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- 61 - 互いを認め合える人間関係づくりに関する研究 -山口県版学校適応感調査Fitの用を通して- 山口市立阿知須中学校 教諭 藤山 峰至 1 研究の意図 (1) 研究の背景 「中学校学習指導要領解説 特別動編」(平成20年)には、近の子どもたちは、「自分 に自信がもてず,人間関係に不安感じていた,ましい人間関係築けず社会性の育成が 不十分であったす」 *1 との指摘があ。こ踏まえて、「特別動が,い生や 人間関係築こうとす自主的,実践的な態度育て教育動であこと一層明確に すため,目標に『人間関係』加えた」 *1 とあことか、ましい集団動通して豊か な人間関係育成していくことは喫緊の課題であといえ。 原籍校においても、友だち同士では意見言えが集団の場面になと発言できなかった、 他者とどのうに関っていか悩み抱えていたす生徒見かけことがあ、互い 認め合うことのでき人間関係育むことが必要であ。 (2) 研究テーマ設定の理由 ア 互いを認め合える人間関係 互い認め合え人間関係育むためには、生徒一人ひとに自信もたせ、個性や能力 適性等生かしていこうとす態度身に付けことが切であ。 そのためには、学級におけ人間関係や生徒一人ひとの学校生に対す適応状客 観的に把握した上で、互いに発言し合い、自他の考えや気持ち共し、できだけくの 人の考え生かしなが折合い付けうな環境づくや動仕組む必要があ と考えた。 イ 山口県版学校適応感調査Fitの用 山口県版学校適応感調査Fitとは、生徒の学校生等への適応感定すために、山口 県教育員会と山口学との連携で作成さた調査であ。 研究では、この山口県版学校適応感調査Fit用して学校生に対す適応状把 握し、この結果基に生徒一人ひとの観察行う。こうして得た実態に応じた指導 行えば、学校適応感が高ま互いのさ認め合え人間関係育むことができと考えた。 (3) 研究の仮説 以上のことか、研究では「山口県版学校適応感調査Fit用して、学級や生徒一人ひ との状把握し、そに応じた指導行えば、適応感が高ま、互い認め合え人間関 係づくができうにな」という仮説立て、授業実践通して検証すこととした。 2 研究の内容 (1) 山口県版学校適応感調査Fit 山口県版学校適応感調査Fit(以下、Fitとす)は生徒の学校生等への適応感定す ための調査で、今年度山口県内の中学校及び高等学校に配付さ、教育相談 等への用が試みてい。

