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17 SANYO DENKI Technical Report No.40 Nov. 2015 新製品紹介 高風量大型遠心ファン San Ace C225 , San Ace C221 佐藤 小川 範昭 小野沢 Kei Sato Noriaki Ogawa Izumi Onozawa 加藤 英俊 潤傑 奥田 裕介 Hidetoshi Kato Yen Junchieh Yusuke Okuda 1. まえがき 近年,サーバや通信機の高性能化・高密度化にともなう装置内 部の発熱の増加により,装置内における冷却性能の向上が必要 とされている。そのため,そこに使用されるファンの高風量化・ 高静圧化の要求が高まっている。 当社は,こうした要求に対してさまざまな高風量・高静圧の軸 流ファン・ブロアを製品化してきた。しかし,ファンに求められ る用途により,軸流ファン・ブロアとは異なる,新たな選択肢と して遠心ファンが必要となってきた。 当社では,φ 175 サイズまでの遠心ファンを製品化してきた が,さらなる高風量・高静圧化のニーズに応えるべく,大型遠心 ファンのφ 225mm × 99mm 厚およびφ 221mm × 71mm 厚の 2 機種を開発し製品化した。 この高風量大型遠心ファン「San Ace C2259TS タイプおよ び「San Ace C2219TP タイプ(以下,開発品という)の特長と 性能を紹介する。 2. 開発品の特長 12 に開発した「San Ace C225」および「San Ace C221の外観を示す。 開発品の特長は以下の通りである。 1高風量・高静圧 2低消費電力・低騒音 3PWM 速度コントロール機能 4ワイド電圧レンジ対応 開発品は,羽根・フレーム・モータを新規に設計し,高風量・ 高静圧を実現している。 1 San Ace C2259TS タイプ 2 San Ace C2219TP タイプ

高風量大型遠心ファン San Ace C225 San Ace C22117 SANYO DENKITechnical Report No.40 Nov. 2015 新製品紹介 高風量大型遠心ファン 「San Ace C225」,「 San Ace

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Page 1: 高風量大型遠心ファン San Ace C225 San Ace C22117 SANYO DENKITechnical Report No.40 Nov. 2015 新製品紹介 高風量大型遠心ファン 「San Ace C225」,「 San Ace

17 SANYO DENKI Technical Report No.40 Nov. 2015

新製品紹介

高風量大型遠心ファン「San Ace C225」, 「San Ace C221」佐藤 圭 小川 範昭 小野沢 泉Kei Sato Noriaki Ogawa Izumi Onozawa

加藤 英俊 嚴 潤傑 奥田 裕介Hidetoshi Kato Yen Junchieh Yusuke Okuda

1. まえがき

近年,サーバや通信機の高性能化・高密度化にともなう装置内

部の発熱の増加により,装置内における冷却性能の向上が必要

とされている。そのため,そこに使用されるファンの高風量化・

高静圧化の要求が高まっている。

当社は,こうした要求に対してさまざまな高風量・高静圧の軸

流ファン・ブロアを製品化してきた。しかし,ファンに求められ

る用途により,軸流ファン・ブロアとは異なる,新たな選択肢と

して遠心ファンが必要となってきた。

当社では,φ 175サイズまでの遠心ファンを製品化してきた

が,さらなる高風量・高静圧化のニーズに応えるべく,大型遠心

ファンのφ225mm×99mm厚およびφ221mm×71mm厚の

2機種を開発し製品化した。

この高風量大型遠心ファン「San Ace C225」9TSタイプおよ

び「San Ace C221」9TPタイプ(以下,開発品という)の特長と

性能を紹介する。

2. 開発品の特長

図1,2に開発した「San Ace C225」および「San Ace C221」

の外観を示す。

開発品の特長は以下の通りである。

(1) 高風量・高静圧

(2) 低消費電力・低騒音

(3) PWM速度コントロール機能

(4) ワイド電圧レンジ対応

開発品は,羽根・フレーム・モータを新規に設計し,高風量・

高静圧を実現している。

図1 「San Ace C225」9TSタイプ

図2 「San Ace C221」9TPタイプ

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回転方向

風吹出方向

4-M4(固定用ネジ穴)

風吹出方向

回転方向風吹出方向

風吹出方向

4-M4(固定用ネジ穴)

φ15

3+2 0

φ22

5+2 0

90.4±1.599±1.5

64.9±

1

27±1

+30300 0

45°±1°

φ104±1

φ58±0.3

(10)

