質量%以下 ←MTBE 7体積% ←ベンゼン 1体積% ←灯油 4体積% ←メタノール 検出されない ←実在ガム 5mg/100ml以下 ←色 オレンジ色 ←エタノール 3体積%以下 ←含酸素分 1.3質量%以下 ←オクタン価(RON) レギュラー89以上/ハイオク96以上密度(15℃) 0.783 g/cm3以下蒸留性状10%留出温度 70℃以下50%留出温度 75℃以上 110℃以下90%留出温度 180℃以下終点 220℃以下残油量 2.0体積%
蒸気圧44kPa以上 78kPa以下
(寒候用上限93kPa、夏季用上限65kPa)
銅板腐食(50℃、3h) 1以下
酸化安定度 240min以上
項目
○夏季高温時、蒸気圧が高すぎると燃料ライン中でベーパーロック(蒸気閉塞)を発生し、アイドリング不良や加速性不良の原因となる。
○一方、冬季などの低温時、蒸気圧が低すぎるとガソリンの蒸気が生成しにくくなり、始動性に影
①運転性
1-4 なぜ蒸気圧は求められるのか?
ガソリンの蒸気が生成しにくくなり、始動性に影響を与える。
⇒季節によって要求される揮発性は異なるため、自動車ガソリンの蒸気圧は適切な範囲で設定されている。44kPa以上78kPa以下(寒候用上限93kPa以下)
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○ 夏季の蒸気圧が高すぎると、気温変化や走行時の燃料タンク内の温度上昇によって、タンク内のガソリンから炭化水素ベーパーが蒸発し、車両から排出される。
⇒炭化水素ベーパーは光化学スモッグの原因物質であるため、 石油業界では自主的に夏季用の自動車ガソリンの蒸気圧を低減している。夏季用上限65kPa以下
②車両からの燃料蒸発ガス
1-4 なぜ蒸気圧は求められるのか?
○自動車側の対策(キャニスタ容量大型化等)と合わせて対策。
① ホット ソークロス:HSL駐車直後に発生
② ダイアーナルブリージングロス:DBL長時間駐車に発生
③ ランニングロス:RL走行中に発生 8
<車両からの燃料蒸発ガス>
○ 管理方法
5月1日から9月30日に製油所から出荷する自動車ガソリンの蒸気圧を65kPa以下としている。
○ 設備対応
① ガソリンブレンド基材からブタン類を除去するデブタナイザーを増強
② 除去したブタン類(減少分)を補うための装置増強(FCC装置、改質装置)
1-5 蒸気圧の低減方法
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FCC装置
リフォーメート
ブタン類
FCC装置 デブタナイザー
接触改質装置
ナフサ
FCCガソリン
ガソリン(製品)
増強(ブタン類除去)増強(ブタン類減少分補填)
デブタナイザー
デブタナイザー
FCC装置
リフォーメート
ブタン類
FCC装置 デブタナイザーデブタナイザー
接触改質装置
ナフサ
FCCガソリン
ガソリン(製品)
増強(ブタン類除去)増強(ブタン類減少分補填)
デブタナイザーデブタナイザー
デブタナイザーデブタナイザー
ガソリン蒸気圧低減の対応
1-6 蒸気圧に関するトピック
○ 石油業界は、植物生まれの燃料であるバイオエタノールをブレンドした「バイオガソリン(バイオETBE配合)」の販売を2007年4月より開始、順次販売SS数を拡大。
○ 2010年度、政府の要請に基づく「原油換算21万kl分のバイオ燃料導入」の自主目標を達成。
○ 現在、エネルギー供給構造高度化法で定められた、2017年度における原油換算50万kl分のバイオ燃料導入に向けて、着実に取り組みを推進している。
バイオ燃料への取り組み
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石油業界のバイオ燃料の取り組み
算50万kl分のバイオ燃料導入に向けて、着実に取り組みを推進している。
1-6 蒸気圧に関するトピック
○エタノールを直接混合するとガソリンの蒸気圧が上昇し、光化学スモッグの発生を増加させる可能性がある。(ETBE混合ではこのような問題はない。)
○石油業界は、品質維持および環境影響の観点で、バイオエタノールをガソリンに直接混合するのではなく、バイオETBEを製造して混合することが適当であると判断。
直接混合方式とETBE混合方式
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ETBE方式と直接混合方式の比較
して混合することが適当であると判断。
バイオETBE混合ガソリンの製造工程