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互いを認め合える人間関係づくりに関する研究

-山口県版学校適応感調査Fitの活用を通して-

山口市立阿知須中学校 教諭 藤山 峰至

1 研究の意図

(1) 研究の背景

「中学校学習指導要領解説 特別活動編」(平成20年)には、最近の子どもたちは、「自分

に自信がもてず,人間関係に不安を感じていたり,好ましい人間関係を築けず社会性の育成が

不十分であったりする」

*1

との指摘がある。これを踏まえて、「特別活動が,よりよい生活や

人間関係を築こうとする自主的,実践的な態度を育てる教育活動であることをより一層明確に

するため,目標に『人間関係』を加えた」

*1

とあることから、望ましい集団活動を通して豊か

な人間関係を育成していくことは喫緊の課題であるといえる。

原籍校においても、友だち同士では意見を言えるが集団の場面になると発言できなかったり、

他者とどのように関わってよいか悩みを抱えていたりする生徒を見かけることがあり、互いを

認め合うことのできる人間関係を育むことが必要である。

(2) 研究テーマ設定の理由

ア 互いを認め合える人間関係

互いを認め合える人間関係を育むためには、生徒一人ひとりに自信をもたせ、個性や能力・

適性等を生かしていこうとする態度を身に付けることが大切である。

そのためには、学級における人間関係や生徒一人ひとりの学校生活に対する適応状況を客

観的に把握した上で、互いに発言し合い、自他の考えや気持ちを共有し、できるだけ多くの

人の考えを生かしながら折り合いを付けられるような環境づくりや活動を仕組む必要がある

と考えた。

イ 山口県版学校適応感調査Fitの活用

山口県版学校適応感調査Fitとは、生徒の学校生活等への適応感を測定するために、山口

県教育委員会と山口大学との連携で作成されたアンケート調査である。

本研究では、この山口県版学校適応感調査Fitを活用して学校生活に対する適応状況を把

握し、この結果を基に生徒一人ひとりの観察を行う。こうして得られた実態に応じた指導を

行えば、学校適応感が高まり互いのよさを認め合える人間関係を育むことができると考えた。

(3) 研究の仮説

以上のことから、本研究では「山口県版学校適応感調査Fitを活用して、学級や生徒一人ひ

とりの状況を把握し、それに応じた指導を行えば、適応感が高まり、互いを認め合える人間関

係づくりができるようになる」という仮説を立て、授業実践を通して検証することとした。

2 研究の内容

(1) 山口県版学校適応感調査Fit

山口県版学校適応感調査Fit(以下、Fitとする)は生徒の学校生活等への適応感を測定す

るためのアンケート調査で、今年度より山口県内の中学校及び高等学校に配付され、教育相談

等への活用が試みられている。

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このFitは、「生活満足」、「友人関係」、「学業進路」

等の七つの側面についてそれぞれ「適応感」を測るこ

とのできる全25の設問項目で構成されている(表1)。

これらは「環境適応感」、「対人適応感」、「学習適応

感」の三つのパートに分類され、それぞれ偏差値で表

される。適応感の偏差値37以下を注意を要するものし

て、学校適応感を考えることができる(図1)。

図1 Fitの構造

友人関係友人関係友人関係友人関係

学業進路学業進路学業進路学業進路

家庭支援家庭支援家庭支援家庭支援

教師支援教師支援教師支援教師支援

生活満足生活満足生活満足生活満足

安心感安心感安心感安心感

社交性社交性社交性社交性

環境適応感環境適応感環境適応感環境適応感

対人適応感対人適応感対人適応感対人適応感

学習適応感学習適応感学習適応感学習適応感

パート 側面 設問文

楽しく毎日を過ごしている

学校生活に満足している

毎日が充実していると感じる

学校がなんとなくつまらない

困った時に助けてくれる先生がいる

私に声をかけてくれる先生がいる

先生は生徒に平等に接してくれている

私のことを分かってくれる先生がいる

家に帰るとほっとする

私の家族は仲がよいと思う

家にくつろげる場所がある

私のことを分かってくれる友達がいる

うれしいことを一緒に喜んでくれる友達がいる

悩みを話せる友達がいる

困った時に助けてくれる友達がいる

友達が話している所に気軽に入ることができる

気まずいことがあった相手と仲直りできる

友達にやってもらいたいことを頼むことができる

教室に入りづらいことがある

クラスに居づらいと感じることがある

陰で友達に何を言われているか不安である

クラスにいる時まわりの目が気になって落ち着かない

授業についていけないのではないかと不安になる

授業の進み方が早いと感じることが多い

努力したわりに成績が伸びないと感じる

表1 Fitの設問項目、三つのパート及び七つの側面

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図3 集計結果表(例) 図2 環境適応感及び対人適応感の散布図(例)