27±1

+30300 0

45°±1°

64.9±

1

φ16

1±1

φ22

1±1

63.5±171±1

φ104±1

φ58±0.3

(10)

図版の文字123

英語版用Condens

英語版用Times Ten

回転方向

風吹出方向

4-M4(固定用ネジ穴)

風吹出方向

回転方向風吹出方向

風吹出方向

4-M4(固定用ネジ穴)

φ15

3+2 0

φ22

5+2 0

90.4±1.599±1.5

64.9±

1

27±1

+30300 0

45°±1°

φ104±1

φ58±0.3

(10)

27±1

+30300 0

45°±1°

64.9±

1

φ16

1±1

φ22

1±1

63.5±171±1

φ104±1

φ58±0.3

(10)

図版の文字123

英語版用Condens

英語版用Times Ten

18SANYO DENKI Technical Report No.40 Nov. 2015

高風量大型遠心ファン「San Ace C225」, 「San Ace C221」

3. 開発品の概要

3.1 寸法諸元開発品の寸法諸元を図3,4に示す。

3.2 インレットノズルインレットノズルとは,吸込まれる空気の流れを整えるため

にファン吸込口に取り付けるノズルのことであり,ファンを組

み込む装置側に取り付けられる。このインレットノズルの形状

によって,遠心ファンの性能は大きく影響を受ける。当社は機

種ごとに,専用のインレットノズルを取り揃えている。

図3 「San Ace C225」9TSタイプの寸法諸元 (単位:mm)

図4 「San Ace C221」9TPタイプの寸法諸元 (単位:mm)

開発品とインレットノズルの取付例を図5に,取付寸法例を

図6,7に示す。開発品の取り付けにはM4ネジを4個,インレッ

トノズルの取り付けにはM4ネジ,ナットを各4個使用する。

また,装置側にインレットノズルと同様の形状を設けること

で,代替することも可能である。

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インレットノズル

開発品

109-1134

9TS48P0G001

M4ネジナット

M4ネジ

図版の文字123

英語版用Condens

英語版用Times Ten

図版の文字123

英語版用Condens

英語版用Times Ten

(21)

(2)

(29.

5)

(3.5

)

図版の文字123

英語版用Condens

英語版用Times Ten

(21)

(2)

(29.

5)

(3.5

)

9TS48P0G001

9TS48P0H001

9TP48P0G001

9TP48P0H0019TP24P0H001

5

200

0

400

10 2015 25 30

800

静圧

静圧

600

1000

DC48V

0 200 400 600 800 1000

0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

4.0

(m3/min) (m3/min)

(CFM)

(Pa)(inch H2O) (inch H2O)PWMデューティ100%

(CFM)風量風量

0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

2000 400 600 800

0 5 10 15 20 25

200

400

600

800

DC24V/48V(Pa) PWMデューティ100%

図版の文字123

英語版用Condens

英語版用Times Ten

9TS48P0G001

9TS48P0H001

9TP48P0G001

9TP48P0H0019TP24P0H001

5

200

0

400

10 2015 25 30

800

静圧

静圧

600

1000

DC48V

0 200 400 600 800 1000

0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

4.0

(m3/min) (m3/min)

(CFM)

(Pa)(inch H2O) (inch H2O)PWMデューティ100%

(CFM)風量風量

0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

2000 400 600 800

0 5 10 15 20 25

200

400

600

800

DC24V/48V(Pa) PWMデューティ100%

図版の文字123

英語版用Condens

英語版用Times Ten

19 SANYO DENKI Technical Report No.40 Nov. 2015

3.3 特性3.3.1 一般特性開発品の一般特性を表1,2に示す。

なお,遠心ファンの特性は,当社インレットノズルを装着して

取得した値である。

3.3.2 風量-静圧特性開発品の風量-静圧特性例を図8,9に示す。

図5 「San Ace C225」9TSタイプとインレットノズル取付例

図6 「San Ace C225」9TSタイプとインレットノズル取付寸法例 (単位:mm)

図7 「San Ace C221」9TPタイプとインレットノズル取付寸法例 (単位:mm) 3.3.3 PWMコントロール機能

開発品は全てPWMコントロール機能を有し,速度コント

ロールが可能である。

3.3.4 ワイド電圧レンジ対応装置における電圧変動に対応できるように使用電圧範囲は,

定格電圧DC48Vにおいては36~ 72V, DC24Vにおいては16

~ 36Vと幅広く設定した。

3.4 期待寿命開発品の周囲温度60˚Cにおける期待寿命(残存率90%)は,

40,000時間である。

図8 「San Ace C225」9TSタイプの風量-静圧特性例

図9 「San Ace C221」9TPタイプの風量-静圧特性例

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図版の文字123

英語版用Condens

英語版用Times Ten

0

100

200

300

400

500

600

700

800

900

0 5 10 15 20 25

静圧

[Pa]