バイオETBE方式 直接混合方式
品質安定性・安全性
高い低い(水分が混入すると、ガソリンに混入しているエタノールが水と溶け合いガソリンと分離))
揮発性通常のガソリンと変わらない
通常のガソリンより揮発性が増し、光化学スモッグの発生を増加させるおそれがある。
2-1 VOC(揮発性有機化合物)排出規制について
○平成16 年5 月の大気汚染防止法の改正によって、平成18 年4 月1 日よりVOC排出規制が施行された。
○「法規制」と「事業者の自主的取組」のベストミックスによって、平成22年度までに、工場等の固定発生源からのVOC排出総量を平成12年度比で3割程度抑制することを目標とする。
VOC排出規制制度の概要
13VOC排出事業者
法規制(対象:6施設類型・大規模施設)・VOC排出施設の届出義務・排出基準の遵守義務・VOC濃度の測定義務
事業者の自主的取組・規制対象外となる中小規模の施設・規制対象外の施設類型・排出口以外の開口部・屋外塗装作業など、施設以外からの揮発・飛散
VOC排出規制制度の概要
H12年度⇒H22年度VOC排出量3割程度削減
○ 原油・ガソリン・ナフサを貯蔵する容量2000KL(新設は1,000KL)以上の固定屋根式タンクは、VOC排出量の多い施設として規制の対象になり、排出基準が設定されている。
○ 排出形態:
受入時、タンク内の液面上昇によって気相部の炭化水素ベーパーが押し上げられ、ベントから排出される。また、1日の気温変化によっても排出される。
○ 対策:
2-2 VOC発生源とその対策
①貯蔵施設:固定屋根式タンク
○ 対策:密閉構造の浮屋根式タンクへの改造
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固定屋根式タンクの排出形態 対策
密閉構造であるため、液面からの炭化水素ベーパーの蒸発を抑制することができる。
受け入れ時の排出 1日の気温変化による排出 浮屋根式タンク
○積み込み時、タンク内の液面上昇によって気相部の炭化水素ベーパーが押し上げられ、給油口やベントから排出される。
○対策:
給油口またはベントに管を接続し、ベーパー回収装置によって回収する。
2-2 VOC発生源とその対策
②出荷設備:タンクローリー、油槽船
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出荷時における排出形態 対策
タンクローリー 油槽船 タンクローリー 油槽船
給油口またはベントに管を接続し、タンク気相部の炭化水素ベーパーを回収装置に導く
○ 石油業界:貯蔵タンクの形式改造を中心にして対策を行った結果、VOC排出量は、平成12年度6.1万トンから平成22年度4.3万トンへと減少し、31%の削減を達成
○ 全国:印刷、塗装などVOCに係る業界でもそれぞれ対策に努めた結果、VOC排出量は、平成12年度141.7万トンから平成22年度79.1万トンへと減少し、44%の削減を達成
⇒大気環境中のVOC(非メタン炭化水素(NMHC))濃度は減少
2-3 VOC排出量の推移
VOC排出量の推移
<石油業界>
非メタン炭化水素(NMHC)濃度の年平均値
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データ出所:石油連盟
データ出所:環境省
<石油業界>
<全国>
2-4 大気汚染状況と今後の対策について
環境省 中央環境審議会 大気・騒音振動部会(H25年12月27日(金)) (資料1-2抜粋)○ 「光化学オキシダントの平均濃度は漸増傾向にあり、環境基準達成率は1%に満たない状況にある。」
○ 「PM2.5については、平成21年に大気環境基準が設定されたところ、年間の平均的な濃度は減少傾向にあるものの、環境基準の達成率は3~4割程度と低い状況にある。」
○ 「光化学オキシダントやPM2.5は、生成機構の解明が不十分であり、対策検討に必要な発生源データが不足している。また、越境大気汚染による影響も示唆されているところであり、これらの課題に対応し、今後必要な対策を検討していく必要がある。」
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る。」⇒「微小粒子状物質等専門委員会」を設置し、これらの事項について調査していく。
光化学オキシダント(Ox)の年平均値の推移
大気汚染状況
PM2.5の年平均値の推移
出所:環境省「大気汚染状況について」 出所:環境省「平成22年度 大気汚染状況について~微小粒子状物質(PM2.5)~」