Fitの集計は、それぞれの質問項目に対する回答結果について、「よくあてはまる」を4点、

「あてはまる」を3点、「すこしあてはまる」を2点、「あてはまらない」を1点として、数値

をシートに入力すると、学年・学級の学校適応感の傾向が表示される。

環境適応感及び対人適応感は、適応感の偏差値37を基準として散布図(図2)で表示され、

学習適応感については、集計結果表(図3)で個別に表される。

(2) 学校適応感が低い生徒に応じた指導

Fitで得られた各適応感の状況から、学校適応感が低い生徒に応じた指導を本研究において

は表2のように考え、授業実践を行うこととした。

パート 各パートが低い生徒の状態 各パートが低い生徒に応じた指導

環境適応感

家庭や学校での生活に、満足し

ていない。

・教師から積極的に声をかける。

・一人ひとりが活躍できるグループ活動を仕組

み、自信をもてるようにする。

対人適応感

友人関係に不安を感じており、

孤立傾向にある。

・互いの緊張感をほぐす活動を通して、友だち

と進んで関わりをもてるようにする。

・コミュニケーションをとりながら、互いの表

現の違いに気付くことができるようにする。

学習適応感 学習面への不安を抱えている。

・グループの形態を変えながら、課題に取り組

み、自分の考えを安心して述べられるように

する。

・課題についてグループで話し合い、試行錯誤

しながら解決できるようにする。

10

20

30

40

50

60

70

10 20 30 40 50 60 70

環環環環

境境境境

適適適適

応応応応

良良良良

好好好好

対人適応良好対人適応良好対人適応良好対人適応良好

表2 学校適応感が低い生徒に応じた指導

学習適応感

年 組 番 生徒氏名

学業進路の

回答

学業進路

○ △ 1 A 2 1 2 56

○ △ 2 B 1 1 1 64

○ △ 3 C 1 1 1 64

○ △ 4 D 1 1 1 64

○ △ 5 E 2 2 1 54

○ △ 6 F 4 4 3 34

○ △ 7 G 4 1 2 51

○ △ 8 H 4 3 3 39

○ △ 9 I 3 3 2 44

○ △ 10 J 1 2 3 54

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図4 研究の流れ

表3 AFPYの五つの視点

(3) 研究の流れ

本研究では、Fitを活用した研究の流れ(図4)を考え、学校適応感が低い生徒に応じた指

導(表2)を踏まえて、実践することとした。

まず、学級や生徒一人ひとりの学校生活への適応の

状態を把握するために、Fitを行う。その結果と学級

担任による生徒観察とを照応させ、学級としての目標

を明確にする。その上で、互いを大切にする雰囲気を

醸成するため、表2を基に、学級や生徒の実態に応じ

た指導を考え、1学期にはAFPYのアクティビティ(人

間関係を深める活動)を取り入れた学級活動において

授業実践を行う。

授業実践後に再びFitを行い、これまでのデータと比較することで生徒の変容や授業の効果

等を検証する。

さらに、この実態を踏まえて、表2を基に、2学期にはAFPYの五つの視点を取り入れた学習

活動において授業実践を行う。生徒の学校適応感を高め、互いを認め合える人間関係を構築す

るためには、継続的に指導を重ねる必要がある。そのために、学級担任が学級活動で取り組ん

だ内容を教科担任も理解し、その上で授業を行うことが重要であると考えた。

(4) 学級活動と学習活動におけるAFPYの活用

学級活動だけでなく、学習活動においても同じ視点で指導を行うため、AFPYを取り入れるこ

ととした。

AFPYとは、”Adventure Friendship Program in Yamaguchi”の略称であり、「他者とかかわ

り合う活動を通して、個人の成長を図り、豊かな人間関係を築くための考え方や行動の在り方

を学び合う」山口県独自の体験学習法である。

「他者とかかわり合う活動」とは、アクティビティはもちろんのこと、各教科、道徳、特別活

動、部活動等あらゆる活動が想定されており、これらの活動を取り組むに当たり、「PDCAサイク

ル」、「安心・安全」、「ルール」、「コミュニケーション」、「達成感」の五つの視点が示されている。

そこで、学校適応感に応じた指導を学級活動及び学習活動においても継続的に行うためには、

このAFPYの五つの視点を取り入れることが有効であると考えた。本研究では、それらの視点を

表3のように捉え、まとめた。

AFPYの視点 授業実践での視点

PDCAサイクル

目標を明確にし、それに即した活動を仕組む。その活動を振り返らせ、次の授

業へ生かしていくというサイクルを大切にする。

安心・安全

互いの考え方や感じ方の違いを大切にさせることで、互いを認め合い、安心で

きる雰囲気をつくる。

ルール 自分たちの手で学級のルールをつくらせ、そのルールを意識して行動させる。

コミュニケーション

ペアやグループでの活動を通して、自分や友だちの考えを交流させる。

コミュニケーションを中心とした活動を仕組む。

達成感

課題を解決するためのアイデアを出し合い、全員で試行錯誤しながら挑戦する

ことで、達成感を共有できるようにする。

互いを認め合える人間関係

学校適応感の向上

Fit及び

生徒観察

Fit及び

生徒観察 AFPY の

アクティビティを

取り入れた

学級活動

AFPY の

五つの視点を

取り入れた

学習活動

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図5 環境適応感及び対人適応感の散布図

表4 学級活動に取り入れる AFPY の五つの視点

(5) AFPYのアクティビティを取り入れた学級活動における授業実践