風量[m3/min]

軸流ファン : 9GV2048P0G201軸流ファン : 9GV2048P0G201

DC48V

システムインピーダンス例システムインピーダンス例

動作点動作点

開発品 : 9TP48P0G001開発品 : 9TP48P0G001

20SANYO DENKI Technical Report No.40 Nov. 2015

高風量大型遠心ファン「San Ace C225」, 「San Ace C221」

4. 開発のポイント

4.1 羽根設計本開発品は,従来品最大サイズのφ175遠心ファンと比べて

大型となり,羽根に遠心力が大きくかかることから,強度向上の

ために,一体成型を採用した。

羽根の形状・角度・枚数の最適化を行うことにより,低騒音・

低消費電力とともに高い冷却性能を実現した。

モータ部の発熱を抑えるために,ファン内部に風が通り易い

構造とした。

4.2 モータ設計低消費電力を実現するために,羽根形状の最適化だけでなく,

モータ部の高効率化を図った。

まず,ステータ形状を見直し,巻線の占積率を上げた。ステー

タを大きくすればモータ効率を向上させやすいが,羽根に対し

てロータ部が大きくなり,空気の流れを阻害してしまい,風量-

静圧特性が低下する。そのため,風量-静圧特性が極力低下せ

ず,モータ効率が最も向上するステータサイズを設計した。

また,マグネットの材料および着磁方法を見直した。材料は

従来品より高性能かつ仕様に合う最適なマグネットを選定し

た。着磁方法についても最適化を行い,高効率化を実現した。

駆動回路に関しても,構成や電子部品を見直し,回路損失を低

減することにより,電力の低減を行った。

5. 軸流ファンとの比較

ここでは,開発品のφ221遠心ファン9TP48P0G001と同等

体積の軸流ファン9GV2048P0G201の特性差を比較する。

図10に,軸流ファンを開発品と同等冷却性能となる回転速度

で運転した場合の風量-静圧特性例を示す。

表1 「San Ace C225」9TSタイプの一般特性

表2 「San Ace C221」9TPタイプの一般特性

図10 風量-静圧特性比較例

型番 定格電圧[V]

使用電圧範囲[V]

PWMデューティサイクル

[%]

定格電流[A]

定格入力[W]

定格回転速度

[min-1]

最大風量 最大静圧 音圧レベル[dB(A)]

使用温度範囲[˚C]

期待寿命[h][m3/min] [CFM] [Pa] [inchH2O]

9TS48P0G001 48 36~ 72100 3.65 175.2 3550 28.10 992 861.0 3.46 74.5

-20~ +60

40,000/60˚C 15 0.24 11.5 1000 7.85 277 68.5 0.28 52.0

9TS48P0H001 48 36~ 72100 2.08 99.8 2900 22.70 801 590.0 2.37 70.5

-20~ +70 15 0.24 11.5 1000 7.85 277 68.5 0.28 52.0

注1:入力PWM周波数:25kHz注2:PWMデューティサイクル0%時の回転速度は0min-1

注3:当社インレットノズル(型番:109-1134)装着時

型番 定格電圧[V]

使用電圧範囲[V]

PWMデューティサイクル

[%]

定格電流[A]

定格入力[W]

定格回転速度

[min-1]

最大風量 最大静圧 音圧レベル[dB(A)]

使用温度範囲[˚C]

期待寿命[h][m3/min] [CFM] [Pa] [inchH2O]

9TP48P0G001 48 36~ 72100 2.75 13200 3650 210 742 760.0 3.05 74

-20~ +60

40,000/60˚C

15 0.2 9.6 1000 5.75 203 57.4 0.23 53

9TP48P0H001 48 36~ 72100 1.6 76.8 3050 17.6 622 530.0 2.13 71

-20~ +7015 0.2 9.6 1000 5.75 203 57.4 0.23 53

9TP24P0H001 24 16~ 36100 3.2 76.8 3050 17.6 622 530.0 2.13 71

-20~ +7015 0.4 9.6 1000 5.75 203 57.4 0.23 53

注1:入力PWM周波数:25kHz注2:PWMデューティサイクル0%時の回転速度は0min-1

注3:当社インレットノズル(型番:109-1135)装着時

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図版の文字123

英語版用Condens

英語版用Times Ten

235

221

210

220

230

240

消費電力

[W]

