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浅間山の山体表面温度観測について (2003年10月16日の観測結果) 平成15 年10月17 防災科学技術研究所 防災科学技術研究所では, 2000 年より地震活動が活発化している浅間山の活動状況把握のため,火 山専用空中赤外映像装置 VAM-90A による温度観測を 2003 10 16 日に実施した.即時データ処 理による速報データの解析結果を報告する. 1.観測諸元 (1)観測日時 :2003 10 16 11 51 分~11 55 (2)観測コース:山頂火口を東西に横切る 1 コース (南北:ASM03-1-B飛行高度は海抜 4,500 m (3)天候 :快晴 (4)観測機器 :火山専用空中赤外映像装置 VAM-90A(バンド1~9) 2.観測結果 浅間山の火口底において,最高輝度温度 139℃が,火山専用空中赤外映像装置 VAM-90A のバンド 88.0-11.0μm 帯:赤外輝度温度画像)により観測された.また,火口底からの噴気(凝結水)が, バンド 1 0.5-0.6μm 帯:可視画像),バンド 2 0.6-0.7μm 帯:可視画像),バンド 3 0.8-1.1μm 帯: 近赤外画像)により観測された.図 1 に,バンド 321 RGB に割り当てた可視近赤外画像(疑 似カラー画像)とバンド 88-11μm 帯:赤外輝度温度画像)の輝度温度画像を示す.可視近赤外画 像では噴気(白色)の為,火口底は観測できなかった.図 2 に,浅間山山頂火口底の赤外輝度温度画 像(バンド 8)の拡大図を示す.可視近赤外画像と輝度温度画像の比較より,火口底の温度観測は, 噴気の影響を受けていることがわかる.従って観測された輝度温度は,真の火口底の温度よりも低い 値である.なお南側斜面の温度がやや高いのは,日射による影響と考えられる.また図 3 に当日の空 撮写真を示す. 3.これまでの観測結果との比較 防災科学技術研究所では,VAM-90A による浅間山の山体表面温度観測を,2000 9 21 日,10 27 日,2002 8 29 日にも行った.最高輝度温度は 2000 9 21 日が 152℃(噴気無し), 10 27 日が 104℃(噴気無し),2002 8 29 日が 435℃(噴気有り)であった.これらの比較 より火口底の最高温度は前回の観測結果よりは低下している.しかし今回観測された温度は噴気によ る減衰を受けているにもかかわらず,2000 年の観測(噴気無し)と同等の値を示しており,今回の 観測時での火口底の温度は 2000 年よりも高い状態にあると推察される.ただし,高温エリアの分布 パターンはいずれの観測でも,火口底の東側,中央部付近,西側の分布であり,パターンに大きな変 化は認められない.

浅間山の山体表面温度観測について · (2)観測コース:山頂火口を東西に横切る1 コース (南北:asm03-1-b) 飛行高度は海抜4,500 m (3)天候

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浅間山の山体表面温度観測について (2003年10月16日の観測結果)

平成15 年10月17 日

防災科学技術研究所 防災科学技術研究所では,2000 年より地震活動が活発化している浅間山の活動状況把握のため,火

山専用空中赤外映像装置 VAM-90A による温度観測を 2003 年 10 月 16 日に実施した.即時データ処

理による速報データの解析結果を報告する. 1.観測諸元 (1)観測日時 :2003 年 10 月 16 日 11 時 51 分~11 時 55 分 (2)観測コース:山頂火口を東西に横切る 1 コース (南北:ASM03-1-B)

飛行高度は海抜 4,500 m (3)天候 :快晴 (4)観測機器 :火山専用空中赤外映像装置 VAM-90A(バンド1~9) 2.観測結果 浅間山の火口底において,最高輝度温度 139℃が,火山専用空中赤外映像装置 VAM-90A のバンド

8(8.0-11.0µm 帯:赤外輝度温度画像)により観測された.また,火口底からの噴気(凝結水)が,

バンド 1(0.5-0.6µm 帯:可視画像),バンド 2(0.6-0.7µm 帯:可視画像),バンド 3(0.8-1.1µm 帯:

近赤外画像)により観測された.図 1 に,バンド 3,2,1 を RGB に割り当てた可視近赤外画像(疑

似カラー画像)とバンド 8(8-11µm 帯:赤外輝度温度画像)の輝度温度画像を示す.可視近赤外画

像では噴気(白色)の為,火口底は観測できなかった.図 2 に,浅間山山頂火口底の赤外輝度温度画

像(バンド 8)の拡大図を示す.可視近赤外画像と輝度温度画像の比較より,火口底の温度観測は,

噴気の影響を受けていることがわかる.従って観測された輝度温度は,真の火口底の温度よりも低い

値である.なお南側斜面の温度がやや高いのは,日射による影響と考えられる.また図 3 に当日の空

撮写真を示す. 3.これまでの観測結果との比較 防災科学技術研究所では,VAM-90A による浅間山の山体表面温度観測を,2000 年 9 月 21 日,10

月 27 日,2002 年 8 月 29 日にも行った.最高輝度温度は 2000 年 9 月 21 日が 152℃(噴気無し),

10 月 27 日が 104℃(噴気無し),2002 年 8 月 29 日が 435℃(噴気有り)であった.これらの比較

より火口底の最高温度は前回の観測結果よりは低下している.しかし今回観測された温度は噴気によ

る減衰を受けているにもかかわらず,2000 年の観測(噴気無し)と同等の値を示しており,今回の

観測時での火口底の温度は 2000 年よりも高い状態にあると推察される.ただし,高温エリアの分布

パターンはいずれの観測でも,火口底の東側,中央部付近,西側の分布であり,パターンに大きな変

化は認められない.

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[℃]

約 500m

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(b)

(a)

図1 浅間山山頂付近の観測結果,(a)可視近赤外画像(R:0.8-1.1μm,G:0.6-0.7μm,B:0.5-0.6μm),山頂火口部の白色部分が噴気,(b)輝度温度画像(8.0-11.0μm)

[℃]

139℃ 98℃ 60℃ N

図2 浅間山山頂付近の輝度温度画像拡大図

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図.3 観測当日(2003/10/16)の浅間山の写真(中日本航空株式会社提供)