ア Fitによる実態把握と分析

原籍校第1学年対象学級(25人)に、Fit

によるアンケート調査を実施した。

図5は、5月に行ったFitの結果を示した

ものである。学級生徒の散布図は、第1象限

に点が集まっており、学校適応感が全体的に

高く、学校での活動にも意欲的な集団である

と考えられる。

しかし、環境適応感及び対人適応感が低い

と判断できる生徒が3人(図5 ●▲■で表

示)いることも確認できた。

そこで、3人の生徒について、学級担任に聞取りを行うと、「欠席が多く、友だちとの関

わりが少ない」、「宿泊学習で友だちとトラブルになった」、「集中力に欠ける面があり、周

囲から注意されることが多い」等、友人関係と学校生活に対する安心感の側面に不安や悩み

を抱えていることを把握することができた。

さらに、この背景には、「学級目標が形骸化している」という学級の実態があることも確

認することができた。

以上のことから、学級は、生徒同士のつながりが弱くなっており、3人の生徒は相手の立

場になって物事を考えることが苦手なことから、コミュニケーションに自信をもてずにいる

のではないかと考えられた。

イ 授業計画

表2を踏まえて、表3を基にAFPYの五つの視点を取り入れた学級活動における具体的な場

面を考え、特に注目するAFPYのアクティビティ(以下、アクティビティとする)を表4のよ

うに選択した。なお、※を付けたものがアクティビティであり、説明は後で述べる。

AFPYの視点 具体的な場面

PDCAサイクル

・「手のひらビーイング」※の成果物を加筆・修正させることにより、具現化し

た行動目標が守れているかを確認できるようにする。

・互いに心地よい学校生活を送ることができるように、気を付けたい言動を確

認させる。

安心・安全

・「したことある人」※で、緊張感をほぐす。

・「イメージ」※から、コミュニケーションを中心とした活動を通して、安心感

をもたせる。

ルール

・「手のひらビーイング」を行い、学級のルールを自分たちで作成させる。

・学級目標を達成するために、守らなければならないルールを意識させる。

コミュニケーション

・「イメージ」から、コミュニケーションをとりながら、自他の捉え方の違いや

互いの表現の違いに気付かせる。

達成感

・「パイプライン」※を通して、達成する方法を考え、出てきたアイデアに全員

で挑戦させる。

・試行錯誤しながら「パイプライン」に取り組む過程を通して、集団としての

一体感を味わわせる。

10

20

30

40

50

60

70

10 20 30 40 50 60 70

対人適応良好

5月28日実施

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- 66 -

・・・・なくしたいことなくしたいことなくしたいことなくしたいこと

・・・・気気気気をををを付付付付けたいことけたいことけたいことけたいこと

・・・・していきたいことしていきたいことしていきたいことしていきたいこと

・・・・大切大切大切大切にしたいことにしたいことにしたいことにしたいこと

手手手手のひらのひらのひらのひらビーイングビーイングビーイングビーイング

生徒が安心してコミュニケーションを図ることができるように、学級のルールをつくった

上で、協力して課題解決し達成感を得ることができるように以下の指導計画を立て(表5)、

実践することとした。

時 学習活動 目標 AFPY の視点(アクティビティ)

1 学級目標を見直そう

学級目標を実現するために、具

体的な行動目標となる「手のひ

らビーイング」を作成する。

・安心・安全(じゃんけん)

・ルール、コミュニケーション

(ラインナップ)

・PDCA サイクル、達成感

(手のひらビーイング)

協力して課題を解決

しよう

「手のひらビーイング」に書い

た言葉を意識しながら、グルー

プで協力して課題に取り組み、

みんなで解決することへの喜

びを味わう。

・PDCA サイクル、ルール

(手のひらビーイング)

・安心・安全、コミュニケーション

(したことある人、イメージ)

・ルール、コミュニケーション、達成感

(パイプライン)

3 互いを理解し合おう

みんなで課題について話し合

うことで、互いの考え方のよさ

や違いに気付き、相手の気持ち

を考えた行動をする。

・PDCA サイクル、ルール

(手のひらビーイング)

・安心・安全、ルール(セブンイレブン)

・ルール、コミュニケーション、達成感

(三位一体)

(ア) 安心できる状況を生み出す学級のルールづくり

学級担任から、「学年始めに話し合って決めた学

級目標が形骸化している」との気付きがあったので、

学級目標を意識付けるために「手のひらビーイ

ング」(図6)というアクティビティを行った。

「手のひらビーイング」とは、目標を設定し、確

認するための活動である。自分の手形の中に一人ひ

とりの目標を書き、クラス全員で互いの目標を大切

にすることを意識しながら、毎日の生活を送ろうと

気付かせる活動である。

安心して活動に取り組める学級にするために、生徒が「手のひらビーイング」に書いた

言葉を学級のルールとし、互いに心地よい学校生活を送ることができるように気を付けた

い言動等を振り返る拠り所とした。

(イ) 学級活動における授業実践の概要

第2時の授業では、互いにルールを意識した安心・安全な状況で、活発にコミュニケー

ションさせることを目標とした活動を仕組んだ(表6)。

図6 手のひらビーイング

表5 指導計画

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学習活動 ☆目標 *活動の概略 ■適応感に応じた支援 ○生徒の様子 □生徒の感想