-6%75

72

70

72

74

76

軸流ファン 開発品軸流ファン 開発品

音圧レベル

[dB

(A)]

-3dB(A)

遠心ファン

軸流ファン

インレットノズル

空気の流れ(吸込側)

空気の流れ(吸込側)

空気の流れ(吐出側)

空気の流れ(吐出側)

21 SANYO DENKI Technical Report No.40 Nov. 2015

5.1 消費電力,音圧レベルの比較想定システムインピーダンスにおける動作点の 15m3/min,

420Pa付近において,各ファンの消費電力および音圧レベルの

実測値を図11に示す。

開発品は軸流ファン使用時に比べて,消費電力は6%,音圧レ

ベルは3dB(A) 低減できる。

5.2 空気の流れ方の比較開発品は軸流ファンと同等冷却性能時において,消費電力及

び音圧レベルの大幅な低減が望める。

ただし,遠心ファンと軸流ファンとでは空気の流れ方が異な

るため,組込む装置の流路上の制約や流路設計の考え方に応じ

てどちらが適正かを判断する必要がある。

遠心ファンおよび軸流ファンについて,空気の流れ方のイ

メージを図12に示す。

軸流ファンは吸込んだ空気を同軸方向に吐き出す。遠心ファ

ンは吸込方向に対し,ラジアル方向に空気を吐き出す。

5.3 遠心ファンの使用例遠心ファンを装置に組み込んだ配置例を図13に示す。

装置の下部から外気を吸込み,発熱体によって熱せられた空

気を上部から吐き出す。

この装置では,軸流ファンの場合,装置の天面に十分なスペー

スを確保する必要があるが,遠心ファンの場合,スペースが小さ

くても,効率良く装置を冷却することができる。

その他,従来の冷却のみを使用目的とするだけでなく,半導

体や医療薬の製造ラインで用いられるクリーンルーム用大型

FFU(Fan Filter Unit)のような,空気を移動させることを目的

とした使用方法も可能である。

図11 消費電力と音圧レベル比較例図12 遠心ファン及び軸流ファンの空気の流れ方

図13 遠心ファンの使用例

遠心ファン

発熱体

Page 6: 高風量大型遠心ファン San Ace C225 San Ace C22117 SANYO DENKITechnical Report No.40 Nov. 2015 新製品紹介 高風量大型遠心ファン 「San Ace C225」,「 San Ace

22SANYO DENKI Technical Report No.40 Nov. 2015

高風量大型遠心ファン「San Ace C225」, 「San Ace C221」

佐藤 圭2009年入社クーリングシステム事業部 設計部冷却ファンの開発 ,設計に従事。

小川 範昭1991年入社クーリングシステム事業部 設計部冷却ファンの開発 ,設計に従事。

小野沢 泉2007年入社クーリングシステム事業部 設計部冷却ファンの開発 ,設計に従事。

加藤 英俊2002年入社クーリングシステム事業部 設計部冷却ファンの開発 ,設計に従事。

嚴 潤傑2007年入社クーリングシステム事業部 設計部冷却ファンの開発 ,設計に従事。

奥田 裕介2010年入社クーリングシステム事業部 設計部冷却ファンの開発 ,設計に従事。

6. むすび

本稿では,当社の新製品ラインアップとなる高風量大型遠心

ファン「San Ace C225」9TSタイプ,「San Ace C221」9TPタイ

プの2機種の特長と性能の一部を紹介した。

羽根形状,モータ駆動回路を最適化したことにより,高風量・

高静圧を達成しながら,低消費電力・低騒音化を実現した。2機

種とも同サイズの遠心ファンにおいて,業界トップ※)の性能を

実現した。

今後とも装置の高発熱化・高密度化が進み,また,環境面の配

慮から,低騒音化・低消費電力化の要求が高まっていくと予測さ

れる。

本開発品はこれらの課題に有効な特性を持ち,解決に貢献で

きるものと考える。

※)  「San Ace C225」 2015年1月23日現在。 同サイズの遠心ファンとして。 騒音と電力は,風量・静圧同等時の比較。当社調べ。

    「San Ace C221」

2015年2月9日現在。 同サイズの遠心ファンとして。 騒音と電力は,風量・静圧同等時の比較。当社調べ。