☆コミュニケーションを通して、生徒が自他の捉え方の違いに気付いたり、互い

の表現の違いに気付いたりする。

*「したことある人」とは、リーダーが中央で「~したことある人?」等条件を

示しながら、周りにいる友だちに問いかけ、該当する者同士が場所を交代する

アクティビティである。

■対人適応感を高めるための支援

・互いの表情に気付きやすくするために、学級を2つのグループに分けた。

・条件を出すことへの抵抗感をなくすため、全員を動かす条件を出してもよい

ことを伝えた。

○円の中央にいるリーダーはみんなの視線が気になり、他の生徒はリーダーから

どんな問いかけがあるのかと互いに緊張した様子がうかがえた。活動が進むに

つれ、笑い声や笑顔が多くなってきた。

□「はじめて質問する時には緊張したが、やっていくうちに慣れてきた。」

「活動している時、笑っている人がすごく多かった。」

したことある人

イメージ

*「イメージ」とは、リーダーが一つの絵について連想する言葉を伝え、その言

葉にしたがってリーダーと同じ絵を描くアクティビティである。

■対人適応感を高めるための支援

・活動の前に「手のひらビーイング」を確認し、誰がリーダーになっても困ら

ないように話し方や聞き方等に気を付けるように伝えた。

○生徒は正しく伝えたり聞き取ったりすることの難しさを感じていた。リーダー

が示した絵と同じ絵が描けた生徒は喜んでいた。異なる絵を描いた生徒はどの

ように聞き取ったのかを伝えることで、周りの生徒もその絵に納得していた。

□「自分(が描いた絵)と似ていると言ってくれて、うれしかった。」

「みんなに説明するのは難しかった。」

「友だちの表現がよかったから分かったんだと思った。」

パイプライン

☆課題を解決する方法を考え、出てきたアイデアを全員で挑戦する。

*「パイプライン」とは、紙で作ったパイプを手に持ち、それを使って全員で一

つのピンポン玉をスタートからゴールまで運ぶアクティビティである。

■環境適応感を高めるための支援

・相手を意識しやすくするために、ペアから徐々に人数を増やし、練習させる

ようにした。

・ピンポン玉を運ぶ途中、落ちないようにするために、男女関係なく移動した

り、自然と友だちに声をかけ合ったりすることができる活動とした。

○2人組から徐々に人数を増やし、ピンポン玉を運び始めた。互いに場所を交代

したり、声をかけ合ったりしながら活動に夢中になって取り組んでいた。ピン

ポン玉が落ちた時には並び方を変えたり、素早く移動して待ちかまえたりする

などのアイデアが出てきて、全員で何度も繰り返し行っていた。

□「やっているうちにどんどんアイデアが出てきた。」

「何回か失敗したけど、みんな笑顔で励まし合いながら活動できた。」

「全員が協力できたから、絆が深まった気がする。」

ウ 学級活動における実践の考察

他者との関わりに自信がもてなかった3人の生徒の感想には、「協力することの大切さが分

かった」、「一人ひとりの責任感が大切だ」等、人との関わりを大切に感じている記述が見ら

れ、積極的に活動に参加できるようになってきた。このことから、対人適応感及び環境適応

感の高まりを確認することができた。

これは対人適応感を高めることを目標に、コミュニケーションを中心としたアクティビティ

である「したことある人」や「イメージ」に取り組んだことで、周りの生徒と共通のイメー

ジを思い浮かべられたことに安心感を得て、喜びを味わうことができたからであるといえる。

また、環境適応感に応じた指導として行ったアクティビティ「パイプライン」でも、生徒

一人ひとりが活躍できる場を設け、周りの友だちと試行錯誤させながら課題に取り組ませる

過程を通して、集団としての一体感を味わわせることができた。

表6 学級活動における授業実践の概要(本時2/3)

課題解決をする

ための活動

緊張感をほぐす

ための活動

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表7 学習活動に取り入れるAFPYの五つの視点

(6) AFPYの五つの視点を取り入れた学習活動における授業実践

ア Fitによる実態把握と分析

7月にFitを行った結果では、学習適応感の

学級平均は49.9であった。学習適応感37以上の

生徒が全体的に多く、学習適応感の状況は高い

と判断できた。

しかし、9月に行ったFitの結果は47.8に減

少しており、学習適応感の低い生徒が増加して

いた(図7)。

教科担任による生徒観察から、学習適応感の低い生徒は、課題について一人で考えると行

き詰まってしまったり、一定時間に集中して考えることが苦手だったりすることが分かった。

イ 授業計画

学習適応感を高めるために、表2を踏まえて、表3のAFPYの五つの視点を取り入れた学習

活動を表7のように考え、数学科「一次方程式」の授業において実践を行うこととした。

AFPYの視点 具体的な場面

PDCAサイクル

・授業での目標を明確にするために、題意を把握しやすくする活動を取り入れ

る。また、活動を振り返らせ、互いの考えを交流するよさを実感させること

ができるようにする。

安心・安全

・課題解決に向けて、一人学びの時間とともにペアやグループでの学習場面を

設定し、互いの考えのよさや違いを認め合えるようにする。そうすることで、

安心して学習に取り組めるようにする。

ルール

・ペアやグループでの学習では、「手のひらビーイング」を意識させ、「話す」、

「聞く」、「書く」等の学習規律が守られるようにする。

コミュニケーション

・思考に広がりをもたせるためにペアからグループへと学習形態を変え、

多様な考え方にふれさせる。

達成感

・ペアやグループで試行錯誤しながら、課題に取り組み、力を合わせて、課題

を解決できるようにする。

(ア) 安心できる状況を生み出す学習形態の工夫

本実践では、学習活動に合わせて、「一人学び→ペア学習→グループ学習→全体」へと

学習形態(図8)を工夫し、学習適応感の低い生徒にも周囲から批判されず自分の考えが

安心して述べられる雰囲気をつくった。

「一人学び」の時間には、生徒が自ら課題に取り組み、考えを整理したり、分からない

ことに気付いたりすることができるようにした。その後、「ペア学習」において、互いの

考えや分からないことを伝え合い、安心して学習に取り組めるようにした。

次に、「グループ学習」の場を設定し、生徒が様々な考え方にふれながら、思考に広がり

をもつことができるようにした。

授業の終末には、「全体」発表の場を設けた。ここでは他のグループの考え方に納得した

り、自分たちの考え方を見直したり、新たな考え方を獲得したりするなど、他のグループ

の考え方にふれ、互いの考えのよさや違いを実感することができるようにした。

図7 学習適応感の変化

24% 32% 24% 20%

7月18日

9月3日

実施日

30~40 40~50 50~60 60~70

平均値

49.9

47.824% 32% 24% 20%

16% 24% 44% 16%

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図8 学習形態の工夫「一人学び→ペア学習→グループ学習→全体」

さらに、「手のひらビーイング」に記入してある言葉を意識させる投げかけを行ったこ

とも、学習活動の場面において「話す」、「聞く」、「書く」等の学習規律を意識させるこ

とにつながった。

(イ) 数学科における授業実践の概要

初めて方程式を学習する単元の導入に、小学校6年の算数の復習を取り上げ、小学校算

数と中学校数学の学習のつながりを意識させた。

等式の性質の学習では、天秤のつり合う状態を想像させ、天秤と等式の性質を比べて学

習できるようにし、この性質を利用した方程式の解き方につなげた。

単元末の授業では、学習形態を工夫しながら、方程式を活用しようとする態度を育てた

いと考え、実践することとした(表8)。

学習活動 ☆目標 *活動の概略 ■適応感に応じた支援 ○生徒の様子 □生徒の感想

☆カードを並べる活動を取り入れ、題意を把握しやすいようにし、学習の見

通しをもてるようにする。

*全体の場で、正方形をつくる条件を整理する。

■学習適応感を高めるための支援

・学習への意欲付けを行うために、学習が苦手だと感じている生徒を指名し、

全体の場で教師とともにカードを並べる活動を行った。

・具体物を用いて、題意を把握しやすいようにした。

・ペア学習でカードを並べ、協力し合う活動を仕組んだ。

○「正方形の一辺に並べるカードの数を同じにすること」、「隙間を開けずに並べ

ること」を全体の場で確認し、活動へ見通しをもてた。ペアで考えることで、

安心して取り組んでいたように感じられた。

□「実際に活動した(カードを並べた)ので分かった。」

「一辺を何枚にすればよいか二人で考えられた。」

☆正方形を作成するために使用するカードの枚数を、工夫して数える活動を

通して、互いの考え方のよさや違いを認め合えるようにする。

*まず、一人で正方形の一辺のカードが4枚の場合、どのように全体の枚数を数

えるかを考え、自分で考える。次に友だちの考え方のよさや違いに気付くこと

ができるように、ペア学習で互いの考えを交流する。

■学習適応感を高めるための支援

・ワークシートに示してある図を基に、カードの数え方や式のつくり方を考え

られるようにした。

・ペア学習を取り入れ、自分の考えを安心して述べたり、互いの考え方のよさ

や違いを認め合ったりする場を設定した。

○一人学びにおいて、ワークシートの図に、自分で考えたカードのまとまりを線

で囲み、カードの総数を工夫して数え、その考えを式に表した。次にペア学習

で互いの式を説明し合うことで、それぞれの考え方のよさや違いに気付くこと

ができた。式をつくることへ難しさが感じられる生徒もいたが、ペア学習にお

いて友だちの説明を聞いて、自分でも式をつくることができた。

表8 数学科における授業実践の概要(本時 13/14 大日本図書「数学の世界1年」)

カードを並べて

正方形をつくる

課題1

一辺4枚の正方

形に、必要なカー

ドの枚数を工夫

して数える

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生徒が考えた方程式

( ) 50014 =−x・ 

50044 =−x・ 

( ) 500424 =+−x・ 

□「友だちと同じ考え方で考えることができた。」

「友だちの説明が分かりやすく理解できた。」

☆カードの総数から正方形の一辺に並べるカードの枚数を求める方法について、

方程式を活用しながら考えることができるようにする。

*一辺に並べるカードの枚数を として、様々な考え方から方程式をつくり、解

を求める。その際、思考に広がりをもたせるために、ペア学習で考えた方程式

を4~5人のグループで説明できるように、ペアからグループへと学習形態を

工夫する。その後、他のグループの考え方にもふれられるようにするために、

全体の場でグループの考えを発表する。

■学習適応感を高めるための支援

・思考に広がりをもたせるために、ペアからグループへと学習形態を工夫し、

多様な考え方にふれさせるようにした。

・グループ学習において試行錯誤しながら課題を解決することで、達成感を味

わわせるようにした。

○グループ学習で互いが理解できた考え方や方程式を発

表シートに記入し、他のグループに分かりやすく伝え

られるように表現を工夫していた。全体発表の場では

自分のグループと同じ方程式をつくったグループの考

え方に共感したり、新しい考え方の説明に納得したり

する姿が見られた。

□「友だちの意見で発想が広がった。」

「他のグループの説明を聞く中で、同じ考え方はできていたが、説明できて、

すごいと思った。」

ウ 数学科における実践の考察

単元の導入では、学習適応感が低い生徒が学習に対して意欲的に取り組めるようにするた

めに、品物の個数と代金の関係を式に表す小学校の復習をする学習活動を行った。復習をし

たことで、学習への抵抗感を下げることができた。その後に、方程式やその解の意味につい

て学習したことで、小学校算数と中学校数学の学習のつながりを意識させることができた。

「等式の性質」の学習では、天秤のつり合った状態を、図を用いて個別に考えさせ、ペア

で確認し合わせることで、互いの考えを伝え合う場を設定した。等式の性質を全体でまとめ

た後に、等式の性質を利用した方程式の解き方をグループで話し合わせ、等式のどの性質を

使って解いたのかを全体で発表させた。ペアやグループ等の学習形態を工夫したことで、分

からないことをそのままにせずに、質問し合える雰囲気をつくることができた。

単元末の授業(表8)における導入場面では、カードを準備してペアで操作しながら考え

る活動を仕組んだ。一人ではなかなか題意を理解できない生徒もスムーズに把握させること

ができた。その後の課題1では、一人学びで自分の考えを整理させてからペア学習に取り組

ませたことで、主体的に意見交流させることができた。方程式の学習へ不安をもっていた生

徒も、「実際に活動したので分かった」、「友だちと同じ考え方で考えることができた」等の

感想から、安心して学習活動へ取り組むことができた。課題2では、ペア学習で深めた考え

課題2

5 0 0個のカード

を並べてできる

正方形の一辺の

枚数はいくつに

なるかを考える

x

図に示された考え方とその考えを表した式(例)

( ) 12414 =×− 12442 =+× 12444 =−× 122224 =×+×

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をグループで説明し合い、その後、グループごとに発表させることで、多様な考え方にふれ

させることができた。

学習適応感に応じた指導として、学習形態を工夫しながらAFPYの五つの視点を取り入れた

授業実践を行った結果、互いの考えのよさや違いを認め合うことができ、達成感を味わわせ

ることもできた。

(7) 研究の考察

ア 環境適応感及び対人適応感の調査結果から

Fitの結果を踏まえて生徒観察を行い、これを基に学級活動において担任の協力の基、ア

クティビティを継続的に実践したことで、図9の散布図にあるような結果が得られた。生徒

全員が第1象限内に集まり、環境適応感及び対

人適応感の低かった3人の生徒(図9 ●▲■

で表示)も、学校生活に対する満足度が高まり

学校適応感を向上させることができた。

生徒の感想には「チームワークの大切さが分

かった」、「みんなで助け合いながらできたので

よかった」等、人との関わりを大切に感じてい

る記述が見られることから、環境適応感及び対

人適応感の高まりを確認できた。

また、学級担任からは「『手のひらビーイング』で学級のルールを確認したことで、互いの

よさを認め合い、集団を意識して関わろうとする気持ちが高まってきた」という対人適応感

に関する感想が聞かれた。この感想からは、生徒自身で学級目標を見直して作成した「手の

ひらビーイング」を、学級担任が教室に掲示し、日常的に生徒と加筆や修正を行ったことか

ら、学級の仲間意識が高められたと判断できる。

イ 学習適応感の調査結果から

2学期始め9月に実施したFitの結果から、7月よりも学習適応感が下がっている生徒が

いることを確認した。このため、10月から11月にかけて数学科でAFPYの視点を取り入れた授

業を実践した。また、併せて学級担任や教科担

任が生徒観察を行い、情報交換した。

その後11月に実施したFitの結果から、9月

よりも学習適応感が低い生徒は減少し、学習適

応感が高い生徒の割合は増加したことを確認す

ることができた。学習適応感が60から70の生徒

の割合が減少していることについては、学習が

進むにつれて、生徒の学習に対する自己評価が厳しくなったためだと考えられる。

実践前に学習に対して行き詰まりを感じていた生徒は「友だちの説明が分かりやすく理解

できた」という感想を記述していたり、一定時間に集中して考えることが苦手であった生徒

は「友だちの意見で発想が広がった」という感想を記述していたりしたことからも、学習に

対して意欲的な態度が感じられ、学習適応感の向上を確認することができた。

また、学級全体の学習適応感の平均値も9月の47.8のから11月の50.3へ増加した(図10)。

教科担任からは「学習内容で分からないことがあっても、安心して質問し合える雰囲気が

図 10 学習適応感の変容

図9 環境適応感及び対人適応感の結果の変容

10

20

30

40

50

60

70

10 20 30 40 50 60 70 環

対人適応良好

7月18日実

24%

16%

32%

24%

24%

44%

20%

16%7月18日

9月3日

実施日

11月8日

平均値

49.9

47.8

50.3

30~40 40~50 50~60 60~70

24% 32% 24% 20%

13% 22% 52% 13%

16% 24% 44% 16%

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でき、主体的に学ぼうとする意欲が出てきた」という学習適応感及び環境適応感の高まりに

関する感想があった。この感想からは、教科担任がみんなで学習していくという雰囲気を大

切にしていたことが分かる。学習形態を工夫して、授業の中で一人学びの場を設定し、自分

の考えを整理できる時間を確保し、ペアやグループで話し合わせたことで、自分の考えに自

信をもって発言できるようになり、学習に対して積極的に取り組むようになったと考える。

以上のことから、学習適応感が低い生徒に応じた指導を行うことは、学級全体の学習適応

感を高めることにもつながったといえる。

3 研究のまとめと今後の課題

(1) 研究のまとめ

本研究では、互いを認め合える人間関係づくりをめざして、Fitを活用した指導を提案し、

実践した。

Fitを通して生徒一人ひとりの学校生活に対する適応状況を把握することで、これまで教師

が主観で感じ取っていた生徒の様子を客観的に確かめることができた。また、Fitのデータと

生徒観察とを照応し、生徒の適応状況に応じた指導を考え実践したことにより、生徒に互いの

よさや違いを気付かせることができ、多くの人と関わることの大切さを実感させることにつな

がったと考える。

さらに、生徒の学校適応感の状況に応じた指導に、AFPYの視点及びアクティビティを取り入

れ、学級活動だけではなく、数学科の学習活動においても同じ視点で継続的な指導を行ったこ

とも、豊かな人間関係を育むためにより効果的であったといえる。

このように、Fitの活用を通した研究を図4の流れに沿って進めた結果、互いのよさを理解

し認め合える人間関係の礎を築くことができたといえる。

また、同じ生徒の指導に関わる教師同士で、生徒の学校適応感の状況を把握し、指導の方法

を考えていく上で共通のツールとして、Fitを活用できることが分かった。

(2) 今後の課題

生徒の学校適応感を向上させるためには、安心・安全な雰囲気をつくり出すことが大切であ

る。本研究では、まず始めに対人適応感及び環境適応感の向上をめざし、学級活動でアクティ

ビティを行った。次に学級活動で育んだ人間関係を基盤とし、学習適応感の向上をめざして、

数学科での学習活動にAFPYの五つの視点を取り入れて授業を行った。今後も、この取組を継続

し、よりよい人間関係づくりをめざしていきたい。

また、Fitの実施を年間計画へ位置付け、学級担任と教科担任だけでなく全教職員でも、生

徒の実態を把握し合えるようにFitのデータを共有していけるような情報交換の場づくりを

検討していきたいと考えている。

【引用文献】

*1 文部科学省、『中学校学習指導要領解説 特別活動編』、ぎょうせい、2008、p3、p4

【参考文献】

・文部科学省、『中学校学習指導要領解説 特別活動編』、ぎょうせい、2008

・文部科学省、『中学校学習指導要領解説 数学編』、教育出版、2008

・文部科学省、『生徒指導提要』、教育図書、2010

・藤村寿、『AFPY入門‐「やまぐちふれあいプログラム」の理論と実践‐』、2005

・諸澄敏之、『みんなのPA系ゲーム243』、杏林書院、2009

・杉田洋、『よりよい人間関係を築く特別活動』、図書文化社、2010